説明

孔版印刷装置

【課題】ドラム回転時における跳ね上げ板47の撓みを低減させる。
【解決手段】穿孔された孔版原紙が外周面に巻装される第1,第2のドラム41,51と、第1,第2のドラム41,51の外周面に設けられ、巻装された孔版原紙を排版するときに、孔版原紙を第1,第2のドラム41,51から跳ね上げる跳ね上げ板47と、跳ね上げ板47を第1,第2のドラム41,51の外周面に引き付けるシート49とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製版された孔版原紙が巻き付けられたドラムに印刷用紙を圧接することにより印刷を行う孔版印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な孔版印刷装置では、製版された孔版原紙をドラム外周に備えられたクランプで孔版原紙の先端を把持した後、回転するドラムに巻き付けることにより孔版原紙をドラムに着版する。そして着版した後、印刷用紙をこのドラムに給紙し、この供給された印刷用紙をプレスローラにより回転するドラムに圧接しながらドラム内部からインクを押圧することにより印刷を行う。
【0003】
そして、孔版印刷装置では、印刷が終了すると、クランプを開放して、使用済みの孔版原紙を回転するドラムの外周面から引き剥がし、引き剥がされた孔版原紙を排版ボックス内に収納する。
【0004】
特許文献1には、孔版原紙始端装着装置に於ける開閉式の押え部材の孔版原紙始端部受入れ側に排版時に押え部材による押えつけから開放された孔版原紙始端部を押え部材の上側へはね上げる跳ね上げを設けた孔版印刷機が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−142483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の孔版印刷機では、孔版原紙が着版された状態でドラムを回転することにより印刷し、印刷が終了すると、ドラムを回転しながら、使用済みの孔版原紙をドラムから引き剥がすことにより排版するので、孔版原紙の着版状態によっては、跳ね上げ部材がドラムの外側方向に撓む場合があった。
【0007】
例えば、孔版原紙がドラムに着版された状態である場合、孔版原紙は跳ね上げ部材のさらに外周側から跳ね上げ部材を覆うように着版されるので、ドラムが回転したとしても、跳ね上げ部材は孔版原紙によって押さえられることにより、跳ね上げ部材の撓みが抑制されている。
【0008】
しかしながら、排版後、孔版原紙がドラムに着版されていない状態である場合、ドラムが回転すると、跳ね上げ部材が孔版原紙によって押さえられることがないので、自重やドラムの遠心力等により、跳ね上げ部材がドラムの外側方向に撓むことがあった。
【0009】
そして、跳ね上げ部材が撓むと、跳ね上げ部材の一部が、ドラム近傍に設置された、排版ボックスや印刷用紙を分離するための分離爪に接触し、部品の破損やドラムの回転が停止する場合があった。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ドラム回転時における跳ね上げ部材の撓みを低減させる孔版印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る孔版印刷装置の第1の特徴は、穿孔された孔版原紙が外周面に巻装されるドラムと、前記ドラムの軸方向に平行に延在して設けられ、前記孔版原紙の先端を保持するクランプ手段と、前記ドラムの軸方向に平行に延在し、前記ドラムの軸方向端部よりも外側両端で支持されるように設けられ、前記クランプ手段が前記孔版原紙の先端を解放したときに前記孔版原紙を前記ドラムから跳ね上げる跳上手段と、前記跳上手段を前記ドラムの外周面に引き付ける引付手段と、を備えたことにある。
【0012】
本発明に係る孔版印刷装置の第2の特徴は、前記ドラムの近傍に配置され、圧接されることにより前記孔版原紙に張り付いた印刷用紙を前記孔版原紙から分離する分離爪をさらに備え、前記引付手段は、前記ドラムの回転軸方向において前記分離爪と重なる位置に設けられたことにある。
【0013】
本発明に係る孔版印刷装置の第3の特徴は、前記引付手段は、前記跳上手段と前記ドラムの外周面とを連結するシートであることにある。
【0014】
本発明に係る孔版印刷装置の第4の特徴は、前記ドラムが回転することにより前記分離爪が接触した場合に、前記跳上手段をドラム側に押圧するように、前記跳上手段に設けられた誘導板を、さらに備えたことにある。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る孔版印刷装置の第1の特徴によれば、穿孔された孔版原紙が外周面に巻装されるドラムと、ドラムの軸方向に平行に延在して設けられ、孔版原紙の先端を保持するクランプ手段と、ドラムの軸方向に平行に延在し、ドラムの軸方向端部よりも外側両端で支持されるように設けられ、クランプ手段が孔版原紙の先端を解放したときに孔版原紙を前記ドラムから跳ね上げる跳上手段と、跳上手段をドラムの外周面に引き付ける引付手段とを備えたので、ドラム回転時における跳上手段の撓みを低減させることができる。
【0016】
本発明に係る孔版印刷装置の第2の特徴によれば、引付手段は、ドラムの回転軸方向において分離爪と重なる位置に設けられたので、特に接触した際の影響が大きい箇所をドラムの外周面に引き付けることができる。
【0017】
本発明に係る孔版印刷装置の第3の特徴によれば、引付手段は、跳上手段とドラムの外周面とを連結するシートであるので、簡易な構成で、ドラム回転時における跳上手段の撓みを低減させることができる。
【0018】
本発明に係る孔版印刷装置の第4の特徴によれば、ドラムが回転することにより分離爪が接触した場合に、跳上手段をドラム側に押圧するように、跳上手段に設けられた誘導板を備えるので、さらに、跳上手段と分離爪とが接触した場合においても、ドラムの回転が強制的に停止されることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例1である両面孔版印刷装置の構成を示した構成図である。
【図2】本発明の実施例1である両面孔版印刷装置が備える第1の印刷部の第1のドラムの斜視図である。
【図3】本発明の実施例1である両面孔版印刷装置が備える第1のドラムの第1の原紙クランプ部の拡大図である。
【図4】本発明の実施例1である両面孔版印刷装置が備える第1の原紙クランプ部の開閉動作を説明した図である。(a)は、第1の原紙クランプ部が孔版原紙Gの先端を把持する閉位置にある状態を示した図であり、(b)は、第1の原紙クランプ部が孔版原紙Gの先端を開放する開位置にある状態を示した図である。
【図5】本発明の実施例2である両面孔版印刷装置が備える第1の印刷部の第1の原紙クランプ部の拡大図である。
【図6】本発明の実施例3である両面孔版印刷装置が備える第1の印刷部の第1の原紙クランプ部の斜視図である。
【図7】本発明の実施例3である両面孔版印刷装置が備える第1の原紙クランプ部の跳ね上げ板に設けられた誘導板47bの拡大図である。
【図8】本発明の実施例3である両面孔版印刷装置の分離爪が接触した場合の跳ね上げ板の動作を説明した図である。(a)は、分離爪が接触する前における跳ね上げ板の状態を示した図であり、(b)は、分離爪が接触したときにおける跳ね上げ板の状態を示した図であり、(c)は、分離爪が跳ね上げ板に誘導された状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施するための形態について以下に説明する。
【実施例1】
【0021】
本発明の実施例1では、両面印刷が可能な2ドラム式の両面孔版印刷装置を例に挙げて説明する。
【0022】
本発明の実施例1である両面孔版印刷装置の構成について説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施例1である両面孔版印刷装置の構成を示した構成図である。
【0024】
図1に示すように、両面孔版印刷装置1は、画像読み取り部2と、給紙部3と、第1の印刷部4と、第2の印刷部5と、製版部6と、第1の排版部8と、第2の排版部9と、反転部10と、排紙部11とを備えている。
【0025】
画像読み取り部2は、両面孔版印刷装置1の上部に設けられ、図示しないコンタクトガラス上に載置された原稿から画像データを読み取る。
【0026】
製版部6は、ロールされた長尺状の孔版原紙Gを収容する原紙収容部61と、この原紙収容部61の搬送下流に配置され、孔版原紙Gを加熱穿孔するサーマルヘッド62と、このサーマルヘッド62の対向位置に配置されたプラテンロール63と、このプラテンロール63及びサーマルヘッド62の搬送下流に配置された一対の原紙送りロール64と、一対の原紙送りロール64の搬送下流に配置された原紙カッタ65とを有し、画像読み取り部2により読み取られた画像データに基づいて製版を行う。
【0027】
また、製版部6は、図示しないレールによって図1におけるX方向に移動自在に支持されており、孔版原紙Gを供給する破線で示した位置と、後述する第2の印刷部5に製版した孔版原紙Gを供給する実線で示した位置とを選択的に占める。
【0028】
第1の排版部8は、後述する第1の印刷部4の第1のドラム41の近傍に設けられており、第1のドラム41の外周面より開放(排版)された孔版原紙Gを第1のドラム41より引き剥がし、引き剥がされた孔版原紙Gを排版ボックス(図示しない)内に収納する。また、第2の排版部9は、第1の排版部8と同様の構成を有する。
【0029】
給紙部3は、印刷用紙Wが積層される給紙台31と、この給紙台31から最上位置の印刷用紙Wのみを搬送させる1次給紙ロール32と、この1次給紙ロール32によって搬送された印刷用紙Wを後述する第1の印刷部4の第1のドラム41の回転に同期して第1のドラム41と第1のプレスローラ43間に搬送する一対の2次給紙ロール33とを有する。
【0030】
第1の印刷部4は、外周面にインクを内方から滲出可能な開孔部が周方向に沿って設けられ、メインモータ(図示しない)の駆動力によって図1の矢印A方向に回転する第1のドラム41と、この第1のドラム41の外周面における開孔部以外の非開孔部に設けられ、第1のドラム41との間で孔版原紙Gの先端を把持又は開放するように回動する第1の原紙クランプ部42と、印刷用紙Wを反転部10へ搬送する搬送ベルト44と、第1のドラム41の下方位置に配置された第1のプレスローラ43とを備えている。
【0031】
そして、第1の印刷部4は、製版部6から搬送される孔版原紙Gの先端を第1の原紙クランプ部42でクランプし、このクランプした状態で第1のドラム41を回転して孔版原紙Gが第1のドラム41の外周面に巻装され、第1のドラム41の回転に同期して搬送されて来る印刷用紙Wを第1のプレスローラ43にて第1のドラム41の孔版原紙Gに押圧することによって印刷用紙Wに孔版原紙Gの穿孔部分からインクが押し出されて画像が印刷用紙Wの表面に印刷されるようになっている。
【0032】
また、第1の印刷部4は、第1のドラム41の用紙搬送下流側の近傍に配置された分離爪81と分離ノズル82と分離ファン83を有する。分離爪81は、第1のドラム41の外周面とこれに貼り付いた状態で搬送されて来る印刷用紙Wの先端との間に挿入されるようになっている。これによって、第1のドラム41の外周面に貼り付いて回転しようとする印刷用紙Wを強制的に第1のドラム41の外周面から引き剥がすようになっている。
【0033】
分離ファン83は印刷用紙Wを第1のドラム41から分離するための分離エアーを発生させる。分離ファン83により発生させた分離エアーは、分離ノズル82より、第1のドラム41の外周面とこれに貼り付いた状態で搬送されて来る印刷用紙Wとの間に吹き付けられる。分離ファン83は第1のドラム41の回転中は常に駆動され、この分離エアーによって、分離爪81に設けられたエアーノズルから吐出される先端分離エアーにより先端部だけを引き剥がされた印刷用紙Wの全体を強制的に第1のドラム41の外周面から引き剥がすようになっている。
【0034】
第1のプレスローラ43が第1のドラム41に押圧することによって画像が印刷され、分離爪81及び分離ノズル82により、第1のドラム41の外周面から引き剥がされた印刷用紙Wは、両端が一対の回転軸に巻きかけられた環状の搬送ベルト44によって反転部10に搬送される。
【0035】
反転部10は、第1の印刷部4に対して印刷用紙Wの搬送方向下流側に配置され、多孔構造に形成された環状の反転ベルト101が半円形状に配置されている。この反転ベルト101は、半円形状の補助部材102と一対のローラ103,104に巻きかけられ、一対のローラ103,104のうち少なくとも一方のローラが駆動モータ(不図示)で回転駆動される。この反転部10により印刷用紙Wの表裏が反転され、積載台106に印刷用紙Wを搬送される。
【0036】
積載台106に、複数枚積載された印刷用紙Wは中間搬送ベルト107,一対のローラ109によって第2の印刷部5に搬送される。
【0037】
第2の印刷部5は、第1の印刷部4と同様に、第2のドラム51の回転に同期して一対の2次給紙ロール54より給紙される印刷用紙Wを第2のプレスローラ53で第2のドラム51に巻装された第2の孔版原紙に押圧することによって、第2の孔版原紙の穿孔からインクが押し出されて画像が印刷用紙Wの裏面に印刷されるようになっている。
【0038】
また、第2の印刷部5は、第1の印刷部4と同様に、第2のドラム51の用紙搬送下流側の近傍に配置された分離爪71と分離ノズル72と、分離ファン73とを有する。
【0039】
排紙部11は、印刷された印刷用紙Wが搬送される排紙ベルト111と、排紙ベルト111より排紙される印刷用紙Wが積置される排紙台112と、を有する。
【0040】
次に、本発明の実施例1である両面孔版印刷装置1が備える第1の印刷部4の第1のドラム41の構成について詳細に説明する。
【0041】
図2は、本発明の実施例1である両面孔版印刷装置1が備える第1の印刷部4の第1のドラム41の斜視図であり、図3は、本発明の実施例1である両面孔版印刷装置1が備える第1のドラム41の第1の原紙クランプ部42の拡大図である。なお、第2のドラム51は、第1のドラム41と同一の構成を有するので、説明を省略する。
【0042】
図2に示すように、第1のドラム41は、外周面にインクを内方から滲出可能な開孔部が周方向に沿って設けられ、メインモータ(図示しない)の駆動力によって矢印A方向に回転する第1のドラム41と、この第1のドラム41の外周面における開孔部以外の非開孔部に設けられ、第1のドラム41との間で孔版原紙Gの先端を把持又は開放するように回動する第1の原紙クランプ部42とを備えている。
【0043】
第1の原紙クランプ部42は、クランプ板46と跳ね上げ板47とを有し、孔版原紙Gの先端を把持する閉位置と孔版原紙Gの先端を開放する開位置との間で変移自在に設けられている。
【0044】
クランプ板46は、第1のドラム41の回転軸P3方向であるX1方向に平行に延在して、回動軸P1を中心に回動自在に第1のドラム41に設けられている。そして、クランプ板46は、モータ駆動するクランプ開閉機構(図示しない)が干渉することによって開位置までS1方向へ回動し、又は、閉位置までS2方向へ回動する。クランプ板46は、閉位置までS2方向へ回動することにより、孔版原紙Gの先端を把持し、開位置までS1方向へ回動することにより、孔版原紙Gの先端を開放する。
【0045】
跳ね上げ板47は、第1のドラム41の回転軸P3方向であるX1方向に平行に延在して、回動軸P2を中心に回動自在に、第1のドラム41の回転軸P3方向端部よりも外側両端で支持されるように設けられている。
【0046】
そして、跳ね上げ板47は、モータ駆動するクランプ開閉機構(図示しない)が干渉することによって開位置までR1方向へ回動し、又は、閉位置までR2方向へ回動する。跳ね上げ板47は、クランプ板46が孔版原紙Gの先端を開放したときに、開位置までR1方向へ回動することにより、その先端の表面に設けられた先端表面部47aが、第1のドラム41の外周面に巻装された孔版原紙Gを第1のドラム41から跳ね上げる。
【0047】
また、第1の原紙クランプ部42は、第1のドラム41の表面に固定された第1の版取り付け台座48を備えており、この第1の版取り付け台座48には、磁石48aが固定されている。
【0048】
クランプ板46は、磁性体で成型されており、閉位置までS2方向へ回動することにより、孔版原紙Gの先端を把持する際、磁石48aにより引き付けられる。これにより、クランプ板46は、孔版原紙Gの先端をずれないようにしっかりと把持することができる。
【0049】
また、第1のドラム41の回転軸P3方向であるX1方向における中央付近には、跳ね上げ板47を第1のドラム41の外周面に引き付けるシート49が設けられている。このシート49は、例えば、ポリエステルなどの素材で成型されたフィルム状部材であり、一方の端部が跳ね上げ板47の先端表面部47aに接着され、クランプ板46と磁石48aとの間を通って、他方の端部は、第1の版取り付け台座48に接着されている。
【0050】
これにより、クランプ板46が開位置までS1方向に回動することにより、孔版原紙Gの先端が開放されて孔版原紙Gが排版された場合、シート49が、跳ね上げ板47を第1のドラム41の外周面に連結するので、第1のドラム41が回転した場合においても、第1のドラム41の遠心力等による跳ね上げ板47の撓みを低減することができる。
【0051】
また、シート49は、第1のドラム41の回転軸P3方向、即ちX1方向において、分離爪81と重なり合う位置に設けられている。
【0052】
これにより、跳ね上げ板47の撓みを低減する必要性が高い位置で、第1のドラム41の外周面に引き付けることができるので、より跳ね上げ板47と分離爪81との接触を防止することができる。
【0053】
次に、本発明の実施例1である両面孔版印刷装置1が備える第1の原紙クランプ部42の開閉動作について説明する。
【0054】
図4は、本発明の実施例1である両面孔版印刷装置1が備える第1の原紙クランプ部42の開閉動作を説明した図である。図4(a)は、第1の原紙クランプ部42が孔版原紙Gの先端を把持する閉位置にある状態を示した図であり、図4(b)は、第1の原紙クランプ部42が孔版原紙Gの先端を開放する開位置にある状態を示した図である。
【0055】
図4(a)に示すように、製版部6により製版された孔版原紙Gの先端が、第1のドラム41へ搬送されると、第1の原紙クランプ部42は、孔版原紙Gの先端をクランプする。具体的には、孔版原紙Gは、跳ね上げ板47を外周側から覆い、クランプ板46により第1のドラム41の表面に押圧されることにより、孔版原紙Gの先端が把持される。
【0056】
そして、孔版原紙Gの先端が把持された状態で第1のドラム41をA方向に回転され、孔版原紙Gが第1のドラム41の外周面に巻装される。このとき、第1のドラム41の回転に同期して搬送されて来る印刷用紙Wを第1のプレスローラ43にて第1のドラム41の孔版原紙Gに押圧することによって印刷用紙Wに孔版原紙Gの穿孔部分からインクが押し出されて画像が印刷用紙Wの表面に印刷される。
【0057】
印刷が終了すると、図4(b)に示すように、第1の原紙クランプ部42は、クランプ板46と跳ね上げ板47とを開位置へ変位させ、孔版原紙Gの先端を開放する。
【0058】
これにより、第1のドラム41に巻装された孔版原紙Gの先端が第1の原紙クランプ部42より浮上した状態とされる。そして、第1のドラム41がA方向に回転し、浮上した孔版原紙Gの先端が、第1の排版部8より、第1のドラム41から引き剥がされ、引き剥がされた孔版原紙Gは排版ボックス内に収納される。
【0059】
このとき、跳ね上げ板47は、第1のドラム41の回転軸P3方向に平行に延在し、第1のドラム41の回転軸P3方向端部よりも外側両端で支持されるように設けられているので、シート49が設けられていなければ、第1のドラム41の回転により、跳ね上げ板47が、自重やドラムの遠心力等により、第1のドラム41の外側方向に撓むことが予想される。
【0060】
しかしながら、本発明の実施例1である両面孔版印刷装置1では、第1の原紙クランプ部42に、跳ね上げ板47を第1のドラム41の外周面に引き付けるシート49が設けられているので、第1のドラム41が回転したとしても、シート49が、跳ね上げ板47を第1のドラム41の外周面に引き付ける。これにより、第1のドラム41の遠心力等による跳ね上げ板47の撓みを低減することができる。
【0061】
そのため、第1のドラム41から孔版原紙Gが引き剥がされた後に、第1のドラム41がA方向に回転した場合においても、跳ね上げ板47が、第1のドラム41の近傍に設置された第1の排版部8や分離爪81や分離ノズル82へ接触することを防止することができる。
【0062】
以上のように、本発明の実施例1である両面孔版印刷装置1によれば、跳ね上げ板47を第1のドラム41の外周面に引き付けるシート49が設けられているので、第1のドラム41の回転時における跳ね上げ板47の撓みを低減することができ、これにより、第1のドラム41の近傍に設置された第1の排版部8や分離爪81や分離ノズル82へ接触することを防止することができる。
【実施例2】
【0063】
本発明の実施例1では、跳ね上げ板47を第1のドラム41の外周面に引き付けるシート49が設けられた両面孔版印刷装置1を例に挙げて説明した。
【0064】
本発明の実施例2では、跳ね上げ板47を第1のドラム41の外周面に引き付ける磁石が設けられた両面孔版印刷装置を例に挙げて説明する。
【0065】
図5は、本発明の実施例2である両面孔版印刷装置1Aが備える第1の印刷部4の第1の原紙クランプ部42の拡大図である。なお、本発明の実施例2である両面孔版印刷装置1Aが備えるその他の構成については、本発明の実施例1である両面孔版印刷装置1が備える構成と同一であるので、説明を省略する。
【0066】
図5に示すように、第1の原紙クランプ部42Aは、クランプ板46と跳ね上げ板47Aとを有し、孔版原紙Gの先端を把持する閉位置と孔版原紙Gの先端を開放する開位置との間で変移自在に設けられている。
【0067】
跳ね上げ板47Aは、磁性体で成型されており、跳ね上げ板47と同様に、開位置までR1方向へ回動することにより、その先端の表面に設けられた先端表面部47aが、第1のドラム41の外周面に巻装された孔版原紙Gを第1のドラム41から跳ね上げる。
【0068】
また、跳ね上げ板47Aにおいて、第1のドラム41の回転軸P3方向であるX1方向における中央付近には、跳ね上げ板47Aを第1のドラム41の外周面に引き付ける磁石49Aが設けられている。
【0069】
これにより、クランプ板46が開位置までS1方向に回動することにより、孔版原紙Gの先端が開放されて孔版原紙Gが排版された場合、磁石49Aが、跳ね上げ板47Aを第1のドラム41の外周面に引き付けるので、第1のドラム41が回転した場合においても、第1のドラム41の遠心力等による跳ね上げ板47Aの撓みを低減することができる。
【0070】
また、磁石49Aは、第1のドラム41の回転軸P3方向、即ちX1方向において、分離爪81と重なり合う位置に設けられている。
【0071】
これにより、跳ね上げ板47Aの撓みを低減する必要性が高い位置で、第1のドラム41の外周面に引き付けることができるので、より跳ね上げ板47Aと分離爪81との接触を防止することができる。
【実施例3】
【0072】
本発明の実施例2では、跳ね上げ板47Aと分離爪81との接触を防止するために、跳ね上げ板47を第1のドラム41の外周面に引き付ける磁石が設けられた両面孔版印刷装置1Aを例に挙げて説明した。
【0073】
本発明の実施例3では、第1のドラム41が回転することにより分離爪81が接触した場合に、跳ね上げ板47を第1のドラム41側に押圧して誘導するように、誘導板が跳ね上げ板47に設けられた両面孔版印刷装置を例に挙げて説明する。
【0074】
図6は、本発明の実施例3である両面孔版印刷装置1Bが備える第1の印刷部4の第1の原紙クランプ部42Bの斜視図である。なお、本発明の実施例3である両面孔版印刷装置1Bが備えるその他の構成については、本発明の実施例2である両面孔版印刷装置1Aが備える構成と同一であるので、説明を省略する。
【0075】
図6に示すように、本発明の実施例3である両面孔版印刷装置1Bが備える第1の原紙クランプ部42Bは、クランプ板46と跳ね上げ板47Bとを有し、孔版原紙Gの先端を把持する閉位置と孔版原紙Gの先端を開放する開位置との間で変移自在に設けられている。
【0076】
跳ね上げ板47Bは、開位置までR1方向へ回動することにより、その先端の表面に設けられた先端表面部47aが、第1のドラム41の外周面に巻装された孔版原紙Gを第1のドラム41から跳ね上げる。
【0077】
また、跳ね上げ板47Bにおいて、第1のドラム41の回転軸P3方向であるX1方向における中央付近には、誘導板47bが設けられている。
【0078】
図7は、本発明の実施例3である両面孔版印刷装置1Bが備える第1の原紙クランプ部42Bの跳ね上げ板47Bに設けられた誘導板47bの拡大図である。
【0079】
図7に示すように、跳ね上げ板47Bには、分離爪81を誘導するために、分離爪81の接触方向に対して傾斜した誘導板47bが設けられている。
【0080】
これにより、誘導板47bは、第1のドラム41が回転することにより分離爪81が接触した場合に、跳ね上げ板47Bを第1のドラム41側に押圧して誘導する。
【0081】
図8は、本発明の実施例3である両面孔版印刷装置1Bの分離爪81が接触した場合の跳ね上げ板47Bの動作を説明した図である。図8(a)は、分離爪81が接触する前における跳ね上げ板47Bの状態を示した図であり、図8(b)は、分離爪81が接触したときにおける跳ね上げ板47Bの状態を示した図であり、図8(c)は、分離爪81が跳ね上げ板47Bに誘導された状態を示した図である。
【0082】
図8(a)に示すように、第1のドラム41がA方向に回転すると、跳ね上げ板47Bが分離爪81に接近する。そして、跳ね上げ板47Bに、シート49や磁石49Aが設けられていない場合、跳ね上げ板47BはR1方向に撓む場合がある。
【0083】
このとき、図8(b)に示すように、分離爪81の先端が、分離爪81の接触方向であるQ方向に対して、T方向に傾斜して設けられた誘導板47bの傾斜面に接触する。ここで、分離爪81の接触方向であるQ方向とは、第1のドラム41がA方向に回転した場合に、分離爪81が接触する方向であり、第1のドラム41の接線方向と一致する。
【0084】
さらに、第1のドラム41がA方向に回転すると、図8(c)に示すように、分離爪81の先端は、誘導板47bの傾斜面に沿って誘導され、それと共に、分離爪81により跳ね上げ板47Bが第1のドラム41側(R2方向)に押圧される。
【0085】
以上のように、本発明の実施例3である両面孔版印刷装置1Bによれば、第1のドラム41が回転することにより分離爪81が接触した場合に、跳ね上げ板47Bを第1のドラム41側に押圧して誘導するように跳ね上げ板47に設けられた誘導板47bを備えるので、第1のドラム41が回転することにより、跳ね上げ板47Bと分離爪81とが接触した場合においても、第1のドラム41の回転が強制的に停止されることを防止することができる。
【0086】
また、本発明の実施例1では、孔版原紙Gが着版された上流側のドラムにより印刷用紙Wの表面を印刷し、孔版原紙Gが着版された下流側のドラムにより印刷用紙Wの裏面を印刷する2ドラム式の両面孔版印刷装置1を例に挙げて説明したが、1ドラム式の両面孔版印刷装置や、1ドラム式の片面孔版印刷装置に適用することもできる。
【符号の説明】
【0087】
1,1A,1B…両面孔版印刷装置
2…画像読み取り部
3…給紙部
4…第1の印刷部
5…第2の印刷部
6…製版部
8…第1の排版部
9…第2の排版部
10…反転部
11…排紙部
41…第1のドラム
42,42A,42B…第1の原紙クランプ部
43…第1のプレスローラ
44…搬送ベルト
46…クランプ板(クランプ手段)
47,47A,47B…跳ね上げ板(跳上手段)
47a…先端表面部
47b…誘導板
48…台座
48a…磁石
49…シート(引付手段)
49A…磁石(引付手段)
71,81…分離爪
72,82…分離ノズル
73,83…分離ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穿孔された孔版原紙が外周面に巻装されるドラムと、
前記ドラムの軸方向に平行に延在して設けられ、前記孔版原紙の先端を保持するクランプ手段と、
前記ドラムの軸方向に平行に延在し、前記ドラムの軸方向端部よりも外側両端で支持されるように設けられ、前記クランプ手段が前記孔版原紙の先端を解放したときに前記孔版原紙を前記ドラムから跳ね上げる跳上手段と、
前記跳上手段を前記ドラムの外周面に引き付ける引付手段と、
を備えたことを特徴とする孔版印刷装置。
【請求項2】
前記ドラムの近傍に配置され、圧接されることにより前記孔版原紙に張り付いた印刷用紙を前記孔版原紙から分離する分離爪をさらに備え、
前記引付手段は、
前記ドラムの回転軸方向において前記分離爪と重なる位置に設けられた
ことを特徴とする請求項1記載の孔版印刷装置。
【請求項3】
前記引付手段は、
前記跳上手段と前記ドラムの外周面とを連結するシートである
ことを特徴とする請求項1又は2記載の孔版印刷装置。
【請求項4】
前記ドラムが回転することにより前記分離爪が接触した場合に、前記跳上手段をドラム側に押圧するように、前記跳上手段に設けられた誘導板を、
さらに備えたことを特徴とする請求項2記載の孔版印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−43318(P2013−43318A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181340(P2011−181340)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)