説明

学習プロセス最適化システム

【課題】時間や空間を越えた知的資源の統合と再利用し、知的資源の最適な配分を実現する。教育現場における教育の効果が、それを受ける学習者に最適に発揮されてはいない。それぞれの現場で、教育の効果あるいは学習の効果を定量化し、再教育の機会を最適に提供する。
【解決手段】そうした現状に対して、教育効果を測定し、学力の向上のための客観的な定量データとして学力を分析する。そのために、指導者が設定する期待値としての標準的な学力モデルとの学習者の理解度のバラツキを計算し、学力の不足部分に最適な学習教材をメタレベルで自動的に計算し、提供する。また、理解度や演習の採点結果などから学力を他の学習者との相対的な比較や学習者自身の学習履歴からの進捗度等の絶対的な比較、あるいは、学習環境とのアンケートを実施することで、学力へ影響する要因分析を定量的に大規模に実現し、最適な解決策を提案するデータとしての利用が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
マルチメディアデータベースを用いた知識ベースに関する。
【背景技術】
【0002】
ベクトル空間モデルを用いた情報間の距離を計量する方法で、情報の近似性を計量する数学の意味モデルを背景とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
時間や空間を越えた知的資源の統合と再利用し、知的資源の最適な配分を実現する。教育現場における教育の効果が、それを受ける学習者に最適に発揮されてはいない。企業等で行われる研修の効果を測定し、効果を得られなかった学習者に再教育の機会を提供することは、マネジメントの観点から言えば、費用対効果を測定できなければ、その機会を提供しにくくなる。特に、学校等で実施される試験は、学力の向上を目的とするよりもむしろ学力を検査し、他の学習者との比較をすることが目的で実施されている。その結果、一部の限られた優秀な学習者を除いては、自らの学力の分析が建設的に実施できず、当然の最適な努力がなされず、学力向上へ直結するデータの利用ができていない。その結果、学力を向上できていない学生が多くいると思われる。それぞれの現場で、教育の効果あるいは学習の効果を定量化し、再教育の機会を最適に提供する。とくに、いままでの学力試験は、大学入学試験や学校等で実施される試験は、学力の向上を目的とするよりもむしろ学力を検査し、他の学習者との比較をすることが目的で実施されている。その結果、一部の限られた優秀な学習者を除いては、自らの学力の分析が建設的に実施できず、当然の最適な努力がなされず、学力向上へ直結するデータの利用ができていない。その結果、学力を向上できていない学生が多くいると思われる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そうした現状に対して、学力の向上のための客観的な定量データとして学力を分析し、指導者が設定する期待値としての標準的な学力モデルとのバラツキを計算し、学力の不足部分に最適な学習教材をメタレベルで自動的に計算し、提供する。また、理解度や演習の採点結果などから学力を他の学習者との相対的な比較や学習者自身の学習履歴からの進捗度等の絶対的な比較、あるいは、学習環境とのアンケートを実施することで、学力へ影響する要因分析を定量的に大規模に実現し、最適な解決策を提案するデータとしての利用が可能となる。
【0005】
(1)知識空間の中での学習者の位相を計量する
目に見えない知識を構造的に整理・細分化し、明文化することで、分析の対象にできる。ある特定の知識領域に対しては、概念の上下・階層関係を認識し、時間的順序関係を定量的に表現できる。それぞれの整理された知識は、要素としてベクトルを生成することができ、ベクトル空間上で学習者の位相を計量することができる。
【0006】
(2)学力における優劣の因子を計量する
ある問題を解決するプロセスは、複数存在することが一般的である。問題解決に必要な知識を選択し、組織的に組み合わせて、問題を解決する。問題解決のために知識を組み合わせることは、人間がどのように処理をしているかを知ることは、非常に難しい。ただ、選択された知識と、その論理的な組み合わせを知ることは出来る。
たとえば、(A∧B)VC⇒Dという単純な論理式を考えた場合、AとBを組み合わせるか、Cを知っていれば、Dという結論が導き出せるわけです。つまり、すくなくとも、AとB、あるいは、Cを知っていなければ、Dという結論が得られません。逆に考えれば、Dを得た者は、AとB、あるいは、Cを知っているということが少なくとも分析できます。問題解決の標準的なプロセスを論理式で表現し、それに含まれる知識群を評価することで、因子を分析できると考えています。
さらに、Cは、複数の知識の関連が認められたとします。
C={c,c,c

する知識を表現していけば、さらに階層化することが出来ます。
={c10,c11,c12,c13,c14
こうした階層化した知識群を、それぞれ評価・分析することで、知識の全体像を総合的に評価することが出来、学力において優劣の因子を分析することが出来き、知識の有無から論理的な関係性を認識する能力との因果関係性を計量できます。
【0007】
(3)知識の部分空間の因果関連性を計量する
ある知識領域における専門家と非専門家との差は、知識の関連性を識別・連結できるという認識する能力にあると考えられる。論理的な関連付けが出来ると、ある一つの事象が、知識と1対1に関連性を持つか、1対多の関連性を持つか、さらには多対多の関連性を持つかどうかを認識できる。断片的な知識では、問題に対して論理的に広く深い認識が出来ない。この知識の関連性を認識できる能力の程度により、知識領域への認識の程度を分析することができるといえる。ゆえに、知識領域における学力の優劣の分析は、知識の有無のみならず、知識の関連性を認識できるかに依存すると思われる。こうした能力を分析することができれば、論理的に連結・関連性の欠如が、学力の優劣を決定する因子となると思われる。この欠如が分析できれば、適材が選択できると考える。
【0008】
知識の定量化手法
学問領域が細分化し、学会名が細分化していったように、知識領域も細分化できる。ある学問領域は、知識領域と同義的であると考えると、知識を整理・細分し、連結・関連を定量的に表現することを目的として、知識を分割する。たとえば、ある知識領域を以下のように分類する。

こうしたグラフ化により、分解された知識を記号化し、ベクトルを生成すると以下の通りである。
M={m,m11,m12,m111,m112,m113
このベクトルから階層関係や隣接関係あるいは順序関係を定量化することができる。
【0009】
手順1 階層関係を定量化する
知識の属性を細分化し、その属性を継承する階層構造を明文化する。
知識は、抽象的な対象です。しかし、知識は可視的に表現することで形式知として共有することが出来るようになります。全体として漠然としている知識を部分に分解し、可視的に表現することで、認識可能な最小構成単位に記号化することができます。知識の特殊化と一般化の双方向性・関連性を保ちつつ、知識の抽象度に応して属性を形式化し、属性の継承関係を定量的に表現することが出来ます。
【0010】
手順2 相関関係を任意に定量化する
階層化された知識属性の隣接関係を定量化する。
任意の隣接関係を定量化します。(対称行列)知識を関連性、連結性を定量的に表現することが目的です。

【0011】
手順3 順序関係を定量化する
階層化された知識属性の隣接関係や時間的順序等の相関関係を定量化する(隣接行列)。
専門知識や教科知識など系統的な情報を組み合わせた知識は、学習順序が存在します。そうした時間的順序を定量化することで、学習の手順が分析できます。逆に、そのことで学習者のコンテキストを分析し、最適な学習経路を提案できます。
なお、大局的な分類による階層で、知識の時間的順序を定量化します。知識の分類は、非常に難しい。部分に拘り過ぎると、全体を理解できなくなる可能性があり、部分最適化を行うことでも、全体最適化の保証はないし、知識の関連性を定量的に表現することはより困難になる。ゆえに、全体を支配する基本原理に基づいた分類にとどめるべきであると考える。
M={m,m,m,m,m
上記のベクトル要素の順序関係をグラフで表現する。

時間的な順序を表す隣接行列の場合、対称行列にはなりません。向きを示すため、方向性が定量的に表現できるように1が立っています。矢印の本数だけ、1が立っています。なお、対称行列になる隣接行列と同様、対角要素は実質的な意味を持たないため、0になっています。

【0012】
知識ベクトル空間上での学習者の状況を計量する
ある特定の知識領域Kを整理・細分化してi個の知識領域k,k,k,...,kが以下のように付加されているこを前提として考える。
【0013】
手順1 知識領域を分類する
K={k,k,k,k,k,k
【0014】
手順2 階層関係を定量化する
ここでは、分類された知識領域をさらに3層に階層化します。
={k10,k11,k12,k13,k14,k15
次に、第1層にある知識領域を第2層で以下のように分類します。
10={k100,k101,k102,k103,k104,k105
最後に、第2層で分類した知識領域を以下のように分類します。
100={k1000,k1001,k1002,k1003,k1004,k1005
【0015】
このような手順でいかなる専門知識や教科知識などの知識領域であれば、分類できると考えています。もちろん、階層構造や分類数など特定の知識領域に依存はしますが、階層化手法の原則は、同じであるということです。
【0016】
手順3 評価方法
階層の下位にあるベクトルから順に評価して、上位層のベクトルの要素に繰り上げていき、最終的に、知識領域Kの評価とする。
【0017】
学力を試験する
試験を実施し、設問ごとにロジカルに関連のある知識かどうかを予め設定します。真か偽で評価し、受験していない場合、0で評価する。

【0018】
正答率を知識の評価値とする。そのためには、正当した設問とそうでない設問という質的データを分析するために、ダミー変数を設定する。学習者の正答した設問を1とし、そうでな設問を0とすることで、正当数を数え上げることが出来る。さらに、設問は、ノードとの関連性を定義している。その定義に基づいて関連性を計量し、ノードの評価とする。設問の識別子Qnの評価を次のように定義する。
さらに、設問に関連する知識が定義されているので、正当数を分子として、分母は、関連する設問Rとして、知識ノードkiの評価値Eiを得る。

【0019】
学習者の現在の学習状況と目標とする学習状況を重みベクトルとして生成して、内積により、評価値を得る。

重みベクトルの生成方法は、学習者の現在の状況を分析する際の生成方法と同様に、教育体系における選考学習者をモデル学習者として、評価値を得る。その値を知識ノードごとに、100で正規化をする。ある特定の知識領域における得点の配分比率を知ることができる。

【0020】
また、学習者の現在の状況と目標とする学習状況の差を分析する。
=kxi−kyi
【0021】
ここまで分析して得られた結果から、最適なポートフォリオを提案することが出来き、メタレベルで最適なメディアコンテンツを提案することが出来る。たとえば、Diを降順に並べて、下位3つの要素からポートフォリオを構築する。最下位が、k5であったとして、下記の通りの順序関係が定量的に表現されていたとする。
→k→k,k→k
【0022】
さらに、階層関係が、
={k10,k11,k12,k13,k14,k15
10={k100,k101,k102,k103,k104,k105
100={k1000,k1001,k1002,k1003,k1004,k1005
【0023】
どうように2〜5の知識領域に対しても階層のそれぞれの要素を分析し、それぞれの評価値から、降順に並べ替えて、因子関係性を計量することで、最適なポートフォリオが構築できる。この場合の因子関係性は、単純に評価値の低順とする。問題をメタレベルで発見し、問題点を限定することができ、その関係性のある知識領域を習得することで問題解決が可能である。時間的順序に関しては、若い順序で並べ替えるか、マトリックスにより表現された順序で向きを調べて、向きをさかのぼって提案することで学習の手順を示すことができる。
【0024】
時間的推移
それぞれの評価値には、時間軸を表すt値を持っており、推移を分析するために、時間軸tをk個並べることで、時系列分析が可能となる。
【発明の効果】
【0025】
試験等で測定可能な学力水準における学習者の優劣のバラツキを解消する最適な努力は実行した学習者が指導者の求める期待水準および学力において優位と認められた被験者に相当する学力を向上させる効果がある。また、学力水準の高い学習者においても、努力を最適化することで、余剰努力を解消し、自分の趣味思考や研究課題等の学力の応用分野への時間と努力を投下できる機会を創造することができる。さらには、より多くの学習者を期待水準へ学力を高めることができれば、学歴主義に見られるある種のエリート教育へのブレイクスルーとして、大衆教育における期待水準向上の効果も期待される。指導者サイドがメタレベルで標準化された要求水準を設定することで、学習者は、学習課題を明確化でき、さらに、学力の不足部分を明確化することで、学習効果を定量化し、その結果を受け、努力を最適化することができる。アナログ技術による教育形態では、実現できなかった教育の効果測定の詳細な定量化は、より学力水準の低い学生により効果的である。学力水準の低い学習者は、自らの意思のみでの学習課題を解決する能力や課題の明確化による努力の最適化を実施できていないことが多いといわれている。そうした問題に対して、指導者サイドが、定量的に学習課題やその演習結果による学習効果を定量化することで、学習の努力の最適化が効率的に実施できる効果があり、より生産的に学習の効果を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
学習者からのフィードバックや指導者が設定する重要度から標準的な学力モデルを作成するためには、できるだけ多くのサンプル数が必要となります。その情報の収集と解析を効率的に実施するには、サーバー/クライアント方式によりインターネットに接続されたコンピュータとの連携的なシステムが必要になります。さらに、システム内で利用されるコンテンツにおける著作権等の知的財産権により、利用における制約条件が多くなればなるほど、最適な学習環境を形成することが困難になるので、そうしたボトルネックは取り除かれる契約をこのシステムでの不都合がおこらいように締結し、コンテンツを作成する必要があります。また、質の高いシステムやそのなかで利用されるデジタルコンテンツの質を継続的に改善するためには、有能な人材をマネジメントしなければならず、高い収益性を維持する必要があり、最良のビジネスモデルの必要性もあります。それを考えると、このシステムを導入するためには、あたらしい組織体系を構築し、システムにおける情報の集約力と、それを支える収益の集約力を高めるには、独占的なビジネスモデルの構築が、発明を実施する最良の形態であると考えています。
【産業上の利用可能性】
【0027】
教育の効果を測定あるいは再教育の機会を発見することが必要な産業、組織や現場での応用が可能です。教育者あるいは指導者の一方的な知識の伝達行為になりがちな教育現場で、学習者の効果を定量的に測定し、教育内容の改善や再教育への客観的なデータとしての利用が可能です。企業等で実施される研修の効果は、今後その組織の存続を決定づける死活要素です。そうした課題に対して、費用対効果を定量的に分析する手法は、経営の意思決定においても有益な手法です。特に、学校等の教育現場での応用は、個々の学習者の学習効果への測定が非常に困難で、平均的な学生という対象に教育が行われています。平均的な学生という仮想の学習者では、最適な手法を講じることができませんが、実測値として個々の学習者の学習効果を測定することで、それぞれに最適な学習資源や環境を提供することが可能になり、個々の学習者の学習効果を高めることで、全体的な学習効果の向上が期待できます。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある特定の知識領域に関する試験を実施する際、知識領域を階層構造に整理・細分化することで知識をベクトル空間上で表現することで、知識空間の中での被験者の位相を計量することで被験者の現在の学習状況を知ることができる学習プロセス最適化システム。
【請求項2】
ある特定の知識領域に関する試験を実施する際、知識領域を階層構造に整理・細分化することで知識をベクトル空間上で表現することで、学力における優劣の因子となっている知識領域を定量的に表現して、相関を計量することができる学習プロセス最適化システム。
【請求項3】
ある特定の知識領域に関する試験を実施する際、知識領域を階層構造に整理・細分化することで知識をベクトル空間上で表現することで、知識の部分空間の因果関連性を計量することで、知識領域の順序関係性から学習の順序を提案する学習プロセス最適化システム。
【請求項4】
請求項1から3で得られた計量結果を元に、学習者の現在の学習状況から知識領域に対する学習の課題、手順等の学習プランを分析することで、学習者の意思決定を支援する最適なポートフォリオを提案する学習プロセス最適化システム。
【請求項5】
社会的に信頼されている学力検査や学力を図る目的で実施される試験、選抜を目的とされる試験において学力が優位と認められた被験者が持つ学力を知識領域を整理・細分化および階層化したベクトル空間上で理想学力として学習および学力をモデリングすることで、最適な学習モデルとそうでない学習モデルを分析することができる学習プロセス最適化システム。
【請求項6】
学力において優位にあると認められた被験者が持つ学力を理想とする最適な学力モデルとして、システム上で学習する学習者の現在の学習状況との差を計量し、時間軸を評価項目に加え、その差を補填することが出来る努力の方向性を学習プランとして提案する学習プロセス最適化システム。
【請求項7】
ベクトル空間上に表現された知識領域において、学力において優位にある被験者が得た知識領域における評価値を重みベクトルとして生成し、目標とする学習状況とすることで、学習者の現在の学習状況との内積から距離を計量し、最適な学習プランを提案することが出来る学習プロセス最適化システム。