説明

太陽電池裏面保護シートならびに太陽電池モジュール

【課題】本発明の課題は、従来の問題点を克服し、安価で、難燃性、長期耐湿熱性、長期屋外耐候性に優れる太陽電池裏面保護シート、及び該太陽電池裏面保護シートを用いてなる太陽電池モジュールを提供することである。
【解決手段】 膜厚t(μm)の耐候性難燃樹脂層(1)、プラスチックフィルム(2)及び易接着剤層(3)を具備してなる太陽電池裏面保護シートであって、前記太陽電池裏面保護シートの一方の面を前記耐候性難燃樹脂層(1)が構成し、前記太陽電池裏面保護シートの他方の面を前記易接着剤層(3)が構成し、耐候性難燃樹脂層(1)が、と、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸化合物、及び(ポリ)リン酸メラミンからなる群より選ばれるリン系難燃剤(A)と、特定のアクリル系樹脂(B)とを含有し、耐候性難燃樹脂層(1)の膜厚tが、太陽電池裏面保護シートの総膜厚の2.5〜20%であることを特徴する太陽電池裏面保護シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐候性難燃樹脂層、接着剤層及びプラスチックフィルムを具備する太陽電池裏面保護シートに関する。詳しくは、本発明は、安価で、難燃性、耐擦傷性、長期耐湿熱性、長期屋外耐候性を有する太陽電池裏面保護シートに関する。さらに本発明は、前記太陽電池裏面保護シートを用いてなる太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に対する意識の高まりから環境汚染がなくクリーンなエネルギー源として太陽電池が注目され、有用なエネルギー資源としての太陽エネルギー利用の面から鋭意研究され実用化が進んでいる。
太陽電池素子には様々な形態があり、その代表的なものとして、結晶シリコン太陽電池素子、多結晶シリコン太陽電池素子、非晶質シリコン太陽電池素子、銅インジウムセレナイド太陽電池素子、化合物半導体太陽電池素子等が知られている。
【0003】
太陽電池モジュールのうち、単純なものは、太陽電池素子の両面に充填剤、ガラス板を、順に積層した構成形態を呈する。ガラス板は、透明性、耐候性、耐擦傷性に優れることから、太陽の受光面側の封止シートとして、現在も一般的に用いられている。しかし、透明性を必要としない非受光面側においては、コストや安全性、加工性の面から、ガラス板以外の太陽電池裏面保護シートが各社により開発され、ガラス板に置き換わりつつある。
【0004】
裏面保護シートとしては、ポリエステルフィルム等の単層フィルムや、ポリエステルフィルム等に金属酸化物や非金属酸化物の蒸着層を設けたものや、ポリエステルフィルムやフッ素系フィルム、オレフィンフィルムやアルミニウム箔などのフィルムを積層した多層フィルムが挙げられる(特許文献1〜3)。どのような裏面保護シートを用いるかは、太陽電池モジュールが用いられる製品・用途によって、適宜選択され得る。
しかし、これらの裏面保護シートに用いられるポリオレフィン系樹脂やポリエステル系樹脂は、屋外耐候性が十分ではない為に、長期間使用した場合には太陽電池モジュールの出力が低下したり、太陽電池裏面保護シートの外観が損なわれたりするという問題がある。
さらに、各フィルムは、特に難燃処理していない限り、容易に燃焼してしまうため、ガラス板を非受光面の構成部材とする場合と比較して、大幅にモジュールの難燃性が低下してしまうという問題があった。
【0005】
一方、太陽電池裏面保護シートの最外層、即ち受光面から最も遠くに位置する層に、耐候性や難燃性を有するフッ素系樹脂フィルムを積層してなる太陽電池裏面保護シート(特許文献4、特許文献5)が知られている。
しかし、前記フッ素系樹脂フィルムは価格が高く、しかも供給量が少ない為入手しにくいという問題点があった。さらに、ハロゲンを含むので、脱ハロゲンという潜在的な課題も内在していた。また、フッ素系樹脂フィルム自体は難燃性を有しているが、太陽電池裏面保護シートとして用いるためにポリエステルフィルムやポリオレフィンフィルムのような熱可塑性樹脂フィルムと併用した場合、これら熱可塑性樹脂フィルムが燃焼してしまい、太陽電池裏面保護シート全体としては難燃性を有していなかった。
【0006】
そこで、ポリエステルフィルムに耐候性層として、フッ素系樹脂やアクリル系樹脂のコーティング層を設けて耐候性を付与した太陽電池裏面保護シート(特許文献6、特許文献7)が提案されている。これはフッ素系樹脂フィルムを耐候性層とする太陽電池裏面保護シートと比較して、コスト面でも工程の簡易さにおいてもメリットが見られるが、耐候性、耐湿熱性が未だ十分とは言える段階では無い。また、この場合も難燃処理をしない場合、難燃性を有しない。
【0007】
また、難燃性を有さない熱可塑性樹脂フィルムにリン系や無機系の難燃剤を含有したコーティング層を設けることで、米国UNDERWRITERS LABORATORIES社規格(以下、ULと略す)のUL−94に規定されたHB、V−2相当の難燃レベルを有する積層フィルムが提案され、太陽電池という用途も提案されている(特許文献8〜11)。
ところで、太陽電池裏面保護シートに求められる難燃性は、UL−1703に規定される火炎伝播試験(ラジアントパネル試験、ASTM E162)である。上記のUL−94の規定によるHB、V−2相当の難燃性レベルを有する積層フィルムであっても、UL−1703に規定される火炎伝播試験の要求を満足できるものではなかった。
また、上記のHB、V−2相当の難燃性レベルを有する積層フィルムは、UL−1703に規定される耐湿熱性の点でも不十分だった。
【0008】
なお、優先権の基礎となる先の出願後に公開された特許文献であるが、太陽電池裏面保護シートに難燃性を付与するためのコーティング剤として、フッ素系樹脂に、無機顔料及び難燃剤を含有するコーティング剤が提案されている(特許文献12)。
しかしながら、そこで例示されている難燃剤は、メラミンシアヌレート、グアニジン化合物、トリアジン化合物、ヒンダードアミン化合物、芳香族リン酸エステル、芳香族縮合リン酸エステル、水和金属化合物であり、これらの難燃剤を用いた場合、長期湿熱性に劣ったり、UL−1703に規定される火炎伝播試験の要求を満足できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−200322号公報
【特許文献2】特開2004−223925号公報
【特許文献3】特開2001−119051号公報
【特許文献4】特開2003−347570号公報
【特許文献5】特開2004−352966号公報
【特許文献6】特開2008−098592号公報
【特許文献7】特表2010−519742号公報
【特許文献8】特開2009−179037号公報
【特許文献9】特開2010−89334号公報
【特許文献10】特開2010−120321号公報
【特許文献11】特開2010−149447号公報
【特許文献12】特開2011−162598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、従来の問題点を克服し、安価で、難燃性、長期耐湿熱性、長期屋外耐候性に優れる太陽電池裏面保護シート、及び該太陽電池裏面保護シートを用いてなる太陽電池モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
膜厚t(μm)の耐候性難燃樹脂層(1)、プラスチックフィルム(2)及び易接着剤層(3)を具備してなる太陽電池裏面保護シートであって、
前記太陽電池裏面保護シートの一方の面を前記耐候性難燃樹脂層(1)が構成し、前記太陽電池裏面保護シートの他方の面を前記易接着剤層(3)が構成し、
耐候性難燃樹脂層(1)が、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸化合物、及び(ポリ)リン酸メラミンからなる群より選ばれるリン系難燃剤(A)と、アクリル系樹脂(B)とを含有し、
前記アクリル系樹脂(B)のガラス転移温度が0〜70℃、重量平均分子量が15,000〜150,000、水酸基価が2〜30(mgKOH/g)であり、
耐候性難燃樹脂層(1)の膜厚tが、太陽電池裏面保護シートの総膜厚の2.5〜20%であることを特徴する太陽電池裏面保護シートに関する。
【0012】
アクリル系樹脂(B)は、水酸基価が5〜20(mgKOH/g)であることが好ましい。
耐候性難燃樹脂層(1)中のリン系難燃剤(A)を20〜50重量%含むことが好ましく、更にはリン系難燃剤(A)由来の総リン濃度が3〜10重量%であることが好ましい。
【0013】
本発明は、太陽電池の受光面側に位置する太陽電池表面封止シート(I)、太陽電池の受光面側に位置する封止材層(II)、太陽電池セル(III)、太陽電池の非受光面側に位置する封止剤層(IV)、及び前記非受光面側封止剤層(IV)に接してなる、上記太陽電池裏面保護シート(V)を具備してなる太陽電池モジュールであって、
前記太陽電池裏面保護シートを構成する耐候性難燃樹脂層(1)が、前記太陽電池表面封止シート(I)から最も遠くに位置する、ことを特徴とする太陽電池モジュールに関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、従来の問題点を克服し、安価で、難燃性、長期耐湿熱性、長期屋外耐候性に優れる太陽電池裏面保護シート、及び該太陽電池裏面保護シートを用いてなる太陽電池モジュールが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の太陽電池用モジュールの断面を模式的に示す図である。
【図2】本発明の太陽電池裏面保護シートの模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を構成する、耐候性難燃樹脂層(1)に関して説明する。
本発明における耐候性難燃樹脂層(1)は、太陽電池裏面保護シートの内部、さらには太陽電池モジュールを紫外線や物理的衝撃等の外的要因から保護し、太陽電池セルの出力劣化を抑制する役割と太陽電池裏面保護シートに難燃性を付与する役割を担っており、本発明において、最も重要な部分である。
【0017】
耐候性難燃樹脂層(1)に含まれるリン系難燃剤(A)について説明する。
本発明に用いられるリン系難燃剤(A)は、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸化合物、及び(ポリ)リン酸メラミンからなる群より選ばれることが重要である。
【0018】
一般的な高分子材料の燃焼性は、UL94に定められたHB試験またはV(VTM)試験により、着火後、消炎するまでの時間により評価を行っている。
一方、太陽電池モジュール並びに太陽電池裏面保護シートの燃焼性の規格は、太陽電池の基準規格となるIEC61730−1、IEC61730−2およびUL1703に定められており、中でも太陽電池裏面保護シートについては、火炎伝播試験(ラジアントパネル試験、RP試験、ASTM E162)が要求されている。火炎伝播試験では、太陽電池裏面保護シートの燃焼温度と燃焼速度の両方の評価を行うことで評価され、上記のHB試験またはV(VTM)試験と異なる。
【0019】
太陽電池裏面保護シートは、課せられる耐電圧を満足するために250〜400μmの厚さであることが必要である。そこで、太陽電池裏面保護シートを構成する主たる部材であるプラスチックフィルム(2)は125〜250μmの厚さであることが求められる。そのようなプラスチックフィルム(2)は、ポリエステル系フィルムやオレフィン系フィルムのような熱可塑性樹脂であることが多い。
本発明の耐候性難燃樹脂層(1)に用いられる難燃剤は、太陽電池裏面保護シート全体の総膜厚の2.5〜20%を占める耐候性難燃樹脂層(1)自身に難燃性を付与するだけでなく、厚さの点で太陽電池裏面保護シートの主たる構成部材であるプラスチックフィルム(2)の燃焼拡大を防ぎ、太陽電池裏面保護シート全体としての防炎性や消炎性を担う。
【0020】
一般的に用いられている難燃剤としては、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、ケイ素系難燃剤、無機系難燃剤などが挙げられる。
リン系難燃剤としては、
リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、リン酸グアニジン、ポリリン酸グアニジン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸アミドアンモニウム、ポリリン酸アミドアンモニウム、リン酸カルバメート、ポリリン酸カルバメートなどのリン酸塩系化合物やポリリン酸塩系化合物、
赤リン、有機リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、ホスホルアミド化合物などが挙げられる。
【0021】
窒素系難燃剤としては、メラミン、メラム、メレム、メロン、メラミンシアヌレートなどのトリアジン系化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、トリアゾール系化合物、テトラゾール化合物、ジアゾ化合物、尿素などが挙げられ、
ケイ素系難燃剤としては、シリコーン化合物やシラン化合物などが挙げられ、
ハロゲン系難燃剤としては、ハロゲン化ビスフェノールA、ハロゲン化エポキシ化合物、ハロゲン化フェノキシ化合物などの低分子ハロゲン含有化合物、ハロゲン化されたオリゴマーやポリマーなど挙げられ、
【0022】
無機系難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウムなどの金属水酸化物や、
酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化アンチモン、酸化ニッケル、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、ホウ酸亜鉛、水和ガラスなどが挙げられる。
【0023】
現在、太陽電池モジュールは15〜25年の長期保証が求められていることから、太陽電池裏面保護シート、しいては耐候性難燃樹脂層(1)にも長期耐候性、長期耐湿熱性が必要とされる。
上記の難燃剤のうち、窒素系難燃剤や無機系難燃剤を用いた場合、少量では難燃性に効果が出ないため、多量に添加する必要性が生じ、多量に添加すると耐候性難燃樹脂層(1)の耐候性や耐湿熱性が大きく低下する。
【0024】
上記の難燃剤のうち、ハロゲン系難燃剤を用いた場合、耐湿熱試験や耐候性試験により、耐候性難燃樹脂層が大きく黄変するため、非受光面側に位置するとはいうものの外観上を忌避される。また、耐候性試験で難燃剤がアクリル系樹脂(B)の劣化を促進するので、太陽電池裏面保護シートに使用することは好ましくない。
さらに近年の環境への配慮を顧みると、ハロゲン系難燃剤の使用は好ましくない。
【0025】
上記の難燃剤のうち、リン系難燃剤は、比較的少ない添加量で難燃性を発現できるという点で好適である。
しかし、リン系難燃剤のうち、耐湿熱試験において加水分解して酸を発生する難燃剤は、太陽電池裏面保護シートに使用することは好ましくない。
例えば、フレキシブルプリント基板等に用いられている、(ポリ)リン酸アンモニウムや(ポリ)リン酸カルバメートを用いた場合、耐湿熱試験の時間の経過に伴い、徐々に分解して、強酸であるリン酸を発生する。発生したリン酸が、アクリル系樹脂(B)の加水分解の触媒となり、耐候性難燃樹脂層(1)を大きく劣化させる。
そこで、太陽電池裏面保護シートに使用するリン系難燃剤としては、加水分解により酸を発生しない難燃剤であることが重要である。具体的には、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸化合物、(ポリ)リン酸メラミンであれば、耐候性や耐湿熱性に影響を及ぼさない程度の少ない添加量で効果的に難燃性を発現できる。
【0026】
本発明に用いられる、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸化合物及び(ポリ)リン酸メラミンからなる群より選ばれるリン系難燃剤(A)は高い耐湿熱性を有しており、湿熱経時で加水分解することがほとんど無い為、太陽電池裏面保護シートに使用する難燃剤としては好適である。さらにホスファゼン化合物及びホスフィン酸化合物は、疎水性が極めて高いフィラー状の化合物である。ホスファゼン化合物やホスフィン酸化合物を用いると、耐候性難燃樹脂層(1)としての疎水性も高めることができ、アクリル系樹脂(B)単体の時よりもさらに高い耐湿熱性を発現できるため、太陽電池裏面保護シート用の難燃剤として極めて適している。
【0027】
ホスファゼン化合物としては、次の一般式(1)又は(2)に例示されるホスファゼンオリゴマーが挙げられる。
【0028】
【化1】



【0029】
【化2】

【0030】
但し、一般式(1)又は(2)において、R及びRは、それぞれ水素原子であるか、又はハロゲンを含まない1価の有機基であり、R及びRの1価の有機基は、フェニル基、アルキル基、アミノ基、アリル基を表わし、前記フェニル基等はそれぞれハロゲンを含まない置換基をさらに有することができる。置換基としては、水酸基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、からなる群より適宜選択することができる。nは3〜10の整数である。
前記のRやRがフェニル基やアルキル基である、シクロホスファゼンが好ましく、シクロホスファゼンはトリシクロホスファゼンであることがより好ましい。具体的には、ヘキサアルコキシトリシクロホスファゼンやヘキサフェノキシトリシクロホスファゼンが挙げられ、ヘキサフェノキシトリシクロホスファゼンが好ましい。
ヘキサアルコキシトリシクロホスファゼンとしては、ヘキサメトキシトリシクロホスファゼン、ヘキサエトキシトリシクロホスファゼン、ヘキサプロポキシトリシクロホスファゼン等が挙げられる。
ヘキサフェノキシトリシクロホスファゼンとしては、無置換のヘキサフェノキシトリシクロホスファゼンの他、水酸基やシアノ基等の置換基を有するヘキサフェノキシトリシクロホスファゼンが挙げられる。
【0031】
ホスフィン酸化合物としては、次の一般式(3)に例示されるホスフィン酸塩が挙げられる。
【0032】
【化3】

【0033】
但し、一般式(3)において、R1、R2は、同一かまたは異なり、直鎖状もしくは分枝状の炭素数1〜6のアルキル基、またはアリール基を示し、Mは、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na、Kから成る群より選択される少なくとも一種の金属を示し、nは、1〜4の整数である。)を挙げることができる。
より好ましい化合物としては、MがMg、Ca、Alであるホスフィン酸塩が挙げられ、MがAlであるホスフィン酸アルミニウム塩が特に好ましい。
具体的には、R1及びR2がアルキル基、n=3のトリスジアルキルホスフィン酸アルミニウム塩が好ましい。
【0034】
(ポリ)リン酸メラミンとしては、次の一般式(4)に例示される、リン酸とメラミンが塩の状態を呈する化合物が挙げられる。下記一般式(4)においてnは1〜10であることが好ましく、nが2以上の場合を「ポリリン酸メラミン」と称する。
【0035】
【化4】

【0036】
本発明では、上記のリン系難燃剤(A)を単独で用いることができ、各化合物群の中で複数を適宜組み合わせて用いることができる、各化合物群から選択した複数を適宜組み合わせて用いることができる。
【0037】
耐候性難燃樹脂層(1)の膜厚tは太陽電池裏面保護シートの総膜厚の2.5〜20%であることが重要である。すなわち膜厚が300μmである太陽電池裏面保護シートの場合、耐候性難燃樹脂層(1)の膜厚tは7.5〜60μmの範囲である必要がある。耐候性難燃樹脂層(1)の膜厚tを上記範囲とすることによって、難燃性、経済性に優れる太陽電池裏面保護シートを得ることができる。
耐候性難燃樹脂層(1)の膜厚tが太陽電池裏面保護シートの総膜厚の2.5%未満であると、厚みの点で太陽電池裏面保護シートの主たる構成部材であるプラスチックフィルム(2)の燃焼を抑えることが困難となり、本発明の重要な効果である難燃性があまり期待できない。一方、耐候性難燃樹脂層(1)の膜厚tが太陽電池裏面保護シートの総膜厚の20%以上であると均一な層を形成することが困難となったり、コスト的なデメリットが大きくなったりする。
【0038】
耐候性難燃樹脂層(1)中のリン系難燃剤(A)の重量は20〜50重量%であることが好ましい。リン系難燃剤(A)の量が上記範囲にあることによって、難燃性、耐候性、耐湿熱性をバランスよく満たすことができる。リン系難燃剤(A)の重量が20重量%以下であると、プラスチックフィルム(2)の燃焼を抑えることが困難となり、50重量%を超えると、アクリル系樹脂(B)の配合量が相対的に少なくなり過ぎるため、耐候性、耐湿熱性に劣る傾向にある。
【0039】
耐候性難燃樹脂層(1)中のリン系難燃剤(A)由来の総リン濃度は3〜10重量%であることが好ましい。総リン濃度が3%未満であると、塗膜自体の難燃性は発現できたとしてもプラスチックフィルム(2)の燃焼性を抑えることは困難であり、火炎伝播試験の規格値を満たすことが難しい。一方、総リン濃度が10%を超えると、必然的にリン系難燃剤(A)の添加量が多くなり、アクリル系樹脂(B)の配合量が相対的に少なくなるため、耐候性、耐湿熱性に劣る傾向にある。
【0040】
耐候性難燃樹脂層(1)を構成するアクリル系樹脂(B)について説明する。
本発明に用いられるアクリル系樹脂(B)は、紫外線や物理的衝撃等による劣化の影響を防ぎ、なおかつ、前記リン系難燃剤(B)が耐候性難燃樹脂層(1)中に凝集しないで均一に存在できるバインダーの役割を担っている。
【0041】
本発明に用いられる、ホスファゼン化合物、ホスフィン¥酸化合物及び(ポリ)リン酸メラミンからなるリン系難燃剤(A)は、耐湿熱試験においてほとんど加水分解しない。しかし、わずかな加水分解の結果生じたごく微量の酸でも、極めて長期の間にはその酸が触媒となり、アクリル系樹脂(B)の側鎖の加水分解を促進し、しいては耐候性樹脂層(1)の劣化が進むおそれがある。
アクリル系樹脂は耐候性や耐薬品性にも優れており、 耐候性難燃樹脂層(1)のバインダーとして好適である。また、さらに耐候性を向上するため、アクリル系樹脂(B)に紫外線吸収剤、光安定化剤、酸化防止剤等を結合してもよい。
【0042】
アクリル系樹脂としては、一般的なアクリル系モノマー、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリレートや、シクロヘキシルメタクリレート、シクロペンタジエニルメタクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等、ヒドロキシアクリル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート等のようなアクリル系モノマーを、要求性能に応じて、1種、または2種以上を組み合わせて、重合反応により作成されたアクリル系樹脂等が挙げられる。
【0043】
アクリル系樹脂(B)のガラス転移温度は、0〜70℃であることが重要であり、20〜50℃であることが好ましい。
アクリル系樹脂(B)のガラス転移温度が70℃を越える場合には、得られる耐候性難燃樹脂層の湿熱経時での基材への密着性を確保することができずに、ウキやハガレが生じてしまう。耐候性難燃樹脂層にウキやハガレが生じた場合、その太陽電池裏面保護シートは難燃性を保持することができなくなる。
本発明の太陽電池裏面保護シートは、プラスチックフィルム(2)に耐候性難燃樹脂組成物(1’)を塗工・乾燥し、ロール状に巻き取った後、ロールを40〜60℃の環境下に1日〜2週間程度置くことによって耐候性難燃樹脂層(1)を十分に硬化させて(以下、エージングという)製造することが多い。アクリル系樹脂(B)のガラス転移温度が0℃未満の場合、耐候性難燃樹脂層(1)の耐熱性が劣るため、リン系難燃剤(A)を有していても太陽電池裏面保護シートの難燃性を保持することができない。
なお、ここでいうガラス転移温度とは、アクリル系樹脂(B)溶液を乾燥させて固形分100%にした樹脂について、示差走査熱量分析(DSC)によって計測したガラス転位温度のことを示す。
【0044】
アクリル系樹脂(B)のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量は、15,000〜150,000であることが重要であり、好ましくは30,000〜120,000であり、より好ましくは50.000〜100,000である。
共重合体(a)の重量平均分子量が150,000を越える場合には、耐候性樹脂層のプラスチックフィルムへの濡れ性が低下するので、密着性が低下したり、湿熱経時での基材への密着性を確保することができずに、ウキやハガレが生じてしまう。耐候性難燃樹脂層にウキやハガレが生じた場合、その太陽電池裏面保護シートは難燃性を保持することができなくなる。
また、分子量が大き過ぎると耐候性樹脂組成物(1’)の粘度が大きくなり、塗工性に支障を来たし易くなる。有機溶剤により希釈し、塗工時の粘度を調整することは可能であるが、希釈した分だけ得られる耐候性樹脂層の厚みが薄くなってしまう。
共重合体(a)の重量平均分子量が15,000未満の場合には、得られる耐候性樹脂層が脆弱になり傷つき易くなると共に、耐候性試験により耐候性樹脂層の厚みが減ってしまう。また、耐候性難燃樹脂層(1)の耐湿熱性が劣るため、湿熱経時後にリン系難燃剤(A)を有していても太陽電池裏面保護シートの難燃性を保持することができない。
【0045】
また、アクリル系樹脂(B)により高い強靭性、耐候性、耐湿熱性を付与するためには、より高い架橋密度を得る為にアクリル系樹脂(B)に水酸基を導入し、一般的な架橋剤で架橋することが重要である。アクリル系樹脂(B)の水酸基価は、固形分換算で好ましくは2〜30mgKOH/g、より好ましくは5〜20mgKOH/gである。
アクリル系樹脂(B)の水酸基価が30mgKOH/gを越える場合、アクリル系樹脂(B)の架橋度が大きくなりすぎてしまうため、湿熱試験後の密着性が著しく低下し、ウキやハガレが見られる。そのため、本発明の太陽電池裏面保護シートの耐候性難燃樹脂層(1)で上記のアクリル系樹脂(B)を用いた場合、湿熱試験後に耐候性難燃樹脂層(1)がプラスチックフィルム(2)から浮いたり、剥がれたりするため、必然的に難燃性を保持することができなくなり、本発明の課題を解決することができない。
一方、アクリル系樹脂(B)の水酸基価が2mgKOH/g未満の場合には架橋剤との反応性が著しく低下するので、形成される耐候性樹脂層(1)が脆弱で極めて傷付つきやすく、脆弱さ故に各種耐性が著しく悪い。また、耐候性難燃樹脂層(1)の耐湿熱性が劣るため、湿熱経時後にリン系難燃剤(A)を有していても太陽電池裏面保護シートの難燃性を保持することができない。
【0046】
本発明に用いられる架橋剤は水酸基と反応するものであれば一般的な架橋剤を使用することができ、ポリイソシアネート化合物、ポリシアナート化合物、ポリグリシジル化合物、ポリアジリジル化合物などが挙げられる。
【0047】
耐久性や塗液安定性の点から、水酸基を有するポリエステル系またはウレタン系樹脂とイソシアナート水酸基と反応し得る官能基を有する架橋剤としては、イソシアネート化合物が好ましい。さらに耐久性の向上の点から、ポリイソシアネート化合物が好ましい。
【0048】
ポリイソシアネート化合物は、アクリル系樹脂(B)同士を互いに架橋させ、強靱で且つ伸張性、柔軟性、成形加工性、耐擦傷性、長期耐候性、長期耐湿熱性、耐薬品性を有する耐候性樹脂層を形成するために用いられる。
得られる耐候性樹脂層が経時で黄色から褐色に変色することを防ぐために、脂環族または脂肪族の化合物のみを用いることが好ましい。
【0049】
脂環族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、水添4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0050】
脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0051】
芳香族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、o−キシレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどが挙げられる。
【0052】
ポリイソシアネート化合物としては、上記化合物とグリコール類またはジアミン類との反応生成物である両末端イソシアネートアダクト体、ビウレット変性体、イソシアヌレート変性体を用いても構わない。
特に、ポリイソシアネート化合物がイソシアヌレート変性体、特にイソシアヌレート環含有トリイソシアネートを含む場合には、より強靱、且つ伸張性を有する耐候性樹脂層を得ることができるため好ましい。イソシアヌレート環含有トリイソシアネートとして具体的には、イソシアヌレート変性イソホロンジイソシアネート(例えば、住友バイエルウレタン株式会社製のデスモジュールZ4470)、イソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネート(例えば、住友バイエルウレタン株式会社製のスミジュールN3300)、イソシアヌレート変性トルイレンジイソシアネート(例えば、住友バイエルウレタン株式会社製のスミジュールFL−2、FL−3、FL−4、HL BA)が挙げられる。また、イソシアヌレート環をさらに反応可能な官能基を2個以上有するポリエステル(c)と反応させて、1分子中のイソシアネート基を増やしても良いし、生成したウレタン結合とさらに1等量のイソシアネート基を反応させてアロファネート化して、さらに1分子中のイソシアネート基を増やしても良い。イソシアネート基と反応可能な官能基を2個以上有するポリエステル(c)としては、周知のポリエステル樹脂を用いることができる。
【0053】
また、上記ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基を、例えば、メタノール、エタノール、n−ペンタノール、エチレンクロルヒドリン、イソプロピルアルコール、フェノール、p−ニトロフェノール、m−クレゾール、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、ε−カプロラクタムなどのブロック剤と反応させてブロック化した、ブロック変性体を用いても構わない。
【0054】
更に、ポリイソシアネート化合物(として、イソシアネート基と反応可能な官能基を2個以上有するポリエステル(d)と、両末端にイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物(e)とを反応させてなる、両末端イソシアネートプレポリマーを用いても構わない。ポリイソシアネート化合物が上記両末端イソシアネートプレポリマーを含む場合には、少量で伸張性が得られ、塗膜の強靱性も損なわれない。
ポリイソシアネート化合物は、1種、もしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0055】
イソシアネート基と反応可能な官能基を2個以上有するポリエステル(d)としては、周知のポリエステル樹脂を用いることができる。
両末端にイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物(e)としては、例えば、トルイレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、o−トルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、水添4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0056】
ポリイソシアネート化合物は、前記アクリル系樹脂(B)対して、前記アクリル系樹脂(B)のイソシアネート基と反応可能な官能基の総数に対するポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の数が0.1〜5倍であることが好ましく、更には1〜3倍であることが好ましい。0.1倍より少ないと、架橋密度が低すぎて、耐溶剤性、耐擦傷性、耐候性が十分でなく、5倍より多いと、イソシアネートが余ってしまい、空気中の水分と反応して、季節により物性が変化する要因となる。
【0057】
架橋剤としては、上記ポリイソシアネート化合物の他に、周知のオキサゾリン化合物、例えば、2、5−ジメチル−2−オキサゾリン、2、2−(1、4−ブチレン)−ビス(2−オキサゾリン)またはヒドラジド化合物、たとえば、イソフタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジドを含むことができる。
【0058】
アクリル系樹脂(B)中の芳香環含有量は、最大でも50重量%であり、10重量%以下であることが好ましく、できるだけ芳香環は含有しないことが好ましい。アクリル系樹脂(B)中の芳香環含有量が、50重量%を超えると、紫外線を吸収して、耐候性難燃樹脂層(1)の黄変および塗膜劣化の原因となり、耐候性が低下しやすい。
【0059】
また、耐候性難燃樹脂層(1)は、表面のすべり性やブロッキング性を向上させるために、無機微粒子や有機微粒子を添加しても良い。
【0060】
無機微粒子の具体例としては、シリカ、ガラス繊維、ガラス粉末、ガラスビーズ、クレー、ワラスナイト、酸化鉄、酸化アンチモン、リトポン、軽石粉、硫酸アルミニウム、ケイ酸ジルコニウム、ドロマイト、砂鉄などを含有する無機系粒子が挙げられる。
【0061】
また、前記無機微粒子は、その特性を損なわない程度に不純物を含んでいてもよい。また、粒子の形状は、粉末状、粒状、顆粒状、真球状、平板状、繊維状、など、どのような形状であってもよい。
【0062】
有機系微粒子の具体例としては、ポリオレフィン系ワックス、ポリメチルメタアクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ナイロン樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、シリコン樹脂、メタクリレート樹脂、アクリレート樹脂などのポリマー粒子、あるいは、セルロースパウダー、ニトロセルロースパウダー、木粉、古紙粉、籾殻粉、澱粉などが挙げられる。
【0063】
前記有機系微粒子は、乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法、ソープフリー重合法、シード重合法、マイクロサスペンジョン重合法、などの重合法により得ることができる。また、前記有機系粒子は、その特性を損なわない程度に不純物を含んでいてもよい。また、粒子の形状は、粉末状、粒状、顆粒状、平板状、繊維状、など、どのような形状であってもよい。
【0064】
また、耐候性難燃樹脂層(1)には、得られる耐候性難燃樹脂層の強度を上げるために、本発明の効果を妨げない範囲で、アクリル系樹脂(B)以外の各種の熱可塑性樹脂を含有させてもよい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、アイオノマー、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアミド樹脂、ポリアセタール、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0065】
上記の熱可塑性樹脂の添加量は、アクリル系樹脂(B)の合計100重量部に対して、50重量部以下が好ましく、30重量部以下が更に好ましい。50重量部を超えると、他成分との相溶性が低下する場合がある。
【0066】
耐候性樹脂層(1)には、着色する目的で顔料を添加しても良い。
顔料としては、従来公知のものを用いることができ、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉛、硫化亜鉛、リトボンのような無機顔料や種々の有機顔料を用いることができる。
【0067】
リン系難燃剤(A)や、粒子、顔料は、分散樹脂、必要に応じて分散剤を混合したペーストを作製した後、他の成分と混合するのが好ましい。
分散樹脂としては、アクリル系樹脂(B)そのものを用いるのが好ましいが、特に限定はなく、顔料分散性に優れた極性基、例えば水酸基、カルボキシル基、チオール基、アミノ基、アミド基、ケトン基等を有する、アクリル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリエステル樹脂等を用いることができる。
分散剤としては、例えば、顔料誘導体、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、チタンカップリング剤、シランカップリング剤等が挙げられる。また、金属キレート、樹脂コートなどにより、顔料表面の改質を行うこともできる。
【0068】
次に、本発明に用いるプラスチックフィルム(2)に関して説明する。
本発明で用いるプラスチックフィルム(2)としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリシクロペンタジエンなどのオレフィンフィルム、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、エチレン‐テトラフルオロエチレン共重合体フィルムなどのフッ素系フィルム、アクリルフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、を用いることができる。フィルム剛性、コストの観点からポリエステル系樹脂フィルムであることが好ましく、ポリエチレンテレフタラートフィルムであることが好ましい。
またこれらのフィルムは、1層または2層以上の複層構造でも構わない。
【0069】
これらプラスチックフィルム基材(2)は無色であってもよいし、顔料もしくは染料などの着色成分が含有されていても良い。着色成分を含有させる方法としては、例えば、フィルムの製膜時にあらかじめ着色成分を練りこんでおく方法、無色透明フィルム基材上に着色成分を印刷する方法等がある。また、着色フィルムと無色透明フィルムとを貼り合わせて使用してもよい。
【0070】
次に、本発明に用いる易接着剤層(3)に関して説明する。
本発明における易接着剤層(3)は、プラスチックフィルム(2)と非受光面側封止材(IV)との接着性を向上するための層として、太陽電池裏面保護シートの一方の側の最表面に設けられた樹脂層である。
そして、太陽電池モジュールを形成する際、非受光面側封止材(IV)と本発明の太陽電池裏面保護シート(V)とを、易接着剤層(3)とが接するようにして貼着することによって、太陽電池モジュールに太陽電池裏面保護シートが装着される。
【0071】
本発明において用いられる易接着剤層(3)は、種々の樹脂を含有する一般的な接着剤から形成することができる。具体的には、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂が挙げられ、これらは単独または2種以上を使用できる。さらにこれらの樹脂が複合化したものも使用できる。
【0072】
ポリエステル系樹脂とは、カルボン酸成分と水酸基成分とを反応(エステル化反応、エステル交換反応)させたポリエステル樹脂の他、水酸基を有するポリエステル樹脂にさらにイソシアネート化合物を反応させてなるポリエステルポリウレタン樹脂、さらにジアミン成分を反応させてなるポリエステルポリウレタンポリウレア樹脂などをも含む意である。
【0073】
ポリエステル系樹脂を構成するカルボン酸成分としては、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、テトレヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、テトラクロル無水フタル酸、1、4−シクロヘキサンジカルボン酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物、無水ピロメリット酸、ε−カプロラクトン、脂肪酸が例示できる。
ポリエステル系樹脂を構成する水酸基成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1、3−ブチレングリコール、1、6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、3−メチルペンタンジオール、1、4−シクロヘキサンジメタノール等のジオール成分の他、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの多官能アルコールが例示できる。
常法に従いこれらのカルボン酸成分と水酸基成分とを重合させて所定のポリエステル樹脂としたものが本発明で使用できる。
【0074】
ウレタン系樹脂とは、水酸基を有するポリエステル樹脂以外の水酸基成分とイソシアネート化合物を反応させてなるものである。
水酸基成分としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加したポリエーテル系ポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエン系ポリオールなどのポリマーポリオールなどが使用できる。
イソシアネート化合物としては、後述するポリイソシアネート化合物(C)と同様のものを例示できる。トリメチレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、メチレンビス(4、1−フェニレン)=ジイソシアネート(MDI)、3−イソシアネートメチル−3、5、5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等のジイソシアネートや、これらジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、これらジイソシアネートの三量体であるイソシアヌレート体、これらジイソシアネートのビューレット結合体、ポリメリックジイソシアネートなどが例示できる。
【0075】
アクリル系樹脂を構成するモノマーとしては、一般式(a)CH=CR−CO−OR(Rは水素原子、もしくはメチル基、Rは水酸基もしくは炭素数1乃至20の置換基を有する炭化水素基を示す)で表されるアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2エチルヘキシル、アクリル酸4ヒドロキシブチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2ヒドロキシエチル、メタクリル酸4ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル等が例示できる。更にはアクリルアミド、メタアクリルアミド、アクリルニトリル、メタアクリルニトリル、N−メチロールアクリルアミド、N−アルキロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミド、アクロレイン、メタアクロレイン、グリシジルメタクリレートなども反応性モノマーとして例示できる。常法に従いこれらのモノマーを共重合させて所定のアクリル系樹脂としたものが本発明で使用できる。
【0076】
易接着剤層(3)の強靭性、伸縮性、耐熱性、耐湿熱性、耐候性を向上させるため、架橋剤を含む接着剤を用い、非受光面側封止材(IV)と本発明の太陽電池裏面保護シート(V)とを重ね、貼り合わせて、太陽電池モジュールを形成する際、太陽電池裏面保護シート(V)最表面の架橋剤含有易接着剤層(3)を架橋させることが好ましい。
例えば、先に例示したポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂を易接着剤層(3)に用いる場合、前記樹脂は、水酸基、カルボキシル基、スルホニル基、ホスフォニル基、イソシアナート基、エポキシ基、などの反応点を持つことが好ましい。
【0077】
架橋剤としては、ポリイソシアナート化合物、ポリシアナート化合物、ポリグリシジル化合物、ポリアジリジル化合物などが挙げられる。
【0078】
耐久性や塗液安定性の点から、水酸基を有するポリエステル系またはウレタン系樹脂とイソシアナート水酸基と反応し得る官能基を有する硬化剤としては、イソシアネート化合物が好ましい。さらに耐久性の向上の点から、ポリイソシアネート化合物が好ましい。また、ブロック化ポリイソシアネート化合物を用いても良い。
ポリイソシアネート化合物としては、アクリル系樹脂の架橋剤で例示したポリイソシアネート化合物(C)と同様のものを使うことができる。
【0079】
硬化剤としては、上記ポリイソシアネート化合物の他に、周知のオキサゾリン化合物、例えば、2、5−ジメチル−2−オキサゾリン、2、2−(1、4−ブチレン)−ビス(2−オキサゾリン)またはヒドラジド化合物、たとえば、イソフタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジドを含むことができる。
【0080】
太陽電池裏面保護シートは、防湿性を付与するために水蒸気バリア層(4)を具備することができる。水蒸気バリア層としては、金属箔、あるいは金属酸化物もしくは非金属無機酸化物の蒸着層が挙げられる。
【0081】
金属箔としては、アルミニウム箔、鉄箔、亜鉛合板などを使用することができ、これらの中でも、耐腐食性の観点から、アルミニウム箔が好ましく、厚みは10μmから100μmであることが好ましく、更に好ましくは20μmから50μmであることが好ましい。
両者の積層には、従来公知の種々の接着剤を用いることができる。
【0082】
蒸着層は、プラスチックフィルム(2)の一方の面に設けられる。層間接着剤層を介して片面蒸着ポリエステルフィルム同士を積層したものや、あるいは片面蒸着ポリエステルフィルムと他の蒸着フィルムとを層間接着剤層を介して積層したものも、用いることができる。
蒸着される金属酸化物もしくは非金属無機酸化物としては、例えば、ケイ素、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、スズ、ナトリウム、ホウ素、チタン、鉛、ジルコニウム、イットリウムなどの酸化物が使用できる。また、アルカリ金属、アルカリ土類金属のフッ化物なども使用することができ、これらは単独もしくは組み合わせて使用することができる。
これらの金属酸化物もしくは非金属無機酸化物は、従来公知の真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリングなどのPVD方式や、プラズマCVD、マイクロウェーブCVDなどのCVD方式を用いて蒸着することができる。
【0083】
水蒸気バリア層(4)は、必要とされる電気絶縁性や水蒸気バリア性に応じて、上記バリア層を2層以上積層した積層体であってもよい。
【0084】
耐候性難燃樹脂層(1)または易接着剤層(3)をプラスチックフィルム(2)や水蒸気バリア層(4)上に設ける方法としては、ロールナイフコーター、ダイコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、ディッピング、ブレードコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、コンマコーターなどの従来公知のコーティング方式によって、耐候性難燃樹脂組成物(1’)または易接着剤組成物(3’)をコーティングする方法や、耐候性難燃樹脂組成物(1’)または易接着剤組成物(3’)から形成されるフィルムを、ドライラミネート、エクストルージョンラミネート、サーマルラミネート法など従来公知のラミネート方法でプラスチックフィルム(2)あるいは水蒸気バリア層(4)と貼りあわせる方法が挙げられる。
【0085】
本発明の太陽電池裏面保護シートの製造方法について説明する。
本発明の太陽電池裏面保護シートは、耐候性難燃樹脂層(1)と、プラスチックフィルム(2)及び易接着剤層(3)を具備し、前記太陽電池裏面保護シートの一方の面を前記耐候性難燃樹脂層(1)が構成し、前記太陽電池裏面保護シートの他方の面を前記易接着剤層(3)が構成する。
図2(a)は、耐候性難燃樹脂層(1)、プラスチックフィルム(2)、易接着剤層(3)が積層されてなる、本発明の太陽電池裏面保護シートのさらに別の態様を示す模式的断面図である。
本発明の太陽電池裏面保護シートは、その他に水蒸気バリア層(4)、層間接着剤層(5)等を具備することができる。
例えば、図2(b)は、耐候性難燃樹脂層(1)、水蒸気バリア層(4)、層間接着剤層(5)、プラスチックフィルム(2)、易接着剤層(3)が積層されてなる、本発明の太陽電池裏面保護シートのさらに別の態様を示す模式的断面図である。
また、図2(c)は、耐候性難燃樹脂層(1)、プラスチックフィルム(2)、層間接着剤層(5)、水蒸気バリア層(4)、易接着剤層(3)が積層されてなる、本発明の太陽電池裏面保護シートの別の態様を示す模式的断面図である。
【0086】
次に本発明の太陽電池モジュールの製造方法について説明する。
本発明の太陽電池モジュールは、太陽電池の受光面側に位置する太陽電池表面封止シート(I)と、太陽電池の受光面側に位置する封止材層(II)、太陽電池素子(III)と、太陽電池の非受光面側に位置する封止材層(IV)と、詳述した本発明の太陽電池裏面保護シートを必須の構成層とし、本発明の太陽電池裏面保護シートを構成する耐候性難燃樹脂層(1)が、前記太陽電池表面封止シート(I)から最も遠くに位置するよう、積層することによって、得ることができる。言い換えると、前記非受光面側封止材層(IV)に、本発明の太陽電池裏面保護シートを構成する易接着剤層(3)が接するように、太陽電池裏面封止シートを積層することによって、本発明の太陽電池モジュールを得ることができる。非受光面側封止材層(IV)と太陽電池裏面保護シートとを積層する際、減圧下に両者を接触させ、次いで加熱・加圧下に重ね合わせればよい。易接着剤層(3)が熱硬化性の場合、常圧に戻した後、さらに高温条件下に置いて、易接着剤層(3)の硬化を進行させることもできる。
【実施例】
【0087】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例中、部は重量部を、%は重量%をそれぞれ示す。表1にアクリル系樹脂溶液の物性を示す。
【0088】
<アクリル系樹脂溶液B1>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、メチルメタクリレート40部、n−ブチルメタクリレート28部、2−エチルヘキシルメタクリレート28部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート2部、ペンタメチルビピペリジニルメタクリレート2部、トルエン100部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら80℃まで昇温し、アゾビスイソブチロニトリルを0.15部加えて2時間重合反応を行い、次に、アゾビスイソブチロニトリルを0.07部加えてさらに2時間重合反応を行い、更に0.07部のアゾビスイソブチロニトリルを加えてさらに2時間重合反応を行い、重量平均分子量が73、000、水酸基価が7.9(mgKOH/g)、酸価が0(mgKOH/g)、Tgが37℃、固形分50%のアクリル系樹脂溶液B1を得た。
【0089】
なお、重量平均分子量、ガラス転移温度、酸価、水酸基価は、下記に記述するようにして測定した。
【0090】
<重量平均分子量(Mw)の測定>
Mwの測定はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いた。GPCは溶媒(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーであり、重量平均分子量(Mw)の決定はポリスチレン換算で行った。
【0091】
<ガラス転移温度(Tg)の測定>
ガラス転移温度の測定は、示差走査熱量測定(DSC)により求めた。
アルミニウムパンに試料約10mgを秤量してDSC装置にセットし(リファレンス:試料を入れていない同タイプのアルミニウムパンとした。)、300℃の温度で5分間加熱した後、液体窒素を用いて−120℃まで急冷処理した。その後10℃/分で昇温し、得られたDSCチャートからガラス転移温度(Tg)を算出した(単位:℃)。
なお、Tg測定用の試料は、上記のアクリル系樹脂溶液を150℃で約15分、加熱し、乾固させたものを用いた。
【0092】
<酸価(AV)の測定>
共栓三角フラスコ中に試料(樹脂の溶液:約50%)約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解する。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間保持する。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定する。
酸価は次式により求めた。酸価は樹脂の乾燥状態の数値とした(単位:mgKOH/g)。
酸価(mgKOH/g)={(5.611×a×F)/S}/(不揮発分濃度/100)
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
【0093】
<水酸基価(OHV)の測定>
共栓三角フラスコ中に試料(樹脂の溶液:約50%)約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解する。更にアセチル化剤(無水酢酸25gをピリジンで溶解し、容量100mlとした溶液)を正確に5ml加え、約1時間攪拌した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間持続する。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定する。
水酸基価は次式により求めた。水酸基価は樹脂の乾燥状態の数値とした(単位:mgKOH/g)。
水酸基価(mgKOH/g)=[{(b−a)×F×28.25}/S]/(不揮発分濃度/100)+D
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
b:空実験の0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
D:酸価(mgKOH/g)
【0094】
<アクリル系樹脂溶液B2>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、イソボルニルメタクリレート48部、n−ブチルメタクリレート48部、4−ヒドロキシブチルアクリレート2部、ペンタメチルビピペリジニルメタクリレート2部、トルエン100部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら80℃まで昇温し、アゾビスイソブチロニトリルを0.15部加えて2時間重合反応を行い、次に、アゾビスイソブチロニトリルを0.07部加えてさらに2時間重合反応を行い、更に0.07部のアゾビスイソブチロニトリルを加えてさらに2時間重合反応を行い、重量平均分子量が67、000、水酸基価が8.2(mgKOH/g)、酸価が0(mgKOH/g)、Tgが29℃、固形分50%のアクリル系樹脂溶液B2を得た。
【0095】
<アクリル系樹脂溶液B3>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、メチルメタクリレート19部、n−ブチルメタクリレート77部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート2部、ペンタメチルビピペリジニルメタクリレート2部、トルエン100部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら80℃まで昇温し、アゾビスイソブチロニトリルを0.13部加えて2時間重合反応を行い、次に、アゾビスイソブチロニトリルを0.07部加えてさらに2時間重合反応を行い、更に0.07部のアゾビスイソブチロニトリルを加えてさらに2時間重合反応を行い、重量平均分子量が90、000、水酸基価が8.1(mgKOH/g)、酸価が0(mgKOH/g)、Tgが45℃、固形分50%のアクリル系樹脂溶液B3を得た。
【0096】
<アクリル系樹脂溶液B4>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、メチルメタクリレート43部、n−ブチルメタクリレート52部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート3部、ペンタメチルビピペリジニルメタクリレート(日立化成製、ファンクリルFA−711MM)2部、トルエン100部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら80℃まで昇温し、アゾビスイソブチロニトリルを0.15部加えて2時間重合反応を行い、次に、アゾビスイソブチロニトリルを0.07部加えてさらに2時間重合反応を行い、更に0.07部のアゾビスイソブチロニトリルを加えてさらに2時間重合反応を行い、重量平均分子量が86、000、水酸基価が12.2(mgKOH/g)、酸価が0(mgKOH/g)、Tgが7℃、固形分50%のアクリル系樹脂溶液B4を得た。
【0097】
<アクリル系樹脂溶液B5>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、メチルメタクリレート60部、n−ブチルメタクリレート35部、4−ヒドロキシブチルアクリレート2部、ペンタメチルビピペリジニルメタクリレート2部、メタクリル酸1部、トルエン100部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら80℃まで昇温し、アゾビスイソブチロニトリルを0.15部加えて2時間重合反応を行い、次に、アゾビスイソブチロニトリルを0.07部加えてさらに2時間重合反応を行い、更に0.07部のアゾビスイソブチロニトリルを加えてさらに2時間重合反応を行い、重量平均分子量が75、000、水酸基価が7.9(mgKOH/g)、酸価が8(mgKOH/g)、Tgが61℃、固形分50%のアクリル系樹脂溶液B5を得た。
【0098】
<アクリル系樹脂溶液B6>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、シクロヘキシルメタクリレート53部、n−ブチルメタクリレート41部、4−ヒドロキシブチルアクリレート4部、ペンタメチルビピペリジニルメタクリレート2部、トルエン100部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら80℃まで昇温し、アゾビスイソブチロニトリルを0.18部加えて2時間重合反応を行い、次に、アゾビスイソブチロニトリルを0.07部加えてさらに2時間重合反応を行い、更に0.07部のアゾビスイソブチロニトリルを加えてさらに2時間重合反応を行い、重量平均分子量が25、000、水酸基価が8.0(mgKOH/g)、酸価が0(mgKOH/g)、Tgが41℃、固形分50%のアクリル系樹脂溶液B6を得た。
【0099】
<アクリル系樹脂溶液B7>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、メチルメタクリレート19部、n−ブチルメタクリレート76部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート3部、ペンタメチルビピペリジニルメタクリレート2部、トルエン100部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら80℃まで昇温し、アゾビスイソブチロニトリルを0.10部加えて2時間重合反応を行い、次に、アゾビスイソブチロニトリルを0.07部加えてさらに2時間重合反応を行い、更に0.07部のアゾビスイソブチロニトリルを加えてさらに2時間重合反応を行い、重量平均分子量が124、000、水酸基価が11.9(mgKOH/g)、酸価が0(mgKOH/g)、Tgが40℃、固形分50%のアクリル系樹脂溶液B7を得た。
【0100】
<アクリル系樹脂溶液B8>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、メチルメタクリレート50部、n−ブチルアクリレート46部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート4部、トルエン100部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら80℃まで昇温し、アゾビスイソブチロニトリルを0.15部加えて2時間重合反応を行い、次に、アゾビスイソブチロニトリルを0.07部加えてさらに2時間重合反応を行い、更に0.07部のアゾビスイソブチロニトリルを加えてさらに2時間重合反応を行い、重量平均分子量が55、000、水酸基価が17.2(mgKOH/g)、酸価が0(mgKOH/g)、Tgが19℃、固形分50%のアクリル系樹脂溶液B8を得た。
【0101】
<アクリル系樹脂溶液B9>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、シクロヘキシルメタクリレート53部、n−ブチルメタクリレート19部、2−エチルヘキシルメタクリレート20部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート6部、ペンタメチルビピペリジニルメタクリレート2部、トルエン100部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら80℃まで昇温し、アゾビスイソブチロニトリルを0.15部加えて2時間重合反応を行い、次に、アゾビスイソブチロニトリルを0.07部加えてさらに2時間重合反応を行い、更に0.07部のアゾビスイソブチロニトリルを加えてさらに2時間重合反応を行い、重量平均分子量が72、000、水酸基価が25.3(mgKOH/g)、酸価が0(mgKOH/g)、Tgが18℃、固形分50%のアクリル系樹脂溶液B9を得た。
【0102】
<アクリル系樹脂溶液B10>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、メチルメタクリレート32部、n−ブチルアクリレート32部、2−エチルヘキシルメタクリレート32部、4−ヒドロキシブチルアクリレート2部、ペンタメチルビピペリジニルメタクリレート2部、トルエン100部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら80℃まで昇温し、アゾビスイソブチロニトリルを0.15部加えて2時間重合反応を行い、次に、アゾビスイソブチロニトリルを0.07部加えてさらに2時間重合反応を行い、更に0.07部のアゾビスイソブチロニトリルを加えてさらに2時間重合反応を行い、重量平均分子量が66、000、水酸基価が7.9(mgKOH/g)、酸価が0(mgKOH/g)、Tgが−7℃、固形分50%のアクリル系樹脂溶液B10を得た。
【0103】
<アクリル系樹脂溶液B11>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、メチルメタクリレート36部、n−ブチルアクリレート30部、2−エチルヘキシルメタクリレート30部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート2部、ペンタメチルビピペリジニルメタクリレート2部、トルエン100部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら80℃まで昇温し、アゾビスイソブチロニトリルを0.15部加えて2時間重合反応を行い、次に、アゾビスイソブチロニトリルを0.07部加えてさらに2時間重合反応を行い、更に0.07部のアゾビスイソブチロニトリルを加えてさらに2時間重合反応を行い、重量平均分子量が84、000、水酸基価が8.0(mgKOH/g)、酸価が0(mgKOH/g)、Tgが−20℃、固形分50%のアクリル系樹脂溶液B11を得た。
<アクリル系樹脂溶液B12>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、メチルメタクリレート62部、n−ブチルメタクリレート34部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート2部、ペンタメチルビピペリジニルメタクリレート2部、トルエン100部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら80℃まで昇温し、アゾビスイソブチロニトリルを0.15部加えて2時間重合反応を行い、次に、アゾビスイソブチロニトリルを0.07部加えてさらに2時間重合反応を行い、更に0.07部のアゾビスイソブチロニトリルを加えてさらに2時間重合反応を行い、重量平均分子量が80、000、水酸基価が7.8(mgKOH/g)、酸価が0(mgKOH/g)、Tgが79℃、固形分50%のアクリル系樹脂溶液B12を得た。
【0104】
<アクリル系樹脂溶液B13>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、メチルメタクリレート80部、n−ブチルメタクリレート16部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート2部、ペンタメチルビピペリジニルメタクリレート2部、トルエン100部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら80℃まで昇温し、アゾビスイソブチロニトリルを0.15部加えて2時間重合反応を行い、次に、アゾビスイソブチロニトリルを0.07部加えてさらに2時間重合反応を行い、更に0.07部のアゾビスイソブチロニトリルを加えてさらに2時間重合反応を行い、重量平均分子量が84、000、水酸基価が7.8(mgKOH/g)、酸価が0(mgKOH/g)、Tgが93℃、固形分50%のアクリル系樹脂溶液B13を得た。
【0105】
<アクリル系樹脂溶液B14>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、メチルメタクリレート40部、n−ブチルメタクリレート30部、2−エチルヘキシルメタクリレート28部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート2部、トルエン100部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら80℃まで昇温し、アゾビスイソブチロニトリルを0.23部加えて2時間重合反応を行い、次に、アゾビスイソブチロニトリルを0.07部加えてさらに2時間重合反応を行い、更に0.07部のアゾビスイソブチロニトリルを加えてさらに2時間重合反応を行い、重量平均分子量が12、000、水酸基価が7.9(mgKOH/g)、酸価が0(mgKOH/g)、Tgが37℃、固形分50%のアクリル系樹脂溶液B14を得た。
【0106】
<アクリル系樹脂溶液B15>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、メチルメタクリレート40部、n−ブチルメタクリレート30部、2−エチルヘキシルメタクリレート28部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート2部、トルエン100部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら80℃まで昇温し、アゾビスイソブチロニトリルを0.05部加えて2時間重合反応を行い、次に、アゾビスイソブチロニトリルを0.05部加えてさらに2時間重合反応を行い、更に0.05部のアゾビスイソブチロニトリルを加えてさらに2時間重合反応を行い、重量平均分子量が165、000、水酸基価が7.9(mgKOH/g)、酸価が0(mgKOH/g)、Tgが37℃、固形分50%のアクリル系樹脂溶液B15を得た。
【0107】
<アクリル系樹脂溶液B16>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、メチルメタクリレート20部、n−ブチルメタクリレート80部、トルエン100部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら80℃まで昇温し、アゾビスイソブチロニトリルを0.15部加えて2時間重合反応を行い、次に、アゾビスイソブチロニトリルを0.07部加えてさらに2時間重合反応を行い、更に0.07部のアゾビスイソブチロニトリルを加えてさらに2時間重合反応を行い、重量平均分子量が80、000、水酸基価が0(mgKOH/g)、酸価が0(mgKOH/g)、Tgが34℃、固形分50%のアクリル系樹脂溶液B16を得た。
【0108】
<アクリル系樹脂溶液B17>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、メチルメタクリレート22部、n−ブチルメタクリレート77.5部、4−ヒドロキシブチルアクリレート0.5部、トルエン100部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら80℃まで昇温し、アゾビスイソブチロニトリルを0.15部加えて2時間重合反応を行い、次に、アゾビスイソブチロニトリルを0.07部加えてさらに2時間重合反応を行い、更に0.07部のアゾビスイソブチロニトリルを加えてさらに2時間重合反応を行い、重量平均分子量が73、000、水酸基価が1.9(mgKOH/g)、酸価が0(mgKOH/g)、Tgが35℃、固形分50%のアクリル系樹脂溶液B17を得た。
【0109】
<アクリル系樹脂溶液B18>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、メチルメタクリレート32部、n−ブチルメタクリレート46部、2−エチルヘキシルメタクリレート10部2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部、ペンタメチルビピペリジニルメタクリレート2部、トルエン100部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら80℃まで昇温し、アゾビスイソブチロニトリルを0.15部加えて2時間重合反応を行い、次に、アゾビスイソブチロニトリルを0.07部加えてさらに2時間重合反応を行い、更に0.07部のアゾビスイソブチロニトリルを加えてさらに2時間重合反応を行い、重量平均分子量が71、000、水酸基価が39.4(mgKOH/g)、酸価が0(mgKOH/g)、Tgが28℃、固形分50%のアクリル系樹脂溶液B18を得た。
【0110】
<アクリル系樹脂溶液B19>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、メチルメタクリレート22部、n−ブチルメタクリレート46部、2−エチルヘキシルメタクリレート10部2−ヒドロキシエチルメタクリレート20部、ペンタメチルビピペリジニルメタクリレート2部、トルエン100部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら80℃まで昇温し、アゾビスイソブチロニトリルを0.15部加えて2時間重合反応を行い、次に、アゾビスイソブチロニトリルを0.07部加えてさらに2時間重合反応を行い、更に0.07部のアゾビスイソブチロニトリルを加えてさらに2時間重合反応を行い、重量平均分子量が65、000、水酸基価が80.2(mgKOH/g)、酸価が0(mgKOH/g)、Tgが33℃、固形分50%のアクリル系樹脂溶液B19を得た。
【0111】
<架橋剤溶液>
ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体を酢酸エチルで希釈して、固形分70%の樹脂溶液として架橋剤溶液を得た。
【0112】
<耐候性難燃樹脂溶液(1〜36)の調整>
リン系難燃剤(A)、アクリル系樹脂(B)、架橋剤、白色顔料を表2、3に示す固形分組成比で混合し、さらにトルエン/酢酸エチルの50/50混合溶剤に固形分50%になるように溶解させた。さらに、ペイントシェーカーで分散した後、耐候性難燃樹脂溶液(1〜36)を得た。
【0113】
また、表中、各記号は以下の通りである。
リン系難燃剤A1:Exolit OP930(トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、クラリアント製)
リン系難燃剤A2:Exolit OP1230(トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、クラリアント製)
リン系難燃剤A3:Exolit OP1312(トリスジエチルホスフィン酸アルミニウムとリン酸メラミンの混合物、クラリアント製)
リン系難燃剤A4:SPB−100(フェノキシシクロトリホスファゼン、大塚化学製)
リン系難燃剤A5:SPH−100(4−ヒドロキシフェノキシシクロトリホスファゼン、大塚化学製)
リン系難燃剤A6:FP−300(4−シアノフェノキシシクロトリホスファゼン、伏見製薬所)
リン系難燃剤A7:ホスメル100(リン酸メラミン、日立化成製)
リン系難燃剤A8:ホスメル200(リン酸メラミン二量体、日立化成製)
リン系難燃剤A9:ポリリン酸アンモニウム
リン系難燃剤A10:トリフェニルホスフェート(大八化学工業製)
非リン系難燃剤A11:STABIACE MC−55(メラミンシアヌレート、堺化学工業製)
非リン系難燃剤A12:水酸化アルミニウム
ハロゲン系難燃剤A13:ファイアカット FCP-83D(デカブロモジフェニルオキサイド、鈴裕化学製)
タイペークCR−97:石原産業製 白色顔料用酸化チタン
【0114】
<耐候性難燃フィルム(1〜36)の調整>
上記耐候性難燃樹脂溶液(1〜36)をアプリケーターによって、剥離処理したポリエチレンテレフタレート(以下、セパPETという)に塗布し、溶剤を揮散させ、30μmの塗膜を作成し、セパPETから剥がして耐候性難燃フィルムを作成した。
【0115】
<燃焼性測定:UL試験>
厚さ30μmの耐候性難燃フィルム(1〜36)をUL94に定められたHB規格またはV規格により、評価した。
<<HB規格>> 短冊状の試験片を水平に置いて、一方の端部にバーナー炎をあてて、燃焼させ、その燃焼が進む速度で合否判定する試験である。厚さ30μmの耐候性難燃フィルムの場合、燃焼速度が40mm/分以下 or 75mm/分 以下 を、HB試験「合格」とする。
<<V規格>> 5本の試験片を用いる。垂直に支持した短冊状の試験片の下端にバーナー炎をあてて、10秒間保ち、その後バーナー炎を試験片から離し、炎が消えれば直ちにバーナー炎を更に10秒間あてたのちバーナー炎を離す。
1回目と2回目の接炎終了後の有炎燃焼持続時間、2回目の接炎終了後の有炎 燃焼持続時間及び無炎燃焼持続時間の合計、5本の試験片の有炎燃焼時間の合計、並びに燃焼滴下物 (ドリップ)の有無で判定する。具体的には、
V−0:燃焼落下物(ドリップ)がなく、1回目、2回目ともに接炎終了後の有炎燃焼持続時間が10秒以内であり、更に2回目の有炎燃焼持続時間と無炎燃焼時間の合計が30秒以内。更に5本の試験片の有炎燃焼時間の合計が50秒以内。
V−1:燃焼落下物(ドリップ)がなく、1回目、2回目ともに接炎終了後の有炎燃焼持続時間が30秒以内であり、更に2回目の有炎燃焼持続時間と無炎燃焼時間の合計が60秒以内。更に5本の試験片の有炎燃焼時間の合計が250秒以内。
V−2:燃焼落下物(ドリップ)があることを除き、V−1と同様。
なお、HB規格とV規格とは異なる規格であるので、直接対比はできないが、V規格の方がHB規格に比して厳しい規格であり、HB規格で合格しても、V規格のV−2レベルに満たないこともある。従って、難燃性の良し悪しの序列は以下のように、左に示すものほど良好となる。
>V−0>V−1>V−2>HB合格>HB不合格
その結果を表4に示す
【0116】
<太陽電池裏面保護シート1の作成>
ポリエステルフィルム(帝人(株)製、テトロンS、厚み188μm)の両面にコロナ処理し、一方の面にポリエステル接着剤「ダイナレオVA−3020/HD−701」(東洋インキSCホールディングス(株)製、配合比100/7、以下同)をグラビアコーターによって塗布し、溶剤を乾燥させ、塗布量:10g/平方メートルの層間接着剤層を設け、該層間接着剤層に、下記の蒸着PET(三菱樹脂(株)製、テックバリアLX、厚み12μm)の蒸着面を重ね合わせた。その後、50℃、4日間、エージング処理し、前記層間接着剤層を硬化させ、ポリエステルフィルム−蒸着PET積層体を作成した。
なお、用いた蒸着PETは、シリカを真空蒸着で作成した蒸着PETである。
【0117】
次いで、ポリエステルフィルム−蒸着PET積層体のポリエステルフィルム面に、表2に記載される耐候性難燃樹脂溶液1を塗布し、溶剤を乾燥させ、膜厚:15μmの耐候性難燃樹脂層を設けた。その後、40℃、3日間、エージング処理し、前記耐候性難燃樹脂層を硬化させ、耐候性難燃樹脂層−ポリエステルフィルム−蒸着PET積層体を作成した。
【0118】
最後に、耐候性難燃樹脂層−ポリエステルフィルム−蒸着PET積層体の蒸着PET面にポリエステル接着剤「ダイナレオVA−3020/HD−701」をグラビアコーターによって塗布し、溶剤を乾燥させ、塗布量:5g/平方メートル(膜厚:5μm)の易接着剤層を設け、太陽電池裏面保護シート1を作成した。
【0119】
<太陽電池裏面保護シート2〜36の作成>
太陽電池裏面保護シート1と同様にして、表2,3に示す耐候性難燃樹脂溶液2〜36を用いて、太陽電池裏面保護シート2〜36を作成した。
【0120】
<太陽電池裏面保護シート37の作成>
耐候性難燃樹脂溶液1を用いて、膜厚:30μmの耐候性難燃樹脂層を設けたことを除き、太陽電池裏面保護シート1と同様の作成方法で、太陽電池裏面保護シート37を作成した。
【0121】
<太陽電池裏面保護シート38の作成>
耐候性難燃樹脂溶液1を用いて、膜厚:5μmの耐候性難燃樹脂層を設けたことを除き、太陽電池裏面保護シート1と同様の作成方法で、太陽電池裏面保護シート38を作成した。
【0122】
<太陽電池裏面保護シート39の作成>
耐候性難燃樹脂層を設けないことを除き、太陽電池裏面保護シート1と同様の作成方法で、ポリエステルフィルム−蒸着PET−易接着剤層の層構成となる太陽電池裏面保護シート39を作成した。
【0123】
[実施例1]
太陽電池裏面保護シート1を用い、後述する方法でクロスカット密着性、燃焼性、耐湿熱性、耐候性の評価を行った。
【0124】
<クロスカット密着性測定>
クロスカット密着性は、太陽電池裏面保護シート1の耐候性難燃樹脂層にカッターでクロス状に傷をつけ、セロハンテープ剥離試験を行い、セロハンテープ剥離後の残存塗膜の様子を目視で観察して、耐候性難燃樹脂層のポリエステルフィルムに対する密着性を評価した。
○:傷の周辺部分が剥がれない。
△:傷の周辺部分にやや剥離の傾向が見られる。
×:傷の周辺部分に明確な剥離が見られる。
【0125】
<燃焼性測定:ラジアントパネル(RP)試験>
燃焼性は、ASTM−E162に準拠し、火炎伝播試験(ラジアントパネル試験)を行い、燃焼速度から炎拡散係数、燃焼温度から熱放出係数を算出し、その積を火炎伝播指数とした。
火炎伝播試験とは、600℃のラジアントパネル存在下で、太陽電池裏面保護シートに着火させ、太陽電池裏面保護シートの燃焼速度から炎拡散係数を、燃焼温度から熱放出係数を求めて、火炎伝播指数を算出する評価方法である。
UL1703の規格値は100以下であり、100を超えると不合格となる。
◎:50未満
○:50以上〜100未満
×:100以上〜150未満
××:150以上
【0126】
<耐湿熱性試験>
耐湿熱性は、プレッシャークッカー試験機を用いて、温度105℃、相対湿度100%RH、2気圧の条件下で、96時間、192時間、288時間放置後のクロスカット密着性、黄変度、燃焼性(RP試験)を評価した。
クロスカット密着性は、前記と同様の方法、基準にて評価した。
黄変度は、JIS−Z8722記載の方法に従って、色彩色差計CR−300(コニカミノルタ製)を用いて、太陽電池裏面保護シート1の耐候性難燃樹脂層側から測定し、Lab表色系で表したときのΔb値で評価した。
○:Δb値2未満
△:Δb値2以上4未満
×:Δb値4以上
××:Δb値10以上
燃焼性(RP試験)は、前記と同様の方法、基準にて評価した。
【0127】
<耐候性試験>
耐候性は、アイスーパーUVテスター(岩崎電気製)を用いて、以下の条件にて、10サイクル(即ち、120h後)のクロスカット密着性、黄変度、膜減りにて評価した。
(耐候性試験条件)
1)63℃ 70% 90mW/cm2 照射4h
2)70℃ 90% 静置4h
3)シャワー10秒→結露4h→シャワー10秒
4)上記1)、2)、3)を1サイクルとして10サイクル繰り返す(1サイクル、12時間。10サイクルで計120時間。)
[膜減り] 各試験片の耐候性難燃樹脂層の表面の一部を耐候テープで保護し、10サイクル後の前記保護部分と未保護の部分の段差を測定し、以下の基準にて評価した。
○:膜減りが1μm未満
△:膜減りが1μm以上5μm未満
×:膜減りが5μm以上10μm未満
××:膜減りが10μm以上
【0128】
[実施例2〜18]、[比較例1〜21]
実施例1と同様にして、太陽電池裏面保護シート2〜39を用い、クロスカット密着性、燃焼性、耐湿熱性、耐候性の評価を行った。以上の結果を表5、表6に示す。
【0129】
【表1】

【0130】
【表2】

【0131】
【表3】

【0132】
【表4】

【0133】
【表5】

【0134】
【表6】

【0135】
表5、表6に示されるように、実施例1〜18(耐候性難燃樹脂溶液1〜17および37)は、火炎伝播試験による燃焼性試験でも優れた難燃性を示す。また、耐湿熱性試験や耐候性試験の前後において優れた密着性を示し、耐湿熱性試験や耐候性試験を経ても黄変しにくく、耐候性試験を経ても塗膜やフィルムの厚みも減りにくい。さらに、湿熱後の火炎伝播試験でも良好な値を示すことができる。即ち、実施例1〜18の太陽電池用裏面保護シートは、申し分のない太陽電池用裏面保護シートである。
特に、ホスフィン酸アルミニウム又はホスファゼンを用いた実施例1−11は、耐候性難燃樹脂層(1)の疎水性が高まるため、リン系難燃剤(A)が全く添加されていない比較例1〜3よりも、耐湿熱性において顕著な向上が見られる。
なお、表2に示されるように、実施例1〜11は、UL−94に定められた難燃性試験でも優れた結果を示す。
【0136】
一方、比較例1〜3はリン系難燃剤を有していないので難燃性が悪く、火炎伝播試験の規格を満たさない。
【0137】
また、比較例4、6(耐候性難燃樹脂溶液21、23を使用)はリン系難燃剤としてポリリン酸アンモニウムを、比較例5(耐候性難燃樹脂溶液22を使用)はリン系難燃剤としてトリフェニルホスフェートを、それぞれ用いているため、初期段階の火炎伝播試験による燃焼性評価では、一定の難燃性の効果は見られる。
しかし、湿熱試験において大きな劣化が見られる。すなわち、湿熱試験の際ポリリン酸アンモニウムやトリフェニルホスフェートが加水分解して発生した強酸であるリン酸が、耐候性難燃樹脂層(1)やプラスチックフィルム(2)を劣化、脆化させるからである。
故に脆化した太陽電池裏面保護シートの難燃性も低下するため、結果として火炎伝播試験の規格を満たさない。
【0138】
また、比較例7、8(耐候性難燃樹脂溶液24、25を使用)は、難燃剤としてメラミンシアヌレートまたは水酸化アルミニウムを用いており、耐候性、耐湿熱性についてはそれほど大きな問題はない。
しかし、リン系難燃剤を形成して難燃性を発現するのとは異なり、メラミンシアヌレート及び水酸化アルミニウムは炭化被膜を形成しないので、難燃効果が不十分である。なお、難燃性を向上すべくこれら難燃剤の配合量を増やすと耐候性樹脂(1)が相対的に少なくなり、耐候性難燃樹脂層(1)自体の作成が困難になる他、耐候性、耐湿熱性などに大きな影響を及ぼすことが予測できる。
【0139】
また、比較例9(耐候性難燃樹脂溶液26を使用)は、難燃剤としてハロゲン化難燃剤であるデカブロモジフェニルエーテルを用いており、難燃性ついては大きな問題はない。しかし、耐候試験や湿熱試験を経ると著しく黄変するので、太陽電池モジュールの部材として、常に光や湿熱に曝される用途には不向きである。
【0140】
また、比較例10、11(耐候性難燃樹脂溶液27、28を使用)はTgが低すぎて、塗膜が脆弱でありかつ耐熱性が不十分であるため、難燃性が劣り、耐候性試験を経ると膜厚が減少する。
比較例12、13(耐候性難燃樹脂溶液29、30を使用)はTgが高すぎるので、湿熱試験を経ると密着性、難燃性が低下する。
比較例14(耐候性難燃樹脂溶液31を使用)は分子量が低すぎて、膜硬度が十分でなく、耐湿熱性や耐候性において十分でなく、比較例15(耐候性難燃樹脂溶液32を使用)は分子量が高すぎてプラスチックフィルムとの濡れが悪く、初期から密着性に劣る。
比較例16,17(耐候性難燃樹脂溶液33、34を使用)は水酸基を有していない、または水酸基が少ないので、硬化が十分に進まず、湿熱試験後、耐候性試験後はもちろん、前記試験前の初期の状態においてすら、密着性をはじめ全ての性能が著しく劣る。
比較例18,19(耐候性難燃樹脂溶液35、36を使用)は水酸基価が多すぎて、硬化収縮が大きく、湿熱試験を経ると密着性、難燃性が著しく低下する。
耐候性難燃樹脂層のプラスチックフィルムに対する密着性が悪くなると、太陽電池裏面保護シートの難燃性を保つことはできないため、リン系難燃剤(A)の種類や添加量だけでなく、アクリル樹脂(B)のTg、分子量、水酸基価が本発明の範囲であることは極めて重要である。
【0141】
比較例20は、実施例1と同様に耐候性難燃樹脂溶液1を使用するが、耐候性難燃樹脂層(1)の膜厚tが、太陽電池裏面保護シートの総膜厚と比較して薄すぎるため、難燃の効果が出ない。
【0142】
比較例21(耐候性難燃樹脂フィルム39を使用)は、耐候性難燃樹脂層(1)を有していないため、プラスチックフィルム(2)が表面に露出し、耐候性が著しく劣る他、燃焼性も悪い。
【0143】
なお、実施例13は水酸基価がやや高めであるため、湿熱後に基材への密着性が低下する傾向にあり、難燃性がやや低下する傾向にある。
また、実施例15は、総リン濃度が少ない為、火炎伝播試験での難燃性がやや劣り、実施例16は、リン系難燃剤(A)の添加量が多く、相対的にアクリル系樹脂(B)の総量が減少するため、耐候性や耐湿熱性に低下が見られる。
【符号の説明】
【0144】
(I):太陽電池の受光面側に位置する太陽電池表面封止シート
(II):太陽電池の受光面側に位置する封止材層
(III):太陽電池セル
(IV):太陽電池の非受光面側に位置する封止剤層
(V):太陽電池裏面保護シート
(1):耐候性難燃樹脂層
(2):プラスチックフィルム
(3):接着剤層
(4):水蒸気バリア層
(5):層間接着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜厚t(μm)の耐候性難燃樹脂層(1)、プラスチックフィルム(2)及び易接着剤層(3)を具備してなる太陽電池裏面保護シートであって、
前記太陽電池裏面保護シートの一方の面を前記耐候性難燃樹脂層(1)が構成し、前記太陽電池裏面保護シートの他方の面を前記易接着剤層(3)が構成し、
耐候性難燃樹脂層(1)が、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸化合物、及び(ポリ)リン酸メラミンからなる群より選ばれるリン系難燃剤(A)と、アクリル系樹脂(B)とを含有し、
前記アクリル系樹脂(B)のガラス転移温度が0〜70℃、重量平均分子量が15,000〜150,000、水酸基価が2〜30(mgKOH/g)であり、
耐候性難燃樹脂層(1)の膜厚tが、太陽電池裏面保護シートの総膜厚の2.5〜20%であることを特徴する太陽電池裏面保護シート。
【請求項2】
アクリル系樹脂(B)の水酸基価が5〜20(mgKOH/g)である、請求項1記載の太陽電池裏面保護シート。
【請求項3】
耐候性難燃樹脂層(1)がリン系難燃剤(A)を20〜50重量%含むことを特徴とする請求項1または2記載の太陽電池裏面保護シート。
【請求項4】
耐候性難燃樹脂層(1)中のリン系難燃剤(A)由来の総リン濃度が3〜10重量%であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の太陽電池裏面保護シート。
【請求項5】
太陽電池の受光面側に位置する太陽電池表面封止シート(I)、太陽電池の受光面側に位置する封止材層(II)、太陽電池セル(III)、太陽電池の非受光面側に位置する封止剤層(IV)、及び前記非受光面側封止剤層(IV)に接してなる、請求項1乃至3いずれか記載の太陽電池裏面保護シート(V)を具備してなる太陽電池モジュールであって、
前記太陽電池裏面保護シートを構成する耐候性難燃樹脂層(1)が、前記太陽電池表面封止シート(I)から最も遠くに位置する、ことを特徴とする太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−51394(P2013−51394A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−96934(P2012−96934)
【出願日】平成24年4月20日(2012.4.20)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】