説明

媒体輸送システム

【課題】シート状媒体の印刷ゾーン内輸送を効率化し高品質な文書を作成可能とする。
【解決手段】印刷ゾーン14内を通り媒体入口ステーション20・媒体出口ステーション22間で反復的に並進するよう、媒体運搬装置であるスレッド18を設ける。更に、そのスレッド18にシート状媒体12を送り込むため及びそこからシート状媒体12を引き出すため、媒体搬入出装置であるベルト式輸送システム24を設ける。ベルト式輸送システム24は、スレッド18が移動する方向とは逆の方向に沿いシート状媒体12を移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状媒体を輸送するシステム、特にシート状媒体を印刷ゾーンに通すシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、複写機等の文書処理装置内には、一般に、所定の媒体処理経路に沿いシート状媒体を高速輸送するシステムが組み込まれている。そのシステムのスループットを向上させるには、シート状媒体を媒体処理経路に沿い迅速に移動させるよう輸送システムを構成する必要がある。輸送システムとして幅広な輸送ベルトを用いてもよいし、シート状媒体を大面積の印刷用平坦テーブルに押し付けるようにしてもよい。ただ、媒体処理経路内の印刷ゾーン、即ちシート状媒体上に画像を発現させるゾーンにあることが、スループット向上の上で支障となっている。それは、印刷ゾーンにおけるシート状媒体の輸送を精密に制御しないと、高品質文書を作成するのが難しいからである。即ち、印刷ゾーンへのシート状媒体の進入やそこからの退出を精密に制御するには、様々な工程からなる複雑な輸送動作を実行しなければならないのが普通であり、そうした輸送動作を実行するのではスループットを大きく向上させることができない。
【0003】
この輸送問題が顕著になるのは、幅広又は厚手のシート状媒体に直接マーキングシステムでマーキングを施す場合である。直接マーキングシステムは特にハイエンド印刷の分野で普及が進みつつあるシステムであり、複数個の小型プリントヘッドが千鳥配置されたノズルアレイを使用することで、超高速での印刷を実現できる可能性がある。しかし、それを実現するには、どのプリントヘッドとも接触しないよう印刷ゾーン内でシート状媒体を平坦に保持する必要がある。ことに、シート状媒体の判型が大きい場合や印刷ゾーンが長い場合はそうである。即ち、広大な印刷所要面を強い力で下向きに押さえつけねばならず、顕著な引きずり抵抗が発生する場合である。その場合、摺動式のベルトシステムを使用するのは現実的ではないし、モーション品質上も大きな問題となる。とりわけ問題になるのは、折り畳み化粧箱、段ボール等、強い力で下向きに押さえつけねばならない厚手のシート状媒体を輸送する場合である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、いま望まれているのは、シート状媒体の印刷ゾーン内輸送を効率化し高品質な文書を作成することが可能な媒体輸送システム及び媒体輸送方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここに、本発明の一実施形態に係る印刷ゾーン内シート状媒体輸送システムは、媒体入口ステーションと、媒体出口ステーションと、それら媒体入口ステーション及び媒体出口ステーション間で反復的に並進する媒体運搬装置と、媒体運搬装置上にシート状媒体を送り込むため及びそこから送り出されるシート状媒体を引き出すための媒体搬入出装置と、を備え、媒体搬入出装置が、媒体運搬装置が移動する方向とは逆の方向にシート状媒体を移動させるものである。
【0006】
また、本発明の他の実施形態に係る印刷ゾーン内シート状媒体運搬装置は、媒体入口ステーションとの媒体出口ステーション間で反復的に並進させることが可能でその上面が減圧吸引装置と通流しているスレッドと、シート状媒体をスレッドに引き込むため及びそこからシート状媒体を送り出すためのベルトアセンブリと、を備え、ベルトアセンブリが、スレッドが移動する方向とは逆の方向にシート状媒体を移動させるものである。
【0007】
そして、本発明の更に他の実施形態に係る印刷ゾーン内シート状媒体輸送方法は、媒体運搬装置をシート入口ステーション方向に移動させるステップと、媒体運搬装置がシート入口ステーション方向に移動しているうちにシート状媒体がそれとは逆の方向に動き媒体運搬装置上に搬入されるよう媒体搬入出装置を稼働させるステップと、媒体運搬装置及びその上のシート状媒体をシート出口ステーション方向に移動させるステップと、媒体運搬装置に対しシート状媒体を静止させるステップと、媒体運搬装置及びその上のシート状媒体を印刷ゾーンに通すステップと、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係る媒体輸送システムを示す斜視図である。
【図2】図1に示した媒体輸送システムの模式的縦断面図である。
【図3】図1に示した媒体輸送システム、特にシート状媒体が媒体入口ステーションからスレッド上へと搬入されつつある状態を示す模式的縦断面図である。
【図4】図1に示した媒体輸送システム、特にスレッド及びその上のシート状媒体が印刷ゾーン内を通過しつつある状態を示す模式的縦断面図である。
【図5】図1に示した媒体輸送システム、特にシート状媒体がスレッドから媒体出口ステーション上へと搬出されつつある状態を示す模式的縦断面図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係る媒体輸送システムを示す斜視図である。
【図7】図6に示した媒体輸送システム、特にスレッド、その上のシート状媒体及びベルトが印刷ゾーンに接近しつつある状態を示す模式的縦断面図である。
【図8】スレッド、スレッドベルト及びシート状媒体の速度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、別紙図面を参照しつつ本発明の諸実施形態についてより詳細に説明する。なお、以下の説明中、「媒体」とはその上に画像を記録可能な物体のことであり、「シート状媒体」とはシート状の媒体のことである。「媒体」には、普通紙、写真プリント用紙、段ボール、フィルム、ガラス、布、プラスチック、パーチメント等を含め様々な種類がある。その上に情報やマーキングを可視化又は複製することができればよいので、被覆付でも被覆無しでもかまわない。媒体処理経路のうち「印刷ゾーン」はシート状媒体上に画像を発現させる部分、「媒体入口ステーション」は後続する部分にシート状媒体を引き渡す部分、「媒体出口ステーション」は先行する部分からシート状媒体を引き取る部分である。「媒体運搬装置」や「媒体搬入出装置」はいずれも媒体処理経路に沿いシート状媒体を移動させる装置又は装置群である。「スレッド」とは、媒体運搬装置のうち、媒体処理経路に沿い並進させることが可能でその上面にシート状媒体を載せることが可能な部分のことである。そして、「ベルトアセンブリ」とは、媒体処理経路に沿いシート状媒体を輸送するためのベルトを1本又は複数本備える装置のことである。
【0010】
図1及び図2に、本発明の一実施形態に係る媒体輸送システム10を示す。これは、印刷ゾーン14内を通るようシート状媒体12を輸送するシステムであり、そのゾーン14内には画像転写装置16が設けられている。この装置16は媒体12上に画像を発現させる装置であり、インクジェットシステム等の直接画像転写装置や、電子写真システム、リソグラフィシステム等を初め、様々な種類の画像発現装置として構成することができる。
【0011】
本システム10は媒体運搬装置たるスレッド18を備えている。スレッド18の上面19はほぼ平坦で媒体12を載せることができる。スレッド18は、印刷ゾーン14内を通るよう媒体入口ステーション20・媒体出口ステーション22間で反復的に並進させることができる。第1方向44に移動し出口ステーション22側折り返し点に達したらその移動方向が第2方向46へと反転し入口ステーション20方向に移動する、といった具合である。入口ステーション20では媒体12がスレッド18上に搬入され、出口ステーション22ではその媒体12がスレッド18から搬出され後続の媒体処理経路へと送り出されていく。
【0012】
スレッド18には、モータ42及び駆動用ベルト45を有するスレッド駆動装置40が連結されている。この装置40は、スレッド18を第1方向44に沿い入口ステーション20から出口ステーション22へと移動させ、またその逆の第2方向46に沿い出口ステーション22から入口ステーション20へと移動させる。その移動中、スレッド18は一対の直線案内部材48によって案内される。
【0013】
本システム10は、更に媒体搬入出装置たるベルト式輸送システム24を備えている。これは、媒体12を入口ステーション20・出口ステーション22間で移動させるスレッド18と連携して動作するシステムであり、入口ステーション20側の入口ベルトアセンブリ26並びに出口ステーション22側の出口ベルトアセンブリ30で構成されている。アセンブリ26,30は互いに同様の構成であり、前者は無限入口ベルト27、後者は無限出口ベルト32を備えている。入口ベルト27は一対のローラ28、出口ベルト32はローラ34にそれぞれ架けられており、その駆動には図示しない駆動装置が使用されている。
【0014】
ベルト式輸送システム24は、更に、スレッド18上にありスレッド18と共に移動するスレッドベルトアセンブリ36を備えている。入口ベルトアセンブリ26や出口ベルトアセンブリ30と同じくその動きを個別に制御することができるので、それらアセンブリ26、30及び36の個別制御を通じ媒体12を所望形態で輸送させることができる。また、スレッドベルトアセンブリ36は、ローラ37に架かっている無限スレッドベルト37を図示しない駆動装置で駆動する構成を有している。入口ステーション20・出口ステーション22間でスレッド18を移動させると、ベルト37を含むスレッドベルトアセンブリ36全体がそのスレッド18と共に移動する。ベルト37は、その回りを巡るようスレッド18に対し動く。その経路は、スレッド上面19の面前を過ぎる経路である。従って、ベルト37及びその上の媒体12は、スレッド18の対地速度(固定の基準点に対する速度)とは異なる対地速度で運搬されることとなる。即ち、媒体速度はスレッドベルト速度とスレッド速度の合計値となる。
【0015】
図2に示すように、これら入口ステーション20、スレッド18及び出口ステーション22は減圧吸引装置50に通流している。まず、ステーション20,22の表面には吸引孔51が形成されており、それらは吸引用プレナム52を介し少なくとも1個の減圧吸引装置50に通流している。ご理解頂けるように、入口ステーション20、出口ステーション22及びスレッドベルトアセンブリ36のそれぞれに、個別の減圧吸引装置を設けることもできる。また、スレッド18の上面19にも吸引孔53が形成されており、それらはスレッド18内の吸引用プレナム55に通流しており、更にそのプレナム55が少なくとも1個の減圧吸引装置50に通流している。そして、ベルト27、32及び37の表面にはベルト孔54が形成されている。媒体12に対してはそれらを介し減圧吸引力が作用する。この減圧吸引力は、本システム10内での輸送中、媒体12をベルト表面に付着させておくのに役立つ。ステーション20及び22における減圧吸引力と、スレッド18における減圧吸引力は、互いに独立に制御することができる。
【0016】
そして、スレッド18の動作、入口ステーション20及び出口ステーション22の動作、発生する減圧吸引力等はコントローラ60によって管理又は制御されている。コントローラ60を構成する1個又は複数個のプロセッサ及びソフトウェアにより生成される制御信号に基づき、入口ベルトアセンブリ26、スレッドベルトアセンブリ36及び出口ベルトアセンブリ30間の協調制御やスレッド18自体の移動制御が実行される結果、媒体12の印刷ゾーン14内通過が効率化されることとなる。
【0017】
それらの制御では、まず、スレッド18が第2方向46に沿い移動し入口ステーション20付近に達したときに、入口ベルトアセンブリ26を作動させ図3の如く媒体12をスレッド18上に送り出す。スレッド18上に媒体12を送り出す動作が始まるのは、スレッド18が入口ステーション20側折り返し点に到達しきる前である。媒体12がスレッド18上に送り出されてきたら、スレッドベルト37の動作でその媒体12をスレッド18上に引き込ませる。また、こうして媒体12がスレッド18上に搬入されていく間にスレッド18の移動方向を反転させる。入口ベルト27及びスレッドベルト37の速度を制御することで、媒体12を第1方向44に沿い移動させスレッド18上に送り出す動作と、スレッド18を第2方向46に沿いステーション20に接近させ更にそこから離隔させる動作とを、同時に実行させることができる。スレッド18が減速から停止を経て第1方向44へと反転して加速しているときに、スレッドベルト37でそのスレッド18上に媒体12を搬入することができるのは、ベルト37をスレッド18そのものより高速で動かすことで、媒体12をスレッド18に対し前進させることができるからである。
【0018】
図8に、スレッド18、スレッドベルト37及び媒体12の経時的な速度変化及びその相互関係を示す。図示の通り、これらの速度の間には、スレッド速度とスレッドベルト速度を加算すると概ね媒体速度となる、という関係がある。時刻Aから時刻Bまでの期間は、スレッド18が第2方向46に沿い一定速度で入口ステーション20に接近していく期間である。この期間には、スレッド18の移動方向とは逆の第1方向44(出口ステーション22に向かう方向)に沿いベルト37がスレッド18上で作動し、その上面19の面前を過ぎっている。ベルト37の対スレッド速度は、媒体12をスレッド18上に引き込めるような速度に制御されている。時刻Bはスレッド18の減速が始まる時刻であり、この時点でベルト37の減速も始まる。媒体12の輸送速度はそれによって一定に保たれる。時刻Cはスレッド18に対する媒体12の位置が所望位置となる時刻であり、ベルト37はこの時点でスレッド18に対し静止する。時刻Cから時刻Dまでの期間は、ベルト37及びその上の媒体12がスレッド18と同じ速度で移動する期間であり、媒体12上に画像を発現させる処理はこの期間に実行される。時刻Dから時刻Eまでの期間は、出口ステーション22にスレッド18が接近していく期間である。この期間では、スレッド18が減速し、次いでその移動方向が反転する(速度が負になる)。ベルト37はスレッド18に対する移動を開始する。媒体12の速度はそれによって所望速度に保たれる。そして、時刻E以後は、スレッド18が入口ステーション20に向かい一定速度で帰還していく。ベルト37が一定速度で逆方向に作動するので、媒体12は出口ステーション22に向かい引き続き移動していく。
【0019】
媒体12がスレッド18上に搬入されつつあるときには、スレッド上面19にて比較的弱い減圧吸引力を作用させる。弱めの減圧吸引力であるので、媒体12をベルト37に接触させ続けながら、スレッドベルト37を用い媒体12を面19に対し移動させ、スレッド18に対し適正に位置決めすることができる。その後、媒体12がスレッド18上で所定の位置を占めるに至ったら、スレッド18に対しベルト37を静止させると共に、面19にて比較的強い減圧吸引力を作用させ始める。これにより、媒体12及びベルト37が面19に対し強く吸着されるので、スレッド18に対する媒体12の位置が固定されると共に、媒体12が非常に平坦な状態に保持されることとなる。その結果、媒体12のどこかがプリントヘッドに接触して画像形成が妨げられる、といったことが(ほとんど)生じなくなる。図4に示すように、その状態での媒体12の対地速度はスレッド18のそれと等しくなる。
【0020】
スレッド18に対する媒体12の位置が固定されるのは、その媒体12が印刷ゾーン14内に進入する前である。そのため、ゾーン14における媒体12の速度は、スレッド18それ自体の速度だけで決まる。スレッド18の速度は、コントローラ60とスレッド駆動装置40の連携動作を通じ精密に制御することができる。その値が一定に保たれるようスレッド18の速度を精密に制御することで、媒体12上に高画質画像を発現させることができる。媒体12がゾーン14内を通過し終えた後は、媒体12の速度を高め、本システム10のスループット向上につなげることができる。
【0021】
印刷ゾーン14内でスレッド18を介し媒体12に作用する減圧吸引力を強め、媒体12を平坦に保持することも、画質を向上させる上で有益なことである。特に、その媒体12が段ボールのような厚手媒体である場合や、強い押下力を大面積に亘り加えねばならない大判媒体である場合に、そうした効果が顕著なものとなる。
【0022】
媒体12を載せたスレッド18が出口ステーション22に接近してきたら、スレッド18の速度を低下させる。コントローラ60は、同時に、減圧吸引力を弱めの値、即ちスレッド18に対し媒体12を移動させうる程度の値に調整する。次いで、スレッドベルト37を加速させることで、その速度を概ね一定に保ちながら、媒体12をスレッド18からステーション22上に送り出させる。コントローラ60は、更に、出口ベルトアセンブリ30を作動させることで、スレッド18から送り出されてきた媒体12を媒体処理経路に沿って取り込ませる。このとき、ステーション22内の吸引用プレナム52にて減圧吸引力を発生させることで、ベルト37からステーション22へと送り出されてきた媒体12を吸引し出口ベルト32に接触させる。
【0023】
媒体12のうち所定比率部分が出口ステーション22によって捕捉されるに至ったら、図5に示す如く、その移動方向を第2方向46へと反転させることで、スレッド18を出口ステーション22から離隔させ始める。スレッド18にこうした動きをさせている間は、媒体12の速度が一定に保たれるようスレッドベルト37の速度を上昇させる。即ち、媒体12が引き続き第1方向44に沿い出口ステーション22側に送り出されるよう、スレッドベルトアセンブリ36を作動させる。また、スレッドベルト37及び出口ベルト32の速度は、媒体12がスレッド18から出口ステーション22上へと円滑に送り出されるように設定しておく。このように、スレッド18から媒体12が完全に搬出される前にスレッド18がその移動方向を反転させ入口ステーション20に向かう分、本システム10のスループットは高くなる。以後は、スレッド18が第2方向46に沿い入口ステーション20に接近していき、その接近につれ入口ベルトアセンブリ26が入口ステーション20からスレッド18へと新たな媒体12を搬入する、という形態で、前記同様のサイクルが繰り返されることとなる。
【0024】
このように、スレッド18の速度及び種々のベルトの速度を個別に制御することができるので、媒体12とは違う方向にスレッド18を動かす等、スレッドベルト37及びその上に載っている媒体12の移動速度及び方向を変化させることができる。即ち、スレッドベルト37の速度及び方向で決まるスレッド18の実質表面速度を、スレッド18自体の実速度とは異なる速度にすることができるので、スレッド18を、ベルト37によって運ばれる媒体12のそれとは異なる速度で動かすことができる。そのため、媒体12の搬入や搬出を完遂しないうちに、スレッド18の動きを次段階に係る動きに移行させることができる。
【0025】
本システム10の動作を図1〜図5に基づきまとめると例えば以下のようになる。まず、本システム10では、入口ベルト27を作動させつつその媒体12の速度に応じた速度でスレッドベルト37を移動させることで、媒体12をスレッド18上に搬入する。この動作に当たりスレッド18にて使用される減圧吸引力は弱めであるので、スレッドベルト37・スレッド上面19間の摩擦を抑えながら、スレッド18に対し媒体12を移動させることができる。その後、スレッド18に対する媒体12の位置が適正な位置になったら、直ちに、媒体12の移動速度が一定に保たれるよう、スレッドベルト37及び媒体12を運搬しているスレッド18の加速と、そのスレッドベルト37の減速とを同時に実行する。スレッド37が然るべき位置に達したら、そのスレッド37で作用させる減圧吸引力を強めた上で、スレッド18及びその上の媒体12を印刷ゾーン14に進入させ、一定速度でそのゾーン14内を進ませる。ゾーン14を出たら、そのスレッド18で作用させる減圧吸引力を弱めた上で、スレッド18を引き続き第1方向44に沿い移動させる。スレッド18が出口ステーション22側折り返し点に近づいたら、スレッド18を減速させると同時にスレッドベルト37を加速させることで、その速度を概ね一定に保ちながらスレッド18上の媒体12を出口ステーション22上へと搬出させる。スレッド18の移動方向を第2方向46へと反転させてからも、スレッドベルト37による媒体12の高速搬出を継続させ、第1方向44に沿った媒体12の移動速度を一定に保持させる。即ち、スレッド18が出口ステーション22側折り返し点に近づき減速しつつある間及びその移動方向が反転してから暫くの間、媒体12の速度は、スレッドベルト37の速度で補われて一定速度に保持される。そして、次の媒体12を捕捉するためスレッド18を帰還させる。それと並行して、当該次の媒体12を入口ベルトアセンブリ26によって第1方向44に送り出させる。スレッド18がまだその下に到来していないため媒体12の先端がうなだれてしまうことを防ぐには、その先端が図4に示す如く延びるよう、スレッド18にガイド56を設けておけばよい。同じく、スレッド18が帰還し始めたときに媒体12の後端を支えるガイド57を、出口ベルトアセンブリ30に設けることもできる。
【0026】
このように、本実施形態によれば、媒体12が大判であっても十分に高い生産性及びスループットを実現することができ、またその上に高画質画像を発現させることができる。
【0027】
図6及び図7に、本発明の他の実施形態に係る媒体輸送システム100を示す。本システム100は、画像転写装置16でその上に画像を発現させることができるよう、シート状媒体12を移動させて印刷ゾーン14に通すシステムである。本実施形態におけるベルト式輸送システム102は、媒体入口ステーション106上からスレッド110上を経て媒体出口ステーション108上まで延びる主無限ベルト104を備えており、そのベルト104はローラ105を含むベルト駆動装置によって駆動されている。スレッド110は直線案内部材109上にあり、入口ステーション106・出口ステーション108間で前進、後退するようスレッド駆動装置111によって駆動されている。
【0028】
それら、入口ステーション106、出口ステーション108及びスレッド110には吸引用プレナム112、114及び116が設けられている(符号同順)。プレナム112、114及び116はいずれも減圧吸引装置118に連結されている。プレナム112、114及び116の上面にはベルト104(及びその上の媒体12)に減圧吸引力を伝えるため吸引孔120が形成されており、ベルト104の上面には媒体12に減圧吸引力を伝えるためベルト孔122のアレイが形成されている。入口ステーション106、出口ステーション108及びスレッド110は減圧吸引装置118につながっているので、スレッド110の吸引孔120で作用する減圧吸引力の強弱を、図1〜図5に示した例に倣い切り換えることができる。
【0029】
また、本実施形態では、ベルト104の動作がスレッド110の動作に対して独立しており、スレッド110の移動速度及び方向がベルト104のそれと異なっている。例えば、入口ステーション106からスレッド110上へと媒体12を送り出す際には、ベルト104を第1方向124に沿い出口ステーション108にむけ動かしながら、スレッド110を第2方向126に沿い出口ステーション108から離隔させる。
【0030】
ベルト104は一定速度で回転駆動される。スレッド110を入口ステーション106に接近させると、そのステーション106上の媒体12が、ベルト104の動きと、スレッド110から作用する弱めの減圧吸引力とにより、スレッド110上に引き込まれる。スレッド110に対する媒体12の位置が所望の位置になったら、直ちに、スレッド110が媒体速度とマッチするよう加速され、またそのスレッド110上で使用される減圧吸引力が強めの値に切り替わる。媒体12は、その減圧吸引力によってスレッド110に吸い寄せられた状態で、スレッド110及びベルト104と共に同一速度で移動していく。印刷ゾーン14における媒体12の移動速度は専らスレッド110によって制御される。媒体12がゾーン104内に存するときにベルト104をトルク制御モードで稼働させることもできる。トルク制御モードとは、スレッド110の固有摩擦抵抗及び慣性力を克服するのにちょうどよい程度の電流プロファイルでスレッド110を駆動するモードである。トルク制御モード下では、スレッド110を駆動するのに必要な駆動力の大部分がスレッド駆動装置から供給される。ベルト駆動装置から供給されるのは、所要スレッド駆動力における小規模な変動分のみであり、これはタイトな速度制御下に置かれる。
【0031】
スレッド104が印刷ゾーン14を通過すると、出口ステーション108への接近に伴い、スレッド110上で使用される減圧吸引力が弱めの値に切り替わる。出口ステーション108側折り返し点への接近に伴いスレッド110は減速するが、ベルト104は一定速度で回り続けるので、媒体12はスレッド108から出口ステーション108へと搬出されることとなる。即ち、スレッド110は減速するが、ベルト104の上面の対地速度が一定に保たれるので、媒体12を出口ステーション108に向かい一定速度で移動させ続けることができる。スレッド110は、その後、自分の上から媒体12が完全に脱しきる前にその移動方向を反転させ、第2方向126に沿い入口ステーション106へと移動し始める。ベルト104は、媒体12を第1方向124に沿い移動させ続け、出口ステーション108を介し後続の媒体処理経路に送り込むのと並行し、スレッド18の帰還運動が終わるのを待たず次の媒体12をスレッド18に向かい送り出す。スレッド18はその媒体12を受け取る。以後は前記同様の動作が繰り返される。
【符号の説明】
【0032】
10,100 媒体輸送システム、12 シート状媒体、14 印刷ゾーン、16 画像転写装置、18,110 スレッド、19 スレッド上面、20,106 媒体入口ステーション、22,108 媒体出口ステーション、24,102 ベルト式輸送システム、26 入口ベルトアセンブリ、27 無限入口ベルト、28,34,38,105 ローラ、30 出口ベルトアセンブリ、32 無限出口ベルト、36 スレッドベルトアセンブリ、37 無限スレッドベルト、40,111 スレッド駆動装置、42 モータ、44,124 第1方向、45 駆動用ベルト、46,126 第2方向、48,109 直線案内部材、50,118 減圧吸引装置、51,53,120 吸引孔、52,55,112,114,116 吸引用プレナム、54,122 ベルト孔、56,57 ガイド、60 コントローラ、104 主無限ベルト、A〜E 時刻。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体入口ステーションと、
媒体出口ステーションと、
それら媒体入口ステーション及び媒体出口ステーション間で反復的に並進する媒体運搬装置と、
媒体運搬装置上にシート状媒体を送り込むため及びそこから送り出されるシート状媒体を引き出すための媒体搬入出装置と、
を備え、媒体搬入出装置が、媒体運搬装置が移動する方向とは逆の方向にシート状媒体を移動させる印刷ゾーン内シート状媒体輸送システム。
【請求項2】
請求項1記載の印刷ゾーン内シート状媒体輸送システムであって、媒体運搬装置が媒体入口ステーション方向に移動しているうちに、媒体搬入出装置が、媒体入口ステーションから媒体運搬装置上へとシート状媒体を送り込み始める印刷ゾーン内シート状媒体輸送システム。
【請求項3】
請求項1記載の印刷ゾーン内シート状媒体輸送システムであって、媒体運搬装置が媒体出口ステーション方向に移動しているうちに、媒体搬入出装置が、媒体運搬装置から媒体出口ステーション上へとシート状媒体を引き出し始める印刷ゾーン内シート状媒体輸送システム。
【請求項4】
請求項1記載の印刷ゾーン内シート状媒体輸送システムであって、媒体運搬装置が、その上面が減圧吸引装置と通流しておりシート状媒体を載せうるスレッドを有し、媒体搬入出装置が、スレッドに連結されておりスレッドと共に移動するスレッドベルトアセンブリを有し、そのスレッドベルトアセンブリが、制御を受けスレッドに対しシート状媒体を移動させるスレッドベルトを有する印刷ゾーン内シート状媒体輸送システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−207226(P2011−207226A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58255(P2011−58255)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】