説明

妨害電磁波の認識装置

【課題】 航空機システムに影響を与える妨害電磁波の周波数バンドを監視し、受信された妨害信号に基づいて妨害電磁波源の位置をつきとめることができる。
【解決手段】 キャビン(2)内に、受信ユニット(3〜3n)と、受信ユニットから送られてくる測定結果を評価するための監視ユニット(5)とが配置され、受信ユニットがそれぞれ妨害電磁波を受信するための少なくとも1本のアンテナ(17)を備え、受信ユニットは、アンテナから受信した妨害電磁波の電界強度が妨害演算器(22)から取得した個々の周波数範囲に割り当てられた閾値に関するデータより大きいか検査するとともに、妨害電磁波が感知可能な周波数範囲内にあるかどうかを検査し、結果を測定結果として監視ユニット(5)に送り、監視ユニットが受信ユニットから送られてくる測定結果を評価するための妨害演算器を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機、特に旅客機の機内の高周波の妨害電磁波を認識するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無線システムや制御システムのような搭載電子システムは電子的な処理が益々複雑になってきている。従って、搭載システムの機能に悪影響を与える可能性がある妨害電磁波を適時に認識し、防止することが必要である。このような妨害電磁波は第1に、乗客によって航空機の機内で使用される持ち運び可能な電子機器から出る。この電子機器には、電子玩具、CDプレーヤ、ポータブルコンピュータおよび電話が含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明の根底をなす課題は、関連する航空機システムに影響を与える妨害電磁波の周波数バンドを監視し、装置によって受信された妨害信号に基づいて妨害電磁波源の位置をつきとめることができるように、冒頭に述べた装置を形成することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、1個または複数の受信ユニットと、測定結果を評価するための監視ユニットを備えた、航空機、特に旅客機の機内の高周波の妨害電磁波(妨害放射線)を認識するための装置において、受信ユニットがそれぞれ少なくとも1本のアンテナを備え、監視ユニットが妨害演算器(外乱演算器)を含み、監視ユニットがデジタル信号を伝達するための接続手段を介して受信ユニットと協働し、妨害演算器が少なくとも一つの表示ユニットに接続されていることによって解決される。
【発明の効果】
【0005】
その際特に、感知可能な周波数バンド内にある電磁波を出力する妨害電磁波源が、飛行の前、飛行中および飛行後、その使用開始時に直ちにつきとめることができるので、それを停止する措置を講じることができ、機内で働いている人に付加的な負担をかけずに、装置の重要な機能が進行するという利点がある。
【0006】
本発明の他の有利な実施形は従属請求項に記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0007】
次に、図に基づいて本発明を詳しく説明する。図1はキャビン2を備えた航空機の機体1を概略的に示している。その際、キャビンの上側範囲には複数の受信ユニット3がキャビンの長手方向に分配配置されている。受信ユニットはデジタル信号を伝達するための接続手段を介して中央の監視ユニット5に接続されている。図示した実施の形態では接続手段はデータバス4によって形成されている。図2は、乗客座席6と他のキャビン装備品7,8を備えた図1のキャビンの一部の平面図である。受信ユニット3は機体軸線9の垂直方向上方に配置されている。図示した各受信ユニット3は妨害電磁波(妨害放射線)の少なくとも周波数と電界強度を測定する能力がある。その都度検出された測定値はデータバス4を介して中央の監視ユニット5に伝達される。
【0008】
図3は、乗客座席6と受信ユニット3を備えた図1のキャビン2の横断面図である。キャビンの上側のカバーがキャビン天井内張り10を形成する。外見的な理由から、受信ユニット3は天井内張り10の上方に配置されている。天井内張りの材料、すなわち合成樹脂に基づいて、受信ユニットの機能は天井内張りによって決して影響を受けない。
【0009】
図4は中央の監視ユニット5と、データバス4を介してこの監視ユニットに接続された複数の受信ユニット3a〜3nとを備えた装置のブロック線図である。監視ユニット5には更に、コックピット側の表示ユニット12がデータライン11を介して接続され、かつキャビン側の表示ユニット14がデータライン13を介して接続されている。監視ユニット5内には座席配置の画像が記憶されている。監視ユニットには更に、個々の受信ユニット3a〜3nの位置が記憶されている。6nで示した乗客座席は概略的に示してある。この場合、座席に座る図示していない人は持ち運び可能なコンピュータ15を使用する。このコンピュータには航空機の搭載電源から導線16を介してエネルギーが供給される。受信ユニット3a〜3nは感知可能な周波数範囲にあるすべての妨害電磁波を受信し、信号を監視ユニット5に伝達する。このような信号はすべて、信号を発した受信ユニットの識別情報と、受信された妨害電磁波の周波数と場所的な電界強度に関する情報を含んでいる。監視ユニット5はこれらのデータから、妨害電磁波の電界の中心がどこにあるかを、充分に正確に検出する。妨害電磁波源がある範囲として、例えば座席6nを有する列が、監視ユニット5によって検出可能である。そして、監視ユニット5はデータライン11,13を介してコックピット側の表示ユニット12とキャビン側の表示ユニット14にビデオ信号を伝達する。ここで、妨害電磁波に関する情報が取り出し可能状態で表示ユニットに存在することを示す音響的な警報信号が鳴る。この情報は操作手段、例えばスイッチの操作により、乗務員によって取り出し可能である。その後で、座席列番号を明示した座席配置の画像が当該のディスプレイパネル上に表示される。この画像の中で、座席6nを含む座席列が明瞭にマークされる。表示された情報に基づいて、持ち運び可能なコンピュータの使用者を適切に特定し、コンピュータを停止するよう要求することができる。
【0010】
図5は、装置内にあるデータおよび情報経路を、受信ユニット3と監視ユニット5の内部の機能単位に基づいて示している。受信ユニット3はアンテナ17、周波数スキャナ18、バス送信器19およびバス受信器20を含んでいる。監視すべき周波数範囲の全体幅に応じて、場合によっては、個々の部分範囲に合わせられた複数のアンテナが設けられる。アンテナ17によって受信された信号は周波数スキャナ18に供給される。この周波数スキャナは設定された基準値に基づいて、受信した妨害電磁波の電界強度が予め定めた閾値を上回るかどうかそして感知可能な周波数範囲内にあるかどうかを検査する。この条件を満たすと、周波数スキャナ18は信号をバス受信器19に伝送する。このバス受信器はデータバス4を介して監視ユニット5に信号を伝送する。この信号は受信ユニット3の識別に関する情報と、妨害電波の周波数と電界強度に関する情報を含んでいる。同様にデータバス4に接続されたバス受信器20は、監視ユニット5から出る命令を受信する。この命令は上記の閾値に関する周波数スキャナ18の設定基準値と、周波数範囲の選択と、場合によっては適用されるスキャン分解能に関する指示である。
【0011】
監視ユニット5はレベルマトリックス21と、妨害演算器(外乱演算器)22と、スキャン制御ユニット23と、スキャン入力ユニット24を含んでいる。レベルマトリックス21は実際にはデータバンクであり、個々の周波数範囲に割り当てられた閾値に関するデータと、個々の周波数範囲を走査すべき周波数バンドに関するデータを含んでいる。ここには更に、上記の閾値を変更できる条件が記憶されている。例えば、離陸時と着陸時には閾値を比較的に低くセットし、飛行中は高くセットすることが考えられる。スキャン入力ユニット24は受信ユニット3から供給された情報を処理し、妨害演算器22に入力するためにこの情報を準備する。妨害演算器は情報を、レベルマトリックス21から供給された情報と比較し、これから結果信号を作成する。この結果信号はデータライン11,13を経てコックピット側の表示ユニット12とキャビン側の表示ユニット14に伝送される。この信号は図4に関連して説明した働きをする。
【0012】
装置が全自動で作動するので、搭載された妨害電磁波源は、係の人の助けを借りずにつきとめられる。乗務員によって行うべき唯一の作業は、装置によって供給される警報信号の監視と取決めに従った変換だけである。
【0013】
記憶された閾値は許容限界である。これにより、この限界の下にある妨害電磁波、すなわち有害でない電磁波は考慮されない。本発明の実施形では、データバス4は装置の固定された部品であり、この装置と共に設置される。
【0014】
本発明の他の実施形では、受信ユニット3と監視ユニット5は、既に存在するデータバス、例えば規格ARINC 429 によるデータバスと問題なく協働するように形成されている。
【0015】
本発明の他の実施形では、受信ユニット3と監視ユニット5の間のデータのやりとりが無線機によって無線で行われる。そのために、受信ユニット3と監視ユニット5は送信器または受信器を備えている。これは、装置を設置する際に、データラインの敷設が不要であるという利点がある。
【0016】
本発明の他の実施形では、受信ユニット3〜3nのアンテナ17が駆動装置によってほぼ垂直軸線回りに回転可能な方向検出アンテナとして形成されている。これにより、受信ユニット3〜3nによって、周波数と電界強度だけでなく、妨害電磁波の方向を検出することができる。この手段はコストの増大につながるがしかし、少ない受信ユニット3〜3nで済み、妨害電磁波源の位置を高い精度で検出することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】乗客キャビンを備えた航空機の機体を示す図である。
【図2】図1のキャビンの部分平面図である。
【図3】図1のキャビンの横断面図である。
【図4】中央の監視ユニットと複数の受信ユニットを備えた装置のブロック線図である。
【図5】監視ユニットと受信ユニットの内部回路を示す図である。
【符号の説明】
【0018】
3 受信ユニット
4 データバス
5 監視ユニット
12,14 表示ユニット
17 アンテナ
18 周波数スキャナ
19 バス送信器
20 バス受信器
21 レベルマトリックス
22 妨害演算器
23 スキャン制御ユニット
24 スキャン入力ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1個または複数の受信ユニットと、測定結果を評価するための監視ユニットを備えた、航空機、特に旅客機の機内の高周波の妨害電磁波を認識するための装置において、受信ユニット(3)がそれぞれ少なくとも1本のアンテナを備え、監視ユニット(5)が妨害演算器(22)を含み、監視ユニット(5)がデジタル信号を伝達するための接続手段を介して受信ユニット(3)と協働し、妨害演算器(22)が少なくとも一つの表示ユニット(12,14)に接続されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
受信ユニット(3)が更に、周波数スキャナ(18)とバス送信器(19)とバス受信器(20)を含んでいることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
監視ユニット(5)が更に、レベルマトリックス(21)とスキャン制御ユニット(23)とスキャン入力ユニット(24)を含んでいることを特徴とする請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
デジタル信号を伝達するための接続手段がデータバス(4)によって形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の装置。
【請求項5】
受信ユニット(3)と監視ユニット(5)が、既に存在するデータバスと協働するように形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の装置。
【請求項6】
データバス(4)が装置の固定された部品であり、装置と共に設置可能であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の装置。
【請求項7】
受信ユニット(3)と監視ユニット(5)がデータのやりとりを無線で行うための送信器または受信器を備えていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の装置。
【請求項8】
受信ユニット(3〜3n)のアンテナ(17)が、駆動装置によってほぼ垂直軸線回りに回転可能な方向検出アンテナとして形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−96780(P2010−96780A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23574(P2010−23574)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【分割の表示】特願平9−192768の分割
【原出願日】平成9年7月17日(1997.7.17)
【出願人】(504467484)エアバス・オペレーションズ・ゲーエムベーハー (268)