媒体搬送装置、媒体搬送方法及び印刷装置
【課題】複数の媒体の給送及び排出に要する時間の長期化を抑制しつつ、媒体の給送及び排出に基づき発生する騒音を低減させることができる媒体搬送装置、媒体搬送方法及び印刷装置を提供する。
【解決手段】給送制御部54は、給紙カセットに保持される複数枚の用紙を搬送する場合に、1枚目の用紙を給送する際の給送ローラー対35の駆動ローラーを、2枚目以降の用紙を給送する際の第2給送時回転速度の最大値よりも低速の第1給送時回転速度で回転させ、最後の用紙を処理領域から排出する際の排出ローラー対36の駆動ローラーを、最後の用紙以外の用紙を処理領域から排出した際の第2排出時回転速度の最大値よりも低速の第1排出時回転速度で回転させる。
【解決手段】給送制御部54は、給紙カセットに保持される複数枚の用紙を搬送する場合に、1枚目の用紙を給送する際の給送ローラー対35の駆動ローラーを、2枚目以降の用紙を給送する際の第2給送時回転速度の最大値よりも低速の第1給送時回転速度で回転させ、最後の用紙を処理領域から排出する際の排出ローラー対36の駆動ローラーを、最後の用紙以外の用紙を処理領域から排出した際の第2排出時回転速度の最大値よりも低速の第1排出時回転速度で回転させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙などの媒体を所定の処理が行われる処理領域に給送し、該処理領域で処理済みとなった媒体を排出する媒体搬送装置及び媒体搬送方法に関する。また、本発明は、上記媒体搬送装置と該媒体搬送装置によって処理領域に搬送された媒体に対して印刷を施す印刷手段とを備える印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置においては、そのスループットの向上が強く望まれている。そのため、印刷装置に搭載される媒体搬送装置では、用紙などの媒体を、印刷手段によって印刷処理(所定の処理)が行われる処理領域に給送する際の給送速度、及び印刷済みとなった媒体を処理領域から排出する際の排出速度などの高速化が進んでいる。しかしながら、給送速度及び排出速度の高速化が進んだ近年では、媒体搬送装置で発生する媒体の給送及び排出に基づく騒音の大きさが問題となっている。
【0003】
こうした騒音問題を解決する処理装置としては、例えば特許文献1に記載のファクシミリ装置が知られている。このファクシミリ装置は、所定の条件の成立時には、媒体の給送速度及び排出速度を所定の条件の非成立時の速度よりも低速に設定することにより、騒音の低減を図っている。なお、所定の条件としては、ファクシミリ装置が家庭用である場合にはユーザーが就寝している深夜であること、ファクシミリ装置がオフィス用である場合にはユーザーの勤務時間であることなどが挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−151906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記ファクシミリ装置では、所定の条件の成立時には、騒音を低減させることができるものの、スループットが低下する。その一方で、所定の条件の非成立時には、スループットは低下しないものの、騒音問題が依然として残ってしまう。すなわち、上記ファクシミリ装置には、スループット優先モード及び騒音低減優先モードは用意されているものの、スループットの低下抑制と騒音低減とを両立したモードは用意されていない。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の媒体の給送及び排出に要する時間の長期化を抑制しつつ、媒体の給送及び排出に基づき発生する騒音を低減させることができる媒体搬送装置、媒体搬送方法及び印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の媒体搬送装置は、媒体を保持する媒体保持手段と、前記媒体保持手段に保持される処理前の媒体を、所定の処理が行われる処理領域に給送すべく回転する給送用回転体を有する給送手段と、前記処理領域で処理済みとなった媒体を、前記処理領域から搬送方向における下流側に排出すべく回転する排出用回転体を有する排出手段と、前記給送手段及び前記排出手段を制御する搬送制御手段と、を備え、前記搬送制御手段は、前記媒体保持手段に保持される複数個の媒体を搬送する場合に、1個目の媒体を給送する際の前記給送用回転体が、2個目以降の媒体を給送する際の第2給送時回転速度の最大値よりも低速の第1給送時回転速度で回転するように前記給送手段を制御し、最後の媒体を前記処理領域から排出する際の前記排出用回転体が、最後の媒体以外の媒体を前記処理領域から排出した際の第2排出時回転速度の最大値よりも低速の第1排出時回転速度で回転するように前記排出手段を制御する。
【0008】
上記構成によれば、複数の媒体を1つずつ処理領域に給送する際において、1個目の媒体を媒体保持手段から処理領域に給送させる場合に、給送用回転体は、2個目以降の媒体を給送する際の第2給送時回転速度の最大値よりも低速の第1給送時回転速度で回転する。また、最後の媒体を処理領域から排出させる場合に、排出用回転体は、最後の媒体以外の媒体を前記処理領域から排出した際の第2排出時回転速度の最大値よりも低速の第1排出時回転速度で回転する。すなわち、媒体の給送時においては、1個目の媒体の給送速度が低くなり、媒体の排出時においては、最後の媒体の排出速度が低くなる。そのため、全ての媒体の給送速度及び排出速度が低く設定される場合と比較して、複数の媒体の給送及び排出に要する時間の長期化が抑制される。また、全ての媒体の給送速度及び排出速度が高く設定される場合と比較して、媒体の給送及び排出に基づき発生する騒音が低減される。したがって、複数の媒体の給送及び排出に要する時間の長期化を抑制しつつ、媒体の給送及び排出に基づき発生する騒音を低減させることができる。
【0009】
本発明の媒体搬送装置において、前記搬送制御手段は、先行の媒体が前記処理領域から排出される場合に、後行の媒体が前記処理領域に向けて供給されるように前記給送手段及び前記排出手段を制御する。
【0010】
上記構成によれば、処理済みとなった先行の媒体の排出とこれから所定の処理が行われる後行の媒体の給送とが同時に行われる。そのため、排出と給送とが別々のタイミングで行われる場合と比較して、媒体の給送・排出に要する時間を短くすることができる。
【0011】
本発明の媒体搬送装置において、前記給送手段は、前記搬送方向において互いに異なる位置に配置される複数の前記給送用回転体を有し、前記媒体搬送装置は、前記給送手段及び前記排出手段に駆動力を付与すべく駆動する駆動源と、前記各給送用回転体のうち前記媒体保持手段内の媒体を該媒体保持手段外に送り出すための特定の給送用回転体への前記駆動源からの動力伝達を許可又は遮断すべく動作するクラッチ手段と、をさらに備え、前記搬送制御手段は、最後の媒体が前記媒体保持手段から給送された場合には、前記クラッチ手段を遮断状態にする。
【0012】
上記構成によれば、最後の媒体が媒体保持手段から送り出されると、特定の給送用回転体には駆動源からの駆動力が伝達されなくなる。そのため、予定個数以上の媒体が媒体保持手段から送り出されることを回避できる。
【0013】
本発明の媒体搬送装置において、前記給送手段は、前記搬送方向において互いに異なる位置に配置される複数の前記給送用回転体を有し、前記媒体搬送装置は、前記各給送用回転体のうち、前記媒体保持手段内の媒体を該媒体保持手段外に送り出すための特定の給送用回転体以外の他の給送用回転体と、前記排出用回転体とに駆動力を付与すべく駆動する第1駆動源と、前記特定の給送用回転体に駆動力を付与すべく駆動する第2駆動源と、をさらに備え、前記搬送制御手段は、前記第1駆動源の駆動に基づき給送又は排出される先行の媒体の給送速度よりも、前記第2駆動源の駆動に基づき給送される後行の媒体の給送速度のほうが低速となるように前記各駆動源を制御する。
【0014】
第2駆動源の駆動に基づく後行の媒体の給送が開始された場合には、第1駆動源の駆動に基づき給送される先行の媒体の少なくとも一部が処理領域内に位置しており、該先行の媒体に対して所定の処理が行われていることがある。本発明では、後行の媒体の給送速度が先行の媒体の給送速度よりも低速に設定される。そのため、後行の媒体の先端が先行の媒体の後端よりも給送方向における下流側に位置してしまう事態を回避できる。また、後行の媒体の給送に伴い発生する騒音を小さくすることができる。
【0015】
本発明の媒体搬送装置において、前記搬送制御手段は、第1排出時回転速度が第1給送時回転速度よりも低速となるように前記給送手段及び前記排出手段を制御する。
最後の媒体の排出時には、該媒体が処理領域から確実に排出させることができるように、排出手段の駆動時間が長めに設定される。そのため、排出手段の排出用回転体は、空回転することがある。そこで、本発明では、第1排出時回転速度が第1給送時回転速度よりも低速に設定されている。そのため、最後の媒体の排出完了後における排出用回転体の空回転時における騒音を小さくすることができる。
【0016】
本発明の媒体搬送装置は、前記媒体保持手段に保持される媒体のサイズを検出するサイズ検出手段と、前記サイズ検出手段によって検出された媒体のサイズが大きい場合には、検出された媒体のサイズが小さい場合よりも第1給送時回転速度を高速に設定する速度設定手段と、をさらに備え、前記搬送制御手段は、1個目の媒体の給送時には、前記速度設定手段によって設定された第1給送時回転速度で前記給送用回転体が回転するように前記給送手段を制御する。
【0017】
媒体保持手段から処理領域までの給送経路の長さが、給送する媒体のサイズによって異なる場合がある。こうした場合には、第1給送時回転速度を媒体のサイズに応じた値にすることにより、1つ目の媒体の処理領域までの給送時間のばらつきが抑制される。本発明では、第1給送時回転速度は、媒体のサイズが大きい場合のほうが小さい場合よりも高速に設定される。そのため、大きいサイズの媒体の給送経路のほうが小さいサイズの媒体の給送経路よりも長い場合には、1つ目の媒体の給送時における騒音を抑制しつつ、1つ目の媒体の処理領域までの給送時間のばらつきを抑制することができる。
【0018】
本発明の媒体搬送装置は、設定された媒体の搬送数が多い場合には搬送数が少ない場合よりも第1給送時回転速度を低速に設定する速度設定手段をさらに備え、前記搬送制御手段は、1個目の媒体の給送時には、前記速度設定手段によって設定された第1給送時回転速度で前記給送用回転体が回転するように前記給送手段を制御する。
【0019】
設定された搬送数が多い場合、搬送数が少ない場合と比較して、スループットは、1個目の媒体の給送速度の低下による影響を受けにくい。そこで、本発明では、第1給送時回転速度は、設定された媒体の搬送数に応じた値に設定される。そのため、設定された媒体の搬送数が多い場合ほど、媒体の給送に伴う騒音を小さくすることができる。
【0020】
本発明の媒体搬送装置は、前記媒体保持手段で保持される媒体の種類を特定する種類特定手段と、媒体の種類毎の搬送モードを記憶するモード記憶手段と、前記種類特定手段によって特定された搬送モードの給送時回転速度が低速である場合には、特定された搬送モードの給送時回転速度が高速である場合よりも減速規定値を小さな値に設定する規定値設定手段と、前記種類特定手段によって特定された搬送モードの給送時回転速度から前記規定値設定手段によって設定された減速規定値を減算し、該減算結果に基づき第1給送時回転速度を設定する速度設定手段と、をさらに備え、前記搬送制御手段は、1個目の媒体の給送時には、前記速度設定手段によって設定された第1給送時回転速度で前記給送用回転体が回転するように前記給送手段を制御し、2個目以降の媒体の給送時には、前記種類特定手段によって特定された搬送モードの給送時回転速度に基づいた第2給送時回転速度で前記給送用回転体が回転するように前記給送手段を制御する。
【0021】
媒体の給送時に発生する騒音は、給送用回転体の回転速度が高速であるほど大きくなると推定される。そこで、本発明では、媒体の種類に基づき特定された搬送モードの給送時回転速度が高速である場合には、給送時回転速度が低速である場合よりも、1個目の媒体の給送時における給送速度の減速量が多くなる。そのため、媒体の給送時に発生する騒音が大きいと判断される搬送モードが設定された場合ほど、媒体の給送に伴う騒音を小さくすることができる。
【0022】
本発明の媒体搬送装置は、媒体の給送速度が互いに異なる複数種類の搬送モードを記憶するモード記憶手段と、選択された搬送モードの給送時回転速度が低速である場合には、選択された搬送モードの給送時回転速度が高速である場合よりも減速規定値を小さな値に設定する規定値設定手段と、選択された搬送モードの給送時回転速度から前記規定値設定手段によって設定された減速規定値を減算し、該減算結果に基づき第1給送時回転速度を設定する速度設定手段と、をさらに備え、前記搬送制御手段は、1個目の媒体の給送時には、前記速度設定手段によって設定された第1給送時回転速度で前記給送用回転体が回転するように前記給送手段を制御し、2個目以降の媒体の給送時には、選択された搬送モードの給送時回転速度に基づいた第2給送時回転速度で前記給送用回転体が回転するように前記給送手段を制御する。
【0023】
媒体の給送時に発生する騒音は、給送用回転体の回転速度が高速であるほど大きくなると推定される。そこで、本発明では、設定された搬送モードの給送時回転速度が高速である場合には、給送時回転速度が低速である場合よりも、1個目の媒体の給送時における給送速度の減速量が多くなる。そのため、媒体の給送時に発生する騒音が大きいと判断される搬送モードが設定された場合ほど、媒体の給送に伴う騒音を小さくすることができる。
【0024】
本発明の印刷装置は、上記媒体搬送装置と、前記給送手段によって前記処理領域に給送された媒体に対して印刷を施すべく駆動する印刷手段と、前記印刷手段を制御する印刷制御手段と、を備える。
【0025】
上記構成によれば、複数個の媒体に対して印刷を行う場合には、媒体の給送及び排出に伴う騒音を、印刷装置のスループットの低下を抑制しつつ低くすることができる。
本発明は、媒体保持手段に保持される複数個の媒体を、所定の処理が行われる処理領域に順次給送し、処理済みとなった媒体を前記処理領域よりも搬送方向における下流側に順次排出させる媒体搬送方法であって、1個目の媒体を前記媒体保持手段から前記処理領域に給送する場合に、媒体を前記処理領域に給送すべく回転する給送用回転体を、2個目以降の媒体を給送する際の第2給送時回転速度の最大値よりも低速の第1給送時回転速度で回転させるステップと、最後の媒体を前記処理領域から排出する場合に、媒体を排出すべく回転する排出用回転体を、最後の媒体以外の媒体を前記処理領域から排出する際の第2排出時回転速度の最大値よりも低速の第1排出時回転速度で回転させるステップと、を有する。
【0026】
上記構成によれば、上記媒体搬送装置と同等の作用・効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の媒体搬送装置の一実施形態である給送装置を備えるインクジェット式プリンターの概略斜視図。
【図2】給送装置の概略構成を説明する模式図。
【図3】インクジェット式プリンターの電気的構成を説明するブロック図。
【図4】紙送りモーターの駆動時における回転速度の変化を説明するグラフ。
【図5】印刷モードに応じた設定速度及び減速規定値を示すテーブル。
【図6】用紙搬送処理ルーチンを説明するフローチャート(前半部分)。
【図7】用紙搬送処理ルーチンを説明するフローチャート(後半部分)。
【図8】(a)(b)は用紙の給送・排出時に発生する騒音の大きさを示すグラフ。
【図9】用紙の種類に応じた設定速度及び減速規定値を示すテーブル。
【図10】用紙搬送処理ルーチンの要部を説明するフローチャート。
【図11】給送装置の構成の要部を説明する模式図。
【図12】用紙のサイズに応じた設定速度及び減速規定値を示すテーブル。
【図13】電気的構成の要部を説明するブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1の実施形態)
以下、本発明の印刷装置をインクジェット式プリンターに具体化した一実施形態を図1〜図8に基づいて説明する。
【0029】
図1に示すように、インクジェット式プリンター11における略矩形箱状のフレーム12内の下部には、媒体の一例としての用紙Pを支持する支持部材13が主走査方向Xに沿って延設されている。この支持部材13上には、紙送りモーター14を駆動源とする媒体搬送装置の一例としての給送装置15の駆動に基づき、用紙Pが主走査方向Xと略直交する副走査方向Yに沿って給送される。
【0030】
また、フレーム12内において支持部材13の上方には、支持部材13の長手方向(主走査方向X)と平行な棒状のガイド軸16が設けられている。このガイド軸16は、その軸線方向(主走査方向X)に沿って往復移動可能な状態でキャリッジ17を支持している。
【0031】
フレーム12の後壁内面におけるガイド軸16の両端部と対応する各位置には、駆動プーリー18及び従動プーリー19が回転自在な状態で支持されている。駆動プーリー18にはキャリッジモーター20の出力軸が連結されると共に、これら一対のプーリー18,19間には一部がキャリッジ17に連結された無端状のタイミングベルト21が掛装されている。したがって、キャリッジ17は、キャリッジモーター20からの駆動力が無端状のタイミングベルト21を介して伝達されることにより、ガイド軸16にガイドされながら主走査方向Xに移動される。
【0032】
また、フレーム12内においてタイミングベルト21の下側には、キャリッジ17の主走査方向Xにおける位置、移動速度及び移動方向を検出するためのリニアエンコーダー22の被検出用テープ22aが設けられている。なお、リニアエンコーダー22の検出部は、キャリッジ17に設けられている。検出部には、主走査方向Xにおいて互いに異なる位置に配置される複数(一例として2つ)のセンサー(図示略)が設けられている。
【0033】
キャリッジ17の下面側には印刷手段の一例として記録ヘッド23が設けられる一方、キャリッジ17上には記録ヘッド23へ供給するインクを貯留するインクカートリッジ24が着脱可能に搭載されている。そして、インクカートリッジ24内のインクが図示しない駆動素子(例えば、圧電素子)の駆動により記録ヘッド23のノズル形成面に開口する複数のノズルに供給され、該各ノズルからインクが支持部材13に支持される用紙Pに噴射される。すなわち、本実施形態において「所定の処理」とは、記録ヘッド23から噴射されたインクを用紙Pに付着させる印刷処理のことを示している。
【0034】
また、フレーム12内において主走査方向Xにおける一方側には、用紙Pが搬送されないホームポジション領域HPが形成されている。このホームポジション領域HPには、記録ヘッド23のメンテナンスを行なうためのメンテナンス装置25が設けられている。
【0035】
次に、本実施形態の給送装置15について、図1〜図3を参照して説明する。
図1及び図2に示すように、給送装置15は、フロント給紙タイプの給送装置であって、フレーム12の下側に着脱可能な状態で装着される媒体保持手段の一例としての給紙カセット30を備えている。この給紙カセット30内には、複数枚の用紙Pが上下方向に積層した状態で保持される。そして、給紙カセット30に保持される複数枚の用紙Pのうち最上位の用紙Pは、給紙カセット30からフレーム12内において支持部材13よりも後側(図2では右側)に送られた後、フレーム12内において後側から支持部材13上の処理領域31に給送される。そして、処理領域31で印刷済みとなった用紙Pは、処理領域31から前側(図2では左側)に排出される。
【0036】
こうした給送装置15は、図2及び図3に示すように、紙送りモーター14の出力軸の回転速度、回転量及び回転方向を検出するためのロータリーエンコーダー32を備えている。このロータリーエンコーダー32の図示しない検出部は、紙送りモーター14の駆動態様に応じた検出信号を制御装置50に出力する。また、給送装置15は、用紙Pの給送方向における上流側から下流側に沿って順に配置される送出しローラー33、中間ローラー34、給送ローラー対35、排出ローラー対36を備えている。送出しローラー33、中間ローラー34、給送ローラー対35の駆動ローラー351及び排出ローラー対36の駆動ローラー361は、紙送りモーター14から出力される駆動力が図示しない動力伝達機構を介して伝達されることにより回転する。上記動力伝達機構は、例えば、複数の歯車を備えた構成となっている。
【0037】
送出しローラー33は、給紙カセット30内の最上位の用紙Pを送り出すためのローラーである。こうした送出しローラー33と紙送りモーター14との間の動力伝達機構には、該紙送りモーター14から送出しローラー33への動力伝達を許可したり切断したりすべく動作するクラッチ手段の一例としてのクラッチ機構37が設けられている。本実施形態のクラッチ機構37は、制御装置50からの指令に基づき動作する電磁式のクラッチである。また、送出しローラー33は、基端が揺動軸38に回転可能な状態で支持される揺動部材39の先端に回転自在な状態で支持されている。この揺動部材39は、図示しない付勢部材によって下方に付勢されるため、送出しローラー33は、給紙カセット30内の最上位の用紙Pに圧接している。そして、紙送りモーター14からの駆動力に基づき送出しローラー33が回転すると、給紙カセット30内で積層される複数枚の用紙Pのうち最上位に位置する用紙Pが、給紙カセット30からフレーム12内に送り出される。
【0038】
中間ローラー34は、処理領域31の後方に配置されている。こうした中間ローラー34は、給紙カセット30から送り出された用紙Pの給送方向を図2における右斜め上方から左方に切り替えるためのローラーである。また、中間ローラー34の近傍には、該中間ローラー34の回転に基づき従動回転するリタードローラー40及びアシストローラー41が設けられている。リタードローラー40及びアシストローラー41のうち給送方向上流側に位置するリタードローラー40は、給紙カセット30から送り出された用紙Pを中間ローラー34と共に挟持し、給送方向における下流側に給送する。また、アシストローラー41は、中間ローラー34及びリタードローラー40によって給送された用紙Pを中間ローラー34と共に挟持し、該用紙Pを前方(図2では左側)に給送する。
【0039】
給送ローラー対35及び排出ローラー対36は、中間ローラー34よりも給送方向下流側に配置されている。具体的には、給送ローラー対35は、処理領域31の直前となる位置に配置されると共に、排出ローラー対36は、処理領域31の直後となる位置に配置されている。こうした給送ローラー対35は、駆動ローラー351と、該駆動ローラー351に対して従動回転する従動ローラー352とを有している。同様に、排出ローラー対36は、駆動ローラー361と、該駆動ローラー361に対して従動回転する従動ローラー362とを有している。そして、給送ローラー対35は、紙送りモーター14からの駆動力により、中間ローラー34及びアシストローラー41によって給送された用紙Pを挟持し、該用紙Pを支持部材13上の処理領域31に給送する。また、排出ローラー対36は、紙送りモーター14からの駆動力により、用紙Pを処理領域31からフレーム12外に排出する。本実施形態では、各ローラー対35,36において、駆動ローラー351と駆動ローラー361は同一形状であると共に、従動ローラー352と従動ローラー362は同一形状である。
【0040】
したがって、本実施形態では、支持部材13よりも搬送方向における上流側に位置する送出しローラー33、中間ローラー34及び給送ローラー対35と、これらに紙送りモーター14からの駆動力を伝達する動力伝達機構とにより、印刷処理前の用紙Pを、印刷処理が行われる処理領域31に給送するための給送手段が構成される。また、給送手段を構成する送出しローラー33、中間ローラー34及び給送ローラー対35のうち、紙送りモーター14からの駆動力が伝達される送出しローラー33、中間ローラー34及び給送ローラー対35の駆動ローラー351が、給送用回転体に該当する。また、これら各ローラー33,34,351のうち送出しローラー33が、給紙カセット30内の用紙Pを給紙カセット30外に送り出すための特定の給送用回転体に該当する。
【0041】
また、本実施形態では、支持部材13よりも搬送方向における下流側に位置する排出ローラー対36と、該排出ローラー対36に紙送りモーター14からの駆動力を伝達する動力伝達機構とにより、処理領域31で印刷処理済みとなった用紙Pを、処理領域31から搬送方向における下流側に排出するための排出手段が構成される。また、排出手段を構成する排出ローラー対36において紙送りモーター14からの駆動力が伝達される駆動ローラー361が、排出用回転体に該当する。
【0042】
なお、搬送方向において給送ローラー対35と中間ローラー34との間となる中途位置には、用紙Pの先端を検知するための先端検知センサー42が設けられている。例えば、先端検知センサー42は、用紙Pの非検知時にはオン信号を制御装置50に出力する一方、用紙Pの検知時にはオフ信号を制御装置50に出力する。
【0043】
次に、本実施形態の給送装置15が複数枚の用紙Pを連続して搬送する際の用紙搬送方法について、図2を参照して説明する。ここでは、2枚の用紙P(P1,P2)を連続して給送する場合について説明する。
【0044】
さて、複数枚(2枚)の用紙Pに対する印刷指令が制御装置50に入力されると、クラッチ機構37が接続状態となり、紙送りモーター14から送出しローラー33への動力伝達が許可される。この状態で紙送りモーター14が駆動すると、送出しローラー33、中間ローラー34、給送ローラー対35の駆動ローラー351及び排出ローラー対36の駆動ローラー361が回転し始める。すると、給紙カセット30内の最上位の用紙P1(P)は、送出しローラー33によって給紙カセット30外に送り出される。
【0045】
本実施形態では、クラッチ機構37は、先行の用紙P1が中間ローラー34及びリタードローラー40によって挟持されるようになってから遮断状態となる。その結果、紙送りモーター14からの駆動力が伝達されなくなった送出しローラー33の回転が停止される。つまり、この時点では、後行の用紙P2(P)が給紙カセット30から送り出されない。
【0046】
一方、給紙カセット30から送り出された先行の用紙P1は、中間ローラー34、リタードローラー40及びアシストローラー41によって、処理領域31に向けて給送される。そして、用紙P1の先端が先端検知センサー42によって検知されてからの紙送りモーター14の駆動量が所定量に到達した時点で、用紙P1の先端が給送ローラー対35のところに到達するため、紙送りモーター14の駆動が一時停止される。こうして給送処理が停止されると、用紙P1のスキューを解消させるための印刷前処理が行われる。その後、印刷処理が開始される。
【0047】
印刷処理が開始されると、紙送りモーター14が略間欠駆動し始める。すると、用紙P1が少しだけ給送方向下流側に送り出されると紙送りが停止され、キャリッジ17の主走査方向Xへの移動に連動して記録ヘッド23からは、用紙P1において該記録ヘッド23のノズル形成面23aに対向する部分にインクが噴射される。そして、キャリッジ17の一回の移動が完了すると、用紙P1がまた少しだけ給送方向下流側に送り出される。このように紙送りとインク噴射とが交互に行われる。なお、印刷処理時におけるキャリッジ17の一回の移動のことを「1パス」ということとする。
【0048】
こうした印刷処理中において、先行の用紙P1の後端が規定位置A1を通過すると、クラッチ機構37が接続状態となる。すると、送出しローラー33は、紙送りモーター14から駆動力が伝達されると回転し、後行の用紙P2は、給紙カセット30から送り出される。すなわち、後行の用紙P2は、その先端と先行の用紙P1の後端との間が所定間隔空けた状態で、該先行の用紙P1に追随するように給送される。なお、後行の用紙P2が中間ローラー34及びリタードローラー40によって挟持されるようになると、接続状態にあったクラッチ機構37は遮断状態になる。
【0049】
先行の用紙P1に対する印刷が完了すると、紙送りモーター14が連続駆動し、先行の用紙P1が排出ローラー対36によって排出されると共に、後行の用紙P2が処理領域31に向けて給送される。そして、先端検知センサー42によって後行の用紙P2の先端が検知され、後行の用紙P2の先端が給送ローラー対35のところに到達すると、紙送りモーター14の駆動が一時停止される。その後、印刷前処理が行われ、後行の用紙P2に対して印刷処理が行われる。そして、後行の用紙P2に対する印刷処理が完了すると、紙送りモーター14が連続駆動し、後行の用紙P2が排出ローラー対36によって排出される。
【0050】
次に、インクジェット式プリンター11の制御装置50について、図3を参照して説明する。
制御装置50は、CPU、ROM、RAM、不揮発メモリー(例えば、EEPROM)及びASIC(Application Specific IC)などで構成されるデジタルコンピューター(図示略)と、各種のドライバー回路(図示略)とを備えている。こうした制御装置50には、ハードウェア及びソフトウェアのうち少なくとも一方により実現される機能部として、データ処理部51、印刷制御手段の一例としてのヘッド制御部52、キャリッジ制御部53、及び搬送制御手段の一例としての給送制御部54が設けられている。
【0051】
データ処理部51は、図示しないインターフェイスを介して受信した印刷データに含まれるコマンドを解析するコマンド解析部511と、印刷データのうちコマンドを除いたデータを処理する画像処理部512とを有している。コマンド解析部511は、コマンドを解析して印刷モード、印刷枚数、用紙Pのサイズ及び用紙Pの種類などの各種情報を取得する。そして、データ処理部51は、取得した各種情報を給送制御部54及びキャリッジ制御部53に出力する。なお、印刷モードとしては、一例として、印刷速度を重視したドラフト印刷モード及び印刷精度を重視した高詳細印刷モードが挙げられる。
【0052】
画像処理部512は、印刷データのうちコマンドを除いたデータを、印刷ドットが階調値で示されたビットマップデータに変換し、該ビットマップデータを展開する。そして、画像処理部512は、展開したデータに基づき、1パス分のビットマップデータを生成し、ビットマップデータを1パス分毎にヘッド制御部52に出力する。
【0053】
ヘッド制御部52は、画像処理部512から1パス分のビットマップデータが入力されると共に、リニアエンコーダー22の検出部22bから検出信号が入力される。そして、ヘッド制御部52は、記録ヘッド23の主走査方向Xにおける位置に基づき、記録ヘッド23に搭載される各駆動素子(図示略)の駆動を個別に制御する。なお、リニアエンコーダー22の検出部22bからの検出信号は、キャリッジ制御部53にも入力される。つまり、ヘッド制御部52は、キャリッジ17の主走査方向Xへの移動と記録ヘッド23からのインク噴射とを連動させることにより、用紙Pにおいて記録ヘッド23のノズル形成面23aに対向する部分に印刷を施す。そして、ヘッド制御部52は、1パス分の印刷が完了すると、紙送り指令を給送制御部54に出力する。また、ヘッド制御部52は、1枚の用紙Pに対する印刷が完了すると、用紙Pの排出指令を給送制御部54に出力する。
【0054】
キャリッジ制御部53は、キャリッジ17の主走査方向Xにおける位置を検出するためのキャリッジカウンター531と、キャリッジモーター20を駆動させるためのキャリッジ駆動司令部532とを有している。キャリッジカウンター531は、リニアエンコーダー22の検出部22bから入力される検出信号に含まれるパルスに基づいたカウントアップ又はカウントダウンを行い、その結果に基づきキャリッジ17の主走査方向Xにおける位置を検出する。キャリッジ駆動司令部532は、コマンド解析部511から入力された印刷モードに基づき、印刷処理時におけるキャリッジ17の移動速度、移動開始位置及び停止位置などの移動制御情報を設定する。そして、キャリッジ駆動司令部532は、設定した移動制御情報とキャリッジカウンター531によるカウント結果とに基づき、キャリッジモーター20の駆動を制御する。
【0055】
給送制御部54は、紙送りカウンター541と、クラッチ駆動司令部542と、紙送り駆動司令部543と、記憶部544とを有している。紙送りカウンター541は、ロータリーエンコーダー32の図示しない検出部から入力される検出信号に含まれるパルスに基づいたカウントアップ又はカウントダウンを行う。例えば、紙送りカウンター541は、紙送りモーター14が正転駆動するときにはロータリーエンコーダー32からの検出信号に含まれるパルスに基づきカウントアップを行う一方、逆転駆動するときにはロータリーエンコーダー32からの検出信号に含まれるパルスに基づきカウントダウンを行う。
【0056】
クラッチ駆動司令部542は、送出しローラー33の回転に基づく用紙Pの搬送量を、紙送りカウンター541によるカウント処理に基づき検出する。そして、クラッチ駆動司令部542は、送出しローラー33の回転によって給送される用紙Pが中間ローラー34及びリタードローラー40によって挟持されたと判断すると、接続状態にあるクラッチ機構37を遮断状態にする。また、クラッチ駆動司令部542は、紙送り駆動司令部543から接続指令が入力された場合に、遮断状態にあるクラッチ機構37を接続状態にする。
【0057】
紙送り駆動司令部543には、コマンド解析部511から各種情報が入力される。そして、紙送り駆動司令部543は、入力された各種情報に含まれる印刷モードに応じた紙送りモーター14の出力軸の回転速度と減速規定値とを、記憶部544に記憶されるテーブル(図5参照)から取得する。また、紙送り駆動司令部543は、先端検知センサー42からの検出信号に基づき給送中の用紙Pの先端を検知した場合には、紙送りカウンター541によるカウント結果を取得する。そして、紙送り駆動司令部543は、紙送りカウンター541によるカウント処理に基づき用紙Pの先端の位置を検出し、該用紙Pの先端が給送ローラー対35のところに到達したと判断すると、紙送りモーター14の駆動を停止させる。その後、紙送り駆動司令部543は、記録ヘッド23によるインク噴射の合間に用紙Pの紙送りが行われるように紙送りモーター14の駆動を制御する。
【0058】
また、紙送り駆動司令部543は、紙送りカウンター541によるカウント処理に基づき用紙Pの後端の位置を検出する。そして、紙送り駆動司令部543は、用紙Pの後端が規定位置A1(図2参照)を通過したと判断すると、接続指令をクラッチ駆動司令部542に出力する。
【0059】
本実施形態において、紙送り駆動司令部543は、複数枚の用紙Pに印刷処理を施す場合において、2枚目以降の用紙Pの給送するときには、図4にて実線で示すように紙送りモーター14の出力軸の回転速度Vが変化するように、該紙送りモーター14を制御する。この場合、紙送り駆動司令部543による紙送りモーター14の制御方法は、回転速度Vを設定速度Vsまで加速させる加速段階と、回転速度Vを設定速度Vsで一定に維持させる定速段階と、回転速度を「0(零)」まで減速させる減速段階とを含んでいる。なお、設定速度Vsは、印刷モードに基づき設定される速度である。
【0060】
また、紙送り駆動司令部543は、1枚目の用紙Pの給送時及び最後の用紙Pの排出時には、図4にて破線で示すように紙送りモーター14の出力軸の回転速度Vが変化するように、該紙送りモーター14を制御する。この場合、加速段階では、回転速度Vを、設定速度Vsから減速規定値Vdを減算した速度Vsubまで加速させ、定速段階では、回転速度Vを速度Vsubで維持させる。なお、紙送り駆動司令部543は、加速段階においては、紙送りモーター14の出力軸の加速度を、2枚目以降の用紙Pの給送時よりも低加速度に設定する。また、紙送り駆動司令部543は、減速段階においては、紙送りモーター14の出力軸の減速度を、2枚目以降の用紙Pの給送時よりも低減速度に設定する。
【0061】
次に、記憶部544に記憶されるテーブルについて図5を参照して説明する。
図5に示すテーブルは、用紙Pの搬送モードの一例である印刷モードに応じた設定速度Vs及び減速規定値Vdを設定するためのテーブルである。図5に示すように、本実施形態のインクジェット式プリンター11での印刷モードとしては、ドラフト印刷モード及び高詳細印刷モードが用意されている。ドラフト印刷モードは、用紙Pの給送速度及び排出速度が高速に設定された搬送モードである。一方、高詳細印刷モードは、用紙Pの給送速度及び排出速度が低速に設定された搬送モードである。
【0062】
ドラフト印刷モードでは、設定速度Vsが第1の設定速度Vs1に設定されると共に、減速規定値Vdが第1の規定値Vd1に設定される。また、高詳細印刷モードでは、設定速度Vsが第1の設定速度Vs1よりも低速の第2の設定速度Vs2に設定されると共に、減速規定値Vdが第1の規定値Vd1よりも小さい第2の規定値Vd2に設定される。したがって、本実施形態では、図5に示すテーブルを記憶する記憶部544が、用紙Pの給送速度(設定速度Vs)が互いに異なる複数種類の搬送モードを記憶するモード記憶手段として機能する。
【0063】
次に、本実施形態の給送制御部54が実行する用紙搬送処理ルーチンについて、図6及び図7に示すフローチャートを参照して説明する。なお、用紙搬送処理ルーチンは、複数枚の用紙Pを連続して搬送させる場合に、印刷のスループットの低下を抑制しつつ、給送・排出に伴う騒音の低減を図るための処理ルーチンである。
【0064】
さて、給送制御部54は、データ処理部51から印刷指令が入力されたタイミングで、用紙搬送処理ルーチンを開始する。そして、ステップS10において、給送制御部54は、コマンド解析部511から入力された各種情報に基づき、用紙Pの印刷枚数M(Mは1以上の整数)を取得する。次のステップS11において、給送制御部54は、印刷モードを取得する。次のステップS12において、給送制御部54は、ステップS11で取得した印刷モードに応じた設定速度Vs及び減速規定値Vdを、図5に示すテーブルに基づき設定する。このとき、給送制御部54の紙送り駆動司令部543は、印刷モードが高詳細印刷モードである場合には、印刷モードがドラフト印刷モードである場合よりも減速規定値Vdを小さな値(Vd2)に設定する(図5参照)。したがって、本実施形態では、紙送り駆動司令部543が、規定値設定手段としても機能する。
【0065】
次のステップS13において、給送制御部54は、2枚目以降の用紙Pを給送する際に回転する給送ローラー対35の駆動ローラー351の回転速度である第2給送時回転速度Vt2と、M−1枚目以前の用紙Pを排出する際に回転する排出ローラー対36の駆動ローラー361の回転速度である第2排出時回転速度Ve2とを設定する。具体的には、給送制御部54の紙送り駆動司令部543は、ステップS12で設定した設定速度Vsに所定値を乗算させ、該演算結果を第2給送時回転速度Vt2とする。ここでいう「所定値」とは、駆動ローラー351の減速比に応じた値である。また、紙送り駆動司令部543は、第2排出時回転速度Ve2を第2給送時回転速度Vt2と同一値に設定する。
【0066】
次のステップS14において、給送制御部54は、1枚目の用紙Pを給送する際に回転する駆動ローラー351の回転速度である第1給送時回転速度Vt1と、M枚目の用紙Pを排出する際に回転する駆動ローラー361の回転速度である第1排出時回転速度Ve1とを設定する。具体的には、給送制御部54の紙送り駆動司令部543は、ステップS12で設定した設定速度Vsから減速規定値Vdを減算した速度Vsubに上記所定値を乗算させ、該演算結果を第1給送時回転速度Vt1とする。また、紙送り駆動司令部543は、第1排出時回転速度Ve1を第1給送時回転速度Vt1と同一値に設定する。そのため、第1給送時回転速度Vt1は第2給送時回転速度Vt2よりも低速に設定されると共に、第1排出時回転速度Ve1は第2排出時回転速度Ve2よりも低速に設定される。したがって、本実施形態では、紙送り駆動司令部543が、速度設定手段としても機能する。
【0067】
次のステップS15において、給送制御部54は、係数Nに「1」をセットする。次のステップS16において、給送制御部54は、係数Nが「1」であるか否かを判定する。給送制御部54は、係数Nが「1」である場合には(ステップS16:YES)、その処理を次のステップS17に移行し、係数Nが「1」ではない場合には(ステップS17:NO)、その処理を後述するステップS18に移行する。
【0068】
ステップS17において、給送制御部54は、1枚目の用紙Pの給送であるため、給送ローラー対35の駆動ローラー351の回転速度がステップS14で設定した第1給送時回転速度Vt1となるように紙送りモーター14を制御する第1給送処理を行う。具体的には、給送制御部54のクラッチ駆動司令部542は、クラッチ機構37を接続状態にし、紙送り駆動司令部543は、紙送りモーター14を、その出力軸が上記速度Vsub(=設定速度Vs−減速規定値Vd)で回転するように駆動させる。そして、給送制御部54は、その処理を後述するステップS19に移行する。したがって、本実施形態では、ステップS17が、1枚目の用紙Pを給紙カセット30から処理領域31に給送する場合に、給送ローラー対35の駆動ローラー351を、2枚目以降の用紙Pを給送する際の第2給送時回転速度Vt2の最大値よりも低速の第1給送時回転速度Vt1で回転させるステップに相当する。
【0069】
一方、ステップS18において、給送制御部54は、2枚目以降の用紙Pの給送であるため、駆動ローラー351の回転速度がステップS13で設定した第2給送時回転速度Vt2となるように紙送りモーター14を制御する第2給送処理を行う。具体的には、紙送り駆動司令部543は、紙送りモーター14を、その出力軸が設定速度Vsで回転するように駆動させる。このとき、クラッチ機構37が遮断状態である場合には、クラッチ駆動司令部542は、クラッチ機構37を接続状態にする。そして、給送制御部54は、その処理を次のステップS19に移行する。したがって、本実施形態では、ステップS18が、2枚目以降の用紙Pを給送する場合に、給送ローラー対35の駆動ローラー351を、第2給送時回転速度Vt2で回転させるステップに相当する。
【0070】
なお、第2給送処理が行われる場合、印刷済みとなった先行の用紙Pが搬送経路上に残っている。そのため、印刷前の後行の用紙Pの給送を行うべく紙送りモーター14が駆動する場合、印刷済みとなった先行の用紙Pは、排出ローラー対36によって処理領域31から排出される。したがって、本実施形態では、ステップS18が、最後の用紙P以外の用紙Pを処理領域31から排出する場合に、用紙Pを排出すべく回転する排出ローラー対36の駆動ローラー361を回転させるステップにも相当する。
【0071】
ステップS19において、給送制御部54は、印刷処理前の用紙Pが中間ローラー34とリタードローラー40とによって挟持された状態であるか否かを判定する。すなわち、給送制御部54は、印刷処理前の用紙Pの給送が開始されてからロータリーエンコーダー32から出力された検出信号に含まれるパルス数に基づき、該用紙Pの搬送量を取得する。そして、給送制御部54は、取得した用紙Pの搬送量に基づき、該用紙Pが各ローラー34,40によって挟持された状態であるか否かを判定する。そして、用紙Pが各ローラー34,40によって挟持されていないと判定した場合(ステップS19:NO)、クラッチ機構37の接続状態を維持させる。一方、用紙Pが各ローラー34,40によって挟持されていると判定した場合(ステップS19:YES)、給送制御部54は、その処理を次のステップS20に移行する。
【0072】
ステップS20において、給送制御部54は、接続状態にあるクラッチ機構37を遮断状態にする、即ち送出しローラー33への動力伝達を遮断する。この場合であっても、中間ローラー34、給送ローラー対35及び排出ローラー対36には紙送りモーター14からの駆動力が伝達されるため、用紙Pの給送は継続される。次のステップS21において、給送制御部54は、用紙Pの後端が規定位置A1に到達していないか否かを判定する。こうした用紙Pの後端の位置についても、給送制御部54は、ロータリーエンコーダー32からの検出信号に基づき検出する。
【0073】
そして、給送制御部54は、用紙Pの後端が規定位置A1に到達していないと判定した場合には(ステップS21:YES)、その処理を後述するステップS23に移行し、到達したと判定した場合には(ステップS21:NO)、その処理を次のステップS22に移行する。ステップS22において、給送制御部54は、遮断状態にあるクラッチ機構37を接続状態にし、その処理を次のステップS23に移行する。なお、ステップS22では、M枚目の用紙Pの給送時にはクラッチ機構37が遮断状態で維持される。そのため、M+1枚目の用紙Pは、フレーム12内に給送されない。
【0074】
ステップS23において、給送制御部54は、印刷処理前の用紙Pの先端が給送ローラー対35のところに到達したか否かを判定する。給送制御部54は、印刷処理前の用紙Pの先端が到達していない場合には(ステップS23:NO)、用紙Pの給送を継続させ、用紙Pの先端が到達した場合には(ステップS23:YES)、その処理を次のステップS24に移行する。
【0075】
なお、ステップS21の判定結果がNOとなりステップS22でクラッチ機構37が接続状態とされる場合、ステップS23の判定結果がYESになるまでの間、送出しローラー33には紙送りモーター14からの駆動力が伝達される。そのため、先行の用紙P(P1)に連続して、後行の用紙P(P2)が給送される。したがって、本実施形態では、ステップS22,S23により、2枚目以降の用紙Pを給送するステップが構成される。
【0076】
ステップS24において、給送制御部54は、紙送りモーター14の駆動を停止させ、用紙Pの給送を停止させる。ステップS25において、給送制御部54は、スキュー取りなどの印刷前処理を行う。次のステップS26において、給送制御部54は、印刷時紙送り処理を行う。この印刷時紙送り処理では、給送制御部54は、ヘッド制御部52から1パス分の印刷が完了した旨(即ち、紙送り指令)が入力されたタイミングで、用紙Pの紙送りを行うべく紙送りモーター14の駆動を制御する。
【0077】
次のステップS27において、給送制御部54は、N枚目の用紙P(即ち、印刷中の用紙P)の後端が規定位置A1を通過したか否かを判定する。N枚目の用紙Pの後端が規定位置A1を通過していない場合(ステップS27:NO)、給送制御部54は、その処理を後述するステップS29に移行する。一方、N枚目の用紙Pの後端が規定位置A1を通過した場合(ステップS27:YES)、給送制御部54は、その処理を次のステップS28に移行する。ステップS28において、給送制御部54は、クラッチ機構37が遮断状態であるときには該クラッチ機構37を接続状態し、クラッチ機構37が既に接続状態であるときには該状態を維持し、その処理を次のステップS29に移行する。なお、ステップS28では、M枚目の用紙Pの給送時にはクラッチ機構37が遮断状態で維持される。そのため、M+1枚目の用紙Pは、給送されない。
【0078】
ステップS29において、給送制御部54は、N枚目の用紙への印刷が完了したか否かを判定する。そして、給送制御部54は、印刷が未完了である場合には(ステップS29:NO)、その処理を前述したステップS26に移行し、印刷が完了した場合には(ステップS29:YES)、その処理を次のステップS30に移行する。
【0079】
印刷中の用紙Pの後端が規定位置A1を通過した場合、送出しローラー33には紙送りモーター14からの駆動力が伝達される。そのため、印刷中の用紙P(P1)に連続して、後行の用紙P(P2)が給送される。したがって、本実施形態では、ステップS26〜S29により、2枚目以降の用紙Pを給送するステップが構成される。
【0080】
ステップS30において、給送制御部54は、係数Nが印刷枚数Mと一致しないか否かを判定する。係数Nが印刷枚数Mと一致しない場合(ステップS30:YES)、給送制御部54は、その処理を次のステップS31に移行する。ステップS31において、給送制御部54は、印刷処理を施す用紙Pが未だあるため、係数Nを「1」だけインクリメントし、その後、その処理を前述したステップS16に移行する。一方、係数Nが印刷枚数Mと一致する場合(ステップS30:NO)、給送制御部54は、最後の用紙Pへの印刷処理が完了したため、その処理を次のステップS32に移行する。
【0081】
ステップS32において、給送制御部54は、M枚目の用紙Pの排出であるため、排出ローラー対36の駆動ローラー361の回転速度がステップS14で設定した第1排出時回転速度Ve1となるように紙送りモーター14を制御する排出処理を行う。具体的には、給送制御部54の紙送り駆動司令部543は、紙送りモーター14を、その出力軸が上記速度Vsub(=設定速度Vs−減速規定値Vd)で回転するように駆動させる。したがって、本実施形態では、ステップS32が、最後の用紙Pを処理領域31から排出する場合に、排出ローラー対36の駆動ローラー361を、最後の用紙P以外の用紙Pを処理領域から排出する際の第2排出時回転速度Ve2よりも低速の第1排出時回転速度Ve1で回転させるステップに相当する。
【0082】
次のステップS33において、給送制御部54は、M枚目の用紙Pの排出が完了したか否かを判定する。そして、給送制御部54は、排出が完了していない場合には(ステップS33:NO)、紙送りモーター14の駆動を継続させ、排出が完了した場合には(ステップS33:YES)、その処理を次のステップS34に移行する。ステップS34において、給送制御部54は、紙送りモーター14の駆動を停止させ、その後、用紙搬送処理ルーチンを終了する。
【0083】
次に、本実施形態のインクジェット式プリンター11の作用について、用紙Pの給送・排出時の作用を中心に図8を参照して説明する。
図8に示すグラフは、6枚の用紙Pを連続して給送・排出させた場合にインクジェット式プリンター11で発生する騒音を「ISO7779」で規定される空気伝搬騒音の測定方法で測定した結果を、グラフ化したものである。すなわち、図8(a)は、1枚目の用紙Pの給送時における給送ローラー対35の駆動ローラー351の回転速度が第2給送時回転速度Vt2であり、6枚目の用紙Pの排出時における排出ローラー対36の駆動ローラー361の回転速度が第2排出時回転速度Ve2である場合の騒音の大きさを示すグラフである。また、図8(b)は、1枚目の用紙Pの給送時における駆動ローラー351の回転速度が第1給送時回転速度Vt1(<Vt2)であり、6枚目の用紙Pの排出時における駆動ローラー361の回転速度が第1排出時回転速度Ve1(<Ve2)である場合の騒音の大きさを示すグラフである。なお、本実施形態では、第1給送時回転速度Vt1及び第1排出時回転速度Ve1は、第2給送時回転速度Vt2及び第2排出時回転速度Ve2の「40%」程度の速度であるものとする。
【0084】
さて、クラッチ機構37が接続状態である状態で紙送りモーター14が駆動し始めると、各ローラー33,34,40,41,351,352,361,362が回転し始める。その結果、1枚目の用紙Pが処理領域31に向けて給送される。このときの紙送りモーター14の回転速度Vは上記速度Vsub(=Vs−Vd)に設定される(図4参照)。本実施形態では、上記速度Vsubは、設定速度Vsの「40%」程度に設定される。すると、各ローラー33,34,40,41,351,352,361,362の回転速度は、紙送りモーター14の回転速度Vが設定速度Vsに設定される場合における各ローラー33,34,40,41,351,352,361,362の回転速度の「40%」程度となる。そのため、1枚目の給送時にインクジェット式プリンター11から発生する騒音は、図8(a)(b)に示すように、紙送りモーター14の回転速度Vが設定速度Vsに設定される場合と比較して十分に小さくなる。
【0085】
なお、用紙Pの給送・排出時に発生する騒音の大部分は、紙送りモーター14と各ローラー33,34,351,361,40,41との間の動力伝達経路に設けられる動力伝達機構から発生している。上記動力伝達機構は、複数の歯車を備えた構成となっており、各歯車を介して動力を伝達している。そのため、互いに噛合し合う各歯車の歯が接触する際に、騒音が発生している。こうして発生する騒音の周波数は、各歯車の回転速度が低速であるほど低周波となる。
【0086】
一般的に、人間の耳の感度は、騒音の周波数が約「1000Hz」以下になると下がる。そのため、紙送りモーター14の回転速度Vが設定速度Vsである場合における騒音の周波数が「1000Hz」程度であるとすると、回転速度Vを低速にするほど、人間は、騒音が小さくなったと感じるようになる。したがって、1枚目の用紙Pの給送時に人間が感じる騒音は、紙送りモーター14の回転速度Vが設定速度Vsである場合と比較して小さくなる。
【0087】
そして、1枚目の用紙Pに対する印刷が開始され、該1枚目の用紙Pの後端が規定位置A1に到達すると、2枚目の用紙Pの給送が開始される(図2参照)。このときの紙送りモーター14の回転速度Vは、設定速度Vsに設定される。そのため、2枚目の用紙Pの給送に関しては、従来の場合とほぼ同等の速度で行われる。1枚の用紙Pが印刷中である場合、2枚目の用紙Pは、記録ヘッド23からのインク噴射が行われない間に少しずつ給送方向下流側に給送される。すなわち、1枚目の用紙Pの給送時とは異なり、各ローラー33,34,40,41,351,352,361,362が連続して回転しない。そのため、回転速度Vが設定速度Vsに設定されても、2枚目の用紙Pの給送時では、用紙Pの給送に伴う騒音は、人間にとって余り気にならない。
【0088】
そして、1枚目の用紙Pに対する印刷が完了すると、1枚目の用紙Pの排出と、2枚目の用紙Pの給送とが同時に行われる。2枚目の用紙Pの先端が給送ローラー対35のところに到達すると、紙送りモーター14の駆動が停止される。1枚目の用紙Pに対する印刷処理が完了してから2枚目の用紙Pの給送が完了するまでの第1の期間中では、紙送りモーター14は、1枚目の用紙Pの給送時と比較して高速で駆動する。しかし、第1の期間は、1枚目の用紙Pの給送開始時点から給送終了時点までの第2の期間と比較して短い。これは、1枚目の用紙Pの印刷中に、2枚目の用紙Pの給送が開始されているためである。そのため、第1の期間で紙送りモーター14を高速駆動させても、第2の期間で紙送りモーター14を高速駆動させる場合と比較して、期間が短い分、人間にとっては騒音が余り気にならない。
【0089】
その後、スキュー取りなどの印刷前処理が行われ、2枚目の用紙Pに対して印刷が開始される。そして、2枚目の用紙Pの後端が規定位置A1に到達すると、3枚目の用紙Pの給送が開始される。なお、3枚目〜6枚目までの用紙Pの給送及び2枚目〜5枚目までの用紙Pの排出は、上述した場合と同等であるため、その詳細な説明を省略する。
【0090】
6枚目の用紙Pに対する印刷が完了すると、該6枚目の用紙Pの排出が開始される。このときの紙送りモーター14の回転速度Vは上記速度Vsub(=Vs−Vd)に設定される(図4参照)。そのため、6枚目の排出時にインクジェット式プリンター11から発生する騒音は、図8(a)(b)に示すように、紙送りモーター14の回転速度Vが設定速度Vsに設定される場合と比較して十分に小さくなる。その理由は、1枚目の用紙Pの給送速度を遅くした場合と同様である。
【0091】
このように紙送りモーター14の出力軸の回転速度を調整すると、印刷処理中における音圧は、「1.6dB」程度低減される。このように音圧、即ち騒音を低減させたとしても、インクジェット式プリンター11のスループットの低下は「2%」程度である。すなわち、スループットの低下はほとんど無い。
【0092】
なお、1枚の用紙Pに対する印刷を行う場合、該用紙Pの給送時における紙送りモーター14の回転速度Vは上記速度Vsub(=Vs−Vd)に設定される。また、用紙Pの排出時における紙送りモーター14の回転速度Vは上記速度Vsubに設定される。
【0093】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)複数の用紙Pを処理領域31に順次給送する際において、1枚目の用紙Pを給紙カセット30から処理領域31に給送させる場合、各ローラー33,34,40,41,351,352,361,362の回転速度の最大値は、2枚目以降の用紙Pを給送する際の回転速度の最大値よりも低速に設定される。また、最後の用紙Pを処理領域31から排出させる場合、各ローラー33,34,40,41,351,352,361,362の回転速度は、最後の用紙P以外の用紙Pを処理領域31から排出した際の回転速度の最大値よりも低速に設定される。すなわち、用紙Pの給送時においては、1枚目の用紙Pの給送速度が低くなり、用紙Pの排出時においては、最後の用紙Pの排出速度が低くなる。そのため、全枚数の用紙Pの給送速度及び排出速度が低く設定される場合と比較して、複数の用紙Pの給送及び排出に要する時間の長期化が抑制される。また、全ての用紙Pの給送速度及び排出速度が高く設定される場合と比較して、用紙Pの給送及び排出に基づき発生する騒音が低減される。したがって、インクジェット式プリンター11のスループットの低下を抑制しつつ、用紙Pの給送及び排出に基づき発生する騒音を低減させることができる。
【0094】
(2)1枚目の用紙Pの給送時の速度を低下させない従来の場合においては、用紙Pの給送開始と共に甲高い大きな音がインクジェット式プリンター11から発生し、その後に印刷が開始される。この場合、インクジェット式プリンター11から突然に大きな音が発生することになり、ユーザーが不快に感じる可能性が高い。しかし、本実施形態では、1枚目の用紙Pの給送速度を低くしているため、1枚目の用紙Pの給送時に発生する騒音の音色が低くなり、当該音色が、時間の経過と共に徐々に高くなる。そのため、騒音の音色の急激な変化を抑制できる分、騒音に伴う不快感を、ユーザーに与えにくくすることができる。また、インクジェット式プリンター11から大きな音が突然発生することが回避されるため、上述したような不快をユーザーが感じる可能性を低くすることができる。
【0095】
(3)後行の用紙Pは、先行の用紙Pに追随するように連続して給送される。そのため、2枚目以降の用紙Pの給送時においては、各ローラー33,34,40,41,351,352,361,362が連続して高速回転する時間が短くなる。したがって、2枚目以降の用紙Pの給送時では、各ローラー33,34,40,41,351,352,361,362の回転速度の最大値が高速であったとしても、各ローラー33,34,40,41,351,352,361,362の回転に伴う騒音が大きくなることはない。したがって、インクジェット式プリンター11のスループットの低下を抑制しつつ、用紙Pの給送及び排出に基づき発生する騒音を低減させることができる。
【0096】
(4)M枚目の用紙Pが給紙カセット30から送り出されると、クラッチ機構37が遮断状態になる。そのため、送出しローラー33は回転しなくなる。したがって、予定枚数以上の用紙Pが給紙カセット30からフレーム12内に送出されることを回避できる。
【0097】
(5)ドラフト印刷モードにおいては、設定速度Vsが第1の設定速度Vs1に設定されると共に、減速規定値Vdが第1の規定値Vd1に設定される。これに対し、高詳細印刷モードにおいては、設定速度Vsが第1の設定速度Vs1よりも低速の第2の設定速度Vs2に設定されると共に、減速規定値Vdが第1の規定値Vd1よりも小さい第2の規定値Vd2に設定される。そのため、ユーザーによって設定された印刷モードでの用紙Pの給送速度が高速である場合には、給送速度が低速である場合よりも、1枚目の用紙Pの給送時における給送速度の減速量が多くなる。そのため、用紙Pの給送時に発生する騒音が大きいと判断される印刷モードがユーザーに設定された場合ほど、用紙Pの給送に伴い発生する騒音を小さくすることができる。
【0098】
(6)本実施形態の給送装置15は、フロント給紙タイプの装置である。そのため、給紙カセット30から処理領域31までの給送経路は、リア給紙タイプの装置の場合と比較して長くなる。こうした給送装置15においては、1枚目の用紙Pの給送に要する時間が長くなり、ひいては騒音が発生する時間が長くなる。この点、本実施形態では、1枚目の用紙Pの給送速度を低速にしている。そのため、フロント給紙タイプの給送装置15において、1枚目の用紙Pの給送時に発生する騒音を小さくすることができる。
【0099】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を図9及び図10に従って説明する。なお、第2の実施形態は、設定された印刷モードによって減速規定値を設定する代わりに、給送する用紙の種類によって減速規定値を設定する点が第1の実施形態と異なっている。したがって、以下の説明においては、第1の実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1の実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0100】
給送制御部54の記憶部544に記憶されるテーブルについて、図9を参照して説明する。
図9に示すテーブルは、搬送する用紙の種類に応じた設定速度Vs及び減速規定値Vdを設定するためのテーブルである。図9に示すように、本実施形態のインクジェット式プリンター11で印刷可能な用紙の種類としては、例えばA4サイズの普通紙とはがきとが挙げられる。本実施形態では、用紙Pの給送・排出時に発生する騒音が、用紙の種類毎に異なる可能性があることを考慮して、用紙の種類毎の搬送モードが用意されている。
【0101】
すなわち、普通紙用の印刷モードでは、設定速度Vsが第3の設定速度Vs3に設定されると共に、減速規定値Vdが第3の規定値Vd3に設定される。また、はがき用の搬送モードでは、設定速度Vsが第3の設定速度Vs3よりも低速の第4の設定速度Vs4に設定されると共に、減速規定値Vdが第3の規定値Vd3よりも小さい第4の規定値Vd4に設定される。したがって、本実施形態では、図9に示すテーブルを記憶する記憶部544が、用紙の種類毎の搬送モードを記憶するモード記憶手段として機能する。
【0102】
次に、本実施形態の給送制御部54が実行する用紙搬送処理ルーチンについて説明する。なお、本実施形態の用紙搬送処理ルーチンは、上記第1の実施形態の処理ルーチンとは一部が異なるだけである。そのため、図10は、図6及び図7に示すフローチャートと異なる部分のみ図示している。
【0103】
さて、用紙搬送処理ルーチンのステップS10で印刷枚数Mが取得されると、ステップS11−1において、給送制御部54の紙送り駆動司令部543は、入力された情報に基づき搬送する用紙Pの種類を取得する。したがって、本実施形態では、紙送り駆動司令部543が、給紙カセット30で保持される用紙Pの種類を特定する種類特定手段としても機能する。次のステップS12において、給送制御部54は、ステップS11−1で取得した用紙Pの種類に応じた設定速度Vs及び減速規定値Vdを、図9に示すテーブルから取得する。このとき、給送制御部54の紙送り駆動司令部543は、印刷する用紙がはがきである場合には、用紙が普通紙である場合よりも減速規定値Vdを小さな値(Vd4)に設定する(図9参照)。その後においては、上記第1の実施形態と同様であるため、その説明を省略するものとする。
【0104】
したがって、本実施形態では、上記第1の実施形態における効果(1)〜(4)(6)に加え、以下に示す効果をさらに得ることができる。
(7)用紙の種類に基づき特定された搬送モードでの用紙Pの給送速度が高速である場合には、給送速度が低速である搬送モードと特定された場合よりも、1枚目の用紙Pの給送時における給送速度の減速量が多くなる。そのため、用紙Pの給送時に発生する騒音が大きいと判断される搬送モードが設定された場合ほど、用紙Pの給送・排出に伴う騒音を小さくすることができる。
【0105】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態を図11及び図12に従って説明する。なお、第3の実施形態は、給紙カセット30が複数種類の用紙を保持可能ある点が第1の実施形態と異なっている。したがって、以下の説明においては、第1の実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1の実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0106】
図11に示すように、給紙カセット30には、上下方向に沿って形成される複数(図11では2つ)の用紙収容空間30A,30Bが形成されている。すなわち、給紙カセット30内には、内部を上下で区画するための区画部材301が設けられている。本実施形態では、各用紙収容空間30A,30Bのうち、上側の用紙収容空間30A内には、第1のサイズ(本実施形態でははがき)の用紙PAが積層状態で保持される。また、下側の用紙収容空間30B内には、第1のサイズとは異なる第2のサイズ(本実施形態では、A4サイズ)の用紙PBが積層状態で保持される。
【0107】
こうした給紙カセット30内には、用紙収容空間30A内で保持される用紙PAを送り出すための第1の送出しローラー33Aと、用紙収容空間30B内で保持される用紙PBを送り出すための第2の送出しローラー33Bとが設けられている。そして、動力伝達経路において紙送りモーター14と第1の送出しローラー33Aとの間には、第1クラッチ機構37Aが設けられている。同様に、動力伝達経路において紙送りモーター14と第2の送出しローラー33Bとの間には、第2クラッチ機構37Bが設けられている。
【0108】
そして、給送制御部54のクラッチ駆動司令部542は、用紙PAに印刷を施す場合には、第2クラッチ機構37Bを遮断状態で維持させつつ、第1クラッチ機構37Aを制御する。一方、クラッチ駆動司令部542は、用紙PBに印刷を施す場合には、第1クラッチ機構37Aを遮断状態で維持させつつ、第2クラッチ機構37Bを制御する。
【0109】
本実施形態では、用紙PAを処理領域31まで給送する際の給送経路の長さは、用紙PBを処理領域31まで給送する際の給送経路の長さと異なっている。そのため、用紙PAを給送する際の紙送りモーター14の出力軸の回転速度が用紙PBを給送する場合の回転速度と同一速度である場合には、用紙の給送開始から印刷開始までに要する給送時間が、用紙のサイズに応じて異なってしまう。
【0110】
そこで、給送制御部54の記憶部544には、用紙のサイズに応じた給送時間のばらつきを抑制するためのテーブル(図12参照)が記憶されている。
図12に示すように、A4サイズ用の搬送モードでは、設定速度Vsが第5の設定速度Vs5に設定されると共に、減速規定値Vdが第5の規定値Vd5に設定される。また、はがき用の搬送モードでは、給送経路が短いため、設定速度Vsが第5の設定速度Vs5よりも低速の第6の設定速度Vs6に設定されると共に、減速規定値Vdが第5の規定値Vd5に設定される。
【0111】
そして、データ処理部51のコマンド解析部511では、入力された印刷データに含まれるコマンドを解析し、印刷する用紙Pのサイズを特定する。そして、データ処理部51からは、特定した用紙Pのサイズに関する情報を給送制御部54に出力する。すると、給送制御部54の紙送り駆動司令部543は、入力された情報に基づき、搬送する用紙Pのサイズを検出する。したがって、本実施形態では、紙送り駆動司令部543が、サイズ検出手段としても機能する。
【0112】
そして、紙送り駆動司令部543は、検出したサイズに相当する用紙が用紙PAである場合、1枚目の用紙PAの第1給送時回転速度Vt1を、第6の設定速度Vs6から第5の規定値Vd5を減算した速度に設定する。また、紙送り駆動司令部543は、用紙PBである場合、1枚目の用紙PBの第1給送時回転速度Vt1を、第5の設定速度Vs5から第5の規定値Vd5を減算した速度に設定する。第5の設定速度Vs5は第6の設定速度Vs6よりも低速に設定されている。そのため、1枚目の用紙PAの第1給送時回転速度Vt1は、1枚目の用紙PBの第1給送時回転速度Vt1よりも低速になる。したがって、本実施形態では、紙送り駆動司令部543が、速度設定手段としても機能する。
【0113】
したがって、本実施形態では、上記第1及び第2の各実施形態における効果(1)〜(4)(6)に加え、以下に示す効果をさらに得ることができる。
(8)本実施形態では、サイズの大きい用紙PBを処理領域31まで給送する際の給送経路は、サイズの小さい用紙PAを処理領域31まで給送する際の給送経路よりも短い。そのため、1枚目の用紙PAの第1給送時回転速度Vt1は、1枚目の用紙PBの第1給送時回転速度Vt1よりも低速になる。したがって、用紙のサイズに関係なく、1枚目の用紙を処理領域31に給送する際に要する給送時間のばらつきを小さくしつつ、用紙の給送・排出に伴う騒音を小さくすることができる。
【0114】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態を図13に従って説明する。なお、第4の実施形態は、送出しローラー33用の駆動源を紙送りモーター14とは別途設けた点が第1〜第3の各実施形態と異なっている。したがって、以下の説明においては、第1〜第3の各実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1〜第3の各実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0115】
図13に示すように、本実施形態の給送装置15は、中間ローラー34、給送ローラー対35及び排出ローラー対36に駆動力を伝達する第1駆動源の一例としての紙送りモーター14と、送出しローラー33に駆動力を伝達する第2駆動源の一例としての送出しモーター60とを備えている。紙送りモーター14は、送出しローラー33以外の他のローラーに対して駆動力を付与している。なお、本実施形態の給送装置15は、上記各実施形態の場合とは異なり、クラッチ機構(37)を備えていない。
【0116】
また、給送装置15を制御する給送制御部54は、紙送りカウンター541、紙送り駆動司令部543及び記憶部544を有している。
そして、用紙Pを給送する場合、給送制御部54は、1枚目の用紙Pを処理領域31に給送すべく各モーター14,60を制御する。続いて、給送制御部54は、1枚目の用紙Pが中間ローラー34とリタードローラー40によって挟持されるようになると、送出しモーター60を停止させる。すると、1枚目の用紙Pは、紙送りモーター14の駆動に基づき給送される。
【0117】
1枚目の後端が給紙カセット30内からフレーム12内に位置するようになったタイミングで、給送制御部54は、送出しモーター60を駆動させる。すると、2枚目の用紙Pの給送が開始される。しかし、2枚目の用紙Pの給送速度は、その時点の1枚目の用紙Pの給送速度よりも低速に設定されている。しかも、2枚目の用紙Pの給送が開始された時点では、1枚目の用紙Pに対して印刷が行われている。そのため、2枚目の用紙Pの給送速度は、印刷時における用紙Pの紙送り速度の平均値よりも低速である。なお、「紙送り速度の平均値」としては、例えば、用紙Pの長さを印刷に要した時間で除算した値が上げられる。こうした紙送り速度の平均値は、用紙Pのサイズ毎に予め用意されている。
【0118】
そして、2枚目の用紙Pが中間ローラー34とリタードローラー40によって挟持されるようになると、送出しモーター60を停止させる。すると、2枚目の用紙Pは、紙送りモーター14の駆動に基づき給送される。なお、この時点での2枚目の用紙Pの給送速度は、印刷中の1枚目の用紙Pの紙送り速度と同一速度となる。
【0119】
したがって、本実施形態では、上記第1〜第3の各実施形態における効果(1)〜(4)(6)に加え、以下に示す効果をさらに得ることができる。
(9)送出しモーター60の駆動に基づく後行の用紙Pの給送が開始された場合には、紙送りモーター14の駆動に基づき給送される先行の用紙Pに対して印刷処理が行われている。そこで、本実施形態では、送出しモーター60の駆動に基づく後行の用紙Pの給送速度は、印刷中に紙送りモーター14の駆動によって紙送りされる先行の用紙Pの紙送り速度の平均値よりも低速に設定される。そのため、後行の用紙Pの先端が先行の用紙Pの後端よりも給送方向における下流側に位置してしまう事態を回避できる。また、後行の用紙Pの給送に伴い発生する騒音を小さくすることができる。
【0120】
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・各実施形態において、第1給送時回転速度Vt1を、印刷枚数が多い場合ほど低速に設定してもよい。設定された印刷枚数が多い場合、スループットは、印刷枚数が少ない場合と比較して、1枚目の用紙Pの給送速度の低下の影響を受けにくい。そのため、設定された印刷枚数が多い場合ほど、用紙Pの給送に伴う騒音を小さくすることができる。
【0121】
・同様に、第1排出時回転速度Ve1を、印刷枚数が多い場合ほど低速に設定してもよい。設定された印刷枚数が多い場合、スループットは、印刷枚数が少ない場合と比較して、最後の用紙Pの排出速度の低下の影響を受けにくい。そのため、設定された印刷枚数が多い場合ほど、用紙Pの排出に伴う騒音を小さくすることができる。
【0122】
・各実施形態において、第1排出時回転速度Ve1を、第1給送時回転速度Vt1よりも低速に設定してもよい。最後の用紙Pの排出時には、該用紙Pがフレーム12から確実に排出させることができるように、排出ローラー対36の駆動時間が長めに設定される。そのため、最後の用紙Pの排出時において、排出ローラー対36は空回転していることがある。そこで、第1排出時回転速度Ve1を、第1給送時回転速度Vt1よりも低速に設定することにより、最後の用紙Pの排出完了後における排出ローラー対36の空回転時における騒音を小さくすることができる。
【0123】
・各実施形態において、第1給送時回転速度Vt1を、第1排出時回転速度Ve1よりも低速に設定してもよい。例えば、第1給送時回転速度Vt1が第2給送時回転速度Vt2の「40%」程度であるのに対し、第1排出時回転速度Ve1を、第2排出時回転速度Ve2の「70%」程度としてもよい。
【0124】
・第4の実施形態において、送出しローラー33が後行の用紙Pに圧接するようになった場合には、後行の用紙Pの先端が先行の用紙Pの後端よりも搬送方向における下流側に位置する状態で、送出しローラー33を回転させてもよい。このような制御構成にしても、後行の用紙Pの給送速度は、先行の用紙Pの給送速度よりも低速に設定されている。そのため、先行の用紙Pの後端が処理領域に至るまでの間に、該先行の用紙Pの後端は、後行の用紙Pの先端よりも搬送方向における下流側に位置するようになる。
【0125】
・第4の実施形態において、後行の用紙Pの給送速度が先行の用紙Pの給送速度と同等となるように、紙送りモーター14及び送出しモーター60を制御してもよい。この場合、先行の用紙Pが規定位置A1に到達したタイミングで、後行の用紙Pの給送を開始させることが好ましい。
【0126】
・第3の実施形態において、媒体保持手段は、複数の給紙カセットを備えた構成であってもよい。例えば、第1のサイズ用の給紙カセットを上段にセットし、第2のサイズ用の給紙カセットを下段にセットさせるようにしてもよい。
【0127】
・各実施形態において、印刷中の先行の用紙Pに追随するように、後行の用紙Pを給送しなくてもよい。この場合、先行の用紙Pの印刷が完了するまでは、後行の用紙Pの給送が開始されない。そして、印刷済みをなった先行の用紙Pの排出が開始されると、後行の用紙Pの給送が開始される。
【0128】
・各実施形態では、1枚目の用紙Pの給送時及び最後の用紙Pの排出時には、加速段階での紙送りモーター14の出力軸の加速度が、減速規定値Vdを取得しない場合よりも低加速度に設定される。同様に、減速段階での紙送りモーター14の出力軸の減速度が、減速規定値Vdを取得しない場合よりも低減速度に設定される(図4参照)。しかし、加速段階での紙送りモーター14の出力軸の加速度を、減速規定値Vdを取得しない場合と同等としてもよい。また、減速段階での紙送りモーター14の出力軸の減速度を、減速規定値Vdを取得しない場合と同等としてもよい。
【0129】
・各実施形態において、減速規定値Vdは、第1給送時回転速度Vt1及び第1排出時回転速度Ve1が第2給送時回転速度Vt2及び第2排出時回転速度Ve2よりも低速になるのであれば、任意の値であってもよい。例えば、減速規定値Vdを、第1給送時回転速度Vt1及び第1排出時回転速度Ve1が第2給送時回転速度Vt2及び第2排出時回転速度Ve2の「70%」程度となる値としてもよい。
【0130】
・各実施形態において、1枚目の用紙Pの給送時及び最後の用紙Pの排出時における紙送りモーター14の出力軸の回転速度Vを、用紙の種類、用紙のサイズ及び印刷モードなどに関係なく、予め設定された所定速度としてもよい。ただし、所定速度は、用紙Pの給送・排出時に発生する騒音の音圧が規定周波数以下となるように設定することが好ましい。なお、規定周波数は、人間には聞き取りにくい周波数(例えば、500Hz)であることが好ましい。
【0131】
・各実施形態において、M(Mは3以上の整数)枚の用紙Pに対して印刷を行う場合、1枚目以外の他の各用紙Pのうち少なくとも1枚の用紙Pの給送時における紙送りモーター14の出力軸の回転速度Vが設定速度Vsであれば、他の用紙Pの給送時における紙送りモーター14の出力軸の回転速度Vを、設定速度Vsよりも低速に設定してもよい。
【0132】
同様に、M(Mは3以上の整数)枚の用紙Pに対して印刷を行う場合、M枚目以外の他の各用紙Pのうち少なくとも1枚の用紙Pの排出時における紙送りモーター14の出力軸の回転速度Vが設定速度Vsであれば、他の用紙Pの排出時における紙送りモーター14の出力軸の回転速度Vを、設定速度Vsよりも低速に設定してもよい。
【0133】
・各実施形態において、クラッチ機構37は、キャリッジ17によって接続・遮断が切り替えられる構成であってもよい。この場合、クラッチ駆動司令部542は、クラッチ機構37を遮断させるタイミングになった場合にはその旨をキャリッジ制御部53に出力し、クラッチ機構37を接続させるタイミングになった場合にはその旨をキャリッジ制御部53に出力する。そして、キャリッジ制御部53は、クラッチ駆動司令部542からの指令に基づきキャリッジ17を移動させ、クラッチ機構37を動作させる。
【0134】
・各実施形態おいて、給送装置15を、リア給紙タイプの給送装置に具体化してもよい。
・各実施形態にいて、インクジェット式プリンター11は、インクカートリッジ24がキャリッジ17とは異なる位置に配置される所謂オフキャリッジタイプのプリンターであってもよい。また、インクジェット式プリンター11は、記録ヘッド23を固定したままでも用紙最大幅範囲の印刷が可能なラインヘッド式やラテラル式のプリンターであってもよい。
【0135】
・各実施形態において、印刷装置は、ドットインパクト方式、レーザー方式などの他の記録方式で媒体に記録を施す印刷装置でもよい。
・各実施形態において、印刷装置を、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする流体噴射装置に具体化してもよい。また、印刷装置を、微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に具体化してもよい。この場合、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態を言い、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状体、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、媒体の一例である液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置が挙げられる。さらに、液体噴射装置は、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。また、流体は、トナーなどの粉粒体でもよい。なお、本明細書でいう流体には、気体のみからなるものは含まないものとする。
【0136】
・給送装置を備える処理装置は、処理領域31に給送された用紙に対して所定の処理を行う装置であれば、印刷装置以外の他の任意の装置であってもよい。例えば、処理装置は、処理領域31に給送された用紙Pの画像を読み取る画像読み取り装置(スキャナー)であってもよい。
【0137】
次に、上記各実施形態及び別の実施形態から把握できる技術的思想を以下に追記する。
(イ)前記搬送制御手段は、
前記給送手段によって前記処理領域に給送された先行の媒体に対して前記所定の処理が行われる際には、
前記先行の媒体を、前記搬送方向における上流側から下流側に送り出すと共に、後行の媒体を、前記先行の媒体に追随するように前記媒体保持手段から前記処理領域に向けて給送するべく前記給送手段及び前記排出手段を制御することを特徴とする請求項2に記載の媒体搬送装置。
【0138】
上記構成によれば、先行の媒体は、所定の処理が行われる場合には搬送方向における上流側から下流側に少しずつ送り出される。このとき、後行の媒体は、少しずつ送り出される先行の媒体に追随するように処理領域に向けて給送される。このように先行の媒体に所定の処理が行われる間では、高速(第2給送時回転速度及び第2排出時回転速度)で回転する給送用回転体及び排出用回転体の連続回転時間は余り長くない。そのため、これら回転体の回転に伴い発生する騒音は余り大きくならない。したがって、複数の媒体の給送及び排出に要する時間の長期化を抑制しつつ、媒体の給送及び排出に基づき発生する騒音を低減させることができる。
【0139】
(ロ)前記媒体保持手段は、互いにサイズの異なる複数種類の媒体が種類毎に保持されると共に、前記処理領域までの給送経路がサイズの大きな媒体ほど長くなるように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の媒体搬送装置。
【0140】
(ハ)前記媒体保持手段は、互いにサイズの異なる複数種類の媒体が種類毎に保持されるように構成され、
前記媒体搬送装置は、
前記処理領域までの給送経路が長く設定された媒体を給送する場合には、給送経路が短く設定された媒体を給送する場合よりも第1給送時回転速度を高速に設定する速度設定手段と、をさらに備え、
前記搬送制御手段は、1個目の媒体の給送時には、前記速度設定手段によって設定された第1給送時回転速度で前記給送用回転体が回転するように前記給送手段を制御することを特徴とする媒体搬送装置。
【符号の説明】
【0141】
11…印刷装置の一例としてのインクジェット式プリンター、14…駆動源及び第1駆動源の一例としての紙送りモーター、23…印刷手段の一例としての記録ヘッド、30…媒体保持手段の一例としての給紙カセット、31…処理領域、33,33A,33B…給送手段を構成する送出しローラー(給送用回転体、特定の給送用回転体)、34…給送手段を構成する中間ローラー(給送用回転体)、35…給送手段を構成する給送ローラー対、351…駆動ローラー(給送用回転体)、36…排出手段を構成する排出ローラー対、361…駆動ローラー(排出用回転体)、37,37A,37B…クラッチ手段の一例としてのクラッチ機構、52…印刷制御手段の一例としてのヘッド制御部、54…搬送制御手段の一例としての給送制御部、543…サイズ検出手段、速度設定手段、種類特定手段、規定値設定手段の一例としての紙送り駆動司令部、544…モード記憶手段の一例としての記憶部、60…第2駆動源の一例としての送出しモーター、Vd…減速規定値、Ve1…第1排出時回転速度、Ve2…第2排出時回転速度、Vt1…第1給送時回転速度、Vt2…第2給送時回転速度、P,P1,P2,PA,PB…媒体の一例としての用紙。
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙などの媒体を所定の処理が行われる処理領域に給送し、該処理領域で処理済みとなった媒体を排出する媒体搬送装置及び媒体搬送方法に関する。また、本発明は、上記媒体搬送装置と該媒体搬送装置によって処理領域に搬送された媒体に対して印刷を施す印刷手段とを備える印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置においては、そのスループットの向上が強く望まれている。そのため、印刷装置に搭載される媒体搬送装置では、用紙などの媒体を、印刷手段によって印刷処理(所定の処理)が行われる処理領域に給送する際の給送速度、及び印刷済みとなった媒体を処理領域から排出する際の排出速度などの高速化が進んでいる。しかしながら、給送速度及び排出速度の高速化が進んだ近年では、媒体搬送装置で発生する媒体の給送及び排出に基づく騒音の大きさが問題となっている。
【0003】
こうした騒音問題を解決する処理装置としては、例えば特許文献1に記載のファクシミリ装置が知られている。このファクシミリ装置は、所定の条件の成立時には、媒体の給送速度及び排出速度を所定の条件の非成立時の速度よりも低速に設定することにより、騒音の低減を図っている。なお、所定の条件としては、ファクシミリ装置が家庭用である場合にはユーザーが就寝している深夜であること、ファクシミリ装置がオフィス用である場合にはユーザーの勤務時間であることなどが挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−151906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記ファクシミリ装置では、所定の条件の成立時には、騒音を低減させることができるものの、スループットが低下する。その一方で、所定の条件の非成立時には、スループットは低下しないものの、騒音問題が依然として残ってしまう。すなわち、上記ファクシミリ装置には、スループット優先モード及び騒音低減優先モードは用意されているものの、スループットの低下抑制と騒音低減とを両立したモードは用意されていない。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の媒体の給送及び排出に要する時間の長期化を抑制しつつ、媒体の給送及び排出に基づき発生する騒音を低減させることができる媒体搬送装置、媒体搬送方法及び印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の媒体搬送装置は、媒体を保持する媒体保持手段と、前記媒体保持手段に保持される処理前の媒体を、所定の処理が行われる処理領域に給送すべく回転する給送用回転体を有する給送手段と、前記処理領域で処理済みとなった媒体を、前記処理領域から搬送方向における下流側に排出すべく回転する排出用回転体を有する排出手段と、前記給送手段及び前記排出手段を制御する搬送制御手段と、を備え、前記搬送制御手段は、前記媒体保持手段に保持される複数個の媒体を搬送する場合に、1個目の媒体を給送する際の前記給送用回転体が、2個目以降の媒体を給送する際の第2給送時回転速度の最大値よりも低速の第1給送時回転速度で回転するように前記給送手段を制御し、最後の媒体を前記処理領域から排出する際の前記排出用回転体が、最後の媒体以外の媒体を前記処理領域から排出した際の第2排出時回転速度の最大値よりも低速の第1排出時回転速度で回転するように前記排出手段を制御する。
【0008】
上記構成によれば、複数の媒体を1つずつ処理領域に給送する際において、1個目の媒体を媒体保持手段から処理領域に給送させる場合に、給送用回転体は、2個目以降の媒体を給送する際の第2給送時回転速度の最大値よりも低速の第1給送時回転速度で回転する。また、最後の媒体を処理領域から排出させる場合に、排出用回転体は、最後の媒体以外の媒体を前記処理領域から排出した際の第2排出時回転速度の最大値よりも低速の第1排出時回転速度で回転する。すなわち、媒体の給送時においては、1個目の媒体の給送速度が低くなり、媒体の排出時においては、最後の媒体の排出速度が低くなる。そのため、全ての媒体の給送速度及び排出速度が低く設定される場合と比較して、複数の媒体の給送及び排出に要する時間の長期化が抑制される。また、全ての媒体の給送速度及び排出速度が高く設定される場合と比較して、媒体の給送及び排出に基づき発生する騒音が低減される。したがって、複数の媒体の給送及び排出に要する時間の長期化を抑制しつつ、媒体の給送及び排出に基づき発生する騒音を低減させることができる。
【0009】
本発明の媒体搬送装置において、前記搬送制御手段は、先行の媒体が前記処理領域から排出される場合に、後行の媒体が前記処理領域に向けて供給されるように前記給送手段及び前記排出手段を制御する。
【0010】
上記構成によれば、処理済みとなった先行の媒体の排出とこれから所定の処理が行われる後行の媒体の給送とが同時に行われる。そのため、排出と給送とが別々のタイミングで行われる場合と比較して、媒体の給送・排出に要する時間を短くすることができる。
【0011】
本発明の媒体搬送装置において、前記給送手段は、前記搬送方向において互いに異なる位置に配置される複数の前記給送用回転体を有し、前記媒体搬送装置は、前記給送手段及び前記排出手段に駆動力を付与すべく駆動する駆動源と、前記各給送用回転体のうち前記媒体保持手段内の媒体を該媒体保持手段外に送り出すための特定の給送用回転体への前記駆動源からの動力伝達を許可又は遮断すべく動作するクラッチ手段と、をさらに備え、前記搬送制御手段は、最後の媒体が前記媒体保持手段から給送された場合には、前記クラッチ手段を遮断状態にする。
【0012】
上記構成によれば、最後の媒体が媒体保持手段から送り出されると、特定の給送用回転体には駆動源からの駆動力が伝達されなくなる。そのため、予定個数以上の媒体が媒体保持手段から送り出されることを回避できる。
【0013】
本発明の媒体搬送装置において、前記給送手段は、前記搬送方向において互いに異なる位置に配置される複数の前記給送用回転体を有し、前記媒体搬送装置は、前記各給送用回転体のうち、前記媒体保持手段内の媒体を該媒体保持手段外に送り出すための特定の給送用回転体以外の他の給送用回転体と、前記排出用回転体とに駆動力を付与すべく駆動する第1駆動源と、前記特定の給送用回転体に駆動力を付与すべく駆動する第2駆動源と、をさらに備え、前記搬送制御手段は、前記第1駆動源の駆動に基づき給送又は排出される先行の媒体の給送速度よりも、前記第2駆動源の駆動に基づき給送される後行の媒体の給送速度のほうが低速となるように前記各駆動源を制御する。
【0014】
第2駆動源の駆動に基づく後行の媒体の給送が開始された場合には、第1駆動源の駆動に基づき給送される先行の媒体の少なくとも一部が処理領域内に位置しており、該先行の媒体に対して所定の処理が行われていることがある。本発明では、後行の媒体の給送速度が先行の媒体の給送速度よりも低速に設定される。そのため、後行の媒体の先端が先行の媒体の後端よりも給送方向における下流側に位置してしまう事態を回避できる。また、後行の媒体の給送に伴い発生する騒音を小さくすることができる。
【0015】
本発明の媒体搬送装置において、前記搬送制御手段は、第1排出時回転速度が第1給送時回転速度よりも低速となるように前記給送手段及び前記排出手段を制御する。
最後の媒体の排出時には、該媒体が処理領域から確実に排出させることができるように、排出手段の駆動時間が長めに設定される。そのため、排出手段の排出用回転体は、空回転することがある。そこで、本発明では、第1排出時回転速度が第1給送時回転速度よりも低速に設定されている。そのため、最後の媒体の排出完了後における排出用回転体の空回転時における騒音を小さくすることができる。
【0016】
本発明の媒体搬送装置は、前記媒体保持手段に保持される媒体のサイズを検出するサイズ検出手段と、前記サイズ検出手段によって検出された媒体のサイズが大きい場合には、検出された媒体のサイズが小さい場合よりも第1給送時回転速度を高速に設定する速度設定手段と、をさらに備え、前記搬送制御手段は、1個目の媒体の給送時には、前記速度設定手段によって設定された第1給送時回転速度で前記給送用回転体が回転するように前記給送手段を制御する。
【0017】
媒体保持手段から処理領域までの給送経路の長さが、給送する媒体のサイズによって異なる場合がある。こうした場合には、第1給送時回転速度を媒体のサイズに応じた値にすることにより、1つ目の媒体の処理領域までの給送時間のばらつきが抑制される。本発明では、第1給送時回転速度は、媒体のサイズが大きい場合のほうが小さい場合よりも高速に設定される。そのため、大きいサイズの媒体の給送経路のほうが小さいサイズの媒体の給送経路よりも長い場合には、1つ目の媒体の給送時における騒音を抑制しつつ、1つ目の媒体の処理領域までの給送時間のばらつきを抑制することができる。
【0018】
本発明の媒体搬送装置は、設定された媒体の搬送数が多い場合には搬送数が少ない場合よりも第1給送時回転速度を低速に設定する速度設定手段をさらに備え、前記搬送制御手段は、1個目の媒体の給送時には、前記速度設定手段によって設定された第1給送時回転速度で前記給送用回転体が回転するように前記給送手段を制御する。
【0019】
設定された搬送数が多い場合、搬送数が少ない場合と比較して、スループットは、1個目の媒体の給送速度の低下による影響を受けにくい。そこで、本発明では、第1給送時回転速度は、設定された媒体の搬送数に応じた値に設定される。そのため、設定された媒体の搬送数が多い場合ほど、媒体の給送に伴う騒音を小さくすることができる。
【0020】
本発明の媒体搬送装置は、前記媒体保持手段で保持される媒体の種類を特定する種類特定手段と、媒体の種類毎の搬送モードを記憶するモード記憶手段と、前記種類特定手段によって特定された搬送モードの給送時回転速度が低速である場合には、特定された搬送モードの給送時回転速度が高速である場合よりも減速規定値を小さな値に設定する規定値設定手段と、前記種類特定手段によって特定された搬送モードの給送時回転速度から前記規定値設定手段によって設定された減速規定値を減算し、該減算結果に基づき第1給送時回転速度を設定する速度設定手段と、をさらに備え、前記搬送制御手段は、1個目の媒体の給送時には、前記速度設定手段によって設定された第1給送時回転速度で前記給送用回転体が回転するように前記給送手段を制御し、2個目以降の媒体の給送時には、前記種類特定手段によって特定された搬送モードの給送時回転速度に基づいた第2給送時回転速度で前記給送用回転体が回転するように前記給送手段を制御する。
【0021】
媒体の給送時に発生する騒音は、給送用回転体の回転速度が高速であるほど大きくなると推定される。そこで、本発明では、媒体の種類に基づき特定された搬送モードの給送時回転速度が高速である場合には、給送時回転速度が低速である場合よりも、1個目の媒体の給送時における給送速度の減速量が多くなる。そのため、媒体の給送時に発生する騒音が大きいと判断される搬送モードが設定された場合ほど、媒体の給送に伴う騒音を小さくすることができる。
【0022】
本発明の媒体搬送装置は、媒体の給送速度が互いに異なる複数種類の搬送モードを記憶するモード記憶手段と、選択された搬送モードの給送時回転速度が低速である場合には、選択された搬送モードの給送時回転速度が高速である場合よりも減速規定値を小さな値に設定する規定値設定手段と、選択された搬送モードの給送時回転速度から前記規定値設定手段によって設定された減速規定値を減算し、該減算結果に基づき第1給送時回転速度を設定する速度設定手段と、をさらに備え、前記搬送制御手段は、1個目の媒体の給送時には、前記速度設定手段によって設定された第1給送時回転速度で前記給送用回転体が回転するように前記給送手段を制御し、2個目以降の媒体の給送時には、選択された搬送モードの給送時回転速度に基づいた第2給送時回転速度で前記給送用回転体が回転するように前記給送手段を制御する。
【0023】
媒体の給送時に発生する騒音は、給送用回転体の回転速度が高速であるほど大きくなると推定される。そこで、本発明では、設定された搬送モードの給送時回転速度が高速である場合には、給送時回転速度が低速である場合よりも、1個目の媒体の給送時における給送速度の減速量が多くなる。そのため、媒体の給送時に発生する騒音が大きいと判断される搬送モードが設定された場合ほど、媒体の給送に伴う騒音を小さくすることができる。
【0024】
本発明の印刷装置は、上記媒体搬送装置と、前記給送手段によって前記処理領域に給送された媒体に対して印刷を施すべく駆動する印刷手段と、前記印刷手段を制御する印刷制御手段と、を備える。
【0025】
上記構成によれば、複数個の媒体に対して印刷を行う場合には、媒体の給送及び排出に伴う騒音を、印刷装置のスループットの低下を抑制しつつ低くすることができる。
本発明は、媒体保持手段に保持される複数個の媒体を、所定の処理が行われる処理領域に順次給送し、処理済みとなった媒体を前記処理領域よりも搬送方向における下流側に順次排出させる媒体搬送方法であって、1個目の媒体を前記媒体保持手段から前記処理領域に給送する場合に、媒体を前記処理領域に給送すべく回転する給送用回転体を、2個目以降の媒体を給送する際の第2給送時回転速度の最大値よりも低速の第1給送時回転速度で回転させるステップと、最後の媒体を前記処理領域から排出する場合に、媒体を排出すべく回転する排出用回転体を、最後の媒体以外の媒体を前記処理領域から排出する際の第2排出時回転速度の最大値よりも低速の第1排出時回転速度で回転させるステップと、を有する。
【0026】
上記構成によれば、上記媒体搬送装置と同等の作用・効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の媒体搬送装置の一実施形態である給送装置を備えるインクジェット式プリンターの概略斜視図。
【図2】給送装置の概略構成を説明する模式図。
【図3】インクジェット式プリンターの電気的構成を説明するブロック図。
【図4】紙送りモーターの駆動時における回転速度の変化を説明するグラフ。
【図5】印刷モードに応じた設定速度及び減速規定値を示すテーブル。
【図6】用紙搬送処理ルーチンを説明するフローチャート(前半部分)。
【図7】用紙搬送処理ルーチンを説明するフローチャート(後半部分)。
【図8】(a)(b)は用紙の給送・排出時に発生する騒音の大きさを示すグラフ。
【図9】用紙の種類に応じた設定速度及び減速規定値を示すテーブル。
【図10】用紙搬送処理ルーチンの要部を説明するフローチャート。
【図11】給送装置の構成の要部を説明する模式図。
【図12】用紙のサイズに応じた設定速度及び減速規定値を示すテーブル。
【図13】電気的構成の要部を説明するブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1の実施形態)
以下、本発明の印刷装置をインクジェット式プリンターに具体化した一実施形態を図1〜図8に基づいて説明する。
【0029】
図1に示すように、インクジェット式プリンター11における略矩形箱状のフレーム12内の下部には、媒体の一例としての用紙Pを支持する支持部材13が主走査方向Xに沿って延設されている。この支持部材13上には、紙送りモーター14を駆動源とする媒体搬送装置の一例としての給送装置15の駆動に基づき、用紙Pが主走査方向Xと略直交する副走査方向Yに沿って給送される。
【0030】
また、フレーム12内において支持部材13の上方には、支持部材13の長手方向(主走査方向X)と平行な棒状のガイド軸16が設けられている。このガイド軸16は、その軸線方向(主走査方向X)に沿って往復移動可能な状態でキャリッジ17を支持している。
【0031】
フレーム12の後壁内面におけるガイド軸16の両端部と対応する各位置には、駆動プーリー18及び従動プーリー19が回転自在な状態で支持されている。駆動プーリー18にはキャリッジモーター20の出力軸が連結されると共に、これら一対のプーリー18,19間には一部がキャリッジ17に連結された無端状のタイミングベルト21が掛装されている。したがって、キャリッジ17は、キャリッジモーター20からの駆動力が無端状のタイミングベルト21を介して伝達されることにより、ガイド軸16にガイドされながら主走査方向Xに移動される。
【0032】
また、フレーム12内においてタイミングベルト21の下側には、キャリッジ17の主走査方向Xにおける位置、移動速度及び移動方向を検出するためのリニアエンコーダー22の被検出用テープ22aが設けられている。なお、リニアエンコーダー22の検出部は、キャリッジ17に設けられている。検出部には、主走査方向Xにおいて互いに異なる位置に配置される複数(一例として2つ)のセンサー(図示略)が設けられている。
【0033】
キャリッジ17の下面側には印刷手段の一例として記録ヘッド23が設けられる一方、キャリッジ17上には記録ヘッド23へ供給するインクを貯留するインクカートリッジ24が着脱可能に搭載されている。そして、インクカートリッジ24内のインクが図示しない駆動素子(例えば、圧電素子)の駆動により記録ヘッド23のノズル形成面に開口する複数のノズルに供給され、該各ノズルからインクが支持部材13に支持される用紙Pに噴射される。すなわち、本実施形態において「所定の処理」とは、記録ヘッド23から噴射されたインクを用紙Pに付着させる印刷処理のことを示している。
【0034】
また、フレーム12内において主走査方向Xにおける一方側には、用紙Pが搬送されないホームポジション領域HPが形成されている。このホームポジション領域HPには、記録ヘッド23のメンテナンスを行なうためのメンテナンス装置25が設けられている。
【0035】
次に、本実施形態の給送装置15について、図1〜図3を参照して説明する。
図1及び図2に示すように、給送装置15は、フロント給紙タイプの給送装置であって、フレーム12の下側に着脱可能な状態で装着される媒体保持手段の一例としての給紙カセット30を備えている。この給紙カセット30内には、複数枚の用紙Pが上下方向に積層した状態で保持される。そして、給紙カセット30に保持される複数枚の用紙Pのうち最上位の用紙Pは、給紙カセット30からフレーム12内において支持部材13よりも後側(図2では右側)に送られた後、フレーム12内において後側から支持部材13上の処理領域31に給送される。そして、処理領域31で印刷済みとなった用紙Pは、処理領域31から前側(図2では左側)に排出される。
【0036】
こうした給送装置15は、図2及び図3に示すように、紙送りモーター14の出力軸の回転速度、回転量及び回転方向を検出するためのロータリーエンコーダー32を備えている。このロータリーエンコーダー32の図示しない検出部は、紙送りモーター14の駆動態様に応じた検出信号を制御装置50に出力する。また、給送装置15は、用紙Pの給送方向における上流側から下流側に沿って順に配置される送出しローラー33、中間ローラー34、給送ローラー対35、排出ローラー対36を備えている。送出しローラー33、中間ローラー34、給送ローラー対35の駆動ローラー351及び排出ローラー対36の駆動ローラー361は、紙送りモーター14から出力される駆動力が図示しない動力伝達機構を介して伝達されることにより回転する。上記動力伝達機構は、例えば、複数の歯車を備えた構成となっている。
【0037】
送出しローラー33は、給紙カセット30内の最上位の用紙Pを送り出すためのローラーである。こうした送出しローラー33と紙送りモーター14との間の動力伝達機構には、該紙送りモーター14から送出しローラー33への動力伝達を許可したり切断したりすべく動作するクラッチ手段の一例としてのクラッチ機構37が設けられている。本実施形態のクラッチ機構37は、制御装置50からの指令に基づき動作する電磁式のクラッチである。また、送出しローラー33は、基端が揺動軸38に回転可能な状態で支持される揺動部材39の先端に回転自在な状態で支持されている。この揺動部材39は、図示しない付勢部材によって下方に付勢されるため、送出しローラー33は、給紙カセット30内の最上位の用紙Pに圧接している。そして、紙送りモーター14からの駆動力に基づき送出しローラー33が回転すると、給紙カセット30内で積層される複数枚の用紙Pのうち最上位に位置する用紙Pが、給紙カセット30からフレーム12内に送り出される。
【0038】
中間ローラー34は、処理領域31の後方に配置されている。こうした中間ローラー34は、給紙カセット30から送り出された用紙Pの給送方向を図2における右斜め上方から左方に切り替えるためのローラーである。また、中間ローラー34の近傍には、該中間ローラー34の回転に基づき従動回転するリタードローラー40及びアシストローラー41が設けられている。リタードローラー40及びアシストローラー41のうち給送方向上流側に位置するリタードローラー40は、給紙カセット30から送り出された用紙Pを中間ローラー34と共に挟持し、給送方向における下流側に給送する。また、アシストローラー41は、中間ローラー34及びリタードローラー40によって給送された用紙Pを中間ローラー34と共に挟持し、該用紙Pを前方(図2では左側)に給送する。
【0039】
給送ローラー対35及び排出ローラー対36は、中間ローラー34よりも給送方向下流側に配置されている。具体的には、給送ローラー対35は、処理領域31の直前となる位置に配置されると共に、排出ローラー対36は、処理領域31の直後となる位置に配置されている。こうした給送ローラー対35は、駆動ローラー351と、該駆動ローラー351に対して従動回転する従動ローラー352とを有している。同様に、排出ローラー対36は、駆動ローラー361と、該駆動ローラー361に対して従動回転する従動ローラー362とを有している。そして、給送ローラー対35は、紙送りモーター14からの駆動力により、中間ローラー34及びアシストローラー41によって給送された用紙Pを挟持し、該用紙Pを支持部材13上の処理領域31に給送する。また、排出ローラー対36は、紙送りモーター14からの駆動力により、用紙Pを処理領域31からフレーム12外に排出する。本実施形態では、各ローラー対35,36において、駆動ローラー351と駆動ローラー361は同一形状であると共に、従動ローラー352と従動ローラー362は同一形状である。
【0040】
したがって、本実施形態では、支持部材13よりも搬送方向における上流側に位置する送出しローラー33、中間ローラー34及び給送ローラー対35と、これらに紙送りモーター14からの駆動力を伝達する動力伝達機構とにより、印刷処理前の用紙Pを、印刷処理が行われる処理領域31に給送するための給送手段が構成される。また、給送手段を構成する送出しローラー33、中間ローラー34及び給送ローラー対35のうち、紙送りモーター14からの駆動力が伝達される送出しローラー33、中間ローラー34及び給送ローラー対35の駆動ローラー351が、給送用回転体に該当する。また、これら各ローラー33,34,351のうち送出しローラー33が、給紙カセット30内の用紙Pを給紙カセット30外に送り出すための特定の給送用回転体に該当する。
【0041】
また、本実施形態では、支持部材13よりも搬送方向における下流側に位置する排出ローラー対36と、該排出ローラー対36に紙送りモーター14からの駆動力を伝達する動力伝達機構とにより、処理領域31で印刷処理済みとなった用紙Pを、処理領域31から搬送方向における下流側に排出するための排出手段が構成される。また、排出手段を構成する排出ローラー対36において紙送りモーター14からの駆動力が伝達される駆動ローラー361が、排出用回転体に該当する。
【0042】
なお、搬送方向において給送ローラー対35と中間ローラー34との間となる中途位置には、用紙Pの先端を検知するための先端検知センサー42が設けられている。例えば、先端検知センサー42は、用紙Pの非検知時にはオン信号を制御装置50に出力する一方、用紙Pの検知時にはオフ信号を制御装置50に出力する。
【0043】
次に、本実施形態の給送装置15が複数枚の用紙Pを連続して搬送する際の用紙搬送方法について、図2を参照して説明する。ここでは、2枚の用紙P(P1,P2)を連続して給送する場合について説明する。
【0044】
さて、複数枚(2枚)の用紙Pに対する印刷指令が制御装置50に入力されると、クラッチ機構37が接続状態となり、紙送りモーター14から送出しローラー33への動力伝達が許可される。この状態で紙送りモーター14が駆動すると、送出しローラー33、中間ローラー34、給送ローラー対35の駆動ローラー351及び排出ローラー対36の駆動ローラー361が回転し始める。すると、給紙カセット30内の最上位の用紙P1(P)は、送出しローラー33によって給紙カセット30外に送り出される。
【0045】
本実施形態では、クラッチ機構37は、先行の用紙P1が中間ローラー34及びリタードローラー40によって挟持されるようになってから遮断状態となる。その結果、紙送りモーター14からの駆動力が伝達されなくなった送出しローラー33の回転が停止される。つまり、この時点では、後行の用紙P2(P)が給紙カセット30から送り出されない。
【0046】
一方、給紙カセット30から送り出された先行の用紙P1は、中間ローラー34、リタードローラー40及びアシストローラー41によって、処理領域31に向けて給送される。そして、用紙P1の先端が先端検知センサー42によって検知されてからの紙送りモーター14の駆動量が所定量に到達した時点で、用紙P1の先端が給送ローラー対35のところに到達するため、紙送りモーター14の駆動が一時停止される。こうして給送処理が停止されると、用紙P1のスキューを解消させるための印刷前処理が行われる。その後、印刷処理が開始される。
【0047】
印刷処理が開始されると、紙送りモーター14が略間欠駆動し始める。すると、用紙P1が少しだけ給送方向下流側に送り出されると紙送りが停止され、キャリッジ17の主走査方向Xへの移動に連動して記録ヘッド23からは、用紙P1において該記録ヘッド23のノズル形成面23aに対向する部分にインクが噴射される。そして、キャリッジ17の一回の移動が完了すると、用紙P1がまた少しだけ給送方向下流側に送り出される。このように紙送りとインク噴射とが交互に行われる。なお、印刷処理時におけるキャリッジ17の一回の移動のことを「1パス」ということとする。
【0048】
こうした印刷処理中において、先行の用紙P1の後端が規定位置A1を通過すると、クラッチ機構37が接続状態となる。すると、送出しローラー33は、紙送りモーター14から駆動力が伝達されると回転し、後行の用紙P2は、給紙カセット30から送り出される。すなわち、後行の用紙P2は、その先端と先行の用紙P1の後端との間が所定間隔空けた状態で、該先行の用紙P1に追随するように給送される。なお、後行の用紙P2が中間ローラー34及びリタードローラー40によって挟持されるようになると、接続状態にあったクラッチ機構37は遮断状態になる。
【0049】
先行の用紙P1に対する印刷が完了すると、紙送りモーター14が連続駆動し、先行の用紙P1が排出ローラー対36によって排出されると共に、後行の用紙P2が処理領域31に向けて給送される。そして、先端検知センサー42によって後行の用紙P2の先端が検知され、後行の用紙P2の先端が給送ローラー対35のところに到達すると、紙送りモーター14の駆動が一時停止される。その後、印刷前処理が行われ、後行の用紙P2に対して印刷処理が行われる。そして、後行の用紙P2に対する印刷処理が完了すると、紙送りモーター14が連続駆動し、後行の用紙P2が排出ローラー対36によって排出される。
【0050】
次に、インクジェット式プリンター11の制御装置50について、図3を参照して説明する。
制御装置50は、CPU、ROM、RAM、不揮発メモリー(例えば、EEPROM)及びASIC(Application Specific IC)などで構成されるデジタルコンピューター(図示略)と、各種のドライバー回路(図示略)とを備えている。こうした制御装置50には、ハードウェア及びソフトウェアのうち少なくとも一方により実現される機能部として、データ処理部51、印刷制御手段の一例としてのヘッド制御部52、キャリッジ制御部53、及び搬送制御手段の一例としての給送制御部54が設けられている。
【0051】
データ処理部51は、図示しないインターフェイスを介して受信した印刷データに含まれるコマンドを解析するコマンド解析部511と、印刷データのうちコマンドを除いたデータを処理する画像処理部512とを有している。コマンド解析部511は、コマンドを解析して印刷モード、印刷枚数、用紙Pのサイズ及び用紙Pの種類などの各種情報を取得する。そして、データ処理部51は、取得した各種情報を給送制御部54及びキャリッジ制御部53に出力する。なお、印刷モードとしては、一例として、印刷速度を重視したドラフト印刷モード及び印刷精度を重視した高詳細印刷モードが挙げられる。
【0052】
画像処理部512は、印刷データのうちコマンドを除いたデータを、印刷ドットが階調値で示されたビットマップデータに変換し、該ビットマップデータを展開する。そして、画像処理部512は、展開したデータに基づき、1パス分のビットマップデータを生成し、ビットマップデータを1パス分毎にヘッド制御部52に出力する。
【0053】
ヘッド制御部52は、画像処理部512から1パス分のビットマップデータが入力されると共に、リニアエンコーダー22の検出部22bから検出信号が入力される。そして、ヘッド制御部52は、記録ヘッド23の主走査方向Xにおける位置に基づき、記録ヘッド23に搭載される各駆動素子(図示略)の駆動を個別に制御する。なお、リニアエンコーダー22の検出部22bからの検出信号は、キャリッジ制御部53にも入力される。つまり、ヘッド制御部52は、キャリッジ17の主走査方向Xへの移動と記録ヘッド23からのインク噴射とを連動させることにより、用紙Pにおいて記録ヘッド23のノズル形成面23aに対向する部分に印刷を施す。そして、ヘッド制御部52は、1パス分の印刷が完了すると、紙送り指令を給送制御部54に出力する。また、ヘッド制御部52は、1枚の用紙Pに対する印刷が完了すると、用紙Pの排出指令を給送制御部54に出力する。
【0054】
キャリッジ制御部53は、キャリッジ17の主走査方向Xにおける位置を検出するためのキャリッジカウンター531と、キャリッジモーター20を駆動させるためのキャリッジ駆動司令部532とを有している。キャリッジカウンター531は、リニアエンコーダー22の検出部22bから入力される検出信号に含まれるパルスに基づいたカウントアップ又はカウントダウンを行い、その結果に基づきキャリッジ17の主走査方向Xにおける位置を検出する。キャリッジ駆動司令部532は、コマンド解析部511から入力された印刷モードに基づき、印刷処理時におけるキャリッジ17の移動速度、移動開始位置及び停止位置などの移動制御情報を設定する。そして、キャリッジ駆動司令部532は、設定した移動制御情報とキャリッジカウンター531によるカウント結果とに基づき、キャリッジモーター20の駆動を制御する。
【0055】
給送制御部54は、紙送りカウンター541と、クラッチ駆動司令部542と、紙送り駆動司令部543と、記憶部544とを有している。紙送りカウンター541は、ロータリーエンコーダー32の図示しない検出部から入力される検出信号に含まれるパルスに基づいたカウントアップ又はカウントダウンを行う。例えば、紙送りカウンター541は、紙送りモーター14が正転駆動するときにはロータリーエンコーダー32からの検出信号に含まれるパルスに基づきカウントアップを行う一方、逆転駆動するときにはロータリーエンコーダー32からの検出信号に含まれるパルスに基づきカウントダウンを行う。
【0056】
クラッチ駆動司令部542は、送出しローラー33の回転に基づく用紙Pの搬送量を、紙送りカウンター541によるカウント処理に基づき検出する。そして、クラッチ駆動司令部542は、送出しローラー33の回転によって給送される用紙Pが中間ローラー34及びリタードローラー40によって挟持されたと判断すると、接続状態にあるクラッチ機構37を遮断状態にする。また、クラッチ駆動司令部542は、紙送り駆動司令部543から接続指令が入力された場合に、遮断状態にあるクラッチ機構37を接続状態にする。
【0057】
紙送り駆動司令部543には、コマンド解析部511から各種情報が入力される。そして、紙送り駆動司令部543は、入力された各種情報に含まれる印刷モードに応じた紙送りモーター14の出力軸の回転速度と減速規定値とを、記憶部544に記憶されるテーブル(図5参照)から取得する。また、紙送り駆動司令部543は、先端検知センサー42からの検出信号に基づき給送中の用紙Pの先端を検知した場合には、紙送りカウンター541によるカウント結果を取得する。そして、紙送り駆動司令部543は、紙送りカウンター541によるカウント処理に基づき用紙Pの先端の位置を検出し、該用紙Pの先端が給送ローラー対35のところに到達したと判断すると、紙送りモーター14の駆動を停止させる。その後、紙送り駆動司令部543は、記録ヘッド23によるインク噴射の合間に用紙Pの紙送りが行われるように紙送りモーター14の駆動を制御する。
【0058】
また、紙送り駆動司令部543は、紙送りカウンター541によるカウント処理に基づき用紙Pの後端の位置を検出する。そして、紙送り駆動司令部543は、用紙Pの後端が規定位置A1(図2参照)を通過したと判断すると、接続指令をクラッチ駆動司令部542に出力する。
【0059】
本実施形態において、紙送り駆動司令部543は、複数枚の用紙Pに印刷処理を施す場合において、2枚目以降の用紙Pの給送するときには、図4にて実線で示すように紙送りモーター14の出力軸の回転速度Vが変化するように、該紙送りモーター14を制御する。この場合、紙送り駆動司令部543による紙送りモーター14の制御方法は、回転速度Vを設定速度Vsまで加速させる加速段階と、回転速度Vを設定速度Vsで一定に維持させる定速段階と、回転速度を「0(零)」まで減速させる減速段階とを含んでいる。なお、設定速度Vsは、印刷モードに基づき設定される速度である。
【0060】
また、紙送り駆動司令部543は、1枚目の用紙Pの給送時及び最後の用紙Pの排出時には、図4にて破線で示すように紙送りモーター14の出力軸の回転速度Vが変化するように、該紙送りモーター14を制御する。この場合、加速段階では、回転速度Vを、設定速度Vsから減速規定値Vdを減算した速度Vsubまで加速させ、定速段階では、回転速度Vを速度Vsubで維持させる。なお、紙送り駆動司令部543は、加速段階においては、紙送りモーター14の出力軸の加速度を、2枚目以降の用紙Pの給送時よりも低加速度に設定する。また、紙送り駆動司令部543は、減速段階においては、紙送りモーター14の出力軸の減速度を、2枚目以降の用紙Pの給送時よりも低減速度に設定する。
【0061】
次に、記憶部544に記憶されるテーブルについて図5を参照して説明する。
図5に示すテーブルは、用紙Pの搬送モードの一例である印刷モードに応じた設定速度Vs及び減速規定値Vdを設定するためのテーブルである。図5に示すように、本実施形態のインクジェット式プリンター11での印刷モードとしては、ドラフト印刷モード及び高詳細印刷モードが用意されている。ドラフト印刷モードは、用紙Pの給送速度及び排出速度が高速に設定された搬送モードである。一方、高詳細印刷モードは、用紙Pの給送速度及び排出速度が低速に設定された搬送モードである。
【0062】
ドラフト印刷モードでは、設定速度Vsが第1の設定速度Vs1に設定されると共に、減速規定値Vdが第1の規定値Vd1に設定される。また、高詳細印刷モードでは、設定速度Vsが第1の設定速度Vs1よりも低速の第2の設定速度Vs2に設定されると共に、減速規定値Vdが第1の規定値Vd1よりも小さい第2の規定値Vd2に設定される。したがって、本実施形態では、図5に示すテーブルを記憶する記憶部544が、用紙Pの給送速度(設定速度Vs)が互いに異なる複数種類の搬送モードを記憶するモード記憶手段として機能する。
【0063】
次に、本実施形態の給送制御部54が実行する用紙搬送処理ルーチンについて、図6及び図7に示すフローチャートを参照して説明する。なお、用紙搬送処理ルーチンは、複数枚の用紙Pを連続して搬送させる場合に、印刷のスループットの低下を抑制しつつ、給送・排出に伴う騒音の低減を図るための処理ルーチンである。
【0064】
さて、給送制御部54は、データ処理部51から印刷指令が入力されたタイミングで、用紙搬送処理ルーチンを開始する。そして、ステップS10において、給送制御部54は、コマンド解析部511から入力された各種情報に基づき、用紙Pの印刷枚数M(Mは1以上の整数)を取得する。次のステップS11において、給送制御部54は、印刷モードを取得する。次のステップS12において、給送制御部54は、ステップS11で取得した印刷モードに応じた設定速度Vs及び減速規定値Vdを、図5に示すテーブルに基づき設定する。このとき、給送制御部54の紙送り駆動司令部543は、印刷モードが高詳細印刷モードである場合には、印刷モードがドラフト印刷モードである場合よりも減速規定値Vdを小さな値(Vd2)に設定する(図5参照)。したがって、本実施形態では、紙送り駆動司令部543が、規定値設定手段としても機能する。
【0065】
次のステップS13において、給送制御部54は、2枚目以降の用紙Pを給送する際に回転する給送ローラー対35の駆動ローラー351の回転速度である第2給送時回転速度Vt2と、M−1枚目以前の用紙Pを排出する際に回転する排出ローラー対36の駆動ローラー361の回転速度である第2排出時回転速度Ve2とを設定する。具体的には、給送制御部54の紙送り駆動司令部543は、ステップS12で設定した設定速度Vsに所定値を乗算させ、該演算結果を第2給送時回転速度Vt2とする。ここでいう「所定値」とは、駆動ローラー351の減速比に応じた値である。また、紙送り駆動司令部543は、第2排出時回転速度Ve2を第2給送時回転速度Vt2と同一値に設定する。
【0066】
次のステップS14において、給送制御部54は、1枚目の用紙Pを給送する際に回転する駆動ローラー351の回転速度である第1給送時回転速度Vt1と、M枚目の用紙Pを排出する際に回転する駆動ローラー361の回転速度である第1排出時回転速度Ve1とを設定する。具体的には、給送制御部54の紙送り駆動司令部543は、ステップS12で設定した設定速度Vsから減速規定値Vdを減算した速度Vsubに上記所定値を乗算させ、該演算結果を第1給送時回転速度Vt1とする。また、紙送り駆動司令部543は、第1排出時回転速度Ve1を第1給送時回転速度Vt1と同一値に設定する。そのため、第1給送時回転速度Vt1は第2給送時回転速度Vt2よりも低速に設定されると共に、第1排出時回転速度Ve1は第2排出時回転速度Ve2よりも低速に設定される。したがって、本実施形態では、紙送り駆動司令部543が、速度設定手段としても機能する。
【0067】
次のステップS15において、給送制御部54は、係数Nに「1」をセットする。次のステップS16において、給送制御部54は、係数Nが「1」であるか否かを判定する。給送制御部54は、係数Nが「1」である場合には(ステップS16:YES)、その処理を次のステップS17に移行し、係数Nが「1」ではない場合には(ステップS17:NO)、その処理を後述するステップS18に移行する。
【0068】
ステップS17において、給送制御部54は、1枚目の用紙Pの給送であるため、給送ローラー対35の駆動ローラー351の回転速度がステップS14で設定した第1給送時回転速度Vt1となるように紙送りモーター14を制御する第1給送処理を行う。具体的には、給送制御部54のクラッチ駆動司令部542は、クラッチ機構37を接続状態にし、紙送り駆動司令部543は、紙送りモーター14を、その出力軸が上記速度Vsub(=設定速度Vs−減速規定値Vd)で回転するように駆動させる。そして、給送制御部54は、その処理を後述するステップS19に移行する。したがって、本実施形態では、ステップS17が、1枚目の用紙Pを給紙カセット30から処理領域31に給送する場合に、給送ローラー対35の駆動ローラー351を、2枚目以降の用紙Pを給送する際の第2給送時回転速度Vt2の最大値よりも低速の第1給送時回転速度Vt1で回転させるステップに相当する。
【0069】
一方、ステップS18において、給送制御部54は、2枚目以降の用紙Pの給送であるため、駆動ローラー351の回転速度がステップS13で設定した第2給送時回転速度Vt2となるように紙送りモーター14を制御する第2給送処理を行う。具体的には、紙送り駆動司令部543は、紙送りモーター14を、その出力軸が設定速度Vsで回転するように駆動させる。このとき、クラッチ機構37が遮断状態である場合には、クラッチ駆動司令部542は、クラッチ機構37を接続状態にする。そして、給送制御部54は、その処理を次のステップS19に移行する。したがって、本実施形態では、ステップS18が、2枚目以降の用紙Pを給送する場合に、給送ローラー対35の駆動ローラー351を、第2給送時回転速度Vt2で回転させるステップに相当する。
【0070】
なお、第2給送処理が行われる場合、印刷済みとなった先行の用紙Pが搬送経路上に残っている。そのため、印刷前の後行の用紙Pの給送を行うべく紙送りモーター14が駆動する場合、印刷済みとなった先行の用紙Pは、排出ローラー対36によって処理領域31から排出される。したがって、本実施形態では、ステップS18が、最後の用紙P以外の用紙Pを処理領域31から排出する場合に、用紙Pを排出すべく回転する排出ローラー対36の駆動ローラー361を回転させるステップにも相当する。
【0071】
ステップS19において、給送制御部54は、印刷処理前の用紙Pが中間ローラー34とリタードローラー40とによって挟持された状態であるか否かを判定する。すなわち、給送制御部54は、印刷処理前の用紙Pの給送が開始されてからロータリーエンコーダー32から出力された検出信号に含まれるパルス数に基づき、該用紙Pの搬送量を取得する。そして、給送制御部54は、取得した用紙Pの搬送量に基づき、該用紙Pが各ローラー34,40によって挟持された状態であるか否かを判定する。そして、用紙Pが各ローラー34,40によって挟持されていないと判定した場合(ステップS19:NO)、クラッチ機構37の接続状態を維持させる。一方、用紙Pが各ローラー34,40によって挟持されていると判定した場合(ステップS19:YES)、給送制御部54は、その処理を次のステップS20に移行する。
【0072】
ステップS20において、給送制御部54は、接続状態にあるクラッチ機構37を遮断状態にする、即ち送出しローラー33への動力伝達を遮断する。この場合であっても、中間ローラー34、給送ローラー対35及び排出ローラー対36には紙送りモーター14からの駆動力が伝達されるため、用紙Pの給送は継続される。次のステップS21において、給送制御部54は、用紙Pの後端が規定位置A1に到達していないか否かを判定する。こうした用紙Pの後端の位置についても、給送制御部54は、ロータリーエンコーダー32からの検出信号に基づき検出する。
【0073】
そして、給送制御部54は、用紙Pの後端が規定位置A1に到達していないと判定した場合には(ステップS21:YES)、その処理を後述するステップS23に移行し、到達したと判定した場合には(ステップS21:NO)、その処理を次のステップS22に移行する。ステップS22において、給送制御部54は、遮断状態にあるクラッチ機構37を接続状態にし、その処理を次のステップS23に移行する。なお、ステップS22では、M枚目の用紙Pの給送時にはクラッチ機構37が遮断状態で維持される。そのため、M+1枚目の用紙Pは、フレーム12内に給送されない。
【0074】
ステップS23において、給送制御部54は、印刷処理前の用紙Pの先端が給送ローラー対35のところに到達したか否かを判定する。給送制御部54は、印刷処理前の用紙Pの先端が到達していない場合には(ステップS23:NO)、用紙Pの給送を継続させ、用紙Pの先端が到達した場合には(ステップS23:YES)、その処理を次のステップS24に移行する。
【0075】
なお、ステップS21の判定結果がNOとなりステップS22でクラッチ機構37が接続状態とされる場合、ステップS23の判定結果がYESになるまでの間、送出しローラー33には紙送りモーター14からの駆動力が伝達される。そのため、先行の用紙P(P1)に連続して、後行の用紙P(P2)が給送される。したがって、本実施形態では、ステップS22,S23により、2枚目以降の用紙Pを給送するステップが構成される。
【0076】
ステップS24において、給送制御部54は、紙送りモーター14の駆動を停止させ、用紙Pの給送を停止させる。ステップS25において、給送制御部54は、スキュー取りなどの印刷前処理を行う。次のステップS26において、給送制御部54は、印刷時紙送り処理を行う。この印刷時紙送り処理では、給送制御部54は、ヘッド制御部52から1パス分の印刷が完了した旨(即ち、紙送り指令)が入力されたタイミングで、用紙Pの紙送りを行うべく紙送りモーター14の駆動を制御する。
【0077】
次のステップS27において、給送制御部54は、N枚目の用紙P(即ち、印刷中の用紙P)の後端が規定位置A1を通過したか否かを判定する。N枚目の用紙Pの後端が規定位置A1を通過していない場合(ステップS27:NO)、給送制御部54は、その処理を後述するステップS29に移行する。一方、N枚目の用紙Pの後端が規定位置A1を通過した場合(ステップS27:YES)、給送制御部54は、その処理を次のステップS28に移行する。ステップS28において、給送制御部54は、クラッチ機構37が遮断状態であるときには該クラッチ機構37を接続状態し、クラッチ機構37が既に接続状態であるときには該状態を維持し、その処理を次のステップS29に移行する。なお、ステップS28では、M枚目の用紙Pの給送時にはクラッチ機構37が遮断状態で維持される。そのため、M+1枚目の用紙Pは、給送されない。
【0078】
ステップS29において、給送制御部54は、N枚目の用紙への印刷が完了したか否かを判定する。そして、給送制御部54は、印刷が未完了である場合には(ステップS29:NO)、その処理を前述したステップS26に移行し、印刷が完了した場合には(ステップS29:YES)、その処理を次のステップS30に移行する。
【0079】
印刷中の用紙Pの後端が規定位置A1を通過した場合、送出しローラー33には紙送りモーター14からの駆動力が伝達される。そのため、印刷中の用紙P(P1)に連続して、後行の用紙P(P2)が給送される。したがって、本実施形態では、ステップS26〜S29により、2枚目以降の用紙Pを給送するステップが構成される。
【0080】
ステップS30において、給送制御部54は、係数Nが印刷枚数Mと一致しないか否かを判定する。係数Nが印刷枚数Mと一致しない場合(ステップS30:YES)、給送制御部54は、その処理を次のステップS31に移行する。ステップS31において、給送制御部54は、印刷処理を施す用紙Pが未だあるため、係数Nを「1」だけインクリメントし、その後、その処理を前述したステップS16に移行する。一方、係数Nが印刷枚数Mと一致する場合(ステップS30:NO)、給送制御部54は、最後の用紙Pへの印刷処理が完了したため、その処理を次のステップS32に移行する。
【0081】
ステップS32において、給送制御部54は、M枚目の用紙Pの排出であるため、排出ローラー対36の駆動ローラー361の回転速度がステップS14で設定した第1排出時回転速度Ve1となるように紙送りモーター14を制御する排出処理を行う。具体的には、給送制御部54の紙送り駆動司令部543は、紙送りモーター14を、その出力軸が上記速度Vsub(=設定速度Vs−減速規定値Vd)で回転するように駆動させる。したがって、本実施形態では、ステップS32が、最後の用紙Pを処理領域31から排出する場合に、排出ローラー対36の駆動ローラー361を、最後の用紙P以外の用紙Pを処理領域から排出する際の第2排出時回転速度Ve2よりも低速の第1排出時回転速度Ve1で回転させるステップに相当する。
【0082】
次のステップS33において、給送制御部54は、M枚目の用紙Pの排出が完了したか否かを判定する。そして、給送制御部54は、排出が完了していない場合には(ステップS33:NO)、紙送りモーター14の駆動を継続させ、排出が完了した場合には(ステップS33:YES)、その処理を次のステップS34に移行する。ステップS34において、給送制御部54は、紙送りモーター14の駆動を停止させ、その後、用紙搬送処理ルーチンを終了する。
【0083】
次に、本実施形態のインクジェット式プリンター11の作用について、用紙Pの給送・排出時の作用を中心に図8を参照して説明する。
図8に示すグラフは、6枚の用紙Pを連続して給送・排出させた場合にインクジェット式プリンター11で発生する騒音を「ISO7779」で規定される空気伝搬騒音の測定方法で測定した結果を、グラフ化したものである。すなわち、図8(a)は、1枚目の用紙Pの給送時における給送ローラー対35の駆動ローラー351の回転速度が第2給送時回転速度Vt2であり、6枚目の用紙Pの排出時における排出ローラー対36の駆動ローラー361の回転速度が第2排出時回転速度Ve2である場合の騒音の大きさを示すグラフである。また、図8(b)は、1枚目の用紙Pの給送時における駆動ローラー351の回転速度が第1給送時回転速度Vt1(<Vt2)であり、6枚目の用紙Pの排出時における駆動ローラー361の回転速度が第1排出時回転速度Ve1(<Ve2)である場合の騒音の大きさを示すグラフである。なお、本実施形態では、第1給送時回転速度Vt1及び第1排出時回転速度Ve1は、第2給送時回転速度Vt2及び第2排出時回転速度Ve2の「40%」程度の速度であるものとする。
【0084】
さて、クラッチ機構37が接続状態である状態で紙送りモーター14が駆動し始めると、各ローラー33,34,40,41,351,352,361,362が回転し始める。その結果、1枚目の用紙Pが処理領域31に向けて給送される。このときの紙送りモーター14の回転速度Vは上記速度Vsub(=Vs−Vd)に設定される(図4参照)。本実施形態では、上記速度Vsubは、設定速度Vsの「40%」程度に設定される。すると、各ローラー33,34,40,41,351,352,361,362の回転速度は、紙送りモーター14の回転速度Vが設定速度Vsに設定される場合における各ローラー33,34,40,41,351,352,361,362の回転速度の「40%」程度となる。そのため、1枚目の給送時にインクジェット式プリンター11から発生する騒音は、図8(a)(b)に示すように、紙送りモーター14の回転速度Vが設定速度Vsに設定される場合と比較して十分に小さくなる。
【0085】
なお、用紙Pの給送・排出時に発生する騒音の大部分は、紙送りモーター14と各ローラー33,34,351,361,40,41との間の動力伝達経路に設けられる動力伝達機構から発生している。上記動力伝達機構は、複数の歯車を備えた構成となっており、各歯車を介して動力を伝達している。そのため、互いに噛合し合う各歯車の歯が接触する際に、騒音が発生している。こうして発生する騒音の周波数は、各歯車の回転速度が低速であるほど低周波となる。
【0086】
一般的に、人間の耳の感度は、騒音の周波数が約「1000Hz」以下になると下がる。そのため、紙送りモーター14の回転速度Vが設定速度Vsである場合における騒音の周波数が「1000Hz」程度であるとすると、回転速度Vを低速にするほど、人間は、騒音が小さくなったと感じるようになる。したがって、1枚目の用紙Pの給送時に人間が感じる騒音は、紙送りモーター14の回転速度Vが設定速度Vsである場合と比較して小さくなる。
【0087】
そして、1枚目の用紙Pに対する印刷が開始され、該1枚目の用紙Pの後端が規定位置A1に到達すると、2枚目の用紙Pの給送が開始される(図2参照)。このときの紙送りモーター14の回転速度Vは、設定速度Vsに設定される。そのため、2枚目の用紙Pの給送に関しては、従来の場合とほぼ同等の速度で行われる。1枚の用紙Pが印刷中である場合、2枚目の用紙Pは、記録ヘッド23からのインク噴射が行われない間に少しずつ給送方向下流側に給送される。すなわち、1枚目の用紙Pの給送時とは異なり、各ローラー33,34,40,41,351,352,361,362が連続して回転しない。そのため、回転速度Vが設定速度Vsに設定されても、2枚目の用紙Pの給送時では、用紙Pの給送に伴う騒音は、人間にとって余り気にならない。
【0088】
そして、1枚目の用紙Pに対する印刷が完了すると、1枚目の用紙Pの排出と、2枚目の用紙Pの給送とが同時に行われる。2枚目の用紙Pの先端が給送ローラー対35のところに到達すると、紙送りモーター14の駆動が停止される。1枚目の用紙Pに対する印刷処理が完了してから2枚目の用紙Pの給送が完了するまでの第1の期間中では、紙送りモーター14は、1枚目の用紙Pの給送時と比較して高速で駆動する。しかし、第1の期間は、1枚目の用紙Pの給送開始時点から給送終了時点までの第2の期間と比較して短い。これは、1枚目の用紙Pの印刷中に、2枚目の用紙Pの給送が開始されているためである。そのため、第1の期間で紙送りモーター14を高速駆動させても、第2の期間で紙送りモーター14を高速駆動させる場合と比較して、期間が短い分、人間にとっては騒音が余り気にならない。
【0089】
その後、スキュー取りなどの印刷前処理が行われ、2枚目の用紙Pに対して印刷が開始される。そして、2枚目の用紙Pの後端が規定位置A1に到達すると、3枚目の用紙Pの給送が開始される。なお、3枚目〜6枚目までの用紙Pの給送及び2枚目〜5枚目までの用紙Pの排出は、上述した場合と同等であるため、その詳細な説明を省略する。
【0090】
6枚目の用紙Pに対する印刷が完了すると、該6枚目の用紙Pの排出が開始される。このときの紙送りモーター14の回転速度Vは上記速度Vsub(=Vs−Vd)に設定される(図4参照)。そのため、6枚目の排出時にインクジェット式プリンター11から発生する騒音は、図8(a)(b)に示すように、紙送りモーター14の回転速度Vが設定速度Vsに設定される場合と比較して十分に小さくなる。その理由は、1枚目の用紙Pの給送速度を遅くした場合と同様である。
【0091】
このように紙送りモーター14の出力軸の回転速度を調整すると、印刷処理中における音圧は、「1.6dB」程度低減される。このように音圧、即ち騒音を低減させたとしても、インクジェット式プリンター11のスループットの低下は「2%」程度である。すなわち、スループットの低下はほとんど無い。
【0092】
なお、1枚の用紙Pに対する印刷を行う場合、該用紙Pの給送時における紙送りモーター14の回転速度Vは上記速度Vsub(=Vs−Vd)に設定される。また、用紙Pの排出時における紙送りモーター14の回転速度Vは上記速度Vsubに設定される。
【0093】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)複数の用紙Pを処理領域31に順次給送する際において、1枚目の用紙Pを給紙カセット30から処理領域31に給送させる場合、各ローラー33,34,40,41,351,352,361,362の回転速度の最大値は、2枚目以降の用紙Pを給送する際の回転速度の最大値よりも低速に設定される。また、最後の用紙Pを処理領域31から排出させる場合、各ローラー33,34,40,41,351,352,361,362の回転速度は、最後の用紙P以外の用紙Pを処理領域31から排出した際の回転速度の最大値よりも低速に設定される。すなわち、用紙Pの給送時においては、1枚目の用紙Pの給送速度が低くなり、用紙Pの排出時においては、最後の用紙Pの排出速度が低くなる。そのため、全枚数の用紙Pの給送速度及び排出速度が低く設定される場合と比較して、複数の用紙Pの給送及び排出に要する時間の長期化が抑制される。また、全ての用紙Pの給送速度及び排出速度が高く設定される場合と比較して、用紙Pの給送及び排出に基づき発生する騒音が低減される。したがって、インクジェット式プリンター11のスループットの低下を抑制しつつ、用紙Pの給送及び排出に基づき発生する騒音を低減させることができる。
【0094】
(2)1枚目の用紙Pの給送時の速度を低下させない従来の場合においては、用紙Pの給送開始と共に甲高い大きな音がインクジェット式プリンター11から発生し、その後に印刷が開始される。この場合、インクジェット式プリンター11から突然に大きな音が発生することになり、ユーザーが不快に感じる可能性が高い。しかし、本実施形態では、1枚目の用紙Pの給送速度を低くしているため、1枚目の用紙Pの給送時に発生する騒音の音色が低くなり、当該音色が、時間の経過と共に徐々に高くなる。そのため、騒音の音色の急激な変化を抑制できる分、騒音に伴う不快感を、ユーザーに与えにくくすることができる。また、インクジェット式プリンター11から大きな音が突然発生することが回避されるため、上述したような不快をユーザーが感じる可能性を低くすることができる。
【0095】
(3)後行の用紙Pは、先行の用紙Pに追随するように連続して給送される。そのため、2枚目以降の用紙Pの給送時においては、各ローラー33,34,40,41,351,352,361,362が連続して高速回転する時間が短くなる。したがって、2枚目以降の用紙Pの給送時では、各ローラー33,34,40,41,351,352,361,362の回転速度の最大値が高速であったとしても、各ローラー33,34,40,41,351,352,361,362の回転に伴う騒音が大きくなることはない。したがって、インクジェット式プリンター11のスループットの低下を抑制しつつ、用紙Pの給送及び排出に基づき発生する騒音を低減させることができる。
【0096】
(4)M枚目の用紙Pが給紙カセット30から送り出されると、クラッチ機構37が遮断状態になる。そのため、送出しローラー33は回転しなくなる。したがって、予定枚数以上の用紙Pが給紙カセット30からフレーム12内に送出されることを回避できる。
【0097】
(5)ドラフト印刷モードにおいては、設定速度Vsが第1の設定速度Vs1に設定されると共に、減速規定値Vdが第1の規定値Vd1に設定される。これに対し、高詳細印刷モードにおいては、設定速度Vsが第1の設定速度Vs1よりも低速の第2の設定速度Vs2に設定されると共に、減速規定値Vdが第1の規定値Vd1よりも小さい第2の規定値Vd2に設定される。そのため、ユーザーによって設定された印刷モードでの用紙Pの給送速度が高速である場合には、給送速度が低速である場合よりも、1枚目の用紙Pの給送時における給送速度の減速量が多くなる。そのため、用紙Pの給送時に発生する騒音が大きいと判断される印刷モードがユーザーに設定された場合ほど、用紙Pの給送に伴い発生する騒音を小さくすることができる。
【0098】
(6)本実施形態の給送装置15は、フロント給紙タイプの装置である。そのため、給紙カセット30から処理領域31までの給送経路は、リア給紙タイプの装置の場合と比較して長くなる。こうした給送装置15においては、1枚目の用紙Pの給送に要する時間が長くなり、ひいては騒音が発生する時間が長くなる。この点、本実施形態では、1枚目の用紙Pの給送速度を低速にしている。そのため、フロント給紙タイプの給送装置15において、1枚目の用紙Pの給送時に発生する騒音を小さくすることができる。
【0099】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を図9及び図10に従って説明する。なお、第2の実施形態は、設定された印刷モードによって減速規定値を設定する代わりに、給送する用紙の種類によって減速規定値を設定する点が第1の実施形態と異なっている。したがって、以下の説明においては、第1の実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1の実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0100】
給送制御部54の記憶部544に記憶されるテーブルについて、図9を参照して説明する。
図9に示すテーブルは、搬送する用紙の種類に応じた設定速度Vs及び減速規定値Vdを設定するためのテーブルである。図9に示すように、本実施形態のインクジェット式プリンター11で印刷可能な用紙の種類としては、例えばA4サイズの普通紙とはがきとが挙げられる。本実施形態では、用紙Pの給送・排出時に発生する騒音が、用紙の種類毎に異なる可能性があることを考慮して、用紙の種類毎の搬送モードが用意されている。
【0101】
すなわち、普通紙用の印刷モードでは、設定速度Vsが第3の設定速度Vs3に設定されると共に、減速規定値Vdが第3の規定値Vd3に設定される。また、はがき用の搬送モードでは、設定速度Vsが第3の設定速度Vs3よりも低速の第4の設定速度Vs4に設定されると共に、減速規定値Vdが第3の規定値Vd3よりも小さい第4の規定値Vd4に設定される。したがって、本実施形態では、図9に示すテーブルを記憶する記憶部544が、用紙の種類毎の搬送モードを記憶するモード記憶手段として機能する。
【0102】
次に、本実施形態の給送制御部54が実行する用紙搬送処理ルーチンについて説明する。なお、本実施形態の用紙搬送処理ルーチンは、上記第1の実施形態の処理ルーチンとは一部が異なるだけである。そのため、図10は、図6及び図7に示すフローチャートと異なる部分のみ図示している。
【0103】
さて、用紙搬送処理ルーチンのステップS10で印刷枚数Mが取得されると、ステップS11−1において、給送制御部54の紙送り駆動司令部543は、入力された情報に基づき搬送する用紙Pの種類を取得する。したがって、本実施形態では、紙送り駆動司令部543が、給紙カセット30で保持される用紙Pの種類を特定する種類特定手段としても機能する。次のステップS12において、給送制御部54は、ステップS11−1で取得した用紙Pの種類に応じた設定速度Vs及び減速規定値Vdを、図9に示すテーブルから取得する。このとき、給送制御部54の紙送り駆動司令部543は、印刷する用紙がはがきである場合には、用紙が普通紙である場合よりも減速規定値Vdを小さな値(Vd4)に設定する(図9参照)。その後においては、上記第1の実施形態と同様であるため、その説明を省略するものとする。
【0104】
したがって、本実施形態では、上記第1の実施形態における効果(1)〜(4)(6)に加え、以下に示す効果をさらに得ることができる。
(7)用紙の種類に基づき特定された搬送モードでの用紙Pの給送速度が高速である場合には、給送速度が低速である搬送モードと特定された場合よりも、1枚目の用紙Pの給送時における給送速度の減速量が多くなる。そのため、用紙Pの給送時に発生する騒音が大きいと判断される搬送モードが設定された場合ほど、用紙Pの給送・排出に伴う騒音を小さくすることができる。
【0105】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態を図11及び図12に従って説明する。なお、第3の実施形態は、給紙カセット30が複数種類の用紙を保持可能ある点が第1の実施形態と異なっている。したがって、以下の説明においては、第1の実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1の実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0106】
図11に示すように、給紙カセット30には、上下方向に沿って形成される複数(図11では2つ)の用紙収容空間30A,30Bが形成されている。すなわち、給紙カセット30内には、内部を上下で区画するための区画部材301が設けられている。本実施形態では、各用紙収容空間30A,30Bのうち、上側の用紙収容空間30A内には、第1のサイズ(本実施形態でははがき)の用紙PAが積層状態で保持される。また、下側の用紙収容空間30B内には、第1のサイズとは異なる第2のサイズ(本実施形態では、A4サイズ)の用紙PBが積層状態で保持される。
【0107】
こうした給紙カセット30内には、用紙収容空間30A内で保持される用紙PAを送り出すための第1の送出しローラー33Aと、用紙収容空間30B内で保持される用紙PBを送り出すための第2の送出しローラー33Bとが設けられている。そして、動力伝達経路において紙送りモーター14と第1の送出しローラー33Aとの間には、第1クラッチ機構37Aが設けられている。同様に、動力伝達経路において紙送りモーター14と第2の送出しローラー33Bとの間には、第2クラッチ機構37Bが設けられている。
【0108】
そして、給送制御部54のクラッチ駆動司令部542は、用紙PAに印刷を施す場合には、第2クラッチ機構37Bを遮断状態で維持させつつ、第1クラッチ機構37Aを制御する。一方、クラッチ駆動司令部542は、用紙PBに印刷を施す場合には、第1クラッチ機構37Aを遮断状態で維持させつつ、第2クラッチ機構37Bを制御する。
【0109】
本実施形態では、用紙PAを処理領域31まで給送する際の給送経路の長さは、用紙PBを処理領域31まで給送する際の給送経路の長さと異なっている。そのため、用紙PAを給送する際の紙送りモーター14の出力軸の回転速度が用紙PBを給送する場合の回転速度と同一速度である場合には、用紙の給送開始から印刷開始までに要する給送時間が、用紙のサイズに応じて異なってしまう。
【0110】
そこで、給送制御部54の記憶部544には、用紙のサイズに応じた給送時間のばらつきを抑制するためのテーブル(図12参照)が記憶されている。
図12に示すように、A4サイズ用の搬送モードでは、設定速度Vsが第5の設定速度Vs5に設定されると共に、減速規定値Vdが第5の規定値Vd5に設定される。また、はがき用の搬送モードでは、給送経路が短いため、設定速度Vsが第5の設定速度Vs5よりも低速の第6の設定速度Vs6に設定されると共に、減速規定値Vdが第5の規定値Vd5に設定される。
【0111】
そして、データ処理部51のコマンド解析部511では、入力された印刷データに含まれるコマンドを解析し、印刷する用紙Pのサイズを特定する。そして、データ処理部51からは、特定した用紙Pのサイズに関する情報を給送制御部54に出力する。すると、給送制御部54の紙送り駆動司令部543は、入力された情報に基づき、搬送する用紙Pのサイズを検出する。したがって、本実施形態では、紙送り駆動司令部543が、サイズ検出手段としても機能する。
【0112】
そして、紙送り駆動司令部543は、検出したサイズに相当する用紙が用紙PAである場合、1枚目の用紙PAの第1給送時回転速度Vt1を、第6の設定速度Vs6から第5の規定値Vd5を減算した速度に設定する。また、紙送り駆動司令部543は、用紙PBである場合、1枚目の用紙PBの第1給送時回転速度Vt1を、第5の設定速度Vs5から第5の規定値Vd5を減算した速度に設定する。第5の設定速度Vs5は第6の設定速度Vs6よりも低速に設定されている。そのため、1枚目の用紙PAの第1給送時回転速度Vt1は、1枚目の用紙PBの第1給送時回転速度Vt1よりも低速になる。したがって、本実施形態では、紙送り駆動司令部543が、速度設定手段としても機能する。
【0113】
したがって、本実施形態では、上記第1及び第2の各実施形態における効果(1)〜(4)(6)に加え、以下に示す効果をさらに得ることができる。
(8)本実施形態では、サイズの大きい用紙PBを処理領域31まで給送する際の給送経路は、サイズの小さい用紙PAを処理領域31まで給送する際の給送経路よりも短い。そのため、1枚目の用紙PAの第1給送時回転速度Vt1は、1枚目の用紙PBの第1給送時回転速度Vt1よりも低速になる。したがって、用紙のサイズに関係なく、1枚目の用紙を処理領域31に給送する際に要する給送時間のばらつきを小さくしつつ、用紙の給送・排出に伴う騒音を小さくすることができる。
【0114】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態を図13に従って説明する。なお、第4の実施形態は、送出しローラー33用の駆動源を紙送りモーター14とは別途設けた点が第1〜第3の各実施形態と異なっている。したがって、以下の説明においては、第1〜第3の各実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1〜第3の各実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0115】
図13に示すように、本実施形態の給送装置15は、中間ローラー34、給送ローラー対35及び排出ローラー対36に駆動力を伝達する第1駆動源の一例としての紙送りモーター14と、送出しローラー33に駆動力を伝達する第2駆動源の一例としての送出しモーター60とを備えている。紙送りモーター14は、送出しローラー33以外の他のローラーに対して駆動力を付与している。なお、本実施形態の給送装置15は、上記各実施形態の場合とは異なり、クラッチ機構(37)を備えていない。
【0116】
また、給送装置15を制御する給送制御部54は、紙送りカウンター541、紙送り駆動司令部543及び記憶部544を有している。
そして、用紙Pを給送する場合、給送制御部54は、1枚目の用紙Pを処理領域31に給送すべく各モーター14,60を制御する。続いて、給送制御部54は、1枚目の用紙Pが中間ローラー34とリタードローラー40によって挟持されるようになると、送出しモーター60を停止させる。すると、1枚目の用紙Pは、紙送りモーター14の駆動に基づき給送される。
【0117】
1枚目の後端が給紙カセット30内からフレーム12内に位置するようになったタイミングで、給送制御部54は、送出しモーター60を駆動させる。すると、2枚目の用紙Pの給送が開始される。しかし、2枚目の用紙Pの給送速度は、その時点の1枚目の用紙Pの給送速度よりも低速に設定されている。しかも、2枚目の用紙Pの給送が開始された時点では、1枚目の用紙Pに対して印刷が行われている。そのため、2枚目の用紙Pの給送速度は、印刷時における用紙Pの紙送り速度の平均値よりも低速である。なお、「紙送り速度の平均値」としては、例えば、用紙Pの長さを印刷に要した時間で除算した値が上げられる。こうした紙送り速度の平均値は、用紙Pのサイズ毎に予め用意されている。
【0118】
そして、2枚目の用紙Pが中間ローラー34とリタードローラー40によって挟持されるようになると、送出しモーター60を停止させる。すると、2枚目の用紙Pは、紙送りモーター14の駆動に基づき給送される。なお、この時点での2枚目の用紙Pの給送速度は、印刷中の1枚目の用紙Pの紙送り速度と同一速度となる。
【0119】
したがって、本実施形態では、上記第1〜第3の各実施形態における効果(1)〜(4)(6)に加え、以下に示す効果をさらに得ることができる。
(9)送出しモーター60の駆動に基づく後行の用紙Pの給送が開始された場合には、紙送りモーター14の駆動に基づき給送される先行の用紙Pに対して印刷処理が行われている。そこで、本実施形態では、送出しモーター60の駆動に基づく後行の用紙Pの給送速度は、印刷中に紙送りモーター14の駆動によって紙送りされる先行の用紙Pの紙送り速度の平均値よりも低速に設定される。そのため、後行の用紙Pの先端が先行の用紙Pの後端よりも給送方向における下流側に位置してしまう事態を回避できる。また、後行の用紙Pの給送に伴い発生する騒音を小さくすることができる。
【0120】
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・各実施形態において、第1給送時回転速度Vt1を、印刷枚数が多い場合ほど低速に設定してもよい。設定された印刷枚数が多い場合、スループットは、印刷枚数が少ない場合と比較して、1枚目の用紙Pの給送速度の低下の影響を受けにくい。そのため、設定された印刷枚数が多い場合ほど、用紙Pの給送に伴う騒音を小さくすることができる。
【0121】
・同様に、第1排出時回転速度Ve1を、印刷枚数が多い場合ほど低速に設定してもよい。設定された印刷枚数が多い場合、スループットは、印刷枚数が少ない場合と比較して、最後の用紙Pの排出速度の低下の影響を受けにくい。そのため、設定された印刷枚数が多い場合ほど、用紙Pの排出に伴う騒音を小さくすることができる。
【0122】
・各実施形態において、第1排出時回転速度Ve1を、第1給送時回転速度Vt1よりも低速に設定してもよい。最後の用紙Pの排出時には、該用紙Pがフレーム12から確実に排出させることができるように、排出ローラー対36の駆動時間が長めに設定される。そのため、最後の用紙Pの排出時において、排出ローラー対36は空回転していることがある。そこで、第1排出時回転速度Ve1を、第1給送時回転速度Vt1よりも低速に設定することにより、最後の用紙Pの排出完了後における排出ローラー対36の空回転時における騒音を小さくすることができる。
【0123】
・各実施形態において、第1給送時回転速度Vt1を、第1排出時回転速度Ve1よりも低速に設定してもよい。例えば、第1給送時回転速度Vt1が第2給送時回転速度Vt2の「40%」程度であるのに対し、第1排出時回転速度Ve1を、第2排出時回転速度Ve2の「70%」程度としてもよい。
【0124】
・第4の実施形態において、送出しローラー33が後行の用紙Pに圧接するようになった場合には、後行の用紙Pの先端が先行の用紙Pの後端よりも搬送方向における下流側に位置する状態で、送出しローラー33を回転させてもよい。このような制御構成にしても、後行の用紙Pの給送速度は、先行の用紙Pの給送速度よりも低速に設定されている。そのため、先行の用紙Pの後端が処理領域に至るまでの間に、該先行の用紙Pの後端は、後行の用紙Pの先端よりも搬送方向における下流側に位置するようになる。
【0125】
・第4の実施形態において、後行の用紙Pの給送速度が先行の用紙Pの給送速度と同等となるように、紙送りモーター14及び送出しモーター60を制御してもよい。この場合、先行の用紙Pが規定位置A1に到達したタイミングで、後行の用紙Pの給送を開始させることが好ましい。
【0126】
・第3の実施形態において、媒体保持手段は、複数の給紙カセットを備えた構成であってもよい。例えば、第1のサイズ用の給紙カセットを上段にセットし、第2のサイズ用の給紙カセットを下段にセットさせるようにしてもよい。
【0127】
・各実施形態において、印刷中の先行の用紙Pに追随するように、後行の用紙Pを給送しなくてもよい。この場合、先行の用紙Pの印刷が完了するまでは、後行の用紙Pの給送が開始されない。そして、印刷済みをなった先行の用紙Pの排出が開始されると、後行の用紙Pの給送が開始される。
【0128】
・各実施形態では、1枚目の用紙Pの給送時及び最後の用紙Pの排出時には、加速段階での紙送りモーター14の出力軸の加速度が、減速規定値Vdを取得しない場合よりも低加速度に設定される。同様に、減速段階での紙送りモーター14の出力軸の減速度が、減速規定値Vdを取得しない場合よりも低減速度に設定される(図4参照)。しかし、加速段階での紙送りモーター14の出力軸の加速度を、減速規定値Vdを取得しない場合と同等としてもよい。また、減速段階での紙送りモーター14の出力軸の減速度を、減速規定値Vdを取得しない場合と同等としてもよい。
【0129】
・各実施形態において、減速規定値Vdは、第1給送時回転速度Vt1及び第1排出時回転速度Ve1が第2給送時回転速度Vt2及び第2排出時回転速度Ve2よりも低速になるのであれば、任意の値であってもよい。例えば、減速規定値Vdを、第1給送時回転速度Vt1及び第1排出時回転速度Ve1が第2給送時回転速度Vt2及び第2排出時回転速度Ve2の「70%」程度となる値としてもよい。
【0130】
・各実施形態において、1枚目の用紙Pの給送時及び最後の用紙Pの排出時における紙送りモーター14の出力軸の回転速度Vを、用紙の種類、用紙のサイズ及び印刷モードなどに関係なく、予め設定された所定速度としてもよい。ただし、所定速度は、用紙Pの給送・排出時に発生する騒音の音圧が規定周波数以下となるように設定することが好ましい。なお、規定周波数は、人間には聞き取りにくい周波数(例えば、500Hz)であることが好ましい。
【0131】
・各実施形態において、M(Mは3以上の整数)枚の用紙Pに対して印刷を行う場合、1枚目以外の他の各用紙Pのうち少なくとも1枚の用紙Pの給送時における紙送りモーター14の出力軸の回転速度Vが設定速度Vsであれば、他の用紙Pの給送時における紙送りモーター14の出力軸の回転速度Vを、設定速度Vsよりも低速に設定してもよい。
【0132】
同様に、M(Mは3以上の整数)枚の用紙Pに対して印刷を行う場合、M枚目以外の他の各用紙Pのうち少なくとも1枚の用紙Pの排出時における紙送りモーター14の出力軸の回転速度Vが設定速度Vsであれば、他の用紙Pの排出時における紙送りモーター14の出力軸の回転速度Vを、設定速度Vsよりも低速に設定してもよい。
【0133】
・各実施形態において、クラッチ機構37は、キャリッジ17によって接続・遮断が切り替えられる構成であってもよい。この場合、クラッチ駆動司令部542は、クラッチ機構37を遮断させるタイミングになった場合にはその旨をキャリッジ制御部53に出力し、クラッチ機構37を接続させるタイミングになった場合にはその旨をキャリッジ制御部53に出力する。そして、キャリッジ制御部53は、クラッチ駆動司令部542からの指令に基づきキャリッジ17を移動させ、クラッチ機構37を動作させる。
【0134】
・各実施形態おいて、給送装置15を、リア給紙タイプの給送装置に具体化してもよい。
・各実施形態にいて、インクジェット式プリンター11は、インクカートリッジ24がキャリッジ17とは異なる位置に配置される所謂オフキャリッジタイプのプリンターであってもよい。また、インクジェット式プリンター11は、記録ヘッド23を固定したままでも用紙最大幅範囲の印刷が可能なラインヘッド式やラテラル式のプリンターであってもよい。
【0135】
・各実施形態において、印刷装置は、ドットインパクト方式、レーザー方式などの他の記録方式で媒体に記録を施す印刷装置でもよい。
・各実施形態において、印刷装置を、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする流体噴射装置に具体化してもよい。また、印刷装置を、微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に具体化してもよい。この場合、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態を言い、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状体、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、媒体の一例である液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置が挙げられる。さらに、液体噴射装置は、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。また、流体は、トナーなどの粉粒体でもよい。なお、本明細書でいう流体には、気体のみからなるものは含まないものとする。
【0136】
・給送装置を備える処理装置は、処理領域31に給送された用紙に対して所定の処理を行う装置であれば、印刷装置以外の他の任意の装置であってもよい。例えば、処理装置は、処理領域31に給送された用紙Pの画像を読み取る画像読み取り装置(スキャナー)であってもよい。
【0137】
次に、上記各実施形態及び別の実施形態から把握できる技術的思想を以下に追記する。
(イ)前記搬送制御手段は、
前記給送手段によって前記処理領域に給送された先行の媒体に対して前記所定の処理が行われる際には、
前記先行の媒体を、前記搬送方向における上流側から下流側に送り出すと共に、後行の媒体を、前記先行の媒体に追随するように前記媒体保持手段から前記処理領域に向けて給送するべく前記給送手段及び前記排出手段を制御することを特徴とする請求項2に記載の媒体搬送装置。
【0138】
上記構成によれば、先行の媒体は、所定の処理が行われる場合には搬送方向における上流側から下流側に少しずつ送り出される。このとき、後行の媒体は、少しずつ送り出される先行の媒体に追随するように処理領域に向けて給送される。このように先行の媒体に所定の処理が行われる間では、高速(第2給送時回転速度及び第2排出時回転速度)で回転する給送用回転体及び排出用回転体の連続回転時間は余り長くない。そのため、これら回転体の回転に伴い発生する騒音は余り大きくならない。したがって、複数の媒体の給送及び排出に要する時間の長期化を抑制しつつ、媒体の給送及び排出に基づき発生する騒音を低減させることができる。
【0139】
(ロ)前記媒体保持手段は、互いにサイズの異なる複数種類の媒体が種類毎に保持されると共に、前記処理領域までの給送経路がサイズの大きな媒体ほど長くなるように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の媒体搬送装置。
【0140】
(ハ)前記媒体保持手段は、互いにサイズの異なる複数種類の媒体が種類毎に保持されるように構成され、
前記媒体搬送装置は、
前記処理領域までの給送経路が長く設定された媒体を給送する場合には、給送経路が短く設定された媒体を給送する場合よりも第1給送時回転速度を高速に設定する速度設定手段と、をさらに備え、
前記搬送制御手段は、1個目の媒体の給送時には、前記速度設定手段によって設定された第1給送時回転速度で前記給送用回転体が回転するように前記給送手段を制御することを特徴とする媒体搬送装置。
【符号の説明】
【0141】
11…印刷装置の一例としてのインクジェット式プリンター、14…駆動源及び第1駆動源の一例としての紙送りモーター、23…印刷手段の一例としての記録ヘッド、30…媒体保持手段の一例としての給紙カセット、31…処理領域、33,33A,33B…給送手段を構成する送出しローラー(給送用回転体、特定の給送用回転体)、34…給送手段を構成する中間ローラー(給送用回転体)、35…給送手段を構成する給送ローラー対、351…駆動ローラー(給送用回転体)、36…排出手段を構成する排出ローラー対、361…駆動ローラー(排出用回転体)、37,37A,37B…クラッチ手段の一例としてのクラッチ機構、52…印刷制御手段の一例としてのヘッド制御部、54…搬送制御手段の一例としての給送制御部、543…サイズ検出手段、速度設定手段、種類特定手段、規定値設定手段の一例としての紙送り駆動司令部、544…モード記憶手段の一例としての記憶部、60…第2駆動源の一例としての送出しモーター、Vd…減速規定値、Ve1…第1排出時回転速度、Ve2…第2排出時回転速度、Vt1…第1給送時回転速度、Vt2…第2給送時回転速度、P,P1,P2,PA,PB…媒体の一例としての用紙。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を保持する媒体保持手段と、
前記媒体保持手段に保持される処理前の媒体を、所定の処理が行われる処理領域に給送すべく回転する給送用回転体を有する給送手段と、
前記処理領域で処理済みとなった媒体を、前記処理領域から搬送方向における下流側に排出すべく回転する排出用回転体を有する排出手段と、
前記給送手段及び前記排出手段を制御する搬送制御手段と、を備え、
前記搬送制御手段は、
前記媒体保持手段に保持される複数個の媒体を搬送する場合に、
1個目の媒体を給送する際の前記給送用回転体が、2個目以降の媒体を給送する際の第2給送時回転速度の最大値よりも低速の第1給送時回転速度で回転するように前記給送手段を制御し、
最後の媒体を前記処理領域から排出する際の前記排出用回転体が、最後の媒体以外の媒体を前記処理領域から排出した際の第2排出時回転速度の最大値よりも低速の第1排出時回転速度で回転するように前記排出手段を制御することを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項2】
前記搬送制御手段は、
先行の媒体が前記処理領域から排出される場合に、後行の媒体が前記処理領域に向けて供給されるように前記給送手段及び前記排出手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の媒体搬送装置。
【請求項3】
前記給送手段は、前記搬送方向において互いに異なる位置に配置される複数の前記給送用回転体を有し、
前記媒体搬送装置は、
前記給送手段及び前記排出手段に駆動力を付与すべく駆動する駆動源と、
前記各給送用回転体のうち前記媒体保持手段内の媒体を該媒体保持手段外に送り出すための特定の給送用回転体への前記駆動源からの動力伝達を許可又は遮断すべく動作するクラッチ手段と、をさらに備え、
前記搬送制御手段は、最後の媒体が前記媒体保持手段から給送された場合には、前記クラッチ手段を遮断状態にすることを特徴とする請求項2に記載の媒体搬送装置。
【請求項4】
前記給送手段は、前記搬送方向において互いに異なる位置に配置される複数の前記給送用回転体を有し、
前記媒体搬送装置は、
前記各給送用回転体のうち、前記媒体保持手段内の媒体を該媒体保持手段外に送り出すための特定の給送用回転体以外の他の給送用回転体と、前記排出用回転体とに駆動力を付与すべく駆動する第1駆動源と、
前記特定の給送用回転体に駆動力を付与すべく駆動する第2駆動源と、をさらに備え、
前記搬送制御手段は、前記第1駆動源の駆動に基づき給送又は排出される先行の媒体の給送速度よりも、前記第2駆動源の駆動に基づき給送される後行の媒体の給送速度のほうが低速となるように前記各駆動源を制御することを特徴とする請求項2に記載の媒体搬送装置。
【請求項5】
前記搬送制御手段は、第1排出時回転速度が第1給送時回転速度よりも低速となるように前記給送手段及び前記排出手段を制御することを特徴とする請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項6】
前記媒体保持手段に保持される媒体のサイズを検出するサイズ検出手段と、
前記サイズ検出手段によって検出された媒体のサイズが大きい場合には、検出された媒体のサイズが小さい場合よりも第1給送時回転速度を高速に設定する速度設定手段と、をさらに備え、
前記搬送制御手段は、1個目の媒体の給送時には、前記速度設定手段によって設定された第1給送時回転速度で前記給送用回転体が回転するように前記給送手段を制御することを特徴とする請求項1〜請求項5のうち何れか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項7】
設定された媒体の搬送数が多い場合には搬送数が少ない場合よりも第1給送時回転速度を低速に設定する速度設定手段をさらに備え、
前記搬送制御手段は、1個目の媒体の給送時には、前記速度設定手段によって設定された第1給送時回転速度で前記給送用回転体が回転するように前記給送手段を制御することを特徴とする請求項1〜請求項5のうち何れか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項8】
前記媒体保持手段で保持される媒体の種類を特定する種類特定手段と、
媒体の種類毎の搬送モードを記憶するモード記憶手段と、
前記種類特定手段によって特定された搬送モードの給送時回転速度が低速である場合には、特定された搬送モードの給送時回転速度が高速である場合よりも減速規定値を小さな値に設定する規定値設定手段と、
前記種類特定手段によって特定された搬送モードの給送時回転速度から前記規定値設定手段によって設定された減速規定値を減算し、該減算結果に基づき第1給送時回転速度を設定する速度設定手段と、をさらに備え、
前記搬送制御手段は、
1個目の媒体の給送時には、前記速度設定手段によって設定された第1給送時回転速度で前記給送用回転体が回転するように前記給送手段を制御し、
2個目以降の媒体の給送時には、前記種類特定手段によって特定された搬送モードの給送時回転速度に基づいた第2給送時回転速度で前記給送用回転体が回転するように前記給送手段を制御することを特徴とする請求項1〜請求項5のうち何れか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項9】
媒体の給送速度が互いに異なる複数種類の搬送モードを記憶するモード記憶手段と、
選択された搬送モードの給送時回転速度が低速である場合には、選択された搬送モードの給送時回転速度が高速である場合よりも減速規定値を小さな値に設定する規定値設定手段と、
選択された搬送モードの給送時回転速度から前記規定値設定手段によって設定された減速規定値を減算し、該減算結果に基づき第1給送時回転速度を設定する速度設定手段と、をさらに備え、
前記搬送制御手段は、
1個目の媒体の給送時には、前記速度設定手段によって設定された第1給送時回転速度で前記給送用回転体が回転するように前記給送手段を制御し、
2個目以降の媒体の給送時には、選択された搬送モードの給送時回転速度に基づいた第2給送時回転速度で前記給送用回転体が回転するように前記給送手段を制御することを特徴とする請求項1〜請求項5のうち何れか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のうち何れか一項に記載の媒体搬送装置と、
前記給送手段によって前記処理領域に給送された媒体に対して印刷を施すべく駆動する印刷手段と、
前記印刷手段を制御する印刷制御手段と、を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項11】
媒体保持手段に保持される複数個の媒体を、所定の処理が行われる処理領域に順次給送し、処理済みとなった媒体を前記処理領域よりも搬送方向における下流側に順次排出させる媒体搬送方法であって、
1個目の媒体を前記媒体保持手段から前記処理領域に給送する場合に、媒体を前記処理領域に給送すべく回転する給送用回転体を、2個目以降の媒体を給送する際の第2給送時回転速度の最大値よりも低速の第1給送時回転速度で回転させるステップと、
最後の媒体を前記処理領域から排出する場合に、媒体を排出すべく回転する排出用回転体を、最後の媒体以外の媒体を前記処理領域から排出する際の第2排出時回転速度の最大値よりも低速の第1排出時回転速度で回転させるステップと、を有することを特徴とする媒体搬送方法。
【請求項1】
媒体を保持する媒体保持手段と、
前記媒体保持手段に保持される処理前の媒体を、所定の処理が行われる処理領域に給送すべく回転する給送用回転体を有する給送手段と、
前記処理領域で処理済みとなった媒体を、前記処理領域から搬送方向における下流側に排出すべく回転する排出用回転体を有する排出手段と、
前記給送手段及び前記排出手段を制御する搬送制御手段と、を備え、
前記搬送制御手段は、
前記媒体保持手段に保持される複数個の媒体を搬送する場合に、
1個目の媒体を給送する際の前記給送用回転体が、2個目以降の媒体を給送する際の第2給送時回転速度の最大値よりも低速の第1給送時回転速度で回転するように前記給送手段を制御し、
最後の媒体を前記処理領域から排出する際の前記排出用回転体が、最後の媒体以外の媒体を前記処理領域から排出した際の第2排出時回転速度の最大値よりも低速の第1排出時回転速度で回転するように前記排出手段を制御することを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項2】
前記搬送制御手段は、
先行の媒体が前記処理領域から排出される場合に、後行の媒体が前記処理領域に向けて供給されるように前記給送手段及び前記排出手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の媒体搬送装置。
【請求項3】
前記給送手段は、前記搬送方向において互いに異なる位置に配置される複数の前記給送用回転体を有し、
前記媒体搬送装置は、
前記給送手段及び前記排出手段に駆動力を付与すべく駆動する駆動源と、
前記各給送用回転体のうち前記媒体保持手段内の媒体を該媒体保持手段外に送り出すための特定の給送用回転体への前記駆動源からの動力伝達を許可又は遮断すべく動作するクラッチ手段と、をさらに備え、
前記搬送制御手段は、最後の媒体が前記媒体保持手段から給送された場合には、前記クラッチ手段を遮断状態にすることを特徴とする請求項2に記載の媒体搬送装置。
【請求項4】
前記給送手段は、前記搬送方向において互いに異なる位置に配置される複数の前記給送用回転体を有し、
前記媒体搬送装置は、
前記各給送用回転体のうち、前記媒体保持手段内の媒体を該媒体保持手段外に送り出すための特定の給送用回転体以外の他の給送用回転体と、前記排出用回転体とに駆動力を付与すべく駆動する第1駆動源と、
前記特定の給送用回転体に駆動力を付与すべく駆動する第2駆動源と、をさらに備え、
前記搬送制御手段は、前記第1駆動源の駆動に基づき給送又は排出される先行の媒体の給送速度よりも、前記第2駆動源の駆動に基づき給送される後行の媒体の給送速度のほうが低速となるように前記各駆動源を制御することを特徴とする請求項2に記載の媒体搬送装置。
【請求項5】
前記搬送制御手段は、第1排出時回転速度が第1給送時回転速度よりも低速となるように前記給送手段及び前記排出手段を制御することを特徴とする請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項6】
前記媒体保持手段に保持される媒体のサイズを検出するサイズ検出手段と、
前記サイズ検出手段によって検出された媒体のサイズが大きい場合には、検出された媒体のサイズが小さい場合よりも第1給送時回転速度を高速に設定する速度設定手段と、をさらに備え、
前記搬送制御手段は、1個目の媒体の給送時には、前記速度設定手段によって設定された第1給送時回転速度で前記給送用回転体が回転するように前記給送手段を制御することを特徴とする請求項1〜請求項5のうち何れか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項7】
設定された媒体の搬送数が多い場合には搬送数が少ない場合よりも第1給送時回転速度を低速に設定する速度設定手段をさらに備え、
前記搬送制御手段は、1個目の媒体の給送時には、前記速度設定手段によって設定された第1給送時回転速度で前記給送用回転体が回転するように前記給送手段を制御することを特徴とする請求項1〜請求項5のうち何れか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項8】
前記媒体保持手段で保持される媒体の種類を特定する種類特定手段と、
媒体の種類毎の搬送モードを記憶するモード記憶手段と、
前記種類特定手段によって特定された搬送モードの給送時回転速度が低速である場合には、特定された搬送モードの給送時回転速度が高速である場合よりも減速規定値を小さな値に設定する規定値設定手段と、
前記種類特定手段によって特定された搬送モードの給送時回転速度から前記規定値設定手段によって設定された減速規定値を減算し、該減算結果に基づき第1給送時回転速度を設定する速度設定手段と、をさらに備え、
前記搬送制御手段は、
1個目の媒体の給送時には、前記速度設定手段によって設定された第1給送時回転速度で前記給送用回転体が回転するように前記給送手段を制御し、
2個目以降の媒体の給送時には、前記種類特定手段によって特定された搬送モードの給送時回転速度に基づいた第2給送時回転速度で前記給送用回転体が回転するように前記給送手段を制御することを特徴とする請求項1〜請求項5のうち何れか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項9】
媒体の給送速度が互いに異なる複数種類の搬送モードを記憶するモード記憶手段と、
選択された搬送モードの給送時回転速度が低速である場合には、選択された搬送モードの給送時回転速度が高速である場合よりも減速規定値を小さな値に設定する規定値設定手段と、
選択された搬送モードの給送時回転速度から前記規定値設定手段によって設定された減速規定値を減算し、該減算結果に基づき第1給送時回転速度を設定する速度設定手段と、をさらに備え、
前記搬送制御手段は、
1個目の媒体の給送時には、前記速度設定手段によって設定された第1給送時回転速度で前記給送用回転体が回転するように前記給送手段を制御し、
2個目以降の媒体の給送時には、選択された搬送モードの給送時回転速度に基づいた第2給送時回転速度で前記給送用回転体が回転するように前記給送手段を制御することを特徴とする請求項1〜請求項5のうち何れか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のうち何れか一項に記載の媒体搬送装置と、
前記給送手段によって前記処理領域に給送された媒体に対して印刷を施すべく駆動する印刷手段と、
前記印刷手段を制御する印刷制御手段と、を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項11】
媒体保持手段に保持される複数個の媒体を、所定の処理が行われる処理領域に順次給送し、処理済みとなった媒体を前記処理領域よりも搬送方向における下流側に順次排出させる媒体搬送方法であって、
1個目の媒体を前記媒体保持手段から前記処理領域に給送する場合に、媒体を前記処理領域に給送すべく回転する給送用回転体を、2個目以降の媒体を給送する際の第2給送時回転速度の最大値よりも低速の第1給送時回転速度で回転させるステップと、
最後の媒体を前記処理領域から排出する場合に、媒体を排出すべく回転する排出用回転体を、最後の媒体以外の媒体を前記処理領域から排出する際の第2排出時回転速度の最大値よりも低速の第1排出時回転速度で回転させるステップと、を有することを特徴とする媒体搬送方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−206288(P2012−206288A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71861(P2011−71861)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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