説明

太陽電池裏面保護フィルム

【課題】EVAとの接着性が良好で優れた耐変色性を有する太陽電池裏面保護フィルムを提供する。
【解決手段】基材フィルムおよび少なくともその片面に設けられたシール層から成り、基材フィルムは酸化チタン粒子3〜30重量%を含有する二軸延伸ポリエステルフィルムであり、シール層は融点170〜230℃のポリエステルからなることを特徴とする、太陽電池裏面保護フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池裏面保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光発電システムは、クリーンエネルギーを利用する発電手段の一つとして、普及が進んでいる。太陽電池の構造は、一般的には、受光側のガラス基板と、裏面側の保護膜との間に、複数の板状太陽電池素子を挟み、内部の隙間に封止樹脂を充填した構造となっている。封止樹脂としては、透明性が高いという理由でエチレンビニルアセテート(以下、「EVA」という)が用いられる。裏面側の保護膜には、ポリエステルフィルムが多く用いられる。しかし、ポリエステルフィルム、特に二軸延伸し、高度に配向結晶化したポリエステルフィルムは、その表面が不活性であり、EVAとの接着性は極めて悪い。このようなポリエステルフィルムとEVAとの接着性を改善するために、特開2006−175764号公報には、フィルム製膜時にポリオレフィン系樹脂からなる易接着層を塗布することが提案されている。また、特開2001−148497号公報には、EVAにヒートシール層を有するポリエステル樹脂層を介してフッ素フィルムとの接着性を改善することが提案されている。しかし、このような保護膜はEVAとの接着性が必ずしも十分でなく、経時での耐変色性など十分な長期耐久性を示すものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−175764号公報
【特許文献2】特開2001−148497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解消し、EVAとの接着性が良好で優れた耐変色性を有する太陽電池裏面保護フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために以下の構成を採用する。
すなわち本発明は、基材フィルムおよび少なくともその片面に設けられたシール層から成り、基材フィルムは酸化チタン粒子3〜30重量%を含有する二軸延伸ポリエステルフィルムであり、シール層は融点170〜230℃のポリエステルからなることを特徴とする、太陽電池裏面保護フィルムである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、EVAとの接着性が良好で優れた耐変色性を有する太陽電池裏面保護フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の太陽電池裏面保護フィルムは、基材フィルムおよび少なくともその片面に設けられたシール層から成る。
【0008】
[基材フィルム]
基材フィルムとしては二軸延伸ポリエステルフィルムを用いる。二軸延伸ポリエステルフィルムのポリエステルとしては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、2,6―ナフタレンジカルボン酸、4,4′―ジフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸成分と、例えばエチレングリコール、1,4―ブタンジオール、1,4―シクロヘキサンジメタノール、1,6―ヘキサンジオール等のグリコール成分とから構成される芳香族ポリエステルが好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン―2,6―ナフタレンジカルボキシレートがさらに好ましい。
【0009】
ポリエステルは共重合ポリエステルであってもよい。ポリエステルとしてポリエチレンテレフタレートの共重合体を用いる場合、適した共重合成分の共重合量は、例えば1〜14モル%である。共重合成分としては、例えばイソフタル酸、2,6―ナフタレンジカルボン酸、4,4′―ジフェニルジカルボン酸といった芳香族ジカルボン酸成分、1,4―ブタンジオール、1,4―シクロヘキサンジメタノール、1,6―ヘキサンジオールといったジオール成分を例示することができる。
【0010】
ポリエステルの固有粘度は、好ましくは0.55dl/g以上、さらに好ましくは0.60〜1.00dl/gである。固有粘度が0.55dl/g未満では、フィルムがデラミネーションを起こしやすく好ましくない。1.00dl/gより高いと溶融粘度が高いため溶融押出しが困難になり、また重合時間が長く不経済であり好ましくない。ここで、固有粘度は、試料0.6gをオルソクロロフェノール50ml中に溶解しオストワルド式粘度管を用いて35℃の温度条件で測定した溶液粘度から算出した数値である。
【0011】
基材フィルムには、製膜時のフィルムの巻取り性や、太陽電池用裏面保護膜加工工程におけるフィルムの搬送性等を良くするため、必要に応じて滑剤としての有機または無機の微粒子を含有させてもよい。かかる微粒子としては、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、カオリン、酸化珪素、酸化亜鉛、架橋アクリル樹脂、架橋ポリスチレン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、架橋シリコーン樹脂の粒子を例示することができる。
基材フィルムは、太陽電池裏面保護フィルムとしての意匠性の観点から、白色や黒色、また他の色に着色してもよい。
【0012】
[酸化チタン粒子]
本発明における基材フィルムの二軸延伸ポリエステルフィルムは、酸化チタン粒子を3〜30重量%含有する。この範囲で含有することにより、太陽電池の長年にわたる使用での経時的な変化の少ない、優れた耐変色性が得られる。酸化チタン粒子が3重量%未満であると耐変色性の効果が得られず、30重量%を超えるとフィルムの耐久性の面で脆化し易く、また粒子の凝集が起こるため均一なフィルムを得ることができない。
【0013】
本発明における酸化チタン粒子の平均粒径は、好ましくは0.25〜5.0μm、さらに好ましくは0.28〜5.0μm、特に好ましくは0.30〜5.0μmである。平均粒径が0.25μm未満であると分散性が悪くなり凝集が起こる可能性があり好ましくない。他方、平均粒径が5.0μmを超えるとフィルムの延伸性が悪くなり好ましくない。
【0014】
二酸化チタンの結晶形態にはルチルとアナターゼ型が存在する。光線を長時間ポリエステルフィルムに照射した後の黄変が少なく色差の変化を抑制する点でルチル型が優れており、本発明では酸化チタン粒子としてルチル型酸化チタン粒子を用いることが特に好ましい。
【0015】
[シール層]
本発明におけるシール層は、融点170〜230℃のポリエステルからなる。シール層の融点が230℃を超えるとフィルム製膜時に熱固定する温度よりも高くなりシール層の結晶化が進み、シール強度が低下する。他方、融点が170℃未満であるとフィルムの耐熱性が不十分となる。
【0016】
シール層のポリエステルとしては、芳香族二塩基酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体とから合成される線状飽和ポリエステルを用いる。かかるポリエステルの具体例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレン−2,6−ナフタレートを例示することがでるが、これらのポリエステルの共重合体を用いることが好ましい。共重合体を用いることにより、構造の規則性が少なくなり、結晶性が低くなり、シール強度が向上され好ましい。
【0017】
好ましい共重合ポリエステルは、全ジカルボン酸成分あたり好ましくは10〜50モル%、さらに好ましくは12〜32モル%の共重合成分を含有してなる共重合ポリエステルである。この範囲で共重合成分を含有する共重合ポリエステルを用いることで、ポリマーの構造上の規則性を適切に崩し、結晶性を低くすることができ、高いシール強度を得ることができるとともに、脆くないフィルムを得ることができる。
【0018】
例えば、共重合ポリエステルとして、共重合ポリエチレンテレフタレートを用いる場合、共重合成分のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸の脂環族ジカルボン酸を例示することができ、またジオール成分としては1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオール、ビスフェノールA等の芳香族ジオールを例示することができる。これらは単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。共重合成分としてはイソフタル酸が好ましい。
【0019】
シール層のポリエステルの数平均分子量は、好ましくは15000以上である。数平均分子量が15000未満であるとシール層の凝集力が低くなり十分な接着性が得られない。数平均分子量の上限は、重合時の生産性の観点から高々30000である。
【0020】
シール層の厚みは、好ましくは3〜75μm、さらに好ましくは5〜30μmである。3μm未満であるとシール強度が低下して好ましくない。他方、75μmを超えるとシール層の厚み割合が高くなりフィルムの強度が低くなり好ましくない。シール層の厚み割合は、太陽電池裏面保護フィルム全体厚みの30%以下であることが好ましい。この範囲の厚み割合であることで、フィルムの強度を高く維持することができて好ましい。
【0021】
シール層には、滑剤粒子を含有しないことが、シール強度の観点から好ましい。シール強度以外の性能を向上させるためには、各種添加剤(例えば滑剤、紫外線吸収剤、安定剤、帯電防止剤、染料、顔料、および難燃剤)を含有させてもよい。
【0022】
[太陽電池裏面保護フィルム]
シール層を含めた太陽電池裏面保護フィルムの厚みは、好ましくは10〜250μm、さらに好ましくは15〜100μmである。この範囲の厚みであることで、フィルムの強度を維持し、取り扱いの容易な太陽電池裏面保護フィルムを得ることができる。
【0023】
本発明の太陽電池裏面保護フィルムは、シール層のうえにEVAシートを貼り合せた太陽電池裏面保護積層フィルムとして用いることが好ましい。この場合、両者を貼り合せる際の温度は、好ましくは80〜200℃、さらに好ましくは120〜180℃である。この範囲の温度で貼り合せることで高いシール強度を備えながらフィルムにシワのない外観に優れたフィルムを得ることができる。
【0024】
太陽電池素子として薄膜シリコンを用いる場合、水蒸気バリア性を向上させるために、EVAシートを貼り合せるのとは反対側の面に、アルミニウム箔を積層した太陽電池裏面保護積層体とすることが好ましい。この場合、太陽電池裏面保護積層体の構成は、太陽電池素子側より、「EVA/両側にシール層を備える本発明の太陽電池裏面保護フィルム/アルミニウム箔」となる。
【0025】
また、シール層を備える本発明の太陽電池裏面保護フィルムのシール層の上に、アルミニウム箔を積層し、その上にさらにシール層を介して両面にシール層を備えるポリエステルフィルムを積層して、太陽電池裏面保護積層体としてもよい。この場合、太陽電池裏面保護積層体の構成は、太陽電池素子側より、「EVA/両面にシール層を備えるポリエステルフィルム/アルミニウム箔/シール層を備える本発明の太陽電池裏面保護フィルム」の構成となる。この場合、意匠性の観点から、両面にシール層を備えるポリエステルフィルムのポリエステルフィルム、シール層またはこれらの両方に顔料を配合して例えば黒色に着色してもよい。顔料としては、例えばカーボンブラックを用いることができる。
【0026】
[製造方法]
基材フィルムの二軸延伸ポリエステルフィルムとして、市販のものを用いることもできるが、例えば下記の方法で製造してもよい。
基材フィルムを製造する場合、まず、未延伸ポリエステルフィルムを溶融製膜により製造する。溶融製膜温度としては、ポリエステルの流動開始温度(非晶性樹脂ではガラス転移温度、結晶性樹脂では融点)以上320℃以下が好ましい。温度が流動開始温度未満であると溶融成形が困難になるため好ましくなく、他方320℃を超えるとポリエステルの熱劣化が起きる恐れがあり好ましくない。次に未延伸ポリエステルフィルムを延伸する。延伸方法としては、例えば、一軸または二軸方向に逐次または同時に延伸する方法を用いることができる。延伸温度は、ポリエステルのガラス転移温度以上ガラス転移温度+90℃以下が好ましく、ガラス転移温度以上ガラス転移温度+70℃以下がさらに好ましく、ガラス転移温度以上ガラス転移温度+60℃以下が特に好ましい。延伸温度がこれより低くても高くても均一なフィルムを製造することが困難であり好ましくない。また、延伸倍率は、面倍率として1.5〜100倍が好ましい。なお、延伸倍率は(延伸後のフィルムの面積)/(延伸前のフィルムの面積)で表わされる。この延伸倍率で延伸することでポリマーが配向され、より高弾性化するため好ましい。得られた延伸フィルムは、熱処理することが好ましい。熱処理の温度は、ポリエステルのガラス転移温度以上融点以下が好ましく、例えばポリエチレンテレフタレートを用いる場合、好ましい条件としては、延伸温度は80〜150℃、延伸倍率は縦方向3〜5倍、横方向3〜5倍である。熱固定する場合例えば180〜250℃で2〜60秒間熱固定する。
【0027】
シール層に用いるポリエステルは、公知の方法で製造することができる。例えば、テレフタル酸をはじめとするジカルボン酸、エチレングリコール、必要に応じて、さらに共重合成分を加えてエステル化反応させ、次いで得られた反応生成物を目的とする重合度になるまで重縮合反応させてポリエステルとする方法で製造することができる。あるいは、ジカルボン酸のジメチルエステル、エチレングリコールを、また必要に応じてさらに共重合成分を加えてエステル交換反応させ、ついで得られた反応生成物を目的とする重合度になるまで重縮合反応させてポリエステルとする方法で製造してもよい。エステル交換反応、重縮合反応に使用する触媒としては、チタン化合物(Ti化合物)、ゲルマニウム化合物(Ge化合物)などが好ましく挙げられる。上記の方法(溶融重合)により得られたポリエステルを、必要に応じて固相状態での重合方法(固相重合)により、さらに重合度の高いポリマーとしてもよい。
【0028】
本発明の太陽電池裏面保護フィルムは、基材フィルムにシール層をラミネートするか、基材フィルムのポリマーと、シール層のポリマーを共押出して積層シートとし、この積層シートを延伸することで製造することができる。この場合、フィルムの熱固定の条件は、好ましくはシール層のポリエステルの融点以上230℃以下の温度、さらに好ましくはシール層のポリエステルの(融点+5℃)以上225℃以下とする。これより低い温度だとシール層の結晶部が残りシール強度が上がらない。他方、熱固定温度が230℃より高いと、ポリマーの配向が崩れフィルムの耐久性が低下する。
【実施例】
【0029】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、各特性値は以下の方法で測定した。
【0030】
(1)フィルムの厚み
測定対象の太陽電池裏面保護フィルムをエレクトリックマイクロメーター(アンリツ製 K−402B)にて、10点厚みを測定し、平均値をフィルムの厚みとした。
【0031】
(2)各層の厚み
測定対象の太陽電池裏面保護フィルムを三角形の試料に切り出し、包埋カプセルに固定後、エポキシ樹脂にて包埋した。そして、包埋された試料をミクロトーム(ULTRACUT−S)で縦方向に薄膜切片にした後、透過型光学顕微鏡もしくは透過型電子顕微鏡(加速電圧100kv)を用いて写真から各層の厚みを測定し、平均厚みを求めた。
【0032】
(3)融点
示差走査熱量計TA Instruments製 MDSC Q100を用い、昇温速度20℃/分で試料の融解ピークを求めた。なお、試料の量は10mgとした。
【0033】
(4)固有粘度
試料0.6gをオルソクロロフェノール50ml中に加熱溶解した後、一旦冷却させ、遠心分離機により白色無機顔料等の無機物を取り除き、その溶液をオストワルド式粘度管を用いて35℃の温度条件で測定した溶液粘度から固有粘度を算出した。
【0034】
(5)平均粒径
HORIBA製LA−750パーティクルサイズアナライザー(Particle Size Analyzer)を用いて測定した。50マスパーセントに相当する粒子径を読み取り、この値を平均粒径とした。
【0035】
(6)数平均分子量
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC 東ソー製 HLC−8020型)にて測定した。シール層をナイフで削り取り、1mgをヘキサフルオロイソプロパノール0.5mlに溶解後、クロロホルムを加えて10mlとし(濃度0.01w/v%)、メンブレンフィルター0.45μmで濾過して測定した。カラムは、TSK−gel GMHHR−M×2を使用した。較正曲線用試料として、ポリスチレン(Polymer Laboratories製 EasiCal “PS−1” )を用いた。
【0036】
(7)シール強度
評価対象の太陽電池裏面保護フィルムとEVAシート(“SPS”積水フィルム株式会社製)を200mm角にカットしたものをそれぞれ準備した。評価対象のフィルムのヒートシール面をEVA側になるように、フィルム/EVAシートの順に重ねて、真空ラミネーター(日清紡株式会社製)にてラミネートを行った。熱圧着は150℃を3分間実施した。ラミネートした試料を23℃の室温環境下で3日間放置した。得られたラミネート試料を10mm幅にスリットし、引張試験機(東洋ボールドウィン株式会社製、「テンシロン(登録商標)」)のクロスヘッドのチャックに掴み代を挟み、剥離角度が90°になるよう、たるみの無いようにクロスヘッド位置を調整した。100mm/分のクロスヘッド速度で引っ張ってラミネート試料を剥離させ、試験機に装着されたロードセルで荷重を測定し、シール強度(N/cm)とし、接着性の評価とした。
○:シール強度が10N/cm以上
△:シール強度が1N/cm以上10N/cm未満
×:シール強度が1N/cm未満
【0037】
(8)耐変色性
高圧水銀ランプを用いて、評価対象の太陽電池裏面保護フィルムに10時間紫外線照射を行った。予め測定しておいた紫外線照射前のフィルムのYI値と、紫外線照射後のフィルムのYI値を用いて、ΔYIを下記式に従い算出し、下記の基準で耐光性を評価した。なお、イエローインデックスのYI値は、日本電色工業製自動色差計(SE−Σ90型)を用いて測定した。
ΔYI=照射後のYI値−照射前のYI値
○:ΔYIが5未満
△:ΔYIが5以上10未満
×:ΔYIが10以上
【0038】
(9)耐久性
測定対象の太陽電池裏面保護フィルムの耐久性を破断伸度で評価をした。フィルムから長手方向に100mm長、幅方向に10mm幅の短冊状の試料に切り出した。この試料を121℃100%24時間環境下で湿熱処理し、処理前後の試料について長手方向の破断伸度を5回ずつ測定し、それぞれ平均値を求めた。処理後試料の伸度平均値を処理前試料の伸度平均値で割った値を破断伸度保持率(%)として、下記基準にて耐久性を評価した。なお、耐久性は破断伸度保持率の高いものが良好である。
○:破断伸度保持率が50%以上
△:破断伸度保持率が30%以上50%未満
×:破断伸度保持率が30%未満
【0039】
[実施例1]
ジメチルテレフタレート、ジメチルイソフタレートとエチレングリコールとを、エステル交換触煤として酢酸マンガンを、重縮合触媒として酸化ゲルマニウムを、安定剤として亜燐酸を添加して常法により重合し、固有粘度0.61のポリエチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体(イソフタル酸共重合量:18モル%)を得た。この共重合体のペレットを攪拌しながら110℃で10時間加熱し表面を結晶化させたものを、160℃で4時間乾燥後、押出機に供給し、溶融温度280℃で溶融後フィルターにて濾過し、2層ダイの片側(A層)から押出した。
別の押出機に、ジメチルテレフタレートとエチレングリコールとを、エステル交換触煤として酢酸マンガンを、重縮合触媒として酸化ゲルマニウムを、安定剤として亜燐酸を、さらに平均粒径0.3μmの酸化チタン粒子をポリマーに対して14重量%になるように添加して常法により重合し、固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレートを得た。このポリエチレンテレフタレートのペレットを170℃で3時間乾燥後、押出機に供給し、上記と同条件で上記2層ダイの反対側(B層)から押出した。
【0040】
A/Bの構成の2層溶融物を表面温度20℃の回転冷却ドラム上に押出し未延伸フィルムを得た。得られた未延伸フィルムを75℃に予熱し、低速ローラーと高速ローラーの間で15mm上方より800℃の表面温度の赤外線ヒーター1本にて加熱して縦方向に3.3倍に延伸し、続いてステンターに供給し、120℃にて横方向に3.3倍に延伸し、さらに220℃で30秒間熱固定し、合計厚み50μm(A層厚み5μm/B層厚み45μm)の太陽電池裏面保護フィルムを得た。こうして得られたフィルムの特性をで評価し、その結果を表1に示した。
さらに、EVAシートとの接着性を評価するために160℃の温度を掛けてEVAシートとラミネートして太陽電池裏面保護積層フィルムを作成し、シール強度を評価した。結果を表1に示した。
【0041】
[実施例2]
シール層(A層)のポリマーを固有粘度0.65のポリブチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体(イソフタル酸共重合量:26モル%)に変更し、さらに基材フィルム(B層)の酸化チタン粒子含有量を30重量%に変更し、フィルムの厚み構成をA層厚み10μm/B層厚み40μmと変更し、さらにフィルムの熱固定条件を200℃、30秒間とした以外は実施例1と同様にして太陽電池裏面保護フィルムを得た。こうして得られたフィルムの特性を評価し、その結果を表1に示した。
さらに、EVAシートとの貼り合せの温度を150℃とし他は実施例1と同様にして、太陽電池裏面保護積層フィルムを作成し、シール強度を評価した。結果を表1に示した。
【0042】
[実施例3]
シール層(A層)のポリマーを固有粘度0.66のポリエチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体(イソフタル酸共重合量:12モル%)に変更し、さらに基材フィルム(B層)の酸化チタン粒子を平均粒径1.2μmの酸化チタン粒子に変更し、含有量を3重量%に変更し、フィルムの厚み構成をA層厚み15μm/B層厚み35μmと変更し、さらにフィルムの熱固定条件を230℃、30秒間とした以外は実施例1と同様にして太陽電池裏面保護フィルムを得た。こうして得られたフィルムの特性を評価し、その結果を表1に示した。
さらに、EVAシートとの貼り合せの温度を170℃とし他は実施例1と同様にして、太陽電池裏面保護積層フィルムを作成し、シール強度を評価した。結果を表1に示した。
【0043】
[実施例4]
実施例1において、熱固定条件を240℃、30秒間とした以外は実施例1と同様にして太陽電池裏面保護フィルムを得た。こうして得られたフィルムの特性を評価し、その結果を表1に示した。
さらに、EVAシートとの接着性を評価するために160℃の温度を掛けてEVAシートとラミネートして太陽電池裏面保護積層フィルムを作成し、シール強度を評価した。結果を表1に示した。
【0044】
[実施例5]
実施例1において、熱固定条件を200℃、30秒間とした以外は実施例1と同様にしてて太陽電池裏面保護フィルムを得た。こうして得られたフィルムの特性を評価し、その結果を表1に示した。
さらに、EVAシートとの接着性を評価するために160℃の温度を掛けてEVAシートとラミネートして太陽電池裏面保護積層フィルムを作成し、シール強度を評価した。結果を表1に示した。
【0045】
[比較例1]
実施例1において、シール層(A層)のポリマーとして融点236℃、固有粘度0.61のポリエチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体(イソフタル酸共重合量:8モル%)に変更し、フィルムの厚み構成をA層厚み20μm/B層厚み30μmと変更した以外は実施例1と同様にして太陽電池裏面保護フィルムを得た。こうして得られたフィルムの特性を評価し、その結果を表1に示した。
さらに、EVAシートとの接着性を評価するために160℃の温度を掛けてEVAシートとラミネートして太陽電池裏面保護積層フィルムを作成し、シール強度を評価した。結果を表1に示した。
【0046】
[比較例2]
実施例1において、基材フィルム(B層)の酸化チタン粒子を平均粒径0.3μmの酸化チタン粒子に変更し、含有量を1重量%に変更した以外は実施例1と同様にして太陽電池裏面保護フィルムを得た。こうして得られたフィルムの特性を評価し、その結果を表1に示した。
さらに、EVAシートとの接着性を評価するために160℃の温度を掛けてEVAシートとラミネートして太陽電池裏面保護積層フィルムを作成し、シール強度を評価した。結果を表1に示した。
【0047】
[比較例3]
実施例1において、基材フィルム(B層)の酸化チタン粒子を平均粒径1.5μmの酸化チタン粒子に変更し、含有量を30重量%に変更した以外は実施例1と同様にして太陽電池裏面保護フィルムを得た。こうして得られたフィルムの特性を評価し、その結果を表1に示した。
さらに、EVAシートとの接着性を評価するために160℃の温度を掛けてEVAシートとラミネートして太陽電池裏面保護積層フィルムを作成し、シール強度を評価した。結果を表1に示した。
【0048】
【表1】

【0049】
略号は以下の意味である。
IA :イソフタル酸
PET:ポリエチレンテレフタレート
PBT:ポリブチレンテレフタレート
IA18PET:IA18モル%共重合PET
IA26PBT:IA26モル%共重合PBT
IA12PET:IA12モル%共重合PET
IA8PET: IA8モル%共重合PET
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の太陽電池裏面保護フィルムは、太陽電池の裏面保護膜として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムおよび少なくともその片面に設けられたシール層から成り、基材フィルムは酸化チタン粒子3〜30重量%を含有する二軸延伸ポリエステルフィルムであり、シール層は融点170〜230℃のポリエステルからなることを特徴とする、太陽電池裏面保護フィルム。
【請求項2】
シール層の厚みが5μm以上であり、シール層の厚み割合が太陽電池裏面保護フィルム全体厚みの30%以下である、請求項1記載の太陽電池裏面保護フィルム。
【請求項3】
シール層のポリエステルが、数平均分子量15000以上である、請求項1または2に記載の太陽電池裏面保護フィルム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の太陽電池裏面保護フィルムにおいて、シール層のうえに太陽電池素子を封止するためのエチレンビニルアセテートシートが積層された、太陽電池裏面保護積層フィルム。
【請求項5】
エチレンビニルアセテートシートが、80〜200℃の温度範囲で貼り合せられた、請求項4記載の太陽電池裏面保護積層フィルム。

【公開番号】特開2011−192789(P2011−192789A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57626(P2010−57626)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】