説明

子局装置、親局装置、通信回線切替方法、通信システムおよび制御装置

【課題】通信障害が発生した場合、予備系の回線を用いた通信の再開までの時間を短縮することができる子局装置を得ること。
【解決手段】OLTと光信号を分岐するスプリッタとの間が冗長化された複数の物理回線で接続され、スプリッタを介してOLTと通信するONU10-1であって、論理リンクを用いた伝送信号を送受信する光送受信機14と、通信可能なONUとしてOLTに登録された登録状態において、ホールドオーバー状態への移行を指示する移行メッセージを光送受信機14を介して受信すると、下り信号の受信を行うとともに上り信号の送信を抑制するホールドオーバー状態に移行するPON制御部11と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冗長化された通知回線で接続された通信システム、通信方法に関し、例えばOLT(Optical Line Terminal:局側終端装置)と複数のONU(Optical Network Unit:利用者側終端装置)とで構成される通信システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
通信端末間を複数の回線で冗長接続し、通信障害への堅牢性を高めた通信システムが考えられている。このような通信システムでは、通信装置が使用中の回線で通信障害を検出した場合に、障害が発生した回線の使用を中止し、他の通信回線でのリンクを確立して通信を再開する。
【0003】
特開2001−119345号公報は、OLTとスターカプラとの間を冗長化された2本の光ファイバーで接続した光通信システムを開示している(特許文献1)。
国際公開WO2008/126162は、OLTが一定時間ONUからの上り信号を受信しなかった場合に、使用回線を現用系光ファイバーから予備系の光ファイバーに切り替えるプロテクションシステムを開示している(特許文献2)。
【0004】
また、IEEE(The Institute of Electrical and Electronic Engineers)802.3av規格は、光回線を用いた通信プロトコルを規定している。PONシステムでは共通の回線を使用して複数のONUが時分割多重アクセスでOLTと通信するため、各ONUが正確に割当てられたタイミングでデータを送信する必要がある。そこで、OLTは下り制御メッセージを用いて複数のONU間の同期を制御する。OLTは自己のクロックリファレンスに基づくタイムスタンプを下り制御メッセージに挿入し、基準となる時刻を各ONUに通知する。ONUは、受信した下り制御メッセージからタイムスタンプを抽出し、PON(Passive Optical Network)カウンター値として送受信のタイミング基準となるローカルタイマを更新する。
【0005】
OLTはこのタイムスタンプを含む下り制御メッセージを頻繁に送信するので、ONUは受信信号に含まれるタイムスタンプと自己のPONカウンターとの差異を検査し、同期ずれや回線異常を常に監視することができる。ONUはタイムスタンプとPONカウンターが閾値以上に乖離している場合にはタイムスタンプ・ドリフト・エラーを検出し、論理リンクを切断して初期状態に戻らなければならない。初期状態に戻ったONUは、OLTによるディスカバリー処理により、新たに論理リンクが設定され、必要な同期と制御情報の再設定により、通信を再開することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−119345号公報(図1)
【特許文献2】国際公開第2008/126162号(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の通信システムでは現用系の回線に通信障害が発生した場合、子局装置(ONU)が障害を検知して、通信リンクを再確立しようとするため、予備系の回線を用いた通信の再開までに時間がかかるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の子局装置は、親局装置と光信号を分岐するスプリッタとの間が冗長化された複数の物理回線で接続され、前記スプリッタを介して前記親局装置と通信する子局装置であって、論理リンクを用いた伝送信号を送受信する送受信機と、通信可能な子局装置として前記親局装置に登録された登録状態において、ホールドオーバー状態への移行を指示する移行メッセージを前記送受信機を介して受信すると、下り信号の受信を行うとともに上り信号の送信を抑制するホールドオーバー状態に移行する制御部と、を備えたものである。
【0009】
この発明の通信回線切替方法は、冗長化された複数の物理回線を介して、親局装置と子局装置とが接続された光通信システムの通信回線切替方法であって、前記親局装置が、前記子局装置を通信可能な子局装置として登録するディスカバリーステップと、前記親局装置が、通信に使用する送受信機を現用の送受信機から予備の送受信機に切り替えるプロテクション切替を行う場合には、下り信号の受信を行うとともに上り信号の送信を抑制するホールドオーバー状態への移行を指示する移行メッセージを登録された前記子局装置に対して送信した後に、現用系の前記物理回線から予備系の前記物理回線に切り替える切替ステップと、登録された前記子局装置が、前記移行メッセージを受信すると、予め定められた期間中は下り信号の受信を行うとともに上り信号の送信を抑制するホールドオーバー状態に移行するホールドオーバーステップと、を備えたものである。
【0010】
この発明の子局装置の制御装置は、親局装置と光信号を分岐するスプリッタとの間が冗長化された複数の物理回線で接続され、前記スプリッタを介して前記親局装置と通信する子局装置の制御装置であって、当該基地局が通信可能な子局装置として前記親局装置に登録された登録状態において、ホールドオーバー状態への移行を指示する移行メッセージを受信すると、予め定められた期間中は下り信号の受信を行うとともに上り信号の送信を抑制するホールドオーバー状態に移行するものである。
【0011】
この発明の親局装置の制御装置は、冗長化された複数の物理回線とこれらの物理回線の信号を複数の信号線に分岐させるスプリッタを介して複数の子局装置と通信を行う親局装置の制御装置であって、通信に使用する送受信機を現用の送受信機から予備の送受信機に切り替えるプロテクション切替を行う場合には、下り信号の受信を行うとともに上り信号の送信を抑制するホールドオーバー状態への移行を指示する移行メッセージを複数の前記子局装置に送信した後に、前記プロテクション切替を行うものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる子局装置、親局装置、通信回線切替方法、通信システムおよび制御装置は、回線切替後の通信再開を早期に開始できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の実施の形態における通信システムの構成を示す構成図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態における通信端末の状態遷移を示す状態遷移図である。
【図3】図3は、通信回線の切替処理を示すシーケンス図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態1における通信回線の切替方法を示すシーケンス図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態における通信システムの一例を示す構成図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態における制御装置の一例を示す構成図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態における通信端末の制御装置の処理を示すフローチャートである。
【図8】図8は、本発明の実施の形態2における通信回線の切替方法を示すシーケンス図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態2における通信端末の制御装置の処理を示すフローチャートである。
【図10】図10は、本発明の実施の形態3における通信回線の切替方法を示すシーケンス図である。
【図11】図11は、本発明の実施の形態3における通信端末の制御装置の処理を示すフローチャートである。
【図12】図12は、本発明の実施の形態3における局側の制御装置の処理を示すフローチャートである。
【図13】図13は、本発明の実施の形態における通信システムの構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1.
図1は、親局である通信装置1に複数の子局である通信装置10-1〜10-3(以下、1つの子局装置を特定しない場合は子局、または子局装置10という)を接続した通信システムを示している。通信装置1は各子局装置10との通信回線の設定を行い、複数の子局装置10との通信を制御する。通信装置1と子局装置10とは、冗長化された通信回線(回線)30-1、30-2により接続されており、図1の通信システムでは、通信装置1からスプリッタ40までが冗長化されている。このような冗長化システムは、PON(Passive Optical Network)システムにおいて、TYPE−Bプロテクションシステムと呼ばれる。スプリッタ40は、回線30-1,30-2の信号を分岐させ各回線(加入者線)31に伝送するとともに、各回線31の信号を回線30-1、30-2にも伝送する。親局の通信装置1は、各回線30-1、30-2毎に送受信機5-1、5-2を備えており、制御装置2-1、2-2の制御によって回線30-1、30-2を用いた信号の送受信を行う。通信回線30-1、30-2は物理的な経路が異なる例えば光ファイバー等の物理回線であり、この物理回線は論理的な論理リンクを複数収容することが可能である。
【0015】
切替器8は、制御装置2-1、2-2からの切替信号に従って制御装置2-1、2-2と外部装置またはネットワークとの接続を切り替える装置である。なお、通信装置1が外部装置へ信号を中継せず、通信が通信装置1で完結する場合には、この切替器8は不要である。
【0016】
次に、この通信システムの動作を説明する。通信装置1は、冗長化された回線30-1,30-2のうちの一方(一部)、例えば回線30-1、を現用系の通信回線として指定し、通信装置10との通信を行う。残りの通信回線は予備系の通信回線、例えば回線30-2、として障害発生に備えて待機状態、または、休止状態となる。通信装置1は、受信信号の状態から回線30の障害を監視し、障害が発生した場合に送受信に使用する回線を、現用系の通信回線30-1から予備系の通信回線30-2に切り替える。切替後、回線30-2は新たな現用系の通信回線として使用される。
【0017】
図2は子局装置10の状態遷移を示す。左に示される状態遷移は通信回線30の切り替えを考慮していない場合の状態遷移であり、右に示される状態遷移は通信回線30を切り替えた際に、高速に通信を再開できるように初期化の猶予状態(ホールドオーバ状態)を設けた状態遷移である。
【0018】
図2の左側に示した状態遷移に基づいて、通信装置10の初期設定と回線異常からの復帰を説明する。未接続の通信装置10が新たに回線31に接続された場合、或いは、電源が切られていた通信装置10について電源が入れられた場合、通信装置10は親局側の通信装置1と通信のための回線設定がされておらず、通信装置1にも登録されていないため通信を行うことができない(状態St1)。この状態を未登録(deregistered)状態という。非登録状態の通信装置10は、通信装置1に登録されるまで受信のみを行い親局側の通信装置1から通信が許可されるまで待機状態となる。
【0019】
親局から新規登録を受け付ける制御メッセージ(ディスカバリゲート)を受信すると、通信装置10は、初期設定を行う状態St2(ディスカバリ状態)に移行する。この状態では、通信装置10は自己の識別情報、必要ならば能力情報を親局へ送信し、この情報に基づき親局に通信相手として登録される。親局は通信装置10を登録した場合に、登録を知らせる制御メッセージを通信装置10へ送信する。この制御メッセージは通信リンクの設定情報を含んでおり、この制御メッセージを受信した通信装置10は設定情報を記憶し、必要な通信設定を自己の装置に行うことによって通信可能状態St3となる。この状態を登録(registered)状態という。登録状態に移行した通信装置10は以後設定情報を用いて親局とデータの送受信を行う。
【0020】
登録状態の通信装置10は、受信信号の状態を常に/断続的に監視しており、例えば、所定期間、信号を受信できなかった場合には回線異常が発生したと判断して、警報情報を生成する。回線異常を検出した通信装置10は、設定情報を廃棄して通信リンクを切断し、未登録St1に戻り、再度、親局から通信リンクが設定されるまで待機する。
【0021】
図1に示されたような通信回線30が冗長化されたプロテクションシステムに、このプロセスを実行する通信装置10を接続すると、図3のシーケンス図に示されるような通信を行い、障害発生後に通信が回復するまでの時間が長くなる。親局の送受信機5-1が現用系として動作し、送受信機5-2が予備系として待機状態であるとき、現用系の通信状態が不安定となり、通信装置10へ下り信号が正常に到達しなかったとする。このとき、親局は通信に使用する通信回線を切り替え(プロテクション切替)、予備系の通信路30-2をあらたに現用系の通信回線として使用して通信を開始する。一方、子局側の通信装置10は、下り信号が届かない等の回線異常があった場合、親局でプロテクション切替を行ったにもかかわらず、通信リンクを切断し非登録状態に戻ってしまう。そして、通信装置10は、初期処理(ディスカバリ処理)によるリンクの再設定を経て、登録状態に復帰し通信を再開する。そのため、通信が中断する時間が長くなる。
【0022】
そこで、図2の右に示された状態遷移のように、回線異常が発生した場合に、初期設定を猶予する猶予状態St4(ホールドオーバー状態)を設けることにより、プロテクション切替時の通信の中断時間を短くすることができる。登録状態St3の通信装置10が回線異常を検出した場合、通信装置10は直接に非登録状態St1に移行せず、猶予期間中は通信リンクを切断せずに設定情報を維持して、親局からの正常な信号が到着するまで受信を継続する。猶予期間(ホールドオーバー期間)内に通信回線が正常に切り替えられると、通信装置10は通信リンクを切らずに登録状態St3に戻るため、非登録状態St1,初期設定を行う状態St2(ディスカバリー状態)を経由して通信を再開する場合に比べて、通信の中断時間を短くすることができる。
【0023】
図4を参照して、猶予状態St4を使用した場合の通信シーケンスを説明する。図4の通信シーケンスを用いることにより、図3の通信シーケンスに比べ、通信路切替が発生した際に、非登録状態と初期状態とを経ないで早期に登録状態に復帰できることが分かる。
【0024】
現用系の送受信機である親局の送受信機5-1は、各通信装置10が上り通信用に使用できる送信帯域を帯域割当情報で指定し、制御メッセージを用いて定期または不定期に繰り返し通知する(P1,P11,P15)。通信装置10は通知された送信帯域を用いて上り送信を行うが、この制御メッセージを受信した際に、これを検査して下り通信に異常があるか否かを検出する(P2)。エラー検出には、(a)受信信号に異常なデータが含まれているかを調べる検出と、(b)所定期間以上下り信号を受信しない場合に、通信断と判断してエラーを調べる検出とがある。
【0025】
検出(a)の一例は同期ずれ検出(タイムスタンプ・ドリフト・エラー)である。親局は送信タイミングの基準となる時刻情報(タイムスタンプ)を各通信装置10に送信し、各通信装置10の基準時刻を同期させる制御を行う。各通信装置10は受信した時刻情報に自装置の時刻を合わせるが、受信した時刻情報と自装置で計測している時刻(ローカルタイム)情報との差が所定のしきい値以上になった場合、下り信号に異常が発生したと判定し、同期ずれのエラーを検出する。
検出(b)の一例は、LOS(Loss of Signal)検出である。通信装置10は所定期間TLoS、下り信号を受信しない場合、LOSを検出する。通信装置10はタイマー或いはカウンターを持ち、メッセージを受信する度にこのタイマー等をリセットする、そしてタイマー等の値が所定の時間TLoS経過した場合に、LOSの検出を行う。
【0026】
ここで、親局の送受信機5-1からの下り信号が正常に通信装置10に到達せず(P3)、通信装置10が回線異常を検出すると(P4)、通信装置10は同期ずれエラー(タイムスタンプ・ドリフト・エラー)の出力を抑制する(P5)。すなわち、同期ずれエラーを検出しないか、検出しても非登録状態St1に移行しないように制御を行う。このとき、通信装置10は猶予状態に移行し、猶予期間の測定をするためにタイマー或いはカウンターによる猶予期間の計測を開始する。猶予状態の子局は下り信号の受信を継続する一方で、回線切替時の信号喪失や他の子局との送信の重複を避けるため、上り信号の送信を停止する。また、上り信号の送信を停止することにより、子局は親局に対して異常が発生したことを知らせ、回線切替を促すこともできる。
【0027】
この子局の黙示的な通知は、回線故障の可能性がある場合の異常通知として有効である。回線30が切断されている場合には、異常信号を送信することによる明示的な異常通知では、予備系の通信装置に対してしか通知できないためである。
【0028】
また、猶予状態の子局による同期ずれエラーの出力抑制は、早期の通信再開という効果をもたらす。後述のように、通信回線を切り替えると通信距離が変化する可能性があるため、同期ずれエラーが発生しやすくなる。また、親局側の複数の制御装置2-1,2-2間で時刻情報が一致していない場合、この不一致が子局側での同期ずれエラーを招く。同期ずれエラーが発生すると子局は通信リンクを再確立するため、非登録状態St1に戻るため、通信回線切替後の通信中断期間が長くなってしまう。同期ずれエラーの抑制は、このような中断期間の長期化を抑制し、早期の通信再開を実現する。
【0029】
一方、親局は子局からの信号が正常に到達しない等の通信回線30-1の状態を観測し、回線異常を検出する(P6)。異常を検出した親局の制御装置2-1は、通信回線の切替処理を行う(P7)。制御装置2-1は予備系の制御装置2-2と切替器8に回線切替信号を送信し、予備系の制御装置2-2にはさらに各子局の設定情報を引き渡す。そして、制御装置2-1は回線30-1を用いた送信を停止し、以後、予備系として動作する。回線切替信号を受け取った予備系の制御装置2-2は、現用系としての動作を開始する。まず、各子局の同期をとるため、猶予状態の各子局に時刻情報(タイムスタンプ)を持つ同期信号を送信する。この同期信号は、ユニキャストメッセージでもマルチキャストメッセージでもよい。
【0030】
子局では、同期信号を受信すると、自装置のタイマー或いはカウンターを同期信号に含まれる時刻情報に同期させ(P9)、猶予状態St4から登録状態St3に移行する。このとき、同期ずれエラー(タイムスタンプドリフトエラー)の出力抑制を解除し、通常通りのエラー検出を再開する(P10)。猶予期間の測定は、猶予状態の終了とともに中断される。
【0031】
親局は各子局に帯域割当情報を含む制御メッセージ(GATE)を送信する(P11)。子局はこのメッセージを受信し、上述(P2)と同様、同期ずれを含むエラー検査を行い、割当てられた帯域を用いて帯域要求情報を含むメッセージ(REPORT)を送信する(P13)。
【0032】
次に、親局は、帯域要求を受信すると各子局に対するRTT(Round Trip Time)を更新する(P14,P18)。RTTは、帯域割当の制御メッセージ(P11)の送信時刻とこのメッセージへの応答メッセージ(帯域要求:P13)の受信時刻とにより測定することができる。各子局と親局との間の通信距離は必ずしも同一ではないため、親局に到達する上り信号の伝送時間は異なる。そのため、親局は各子局から送信された信号が親局で受信する際に重ならないように、RTTと帯域要求とを考慮して各子局に割当てる帯域を決定し、各子局に帯域割当情報を送信する(P15)。子局は割当てられた帯域に基づき、新たな帯域要求やデータの送信を行う(P17,19)。
【0033】
なお、回線異常検出後(P4)、猶予状態St4の子局が、猶予期間中に回線切替後の下り信号を正常に受信しなかった場合、すなわち猶予期間を計測しているタイマー或いはカウンターにより猶予期間の経過が検出された場合には、子局は猶予状態St4を終了し、通信リンクを再設定するため非登録状態St1に移行する。通信リンクが再設定されると、回線切替前の設定情報は破棄され、新たな設定情報に書き換えられる。
【0034】
以上のように、この実施の形態の通信システムによれば、回線切替時に猶予状態を設け通信リンクを維持できるため、回線切替後の通信再開を早期に行うことができる。また、猶予期間中に子局が同期ずれエラーを抑制するため、回線切替後に子局が非登録状態に戻ることが少なくなり、効果的に通信の早期再開を実現することができる。
【0035】
・IEEE802.3通信方式への適用例
【0036】
次に上述の実施の形態1をIEEE802.3の通信プロトコルを用いた光通信システムに適用した実施例を説明する。図5は、この適用例のPONシステムを示す図である。図5において図1と同一の符号は、同一又は相当の構成を表わしている。親局は現用系のwOLT(Working Optical Line Terminal)と予備系のbOLT(Backup Optical Line Terminal)によって構成されている。各wOLT1-1およびbOLT1-2(以下、両者を区別しないときはOLT1という)とONU10-1〜10-3はスプリッタ40を介して加入者線30-1,30-2で接続されている。スプリッタ40は、OLT1に接続する加入者線(通信回線)30-1,30-2をONU10-1〜10-3の数に分岐する受動素子である。また、子局の通信装置であるONU10-1は、端末20-1および20-2に接続されている。なお、ここではONUを3台とした例を示しているが、ONUの台数はこれに限らず何台でもよい。
【0037】
各OLT1は、PONプロトコルに基づいてOLT側の処理を実施するPON制御部2-1,2-2(以下、PON制御部2という)と、ONU10-1〜10-3から受信する上りデータを格納するためのバッファである受信バッファ3と、ONU10-1〜10-3へ送信する下りデータを格納するためのバッファである送信バッファ4と、光信号の送受信処理を行う光送受信機5-1,5-2と、上りデータと下りデータを波長多重するWDM(Wavelength Division Multiplexing)カプラ(WDM)6と、ネットワークとの間でNNI(Network Node Interface)の物理インタフェース機能を実現する物理層処理部(PHY)7と、を備える。光送受信機5-1,5-2は、受信処理を行う光受信器(Rx:Receiver)51と、送信処理を行う光送信器(Tx:Transmitter)52と、を備える。
【0038】
ONU10-1は、PONプロトコルに基づいてONU側の処理を実施するPON制御部11と、OLT1への送信データ(上りデータ)を格納するためのバッファである送信バッファ(上りバッファ)12と、OLT1からの受信データ(下りデータ)を格納するためのバッファである受信バッファ(下りバッファ)13と、光送受信機14と、上りデータと下りデータを波長多重するWDM15と、端末20-1,20-2との間で、それぞれUNI(User Network Interface)の物理インタフェース機能を実現する物理層処理部(PHY)16-1,16-2と、を備える。
【0039】
光送受信機14は、送信処理を行う光送信器(Tx:Transmitter)141と、受信処理を行う光受信器(Rx:Receiver)142と、を有する。PHY16-1は、受信処理を行う受信部(Rx:Receiver)161-1と、送信処理を行う送信部(Tx:Transmitter)162-1と、で構成され、PHY16-2は、受信処理を行う受信部(Rx:Receiver)161-2と、送信処理を行う送信部(Tx:Transmitter)162-2と、を有する。
【0040】
なお、ONU10-1に接続される端末を2台としているが、端末の数はこれに限らず、何台でもよく、端末の数に応じた物理層処理部(PHY)を備える。また、図5では代表としてONU10-1の構成例を示したが、ONU10-2,10-3もONU10-1と同様の構成である。
【0041】
OLT1のPON制御部2は、IEEE802.3に規定されているように、ONU10-1〜10-3に対して送信時間帯が重ならないように上りデータの帯域割り当てを行い、ONU10-1〜10-3の送信データの衝突を防いでいる。この帯域割り当ては、どのような方法を用いてもよいが、たとえば、「Su-il Choi and Jae-doo著,“HuhDynamic Bandwidth Allocation Algorithm for Multimedia Services over Ethernet(登録商標) PONs”,ETRI Journal,Volume 24,Number 6,December 2002 p.465〜p.466」に記載されているDynamic Bandwidth Allocation Algorithm等を用いることができる。
【0042】
つぎに、OLT1とONU10-1〜10-3の全体動作を説明する。PON制御部2-1,2-2(以下PON制御部2-1,2-2を区別しないときはPON制御部2という)は、PHY7経由でネットワークから受信した下りデータ(下り通信データ)を送信バッファ4に格納する。各OLT1からデータを送信する際には、PON制御部2が、送信バッファ4に格納されている下りデータを読み出して光送受信機5に出力し、光送受信機5のTx52が送信データを光信号としてWDM6へ出力し、WDM6が光送受信機5から出力される光信号に対して波長多重を行い、加入者線30-1,30-2経由でONU10-1〜10-3へ下り信号として出力する。また、PON制御部2が、送信許可の指示を送信する送信帯域割当等の制御メッセージを送信する場合には、PON制御部2が生成した制御メッセージを光送受信機5に出力し、以下、下りデータと同様にONU10-1〜10-3へ送信する。なお、図1のPONシステムでは、波長多重を行うためWDM6,15を用いているが、単一波長で通信する場合には、WDM6、15は必須ではない。
【0043】
ONU10-1〜10-3では、wOLTから下り信号を受信すると、WDM15が下り信号を分離して光送受信機14へ出力し、光送受信機14のRx142が下り信号を電気信号の下りデータに変換してPON制御部11へ出力する。PON制御部11は、光送受信機14のRx142から出力された下りデータを受信バッファ13に格納する。PON制御部11は、受信バッファ13に格納された下りデータを読み出してそのデータの宛先に応じてPHY16-1,16-2の両方または片方に出力する。下りデータを受け取ったPHY16-1,16-2は、下りデータに対して所定の処理を実施して、自身が接続する端末20-1,20-2へ送信する。
【0044】
一方、ONU10-1〜10-3から上りデータを送信する場合には、PON制御部11は、端末20-1,20-2からPHY16-1,16-2経由で取得した上りデータを送信バッファ12に格納する。そして、wOLTから与えられた送信帯域に基づいて送信バッファに格納した上りデータを読み出して光送受信機14へ出力する。光送受信機14のTx141は、上りデータを光信号(上り信号)に変換し、WDM15,加入者線30経由でOLT1に送信する。
【0045】
wOLTのPON制御部2は、ONU10-1〜10-3から加入者線30,WDM6,光送受信機5のRx51経由で受信した上りデータを受信バッファ3に格納する。また、PON制御部2は、受信バッファ3に格納した上りデータを読み出して、PHY7経由でネットワークへ出力する。
【0046】
また、ONU10-1〜10-3は、wOLTから送信された制御メッセージをPON制御部11が、WDM15および光送受信機14のRx142経由で受信し、制御メッセージの指示に基づいた動作の実施、制御メッセージに対する応答の生成などを行う。
【0047】
図5に示した通信システムの動作は、図2、図4を用いて上述したとおりである。IEEE803.2(IEEE803.2−2008、IEEE803.2av)では、図2の初期設定を行う状態St2はディスカバリー状態であり、この状態ではディスカバリーGATE等を用いて実施されるディスカバリー処理が行われる。
【0048】
図4の帯域割当ての制御メッセージはGATE、帯域要求メッセージはREPORTが使用される。エラー検査では、LOSとして、Optical LoSまたは/およびMAC LoSが検出される。Optical LoSは、送受信機が光信号を一定期間TLoS_opticalを受信しなかった場合に検出されるエラーである。TLoS_opticalのデフォルトは2msであるが、OLT1とONU10間で制御メッセージを使用することにより、TLoS_opticalを異なる値に変更可能である。MAC(Media Access Control) LOSは、送受信機が所定の期間TLoS_MAC、GATEを受信しなかった場合に検出されるエラーであり、TLoS_MACのデフォルト値は50msに設定されている。TLoS_MACもTLoS_opticalと同様に制御メッセージにより値を変更することが可能である。
【0049】
Optical LoS、MAC LoSは共に、光回線の異常を示す警報であり、ONU10だけでなくOLT1においても同様に警報タイマーを用いて監視され、検出されるものである。また、この通信システムは同期ずれエラーとして、タイムスタンプ・ドリフト・エラー(Timestamp drift error)を検出する。このエラーは、OLT1、ONU10のそれぞれで検出され、OLT1のクロックとONU10のクロックとの差が予め定められたしきい値(guardThresholdONU, guardThresholdOLT)を超えた場合に検出される。OLT1での検出はRTTも考慮される。また、比較対象となるクロックは受信したMPCPDU(Multi-Point Control Protocol Data Unit)信号に含まれるタイムスタンプから取得される。
【0050】
図6はONUのPON制御部11の一例を示した図である。コントローラー11aは、メモリー11fに記憶されたプログラムの命令を読み込み、この命令に従い信号の入出力を行うとともに各構成を制御する。タイマー11bは受信信号に含まれるタイムスタンプに追従しながらローカルタイムを計測し、コントローラー11aに送受信タイミングを判別するための時刻情報を供給する。同期ずれ警報部(第1の警報手段)11cは、ローカルタイムと受信信号のタイムスタンプを比較して同期ずれエラーの有無を監視し、警報をコントローラー11aに通知する。
【0051】
タイマー11eは、受信信号の受信間隔を計測するタイマーであり、例えば、Optical LoS、MAC LoSを検出するために、各信号の受信時間情報を計測する。回線異常警報部(第2の警報手段)11dは、タイマー11eの受信時間情報を基に回線異常を監視し、異常発生を検出した場合に、コントローラー11aに警報を出力する。なお、Optical LoSは光送受信機14が検出し、異常が発生した場合に光送受信機14から警報信号が通知されるようにしてもよい。また、同期ずれ警報部11cおよび回線異常警報部11dの機能はコントローラー11aに内蔵することもできる。
【0052】
次に、図7を参照し制御装置の一例としてPON制御部11の動作を説明する。PON制御部11は、PONインタフェースに組み込まれる制御装置であり、ICチップ化されたプロセッサである(PON制御部2も同様)。図7に記載された処理は、コンピュータで実行可能なプログラムとしてプロセッサ内部または外部接続されたメモリに記憶されている。
【0053】
非登録状態のONU10のPON制御部11は、まず最初にディスカバリー処理を行う(ステップS1)。PON制御部11はOLT1から送信されるディスカバリーGATEにより送信許可が与えられるまで送信を控え、受信処理を続ける。ディスカバリーGATEを受信するとPON制御部11はディスカバリー状態に移行し、制御メッセージを送受信することによりOLT1との間で論理リンクを確立する。ディスカバリー処理によってOLT1から設定情報を入手すると、PON制御部11はこの情報を記憶し、以後、この設定情報に基づいた論理リンクの送受信処理が可能になり、登録状態に移行する。
【0054】
登録状態に移行したPON制御部11は、設定情報に基づきOLT1からの制御メッセージや、その他下りのデータを受信する受信処理を行う(ステップS2)。次に、PON制御部11は、警報タイマーによりLOS検出を行い光回線に異常がないか(例えば、回線の切断等が起きていないか)を検査する(ステップS3、S4)。異常がある場合、ホールドオーバー状態に移行する(ステップS11)。
【0055】
異常がない場合、PON制御部11は受信信号に含まれるタイムスタンプを抽出し、自装置のクロックが示す時刻情報との差異を計算することによりタイムスタンプ・ドリフト・エラーが発生していないかを検査する(ステップS5、S6)。エラーが発生している場合には、PON制御部11は回線の再設定を行うため非登録状態へ移行する(ステップS17)。エラーがない場合には、PON制御部11は抽出したタイムスタンプに自己のクロックを同期させ(ステップS7)、GATEによってOLT1から割当てられた帯域を使用して上りデータを送信する。GATEにはIEEE802.3のGATE descriptionに規定されるように帯域割当情報として、送信を許可する開始時間とその長さが記述されており、さらに、GATEは帯域割当情報を複数持ち、1つのONU10に対して複数の送信帯域を割当てることが可能である。ONU10からのデータ送信は、これらの帯域割当て情報と設定情報に従って行われる。
そして、通信を継続する場合はステップS2に戻り、登録状態での通信を継続する(ステップS10)。
【0056】
設定情報には、例えば以下のような論理リンクの情報がある。
(1)LLID(Logical Link Identification)或いはAssigned Port
LLID或いはAssigned Portは、複数の論理リンクを互いに識別するために付与される識別子であり、論理リンクを使って送信されるフレーム(データ)に付加される。
(2)Sync Time
Sync TimeはOLTの送受信機5-1,5-2が受信を行う際、受信器が信号同期に必要な時間を示す。
(3)Target Laser On Time
(4)Target Laser Off Time
Target Laser On TimeおよびTarget Laser Off Timeは、ONU10の送信機のレーザーが、オンまたはオフするために必要な時間であって、ディスカバリー処理においてONU10から申告された送信機特性を考慮した上でOLTが指定した値である。
【0057】
ステップS4でLOSが検出された場合、PON制御部11はホールドオーバー状態に移行し、同期ずれ警報(タイムドリフト・エラー)の出力抑制と警報タイマーによるLOS検出の抑制を開始する。同時に、PON制御部11は猶予期間であるホールドオーバー期間の計測を開始する(ステップS11)。なお、タイムドリフトエラーの出力抑制は、単に受信処理後にステップS5のような本来実施すべき同期ずれ検査処理を行わないことでも実現可能である。また、PON制御部11はホールドオーバー期間中、記憶した設定情報を破棄せず、論理リンクの切断を猶予する。
【0058】
次に、PON制御部11は受信処理を行う(ステップS12)。ここで受信される情報は、タイムスタンプを含んだGATEである。なお、ホールドオーバー状態ではデータ送信を行わないため、PON制御部11はGATEに対してはREPORTを返送しない。このGATEはONU10のクロックを同期させる目的で送信されるため、タイムスタンプを含んでいればGATE以外の制御メッセージで代用することもできる。
【0059】
PON制御部11はGATEから抽出したタイムスタンプにクロックを同期させ(ステップS13)、使用される回線が現用系から予備系に切り替えられたか否かを判断する(ステップS15)。ここでは、PON制御部11は、OLT1から有効なGATEを受信した場合に切替が完了したと見なして、同期ずれ警報(タイムドリフト・エラー)の出力抑制を解除し(ステップS18)、設定情報を維持したまま登録状態に移行する(ステップS2)。このとき、PON制御部11はホールドオーバー期間の経過時間の計測も中止する。また、PON制御部11はホールドオーバー状態を終了するときに警報タイマーをリセットし、登録状態に戻った直後に、不要なLOS警報が出ないように時間の再設定を行う。
【0060】
登録状態に戻ったPON制御部11は、切替前の状態から持ち越した設定情報を用いて、論理リンクを使用した通信を行う。例えば、受信を行う際、PON制御部11は受信メッセージのAssigned Port(LLID)情報を抽出し、この情報と設定情報と比較し、自装置宛の論理リンクを識別する。また、PON制御部11は送信メッセージには持ち越したAssigned Port情報を挿入し、論理リンクの再設定なしに論理リンクを使用することができる。
【0061】
また、Sync Time、およびTarget Laser On/Off Timeは、OLT1から受信した割当帯域のうち、実際にデータを送信できる帯域を決定するために使用される。すなわち、PON制御部11は、割当帯域からSync Time、およびTarget Laser On/Off Timeを引いた帯域を使って実データを送信する。レーザーをオフする制御をしてから完全に光が消えるまでには短時間ではあるが時間がかかる。ONU10の送信機がTarget Laser Off Timeを超えて残存光の出力を続けた場合、他のONU10の送信信号を妨害してしまう。そのため、OLTはディスカバリー処理で各ONU10の特性を調べ、他のONU10に影響を与えず、安定した通信が維持できるようにレーザーに関係する設定情報をONU10に通知する。ホールドオーバー状態によって、設定情報の廃棄を防ぐことに成功したPON制御部11は、維持したTarget Laser On/Off Timeを用いて、送信帯域を決定しデータを送信する。
【0062】
また、Sync Timeが適切でない場合、OLT1の受信時にビット同期に問題が生じデータを正常に再生できないため、ONUのPON制御部11はSync Timeを考慮して、同期に必要な信号を確保し送信信号を出力する。
【0063】
このような、設定情報のネゴシエーションを含むディスカバリー処理には、ONU10とOLT1間で何度もメッセージを交換するため時間がかかる。この適用例のPON制御部11では物理回線切替後の同期問題をホールドオーバー状態によって調整し、設定情報の再設定を省略することができる。
【0064】
一方、切替が完了していない場合、PON制御部11はホールドオーバー期間が満了したかを調べ、満了していない場合にはステップS12に戻り、受信処理を継続する。なお、ステップS12、S13は受信データがない場合には上述の処理が実行されず、PON制御部11は次のステップS15に移行して、信号を受信するか、或いは、ホールドオーバー期間が満了するまで同じ処理を繰り返す。
【0065】
ホールドオーバー期間が満了した場合、PON制御部11は、切替が正常に行われなかったか、他の原因による故障と判断して非登録状態に移行する(ステップS17)。非登録状態に移行すると、論理リンクは切断され、設定情報も廃棄され無効になる。
【0066】
以上、IEEE803.2に規定される通信プロトコルを用いた通信システムへの実施の形態への適用例を説明した。IEEE803.2では、ディスカバリーは所定間隔で行われるものの毎周期実施される訳ではないため、通信回線30の切替時にONU10が非登録状態になると、ディスカバリー処理が完了するまでONU10は中断した通信を再開することができない。これに対し、この適用例によれば、上述のように効果的に通信の早期再開を実現することができる。
【0067】
・実施の形態2
【0068】
次に回線切替時の不安定さに対する耐性を向上させ、より確実に通信の早期再開を実現することができる実施の形態をIEEE803.2への適用例を用いて説明する。
【0069】
図8は、この実施の形態による通信システムの通信シーケンスを示している。図8において図4と同一の符号は同一または相当の部分を表わしている。現用系の通信回線で通信障害が発生すると通信が不安定になり、下り信号がONU10へ届いたり届かなかったりする。また、ONU10の障害検出タイミングとOLT1の障害検出タイミングは必ずしも一致しないため、ホールドオーバー状態のONU10で切替前のwOLTからのGATEが到達する可能性がある。
【0070】
図4に示された通信シーケンスでは、ホールドオーバー状態のONU10がGATEを受信した場合(P9)、ホールドオーバー状態から登録状態に移行する(P10)。しかし、上述のようにホールドオーバー状態のONU10に切替前のwOLTが送信したGATEが到達すると(図8・P20参照)、図4の通信シーケンスではONU10が登録状態に戻ってしまうため、もし回線切替後のOLTが送信するGATEを受信すると、ONU10はタイムスタンプ・ドリフト・エラーを検出してしまう。
【0071】
そこで、図8の通信シーケンスでは、ホールドオーバー期間中に切替前のwOLTからのGATEを受信しても、ONU10はホールドオーバー完了メッセージ(P21)を受信するまで(P10)、ホールドオーバー状態を維持する。
【0072】
ONU10は回線異常を検出すると(P4)、ホールドオーバー状態に移行する(P5)。このとき、wOLTが回線異常を検出していないとGATEを送信してしまう(P20)。ONU10はこのGATEを受信すると、制御メッセージの種類を識別してホールドオーバー状態を維持する。一方、wOLTは、ONU10からの上り信号が途絶えLOS等の回線異常を検出し(P6)、通信回線の切替を行う(P7)。切替が完了するとbOLTが新たなwOLTとして通信制御を開始し、タイムスタンプを含むGATEを送信する(P8)。続いて、bOLTの送受信機5-2は、制御メッセージを送信し、ホールドオーバー状態の完了をONU10に指示する(P21)。この制御メッセージ(指示メッセージ)の送信は、複数のONU10に宛てた拡張MPCP(Multi-Point Control Protocol)メッセージを用いたマルチキャスト送信であってもよいし、各ONU10に宛てた拡張OAM(Operation Administration and Maintenance)メッセージを用いたユニキャスト送信であってもよい。
【0073】
ONU10はGATEに基づき同期処理を行い(P9)、ホールドオーバー完了(Holdover_complete)の制御メッセージを受信するとメッセージの種類を識別し、ホールドオーバー状態を終了する。このシーケンスに基づけば、2回目のGATEとして、切替直後のOLTからGATEを受信したとしても、タイムスタンプ・ドリフト・エラーは有効に抑制されているので、ONU10は論理リンクを維持して、早期に通信を再開できる。
【0074】
図9は、PON制御部11が実行する制御を示しており、図7と同一の符号は同一または相当の処理を示している。ホールドオーバー状態であるとき、PON制御部11はステップS14で制御メッセージから制御メッセージの種別情報を抽出し、その種別を識別する。種別がホールドオーバー完了である場合、ステップS18の処理に移行し登録状態に復帰する(ステップS15a)。一方、種別がホールドオーバー完了でない場合には、ステップS16の処理に移行しホールドオーバー状態を継続する。
【0075】
・実施の形態3
【0076】
次に、早期に猶予状態(ホールドオーバー状態)に移行することによって、回線切替に要する時間を短縮できる実施の形態をIEEE803.2への適用例を用いて説明する。
【0077】
図10は、この実施の形態の通信シーケンスを示しており、図8と同一の符号は同一又は相当の部分を示している。冗長化されたプロテクションシステムで、現用系の装置の保守のため、素早く回線切替処理を行いたい場合がある。例えば、送受信機5-1,5-2やPON制御部2-1,2-2を搭載したPONインタフェース基板を交換したい場合などである。上述の通信システムでも現用系のPONインタフェースをシャットダウンすることにより、ONU10が回線異常を検出するため、ONU10がホールドオーバー状態を利用して通信を再開することができるが、例えば、下り信号を切ってからLOS検出まで一定期間TLOSが経過するまで、ONU10はホールドオーバー状態に移行しない。そのため、切替完了までに一定の時間が必要である。
【0078】
そこで、wOLTのPON制御部2-1はユーザが入力した指示信号を受信すると、ONU10を強制的にホールドオーバー状態に移行させるため、ホールドオーバー開始(Holdover_start)を指示する制御メッセージを各ONU10に送信する(P22)。この制御メッセージ(移行メッセージ)の送信は、複数のONU10に宛てた拡張MPCP(Multi-Point Control Protocol)メッセージを用いたマルチキャスト送信であってもよいし、各ONU10に宛てた拡張OAM(Operation Administration and Maintenance)メッセージを用いたユニキャスト送信であってもよい。ONU10はこの制御メッセージを受信すると回線異常を検出しなくても、ホールドオーバー状態に移行する(P5)。図8と図10を比較すると、図8では、ONU10が一定期間TLoS経過後にホールドオーバー状態に移行しているのに対し、図10では一定期間TLoS経過する前に、早期にホールドオーバー状態に移行できていることが分かる。
【0079】
また、bOLTも回線異常の検出を待たず、wOLTからの通知またはユーザーが入力した指示信号を受信することにより、早期に現用系としての動作を開始できるため、短時間で切替処理を完了することができる。なお、指示信号の送信は、現用系の送受信機5-1によって行われる。この通知方法には、ONU10においてタイムスタンプ・ドリフト・エラーが発生し中断時間が長くなることを予防する効果がある。
【0080】
図11はONU10のPON制御部11の処理を示すフローチャートであり、図9と同一の符号は同一又は相当の処理を示している。登録状態において、PON制御部11は受信した制御メッセージから種別情報を抽出し、このメッセージの種別を識別する(ステップS8)。識別した種別がホールドオーバー開始であった場合(ステップS9)、PON制御部11はステップS11の処理を開始し、ホールドオーバー状態に移行する。一方、種別がホールドオーバー開始でない場合には、PON制御部11は登録状態を維持し、送信等の処理を継続する。
【0081】
図12は、OLTのPON制御部2が実行する処理を示すフローチャートである。PON制御部2は起動すると、自装置の動作が現用系であるか予備系であるかを判断する(ステップS21)。モードが現用系でない場合、ステップS36の処理に移行し、モードの切り替えがあるまで予備系のPON制御部2として待機する。
【0082】
・現用系での動作(通常時)
動作モードが現用系である場合、ディスカバリー処理を開始する(ステップS22)。ディスカバリー処理による論理リンクの確立とONU10の登録が完了すると、PON制御部2は通信回路の強制切替事由が発生していないかを判断する(ステップS23)。強制切替事由は、例えば、前述のユーザの意向による強制切替であり、PON制御部2に接続された外部入力装置から、或いは、ネットワーク経由で指示信号を受信している場合に、PON制御部2は強制切替が必要と判断する。強制切替事由がなければ、PON制御部2は回線異常の検出を行う(ステップS24)。
【0083】
回線異常がない場合、PON制御部2はGATEを用いて各ONU10に帯域割当情報を通知し(ステップS25)、各ONU10からREPORTを受信する(ステップS26)。次に、PON制御部2はREPORTに含まれるタイムスタンプに基づき、各ONUのRTTを算出し(ステップS27)、REPORTの要求帯域情報とRTTに基づき、各ONU10に割当てる送信帯域を決定する(ステップS28)。また、これらの処理と並行してPON制御部2は現在の帯域更新周期のデータの送受信を行う(ステップS29)。次に、PON制御部2はディスカバリー処理が必要かを判断し(ステップS30)、必要ない場合にはステップS23に、必要な場合にはステップS21に戻る。新規に接続されたONU10や、起動したONU10を発見するため、ディスカバリー処理は定期的に実行される。また、OLTをシャットダウンする必要があるときは、ここで処理を終了する。
【0084】
・現用系での動作(切替動作時)
ステップS23で強制切替が必要と判断した場合、PON制御部2は猶予状態開始通知(ホールドオーバー開始通知)を送信し(ステップS31)、ステップS33の処理に移行する。また、ステップS24で回線異常を検出した場合には、PON制御部2はステップS32の警報出力処理を行う。次に、PON制御部2は各ONU10の設定情報をbOLTへ送信する(ステップS33)。なお、設定情報が既にbOLTと共有されている場合には、PON制御部2は改めてこの情報を送信しなくともよい。
【0085】
続いて、PON制御部2は回線切替処理(プロテクション切替処理)を実行する(ステップS34)。PON制御部2は回線切替を行う際、bOLTへ切替指示信号を送信し、ONU10への制御メッセージの送信を停止する(ステップS35)。回線切替処理が終了するとPON制御部2は、以降、動作モード情報を「予備系」に書き換え、ステップS21に戻って、予備系のPON制御部2としての動作を開始する。なお、回線異常が回復不能な異常であったり、強制切替時など自装置をシャットダウンする必要があるときは、予備系としての動作に移行せず、自装置のシャットダウンを行って処理を終了する。
【0086】
・予備系での動作
次に動作モードが予備系であるときのPON制御部2の動作を説明する。ステップS36にて、PON制御部2は回線切替が必要かを監視し、回線切替が必要となるまで待機する。PON制御部2は、wOLTから切替指示信号を受信したときや、wOLTの動作を監視して異常があると判断したときなどに回線切替を実行する。切替を行う際、bOLTのPON制御部2は、切替を行うことを通知する信号をwOLTおよび切替器8に送信する。この切替指示信号を受け取った切替器8は、以降、ネットワークとの接続をbOLT側に切り替える。
【0087】
続いて、PON制御部2はwOLTから設定情報を取得し(ステップS37)、この設定情報を用いて各ONU10へタイムスタンプを含むGATEを送信する(ステップS38)。なお、PONプロテクションシステムでは、スプリッタ40がONU10からの上り信号を、現用系および予備系の回線30-1,30-2の双方に中継する。そのため、bOLTのPON制御部2は、予備系として動作している場合であってもONU10からの信号を受信することができる。そのため、ステップS36で待機状態にあるときに、上り信号に含まれる設定情報を常に監視して予め設定情報を入手するようにしても構わない。
【0088】
ホールドオーバー期間中のONU10は、上り信号を送信しないため、GATEに対するREPORTは送られてこない。従って、PON制御部2はREPORTの受信を待たずに、ホールドオーバー完了を指示する制御メッセージを送信することができる(ステップS39)。なお、1つの制御メッセージでGATEとホールドオーバー完了を通知することも可能である。また、同期をとるための制御メッセージはGATE以外を使用することも可能である。
【0089】
ホールドオーバー完了通知を送信したPON制御部2は、動作モード情報を現用系に書き換えて、以降、現用系のPON制御部2として動作する(ステップS40)。回線切替後に現用系としての動作を開始する場合には、PON制御部2はwOLTから引き継いだ設定情報を使用して通信を再開するので、ディスカバリー処理(ステップS22)を省略することができる。そのため、通信の中断時間が短くなる。
【0090】
なお、この実施の形態において、実施の形態1のようにホールドオーバー完了の制御メッセージを用いないで、ホールドオーバー状態を終了するようにしてもよい。
【0091】
この実施の形態3によれば、エラー検出期間満了を待たずに猶予期間への移行が可能であるため、瞬間的に回線切替を行うことができ、通信の中断が利用者に違和感を与える事態を抑制できる。音声通信を行っている場合など、リアルタイム性を要求される通信では回線の瞬断や信号の到達遅延が問題になるが、この実施の形態ではこの問題を改善することができる。
【0092】
また、回線切替が必要な際に、親局が子局に対しいきなり通信経路の異なる回線を使って信号を送信すると、子局が同期ずれ警報を検出し、通信の再設定が必要になってしまう。その結果、中断時間が長くなってしまうが、この実施の形態では、同期ずれの検出猶予時間をもうけ、切替時に、子局はこの検出猶予期間に素早く移行し、同期をとってから、通信を再開するため、早期に通信を再開することができる。
【0093】
以上、この発明の実施の形態について説明した。この発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、この発明の主旨に包含されるかぎりどのような変形が行われてもよい。例えば、この通信方法が適用される通信システムは、PONシステムである必要はなく。アクティブ素子を用いた光通信システムにも適用することができる。また、光通信に限らず、端末間を電気信号を用いて通信する通信システムに適用することも可能である。
【0094】
図12に示されるOLTのPON制御部2の処理は、実施の形態1または2にも適用できる。実施の形態2の場合、ホールドオーバー開始通知を実施しなくともよいため、ステップS31は省略可能である。実施の形態1の場合、ホールドオーバー開始通知に加えてホールドオーバー完了通知を実施しなくともよいため、ステップS31およびS39は省略可能である。また、OLTのPON制御部2(PONプロセッサ)はコンピュータで実行可能なプログラムを用いて処理を実行することが可能であるため、図12の処理はコンピュータプログラムを用いて記述することができる。
【0095】
なお、上述の実施の形態1〜3では、図1に示されるように親局の制御装置2-1、2-2が送受信機5-1,5-2に対応して複数設けられているが、制御装置2は図13に示されるように1つの装置であってもよい。この場合、制御装置2-1、2-2間の設定情報の受け渡し、および、切替器8は不要になる。
【0096】
実施の形態では、汎用的な通信システムだけでなく、IEEE802.3への適用例についても説明されているが、本発明はこれに限定されず、他のプロトコルを使用する通信システムにでも実施可能である。
また、子局10と分岐手段(スプリッタ)40との間の回線を冗長回線で接続することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0097】
この発明は、通信回線を冗長化した通信システムとその通信回線の切替方法に適している。
【符号の説明】
【0098】
1 通信装置、2−1,2−2 制御装置(PON制御部)、3,13 受信バッファ、4,12 送信バッファ、5−1,5−2,14 光送受信機(送受信機)、6,15 WDM、7,16−1,16−2 PHY、10−1〜10−3 通信装置、11 PON制御部、11a コントローラー、11b,11e タイマー、11c 同期ずれ警報部、11d 回線異常警報部、11f メモリー、20−1,20−2 端末、30−1,30−2 通信回線、31 加入者線、40 スプリッタ、51,142,161−1,161−2 Rx、52,141,162−1,162−2 Tx。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親局装置と光信号を分岐するスプリッタとの間が冗長化された複数の物理回線で接続され、前記スプリッタを介して前記親局装置と通信する子局装置であって、
論理リンクを用いた伝送信号を送受信する送受信機と、
通信可能な子局装置として前記親局装置に登録された登録状態において、ホールドオーバー状態への移行を指示する移行メッセージを前記送受信機を介して受信すると、下り信号の受信を行うとともに上り信号の送信を抑制するホールドオーバー状態に移行する制御部と、
を備えた子局装置。
【請求項2】
前記ホールドオーバー状態において、前記送受信機が時刻情報を受信すると、
前記制御部は、受信した前記時刻情報に自装置で計測しているローカルタイムを同期させるとともに、前記ホールドオーバー状態から前記登録状態に移行する
ことを特徴とする請求項1に記載の子局装置。
【請求項3】
前記ホールドオーバー状態において、前記送受信機が前記ホールドオーバー状態の終了を指示する終了メッセージを受信すると、
前記制御部は、前記ホールドオーバー状態から前記登録状態に移行する
ことを特徴とする請求項1に記載の子局装置。
【請求項4】
前記移行メッセージは、前記複数の子局装置宛ての拡張MPCP(Multi-Point Control Protocol)メッセージ、または、前記子局装置それぞれを宛先とした複数の拡張OAM(Operation Administration and Maintenance)メッセージである
ことを特徴とする請求項1に記載の子局装置。
【請求項5】
前記終了メッセージは、前記複数の子局装置宛ての拡張MPCP(Multi-Point Control Protocol)メッセージ、または、前記子局装置それぞれを宛先とした複数の拡張OAM(Operation Administration and Maintenance)メッセージである
ことを特徴とする請求項3に記載の子局装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記ホールドオーバー状態において予め定められた期間が終了した場合、非登録状態に移行して、前記登録状態に復帰するための初期設定を行う
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の子局装置。
【請求項7】
ローカルタイムを計測するタイマを備え、
前記制御部は、
前記送受信機で受信された伝送信号の時刻情報と前記ローカルタイムとの差異に基づき同期ずれエラーを検出すると前記非登録状態に移行する一方、前記ホールドオーバー状態においては前記同期ずれエラーによる前記非登録状態への移行を抑制する
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の子局装置。
【請求項8】
ローカルタイムを計測するタイマを備え、
前記制御部は、
前記送受信機で受信された伝送信号の時刻情報と前記ローカルタイムとの差異に基づき同期ずれエラーを検出すると前記非登録状態に移行する一方、前記ホールドオーバー状態においては前記同期ずれエラーの検出を抑制する
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の子局装置。
【請求項9】
冗長化された複数の物理回線とこれらの物理回線の信号を複数の信号線に分岐させるスプリッタを介して複数の子局装置と通信を行う親局装置であって、
複数の前記物理回線のそれぞれに接続された複数の送受信機と、
前記複数の送受信機のうち、通信に使用する送受信機を現用の送受信機から予備の送受信機に切り替えるプロテクション切替を行う場合には、下り信号の受信を行うとともに上り信号の送信を抑制するホールドオーバー状態への移行を指示する移行メッセージを前記送受信器を介して複数の前記子局装置に送信した後に、前記プロテクション切替を行う制御部と、
を備えた親局装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記プロテクション切替の後に、前記ホールドオーバー状態の終了を指示する終了メッセージを前記送受信機を介して前記子局装置に送信する
ことを特徴とする請求項9に記載の親局装置。
【請求項11】
冗長化された複数の物理回線を介して、親局装置と子局装置とが接続された光通信システムの通信回線切替方法であって、
前記親局装置が、前記子局装置を通信可能な子局装置として登録するディスカバリーステップと、
前記親局装置が、通信に使用する送受信機を現用の送受信機から予備の送受信機に切り替えるプロテクション切替を行う場合には、下り信号の受信を行うとともに上り信号の送信を抑制するホールドオーバー状態への移行を指示する移行メッセージを登録された前記子局装置に対して送信した後に、現用系の前記物理回線から予備系の前記物理回線に切り替える切替ステップと、
登録された前記子局装置が、前記移行メッセージを受信すると、予め定められた期間中は下り信号の受信を行うとともに上り信号の送信を抑制するホールドオーバー状態に移行するホールドオーバーステップと、
を備えた通信回線切替方法。
【請求項12】
前記親局装置が、前記切替ステップの後に、前記ホールドオーバー状態の終了を指示する終了メッセージを前記子局装置に送信するステップと、
前記子局装置が、前記ホールドオーバー状態において前記終了メッセージを受信すると、前記ホールドオーバー状態から前記登録状態に移行するステップと、
を備えた請求項11に記載の通信回線切替方法。
【請求項13】
IEEE802.3規格によるメディアアクセス制御を使用し、親局装置と子局装置とが冗長化された複数の物理回線とスプリッタを介して通信を行う通信システムであって、
前記親局装置は、通信に使用する送受信機を現用の送受信機から予備の送受信機に切り替えるプロテクション切替を行う場合には、下り信号の受信を行うとともに上り信号の送信を抑制するホールドオーバー状態への移行を指示する移行メッセージを前記子局装置に送信した後に、前記プロテクション切替を行い、
前記子局装置は、前記移行メッセージを受信すると、予め定められた期間中は下り信号の受信を行うとともに上り信号の送信を抑制するホールドオーバー状態に移行する
ことを特徴とする通信システム。
【請求項14】
前記親局装置は、前記プロテクション切替の後に、前記ホールドオーバー状態の終了を指示する終了メッセージを前記子局装置に送信し、
前記子局装置は、前記ホールドオーバー状態において前記終了メッセージを受信すると、前記ホールドオーバー状態から前記登録状態に移行する
ことを特徴とする請求項13に記載の通信システム。
【請求項15】
親局装置と光信号を分岐するスプリッタとの間が冗長化された複数の物理回線で接続され、前記スプリッタを介して前記親局装置と通信する子局装置の制御装置であって、
当該基地局が通信可能な子局装置として前記親局装置に登録された登録状態において、ホールドオーバー状態への移行を指示する移行メッセージを受信すると、予め定められた期間中は下り信号の受信を行うとともに上り信号の送信を抑制するホールドオーバー状態に移行する
ことを特徴とする制御装置。
【請求項16】
前記ホールドオーバー状態において前記ホールドオーバー状態の終了を指示する終了メッセージを受信すると、前記ホールドオーバー状態から前記登録状態に移行する
ことを特徴とする請求項15に記載の制御装置。
【請求項17】
冗長化された複数の物理回線とこれらの物理回線の信号を複数の信号線に分岐させるスプリッタを介して複数の子局装置と通信を行う親局装置の制御装置であって、
通信に使用する送受信機を現用の送受信機から予備の送受信機に切り替えるプロテクション切替を行う場合には、下り信号の受信を行うとともに上り信号の送信を抑制するホールドオーバー状態への移行を指示する移行メッセージを複数の前記子局装置に送信した後に、前記プロテクション切替を行う
ことを特徴とする制御装置。
【請求項18】
前記プロテクション切替の後に、前記ホールドオーバー状態の終了を指示する終了メッセージを前記子局装置に送信する
ことを特徴とする請求項17に記載の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−110772(P2013−110772A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−51656(P2013−51656)
【出願日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【分割の表示】特願2012−545537(P2012−545537)の分割
【原出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】