説明

孔版印刷装置

【課題】搬送中に用紙が斜行した場合であっても用紙上の所望位置に印刷画像を形成することが可能な孔版印刷装置を提供する。
【解決手段】多孔性支持板10aを有する版胴10と、多孔性支持板10aを用紙幅方向に移動させる左右移動手段29と、給紙手段33とを有し、左右移動手段29により多孔性支持板10aを移動させて用紙Pに対して印刷される製版画像の位置を用紙幅方向に変位可能な孔版印刷装置1において、用紙Pのサイズを検出するサイズ検出手段30と、給送される用紙Pの側端位置を検出する位置検出手段31とを有し、サイズ検出手段30と位置検出手段31とによって検出された検出結果より用紙Pが給紙手段33から版胴10に対して給送される際の位置ずれ量を算出し、用紙Pの中心位置と製版画像の中心位置とが合致するように左右移動手段29により多孔性支持板10aを移動させて印刷を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は孔版印刷装置に関し、詳しくは軸方向に移動可能な多孔性支持板を備えた版胴を有する孔版印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の孔版印刷装置では、版上に形成された製版画像が用紙上の所定の位置に印刷されるように印刷画像位置の調整作業が行われるが、この印刷画像位置の調整作業時において印刷画像位置を用紙搬送方向(天地方向ともいう)に移動させる場合に、版胴とレジストローラ対との同期タイミングを機械的に変化させる天地調整手段を駆動制御することにより印刷画像位置の移動量を調整する技術が知られている。また印刷画像位置を用紙搬送方向と直交する方向(左右方向ともいう)に移動させる場合に、版胴を構成する多孔性支持板を版胴軸方向に移動させることにより版胴上に巻装されているマスタの位置を版胴軸方向に移動させる技術が、例えば「特許文献1」に開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−137518号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の孔版印刷装置では、印刷に供する用紙を積載する給紙トレイ上に用紙の幅方向揃えを行うサイドフェンスを有しており、このサイドフェンスの働きにより用紙の斜行が防止されている。しかし、サイドフェンスのセットが十分でなかったり用紙の湾曲や裁断面のバリ等が影響したりすることにより搬送中に用紙が斜行する場合があり、これにより用紙と版胴上に巻装されているマスタに形成された製版画像位置との間に位置ずれが生じ、用紙上の所望位置に画像が形成されないという問題点がある。
【0005】
本発明は上述した問題点を解決し、搬送中に用紙が斜行した場合であっても用紙上の所望位置に印刷画像を形成することが可能な孔版印刷装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、製版画像が形成されたマスタが巻装される多孔性支持板をその外周面に有する版胴と、前記多孔性支持板を用紙搬送方向と直交する用紙幅方向に移動させる左右移動手段と、用紙を積載する給紙トレイを備え用紙を前記版胴に向けて給送する給紙手段とを有し、前記左右移動手段により前記多孔性支持板を移動させて用紙に対して印刷される前記製版画像の位置を用紙幅方向に変位可能な孔版印刷装置において、前記給紙トレイ上に積載された用紙の用紙幅方向におけるサイズを検出するサイズ検出手段と、前記給紙手段から前記版胴へと給送される用紙の側端位置を検出する位置検出手段とを有し、前記サイズ検出手段と前記位置検出手段とによって検出された検出結果より用紙が給紙手段から版胴に対して給送される際の用紙幅方向における位置ずれ量を算出し、用紙幅方向における用紙の中心位置と前記製版画像の中心位置とが合致するように前記左右移動手段により前記多孔性支持板を移動させて印刷を行うことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の孔版印刷装置において、さらに前記位置ずれ量が所定値以上の場合に前記左右移動手段により前記多孔性支持板を移動させることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の孔版印刷装置において、さらに前記左右移動手段による前記多孔性支持板の移動時間に応じて前記給紙手段による用紙給送タイミングを変化させることを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3の何れか1つに記載の孔版印刷装置において、さらに前記位置ずれ量が上限値を超えた場合には動作を停止して使用者に報知することを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし4の何れか1つに記載の孔版印刷装置において、さらに用紙幅方向における用紙の中心位置と前記製版画像の中心位置とを合致させるべく前記多孔性支持板を前記左右移動手段によって移動させるか否かを選択設定可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、給紙部から給送される用紙が斜行して位置ずれが生じた場合であっても、位置ずれ量を算出してこれと同等の移動量だけ左右移動手段が多孔性支持板を移動させるので、用紙幅方向における用紙の中心位置と多孔性支持板に巻装されたマスタに形成された製版画像の中心位置とを合致させることができ、良好な印刷物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明の一実施形態を採用した孔版印刷装置を示している。同図において孔版印刷装置1は、製版部2、印刷部3、給紙手段としての給紙部33、図示しない排版部、排紙部、画像読取部等を有している。
【0013】
製版部2は、マスタ4をロール状に巻成したマスタロール4aの芯材4bを回転自在かつ着脱自在に支持する図示しないマスタ保持部材、プラテンローラ5、サーマルヘッド6、マスタ搬送ローラ対7,マスタ切断手段8、マスタガイド板9等を有している。
【0014】
マスタ4は、厚さ1〜3μm程度の熱可塑性樹脂フィルムと和紙等の多孔性支持体とを貼り合わせて構成されている。プラテンローラ5は製版部2の図示しない側板に回転自在に支持されており、図示しないステッピングモータによって図1において時計回り方向に回転駆動される。プラテンローラ5の下方に位置し多数の発熱素子を有するサーマルヘッド6は製版部2の図示しない側板に取り付けられており、図示しない付勢手段の付勢力によってその発熱素子面をプラテンローラ5の周面に圧接されている。サーマルヘッド6はマスタ4の熱可塑性樹脂フィルム面に接触しつつ各発熱素子を選択的に発熱させ、マスタ4に対して熱溶融穿孔製版を行う。
【0015】
プラテンローラ5及びサーマルヘッド6の右方にはマスタ搬送ローラ対7が配設されている。マスタ搬送ローラ対7は、図示しない駆動手段によって図1において反時計回り方向に回転駆動される駆動ローラ7a及びこれに圧接配置された従動ローラ7bとから構成されており、プラテンローラ5よりも若干速い速度でマスタ4を搬送するように駆動ローラ7aの回転周速度が設定されている。マスタ搬送ローラ対7の右方にはマスタ切断手段8が配設されている。マスタ切断手段8は、固定刃8aに対して可動刃8bが回転移動することによりマスタ4を切断する。マスタ切断手段8の右方にはマスタ4の搬送をガイドするマスタガイド板9が固設されている。
【0016】
製版部2の右下方には印刷部3が配設されている。印刷部3は、版胴10、プレスローラ11等を有している。
版胴10は、図2に示すように多孔性支持板10aとメッシュスクリーン10bとを有しており、インキ供給パイプを兼ねた支軸14によって回転自在に支持されている。多孔性支持板10aはステンレス等の金属板からなり、電鋳加工によって複数の貫通孔を有する開口部10cが形成されている。開口部10cが形成された範囲の用紙幅方向における長さは、後述するインキローラ15の幅よりもやや大きくなるように設定されている。メッシュスクリーン10bは樹脂あるいは金属網体によって形成されており、開口部10cと対応する多孔性支持板10aの外周面上に複数層にわたって巻装されている。
【0017】
版胴10の内部には図1に示すインキ供給手段13が配設されている。インキ供給手段13は、版胴10の外部に設けられた図示しないインキパックから図示しないインキポンプによって吸引されたインキを版胴10の内部に導入する支軸14、支軸14から供給されたインキを多孔性支持板10aの内周面に供給するインキローラ15、その周面がインキローラ15の周面と僅かな間隙を有するようにインキローラ15の近傍に配置されたドクターローラ16等から主に構成されている。
【0018】
支軸14には、図示しないインキパックから供給されるインキを版胴10の内部に供給するための供給孔14aが形成されており、供給孔14aから滴下したインキがインキローラ15とドクターローラ16との近接部に形成された楔状の空間に溜まることによりインキ溜まり17が形成される。インキ溜まり17のインキはインキローラ15及びドクターローラ16が互いに逆方向に回転することにより混練され、ドクターローラ16によってその層厚を規制された状態でインキローラ15の周面に供給される。インキローラ15の周面上のインキは、後述するプレスローラ11が版胴10の外周面に圧接した際に版胴10の内周面に供給される。
【0019】
多孔性支持板10aの非開孔部10dには、多孔性支持板10aの一母線に沿って形成された平面を含むステージ部18が設けられている。磁性体からなるステージ部18の上面にはクランパ19が開閉自在に設けられており、クランパ19にはステージ部18に対して磁着可能なマグネットが設けられている。クランパ19は版胴10が所定位置を占めた際に図示しない開閉手段によって開閉され、ステージ部18との間でマスタ4の先端部を挟持する。
【0020】
多孔性支持板10aは、図3に示すように、支軸14に回転自在に支持された一対のフランジ20(一方のみを示す)の外周面に取り付けられており、図示しない版胴駆動手段によって図1において時計回り方向に回転駆動される。支軸14は一対の本体側板21(一方のみを示す)に支持されており、多孔性支持板10aの内側に位置する部位には一対のインキローラ側板22(一方のみを示す)がインキローラ15の長さよりも僅かに大きな間隔で取り付けられている。各インキローラ側板22間にはインキローラ15がその両端に設けられた軸部15aをそれぞれ回転自在に支持されており、インキローラ15は図示しないギヤやベルト等の駆動力伝達手段によって版胴駆動手段からの駆動力を伝達されることにより版胴10と同期して同方向に回転駆動される。図示してはいないがドクターローラ16も同側板22間に回転自在に支持されており、図示しない駆動力伝達手段によって版胴駆動手段からの駆動力を伝達されることにより版胴10と同期して逆方向に回転駆動される。
【0021】
支軸14の左端部近傍であって本体側板21の内側に位置する部位にはねじ部14bが一体的に形成されており、ねじ部14bには外周にギヤ部23aを有する鍔付きブッシュ状のボスギヤ23が螺合されている。フランジ20は軸受24を介してボスギヤ23に支持されており、これにより多孔性支持板10aはボスギヤ23と一体的に軸方向に移動可能であると共に、ボスギヤ23に対して回転自在に構成されている。ギヤ部23aには、本体側板21に取り付けられたモータ25の出力軸25aに固着されたピニオン26が噛合している。モータ25にはパルスエンコーダが内蔵されており、その回転角度に応じた信号を発生する。上述したねじ部14b、ボスギヤ23、モータ25、ピニオン26によって多孔性支持板10aを版胴軸方向に移動させる左右移動手段29が構成されている。
【0022】
版胴10の下方に配設されたプレスローラ11は図示しない一対のアーム部材によって回転自在に支持されており、図示しないアーム部材が図示しない揺動手段によって揺動されることにより、その周面が版胴10の外周面より離間する位置と版胴10の外周面に所定の圧接力で圧接する位置とを選択的に占める。
【0023】
印刷部3の右方には給紙部33が配設されている。給紙部3は、給紙トレイ32、図示しない分離給送手段、レジストローラ対12等を有している。
上面に多数の用紙Pを積載可能な給紙トレイ32は図示しない装置本体に上下動自在に支持されており、図示しない昇降手段によって上下動される。筐体状をなす給紙トレイ32は、積載された用紙Pのサイズを検出するサイズ検出手段としてのセンサ30をその内部に複数有しており、その上面には一対のサイドフェンス34が配設されている。各サイドフェンス34は用紙幅方向に向けて互いに同期して移動される。
【0024】
給紙トレイ32の左端上方には、共に図示しない給紙ローラと分離ローラ対とからなる分離給送手段が配設されている。分離給送手段は、給紙トレイ32上に積載された用紙Pをその最上位のものから順次1枚ずつ分離給送する。分離給送手段の左方にはレジストローラ対12が配設されている。レジストローラ対12は、版胴駆動手段からの回転駆動力を伝達されることにより版胴10と同期して回転駆動される駆動ローラ、及び図示しない付勢手段の付勢力によって所定の圧接力で駆動ローラに圧接された従動ローラとを有しており、分離給送手段から送られた用紙Pを一時停止させた後に所定のタイミングで印刷部3に向けて給送する。
【0025】
レジストローラ対12の左方には、レジストローラ対12によって一時停止された用紙Pの側端位置を検出する位置検出手段としての用紙エッジセンサ31が配設されている。用紙エッジセンサ31としては、図4に示すように微細な反射型センサが連続的に配置され一体的にパッケージングされたCCDまたは密着イメージセンサが用いられ、広範囲を高分解能で検出可能に構成されている。図4(a)は用紙エッジセンサ31上に用紙Pがない場合を示しており、用紙Pによるセンサの遮光がないために全領域にわたって高い値の出力電圧となる。一方、図4(b)に示すように用紙エッジセンサ31上に用紙Pが搬送された場合には、用紙進入範囲のセンサが遮光される。これにより各センサの隣接アドレス間で出力電圧に著しい差異が発生した箇所のセンサアドレス(図4(b)に示した例ではアドレス101)が用紙Pの側端位置と判断される。
【0026】
孔版印刷装置1の図示しない装置本体内部には、孔版印刷装置1の動作を制御する制御手段27が設けられており、左右移動手段34の作動も制御手段27によって制御される。周知のマイクロコンピュータからなる制御手段27には、図示しない装置本体の上部前面に設けられた操作パネル28からの各種指令、センサ30からの用紙サイズ検出情報、用紙エッジセンサ31からの位置検出情報、多孔性支持板10aのホームポジションを検知する図示しないセンサからの位置信号等が入力される。制御手段27は、モータドライバ等の駆動装置に動作信号を出力し、モータ25及び孔版印刷装置1の各種アクチュエータの動作制御を行う。
【0027】
上述の構成に基づき、以下に孔版印刷装置1の動作を説明する。
図示しない画像読取部に原稿がセットされ操作パネル28上の製版スタートキーが押下されると、制御手段27は図示しないセンサからの情報に基づいて多孔性支持板10aがホームポジションに位置するまでモータ25を駆動し、多孔性支持板10aがホームポジションに到達するとモータ25の駆動を停止させる。多孔性支持板10aがホームポジションに位置決めされると図示しない版胴駆動手段が作動して版胴10が回転を開始し、版胴10上に巻装されている前版のマスタが図示しない排版装置により剥離されて廃棄される。排版後、版胴10はクランパ19がほぼ真上に位置する給版待機位置まで回転して停止し、図示しない開閉装置によりクランパ19が開放されて版胴10は給版待機状態となる。
【0028】
次に製版動作が行われる。クランパ19が開放された後にプラテンローラ5が回転し、マスタロール4aよりマスタ4が引き出される。引き出されたマスタ4は、サーマルヘッド6を通過する際に読み取られた画像情報に応じた製版画像をその熱可塑性樹脂フィルム面に穿孔製版される。製版されたマスタ4は、プラテンローラ5の周速度よりも若干速い周速度で回転しているマスタ搬送ローラ対7により、プラテンローラ5との間で所定の量力を付与されつつ搬送される。
【0029】
マスタガイド板9に案内されたマスタ4の先端がステージ部18とクランパ19との間の所定位置まで到達したことがプラテンローラ5を回転駆動する図示しないステッピングモータのステップ数より制御手段27によって確認されると、図示しない開閉手段が作動してクランパ19が閉じられると共に版胴駆動手段が作動して版胴10がマスタ4の搬送速度とほぼ同じ周速度で再度回転し、製版されたマスタ4の版胴10への巻装動作が行われる。プラテンローラ5を駆動する図示しないステッピングモータのステップ数より1版分の製版が完了したと制御手段27が認識すると、マスタ切断手段8が作動してマスタ4が切断されると共にプラテンローラ5及びマスタ搬送ローラ対7の作動が停止される。切断されたマスタ4は版胴10の回転によって製版部2より引き出され、引き出されたマスタ4が全て版胴10上に巻装されると巻装動作が完了する。
【0030】
その後、版胴10が図1において時計回り方向に低速で回転すると共に給紙部4より1枚の用紙Pが分離給送される。分離給送された用紙Pは、レジストローラ対12で一時停止された後に所定のタイミングで版胴10とプレスローラ11との間に向けて給送される。レジストローラ対12によって給送された用紙Pが所定位置に到達すると図示しない揺動手段が作動し、プレスローラ11が所定の圧接力で版胴10の外周面に圧接する。この圧接により、インキ供給手段13から多孔性支持板10aの内面に供給されたインキが、開口部10c、メッシュスクリーン10bの開口部、マスタ4の穿孔部を介して用紙Pに転移されると共にマスタ4の多孔性支持体に充填され、マスタ4とメッシュスクリーン10bとが密着する、いわゆる版付けが行われる。インキが転移された用紙Pは、図示しない排紙部へと送られて排紙トレイ上に排出される。版付け後、操作パネル28上で印刷枚数が設定された後に図示しない印刷スタートキーが押下されると、版胴10が印刷速度に応じた版付け時よりも高速の所定の周速度で回転すると共に給紙部4より用紙Pが連続的に給送され、版付け時と同様に印刷が行われる。
【0031】
上述した版付け時あるいは印刷時において、「発明が解決しようとする課題」の欄にも記載したように、サイドフェンス34のセットが十分でなかったり用紙Pの湾曲や裁断面のバリ等が影響したりすることにより搬送中に用紙Pが斜行する場合があり、この斜行が発生すると図5に示すように用紙Pと版胴10上に巻装されているマスタ4に形成された製版画像位置との間に位置ずれが生じ、用紙P上の所望位置に画像が形成されないという問題点がある。本発明はこの問題点の発生を防止するものであり、以下に本発明における孔版印刷装置1の動作制御を図6に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0032】
先ず、操作パネル28上に設けられた図示しないスイッチにより、上述した位置ずれの補正を実施するか否かを設定する。具体的には、操作パネル28上に設けられたセレクトスイッチを操作し、位置ずれ補正を行う場合にはセレクトスイッチをオン側に位置させ、位置ずれ補正を行わない場合にはセレクトスイッチをオフ側に位置させる(ST1)。
【0033】
ST1においてセレクトスイッチがオフ側に位置されると、位置ずれ補正は行われず動作フローは終了となる。ST1においてセレクトスイッチがオン側に位置されると、制御手段27はセンサ30からの用紙Pのサイズ検出情報を取得し(ST2)、取得したサイズ検出情報に基づいて用紙エッジセンサ31が用紙Pの側端位置を検出するはずである理論上のセンサアドレス位置ADR0を設定する(ST3)。
【0034】
その後、レジストローラ対12が作動して用紙Pが印刷部3に向けて給送され、用紙Pの側端位置が用紙エッジセンサ31によって検出されると(ST4)、制御手段27は用紙エッジセンサ31からの位置検出情報に基づいた実測のセンサアドレス位置ADR1を取得する(ST5)。ここで制御手段27は、用紙Pの側端位置を検出するはずである理論上のセンサアドレス位置ADR0と実測のセンサアドレス位置ADR1との差を計算し、これにセンサピッチを乗じて用紙Pの側端が通過するはずである正規の位置から実際に通過した位置のずれ量を算出する(ST6)。
【0035】
用紙Pの位置ずれ量が算出されると、制御手段27はこの位置ずれ量が左右移動手段29を作動させて多孔性支持板10aを移動させる必要がある位置ずれ量(所定値)であるか否かを判定する(ST7)。これは、画像の位置ずれによる印刷物の価値の低下と左右移動手段29を作動させることによる印刷時間や消費電力の増加等とを比較するものであり、例えば位置ずれ量が1mm以下の場合には左右移動手段29を作動させないというものである。所定値を任意に設定することにより、高精度な補正にも対応できると共に頻繁に左右移動手段29を作動させることによる印刷時間や消費電力の増加を防止することができる。
【0036】
次に、制御手段27は算出された位置ずれ量が左右移動手段29によって補正可能な範囲であるか否かを判定する(ST8)。位置ずれ量が補正可能な範囲である上限値を超えた場合には左右移動手段29による多孔性支持板10aの移動では位置ずれ補正を行うことができないため、孔版印刷装置1の動作を停止させると共に操作パネル28上の表示手段にオペレータに対して用紙Pのジャム処理を行わせる旨の表示を行う(ST9)。
【0037】
ST8において位置ずれ量が補正可能な範囲である場合、制御手段27算出された位置ずれ量に相当する多孔性支持板10aの移動時間t1を算出し(ST10)、さらに印刷速度に応じて用紙Pが用紙エッジセンサ31から版胴10とプレスローラ11との間の所定位置に到達するまでの給送時間t2を算出する(ST11)。制御手段27は移動時間t1と給送時間t2とを比較し(ST12)、移動時間t1が給送時間t2よりも小さい場合には通常の印刷動作と同様に用紙Pの給送を行うことができるため、レジストローラ対12において用紙Pが一時停止されている間(ST13)に左右移動手段29による多孔性支持板10aの移動が完了し(ST14)、所定のタイミングとなると(ST15)レジストローラ対12が作動して用紙Pが印刷部3に向けて給送される(ST16)。
【0038】
ST12において移動時間t1が給送時間t2よりも大きい場合には、通常の印刷動作と同様の用紙給送では多孔性支持板10aが移動完了する前に用紙Pが給送されてしまい、不具合が発生してしまう。そこで、レジストローラ対12において用紙Pが一時停止されている間(ST17)に左右移動手段29による多孔性支持板10aの移動が開始され(ST18)、所定のタイミングとなった(ST19)後に多孔性支持板10aの移動が完了したことが確認される(ST20)とレジストローラ対12が作動して用紙Pが印刷部3に向けて給送される(ST21)。この一連の動作の模式図を図7に示す。
【0039】
上述の構成によれば、給紙部33から給送される用紙Pが斜行して位置ずれが生じた場合であっても、位置ずれ量を算出してこれと同等の移動量だけ左右移動手段29が多孔性支持板10aを移動させるので、用紙幅方向における用紙Pの中心位置と多孔性支持板10aに巻装されたマスタ4に形成された製版画像の中心位置とを合致させることができ、良好な印刷物を得ることができる。また、用紙の位置ずれを補正するか否かを設定できるので、印刷物の価値を優先させるか印刷効率を優先させるかを任意で選択できる。また、算出された用紙Pの位置ずれ量が左右移動手段29によって補正可能な範囲であるか否かを判定するので、印刷不良や用紙搬送ジャムの発生を防止することができる。さらに、左右移動手段29による多孔性支持板10aの移動時間に応じて給紙手段33による用紙給送タイミングを変化させることができるので、印刷不良や用紙搬送ジャムといった不具合の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態を採用した孔版印刷装置の要部概略正面図である。
【図2】本発明の一実施形態に用いられる版胴を説明する概略図である。
【図3】本発明の一実施形態に用いられる左右移動手段の概略図である。
【図4】本発明の一実施形態に用いられる用紙エッジセンサを説明する概略図である。
【図5】従来の問題点を説明する概略図である。
【図6】本発明の動作を説明するフローチャートである。
【図7】本発明の作用効果を説明するための概略図である。
【符号の説明】
【0041】
1 孔版印刷装置
4 マスタ
10 版胴
10a 多孔性支持板
29 左右移動手段
30 サイズ検出手段(センサ)
31 位置検出手段(用紙エッジセンサ)
32 給紙トレイ
33 給紙手段(給紙部)
P 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製版画像が形成されたマスタが巻装される多孔性支持板をその外周面に有する版胴と、前記多孔性支持板を用紙搬送方向と直交する用紙幅方向に移動させる左右移動手段と、用紙を積載する給紙トレイを備え用紙を前記版胴に向けて給送する給紙手段とを有し、前記左右移動手段により前記多孔性支持板を移動させて用紙に対して印刷される前記製版画像の位置を用紙幅方向に変位可能な孔版印刷装置において、
前記給紙トレイ上に積載された用紙の用紙幅方向におけるサイズを検出するサイズ検出手段と、前記給紙手段から前記版胴へと給送される用紙の側端位置を検出する位置検出手段とを有し、前記サイズ検出手段と前記位置検出手段とによって検出された検出結果より用紙が給紙手段から版胴に対して給送される際の用紙幅方向における位置ずれ量を算出し、用紙幅方向における用紙の中心位置と前記製版画像の中心位置とが合致するように前記左右移動手段により前記多孔性支持板を移動させて印刷を行うことを特徴とする孔版印刷装置。
【請求項2】
請求項1記載の孔版印刷装置において、
前記位置ずれ量が所定値以上の場合に前記左右移動手段により前記多孔性支持板を移動させることを特徴とする孔版印刷装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の孔版印刷装置において、
前記左右移動手段による前記多孔性支持板の移動時間に応じて前記給紙手段による用紙給送タイミングを変化させることを特徴とする孔版印刷装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか1つに記載の孔版印刷装置において、
前記位置ずれ量が上限値を超えた場合には動作を停止して使用者に報知することを特徴とする孔版印刷装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか1つに記載の孔版印刷装置において、
用紙幅方向における用紙の中心位置と前記製版画像の中心位置とを合致させるべく前記多孔性支持板を前記左右移動手段によって移動させるか否かを選択設定可能であることを特徴とする孔版印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−131772(P2010−131772A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307388(P2008−307388)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000221937)東北リコー株式会社 (509)