説明

子宮内膜症の治療または予防剤

【課題】乳清ミネラルを有効成分として含有する子宮内膜症の治療または予防剤を提供する。
【解決手段】カルシウム含有量が26〜30%、マグネシウム含有量が1.0〜1.6%、およびカリウム含有量が0.2〜0.5%の、子宮平滑筋収縮頻度を有意に抑制する作用を有する乳清ミネラルを有効成分として含有する、子宮内膜症の治療または予防剤。該子宮内膜症の治療または予防剤に含まれる乳清ミネラルの有効量は、Ca量に換算して300〜600mg/dayである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乳清ミネラルを有効成分として含有する子宮内膜症の治療または予防剤に関する。
【背景技術】
【0002】
平滑筋は各種の生体内物質、神経伝達物質、オータコイド、ホルモン等のそれぞれの特異的受容体を介して反応し、収縮または弛緩を起こす。平滑筋は内臓平滑筋、血管平滑筋、眼平滑筋に大別され、その存在部位は消化器系(食道、胃、小腸、大腸、胆嚢、胆管)、気管、気管支、精管、精嚢、子宮、卵管、動静脈の血管系、脾臓の鞘、リンパ管、皮膚(立毛筋)、汗腺、乳腺、唾液腺などの外分泌腺の導管および眼球内(瞳孔括約筋、同散大筋、毛様体筋)等であり多岐にわたる。これらは消化、呼吸、生殖、循環、体温調節、焦点光量調節に重要は役割を果たしている。平滑筋に作用する薬物はこれら平滑筋の収縮弛緩緊張の状態を変えることで効果を現し、各種の疾病に治療に用いられている。
平滑筋はそれぞれの臓器固有の目的に添った機能とそれに伴う形態を呈している。平滑筋は多種多様な物質により収縮弛緩を起こし、同一物質でも平滑筋の種類により反応が逆であったりする。子宮平滑筋は交換神経と副交感神経の両支配を受けているが、ヒトの場合副交感神経興奮による反応は不変で、交感神経興奮による反応は、非妊娠子宮では弛緩、妊娠子宮では収縮が起こる。特にアドレナリン作用薬に対する反応は動物種、性周期、妊娠の有無によって異なる。これは一般に子宮平滑筋にはα受容体(興奮的)とβ受容体(抑制的)が存在し、動物種やホルモンの状態により、どちらの受容体が優位に作用するかによる。
【0003】
子宮収縮薬の臨床応用は、(1)陣痛促進(オキシトシン、プロスタグランジン)、(2)分娩後の弛緩出血の防止(麦角アルカロイド)、(3)月経時の不正出血の防止、である。
一方、子宮鎮痙薬(子宮弛緩薬)は、(1)切迫流産の防止(β2刺激薬のリトドリンやイソクスプリン)、(2)月経困難症の緩和、である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、乳清ミネラルを有効成分として含有する子宮内膜症の治療または予防剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、ホエイ(乳清)からホエイタンパク質濃縮物(WPC)や乳糖を製造する際の副産物として得られる各種乳清ミネラルについて、ラット発情期子宮摘出標本のプロスタグランジンF2α(PGF2α)による収縮頻度に対する抑制作用を、Locke−Ringer液を使用し、浴槽温度34℃、負荷0.5g、酸素と二酸化炭素の混合ガス(95%O−5%CO)通気下、Magnus法で等尺性(isometric)に調べた。その結果、酸ホエイ由来の乳清ミネラルであって、該乳清ミネラル遠心(3,000rpm、10分間)部分の下層が上層よりも、プロスタグランジン誘導ラット子宮平滑筋収縮頻度を有意に抑制することを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は
(1) カルシウム含有量が26〜30%、マグネシウム含有量が1.0〜1.6%、およびカリウム含有量が0.2〜0.5%の、子宮平滑筋収縮頻度を有意に抑制する作用を有する乳清ミネラルを有効成分として含有する、子宮内膜症の治療または予防剤、
(2) 上記乳清ミネラルの有効量がCa量に換算して300〜600mg/dayである、前記(1)に記載の子宮内膜症の治療または予防剤、
からなる。
【発明の効果】
【0007】
本発明における乳清ミネラルの平滑筋弛緩作用はおだやかであり、副作用がないので、平滑筋の収縮により惹起される苦痛(例えば月経困難症)や疾患(特に、子宮内膜症)の緩和や予防に有用である。
また、乳清ミネラルは、上記したように子宮内膜症および子宮傍組織結合組織炎に対して予防、症状軽減あるいは治療効果があり、また、これらの疾患に随伴する月経困難症の症状軽減や消失に有効である。したがって、乳清ミネラルの有効量を添加した剤を摂取することにより、子宮内膜症あるいは子宮傍結合組織炎の予防効果が期待できる。有効量はCa量に換算して300〜600mg/dayである。乳清ミネラルを医薬品として用いる場合は周知慣用技術により製剤化(錠剤、顆粒剤、シロップ剤等)することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】アラミンの、PGF2α誘発ラット子宮収縮頻度抑制作用を示す。●:アラミン、■:対照、平均値±SD、:*p<0.05、**p<0.01(Student’s t−test)
【図2】カポラックの同上抑制作用を示す。
【図3】アラミンの、PGF2α誘発ラット子宮収縮頻度抑制作用を用量反応曲線を示す。IC50=1.75%である。
【図4】アラミンの遠心上層および下層の、PGF2α誘発ラット子宮収縮頻度抑制作用(アラミン無添加を100としたとき)を示す。●:遠心下層、■:遠心上層、平均値±SE、**p<0.01(対上層、Student’s t−test)
【図5】同上を阻害 % で示す。●:遠心下層、■:遠心上層、平均値±SE、**p<0.01(対上層、Student’s t−test)
【図6】CALCIANE117、VITALAMOR、およびLOT#100101のPGF2α誘発ラット子宮収縮頻度(頻度/10分)抑制作用を示す。*p<0.05(0 %と比較、Student’s t−test)、**p<0.01(0 %と比較、Student’s t−test)
【図7】同上抑制作用の相対値(%)を示す。
【図8】同上抑制作用の抑制率(%)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ホエイは、スイートホエイ(sweet whey)と酸ホエイ(acid whey)に分けられる。スイートホエイは熟成型チーズの副産物であり、pH5.9〜6.3で甘味がある。一方、酸ホエイは非熟成、フレッシュ型チーズの製造で得られ、通常、pH4.4〜4.6で酸味がある。また、カゼイン製造の際のホエイも酸ホエイである。
スイートホエイおよび酸ホエイの一般的組成を表1に示す(Milk Science Vol.51,No.1,2002)。
【0010】
【表1】

【0011】
乳清ミネラルは、一般的には、ホエイの限外濾過透過液(UF パーミエイト)を濃縮後冷却して乳糖を析出・分離除去し、その液を噴霧乾燥して得られる。原料ホエイの種類や製造法の違いにより、乳清ミネラルの成分組成は多様である。
さて、牛乳中の乳成分はA〜Kの11の画分(表2)に分けられる〔佐藤幾郎・他:食品膜技術(大矢晴彦,渡辺敦夫監修),光琳,p.349−379(1999)〕。
【0012】
【表2】

【0013】
表2のD画分の灰分IIは、主にカゼインミセルを構成するミネラルで、pH6.7ではUF膜により阻止される部分である。pH4.6では溶解し、UF膜を透過する。この画分は、レンネットを用いたチーズ製造時は主にチーズに移行し、酸カゼイン製造時は、酸ホエイの方に移行すると考えられる画分である。
【0014】
市販の乳清ミネラルであるアラミン(Alamin、供給先:NZMP)、カポラック(Capolac、供給先:MD−FOODS)、CALCIANE 117(standard)(供給先:BBA)、VITALAMOR Ca(micronized)(供給先:Armor Proteins)およびLOT#100101(供給先:Evolutionary)の、ラット子宮摘出標本のプロスタグランジン(PGF2α)による収縮頻度抑制活性を調べた。これらの乳清ミネラルの成分組成を表3に示す。
【0015】
【表3】

【0016】
アラミンは、プロスタグランジンによるラット子宮摘出標本の収縮頻度を濃度依存的に抑制したが、カポラックは抑制しなかった。そこで、この抑制作用に関係する成分と考えられる無機成分含有量について両者を比較すると、カルシウムおよびマグネシウムはアラミンの方が多く(それぞれ1.5倍および2.1倍)、ナトリウム、カリウムおよび塩素はカポラックの方が多い(それぞれ2.8倍、4.2倍および19.6倍)ことが分かった。アラミンのカルシウム含有量が高いことから、上記UF 膜透過のD画分の灰分IIを含んでいると推定される。
【0017】
一方、アラミンのラット子宮摘出標本における抑制活性は、後述するように、アラミン懸濁液を遠心分離して得られる上清部分よりも上清以外の部分の方が大きいことが見出された。
牛乳中のカルシウムは、100mL当たり100〜120mg、濃度にして約30mM含まれており、その中で溶解相に存在するのは約1/3で、残りの2/3はコロイド相に含まれている。ナトリウムはカリウムより含量が高く、マグネシウムはその65%が溶解相に存在し、残りはコロイド相に存在し、カゼインミセルの構成成分となっている(乳業技術,Vol.50:p.74−,2000)。
【0018】
アラミンのプロスタグランジンによるラット子宮摘出標本の収縮頻度抑制の主要な活性が、遠心下層部分に多く存在することから、アラミン中のコロイド相のカルシウムおよびマグネシウムに存在していると推察される。
したがって、ラット子宮摘出標本のプロスタグランジンによる収縮頻度を抑制する作用を有する乳清ミネラルは、アラミンの無機成分組成と同一か、あるいは近似した無機成分組成を有する乳清ミネラルと考えられる。このような乳清ミネラルとして、土田らの乳清ミネラル(H.Tsuchita,et al.:J.Nutr.Sci.Vitaminol.,39: 473−487, 1993)が挙げられる。この乳清ミネラルは、酸ホエイのUF パーミエイト(分子量カットオフ値, 2,000〜3,000)をアルカリで中和し、生成した沈澱を精密濾過(0.45μm)して濃縮し、この濃縮物を水で洗浄した後、噴霧乾燥したもの(WMC2)である。これはカルシウムが26.4 % 、カリウムが140 mg %とアラミンのそれらと近似し、マグネシウムは447 mg %とアラミンの約30 %と少ない。したがって、マグネシウムを増強することが考えられる。得られた乳清ミネラルのラット子宮摘出標本のプロスタグランジンによる収縮頻度抑制を測定してその効果を確認することができる。
【0019】
本発明において、乳清ミネラルのカルシウム吸収を促進するために、WPC、ホエイタンパク分離物(WPI)、あるいはあMPC(Milk Protein Concentrate)などの乳タンパク、ビタミン類(A、D、C)、カゼインホスホペプチド(CPP)、などとの組み合わせ(特開平5−155774号公報)、エストラジオール、プロゲステロンなどとの組み合せ(浜田雄行ほか:松仁会雑誌 30:115, 1991)、乳由来の1α, 25−ジヒドロキシカルシフェロールとの組み合わせ(特開平8−173031号公報)、あるいはその他公知のカルシウム吸収を促進する食品素材等との組み合わせが考えられる。乳清ミネラルを食品に配合するために、乳清ミネラルを顆粒状としてもよい(特許第2959832号)。
【0020】
本発明の剤を適用可能な食品としては、特別用途食品〔病者用食品、保健機能食品(特定保健用食品および栄養機能食品)〕、サプリメント、治療食などが挙げられる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明を試験例により説明するが、本発明はこれらの試験例に限定されるものではない。
[試験例1] 子宮の自発収縮運動に対する乳清ミネラルの作用
(1)アラミンとカポラック
乳清ミネラルであるアラミン(New Zealand Dairy Board社製)およびカポラック(Arla Foods社製)の、子宮の自発収縮(律動)に対する作用をマグヌス法で調べた。ここでアラミンおよびカポラックとその他の乳清ミネラルの成分組成を表3にまとめて示した。
収縮頻度および収縮力は個体差が大きく、等張液を添加しても乳清ミネラルを添加しても、収縮頻度および収縮力に顕著な変化は認められなかった。したがって、乳清ミネラルは、子宮の自動運動に対して、顕著な作用を示さないと考えられた。
そこで、プロスタグランジンPGF2αを添加し、人工的に子宮を収縮させた時の乳清ミネラルの作用を調べた。PGF2αは、PGHを基質としてNADPH依存性に、エンドペルオキシドを還元するPGFシンターゼによってつくられる。血圧上昇、腸管運動亢進、子宮収縮などの生物活性が知られ、分娩促進剤として実用化されている。
【0022】
〈方法〉
[動物]
9〜15週齢のSprague−Dawley 系雌性ラット(SLC)の発情期の子宮を用いた。飼育期間中、固形飼料および水は自由摂取させた。
[標本]
木槌を用いてラットの後頭部を強打後、腋窩動脈より放血致死させた。下腹部を切開し子宮を摘出した。Locke−Ringer 栄養液(118.4 mM NaCl, 5.63 mM KCl,2.1 mM MgCl, 2.78 mM glucose, 2.15 mM CaCl, 5.95 mM NaHCO)を満たしたシャーレ内で脂肪組織を丁寧に取り除き、左側子宮角上部を5 mm 長に切り取り子宮標本とした。
[手順]
子宮標本は、栄養液(10mL )を含むマグヌス管に、上端はアイソメトリックトランスデューサー(isometric transducer )につなぎ、下端は固定して装着した。Resting tension(静止張力)は0.5 g とし、約30 分間放置して張力を安定させた。PGF2αを最終濃度3×10−6 Mで添加し、子宮を収縮させた。アラミンあるいはカポラックは、最終濃度が0.3 %、1%、 3%となるように、累積的に添加して等尺性収縮を測定した。対照として、同量のLocke−Ringer 栄養液を用いた。PGF2α誘発ラット子宮平滑筋の収縮頻度に対するアラミンの作用を図1に、カポラックの作用を図2に、アラミンの用量と収縮頻度抑制率との関係(用量反応曲線)を図3に示す。
【0023】
(2)その他の乳清ミネラル
CALCIANE 117(standard)(供給先:BBA)、VITALAMOR Ca(micronized)(供給先:Armor Proteins)およびLOT#100101(供給先:Evolutionary)の、ラット子宮摘出標本のプロスタグランジン(PGF2α)による収縮頻度抑制活性を(1)と同様の方法で調べた。
各乳清ミネラルの累積濃度における子宮平滑筋の収縮頻度(頻度/10分)を図6に、各乳清ミネラル濃度0 %に対する相対値を図7に、そして収縮頻度抑制率(%)を図8に示した。
[結果および考察]
アラミンはPGF2α誘発子宮収縮頻度を用量依存的に抑制した(図1および3)。一方、カポラックは同作用を全く示さなかった(図2)。
また、CALCIANEは、PGF2α誘発子宮収縮頻度を用量依存的に抑制した(図6、7および8)。VITALAMOR Caはほとんど抑制を示さなかった。一方、LOT#100101は、逆に、子宮収縮頻度を増強した(図6および7)。
図1〜6の結果は、乳清ミネラルの成分組成によるものと考えられる。そこで子宮収縮頻度抑制作用に関与すると考えられるNa、K、CaおよびMg含量について、乳清ミネラルの成分組成を比較した。
アラミンのNa、K、CaおよびMg含量は、CALCIANEのそれらと比較すると、Naは同じ、Kは52 %、Caは1.1倍、Mgは72 %である。アラミンおよびCALCIANEのNa、K、CaおよびMg含量とカポラックのそれらとを比較すると、Naは35 %、Kは23および45 %と少なく、Caは1.47および1.34、Mgは2.1および2.89倍と多い。また、逆に、子宮収縮頻度を増強するLOT#100101のNa、K、CaおよびMg含量とアラミンのそれらを比較すると、Naがアラミンの15 %、Kが58 %、Caはほぼ同じ、Mgが82.5 %である。
これらの結果から、カルシウム含有量が26〜30% 、マグネシウム含有量が1.0〜1.6 %、およびカリウム含有量が0.2〜0.5%の乳清ミネラルは、子宮平滑筋収縮頻度を抑制する作用を有すると推定される。しかしながら、本発明はこれらの数値範囲に限定されるものではない。
Mgは細胞外Ca2+の流入、細胞内Ca2+の遊離、細胞質Ca振動(Ca oscillation)、および子宮平滑筋の一過性収縮(phasic constraction)を阻害するという報告(Biochem. Biophys. Res. Commne., 252(2): 502−507, 1998 )から、収縮にMgが関与していることが考えられる。また、細胞外K濃度を上げると細胞膜は脱分極し収縮する(K拘束)。このK拘束の各要素は細胞外Ca除去によって消失する。同様にCa拮抗剤によってもK拘束は強く抑制される。これらの結果は、K拘束が細胞外Caの流入によって引き起こされる可能性を示している。さらにある種の平滑筋では、細胞外Naを除去すると、Caの取り込みの増加と収縮がみられ、この収縮は外液のCa除去で消失する。
上記成分比較およびこれらの報告とを勘案すると、アラミンおよびCALCIANEの子宮収縮頻度抑制成分として、Ca含量およびMg含量が主要なものと推定されるが、Na、K、CaおよびMgの総合的作用とも考えられる。そこで、Caが25〜30%およびMgが1〜1.6%程度と推定されるが、総合的にはNaが0.3〜0.5%、Kが0.2〜0.5%、Caが25〜30%およびMgが1〜1.6%程度と推定される。LOT#100101の子宮収縮頻度増強作用はK含量は際だって少ないことによるものと思われる。
平滑筋においても、筋収縮は、Ca2+チャンネルからのCa2+流入および細胞内貯蔵部位(筋小胞体)からのCa2+遊離による細胞内遊離Ca2+濃度上昇(10−6 M以上)で起こる。しかし平滑筋は横紋筋と異なり、筋小胞体の発達が悪く、収縮は細胞外から細胞内へ流入するCa2+への依存性が大きい。このためCa2+の細胞内への流入を阻害するCa拮抗薬は平滑筋の収縮を抑制する。
【0024】
[試験例2] アラミンの遠心上層および下層の、子宮の収縮頻度抑制作用
アラミン0.3%、1%および3%の懸濁液ではを遠心分離(3000 rpm、10分間)し、遠心上層および下層のPGF2α誘発ラット子宮の収縮に対する作用を調べた。上層および下層の収縮頻度抑制作用を図4に、同用量反応曲線を図5に示す。収縮抑制作用のほとんどは遠心上層に認められたが、下層にも弱い抑制作用が認められた。
【0025】
[試験例3] 子宮内膜症に対する乳清ミネラルの治療効果
内診所見および子宮内膜症マーカーCA125、CA19−9高値(CA125:37−160 u/mL;CA19−9:28−57 u/mL)から、子宮内膜症と診断された25名の患者(19−48歳)に対し、インフォームドコンセントを得て、アラミン錠剤を1日あたり12錠(カルシウム300 mg/日)を1年間服用してもらった。比較対照疾患として、子宮内膜症を否定しうる月経困難症の症状を呈する31名の慢性骨盤腹膜炎(子宮傍結合組織炎患者:26−36歳 )を選び、抗生物質は投与せずアラミン錠剤のみを服用してもらった。
服用期間中、(1)CA125およびCA19−9を1カ月毎に測定した。(2)月経困難症のカルテを記載し、自覚症状の推移および鎮痛剤の使用量をみた。(3)内診所見をとり、子宮内膜症の所見の推移をみた。
結果、CA125およびCA19−9の低下傾向を示す21名(A群)と上昇傾向を示す4名(B群)の2群に分かれた。
【0026】
A群:CA125値は服用4−6カ月の時点で37−160 u/mLから11−44 u/mLまで減少した。自覚症状では、4−6カ月の時点で全員鎮痛剤の服用の必要がなくなった。内診所見も軽快傾向であった。服用中または服用終了後3カ月以内に3名が妊娠した。これは、子宮内膜症が不妊の女性側の原因の第一位であり、不妊の原因としても大き疾患であることを考慮すると、特記すべきことである。
B群:CA125、CA19−9ともに上昇したが3カ月を経過した時点で月経困難症が軽減された。6カ月の時点でボンゾール200 mg/dayを少量併用したところ、1カ月以内にCA125の低下および内診所見の改善がみられた。アラミン錠剤は、月経困難症に対して、CA125の上昇に関係なく症状を軽減する効果を有することが見出された。
比較対照疾患の子宮傍結合組織炎患者は約2カ月で全員月経痛は消失し、内診所見は軽快していた。アラミン錠剤は慢性炎症の治療に対しても有効であることが見出された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウム含有量が26〜30%、マグネシウム含有量が1.0〜1.6%、およびカリウム含有量が0.2〜0.5%の、子宮平滑筋収縮頻度を有意に抑制する作用を有する乳清ミネラルを有効成分として含有する、子宮内膜症の治療または予防剤。
【請求項2】
上記乳清ミネラルの有効量がCa量に換算して300〜600mg/dayである、請求項1に記載の子宮内膜症の治療または予防剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−162554(P2011−162554A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109117(P2011−109117)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【分割の表示】特願2002−257925(P2002−257925)の分割
【原出願日】平成14年9月3日(2002.9.3)
【出願人】(000006138)株式会社明治 (265)
【Fターム(参考)】