説明

媒体処理装置

【課題】媒体の搬送方向と直交する方向の位置を決める幅寄せ機構を搬送路中に配置した媒体処理装置において、幅寄せ機構を一方向から通過後、幅寄せNGとなった場合、再び幅寄せ機構を往復することでは幅寄せ処理をすることができないという問題がある。
【解決手段】幅寄せ機構の後方から元の搬送路に戻るループ状の循環搬送路を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉媒体を搬送処理する際に媒体の位置決めを行う幅寄せ機構を有する媒体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
媒体処理装置の中には、媒体に対して印字や磁気データの読み書き等を行うものがある。
このような媒体処理装置において、印字位置や磁気データ書き込み位置は、媒体の上端または下端、左端または右端からの位置が定められているために、正確な位置に印字したり磁気データの読み書きをしたりする場合、印字ヘッドや磁気ヘッドに対して媒体を正確に位置決めする必要がある。
【0003】
一般に、上下(前後)方向の位置決めは、媒体の搬送位置の制御によって行い、直行する方向の位置決めは、搬送路の側面に設けられている基準面に媒体を突き当てることによって位置決めを行っている。
そのため、印字または磁気データの読み書き等をする媒体処理装置には、媒体搬送方向と直交する方向に位置を決める幅寄せ機構を具備している。一般に幅寄せ機構100は図6に示す如く、搬送路101の途中に配置されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
また、幅寄せ機構の幅寄せの方式には、(1)搬送路中に設けたローラをアップさせて媒体の側面を叩いて基準面に媒体を突き当てる方式、(2)搬送路中に設けたローラをアップさせて幅寄せローラによって媒体の側面を基準面に突き当てる方式、(3)幅寄せ機構内で媒体をローラによって縦横相互に搬送して媒体の側面を基準面に突き当てる方式、(4)幅寄せ機構内に設けたテーパーローラにより搬送してその斜面により媒体の側面を基準面に突き当てる方式、(5)幅寄せ機構内に傾斜させて設けたローラにより搬送してその斜面により媒体の側面を基準面に突き当てる方式等がある。
【0005】
これらの方式において、一般に媒体が基準面に突き当たったか否かをセンサで監視し、センサが設定条件を満たすことで幅寄せOKとして処置を完了するようになっている。
上記(1)、(2)の方式では、媒体が基準面に突き当たっていないと判断された場合(幅寄せNG)、リトライ処理が可能なため、再度幅寄せ処理を行い、媒体が基準面に突き当っている(幅寄せOK)と判断されれば幅寄せ処理を完了して次工程へ搬送することになる。
【0006】
そして、幅寄せNGで規定回数のリトライオーバーとなった場合は、媒体を返却、または取り込む等の処理をし、印字または磁気データの読み書きの処理は行わない。よって、この媒体についての処理は成立しないことになる。
また、上記(3)、(4)、(5)の方式では、幅寄せ機構を一方向から通過することで幅寄せ処理が行われる方式であり、その幅寄せ機構を通過しても十分に媒体が寄せ切れない場合(幅寄せNG)、リトライのために搬送方向を逆転し、幅寄せ機構を逆方向から通過させると、幅寄せ方向とは逆方向に媒体を移動させて元の位置にもどってしまう。よって、二度目に幅寄せ機構を通過させても、一度目と同様の処理を行うだけで、また寄せ切れずに幅寄せNGとなってしまう。
【特許文献1】特開2001−12195公報
【特許文献2】特開2003−180844公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来の(3)、(4)、(5)の技術においては、幅寄せ機構を一方向から通過後、幅寄せNGとなった場合、再び幅寄せ機構を通過させることでは幅寄せ処理をすることができないという問題がある。
本発明は、このような問題を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのため、本発明は、媒体の搬送方向と直交する(左右)方向の位置を決める幅寄せ機構を搬送路中に配置した媒体処理装置において、幅寄せ機構の後方から手前の搬送路に戻るループ状の循環搬送路を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このようにした本発明は、循環搬送路中に幅寄せ機構を設け、幅寄せNGの媒体は一方向に搬送させ、再び循環搬送路に戻して幅寄せ処理を実施できるようにしたことにより、複数回の幅寄せ処理のリトライを可能にすることができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明による実施例を説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は実施例1を示す説明図である。
図において、図示しない挿入口から挿入された媒体が矢印A方向に搬送される第1の搬送路1と次工程へ搬送する第2の搬送路2があり、第1の搬送路1には、ループ状にする循環搬送路3を設けてある(第1の搬送路1にループ状の循環搬送路3を接続しても同じ構造である。)。この第1の搬送路1(循環搬送路3)と第2の搬送路2との分岐部4には切替ブレード5が設けてあり、この切替ブレード5により、一方は搬送路2、他方は循環搬送路3に切り替わるようになっている。搬送路2は媒体を矢印B方向に搬送して次の工程に受け渡し、循環搬送路3は矢印C方向に媒体を搬送して手前の搬送路1の合流部6につながるルートとなっている。
【0012】
上記第1の搬送路1(循環搬送路3)中には幅寄せ機構7が設けてある。ここに設ける幅寄せ機構7はどのような方式の幅寄せ機構でもよい。
このような構成によると、第1の搬送路1を矢印A方向に搬送されてきた媒体は、合流部6を通過して第1の搬送路1(循環搬送路3)の幅寄せ機構7に搬送され、幅寄せ処理が行われる。ここで、幅寄せ機構7の中にある図示しないセンサによって幅寄せOKと判断された場合、切替ブレード5は破線の方向に切り替えられて第2の搬送路2の矢印B方向に媒体は搬送され、次の工程に受け渡される。
【0013】
幅寄せNGと判断された場合は、切替ブレード5は図示する実線の方向に切り替わり、媒体は循環搬送路3の矢印C方向に搬送され、合流部6に戻る。
再び、媒体は幅寄せ機構7に搬送され、幅寄せ処理を行い、幅寄せ処理がOKかNGかがセンサによって判断される。幅寄せOKの場合は切替ブレード5を破線の方向に戻して搬送路2は矢印B方向へ搬送され、幅寄せNGの場合は再び循環搬送路3に搬送されて一連のリトライを繰り返す。
【0014】
なお、リトライ回数は予め設定されており、規定回数まで繰り返しても幅寄せOKとならない場合は、リトライを中止し、その媒体は異常媒体として返却等の処理をすることで一連の処理を完了させる。
以上の本実施例によると、搬送路中(循環搬送路中)に幅寄せ機構を設け、幅寄せNGの媒体は循環搬送路を経て搬送路に戻して再び幅寄せ処理を実施できるようにしたことにより、複数回の幅寄せ処理のリトライを可能にすることができるという効果を有する。
【実施例2】
【0015】
図2、図3は実施例2を示す説明図である。
上記実施例1は循環搬送路3中の幅寄せ機構7の位置を切替ブレード5の切り替え動作の前となる個所に位置させた構成であるが、本実施例では循環搬送路3中の幅寄せ機構7の位置を切替ブレード5の切り替え動作の後となる個所に位置させた構成である。
図において、図示しない挿入口から挿入された媒体を矢印A方向に搬送し、監視センサ8が配置されている第1の搬送路1と次工程へ搬送する第2の搬送路2との間にループ状の循環搬送路3を設け、この循環搬送路3と搬送路2との分岐部4には切替ブレード5が設けてあり、この切替ブレード5により、一方は搬送路2、他方は循環搬送路3に切り替わるようになっている。搬送路2は媒体を矢印B方向に搬送して次の工程に受け渡し、循環搬送路3は矢印C方向に媒体を搬送して手前の搬送路1の合流部6につながるルートとなっている。
【0016】
上記循環搬送路3中には幅寄せ機構7が設けてある。ここに設ける幅寄せ機構7はどのような方式の幅寄せ機構でもよい。
このような構成によると、搬送路1に搬送されてきた媒体は監視センサ8を通過して幅寄せOK、NGの判断を行う。
監視センサ8により幅寄せOKと判断された場合は、切替ブレード5は図示の如く破線の状態に切り替えられて搬送路2の矢印B方向に媒体は搬送され、次の工程に受け渡される。
【0017】
監視センサ8により幅寄せNGと判断された場合は、切替ブレード5は図示の如く実線の状態に切り替えられて媒体は循環搬送路3の矢印C方向に搬送され、循環搬送路3中にある幅寄せ機構7に搬送されて幅寄せ処理が行われる。この幅寄せ処理がOKかNGかを幅寄せ機構7の中にある図示しないセンサによって判断する。
媒体は、上記判断が幅寄せOK、NGのいずれの場合も、分岐部4まで搬送され、OKの場合は、切替ブレード5は破線の方向に切り替えられて搬送路2の矢印B方向に媒体は搬送され、次の工程に受け渡される。
【0018】
幅寄せNGと判断された場合は、切替ブレード5は実線の方向に切り替わり、媒体は循環搬送路3の矢印C方向に搬送され、再び、媒体は循環搬送路3の幅寄せ機構7に搬送され、幅寄せ処理を行い、幅寄せ処理がOKかNGかがセンサによって判断される。幅寄せOKの場合は搬送路2を矢印B方向へ搬送され、幅寄せNGの場合は再び循環搬送路3の幅寄せ機構7に搬送されて幅寄せ処理が行われる一連のリトライを繰り返す。
【0019】
なお、リトライ回数は予め設定されており、規定回数まで繰り返しても幅寄せOKとならない場合は、リトライを中止し、その媒体は異常媒体として返却等の処理をすることで一連の処理を完了させる。
上記の構成において、搬送路1に監視センサ8を配置しなくてもよく、その場合は必ず1回循環搬送路3を通過させることにより、循環搬送路3の中に設けた幅寄せ機構7を通すことになり、これによって幅寄せ機構7中の図示しないセンサによって幅寄せOK、NGを監視することができ、幅寄せNGのときのリトライが可能である。
【0020】
以上の本実施例によると、搬送路1に監視センサ8を配置し、循環搬送路3中の幅寄せ機構7の位置を切替ブレード5の切り替え動作の後となる個所に位置させたことにより、監視センサ8で幅寄せOKと判断された媒体は幅寄せ機構7を通すことなく搬送路2に搬送されて次の工程に受け渡されるために搬送距離を短くして処理時間を短縮することができる。
【0021】
また、幅寄せOKの媒体に対しては幅寄せ処理を行わないために、処理中に媒体を傷つけるようなことがなくなる。
また、監視センサ8がない場合であっても、循環搬送路3に幅寄せ機構7を配置することにより、全体の搬送方向A、Bに対して幅寄せ機構7の向きを自由に配置することができる。
【実施例3】
【0022】
図4、図5は実施例3を示す説明図である。
本実施例は、幅寄せ機構を曲線形状に構成したものであり、循環搬送路または搬送路に限定することなく配置する構成であって、幅寄せ機構7を曲線形状に構成してある。その幅寄せ機構7を配置する箇所の搬送路の形状も環状を含む曲線形状となる。
幅寄せ機構の配置箇所は、上記各実施例と同様であり、それらに伴い媒体の搬送動作も上記の各説明の通りである。
【0023】
以上の本実施例によると、幅寄せ機構による幅寄せ処理時に媒体が幅寄せ機構の曲線形状に沿って曲線形状となるために、幅寄せ方向に力を受けた時に媒体にコシがつき、直線形状に比べて撓みにくくなり、媒体を確実に幅寄せさせることができるものである。
また、幅寄せ機構を曲線形状にすることにより、幅寄せ機構の長さを短くすることができ、搬送路も曲線状となって短くなるために、装置の小型化をはかることができる。
【0024】
本実施例では、媒体は矢印A方向から矢印B方向に搬送されるとして説明したが、これに限定するものではなく、矢印B方向から矢印A方向に搬送させて、同様に幅寄せを行うこともできる。なお、その場合には、合流部側に切替ブレードを要することになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例1を示す説明図
【図2】実施例2を示す説明図
【図3】実施例2を示す説明図
【図4】実施例3を示す説明図
【図5】実施例3を示す説明図
【図6】従来技術の説明図
【符号の説明】
【0026】
1 搬送路
2 搬送路
3 循環搬送路
4 分岐部
5 切替ブレード
6 合流部
7 幅寄せ機構
8 監視センサ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体の搬送方向と直交する方向の位置を決める幅寄せ機構を搬送路中に配置した媒体処理装置において、
幅寄せ機構の後方から手前の搬送路に戻るループ状の循環搬送路を設けたことを特徴とする媒体処理装置。
【請求項2】
媒体の搬送方向と直交する方向の位置を決める幅寄せ機構を搬送路中に配置した媒体処理装置において、
搬送路中に媒体が基準位置にあるかを監視する監視センサを設け、その後に切替ブレードを介してループ状の循環搬送路を接続し、この循環搬送路中に幅寄せ機構を配置したことを特徴とする媒体処理装置。
【請求項3】
媒体の搬送方向と直交する方向の位置を決める幅寄せ機構を搬送路中に配置した媒体処理装置において、
幅寄せ機構を曲線形状にして媒体を曲折させた状態で幅寄せ処理を行うようにしたことを特徴とする媒体処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−58928(P2010−58928A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−227638(P2008−227638)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】