説明

失禁パッド体

【課題】排尿を吸収した吸収体のみを容易に大便器内に投入廃棄可能とし、簡易な破棄処理を達成する。
【解決手段】織成生地を主たる素材とするパンツ30の内面における人体の排液部位を含む取付部位に、着脱自在に設けられるものであって、外装体10と、排液を吸収する吸収体20とを備え、前記外装体10は前記取付部位に着脱自在とされ、少なくとも前記パンツ側が不透液性であり、かつ、少なくとも人体側の一部が前記排液が透過可能であり、前記吸収体20は、少なくとも大便器内に捨てても配管が詰まらない水解性を有し、前記外装体10に着脱自在に収納されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンツ衣類の内面に装着する失禁パッド体に係り、外装体は取り替えず、吸収体のみを取替可能にしたものである。
【背景技術】
【0002】
尿意を意識できず或いは介護者に知らせることができない老人、病人、身体障害者等のために、大人用おむつが知られている。しかし、このような大人用おむつは取扱性や外観性に抵抗がある。そして、単に尿意を意識できないだけで、普通の生活が可能な大人もいる。これらの対策として大人用おむつに代えて、パンツ生地の股部に吸収部材を設けた失禁用パンツが用いられるようになった。
【0003】
他方、特許文献1には、ラミネート生地、消臭吸水性部材、吸収性生地、ネット生地を順次積層した積層部材を形成し、ネット生地の一側縁を除き、この積層部材の周縁を撥水性テープ生地で捲回縫着してなる失禁用部材をパンツ身生地側に配設し、この失禁用部材の周縁を部分的に前記パンツ身生地に取り付けることで、失禁用パンツを構成したものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実登2535469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のような特許文献1の失禁用パンツであっても、排尿を吸収した吸水性部材は水解性を示すものとは認められないので、吸水性部材を便器内に廃棄できるものではない。そして、例えば、男性用トイレにはサニタリーボックスが無いことが多く、特に外出した場合などでは、廃棄可能な場所を探すまで、吸水性部材や消臭性部材を備えた失禁用パンツを使用者は装着したままとするか、或いは、この失禁用パンツを取り外して持ち歩く必要があった。
【0006】
しかるに、排尿済の失禁用パンツを装着したままでは不快であるし、また、失禁用パンツを持ち運んだりすることは、気分的にも滅入るものである。
また、特許文献1のものは、基本的に失禁用部材の周縁をパンツ未生地に縫着により取付けたものである。したがって、簡易な取付けは望めない。なお、特許文献1のものは男性用をほとんど意識していない構造のものである。
そこで、本発明の主たる課題は、排尿を吸収した吸収体のみを容易に大便器内に投入廃棄可能とし、簡易な破棄処理を達成できる失禁パッド体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
織成生地を主たる素材とするパンツの内面における人体の排液部位を含む取付部位に、着脱自在に設けられるものであって、
外装体と、排液を吸収する吸収体とを備え、
前記外装体は前記取付部位に着脱自在とされ、少なくとも前記パンツ側が不透液性であり、かつ、少なくとも人体側の一部が前記排液が透過可能であり、
前記吸収体は、少なくとも大便器内に捨てても配管が詰まらない水解性を有し、前記外装体に着脱自在に収納されることを特徴とする失禁パッド体。
【0008】
(作用効果)
失禁パッド体においては、人体側の一部が排液の透過性を示すので、排液(たとえば排尿)があった場合、そこを透過し吸収体に吸収される。吸収体に吸収された尿は、パンツ側が不透液性であるために、パンツ生地には浸透せず、衣類を濡らすことがない。
【0009】
使用に際しては、始めに、外装体をパンツの内面における人体の排液部位を含む取付部位に装着する。着脱手段としては、最適には外装体の裏面に予め設けた粘着剤層を介して外装体をパンツの内面に固着するものである。したがって、パンツの内面に外装体を簡易に取付けることができる。
【0010】
尿を吸収した吸収体は、適宜の時点で、外装体から取り外し、大便器内に廃棄する。この場合、吸収体は大便器内に捨てても配管が詰まらない水解性を有するので、廃棄で問題になることがなく、従来のように、排尿後長時間、失禁用パンツを使用者は装着したままとするか、この失禁用パンツを取り外して持ち歩く必要がなくなる。
【0011】
<請求項2記載の発明>
前記外装体は有底袋状であり、パンツの胴開口縁側が開口し、その開口が前記吸収体の挿入口となっている請求項1記載の失禁パッド体。
【0012】
(作用効果)
外装体が有底袋状であり、パンツの胴開口縁側が開口しているために、その開口から吸収体の挿脱が可能であり、挿入状態では、吸収体の外装体から抜け出ることを防止できる。なお、前記開口は、男性用の場合には、前身頃側に形成するのが望ましく、女性用の場合には、後身頃側、前身頃側のいずれの側に形成しても構わない。
【0013】
<請求項3記載の発明>
前記外装体は袋状であり、かつ人体側面にスリットが形成され、そのスリットが前記吸収体の挿入口となっている請求項1記載の失禁パッド体。
【0014】
(作用効果)
人体側面に形成したスリットを介して吸収体の挿脱を行なうことができる。
【0015】
<請求項4記載の発明>
前記吸収体の胴周り方向の中間に、上下方向に沿う易折曲線部が少なくとも胴周り方向に一つ形成されている請求項1記載の失禁パッド体。
【0016】
(作用効果)
吸収体の胴周り方向の中間に、上下方向に沿う易折曲線部が少なくとも胴周り方向に一つ形成されていると、やや剛性のある吸収体を使用したとしても、体の動きに合わせて易折曲線部を境にして曲がるので、追従性に優れる。
【0017】
<請求項5記載の発明>
前記パンツは男性用であり、内開口及び外開口を構成する重ね合わせ外側地及び内側地を有し、前記外装体は前記内開口の縁又はその近傍から胴周り中央側に配置され、
前記吸収体の胴周り方向の中間に、上下方向に沿う易折曲線部が少なくとも胴周り方向に一つ形成されている請求項1記載の失禁パッド体。
【0018】
(作用効果)
男性用の場合、やや剛性のある吸収体を設けると、吸収体が抵抗となって、陰茎を内開口から外開口外へ持ち出し露出し難い。しかるに、吸収体の胴周り方向の中間に、上下方向に沿う易折曲線部が少なくとも胴周り方向に一つ形成されていると、やや剛性のある吸収体を使用したとしても、陰茎を内開口から外開口外へ持ち出そうとするとき、吸収体がその易折曲線部を境にして曲がるので、外開口から内開口への通路が容易に確保でき、陰茎を内開口から外開口外へように持ち出すことができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のとおり、本発明によれば、排尿を吸収した吸収体のみを容易に大便器内に投入廃棄可能とし、簡易な破棄処理を達成できる利点をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る失禁パッド体を男性用パンツに固定した状態の第1の実施の形態の後身頃を一部を破断した正面である。
【図2】失禁パッド体のみを示す正面図である。
【図3】図1の2−2矢視線断面図である。
【図4】失禁パッド体の他の例を正面図である。
【図5】吸収体の斜視図である。
【図6】吸収体の他の例の正面図である。
【図7】本発明に係る失禁パッド体を男性用パンツに固定した状態の第2の実施の形態の後身頃の一部を破断した正面図である。
【図8】透液性シート例要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る失禁パッド体の第1の実施の形態について、図1〜図3に基づき、以下に説明する。
本実施の形態に係る失禁パッド体Pは、図1及び図2に示すように織成生地を主たる素材とする(男性用)パンツ30に装着され使用されるものである。男性用パンツ30は、陰茎を取り出すために男性用パンツ30の前身頃に外側地30A及び内側地30Bが2重に重ねられて配置され、外開口30a及び内開口30bが形成されている。
失禁パッド体Pは、外装体10と吸収体20とを主たる要素としている。外装体10は内開口30bの縁又はその近傍から胴周り中央側に配置されている。
【0022】
そして、外装体10は、その裏面側(パンツ側)が不透液性バックシート11により形成され、少なくとも人体側の一部が、排液が透過可能なトップシート12により形成されている。さらに、外装体10は、前記取付部位に粘着剤層13、13…を介してパンツ30に着脱自在に設けられている。
図1〜図3に示す有底袋状の外装体10は、たとえばポリエチレンラミネート不織布を不透液性のバックシート11としてあり、トップシート12としては、たとえば図8のように、漏斗状の小さい開口12aが多数形成されたポリエチレン孔開きシートが用いられ、不透液性シート11の両側部及び下部がトップシート12の両側部及び下部を巻き込んで固着されており、上部には吸収体挿入口14が形成されている。
【0023】
トップシート12とバックシート11との間の収納部15には、体液を吸収する吸収体20が挿入口14から着脱可能に挿入される。
この吸収体20としては、大便器内に捨てても配管が詰まらない水解性を有し、本実施の形態では水解性を有するパルプや水解性不織布等の部材により形成されている。そもそも、吸収体20は水解性を有する種々の部材により構成することができ、例えば、原料繊維としては、木材パルプ繊維、非木材系パルプ繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維が考えられるが、より具体的には、セルロースのみから構成したり、セルロースとその他素材(レーヨンやPE、PETなどの)合成繊維とから構成したりすることができる。この際、各々の成分の配合割合の範囲は特定されないが、一例として、セルロース75%、レーヨン24%、合成繊維1%未満などとすることができる。吸収容量を確保するためには水解性シートを複数枚重ねて、たとえば周囲部においてエンボスなどにより一体化させことができるほか、たとえば水解性のクレープ紙により、重ね合わせ水解性のシート束の外周を包み、固定することができる。
【0024】
図4の失禁パッド体の他の例においては、トップシート12に前後方向にスリットが形成され、吸収体20の挿入口14Aとされている。
【0025】
吸収体20の人体側面には、胴周り方向の中間に、上下方向(前後方向)に沿う易折曲線部21が胴周り方向に一つ形成されている。この易折曲線部21は、胴周り方向に間隔を置いて複数上下方向(前後方向)に沿って形成してもよい。図4及び図5の例では、エンボス条溝として形成されている。
他方、図6に示すように、間欠的なエンボスを線に沿って間隔を置いて多数形成することにより、易折曲線部21Aとすることもできる。さらに、必要ならば、胴周り方向にも易折曲線部22を形成することもできる。
【0026】
易折曲線部21を有する吸収体20は、特に男性用の場合に有効である。すなわち、男性用の場合、シートを積層したり、綿状パルプを使用し、やや剛性のある吸収体20とした場合、吸収体20が抵抗となって、陰茎を内開口30bから外開口30a外へ持ち出し露出し難い。
しかるに、吸収体20の胴周り方向の中間に、上下方向に沿う易折曲線部21を形成しておくと、やや剛性のある吸収体20を使用したとしても、陰茎を内開口30bから外開口30a外へ持ち出そうとするとき、吸収体20がその易折曲線部21を境にして曲がるので、外開口から内開口への通路が容易に確保でき、陰茎を内開口30bから外開口30a外へ容易に持ち出すことができる。また、平常時においても、体の動きに合わせて易折曲線部を境にして曲がるので、追従性に優れる。
【0027】
上記例は、粘着剤13を介して外装体10をパンツ30に着脱自在に設けたものである。この例に換えて、図7に示すように、係脱するメカニカル(面)ファスナーの一方のファスナー片41を、パンツ30に取付けておき、これに対し、外装体10の裏面に設けられた他のファスナー片42を介して、外装体10をパンツ30に着脱自在に設けることもできる。
【0028】
尚、上記実施の形態では、男性用パンツ30に貼付けて使用することとしたが、男性用途以外の女性用にも適用することが可能である。例えば、女性用パンツに貼付けて使用する際には、女性の排尿口を含む部位に貼付け箇所を変更することで、使用可能となる。また、上記実施の形態で使用される吸収体としては、パルプや水解性不織布等のトイレに流せる素材でのみ構成したが、JIS P4501(シートのほぐれやすさ)に準拠しつつ、適宜の材料やシートを選択すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、パンツ等に併用して使用される失禁パッド体として利用可能である。
【符号の説明】
【0030】
10…失禁パッド体
11…バックシート
12…トップシート
13…粘着剤層
14…挿入口
18…固着材
20…吸収体
21、21A…易折曲線部
30…パンツ
30a…外開口
30b…内開口
41、42…ファスナー片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
織成生地を主たる素材とするパンツの内面における人体の排液部位を含む取付部位に、着脱自在に設けられるものであって、
外装体と、排液を吸収する吸収体とを備え、
前記外装体は前記取付部位に着脱自在とされ、少なくとも前記パンツ側が不透液性であり、かつ、少なくとも人体側の一部が前記排液が透過可能であり、
前記吸収体は、少なくとも大便器内に捨てても配管が詰まらない水解性を有し、前記外装体に着脱自在に収納されることを特徴とする失禁パッド体。
【請求項2】
前記外装体は有底袋状であり、パンツの胴開口縁側が開口し、その開口が前記吸収体の挿入口となっている請求項1記載の失禁パッド体。
【請求項3】
前記外装体は袋状であり、かつ人体側面にスリットが形成され、そのスリットが前記吸収体の挿入口となっている請求項1記載の失禁パッド体。
【請求項4】
前記吸収体の胴周り方向の中間に、上下方向に沿う易折曲線部が少なくとも胴周り方向に一つ形成されている請求項1記載の失禁パッド体。
【請求項5】
前記パンツは男性用であり、内開口及び外開口を構成する重ね合わせ外側地及び内側地を有し、前記外装体は前記内開口の縁又はその近傍から胴周り中央側に配置され、
前記吸収体の胴周り方向の中間に、上下方向に沿う易折曲線部が少なくとも胴周り方向に一つ形成されている請求項1記載の失禁パッド体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−212056(P2011−212056A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80428(P2010−80428)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】