説明

婦人靴用のミッドソール及びこれを利用した婦人靴

【課題】使用者の足に対するフィット(fit)性に優れ、折れ曲がりや亀裂が発生することがなく、長時間の着用によっても復元力が低下することのない婦人靴用のミッドソールを提供する。
【解決手段】裁断可能なサイズ調節部310から成る前足部分と、使用者の足の土踏まずから踵までの領域に対応するよう設けられ、その一部に前後方向へ延びる少なくとも1条のフィット化溝322が形成された本体部320から成る後足部分と、を結合することによって解決した。前記サイズ調節部310の材質は紙とし、前記本体部320の材質はグラスファイバー、繊維強化プラスチック又はポリプロピレンのいずれかとすることが望ましい。前記フィット化溝322の内部にアーチ型のシャンク330を収容することが推奨される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、婦人靴用のミッドソール(midsole)及びこれを利用した婦人靴に関するものである。
より具体的には、本発明は、使用者の足の土踏まずから踵(かかと)へかけての部分に対して馴染みが良く、フィット(fit)性に優れ、特に、踵の高い婦人靴の場合でも長時間の着用によっても復元力が低下することがなく、折れ曲がりや亀裂発生などの変形も起こることがなく、曲線型の踵部材を取り付けても安定性が良い、等々の多くの利点を有する婦人靴用のミッドソール及びこれを利用した婦人靴に関するものである。
尚、本発明は、踵の高い靴に好適に適用可能であるため、主に婦人靴について適用されるが、踵の高い靴一般に対して有効であるため、本願において「婦人靴」というときは、踵の高い紳士靴や子供靴、その他の特殊靴をも包含するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な靴は、地面と接触するアウトソール(outsole)と、上記アウトソールの上部に位置し、使用者の足を支持し靴の着用感を向上させるミッドソール(midsole)と、上記ミッドソールの上に設けられ使用者の足裏を支えるインソール(insole)と、上記インソールの上部に位置して足を包んで保護するアッパー(upper)と、で構成される。
また、前記ミッドソールは、製造すべき靴のサイズに合わせた裁断を容易にするために紙(paper board)で作製されるのが一般的であるが、紙は最初は固くて使用者の体重をうまく支えてくれるが、折り曲げや亀裂の発生に弱く、歩行中発生する汗(水分)で膨らむ現象が見られ、亀裂の割れ目の間にカビが生息し易く、足の臭い、悪臭の発生、水虫の原因となって非衛生的であり、特に婦人靴の場合には踵が高いため長時間の着靴時にミッドソールの折れ曲がりや亀裂発生などの変形が起きやすいことや、着靴感が非常に落ちるという問題点があり、また、曲線型の踵部材をしっかりと固定させることができないという問題点もあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記のような従来の問題点を解消するために案出されたものであり、その目的とするところは、婦人靴用のミッドソールにおいて、製造すべき靴のサイズごとの裁断が容易であるだけでなく、土踏まず部分と踵部分が履いた者の足に良好にフィットし、折れ曲がりや亀裂が発生しにくいため歩行中に発生する汗(水分)により膨らむ現象がなく、亀裂による割れ目の間にカビが発生することもないため足の臭い、悪臭の発生、水虫の原因を除去でき、衛生的であり、特に踵が高い婦人靴の場合においても、長時間の着靴にも復元力が非常に良く、ミッドソールの折れ曲がりや亀裂などの変形が起こらないという非常に有益な効果があり、曲線型の踵部材を安定した状態で固定することができるという効果も達成し得る、婦人靴のミッドソール及びこれを利用した婦人靴を提供せんとするにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するため、本願請求項1に記載の婦人靴用のミッドソールは、裁断可能なサイズ調節部から成る前足部分と、使用者の足の土踏まずから踵までの領域に対応するよう設けられ、その一部に前後方向へ延びる少なくとも1条のフィット化溝が形成された本体部から成る後足部分と、を結合して成ることを特徴とする。
また、請求項2に記載の婦人靴用のミッドソールは、前記サイズ調節部の材質が紙であることを特徴とする。
請求項3に記載の婦人靴用のミッドソールは、前記本体部の材質がグラスファイバー(glass fiber)、繊維強化プラスチック(FRP)又はポリプロピレン(polypropylene)のいずれかであることを特徴とする。
請求項4に記載の婦人靴用のミッドソールは、前記フィット化溝が前記本体部の下面中央に形成されたことを特徴とする。
請求項5に記載の婦人靴用のミッドソールは、前記フィット化溝の内部にアーチ型のシャンクが収容されたことを特徴とする。
請求項6に記載の婦人靴用のミッドソールは、前記本体部における使用者の足の踵が当接する領域の下面に固定用突起を一体的に設けたことを特徴とする。
請求項7に記載の婦人靴は、上から順にアッパー、インソール、ミッドソール及びアウトソールを順次接合し、更に前記アウトソールの後部下面に踵部材を取り付けて成る婦人靴において、前記ミッドソールとして請求項6に記載のミッドソールを用いると共に、前記踵部材の上面に、前記ミッドソールの本体部の下面に設けた前記固定用突起を挿入固定するための固定用穴を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
(1)本発明においては、ミッドソールの本体部に前記フィット化溝を形成するにより、ミッドソールの可撓性、柔軟性が向上し、履いた者の足への良好なフィット感(馴染み感)が得られるものである。
(2)本発明のミッドソールは、前足部分が靴のサイズ別に裁断が容易であるだけでなく、折れ曲がりや亀裂が生じにくいため、歩行中に発生する汗(水分)で膨らむ現象がなく、また、亀裂内にカビが発生することもないため、足の臭い、悪臭の発生、水虫の原因を除去でき、衛生的である。
(3)特に踵の高い婦人靴においても、長時間の着靴に対しても復元力が非常に良く、ミッドソールの折れ曲がりや亀裂などの変形が起こらないという非常に有用な効果があり、曲線型の踵部材を安定した状態で取り付けられるという非常に有益な効果もある。
(4)また、婦人靴の場合に、ミッドソールと踵部材を連結する際に、ミッドソールの底面に形成した固定用突起を、踵部材の上面に形成した固定用穴に挿入、固着することにより簡単に結合できるため、別途用意すべきシャンク(shank)を必ずしも必要としないという非常に有益な効果もある。
(5)また、本発明の婦人靴は、ミッドソールの後部下面に設けた固定用突起を、踵部材に設けた固定用穴に接着剤などを利用して結合させるだけで、踵部材とミッドソールの結合が完成できるため、釘などを用いて踵部材を取り付けた従来の婦人靴を長期間使用した場合に発生する釘の離脱現象などを低減でき、更には、釘頭の厚さが薄い複数の釘よりも堅牢な結合状態が得られるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1a】本発明の婦人靴用ミッドソールにおいて、固定用突起のない実施例を示す斜視図である。
【図1b】本発明の婦人靴用ミッドソールにおいて、固定用突起を設けた実施例を示す斜視図である。
【図2a】図1a中のA−A線に沿った断面図である。
【図2b】図1b中のB−B線に沿った断面図である。
【図3a】本発明の婦人靴用のミッドソールが適用された婦人靴において、固定用突起のない実施例を示す分解斜視図である。
【図3b】本発明の婦人靴用のミッドソールが適用された婦人靴において、固定用突起を設けた実施例を示す分解斜視図である。
【図4】本発明の婦人靴用のミッドソールのサイズ調節部におけるサイズ調節の例を示す説明図である。
【図5】本発明の婦人靴の斜視図である。
【図6】図5中のC−C線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明に係る婦人靴用のミッドソール及びこれを利用した婦人靴の詳細を添付図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明では、婦人靴を例にとって説明するが、本発明に係るミッドソールは婦人靴に限らず、踵の高い靴に対して広く利用し得ることは前記の通りである。
【0008】
本発明の婦人靴用のミッドソール30において、その前足部分は、紙の材質で形成されたサイズ調節部310として構成され、後足部分の本体部320は、望ましくはグラスファイバー(glass fiber)、繊維強化プラスチック(FRP)、ポリプロピレン(polypropylene)のいずれかにより作製され、その下面に、着用者の土踏まずと踵に対するフイット性(馴染み性)が良好となるように、可撓性もしくは柔軟性を向上させるための少なくとも1条のフィット化溝322が形成されていることを特徴とする。
【0009】
上記のサイズ調節部310は一般的に紙の材質、もしくは、紙と綿の混合材質で構成され、図4に鎖線で示したように、製造すべき靴のサイズに合わせて裁断が容易なように構成される。
上記の本体部320は、望ましくは、グラスファイバー、繊維強化プラスチック、ポリプロピレンのいずれかにより形成される。
【0010】
上記の本体部320には、着用者の土踏まずの部分と踵の部分がしっくりと当接してフィットするように、前記の如く、可撓性もしくは柔軟性を促進するための少なくとも1条のフィット化溝322が形成される。フィット化溝322は、図示する如く、前後方向(ミッドソールの長手方向)へ延びるように設けることが望ましい。図示した実施例においては、比較的幅の広いフィット化溝322をミッドソール30の下面に1条だけ設けてあるが、幅の狭いフィット化溝を複数条設けるようにしても良い。
上記のグラスファイバー(glass fiber)、繊維強化プラスチック(FRP)、ポリプロピレン(polypropylene)は、復元力に優れ、変形が容易に起こらないだけでなく、一般の紙の材質とは異なり、土踏まず部分から踵部分までを上下方向に曲がった形状となるように成形することができるという利点もある。
上記サイズ調節部310と上記本体部320の連結は、上記サイズ調節部310の端端部を斜面に形成し、上記本体部320の前端部を上記サイズ調節部310と対応する斜面に形成して、互いに段差なく充分な接合面積が得られるように構成し、接着剤を使用して両者をしっかりと接合するようにする。
【0011】
グラスファイバー(glass fiber)はファイバーグラスとも呼ばれ、溶融ガラスを繊維状に形成した鉱物繊維であり、用途に応じて長繊維と短繊維がある。
上記のグラスファイバーは引張強度が強く、熱膨張係数が低くて寸法安定性に優れている。電気絶縁性と耐化学性があり、良好な分散性を有するため高温高吐出生産方式に適合し、押出工程における均等な分散性により、ロット別に均一な物理/化学的特性(機械的な強度、色相、熱変形特性など)が得られるという特徴があり、複合PP及びPA用、電気電子部品、事務用品、自動車、機械部品などの産業用FRTPの用途に使われる。
【0012】
また、繊維強化プラスチック(FRP:fiberglass reinforced plastics)は、鉄筋コンクリートにおける鉄筋の役割のように樹脂の性質を強化し、防火性能も向上させるよう、ガラス繊維をプラスチックの補強材として使用したもので、ガラス繊維、炭素繊維、或いはケブラーなどの芳香族ナイロン繊維と、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂とを結合させた素材である。鉄より強く、アルミより軽く、錆を生じず、加工しやすいのが長所である。
また、ポリプロピレン(polypropylene)はプロピレンを重合して得る熱可塑性樹脂である。
【0013】
上記本体部320の下面中央に形成された上記フィット化溝322の内部にはアーチ型のシャンク(shank)330を収容することが推奨される。
上記のシャンク(shank)330は金属材質で作製され、フィット化溝322内に収容されて、着靴者の体重を支える補強の役割を果たす。
【0014】
また、上記本体部320の踵位置の下面に固定用突起321を突出して一体に形成することも推奨される。
上記固定用突起321は、上記本体部320と一体的に成形し、踵部材50を結合したときに踵部材50が回転したり離脱しないように軸直角断面を多角形に構成し、好ましくは四角形となるように構成する。
【0015】
次に、本発明の婦人靴1は、上から順にアッパー10、インソール20、ミッドソール30及びアウトソール40を順次接合し、前記アウトソール40の後部下面に踵部材50を取り付けた構造を有し、上記ミッドソール30として前記の如き構成の本発明のミッドソール30を用いたものである。そのミッドソール30の前足部分は、紙の材質で形成されたサイズ調節部310として構成され、後足部分は、グラスファイバー、繊維強化プラスチック、ポリプロピレンのいずれかで形成された本体部320で構成される。上記本体部320の後部下面には固定用突起321が一体的に突出して形成される。
【0016】
踵部材50の上面には固定用穴51が形成され、この固定用穴51は、上記の固定用突起321がぴったりと嵌め込まれるように、固定用突起321の外形に対応する形状に形成される。
上記の固定用穴51に、接着剤などを利用して上記の固定用突起321を結合すれば、踵部材とミッドソールの結合が完成できるため、釘などを用いた従来の婦人靴を長期間使用した場合に発生する釘の離脱現象など減らすことができ、また、釘頭の厚さが薄い複数の釘よりも堅牢な結合状態が得られるという効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0017】
以上詳細に説明したように、本発明は、使用者の足に対するフィット(fit)性に優れ、特に、踵の高い婦人靴の場合でも長時間の着用によっても復元力が低下することがなく、ミッドソールの折れ曲がりや亀裂発生などの変形も起こることがなく、曲線型の踵部材を取り付けても安定性が良い、等々の多くの利点を有する婦人靴用のミッドソール及びこれを利用した婦人靴を提供し得るものである。
尚、本願において「婦人靴」というときは、前記の如く、踵の高い紳士靴や子供靴、その他の特殊靴をも包含するものである。
【符号の説明】
【0018】
1 婦人靴
10 アッパー
20 インソール
30 ミッドソール
40 アウトソール
50 踵部材
51 固定用穴
310 サイズ調節部
320 本体部
321 固定用突起
322 フィット化溝
330 シャンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
裁断可能なサイズ調節部から成る前足部分と、使用者の足の土踏まずから踵までの領域に対応するよう設けられ、その一部に前後方向へ延びる少なくとも1条のフィット化溝が形成された本体部から成る後足部分と、を結合して成ることを特徴とする、婦人靴用のミッドソール。
【請求項2】
前記サイズ調節部の材質が紙であることを特徴とする、請求項1に記載の婦人靴用のミッドソール。
【請求項3】
前記本体部の材質がグラスファイバー、繊維強化プラスチック又はポリプロピレンのいずれかであることを特徴とする、請求項1に記載の婦人靴用のミッドソール。
【請求項4】
前記フィット化溝が前記本体部の下面中央に形成されたことを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の婦人靴用のミッドソール。
【請求項5】
前記フィット化溝の内部にアーチ型のシャンクが収容されたことを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の婦人靴用のミッドソール。
【請求項6】
前記本体部における使用者の足の踵が当接する領域の下面に固定用突起を一体的に設けたことを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の婦人靴用のミッドソール。
【請求項7】
上から順にアッパー、インソール、ミッドソール及びアウトソールを順次接合し、更に前記アウトソールの後部下面に踵部材を取り付けて成る婦人靴において、
前記ミッドソールとして請求項6に記載のミッドソールを用いると共に、前記踵部材の上面に、前記ミッドソールの本体部の下面に設けた前記固定用突起を挿入固定するための固定用穴を形成したことを特徴とする、婦人靴。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−131054(P2011−131054A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282218(P2010−282218)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(510333759)株式会社喜成 (1)
【Fターム(参考)】