説明

媒体搬送機構

【課題】対向して備える搬送ローラ対により媒体を搬送する媒体搬送機構において、低コスト、省スペース化を可能とし、組立も簡単にする。
【解決手段】コイル部12と当該両端にアームを備えたトーションスプリング11と、前記トーションスプリング11の一方のアームを固定する第1の固定壁Aと、前記第1の固定壁Aと反対側に前記コイル部12を固定する第2の固定壁BおよびCを配置し、前記第1の固定壁A側にて前記トーションスプリング11の他方のアームを従動ローラシャフト17aに当接させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送ローラ対により紙葉類、冊子、カードなどの媒体を搬送する媒体搬送機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、媒体搬送機構101は、図7に示したように、搬送ローラ対として駆動ローラ18とこれに対向した位置に従動ローラ17を配置し、駆動ローラ18を図示しない動力源でW1方向に回転させ、従動ローラ17をW2方向に連れ周りさせ、挟持された媒体4を矢印Xのように搬送するようになっている。
【0003】
そして、従動ローラ17には、挟持する媒体4の厚さの変化に対応できるように、スプリング103により矢印Yのように押圧する押圧機構が備えられている。
【0004】
そして、押圧機構として、圧縮スプリングにより従動ローラ17のシャフトを押圧する構成の押圧機構(例えば、特許文献1参照。)や、板バネをネジで固定し従動ローラ17のシャフトを押圧する構成の押圧機構(例えば、特許文献2参照。)や、トーションスプリングのコイル部に支点用シャフトを通しトーションスプリングの一方のアームを固定し他方のアームで従動ローラ17のシャフトを押圧する押圧機構(例えば、特許文献3参照。)はあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−67042号公報
【特許文献2】特開平1−150651号公報
【特許文献3】特開平8−2734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の圧縮スプリングによる押圧機構は、スプリングが低コストであり、狭いスペースに実装できるが、圧縮スプリングを固定するために上から押さえる蓋が必要になり、部品点数や組立工数が多くなってしまうという問題があった。
【0007】
また、上記従来の板バネによる押圧機構では、板バネ1つでシャフトを押圧することができ、組立も簡単であるが、板バネは他のスプリングより高コストであり、さらに、テンションを安定させるために板バネを長くしてテンションの振れ幅を減らす必要があるため、実装スペースも大きくなるという問題があった。
【0008】
また、上記従来のトーションスプリングによる押圧機構では、スプリング1つでシャフトを押圧することができ低コストであるが、トーションスプリングの支点にシャフトを通す必要があるため、トーションスプリングのアームを固定させながらコイル部にシャフトを通す必要があり、組立てが難しいという問題があった。
【0009】
以上のように、従来の媒体搬送機構の押圧機構では、低コストで、省スペース化が可能で、かつ組立が容易であるという全ての条件を満たすことができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前述の課題を解決するために次の構成を採用する。すなわち、対向して備える搬送ローラ対により媒体を搬送する媒体搬送機構において、コイル部と当該両端にアームを備えたトーションスプリングと、前記トーションスプリングの一方のアームを固定する第1の固定壁と、前記第1の固定壁と反対側に前記コイル部を固定する第2の固定壁を配置し、前記第1の固定壁側にて前記トーションスプリングの他方のアームを前記一方の搬送ローラのシャフトに当接させるようにした。
【発明の効果】
【0011】
本発明のロール紙巻取り機構によれば、以上のように構成したので、低コスト、省スペース化が可能で、組立も簡単にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1の媒体搬送機構の構成図である。
【図2】実施例1の媒体搬送機構の動作説明図である。
【図3】実施例1の媒体搬送機構の変形例の構成および動作説明図である。
【図4】実施例2の媒体搬送機構の構成図である。
【図5】実施例2の媒体搬送機構の組立図である。
【図6】実施例2の媒体搬送機構の動作説明図である。
【図7】従来の媒体搬送機構の構成および動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係わる実施の形態例を、図面を用いて説明する。図面に共通する要素には同一の符号を付す。
【実施例1】
【0014】
(構成)
図1は、実施例1の媒体搬送機構1の構成図を示す。同図に示したように、実施例1の媒体搬送機構1は、従来の媒体搬送機構と同様に、搬送ローラ対として駆動ローラ18とこれに対向した位置に従動ローラ17を配置し、駆動ローラ18を図示しない動力源でW1方向に回転させ、従動ローラ17をW2方向に連れ周りさせ、挟持された媒体4を矢印Xのように搬送するようになっている。
【0015】
さらに、実施例1の媒体搬送機構1は、コイル部12と当該両端にアームを備えたトーションスプリング11と、トーションスプリング11の一方のアームを固定する第1の固定壁としての固定壁A(13a)と、コイル部12を固定する第2の固定壁としての固定壁B(13b)および固定壁C(13c)を配置し、トーションスプリング11の他方のアームを従動ローラ17の従動ローラシャフト17aに当接させた構成となっている。
【0016】
したがって、実施例1の媒体搬送機構1は、トーションスプリング11を固定するためのシャフトを要しない構成となっている。そして、詳細後述のように、固定壁A(13a)への外力F1と、従動ローラシャフト17aへの外力F2と、固定壁B(13b)および固定壁C(13c)への外力F3がつり合うようになっている。
【0017】
(動作)
以上の構成により実施例1の媒体搬送機構1は、以下のように動作する。この動作を図2の動作説明図を用いて以下詳細に説明する。
【0018】
まず、トーションスプリング11の取り付けは、トーションスプリング11のコイル部12を固定壁B(13b)および固定壁(13c)に嵌め込み、次にトーションスプリング11の一方のアームを固定壁A(13a)に当接させ、最後にトーションスプリング11の他方のアームを従動ローラシャフト17aに当接させる。このとき、トーションスプリング11には、図示していないが、自由時角度から所定の変位角θが発生する。
【0019】
なお、トーションスプリング11の一方のアームを固定壁A(13a)に当接させてからトーションスプリング11のコイル部12を固定壁B(13b)および固定壁(13c)に嵌め込むようにしてもよい。
【0020】
すると、トーションスプリング11の前記変位角θとアーム長L1、L2に応じて、固定壁A(13a)の位置では外力F1が発生し、従動ローラシャフト17aの位置では外力F2が発生する。
【0021】
そして、固定壁A(13a)では外力F1に対する反力としてN1が発生し、従動ローラシャフト17aでは外力F2に対する反力としてN2が発生し、これらの反力の合成N1+N2がトーションスプリング11のコイル部12の仮想支点位置12cに外力F3となって固定壁B(13b)および固定壁C(13c)に発生する。そして、これらの外力が、F3=F1+F2の関係でつり合う。
【0022】
なお、以上の実施例の説明では、第2の固体壁として固定壁B(13b)および固定壁(13c)を設け、トーションスプリング11のコイル部12を嵌め込んで固定するように説明したが、図3(a)に示したように、トーションスプリング11のコイル部12の外径の一部と当接する円弧状の固定壁D(13d)を第2の固体壁として設けるようにしてもよいし、図3(b)に示したように、固定壁B(13b)および固定壁C(13c)に加え、固定壁E(13e)を設けてこれらを第2の固体壁とするようにしてもよい。
【0023】
また、以上の実施例の説明では、第2の固体壁を90度程度の角度により固定壁を構成するように説明したが、90度超の角度にてさらに多くの平面にて固定壁を構成しそれぞれの面にコイル部12を当接させるようにしてもよい。
【0024】
(実施例1の効果)
以上のように、実施例1の媒体搬送機構によれば、対向して備える搬送ローラ対により媒体を搬送する媒体搬送機構において、コイル部と当該両端にアームを備えたトーションスプリングと、前記トーションスプリングの一方のアームを固定する第1の固定壁と、前記第1の固定壁と反対側に前記コイル部を固定する第2の固定壁を配置し、前記第1の固定壁側にて前記トーションスプリングの他方のアームを従動ローラシャフトに当接させるようにしたので、低コスト、省スペース化が可能で、組立も簡単にすることができる。
【実施例2】
【0025】
(構成)
図4は、実施例2の媒体搬送機構1の構成図を示す。同図に示したように、実施例2の媒体搬送機構1は、トーションスプリング11の一方のアームを固定する第1の固定壁としてトーションスプリング11の側をエッジ形状とし当該反対側を斜め形状とした固定壁F(13f)と、トーションスプリング11のコイル部12を嵌め込んで固定する第2の固定壁としての固定壁G(13g)をハウジング10に設けた構成となっている。
【0026】
したがって、実施例2の媒体搬送機構1も、実施例1の媒体搬送機構と同様に、トーションスプリング11を固定するためのシャフトを要しない構成となっている。そして、詳細後述のように、固定壁F(13f)への外力F1aと、従動ローラシャフト17aへの外力F2と、固定壁G(13g)への外力F3bがつり合うようになっている。その他の構成は実施例1の媒体搬送機構と同様であるので簡略化のためにその詳細な説明は省略する。
【0027】
(動作)
以上の構成により、実施例2の媒体搬送機構1は、以下のように動作する。この動作を図5の組立図および図6の動作説明図を用いて以下詳細に説明する。
【0028】
トーションスプリング11をハウジング10に装着する手順は、まず、図5の斜視図および図6(a)の断面図に示したように、トーションスプリング11のコイル部12をハウジング10の固定壁G(13g)に嵌め込み(破線a)、次に、トーションスプリング11の連結部11aを固定壁F(13f)の上部に押し当て、さらに矢印Aのように下側に押し込んで(破線b)、ハウジング10を組み立てる。
【0029】
このとき、図6(a)に示したように、固定壁F(13f)への外力は、トーションスプリング11の連結部11aを固定壁F(13f)に押し込んで取り付けるために矢印F1aのように斜め上方向に発生し固定壁F(13f)からはその反力N1aが発生する。そして、固定壁G(13g)には前記反力N1aが外力F3aとなってかかり、F3a=F1aとなってつり合う。
【0030】
次に、従動ローラ17の従動ローラシャフト17aを図示しない取付台に取り付けられた軸受け9に嵌め込む(破線c)。
【0031】
そして、以上のように組み立てたハウジング10を、トーションスプリング11の他方のアームを従動ローラシャフト17aに当接するように図示しない軸受け9の取付台に装着する(破線d)。
【0032】
すると、図示していないが、トーションスプリング11の自由時角度からの変位角θにより発生する応力により、図6(b)に示したように、従動ローラシャフト17aの位置にて外力F2が発生し反力としてN2が発生する。
【0033】
そして、反力の合成N1a+N2がトーションスプリング11のコイル部12の仮想支点位置12cに外力F3bとなって固定壁G(13g)に発生し、これらの外力が、F3b=F1a+F2の関係でつりあう。
【0034】
なお、以上の実施例の説明では、トーションスプリング11としてコイル部12であるコイル部を2個備えたダブルトーションスプリングを例として説明したが、コイル部12が1個のものであってもよいし、3個以上あるものであってもよい。
【0035】
また、トーションスプリング11として2個のコイル部をそれぞれの一方のアーム同士を連結部11aにより連結したものを例として説明したが、連結部11aを設けず2個のトーションスプリングをそれぞれハウジング10に装着するようにしてもよい。
【0036】
(実施例2の効果)
以上のように、実施例2の媒体搬送機構によれば、トーションスプリングの一方のアームを固定する第1の固定壁と、前記第1の固定壁と反対側に前記コイル部を固定する第2の固定壁をハウジングに設けるようにしたので、実施例1の効果に加え、さらに、組み立てを簡単にすることができる。
【0037】
《その他の変形例》
以上の実施例の説明では、従動ローラ12の従動ローラシャフト12aにトーションスプリング11の一方のアームを当接させるように説明したが、駆動ローラ18のシャフトに当接させるようにしてもよいし、トーションスプリング11を2個設け、従動ローラ12および駆動ローラ18のシャフトに当接させるような構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上述べたように、本発明は、搬送ローラ対により紙葉類、冊子、カードなどの媒体を搬送する媒体搬送機構を備えた媒体処理装置に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0039】
1 媒体搬送機構
9 軸受け
10 ハウジング
11 トーションスプリング
11a 連結部
12 コイル部
12c 仮想支点位置
13a〜13g 固定壁
17 従動ローラ
17a 従動ローラシャフト
18 駆動ローラ
F1、F1a、F2、F3、F3a、F3b 外力
N1、N1a、N2 反力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向して備える搬送ローラ対により媒体を搬送する媒体搬送機構において、
コイル部と当該両端にアームを備えたトーションスプリングと、
前記トーションスプリングの一方のアームを固定する第1の固定壁と、
前記第1の固定壁と反対側に前記コイル部を固定する第2の固定壁を配置し、
前記第1の固定壁側にて前記トーションスプリングの他方のアームを前記一方の搬送ローラのシャフトに当接させるようにしたことを特徴とする媒体搬送機構。
【請求項2】
前記第1の固定壁と、前記第2の固定壁をハウジングに備えるようにしたことを特徴とする請求項1記載の媒体搬送機構。
【請求項3】
前記第1の固定壁は、前記トーションスプリングの側をエッジ形状とし、当該反対側を斜め形状にしたことを特徴とする請求項2記載の媒体搬送機構。
【請求項4】
前記第2の固定壁は、前記コイル部と複数個所当接する平面の組合せまたは前記コイル部の外径の一部と当接する円弧状としたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の媒体搬送機構。
【請求項5】
前記トーションスプリングは、コイル部を2個備えそれぞれの一方のアーム同士を連結部により連結したダブルトーションスプリングとしたことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の媒体搬送機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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