説明

孔版印刷装置

【課題】用紙搬送ジャムの発生を防止して良好な用紙搬送を行うことが可能な用紙先端保持部材を備え、良好な両面印刷物を継続して得ることが可能な孔版印刷装置を提供する。
【解決手段】印刷部2と、排紙部5と、用紙Pを一時的に貯容した後に印刷部2に向けて再給紙する再給紙手段6と、印刷部2を通過した用紙Pを排紙部5または再給紙手段6に案内する切替部材7とを有し、表面印刷工程を行った後に用紙Pを印刷部2に再給紙して裏面印刷工程を行う両面印刷が可能であり、再給紙手段6が、用紙Pを一時的に貯容する補助トレイ16と、印刷部2から送り出された用紙Pの先端を印刷部2近傍で保持し補助トレイ16の用紙搬送方向下流側端部近傍で開放する補助トレイ16の上方において往復移動自在な用紙先端保持部材20とを有する孔版印刷装置1において、用紙先端保持部材20に用紙P先端の保持力を増大させる保持力増大手段を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再給紙手段を有し両面印刷を行うことが可能な孔版印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、簡便な印刷方法としてデジタル式感熱孔版印刷が知られている。これは、熱可塑性樹脂フィルムと多孔性支持体とを貼り合わせたマスタに微細な発熱素子を複数有するサーマルヘッドを接触させ、この発熱素子に対しパルス的に通電を行いながらマスタをプラテンローラ等の搬送手段で搬送することにより、マスタの熱可塑性樹脂フィルムに画像情報に基づいた穿孔画像を熱溶融穿孔製版した後、この穿孔製版されたマスタを多孔性円筒状の版胴に巻装させ、プレスローラ等の押圧手段によって用紙を版胴外周面に押圧させることで版胴内周面に供給されたインキを版胴開孔部及びマスタ穿孔部から滲出させ、このインキを用紙に転移させることにより用紙上に印刷画像を得るものである。
【0003】
上述した孔版印刷において、最近では用紙の消費量及び書類の保管スペースを低減させるため等の目的から用紙の両面に印刷を行う両面印刷が頻繁に行われるようになってきている。この一例として、版胴の回転方向に第1製版画像と第2製版画像とが2面並んだ分割製版済みマスタを用い、給紙部より給紙された1枚目の用紙の表面に一方の製版画像を印刷した後にこの用紙を再給紙手段に案内し、給紙部より給送された2枚目の用紙の表面に一方の製版画像を印刷した後にこの用紙を再給紙手段に案内すると共に、再給紙手段より1枚目の用紙を再給紙してこの裏面に他方の製版画像を印刷してこの用紙を排紙トレイに排出し、この動作を連続して行うことにより1工程で両面印刷物を得る孔版印刷装置が、例えば「特許文献1」に開示されている。
【0004】
この孔版印刷装置では、1枚目の用紙と2枚目の用紙とが接触することにより擦れ汚れ及び用紙搬送ジャムが発生することを防止するため、一方の面に印刷画像が形成された用紙を一時的に貯容する補助トレイの上方に配設され、印刷部から送り出された用紙の先端を印刷部近傍の第1の位置で保持し、補助トレイの後部上方であって印刷部より送り出される第1の位置よりも低位置である第2の位置で用紙の先端を開放する用紙先端保持部材を有する構成を採用している。
【0005】
【特許文献1】特開2003−12576号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
「特許文献1」に開示された孔版印刷装置では、用紙先端保持部材が第1の位置と第2の位置との間を往復移動するが、例えば版胴の直径が200mmで印刷速度が最高速度の場合には用紙先端保持部材の往復動速度は1300mm/sec程度となる。このため高速移動が必要であることから用紙先端保持部材の軽量化が必須となり、用紙先端保持部材としては堅牢な構成は採用できず、用紙先端を保持する保持部材の保持力も強く設定することは困難であった。このことから印刷枚数が増加してくると用紙と高速で接触する保持部材に摩耗が生じ、これが増大すると用紙を保持する保持力が不足してしまい、用紙が途中で抜けたり移動中に用紙がずれたりして用紙先端保持部材による用紙の搬送が不安定となり、用紙搬送ジャムが発生してしまうという問題点がある。
【0007】
本発明は上述した問題点を解決し、用紙搬送ジャムの発生を防止して良好な用紙搬送を行うことが可能な用紙先端保持部材を備え、良好な両面印刷物を継続して得ることが可能な孔版印刷装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、版胴を有する印刷部と、前記印刷部において印刷がなされた用紙を排出する排紙部と、前記印刷部においてその一方の面に印刷画像を形成された用紙を一時的に貯容した後に前記印刷部に向けて再給紙する再給紙手段と、前記印刷部を通過した用紙を前記排紙部に案内する第1の態位または前記再給紙手段に案内する第2の態位を選択的に占める変位可能な切替部材とを有し、用紙の一方の面に表面画像を印刷する表面印刷工程を行った後に該用紙を前記再給紙手段に送り、前記用紙を前記再給紙手段から前記印刷部に再給紙して前記用紙の他方の面に裏面画像を印刷する裏面印刷工程を行う両面印刷が可能であり、前記再給紙手段は、一方の面に印刷画像が形成された用紙を一時的に貯容する補助トレイと、前記印刷部から送り出された用紙の先端を前記印刷部近傍の第1の位置で保持し前記補助トレイの用紙搬送方向下流側端部近傍に位置する第2の位置で前記先端を開放する前記補助トレイの上方において往復移動自在な用紙先端保持部材とを有する孔版印刷装置において、前記用紙先端保持部材は前記先端の保持力を増大させる保持力増大手段を有することを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の孔版印刷装置において、さらに前記保持力増大手段は、前記先端に接触して前記先端を保持する回転自在な保持部と、前記保持部の用紙搬送方向とは逆方向への回転を規制する回転規制部材とを有することを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の孔版印刷装置において、さらに前記保持部はその表面に高摩擦抵抗部材を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、用紙の先端が用紙先端保持部材に保持された際に、保持力増大手段により用紙の先端を保持する保持力が増大されるので、用紙先端保持部材による用紙の搬送中に用紙が途中で抜けたり移動中にずれたりしてしまうことを防止でき、用紙先端保持部材による用紙の搬送が安定となり用紙搬送ジャムの発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明の一実施形態を採用した孔版印刷装置を示している。この孔版印刷装置は、特開2003−12576号に開示された両面印刷装置と関連した構成を有しているので、各部位の説明をできるだけ省略する。
【0013】
図1において孔版印刷装置1は、印刷部2、製版部3、給紙部4、図示しない排版部、排紙部5、図示しない画像読取部、再給紙手段6、切替部材7等を有している。
【0014】
図示しない装置本体のほぼ中央に配置された印刷部2は、版胴8とプレスローラ9とを有している。版胴8は図示しない装置本体に回転自在に支持されており、図示しない版胴駆動手段によって回転駆動される。版胴8は、その内部にインキローラ10及びドクターローラ11等を有するインキ供給手段12を有しており、その外周面にはクランパ13が開閉自在に設けられている。両面印刷時において、版胴8の外周面には製版部3で製版された分割製版済みマスタが巻装される。
【0015】
版胴8の下方にはプレスローラ9が配設されている。フッ素樹脂等の撥水性を有する弾性体からなるプレスローラ9はアーム部材14にその両端を回転自在に支持されており、アーム部材14は図示しない揺動手段によって揺動自在に支持されている。プレスローラ9は、その周面が版胴8より離間する図1に示す離間位置と、その周面が版胴8に圧接する図2に示す圧接位置とを選択的に占める。プレスローラ9の周面近傍には、図示しない駆動手段によって回転駆動されプレスローラ9の周面をクリーニングする図示しないクリーニングローラが配設されている。
【0016】
プレスローラ9の右方近傍には再給紙手段6から送られた表面印刷済みの用紙Pをプレスローラ9の周面に沿わせて搬送するための再給紙案内部材15が配設されており、プレスローラ9の下方には補助トレイ16上に貯留された用紙Pをプレスローラ9の周面に接触させて送り出す再給紙レジストローラ17が配設されている。プレスローラ9の左下方には上面に補助トレイ16を有する再給紙搬送ユニット18が配設されており、これには再給紙位置決め部材19が一体的に設けられている。再給紙搬送ユニット18の上方には、補助トレイ16の上面上を移動自在な用紙先端保持部材としての用紙受け板20が配設されており、用紙受け板20には用紙Pの先端を保持するストッパ21が設けられている。これら補助トレイ16、再給紙案内部材15、再給紙レジストローラ17、再給紙位置決め部材19、再給紙搬送ユニット18及び用紙受け板20によって再給紙手段6が構成されている。
【0017】
版胴8とプレスローラ9との接触位置の左方であって、用紙Pの搬送経路上には切替部材7が配設されている。切替部材7はその用紙搬送方向下流側端部を図示しない装置本体に回動自在に支持されており、図示しない揺動手段によって変位される。切替部材7は、図1に示す第1の態位と、図2に示す第1の態位より用紙Pの搬送経路に対して上方に変位した第2の態位とを選択的に占める。版胴8とプレスローラ9との間を通過した用紙Pは、切替部材7が第1の態位を占めているときに排紙部5へと案内され、切替部材7が第2の態位を占めているときに再給紙手段6へと案内される。
【0018】
印刷部2の左上方には製版部3が配設されている。製版部3は、マスタ22をロール状に巻成したマスタロールを保持する図示しないマスタ保持部材、プラテンローラ23、サーマルヘッド24、マスタ切断手段25、マスタ搬送ローラ対26等を有する周知の構成であり、両面印刷時において製版部3では分割製版済みマスタが作成される。
【0019】
印刷部2の右方には給紙部4が配設されている。給紙部4は、用紙Pを積載する図示しない給紙トレイ、給紙トレイ上の用紙Pを給送する図示しない給紙ローラ及び分離ローラ対、給紙トレイ上より給送された用紙Pを所定のタイミングで印刷部2に向けて給送するレジストローラ対27等を有する周知の構成である。
【0020】
印刷部2の右上方に配設された図示しない排版部も、上排版部材、下排版部材、排版ボックス、圧縮板等を有する周知の構成であり、使用済みの分割製版済みマスタを版胴8の外周面より剥離して排版ボックスの内部に廃棄する。
【0021】
印刷部2の左方には排紙部5が配設されている。排紙部5は、剥離爪28、排紙搬送ユニット29、排紙トレイ30、剥離ファン31等を有している。剥離爪28は図示しない揺動手段によってその先端部が版胴8の外周面に対して近接・離間自在に設けられており、近接位置を占めた際に版胴8の外周面上より用紙Pを剥離する。排紙搬送ユニット29は、駆動ローラ、従動ローラ、無端ベルト、図示しない吸引ファン等を有しており、無端ベルトの上面に印刷済みの用紙Pを吸引しつつ図1において左方へと搬送する。排紙トレイ30は1つのエンドフェンスと図示しない一対のサイドフェンスとを有しており、その上面に印刷済みの用紙Pを積載する。剥離ファン31は剥離爪28の上方に配設されており、版胴8の外周面に向けて送風を行うことにより版胴8の外周面上から剥離される用紙Pの先端をそれぞれ送風によって浮き上がらせる。
【0022】
装置本体の上部には図示しない画像読取部が配設されている。この画像読取部は、図示しないコンタクトガラス、コンタクトガラスに対して接離自在に設けられた図示しない圧板、原稿画像を走査して読み取るそれぞれ図示しない反射ミラー及び蛍光灯、走査された画像を集束する図示しないレンズ、集束された画像を処理する図示しない画像センサ等を有している。
【0023】
上述した孔版印刷装置1では、図示しない画像読取部に原稿がセットされ図示しない製版スタートキーが押下されることにより、図示しない排版部が作動して排版動作が行われた後に製版部3が作動して製版動作が行われ、版胴8に製版済みマスタが巻装されて片面印刷待機状態となる。その後、印刷枚数が置数された後に図示しない印刷スタートキーが押下されることにより、給紙部4より用紙Pが連続的に給送されて片面印刷動作が行われる。置数された印刷枚数に達すると片面印刷動作が完了して孔版印刷装置1は再び片面印刷待機状態となる。
【0024】
また、図示しない画像読取部に原稿がセットされ図示しない両面印刷キーが押下された後に図示しない製版スタートキーが押下されることにより、図示しない排版部が作動して排版動作が行われた後に製版部3が作動して製版動作が行われ、版胴8に分割製版済みマスタが巻装されて両面印刷待機状態となる。その後、印刷枚数が置数された後に図示しない印刷スタートキーが押下されることにより、給紙部4より用紙Pが連続的に給送されて両面印刷が行われる。以下に両面印刷動作を説明する。
【0025】
版胴8が所定の角度まで回転して分割製版済みマスタの第1製版画像がプレスローラ9と対応する所定位置を占めると、プレスローラ9が圧接位置を占めることにより用紙Pが版胴8上の分割製版済みマスタの第1製版画像に圧接され、その一方の面に表面画像を転写される。表面印刷済み用紙となった用紙Pは、剥離爪28及び剥離ファン31からの風によって版胴8の外周面より剥離され、第2の態位を占めている切替部材7に案内されて再給紙搬送ユニット18へと送られる。送られた用紙Pはその先端を用紙受け板20によって受け止められ、ストッパ21によりその先端を保持された後に後端側から補助トレイ16上に載置される。載置された用紙Pは再給紙搬送ユニット18によって右方へと搬送され、その先端を再給紙位置決め部材19に当接させた状態で一時停止される。
【0026】
1枚目の用紙Pが再給紙手段6に案内されている間も版胴8は回転を継続しており、給紙部4からは1枚目の用紙Pと同じタイミングで2枚目の用紙Pが給送される。給送された2枚目の用紙Pは1枚目の用紙Pと同様にプレスローラ9によってその一方の面に表面画像を転写された後、第2の態位を占めている切替部材7に案内されて用紙受け板20に受け止められた後に補助トレイ16上へと送られる。給紙部4から2枚目の用紙Pが給送された後、版胴8上に巻装された分割製版済みマスタの第2製版画像がプレスローラ9と対応する位置に到達するよりもやや早いタイミングで再給紙レジストローラ17が作動し、補助トレイ16上に貯留されている1枚目の用紙Pがプレスローラ9の周面に圧接される。プレスローラ9の周面に圧接された1枚目の用紙Pは、版胴8に圧接して従動回転しているプレスローラ9の回転力によって版胴8との当接部に向けて搬送され、分割製版済みマスタの第2製版画像に圧接されることによりその他方の面に裏面画像を転写される。
【0027】
裏面画像を転写されて両面印刷済み用紙となった1枚目の用紙Pは、剥離ファン31からの送風によってその先端部を浮き上げられた後に剥離爪28の先端によって版胴8の外周面より剥離され、第1の態位を占めた切替部材7によって排紙部5へと案内される。排紙搬送ユニット29へと送られた印刷済みの用紙Pは、排紙搬送ユニット29により左方へと搬送されて排紙トレイ30上に排出積載される。以下、上述の動作が設定された印刷枚数を消化するまで繰り返され、設定された枚数の両面印刷動作が完了すると各部位の作動が停止して孔版印刷装置1は再び両面印刷待機状態となる。
【0028】
上述した両面印刷動作時において、給紙部4より給送された用紙Pがプレスローラ9によってその一方の面に表面画像を転写された後、第2の態位を占めている切替部材7によって補助トレイ16上へと送られる際にストッパ21によって用紙受け板20上に保持されるが、「発明が解決しようとする課題」の欄でも述べたように、用紙が途中で抜けたり移動中に用紙がずれたりしてしまい、用紙先端保持部材による用紙の搬送が不安定となり、用紙搬送ジャムが発生してしまうという問題点がある。
【0029】
本発明はこの問題点を解決すべく、図3に示すストッパ21を採用している。本発明の第1の実施形態を示す図3において、ストッパ21は用紙受け板20に回転自在に支持された支軸32、支軸32に取り付けられた支持板33、支持板33に回転自在に支持された1つのロックボール34、支持板33に固定されロックボール34に接触する制止板35等を有している。
【0030】
支持板33は図示しない付勢手段の付勢力によって図3において反時計回り方向に付勢されており、ロックボール34が所定の付勢力によって用紙受け板20の上面に圧接するように構成されている。用紙受け板20の移動経路上には図示しないストッパ開放部材が設けられており、用紙受け板20が図1に示す位置よりも用紙搬送方向上流側であってロックボール34が補助トレイ16の用紙搬送方向下流側端部上方近傍に位置する位置を占めた際と図2に示す位置を占めた際とに、図示しないストッパ開放部位材により支持板33が図3において時計回り方向に回動され、ロックボール34が用紙受け板20の上面から離間するように構成されている。
【0031】
保持部として機能するロックボール34は支持板33の自由端部先端近傍に回転自在に取り付けられており、その表面には図示しない波形突起が設けられている。回転規制部材として機能する制止板35は支持板33の自由端部側に固定されており、ロックボール34と接触する面には上述した図示しない波形突起と係合する図示しない波形突起が設けられている。この構成により、ロックボール34は図3において矢印で示す用紙搬送方向へのみ回転自在に構成されている。上述の構成中、ロックボール34と制止板35とによって保持力増大手段36が構成されている。
【0032】
上述の構成により、用紙Pの先端がストッパ21によって用紙受け板20上に保持された際に、ロックボール34が用紙搬送方向とは逆方向への回転を規制されることにより用紙Pの先端を保持する保持力が増大されるので、用紙受け板20による用紙Pの搬送中に用紙Pが途中で抜けたり移動中にずれたりしてしまうことを防止でき、用紙受け板20による用紙Pの搬送が安定となり用紙搬送ジャムの発生を防止することができる。
【0033】
第1の実施形態では、支持板33にロックボール34を1つ設けた例を示したが、図4に示すようにロックボール34を2個またはそれ以上設ける構成、図5に示すように保持部としてローラ状のロック部材37を設ける構成を採用してもよい。図4及び図5に示した構成においても、各ロックボール34及びロック部材37の用紙搬送方向とは逆方向への回転を制止する制止板35と同様の構成がそれぞれ設けられる。
【0034】
図6は、本発明の第2の実施形態を示している。この第2の実施形態は上述した第1の実施形態と比較すると、ロックボール34及び制止板35に代えて保持力増大手段としての1つのロックボール38を用いる点においてのみ相違しており、他の構成は同一である。
【0035】
ロックボール38は、用紙Pと接触する保持部としてのボール部材39とその内部に設けられた回転規制部材としてのワンウェイクラッチ40とを有しており、
ロックボール38は図6において矢印で示す用紙搬送方向へのみ回転自在に構成されている。この構成により第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。この第2の実施形態においても、ロックボール38を複数設ける構成、ロックボール38に代えてワンウェイクラッチを内蔵し用紙搬送方向へのみ回転自在なロック部材を用いる構成を採用してもよい。
【0036】
図7は、本発明の第3の実施形態に用いられる保持力増大手段としてのロックボール41を示している。このロックボール41は第2の実施形態で示したロックボール38と比較すると、ボール部材39の表面に高摩擦抵抗部材42を有する点においてのみ相違しており、他の構成は同一である。高摩擦抵抗部材としては、図7に示すような突起状部材、サンドペーパ、ゴム部材等が挙げられる。この構成により、用紙Pの保持力をさらに増大させることができ、用紙受け板20による用紙Pの搬送をさらに安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態を採用した両面印刷が可能な孔版印刷装置の非印刷時における要部概略正面図である。
【図2】本発明の一実施形態を採用した両面印刷が可能な孔版印刷装置の両面印刷時における要部概略正面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に用いられる用紙受け板及びストッパの概略正面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の変形例に用いられる保持力増大手段の概略平面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態の他の変形例に用いられる保持力増大手段の概略平面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に用いられる用紙受け板及びストッパの概略正面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に用いられる保持力増大手段の概略正面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 孔版印刷装置
2 印刷部
5 排紙部
6 再給紙手段
7 切替部材
8 版胴
16 補助トレイ
20 用紙先端保持部材(用紙受け板)
34 保持部(ロックボール)
35 回転規制部材(制止板)
36 保持力増大手段
37 保持部(ロック部材)
38,41 保持力増大手段(ロックボール)
39 保持部(ボール部材)
40 回転規制部材(ワンウェイクラッチ)
42 高摩擦抵抗部材
P 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
版胴を有する印刷部と、前記印刷部において印刷がなされた用紙を排出する排紙部と、前記印刷部においてその一方の面に印刷画像を形成された用紙を一時的に貯容した後に前記印刷部に向けて再給紙する再給紙手段と、前記印刷部を通過した用紙を前記排紙部に案内する第1の態位または前記再給紙手段に案内する第2の態位を選択的に占める変位可能な切替部材とを有し、用紙の一方の面に表面画像を印刷する表面印刷工程を行った後に該用紙を前記再給紙手段に送り、前記用紙を前記再給紙手段から前記印刷部に再給紙して前記用紙の他方の面に裏面画像を印刷する裏面印刷工程を行う両面印刷が可能であり、
前記再給紙手段は、一方の面に印刷画像が形成された用紙を一時的に貯容する補助トレイと、前記印刷部から送り出された用紙の先端を前記印刷部近傍の第1の位置で保持し前記補助トレイの用紙搬送方向下流側端部近傍に位置する第2の位置で前記先端を開放する前記補助トレイの上方において往復移動自在な用紙先端保持部材とを有する孔版印刷装置において、
前記用紙先端保持部材は前記先端の保持力を増大させる保持力増大手段を有することを特徴とする孔版印刷装置。
【請求項2】
請求項1記載の孔版印刷装置において、
前記保持力増大手段は、前記先端に接触して前記先端を保持する回転自在な保持部と、前記保持部の用紙搬送方向とは逆方向への回転を規制する回転規制部材とを有することを特徴とする孔版印刷装置。
【請求項3】
請求項2記載の孔版印刷装置において、
前記保持部はその表面に高摩擦抵抗部材を有することを特徴とする孔版印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−196108(P2009−196108A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−37366(P2008−37366)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(000221937)東北リコー株式会社 (509)