説明

媒体排出装置及び記録装置

【課題】媒体や周辺装置に対する排出補助部材の不要な接触を抑制することができる媒体排出装置及び該媒体排出装置を備える記録装置を提供する。
【解決手段】搬送装置は、カットシートCSの搬送経路に配置される駆動ローラー24と、カットシートCSを搬送する場合に駆動ローラー24との間にカットシートCSを挟持する挟持位置に移動するとともに、カットシートCSの搬送が終了した場合に搬送経路から離間した待機位置に移動する従動ローラー34と、従動ローラー34が挟持位置から待機位置に移動する場合に搬送経路に突出する突起部69bを有して、突起部69bが搬送経路上にあるカットシートCSの後端に接触することで、カットシートCSを搬送経路の外側へ排出する排出補助部材69と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば用紙などの媒体を記録装置などの装置内から排出させる媒体排出装置及び該媒体排出装置を備える記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、排出ローラーの外周面から外方に突出する複数のアーム(排出補助部材)を備えて、装置内から用紙(媒体)を排紙(排出)する用紙排出装置(媒体排出装置)がある(例えば、特許文献1)。このアームは弾力性材料によって形成され、排出ローラーとともに回転するようになっている。そして、このアームが回転時に用紙に接触することで、搬送方向の下流側へ向けて用紙をはじき飛ばすようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−246054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の用紙排出装置は、アームが常時排出ローラーとともに回転するため、排出ローラーと従動ローラーの接触位置近傍までアームの上方を覆って用紙とアームとの接触を防止するガイド補助部材を備えていた。そのため、アームとガイド補助部材とは繰り返し接触することになり、弾力性を有するアームが摩耗してしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、媒体や周辺装置に対する排出補助部材の不要な接触を抑制することができる媒体排出装置及び該媒体排出装置を備える記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の媒体排出装置は、媒体の搬送経路に配置される駆動ローラーと、前記媒体を搬送する場合に前記駆動ローラーとの間に前記媒体を挟持する挟持位置に移動するとともに、前記媒体の搬送が終了した場合に前記搬送経路から離間した待機位置に移動する従動ローラーと、前記従動ローラーが前記挟持位置から前記待機位置に移動する場合に前記搬送経路に突出する突起部を有して、該突起部が前記搬送経路上にある前記媒体の後端に接触することで、前記媒体を前記搬送経路の外側へ排出する排出補助部材と、を備える。
【0007】
この構成によれば、排出補助部材の突起部は、従動ローラーが挟持位置から待機位置に移動する場合に搬送経路に突出するので、従動ローラー及び駆動ローラーによる挟持が解除された媒体が搬送経路に残っている場合には、その媒体の後端に接触して搬送経路の外側へ排出することができる。したがって、従動ローラーが媒体を挟持しているときに排出補助部材が媒体に接触することがなく、媒体と排出補助部材との接触を防止するための部材を設ける必要もないので、媒体や周辺装置に対する排出補助部材の不要な接触を抑制することができる。
【0008】
本発明の媒体排出装置において、前記突起部は、前記排出補助部材の外周側に1つ設けられるとともに、前記従動ローラーが前記待機位置から前記挟持位置に移動する場合に、前記搬送経路から離間した移動経路を通じて、前記媒体の搬送方向における下流側から上流側に向けて移動する。
【0009】
この構成によれば、突起部は、排出補助部材の外周側に1つだけ設けられるので、従動ローラーが待機位置から挟持位置に移動する場合に、媒体の搬送経路から離間した移動経路を通じて移動することで、媒体との不要な接触を回避しつつ、媒体を排出する前の位置に戻ることができる。
【0010】
本発明の媒体排出装置において、前記従動ローラーは、前記駆動ローラーから上方に離間した前記待機位置と、前記媒体の搬送方向において前記待機位置よりも上流側となる前記挟持位置との間を移動可能であり、前記挟持位置において、前記媒体を屈曲させることで該媒体のカールを矯正する。
【0011】
この構成によれば、媒体は駆動ローラー及び従動ローラーに挟持されたときに先端側が上方に向くような態様となるために、駆動ローラー及び従動ローラーの挟持から外れたときに搬送経路上に残りやすいが、媒体の後端に排出補助部材の突起部が接触することで、媒体を確実に排出することができる。
【0012】
本発明の媒体排出装置において、カム軸及び該カム軸の回転に伴って回転するカム部材を有するカム機構と、前記カム軸の回転を前記排出補助部材に伝達するための歯車機構とをさらに備え、前記従動ローラーは前記カム部材の回転に伴って移動する。
【0013】
この構成によれば、カム軸を回転させることで、従動ローラーとともに排出補助部材の突起部を移動させることができる。したがって、突起部を変位させるために専用の駆動源を備える必要がない。
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の記録装置は、本体ケースと、前記本体ケース内に配置され、媒体に対して記録を施す記録手段と、前記媒体を前記本体ケースの外側に排出する上記媒体排出装置と、を備える。
【0015】
この構成によれば、上記媒体排出装置と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】媒体排出装置として機能する搬送装置を備えたプリンターの概略構成を示す断面図。
【図2】カール矯正動作を行っていないときのカール矯正機構を示す側面図。
【図3】カール矯正動作を行っているときのカール矯正機構を示す側面図。
【図4】カール矯正動作を行っていないときのカール矯正機構を示す上面図。
【図5】カール矯正動作を行っているときのカール矯正機構を示す上面図。
【図6】排出補助部材を説明するための斜視図。
【図7】実施形態のプリンターの電気的構成を示すブロック図。
【図8】カール矯正処理ルーチンを説明するフローチャート。
【図9】排出補助部材の作用を説明する側面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を記録装置の一種であるインクジェット式プリンター(以下、「プリンター」と略す場合もある。)に具体化した実施形態について説明する。
図1に示すように、プリンター11は、排紙部12aを有する本体ケース12と、長尺状の用紙であるシートSTをロール状に巻き重ねたロール体RSの状態で保持する保持部13と、制御装置100(図7参照)とを備えている。
【0018】
また、プリンター11は、本体ケース12内に、保持部13から排紙部12aに向かって延びる搬送経路に沿ってシートSTを搬送するとともに媒体排出装置として機能する搬送装置14を備えている。また、本体ケース12内には、ロール体RSから巻き解かれたシートSTに対して記録を施す記録部15と、カッター16とが設けられている。また、搬送方向Xにおいてカッター16の下流側には、搬送装置14の一部を構成するカール矯正機構17が設けられている。
【0019】
搬送装置14によって搬送されるシートSTは、記録部15において表面に印刷(記録)処理が施されるとともに、表面に印刷が施された部分がカッター16で切断される。そして、切断されたシートSTの先端側の部分は、媒体としてのカットシートCSとされるようになっている。なお、以下の説明において、「シートST」と表記する場合には、ロール体RSから巻き解かれた長尺状のシートと、長尺状のシートから切断されてカットシートCSとされたシートとを含むことがある。
【0020】
次に、保持部13について説明する。
保持部13は、ロール体RSを回転可能に支持する回転軸18と、回転軸18を回転させるための回転モーター19(図7参照)とを備えている。そして、回転モーター19の駆動に伴って回転軸18が図1における反時計回り方向に回転すると、ロール体RSからシートSTが巻き解かれるようになっている。
【0021】
次に、搬送装置14について説明する。
搬送装置14は、シートSTを搬送方向Xの上流側から下流側に搬送するためにシートSTの搬送経路に配置された複数の駆動ローラー20〜24と、各駆動ローラー20,21,22,24との間にシートSTを挟持する従動ローラー30,31,32,34とを備えている。各駆動ローラー20,21,22,24と各従動ローラー30,31,32,34とは、搬送経路を挟んで互いに対向する位置に配置されている。なお、以下の説明において、互いに対をなす駆動ローラー22と従動ローラー32を搬送ローラー対R2ということがある。
【0022】
また、搬送装置14は、駆動ローラー20〜24を回転させるための搬送モーター37(図7参照)と、搬送ローラー対R2と対応する位置に配置された搬送経路形成部材38とを備えている。図7に示すように、搬送モーター37の出力軸には、該出力軸の回転速度、回転位置及び回転方向を検出するためのロータリーエンコーダー40と、動力伝達切換装置41とが設けられている。動力伝達切換装置41は、シートSTの搬送工程に応じて、搬送モーター37と駆動ローラー20〜24との間で動力の伝達先を切り換えるようになっている。
【0023】
次に、記録部15について説明する。
記録部15は、搬送経路の上側に配置されたガイド軸42と、ガイド軸42に支持されたキャリッジ43と、キャリッジ43に支持された記録手段としての記録ヘッド44とを備えている。また、記録部15は、搬送経路を挟んで記録ヘッド44と対向する位置に配置された支持部材45を備えている。
【0024】
ガイド軸42は、搬送方向Xと交差(直交)するシートSTの幅方向Yに沿って延びるように本体ケース12に架設されている。また、キャリッジ43は、ガイド軸42に案内されつつ幅方向Yに沿って往復移動するようになっている。
【0025】
支持部材45の上面側には複数の吸引孔(図示略)が形成されているとともに、支持部材45には吸引孔を通じてシートSTを吸着するための吸引機構46が内蔵されている。また、記録ヘッド44には、液体としてのインクを噴射する複数のノズル47が設けられている。そして、支持部材45に支持されたシートSTの表面(図1では上面)に記録ヘッド44のノズル47からインクが噴射されることで、シートSTに記録(印刷)が施されるようになっている。
【0026】
なお、プリンター11では、1つの印刷ジョブに含まれる印刷データを複数に分割し、分割された各印刷データに基づく印刷処理をキャリッジ43の走査毎に行うとともに、各印刷処理の合間に、シートSTの印刷が施された部分が間欠的に搬送されるようになっている。すなわち、記録部15では、幅方向Yが長手方向となる帯状の画像の形成と紙送りとが交互に繰り返されることで、1つの印刷ジョブに基づく画像が形成されるようになっている。
【0027】
また、カッター16によるシートSTの切断は、搬送装置14によるシートSTの搬送を停止させ、上流側を支持部材45の吸引機構46で保持する一方、下流側を搬送ローラー対R2で挟持した状態で行われる。なお、本実施形態においては、印刷を行うためにシートSTの搬送を停止したときに、シートSTの切断を行うようになっている。そして、切断されたカットシートCSは、駆動ローラー22〜24によって停止されることなく連続的に搬送されて、本体ケース12の外側に排出される。
【0028】
次に、搬送装置14の一部を構成するカール矯正機構17について説明する。
カール矯正機構17は、駆動ローラー23,24と、従動ローラー34とを構成要素の一部としている。また、カール矯正機構17は、センサー50と、ガイド部材51,52(図2参照)と、カムモーター53(図7参照)と、カム機構60(図2参照)とを備えている。
【0029】
センサー50は、制御装置100と電気的に接続された反射型の光学式センサーで、図示しない光源部と受光部とを有して、搬送経路形成部材38の下方となる位置に配置されている。センサー50は、光源部が上方に向けて出射した光の反射光を受光部が受光して、反射光の強さに応じた電気信号を制御装置100に出力するようになっている。例えば、センサー50は、シートSTが反射対象となったときに所定の閾値よりも大きいON値を出力する一方、シートSTが反射対象となっていないときに前記閾値以下となるOFF値を出力する。したがって、センサー50の出力値がOFF値からON値に変化することで、搬送方向XにおけるシートSTの先端が検出される。
【0030】
図2及び図3に示すように、駆動ローラー22,23,24はそれぞれ幅方向Yに延びる軸部22a,23a,24aに支持されている。また、従動ローラー32,34は、それぞれ幅方向Yに延びる軸部32a,34aに支持されている。
【0031】
図4及び図5に示すように、従動ローラー32は、幅方向Yに沿って複数(本実施形態では6つ)設けられている。同図において右側の3つの従動ローラー32及び左側の3つの従動ローラー32は、それぞれ連結部32bによって連結されている。なお、図示は省略するが、駆動ローラー22も幅方向Yに沿って従動ローラー32と同数(本実施形態では6つ)設けられている。また、駆動ローラー23,24は幅方向Yに間隔をおいて複数(本実施形態では各7つ)設けられている。また、従動ローラー34は、幅方向Yにおいて中央付近に幅の小さいものが1つ設けられているとともに、その両側に幅の大きいものが各1つ(合計で3つ)設けられている。
【0032】
搬送経路形成部材38には、従動ローラー32及び駆動ローラー22と対応する位置にそれぞれ挿通孔38aが形成されている。そして、駆動ローラー22と従動ローラー32とは、挿通孔38aを通じて互いに接触するようになっている。また、搬送経路形成部材38には、搬送方向Xにおいて挿通孔38aと対応する位置であって、幅方向Yにおける中央付近となる位置に、センサー50の光を通過させるための通過孔38bが形成されている。
【0033】
図3に示すように、従動ローラー34は、駆動ローラー24との間にシートSTを挟持したときに、シートSTの搬送に伴って従動回転するとともに、駆動ローラー23との間でシートSTを屈曲させることで、シートSTのカール(巻きぐせ)を矯正する(デカールする)ようになっている。なお、駆動ローラー23は、搬送方向Xにおいて駆動ローラー24の上流側に配置されて駆動ローラー24に向けてシートSTを搬送するとともに、シートSTが屈曲されるときに、その屈曲部分の上流側を支持する支持部として機能する。
【0034】
図2及び図3に示すように、ガイド部材51,52は、駆動ローラー24に向けてシートSTを案内するために、搬送方向Xにおいて駆動ローラー24の上流側に配置されている。なお、ガイド部材51は駆動ローラー23によって搬送されるシートSTの裏面側(下面側)をガイドする一方、ガイド部材52は駆動ローラー23によって搬送されるシートSTの表面側(上面側)をガイドするようになっている。
【0035】
図2〜図6に示すように、ガイド部材51は、搬送方向Xの上流側に設けられた基端部51aと、基端部51aから搬送方向Xの下流側に向けて延設される櫛歯状の案内部51bとを有している。なお、図4及び図5に示すように、幅方向Yにおいて、ガイド部材51の案内部51bは、隣接する駆動ローラー23同士の間であって、シートSTの端部と対応する位置に配置されている。また、搬送経路形成部材38はガイド部材51の案内部51bよりも搬送方向Xの上流側に配置されている。さらに、図6に示すように、ガイド部材51の案内部51bには、搬送方向Xにおける上流側に向かうほど搬送経路形成部材38から離間するように屈曲する屈曲部51cが形成されている。
【0036】
図4〜図6に示すように、搬送経路形成部材38の搬送方向Xにおける下流端には、幅方向Yにおいてガイド部材51の案内部51bと対応する位置に、案内部51bの変位を許容するための切欠部38cが形成されている。なお、切欠部38cやガイド部材51などを明示するために、図4〜図6ではガイド部材52の図示を省略しているとともに、図6では駆動ローラー22,23、従動ローラー32及びカットシートCSの図示を省略している。また、図4及び図5においては、カットシートCSを二点鎖線で図示している。
【0037】
図2及び図3に示すように、カム機構60は、本体ケース12に支持されたカム軸62と、カム軸62の回転に伴って回転するカム部材63,64と、カム部材63,64の回転にそれぞれ従動するレバー65,66とを備えている。レバー65は、搬送方向Xにおいてカム軸62の上流側に配置されたレバー軸67を中心に回転可能となっている。また、レバー66は、搬送方向Xにおいてカム軸62の下流側に配置されたレバー軸68を中心に回転可能となっている。なお、図6に示すように、カム部材63,64及びレバー65,66はカム軸62の両端側にそれぞれ設けられている。
【0038】
レバー65は、レバー軸67から搬送方向Xの下流側に向けて延びる支持部65aにガイド部材51が固定されているとともに、支持部65aから搬送方向Xの下流側に向けて斜め下方向に延びる係合部65bがカム部材63と係合している。レバー65は、図示しない付勢部材(例えば、ねじりコイルばね)によって図2における反時計回り方向に付勢され、常時は図2,図4及び図6に示す状態に保持されている。
【0039】
レバー66は、レバー軸68から下方に延びる係合部66aがカム部材64と係合している。レバー66において、レバー軸68から上方に延びる支持部66bの先端側には、従動ローラー34の軸部34aが回転自在に支持されている。また、レバー66の支持部66bには、ガイド部材52が固定されている。レバー65は、図示しない付勢部材(例えば、ねじりコイルばね)の付勢力によって図2における反時計回り方向に付勢され、常時は図2,図4及び図6に示す状態に保持されている。
【0040】
カム軸62は、カムモーター53の駆動に伴って回転するようになっている。そして、カム軸62が図2に示す状態から略180度回転すると、カム軸62とともにカム部材63,64が図3に示す位置まで回転する。そして、カム部材63の回転に従ってレバー65が図2における反時計回り方向に回転するとともに、カム部材64の回転に従ってレバー66が図2における時計回り方向に回転する。
【0041】
また、カムモーター53の駆動に伴ってカム軸62が図3に示す状態から略180度回転すると、カム軸62とともにカム部材63,64が回転して図2に示す位置に戻る。また、カム部材63の回転に従ってレバー65が図3における時計回り方向に回転して図2に示す位置に戻るとともに、カム部材64の回転に従ってレバー66が図3における反時計回り方向に回転して図2に示す位置に戻る。
【0042】
ガイド部材51は、レバー65の回転に伴って基端部51a側を中心に揺動することで、案内部51bが搬送経路を形成する案内位置(図2に示す位置)と、案内部51bが搬送経路から離間する退避位置(図3に示す位置)との間で変位する。そして、ガイド部材51は、案内位置においては、案内部51bのうち屈曲部51cよりも先端側の上面が搬送経路形成部材38の上面と略面一となってシートSTの支持面を構成するようになっている。このとき、ガイド部材51の屈曲部51cは、搬送経路形成部材38の切欠部38c内に配置される。
【0043】
従動ローラー34は、レバー66の回転に伴って、ほぼ駆動ローラー24の周面に沿う移動経路に沿って、従動ローラー34の周面が搬送経路から離間した待機位置(図2に示す位置)と、駆動ローラー24との間にシートSTを挟持してカールを矯正する挟持位置(図3に示す位置)との間を移動する。なお、挟持位置において、従動ローラー34は駆動ローラー24との離間距離がシートSTの厚さよりも短くなる位置に配置される。また、待機位置において、従動ローラー34は駆動ローラー24との離間距離がシートSTの厚さよりも長くなるように配置される。したがって、従動ローラー34が待機位置にあるときには、シートSTは従動ローラー34に挟持されることなく、駆動ローラー24によって図3に二点鎖線で示す搬送経路に沿って下流側に搬送される。
【0044】
図2に示すように、ガイド部材51は、搬送方向Xにおける長さが駆動ローラー23の直径より長くなっているとともに、案内部51bはその先端が駆動ローラー24にかかる位置まで延設されている。すなわち、ガイド部材51の案内部51bは、搬送方向Xにおける下流端が駆動ローラー24の周面の上流端よりも下流側に配置されている。また、従動ローラー34は、図3に示すように、挟持位置においてその周面が同図に二点鎖線で示す搬送経路と交差する態様となる。そのため、挟持位置にある従動ローラー34の周面と案内位置にあるガイド部材51の案内部51bとは互いに干渉することになる。
【0045】
こうしたガイド部材51と従動ローラー34との干渉を回避するために、本実施形態では、従動ローラー34が挟持位置に向けて下方に移動する場合、ガイド部材51は従動ローラー34における挟持位置から待機位置への移動経路から下方に離間した退避位置に移動可能となっている。また、カム軸62が回転すると、ガイド部材51はカム部材63の回転に伴って移動するとともに、従動ローラー34はカム部材64の回転に伴って移動する。そのため、ガイド部材51の案内部51bは、従動ローラー34が待機位置から挟持位置に向けて下方に移動するタイミングで、案内位置から退避位置に向けて下方に移動することになる。
【0046】
図4に示すように、駆動ローラー24を支持する軸部24aには、幅方向Yにおいて中央に位置する幅の短い駆動ローラー24と隣接する位置(図4における左側)に排出補助部材69が支持されている。排出補助部材69には、図4における左側となる位置に、周方向に沿って係合歯部69aが形成されている。また、排出補助部材69の外周側には、図4において係合歯部69aの右側となる位置に突起部69bが1つ設けられている。なお、幅方向Yにおいて排出補助部材69と対応する位置にあるガイド部材51の案内部51bは、突起部69bとの干渉を回避するために、搬送方向Xにおける長さが他の案内部51bよりもやや短くなっている。
【0047】
図6に示すように、カム軸62の幅方向Yにおいて排出補助部材69と対応する位置には、カム軸62と一体的に回転する歯車70が固定されている。また、排出補助部材69と歯車70との間には、歯車71,72,73が配置されている。そして、歯車71は歯車70及び歯車72と噛合しているとともに、歯車73は歯車72及び排出補助部材69の係合歯部69aと噛合している。なお、本実施形態において、歯車70,71,72,73は、カム軸62の回転を排出補助部材69に伝達するための歯車機構74を構成している。
【0048】
そして、カムモーター53の駆動によってカム軸62が図3に示す状態から略180度回転すると、歯車70〜73の従動回転に伴って、排出補助部材69が同図における反時計回り方向に略180度回転するようになっている。そして、この回転により、排出補助部材69の突起部69bは、図3に示す位置から搬送経路に突出した後、搬送経路から離間する位置(図2に示す位置)まで移動するようになっている。すなわち、排出補助部材69の突起部69bは、従動ローラー34が挟持位置から待機位置に移動する場合に搬送経路に突出する。
【0049】
一方、カムモーター53の駆動によってカム軸62が図2に示す状態から略180度回転すると、歯車70〜73の従動回転に伴って、排出補助部材69が同図における反時計回り方向に略180度回転するようになっている。そして、この回転により、排出補助部材69の突起部69bは、図2に示す位置から搬送経路から離間した移動経路を通って図3に示す位置まで戻るようになっている。すなわち、排出補助部材69の突起部69bは、従動ローラー34が待機位置から挟持位置に移動する場合に、搬送経路から離間した移動経路を通じて、搬送方向Xにおける下流側から上流側に向けて移動する。
【0050】
次に、プリンター11の電気的構成について説明する。
図7に示すように、制御装置100は、制御手段としてのコンピューター101と、ヘッド駆動回路102と、モーター駆動回路103,104,105とを備えている。コンピューター101は、バス108を介して、ヘッド駆動回路102及びモーター駆動回路103,104,105に電気的に接続されている。
【0051】
コンピューター101は、ASIC109(Application Specific IC(特定用途向けIC))、CPU110、ROM111、RAM112、不揮発性メモリー113を備えている。ROM111には、各種制御プログラム及び各種データなどが記憶されている。不揮発性メモリー113には、ファームウェアプログラムを始めとする各種プログラム及び印刷処理に必要な各種データなどが記憶されている。RAM112には、CPU110によって実行されるプログラムデータや、CPU110による演算結果及び処理結果である各種データ、並びにASIC109で処理された各種データなどが一時記憶される。
【0052】
コンピューター101は、CPU110がROM111等に記憶されたプログラムを実行することで、各種の制御を行う。例えば、コンピューター101は、ヘッド駆動回路102を介して記録ヘッド44を制御するとともに、モーター駆動回路103,104,105を介してそれぞれ回転モーター19、搬送モーター37及びカムモーター53を制御する。なお、コンピューター101は、ロータリーエンコーダー40からの検出信号に基づいて搬送モーター37を制御する。また、コンピューター101は、センサー50の検出結果等に基づいてカムモーター53を制御する。
【0053】
次に、プリンター11におけるカール矯正処理及びカットシートCSの排出処理について説明する。
プリンター11においては、記録処理が終了して切断されたカットシートCSに対してカール矯正処理(デカール処理)が施される。このとき、従動ローラー34と駆動ローラー24との間にカットシートCSの先端を確実に挿通させるために、コンピューター101は、待機位置にある従動ローラー34と駆動ローラー24との間にシートSTが挿通された状態で、従動ローラー34を待機位置から挟持位置に移動させるようになっている。すなわち、従動ローラー34はカットシートCSを搬送する場合に、駆動ローラー24との間にカットシートCSを挟持する挟持位置に移動する。
【0054】
また、従動ローラー34は、カットシートCSの後端が従動ローラー34と駆動ローラー24との間を通過してその搬送が終了した場合に、挟持位置から待機位置に移動して、次のカットシートCSの搬送に備える。このとき、排出補助部材69は突起部69bをカットシートCSの搬送経路に突出させつつ回転することで、カットシートCSの後端に接触して搬送方向Xの下流側に向けて押し出す。すなわち、カール矯正処理の終了動作とともに、本体ケース12内の搬送経路の外側にカットシートCSを排出する排出処理が行われるようになっている。
【0055】
次に、シートSTの切断が終了したときにコンピューター101が実行するカール矯正処理ルーチンについて、図8に基づいて説明する。
まず、ステップS11では、コンピューター101がカットシートCSの搬送方向Xにおける長さLを取得して、ステップS12に進む。
【0056】
ステップS12では、コンピューター101が取得したカットシートCSの長さLに基づいて、カール矯正動作を開始するタイミングを決めるカール矯正動作開始カウント値Ns及びカール矯正動作を終了するタイミングを決めるカール矯正動作終了カウント値Neを決定して、ステップS13に進む。
【0057】
ステップS13では、センサー50がカットシートCSの先端を検出したか否かをコンピューター101が判定する。そして、コンピューター101は、センサー50がカットシートCSの先端を検出した場合にはステップS14に進む一方、センサー50がカットシートCSの先端を検出していなかった場合には所定のタイミングで同判定を繰り返す。
【0058】
ステップS14では、コンピューター101がカウントを開始して、ステップS15に進む。
ステップS15では、コンピューター101が、カウント値Nがカール矯正動作開始カウント値Ns以上になったか否かを判定する。そして、コンピューター101は、カウント値Nがカール矯正動作開始カウント値Ns以上になった場合にはステップS16に進む一方、カウント値Nがカール矯正動作開始カウント値Ns未満であった場合には所定のタイミングで同判定を繰り返す。
【0059】
ステップS16では、コンピューター101がカムモーター53を駆動させることで、カール矯正動作を開始させて、ステップ17に進む。具体的には、カムモーター53の駆動によってカム軸62を略180度回転させることで、従動ローラー34を待機位置から矯正位置に移動させるとともに、ガイド部材51を案内位置から退避位置に移動させる。これにより、ガイド部材51によって駆動ローラー24と従動ローラー34との間に先端側が挿通されたカットシートCSは、駆動ローラー23との間でカールの巻き方向と逆方向に屈曲され、カールが矯正される。
【0060】
ステップS17では、コンピューター101がカウント値Nがカール矯正動作終了カウント値Ne以上になったか否かを判定する。そして、コンピューター101は、カウント値Nがカール矯正動作終了カウント値Ne以上になった場合にはステップS18に進む一方、カウント値Nがカール矯正動作終了カウント値Ne未満であった場合には所定のタイミングで同判定を繰り返す。
【0061】
ステップS18では、コンピューター101がカムモーター53を駆動させることで、カール矯正動作を終了させて、処理を終了する。具体的には、カムモーター53の駆動によってカム軸62を略180度回転させることで、従動ローラー34を矯正位置から待機位置に移動させるとともに、ガイド部材51を退避位置から案内位置に移動させる。
【0062】
なお、従動ローラー34は、駆動ローラー24から上方に離間した待機位置から、搬送方向Xにおいて待機位置よりも上流側となる挟持位置に移動して、挟持位置においてカットシートCSを屈曲させることでカットシートCSのカールを矯正する。そのため、デカールされたシートSTは搬送方向Xの下流側となる先端側が上方に向けて傾斜するように駆動ローラー24によって搬送される。そのため、カットシートCSが従動ローラー34及び駆動ローラー24による挟持から外れると、搬送力が不足して本体ケース12から排出されないことがある。
【0063】
その点、本実施形態では、ステップS18でカム軸62が回転したときに、図9に示すように、歯車70〜73が同図に矢印で示す方向にそれぞれ回転することで、排出補助部材69の突起部69bが搬送経路に突出してカットシートCSの後端を押し出すように回転するので、カットシートCSは本体ケース12の外側に確実に排出される。
【0064】
また、排出補助部材69の突起部69bは、次のカットシートCSに対するカール矯正動作が開始されるステップS16において搬送方向Xの上流側に向けて移動するので、次のカットシートCSの排出に備えることができる。したがって、カール矯正動作の開始動作及び終了動作に伴って排出補助部材69が回転することで、複数のカットシートCSが連続的に排出される場合にも、各カットシートCSの後端を1つの突起部69bで押圧することができる。
【0065】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)排出補助部材69の突起部69bは、従動ローラー34が挟持位置から待機位置に移動する場合に搬送経路に突出するので、従動ローラー34及び駆動ローラー24による挟持が解除されたカットシートCSが搬送経路に残っている場合には、そのカットシートCSの後端に接触して搬送経路の外側へ排出することができる。したがって、従動ローラー34がカットシートCSを挟持しているときに排出補助部材69がカットシートCSに接触することがなく、カットシートCSと排出補助部材69との接触を防止するための部材を設ける必要もないので、カットシートCSや周辺装置に対する排出補助部材69の不要な接触を抑制することができる。
【0066】
(2)突起部69bは、排出補助部材69の外周側に1つだけ設けられるので、従動ローラー34が待機位置から挟持位置に移動する場合に、カットシートCSの搬送経路から離間した移動経路を通じて移動することで、カットシートCSとの不要な接触を回避しつつ、カットシートCSを排出する前の位置に戻ることができる。
【0067】
(3)カットシートCSは駆動ローラー24及び従動ローラー34に挟持されたときに先端側が上方に向くような態様となるために、駆動ローラー24及び従動ローラー34の挟持から外れたときに搬送経路上に残りやすいが、カットシートCSの後端に排出補助部材69の突起部69bが接触することで、カットシートCSを確実に排出することができる。
【0068】
(4)カム軸62を回転させることで、従動ローラー34とともに排出補助部材69の突起部69bを移動させることができる。したがって、突起部69bを変位させるために専用の駆動源を備える必要がない。
【0069】
(5)従動ローラー34を待機位置に移動させておくことで、シートSTを従動ローラー34と駆動ローラー24との間にスムーズに挿通させることができる。そして、従動ローラー34と駆動ローラー24との間にシートSTが挿通された状態で従動ローラー34が待機位置から挟持位置に移動されるので、シートSTを確実に挟持することができる。
【0070】
(6)従動ローラー34は、挟持位置から待機位置に移動することで、シートSTを屈曲させることなく通過させることができる。したがって、カールを矯正する必要がないときには、従動ローラー34を待機位置に移動させることで、シートSTを搬送する際の負荷を低減することができる。
【0071】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・排出補助部材69を回転させるために、カムモーター53とは別の駆動源を用いてもよい。
【0072】
・排出補助部材69は、軸部24aの幅方向Yに沿って複数設けてもよいし、幅方向Yにおけるサイズを変更してもよい。また、突起部69bは、排出補助部材69の外周側において幅方向Yに並ぶ態様であれば、複数設けられていてもよい。
【0073】
・排出補助部材69は、カール矯正機構17を構成しない駆動ローラーまたは従動ローラーの軸部に支持されていてもよい。
・媒体は、プリンター11に備えられたカッター16によってカットシートCSとされたものに限らず、予め所定サイズに切断された状態で記録部15に搬送される単票紙であってもよい。
【0074】
・カール矯正機構17にガイド部材51を備えない構成としてもよい。この場合には、カール矯正機構17の構成を簡素化することができる。
・従動ローラー34は、例えばシートSTの厚さに応じて複数の挟持位置や待機位置に移動可能な構成としてもよい。
【0075】
・駆動ローラー22,23,24及び従動ローラー32,34の設置数や幅方向Yにおけるサイズなどは、任意に変更することができる。
・センサー50は光学式センサーに限らず、接触式センサーなど、任意の方式のセンサーに変更することができる。
【0076】
・カットシートCSは、用紙に限らず、樹脂製フィルムや金属製フィルムなど、任意の媒体に適用することができる。
・記録処理は、印刷や印字を行うものに限らず、例えば媒体にシールを付したり、箔を転写したり、孔をあけたり、切り目を入れたりする各種処理としてもよい。そして、これら各処理を行う処理装置に本発明の媒体排出装置を備えるようにしてもよい。
【0077】
・上記実施形態では、記録方式としてインクジェット方式を採用した記録装置について記載したが、電子写真方式や熱転写方式など、任意の記録方式の記録装置に変更することもできる。また、記録装置はプリンターに限らず、FAX装置、コピー装置、あるいはこれら複数機能を備えた複合機等であってもよい。さらに、記録装置として、インク以外の他の液体の微小量の液滴を噴射したり吐出したりする液体噴射ヘッド等を備える液体噴射装置を採用してもよい。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置等であってもよい。
【符号の説明】
【0078】
11…記録装置としてのプリンター、12…本体ケース、14…媒体排出装置として機能する搬送装置、24…駆動ローラー、34…従動ローラー、44…記録手段としての記録ヘッド、60…カム機構、62…カム軸、64…カム部材、69…排出補助部材、69b…突起部、74…歯車機構、CS…媒体としてのカットシート、X…搬送方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体の搬送経路に配置される駆動ローラーと、
前記媒体を搬送する場合に前記駆動ローラーとの間に前記媒体を挟持する挟持位置に移動するとともに、前記媒体の搬送が終了した場合に前記搬送経路から離間した待機位置に移動する従動ローラーと、
前記従動ローラーが前記挟持位置から前記待機位置に移動する場合に前記搬送経路に突出する突起部を有して、該突起部が前記搬送経路上にある前記媒体の後端に接触することで、前記媒体を前記搬送経路の外側へ排出する排出補助部材と、を備えることを特徴とする媒体排出装置。
【請求項2】
前記突起部は、前記排出補助部材の外周側に1つ設けられるとともに、前記従動ローラーが前記待機位置から前記挟持位置に移動する場合に、前記搬送経路から離間した移動経路を通じて、前記媒体の搬送方向における下流側から上流側に向けて移動することを特徴とする請求項1に記載の媒体排出装置。
【請求項3】
前記従動ローラーは、前記駆動ローラーから上方に離間した前記待機位置と、前記媒体の搬送方向において前記待機位置よりも上流側となる前記挟持位置との間を移動可能であり、前記挟持位置において、前記媒体を屈曲させることで該媒体のカールを矯正することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の媒体排出装置。
【請求項4】
カム軸及び該カム軸の回転に伴って回転するカム部材を有するカム機構と、前記カム軸の回転を前記排出補助部材に伝達するための歯車機構とをさらに備え、
前記従動ローラーは前記カム部材の回転に伴って移動することを特徴とする請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載の媒体排出装置。
【請求項5】
本体ケースと、
前記本体ケース内に配置され、媒体に対して記録を施す記録手段と、
前記媒体を前記本体ケースの外側に排出する請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載の媒体排出装置と、を備えることを特徴とする記録装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate