説明

媒体上にサーボパターンを生成するための配置、サーボパターニングされたマスタを形成する方法、およびサーボパターニングされた媒体を形成する方法

【課題】マスタディスク上にサーボパターンを形成するための装置および方法を提供する。
【解決手段】媒体上にサーボパターンを作製することは、マスタを回転させ、マスタの1回目の回転の間にマスタ上の第1の径方向位置に第1の遷移を形成し、第2の径方向位置に第1の遷移を形成することに係る。マスタの2回目の回転の間に、第1の径方向位置に第2の遷移が形成され、第2の径方向位置に第2の遷移が形成される。第1および第2の径方向位置に位置する個別のサーボバースト遷移を露光することにより、別個のディスク回転において、磁気遷移のうち1つだけが公称径方向位置からの特定の偏向を引継ぐ。何らかの機械的外乱があれば、各々の磁気遷移はその公称位置からランダムに変位し、√nだけ書込ランアウトを低減する。なお、nは特定のサーボバースト中の磁気遷移の数である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスタディスク上にサーボパターンを形成するための装置および方法に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
要約
開示の実施形態は一般的に、マスタディスク上にサーボパターンを形成するための装置および方法に向けられている。さまざまな実施形態は、マスタを回転させ、マスタの1回目の回転の間にマスタ上の第1の公称径方向位置に第1の遷移を形成し、マスタ上の第2の公称径方向位置に第1の遷移を形成することに係る。マスタの2回目の回転の間に、第2の遷移がマスタ上の第1の公称径方向位置に形成され、第2の遷移がマスタ上の第2の公称径方向位置に形成される。遷移は、典型的に、マスタを記録ビームに露光することによってマスタ上に形成される。さまざまな実施形態は、露光されたマスタからスタンパを形成することと、そのスタンパを用いて媒体上にサーボパターンを形成することとに係る。
【0003】
他の実施形態は、マスタを回転させ、マスタの回転の間にマスタ上にサーボパターンを露光することに係り、サーボパターンは、マスタ上の異なる径方向位置に複数のサーボバーストを備える。各々のサーボバーストは複数の遷移を備え、各々のサーボバースト中の複数の遷移はマスタの別個の回転において個別に露光される。いくつかの実施形態では、公称径方向位置からのサーボバーストの複数の遷移の個別のものの変位はランダム化される。たとえば、各々の遷移は遷移内の異なるそれぞれの径方向位置に複数のスポットを備えてもよく、バースト内の隣接する遷移のスポットは、マスタの同じ回転の間に遷移内の異なるそれぞれの径方向位置で露光されてもよい。各々の遷移は遷移内の異なるそれぞれの径方向位置に複数のスポットを備えてもよく、バースト内の同じ公称径方向位置の隣接する遷移のスポットはマスタの別個の回転において露光されてもよい。
【0004】
いくつかの実施形態では、サーボパターンを露光することは、マスタに1回目の回転をさせ、1回目の回転の間に第1の径方向位置にサーボバーストの第1のものの第1の遷移を形成し、1回目の回転の間に第2の径方向位置にサーボバーストの第2のものの第1の遷移を形成することに係り得る。サーボパターンを露光することは、マスタに2回目の回転をさせ、2回目の回転の間に第1の径方向位置にサーボバーストの第1のものの第2の遷移を形成し、2回目の回転の間に第2の径方向位置にサーボバーストの第2のものの第2の遷移を形成することに係り得る。
【0005】
さまざまな実施形態に従うと、媒体上にサーボパターンを生成するための配置は、マスタディスクライタと、マスタディスクライタに結合されるコントローラとを含む。コントローラは、マスタディスクライタを制御して、マスタディスクが回っている間にマスタディスク上にサーボパターンを露光するように構成される。サーボパターンは好ましくは、マスタディスク上の異なる径方向位置に複数のサーボバーストを含み、各々のサーボバーストは複数の遷移を含み、各々のサーボバースト中の複数の遷移はマスタディスクの別個の回転において個別に露光される。
【0006】
コントローラは、マスタディスクライタを制御して、マスタディスクに1回目の回転をさせ、1回目の回転の間に第1の径方向位置にサーボバーストの第1のものの第1の遷移を形成し、1回目の回転の間に第2の径方向位置にサーボバーストの第2のものの第1の遷移を形成することによってサーボパターンを露光するように構成されてもよい。たとえば、コントローラは、マスタディスクライタを制御して、マスタディスクに2回目の回転をさせ、2回目の回転の間に第1の径方向位置にサーボバーストの第1のものの第2の遷移を形成し、2回目の回転の間に第2の径方向位置にサーボバーストの第2のものの第2の遷移を形成することによってサーボパターンを露光するように構成されてもよい。
【0007】
各々の遷移は、遷移内の異なるそれぞれの径方向位置に複数のスポットを備えてもよく、コントローラは、マスタディスクライタを制御して、マスタの同じ回転の間に遷移内の異なるそれぞれの径方向位置でバースト内の隣接する遷移のスポットを露光するように構成されてもよい。各々の遷移は、遷移内の異なるそれぞれの径方向位置に複数のスポットを備えてもよく、コントローラは、マスタディスクライタを制御して、マスタの別個の回転においてバースト内の同じ公称径方向位置に隣接する遷移のスポットを露光するように構成されてもよい。コントローラは、マスタディスクライタを制御して、マスタディス上の異なる径方向位置にサーボバーストを露光する際に、露光ビームをほぼ斜め方向に動かすように構成されてもよい。
【0008】
開示のさまざまな実施形態を特徴付けるこれらおよび他の特徴および局面は、以下の詳細な考察および添付の図面に鑑みて理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】さまざまな実施形態に従うヌルパターンを書込むための露光スキームを示す図である。
【図2】複数のトラックを有する、さまざまな実施形態に従う露光スキームを示す図である。
【図3】スポット露光領域を有するマスタリング機器のためのさまざまな実施形態に従う露光スキームを示す図である。
【図4】さまざまな実施形態に従うマスタリング配置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
書込ランアウトの減少を与える実施形態を含むさまざまな実施形態は、媒体上にサーボパターンを形成することに向けられる。ハードディスクドライブでは、ヘッド位置決めサーボシステムは、ディスク面に対する記録ヘッドの場所の正確な測定を要件とする。これは通常、製造の間にディスクの表面上に特別なサーボマークを書込むことによって達成される。典型的に、これらのサーボマークは、高精度サーボトラック書込機を用いて書込まれる。ハードディスクドライブのトラック密度が増大するにつれ、サーボトラック書込機の精度要件が高まる。
【0011】
1つの方策に従うと、未露光マスタディスクが回転テーブル上に位置決めされる。レーザビームまたは電子ビームがディスク表面に対して径方向に偏向され得、および/または回転テーブルがビームに対して径方向に動かされ得る。これらの径方向位置決め構成の一方または両方を用いて、マスタディスク表面がビームで円形に走査され、適切な場所でビームをオンおよびオフすることによって所望のサーボパターンを露光する。マスタ生成プロセスにおける如何なる誤差も複製されるディスクに引継がれてしまうので、マスタリング機器の精度は重要である。たとえば、いずれの機械的不安定性、共振および他の外乱も不正確さを招いてしまう。
【0012】
サーボセクタは、トラック中心に対してヘッドの位置を定めるのに用いられる。サーボセクタは、径方向に、サーボウェッジを形成するように配置可能である。たとえば、数百個のサーボウェッジを各々のディスク表面に形成してもよい。各々のサーボセクタは、粗い位置情報(トラック数)を与えるグレイコードフィールドと、微細な位置情報を与えるサーボバーストフィールドとを含み得る。各々のサーボバーストは、ドライブの読出変換器(ヘッド)において信号を生成する1つ以上の遷移を含んでもよく、直交サーボパターンまたはヌルサーボパターンを形成するように配置可能である。
【0013】
ディスクドライブのトラック中心は典型的に、2つの隣接するサーボバーストの遷移によって規定される。理想的には、バースト同士の間の遷移点は真円上にある。しかしながら、露光ビームの位置決めにおいて何らかの不正確さがあれば、バースト遷移はそれらの公称場所からずれ、遷移はもはや真円を形成しなくなる。非真円性は通常、書込ランアウトと称される。ディスクがディスクドライブに組込まれると、この書込ランアウトは所望されない繰返しランアウト(RRO)を生じてしまう。マスタリングプロセスにおける書込ランアウトは典型的にさまざまな機械的外乱および共振によって生じる。この外乱の周波数範囲は通常、数百ヘルツよりも下である。この周波数範囲はマスタディスク回転の周波数よりも大幅に高いが、これはサーボセクタが互いに追従する周波数よりも大幅に低い。
【0014】
ヌルサーボパターンについていくつかの実施形態を説明する。しかしながら、当業者には、開示される装置および方法を、直交パターン、位相パターンなどの他の種類のサーボパターンに適用可能であることが明らかである。さらに、本明細書中に記載の実施形態は、レーザビーム装置、電子ビーム装置などのさまざまな種類のマスタリング機器とともに用いられてもよい。
【0015】
図1は、さまざまな実施形態に従う露光スキームを示す。重要なことに、Aバースト42およびBバースト44内それぞれの遷移40は同じ回転で書込まれるわけではない。図1の遷移40を表わす矩形は、レーザまたは電子ビームによりマスタディスクの感光層を露光することによって生成される。矩形中の数字はマスタ生成プロセスの間のマスタディスク回転、すなわちレーザビームの通過を表わす。露光済および未露光の領域は最終的に複製プロセスの間に磁気ディスクの表面上の磁気遷移となる。
【0016】
図1に従う実施形態は、1回目の回転の間の第1のバースト42中の遷移、および同じ1回目の回転の間の第2のバースト44中の遷移の露光を行なう。換言すると、1回目の回転の間に、第1の遷移40が第1の公称径方向位置(バースト42)に形成され、第1の遷移40が第2の公称径方向位置(バースト44)に形成される。マスタディスクの回転および露光は、認められ得るように、各回転の間に生じる第1および第2の公称径方向位置での露光を継続する。
【0017】
第1および第2の公称径方向位置に位置する個別のサーボバースト遷移を露光することにより、別個のディスク回転において、磁気遷移40のうちただ1つだけが公称径方向位置からの特定の偏向を引継ぐ。機械的外乱がディスクの回転に相関しないと仮定すると、各セクタでの偏向はランダム変数と考えることができる。したがって、各々の磁気遷移40はその公称位置からランダムに変位される。特定のサーボセクタでのトラック中心は磁気遷移40の平均によって決まるので、書込ランアウトは√nだけ低減される。なお、nは特定のサーボバースト中の磁気遷移40の数である。
【0018】
図1の実施形態では、機械的外乱によって生じるいずれの誤差も、バーストの遷移を通じて維持されるよりはむしろ平均化される。したがって、公称トラック中心と、現実のトラック中心とは、開示の実施形態に従って作製される図1のヌルパターン中では同じである。
【0019】
以上記載されるような媒体上にサーボパターンを形成することに向けられる実施形態は、図2に実証されるように拡張可能である。図2は、より多くの数のトラック50−58に適用される露光スキームを示す。この実施形態では、遷移40はマスタディスクの各々の回転の間により多くの数のトラック上に露光される。これはパターンを書込むのに必要な余分な回転数を低減するという利点を有する。
【0020】
図3は、スポットを用いて露光するマスタリング機器とともに用いるためのさまざまな実施形態に従う露光スキームを示す。露光スポット72を表わす丸の中の数字から認められ得るように、隣接する遷移70のスポット(たとえば、バースト74内の遷移70aおよび70b)は、マスタディスクの同じ回転の間に、異なるそれぞれの径方向位置に形成される。たとえば、マスタディスクの1回目の回転の間に、スポットは遷移70a中のいちばん上の公称径方向位置に露光される。この同じ回転の間に、スポットは、遷移70b中の上から2番目の公称径方向位置に露光される。スポットをこのように露光することは、所与のバーストまたは一連の径方向に間隔を空けられたバーストについて、バースト遷移の最も内側のまたは最も外側のスポットから開始して、ほぼ傾いたまたは斜めの方向にレーザまたは電子ビームを動かすことによって達成される。これは、マスタディスクの1回目の回転の間にバースト76中の遷移70cのいちばん上の公称径方向位置においてスポットが露光され、以降継続していく。したがって、さまざまな実施形態は、同じ回転よりはむしろマスタの別個の回転で、マスタ内の同じ公称径方向位置で隣接する遷移のスポットを露光することに係る。
【0021】
図4は、さまざまな実施形態に従うマスタディスクを形成するように構成されるマスタリング機器のブロック図を示す。コントローラ80は、マスタディスクライタ82を制御して、示され上述された例示的な露光スキームに従ってマスタディスク84に書込むように構成される。コントローラ80は、メモリ85に記憶される実行可能制御ソフトウェア83に従ってプログラム命令を実行するように構成可能なプロセッサ81を組入れるまたはこれに結合される。コントローラ80は、電子ビームまたはレーザビームライタなどの多数の異なる種類のいずれでもあり得るマスタリング機器を制御して、上述の実施形態に従う露光部を形成する。
【0022】
回転の間の遷移または遷移のスポットの露光の順序付けの例とともにさまざまな実施形態を上述した。図に示される具体的な順序付けは例示のみのためであり、他の露光の順序付け、他の回転数などを用いてもよいことが明らかである。
【0023】
さまざまな実施形態の数多くの特性および局面をさまざまな実施形態の構造および機能の詳細とともに以上の説明で述べたが、この詳細な説明は図示のみのためであり、添付の請求項が表現する用語の広い一般的な意味が示す全範囲に、特に部品の構造および配置という事項において詳細に変更がなされ得ることが理解されるべきである。
【符号の説明】
【0024】
40 遷移、50−58 トラック、80 コントローラ、81 プロセッサ、82 マスタディスクライタ、84 マスタディスク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体上にサーボパターンを生成するための配置であって、
マスタディスクライタと、
前記マスタディスクライタに結合されるコントローラとを備え、前記コントローラは、前記マスタディスクライタを制御して、前記マスタディスクの回転の間にマスタディスク上にサーボパターンを露光するように構成され、前記サーボパターンは、前記マスタディスク上の異なる径方向位置に複数のサーボバーストを有し、各々のサーボバーストは複数の遷移を含み、各々のサーボバースト中の前記複数の遷移は前記マスタディスクの別個の回転において個別に露光される、配置。
【請求項2】
媒体上にサーボパターンを生成するための配置であって、
マスタディスクライタと、
前記マスタディスクライタに結合されるコントローラとを備え、前記コントローラは、
前記マスタディスクライタを制御して、マスタディスクに1回目の回転をさせ、前記1回目の回転の間に第1の径方向位置に複数のサーボバーストの第1のものの第1の遷移を形成し、前記1回目の回転の間に第2の径方向位置に前記複数のサーボバーストの第2のものの第1の遷移を形成することによってマスタディスク上にサーボパターンを露光し、かつ
前記マスタディスクライタを制御して、前記マスタディスクに2回目の回転をさせ、前記2回目の回転の間に前記第1の径方向位置に前記複数の前記サーボバーストの前記第1のものの第2の遷移を形成し、前記2回目の回転の間に前記第2の径方向位置に前記複数のサーボバーストの前記第2のものの第2の遷移を形成することによって前記マスタディスク上にサーボパターンを露光するように構成される、配置。
【請求項3】
各々の遷移は前記遷移内の異なるそれぞれの径方向位置に複数のスポットを備え、前記コントローラは、
前記マスタディスクライタを制御して、マスタの同じ回転の間に前記遷移内の前記異なるそれぞれの径方向位置にバースト内の隣接する遷移のスポットを露光するか、または
前記マスタディスクライタを制御して、前記マスタの別個の回転においてバースト内の同じ公称径方向位置に隣接する遷移のスポットを露光するように構成される、請求項1または2に記載の配置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記マスタディスク上の異なる径方向位置にサーボバーストを露光する際に、前記マスタディスクライタを制御して、露光ビームをほぼ斜め方向に動かすように構成される、請求項1または2に記載の配置。
【請求項5】
サーボパターニングされたマスタを形成する方法であって、
マスタを回転するステップと、
前記マスタが回転する間に前記マスタ上にサーボパターンを露光するステップとを備え、前記サーボパターンは前記マスタ上の異なる径方向位置に複数のサーボバーストを有し、各々のサーボバーストは複数の遷移を備え、
各々のサーボバースト中の前記複数の遷移は前記マスタの別個の回転において個別に露光される、方法。
【請求項6】
公称径方向位置からの、サーボバーストの前記複数の遷移の個別のものの変位はランダム化される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
サーボパターニングされた媒体を形成する方法であって、
マスタを回転するステップと、
マスタの1回目の回転の間に、前記マスタ上の第1の公称径方向位置に第1の遷移をおよび第2の公称径方向位置に第1の遷移を形成するステップと、
前記マスタの2回目の回転の間に、前記第1の公称径方向位置に第2の遷移をおよび前記第2の公称径方向位置に第2の遷移を形成するステップとを備える、方法。
【請求項8】
前記マスタのn回目の回転の間に、前記第1の公称径方向位置に第nの遷移をおよび前記第2の公称径方向位置に第nの遷移を形成するステップをさらに備え、nは2より大きな整数である、請求項7に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate