説明

安全カバーの開閉装置

【課題】自動で開閉する隔離体2を備えた安全カバーの開閉装置3において、隔離体2の開閉動作中に、障害物と干渉したことを精度良く検知して、その隔離体の停止又は反転動作を確実に行い得る安全装置を、安価に実現する。
【解決手段】操作手段42を操作することによって隔離体2が閉状態と開状態との間で動いている最中に、検出手段45によって検出した、供給回路4上の作動流体の圧力又は流量に関連するパラメータが変動したときに、隔離体2が停止又は反転動作するように、シリンダアクチュエータ31への作動流体の供給を制御する制御手段46,5を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、例えば、製造装置、加工装置及び工作機械等の各種の産業機械において、当該機械の動作部分等に相当する隔離対象部分と、当該機械のオペレータとの間に介在して両者を隔てるための、覆いや扉等の隔離体を含む安全カバーの開閉装置に関し、特にその安全カバーの干渉防止機構(安全装置)に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、製造装置、加工装置及び工作機械等の各種の産業機械においては、当該機械の近くにいて操作等を行うオペレータの安全を確保する上で、前記機械の動作部分等と、オペレータとの間に介在して両者を隔てる、覆い(カバー)や扉(ドア)等の隔離体が設けられる場合がある。こうした隔離体は、装置の動作中には、前述したように、前記動作部分等とオペレータとの間に介在して両者を隔てる状態(この状態は、隔離体の形状等によっては必ずしも閉じている状態にはならないが、以下においては説明の便宜上、閉状態という)と、装置の停止中には、例えばメンテナンス等のためにオペレータが動作部分等に触れることができるように、前記動作部分等とオペレータとの間から離れて両者を隔てない状態(前記と同様に、この状態は、隔離体の形状等によっては必ずしも開いている状態にはならないが、以下においては説明の便宜上、開状態という)と、の間で、動くことができるのが一般的である。
【0003】
このような隔離体の開閉を自動で行うために、例えば特許文献1〜3に記載されているようにエアシリンダを、その動力源として用いることが知られているが、隔離体を自動で開閉させる構成においては、その隔離体が動いているとき、特に隔離体が開状態から閉状態へと動いているときに、オペレータや、その他の障害物が隔離体と干渉して、隔離体に挟まれることを防止するための安全装置を設けることが望まれる。
【0004】
例えば特許文献1には、そうした安全装置として、水平方向にスライド移動する開閉ドアの端縁部に中空の弾性体を取り付けておき、当該開閉ドアのスライド移動中に、障害物が干渉して前記中空の弾性体が潰れたときには、そのことを内部圧力の変化によって検出して当該ドアを停止させる構成が記載されている。
【0005】
また、例えば特許文献2に記載された安全装置は、水平方向にスライド移動する自動開閉ドアに対して、別の小型サブドアを相対移動可能に取り付けておき、当該自動開閉ドアのスライド移動中に障害物が干渉して前記サブドアが移動をしたことを、リミットスイッチによって検出することで、当該自動開閉ドアを停止又は反転させるように構成されている。
【0006】
さらに、例えば特許文献3には、上下方向にスライド移動する開口部を開閉する開閉扉とは別に、その開口部に対して、近接スイッチを含む検知体を取り付けておき、障害物が開口部の開口縁部と開閉扉との間に挟まれて検知体が移動したことを、前記の近接スイッチによって検出し、開閉扉を停止又は反転させる安全装置が記載されている。さらにまた、特許文献3の「従来の技術」の欄には、前記開閉扉の移動範囲にエリアセンサを配置して、障害物が横切ることをエリアセンサによって検出したときには、開閉扉を停止又は反転させる技術も記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−16053号公報
【特許文献2】実開平6−42044号公報
【特許文献3】特開2000−354936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、前記特許文献1〜3に開示された安全装置のように、干渉を直接的に検知しようとして、各種のセンサを利用した場合、センサが、比較的高価である一方で、センサの検出に死角があったりして、その検知精度は必ずしも高くない。そうした死角を無くすために、例えばセンサの数を増やせば増やすほど、その分、高価になってしまう一方で、センサの数を増やすだけで死角を全て無くすことは極めて困難であり、検知漏れが生じることが避けられない。
【0009】
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、自動で開閉する隔離体を備えた安全カバーの開閉装置において、隔離体の開閉動作中に、障害物と干渉したことを精度良く検知して、その隔離体の停止又は反転動作を確実に行い得る安全装置を、安価に実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者らは、隔離体と障害物との干渉を直接的に検知するのではなく、その隔離体を動かすための、流体圧を利用したシリンダアクチュエータに着目して検討を重ねた。その結果、本願発明者らは、シリンダアクチュエータに対し作動流体を供給する供給回路上の、作動流体の圧力又は流量に関連するパラメータが、前記隔離体が動いている最中は、通常であれば一定になるのに対し、前記隔離体が障害物と干渉したときには、前記パラメータが変動することを見いだして、本願発明を完成するに至ったものである。
【0011】
具体的に、ここに開示する技術は安全カバーの開閉装置に係り、この開閉装置は、産業機械における所定の隔離対象部分と前記オペレータとの間に介在して、前記隔離対象部分と前記オペレータとを互いに隔離するための隔離体と、前記隔離体に連結されかつ、前記隔離対象部分と前記オペレータとを隔離する閉状態と、前記隔離対象部分とオペレータとを隔離しない開状態との間で前記隔離体を動かす、流体圧を利用したシリンダアクチュエータと、前記シリンダアクチュエータに対し接続されかつ、当該シリンダアクチュエータに対し作動流体を供給する供給回路と、前記供給回路上に設けられかつ、前記シリンダアクチュエータに対する前記作動流体の供給を制御することによって、前記隔離体を前記閉状態と開状態との間で動かすように前記シリンダアクチュエータを動作させる操作手段と、前記供給回路上の所定箇所において前記作動流体の圧力又は流量に関連するパラメータを検出する検出手段と、前記操作手段を操作することによって前記隔離体が前記閉状態と前記開状態との間で動いている最中に、前記検出手段によって検出されたパラメータが変動したときに、前記隔離体が停止又は反転動作するように、前記シリンダアクチュエータへの前記作動流体の供給を制御する制御手段と、を備えている。
【0012】
ここで、「産業機械」とは、主に工場等において、製造、加工、成形、及び処理等を行う製造装置、加工装置及び工作機械等を含む機械であり、「産業機械の隔離対象部分」とは、産業機械の動作中に、当該産業機械の操作等を行うためのオペレータが、その隔離対象部分に触れたり、当たったり、巻き込まれたりすることを確実に防止することによって、オペレータの保護、及び/又は、隔離対象部分の保護をすべき部分であって、隔離対象部分には、例えばオペレータの保護の観点からは、産業機械において高速で動作する部分や、例えば切断等のための刃物を含む部分等が含まれる。また、「隔離体」は、隔離対象部分の全体を覆うような覆い(カバー)や、隔離対象部分とオペレータとの間に介在するように配設される扉(ドア)又は鎧戸(シャッター)等を含み得る。また、「(隔離体が)閉状態と開状態との間で動(く)」とは、隔離体が、所定位置からそれとは別の位置まで所定の経路で移動をする場合や、例えば展開及び巻回するシャッターのように、隔離体の形状が変化することによって閉状態と開状態とを切り換える場合を含み得る。
【0013】
また、「流体圧を利用したシリンダアクチュエータ」とは、例えば空気圧又は油圧が供給されるシリンダ室を備えかつ、その流体圧エネルギを機械的エネルギに変換するアクチュエータであり、流体圧の供給を制御することによって、所定の方向に直線的に往復動作をするアクチュエータや、所定の軸を中心として揺動動作をするアクチュエータを含み得る。
【0014】
「操作手段」は、オペレータ等が操作をすることによって、シリンダアクチュエータに対する作動流体の供給を制御し得る手段であって、例えば作動流体の供給及び非供給を切り換える切換弁を含み得る。例えば、その切換弁の切り換え動作を手動で直接的に行う操作弁によって操作手段を構成してもよいし、前記の切り換え動作を電気的に行う電磁弁と、当該電磁弁の切換動作を行うために、オペレータ等が操作する操作ボタンとを含んで操作手段を構成してもよい。
【0015】
「作動流体の圧力又は流量に関連するパラメータを検出する検出手段」は、作動流体の圧力、流量、圧力に関連する特定パラメータ又は流量に関連する特定パラメータを検出する手段であって、そうしたパラメータの大きさに応じた電気信号を出力する、いわゆるセンサ(圧力センサや、流量センサ等)や、パラメータの大きさに応じた機械的な動作を行う機構(例えば受圧部が、圧力の大きさに応じた量だけ移動をするような機構)を含み得る。
【0016】
「制御手段」は、前記検出手段が電気的な構成である場合には、シリンダアクチュエータへの作動流体の供給及び非供給を切り換える電磁弁、及び、前記検出手段からの電気信号を受けて前記電磁弁に対する所定の電気信号を出力する回路を含んで構成してもよい。ここでいう「回路」には、ハードウエア的に構成された電気回路、及び、プロセッサとソフトウエアとの組み合わせからなるソフトウエア的に構成された回路を含み得る。また、前記検出手段が機械的な構成である場合には、前記検出手段の機械的な動作を、切換弁の切換動作に変換する機構(例えばリンク機構)等を含んで制御手段を構成してもよい。
【0017】
この構成によると、操作手段の操作に応じて、シリンダアクチュエータに対する作動流体の供給が制御され、それによって、隔離体が閉状態と開状態との間で動く。つまり、オペレータの操作に応じて、隔離体が閉状態、又は、開状態に切り換えられる。前記隔離体が動いている最中は、通常であれば、供給回路上の所定箇所における作動流体の圧力又は流量に関連するパラメータは変動をせず、一定である。
【0018】
これに対し、隔離体が動いている最中に、当該隔離体と例えばオペレータとが干渉した場合等には、その干渉は隔離体の動きに対する抵抗となるため、当該隔離体を動かす駆動源であるアクチュエータへの作動流体の供給に影響する。そのため、通常時は一定の前記パラメータが、干渉時には変動する。パラメータの変動は検出手段によって検出され、それに応じて制御手段は、隔離体が停止又は反転動作するように、シリンダアクチュエータへの作動流体の供給を制御する。こうして、隔離体が動いている最中に、当該隔離体と障害物とが干渉したときには、隔離体が停止又は反転するため、例えばオペレータが隔離体に挟まれることが未然に回避される。
【0019】
このように前記の構成では、隔離体が障害物と干渉すること自体をセンサ等によって直接的に検出するのではないため、センサ利用に起因する高コストの問題が解消される。それと共に、センサの死角の問題も解消され得る。つまり、前記の構成では、供給回路上の作動流体の圧力又は流量に関係するパラメータの変動によって検知するため、障害物が隔離体のどこの部分で干渉したかに拘わらず、パラメータが変動して隔離体が障害物と干渉したことを検知し得る。このため、死角の問題は生じ得ず、隔離体と障害物との干渉を精度良く検知し得る。その結果、検知精度の高い安全装置を安価に実現し得る。
【0020】
前記制御手段は、前記検出手段によって検出されたパラメータの値が予め設定したしきい値を超えたときに、前記隔離体が停止又は反転動作するように前記シリンダアクチュエータへの前記作動流体の供給を制御するように構成されている、としてもよい。
【0021】
この構成によると、検出したパラメータの値としきい値との比較に基づいて、隔離体の干渉を検知するため、簡易な構成で、隔離体の干渉を精度良く検知することが実現し得る。ここで、「パラメータの値が予め設定したしきい値を超え」るとは、パラメータの値がしきい値よりも大きい値になること、及び、パラメータの値がしきい値よりも小さい値になること、の双方を含むものとする。
【0022】
この構成においては、前記安全装置は、前記隔離体が前記閉状態又は前記開状態でないことを検出する状態検出手段をさらに備え、前記制御手段は、前記状態検出手段が前記隔離体の閉状態又は開状態でないことを検出しているときであって、前記検出手段によって検出されたパラメータの値が変動したときに、前記隔離体が停止又は反転動作するように、前記シリンダアクチュエータへの前記作動流体の供給を制御するように構成されている、としてもよい。
【0023】
前記隔離体が閉状態又は開状態にあるとき、つまり隔離体が静止している状態は、シリンダアクチュエータに対する作動流体の供給又は排出がされないため、供給回路上の作動流体の圧力又は流量に関連する前記パラメータは一定であるが、その値が前記しきい値を超えた状態で一定になる場合がある。この場合、隔離体が干渉していると誤検知する虞があることから、状態検出手段によって検出された隔離体の状態、つまり閉状態又は開状態でないこと、及び、検出したパラメータの値としきい値とを比較すること、を組み合わせることによって、隔離体が動いているときの干渉を、精度良く検知し得るようになる。
【0024】
前記制御手段は、前記検出手段によって検出されたパラメータの変化率が予め設定したしきい値を超えたときに、前記隔離体が停止又は反転動作するように、前記シリンダアクチュエータへの前記作動流体の供給を制御するように構成されている、としてもよい。
【0025】
この構成によると、パラメータの値そのものでなく、パラメータの変化率に基づいて隔離体の干渉を検知するため、隔離体の干渉の誤検知を防止して、検知精度がより一層向上し得る。
【0026】
前記隔離体は上下方向に昇降するように構成され、前記シリンダアクチュエータは、ピストンロッドを有していて、前記作動流体の供給及び排出に伴い当該ピストンロッドが上下方向に伸長及び収縮することにより、前記隔離体を開状態と閉状態との間で昇降させ、前記制御手段は、前記隔離体が前記開状態から閉状態へと移動している最中に、前記検出手段によって検出されたパラメータの値が変動したときに、前記隔離体が停止又は反転動作するように、前記シリンダアクチュエータへの作動流体の供給を制御するように構成されている、としてもよい。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、前記の安全カバーの開閉装置は、隔離体が障害物と干渉することをセンサ等によって直接的に検知するのではなく、前記隔離体の干渉を、供給回路上の所定のパラメータの変動を検出することによって検知するから、センサ利用に起因する高コストの問題及びセンサの死角の問題を解消して、検知精度の高い安全装置を安価に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施形態に係る安全カバーの開閉装置が設けられた、電線処理装置の概略斜視図である。
【図2】電線処理装置の構成を概略的に示す平面図である。
【図3】開閉装置の空気圧回路の構成を示す回路図であり、カバーの開状態を示している。
【図4】開閉装置の空気圧回路の構成を示す回路図であり、カバーの閉状態を示している。
【図5】開閉装置の空気圧回路の構成を示す回路図であり、カバーの下降中に障害物との干渉が生じた非常状態を示している。
【図6】制御回路の構成を示す回路図である。
【図7】圧力センサの検出値の変動波形の一例を示す図であり、(a)干渉が生じていない場合の波形、(b)干渉が生じた場合の波形である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、安全カバーの開閉装置の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。図1は、安全カバー2の開閉装置を備えた、産業機械の一つとしての電線処理装置1を、概略的に示している。電線処理装置1は、長尺の被覆電線を所定長さに切断し、その切断された被覆電線の両端部の被覆を剥ぎ取り、この被覆が剥ぎ取られた電線両端部に端子を圧着させる装置である。
【0030】
電線処理装置1は、図1,2に示すように、テーブル10の天板上に各種の機器が配置されて構成されており、図2における紙面左側に、図示は省略するが被覆電線Wが巻回されたリールが配設され、当該リールから引き出された被覆電線Wが、図2における紙面左から右向きに、この電線処理装置1に供給される(図2の白抜きの矢印参照)。尚、以下の説明においては、その説明の便宜上、電線の供給方向を前後方向(図2における紙面左右方向)として、電線の供給側を前側、その反対側を後側と呼び、電線の供給方向に直交する方向を左右方向(図2における紙面上下方向)として、図2における紙面上側を左側、紙面下側を右側と呼ぶ場合がある。
【0031】
電線処理装置1は具体的には、天板上における電線の供給側(前側)であって、左右方向の略中央位置に配置されかつ、被覆電線Wを所定寸法づつ間欠的に、後方へと送り出す測長ローラ11と、該測長ローラ11における電線供給下流側(後側)に配置され、該測長ローラ11から送り出された被覆電線Wを把持するFクランプ12及びRクランプ13とを備えている。また、Fクランプ12とRクランプ13との間には被覆電線Wの切断、被覆の剥ぎ取りを行うためのカッタ14が配設されている。さらに、Fクランプ12の左側方にはフロント側圧着機15が、Rクランプ13の右側方にはリヤ側圧着機16が夫々配設されていると共に、前記リヤ側圧着機16に近接した位置には電線排出機17が配設されている。ここで、この電線処理装置1における、被覆電線Wの処理動作の概略について説明する。測長ローラ11から送り出された被覆電線WをFクランプ12及びRクランプ13が把持し、カッタ14によってFクランプ12とRクランプ13との中間位置において被覆電線Wの切断が行われる。その後、Fクランプ12が被覆電線Wを把持したまま後方に移動すると共に、カッタ14が当該被覆電線Wの先端部に接触され、この状態からFクランプ12が元の位置に戻る方向に移動することにより、被覆電線Wの先端部における被覆のみが剥ぎ取られる。同様に、Rクランプ13が被覆電線Wを把持したまま前方に移動すると共に、その後、カッタ14が当該被覆電線Wの先端部に接触され、この状態からRクランプ13が元の位置に戻る方向に移動することにより、被覆電線Wの先端部における被覆のみが剥ぎ取られる。このようにして各電線先端部の被覆の剥ぎ取りが行われた後、Fクランプ12が被覆電線Wを把持したままフロント側圧着機15に移動し、これと同時にRクランプ13が被覆電線Wを把持したままリヤ側圧着機16に移動する(図2の仮想線参照)。そして、この状態でフロント側圧着機15及びリヤ側圧着機16夫々において電線Wの先端部への端子Tの圧着動作が行われて、Fクランプ12は被覆電線Wを把持したまま初期位置に戻る一方、Rクランプ13は、被覆電線Wを電線排出機17に渡した後、被覆電線Wを把持することなく初期位置に戻り、電線排出機17からは両端に端子Tが圧着された処理済みの被覆電線Wが得られることになる。そして、このような動作が連続的に行われるようになっている。尚、ここでは、一つのカッタ14が、被覆電線Wの切断及び被覆の剥ぎ取りを全て行うようにしているが、例えば被覆電線Wの切断用カッタ、電線Wの先端部(前端部)の被覆の剥ぎ取り用カッタ、及び電線Wの先端部(後端部)の被覆の剥ぎ取り用カッタの3つのカッタを備えるようにしてもよい。
【0032】
そうしてこの電線処理装置1には、前述したように、その電線処理の動作中に、天板上に配置された各機器11〜17をオペレータから隔離するための、隔離体としての安全カバー2及びその開閉装置が設けられている。安全カバー2は、図1に示すように、上壁と4つの側壁とを含んで構成された、下側開口の矩形の覆いであって、テーブル10の天板上に配置された各機器11〜17の全てを覆うように配置される(図1の仮想線参照。以下、この状態をカバーの閉状態ともいう)ことによって、各機器11〜17を隔離対象物として、これらを、この電線処理装置1のオペレータから隔離する。ここで、前記の安全カバー2の各壁を、例えば透明性を有する部材によって構成すれば、安全カバー2を閉状態にして各機器11〜17を覆ったときでも、安全カバー2を通じて各機器11〜17を視認することができ、作業上、好ましい。この安全カバー2は、テーブル10の天板上を全て覆うような大型のカバーであると共に、詳細な図示は省略するが、各壁を構成する透明性を有する板状の部材と、それを固定するためのフレームとを含んで構成されており、比較的重量の重いカバーとなっている。
【0033】
安全カバー2は、電線処理装置1の非動作時には、前記各機器11〜17のメンテナンス等のために、図1に実線で示すように、前記カバー2の閉状態から上方に移動をして各機器11〜17を開放する状態(以下、この状態をカバーの開状態ともいう)にすることが可能に構成されている。つまり、安全カバー2の上下方向の昇降は、手動でなく、開閉装置3によって自動で行われるように構成されている。
【0034】
開閉装置3は、図1,3に示すように、安全カバー2に連結されて当該安全カバー2を昇降させる、一対のエアシリンダ31,31と、各エアシリンダ31,31に対して作動流体としてのエアを供給すると共に、各エアシリンダ31,31からエアを排出するための供給回路4と、を備えて構成されている。
【0035】
エアシリンダ31は、この実施形態では、エアをピストンの片側にのみ供給することができる単動シリンダであって、直線的に往復移動するピストンロッド311がエアシリンダ31の片側にのみ存在する片ロッドシリンダである。このエアシリンダ31は、図1に示すように、テーブル10の天板上の、前記フロント側圧着機15及びリヤ側圧着機16の近傍において、そのシリンダ軸が上下方向を向くように配置されている。安全カバー2には、各エアシリンダ31のピストンロッド311の先端部が固定されており、収縮状態のピストンロッド311が鉛直上向きに伸長するに伴い安全カバー2が上昇して、安全カバー2が閉状態から開状態へと切り換えられると共に、後述するように安全カバー2の重量によって伸長状態のピストンロッド311が鉛直下向きに収縮するに伴い安全カバー2が下降して、安全カバー2が開状態から閉状態へと切り換えられるように構成されている。
【0036】
供給回路4は、図3〜5に一例を示すように、図示省略のエア供給源に連通するメイン供給路41と、そのメイン供給路41上に介設された手動の操作弁42とを備えている。操作弁42は、安全カバー2の昇降を行うために、電線処理装置1の操作を行うオペレータにより操作される弁であって、図1に示すように、電線処理装置1のテーブル10上に配置されている。操作弁42は、供給回路4を、メイン供給路41の上流側及び下流側を互いに接続して各エアシリンダ31にエアを供給する状態(図3参照)と、メイン供給路41を遮断して各エアシリンダ31からのエアを大気に排出する状態(図4参照)とに切り換える。
【0037】
メイン供給路41の下流端は、前記一対のエアシリンダ31,31のそれぞれに接続するように分岐しており、各分岐路43上には、速度制御弁44が配設されている。この速度制御弁44は、エアシリンダ31のピストンロッド311の伸長及び収縮の速度、ひいては安全カバーの昇降速度を所定の速度に調整する。
【0038】
各分岐路43の下流端は、エアシリンダ31のキャップ側(ピストンロッドが出ていない側)に接続されており、これにより、メイン供給路41及び各分岐路43を通じてエアをエアシリンダ31に供給したときには、そのピストンロッド311が伸長して、前述したように安全カバー2が上昇する。一方、詳しくは後述するが、操作弁42の切り換えによってエアシリンダ31からエアを排出可能にしたときには、安全カバー2の重量によってピストンロッド311が収縮して、前述したように安全カバー2が下降する。
【0039】
分岐路43上にはまた、エアの圧力を検出する圧力センサ45が配設されており、詳細は後述するがこの圧力センサ45は、分岐路43上のエアの圧力に基づいて、圧力が所定のしきい値を超えた(圧力が所定のしきい値よりも低くなった)ときに、信号を出力(ON)するように構成されている。
【0040】
メイン供給路41の下流端(つまり、分岐路43の分岐位置)と、操作弁42との間にはまた、エアシリンダ31へのエアの供給を切り換え得る電磁弁46が配設されている。この電磁弁46は、前記操作弁42と前記分岐位置とを接続する通常状態と、前記操作弁42をバイパスするように設けられたバイパス路47と前記分岐位置とを接続する非常状態とに切り換える弁であり、通常の状態、つまり後述するように、安全カバー2の昇降に際し障害物等との干渉がないときには、前記電磁弁46は通常状態にされる。このように電磁弁46が通常状態にあるときには、図3に示すように、操作弁42をエア供給状態にしたときには各エアシリンダ31にエアが供給されて、安全カバー2が上昇する一方、図4に示すように、操作弁42をエア排出状態にしたときには各エアシリンダ31からエアが排出されて、安全カバー2が下降するようになり、安全カバー2の昇降を、操作弁42の切り換え操作によって手動で操作し得るようになる。
【0041】
これに対し、電磁弁46が非常状態にあるときには、図5に示すように、分岐位置とバイパス路47とが接続されるため、操作弁42の状態に拘わらず、つまり操作弁42がエア排出状態にあるときでも、バイパス路47を通じてエアシリンダ31にエアが供給される状態となる。これにより、例えば操作弁42の切り換え操作に伴い安全カバー2が下降している最中において、電磁弁46が通常状態から非常状態に切り換わったときには、各エアシリンダ31にエアが供給されることで、ピストンロッド311が反転動作をする、つまり、安全カバー2が上昇するようになる。尚、供給回路4の構成は、図3〜5の構成に限定されるものではなく、適宜の構成を採用することが可能である。
【0042】
電磁弁46は、制御回路5によって制御されるように構成されている。この制御回路5には、前記圧力センサ45が接続されると共に、オートスイッチ32が接続されている。ここで、オートスイッチ32は、前記いずれか一方(又は双方)のエアシリンダ31に設けられ、ピストンロッド311が収縮しているとき、換言すれば安全カバー2が閉状態にあるときに信号を出力(ON)するスイッチである。制御回路5は、これら圧力センサ45の出力及びオートスイッチ32の出力に基づいて、電磁弁46を制御する。
【0043】
図6は、制御回路5の構成の一例を示しており、同図において符号55は、所定の直流電圧が印加された電源ライン、符号56はアースラインである。この制御回路5は、大別して、圧力センサ45を含む圧力検出回路部51、前記電磁弁46を非常状態に切り換えるための非常回路部52、前記オートスイッチ32を含むシリンダ位置検出回路部53、及び前記電磁弁46を通常状態に復帰するための復帰回路部54を含んで構成されている。
【0044】
圧力検出回路部51において、圧力センサ45にはT1リレーが接続されており、前述したように、分岐路43上のエアの圧力が所定のしきい値を超えたときには、圧力センサ45が信号を出力することによりT1リレーが通電される。T1リレーの通電に伴い非常回路部52に設けられたT1aスイッチ(リレー接点)がONになる。
【0045】
一方、シリンダ位置検出回路部53において、オートスイッチ32にはK1リレーが接続されており、前述したように、ピストンロッド311が収縮したときには、オートスイッチ32が信号を出力することによりK1リレーが通電される。非常回路部52に設けられたK1bスイッチ(リレー接点)は通常時がONであり、K1リレーの通電に伴い当該K1bスイッチはOFFになる。
【0046】
そうして、非常回路部52においては、前記T1aスイッチ及びK1bスイッチが共にONになることで、電磁弁46が非常状態に切り換えられることになる。つまり、電磁弁46は、安全カバー2が閉状態にない(スイッチK1bがON)でかつ、分岐路43上のエアの圧力が所定のしきい値を超えたとき(スイッチT1aがON)に、非常状態に切り換えられることになる。
【0047】
復帰回路部54には、手動操作のリセットスイッチ57が設けられており、このリセットスイッチ57をON操作することによって、電磁弁46が通常状態に切り換えられることになる。従ってこのリセットスイッチ57は、前述したように電磁弁46が非常状態になった後に、通常状態に戻すために、オペレータが操作するスイッチである。
【0048】
次に、前記の構成の安全カバー2の開閉装置の動作について、図を参照しながら説明する。先ず、閉状態にある安全カバー2を上昇させるときには、オペレータが操作弁42を操作することによって、当該操作弁42をエア供給状態に切り換える。このときに電磁弁46は通常状態にある。これにより、(例えば主電源の投入によって予め動作可能な)エア供給源からのエアが、メイン供給路41、操作弁42、電磁弁46及び各分岐路43を通じて、各エアシリンダ31に供給され、それによって各エアシリンダ31のピストンロッド311は伸長する(図3参照)。その結果、閉状態の安全カバー2が上昇して、開状態へと変化する(図1の実線参照)。ここで、例えばパイロット式の逆止弁を供給回路4上に設けて、エアの供給を停止してもエアシリンダ31内のエア圧を保持することで、安全カバー2が開状態のままになるようにしてもよい。
【0049】
開状態にある安全カバー2を下降させるときには、オペレータが操作弁42を操作することによって、当該操作弁42をエア排出状態に切り換える。このときに電磁弁46は通常状態にある。これにより、図4に示すように、エアシリンダ31内のエアは、各分岐路43、電磁弁46、及び操作弁42を介して、大気に排出され得るから、安全カバー2の重量によってピストンロッド311は収縮し、安全カバー2は下降する。尚、分岐路43上にクイックエキゾーストバルブを介設して、そこからエアを排出してもよい。
【0050】
ここで、図7は、安全カバー2が下降している最中の、分岐路43におけるエアの圧力値を検出した結果を示している。図7(a)は、安全カバー2が障害物等を干渉することなく、開状態から閉状態へと下降した場合を示しており、同図に示されるように、安全カバー2が障害物等を干渉しない場合は、エアの圧力は、安全カバー2の下降の最中においてほぼ一定値となる。このため、エアの圧力が予め設定したしきい値を超える(しきい値よりも小さくなる)ことはなく、前述したように圧力センサ45は信号を出力しないため、電磁弁46は異常状態に切り換わらない。その結果、安全カバー2は、最下位置まで下降をして閉状態となる。尚、安全カバー2は、最下位置まで下降をして閉状態となったときには、エアの圧力が予め設定したしきい値を超えることになるが、オートスイッチ32がONになってスイッチK1bがOFFになることから、電磁弁46は異常状態に切り換わらない(図6参照)。
【0051】
これに対し、図7(b)は、安全カバー2が障害物等と干渉した場合のエアの圧力を示しており、安全カバー2が障害物等と干渉した場合は、安全カバー2の下降の抵抗となることで、エアの圧力が変動する。このことによって、エアの圧力は、所定のしきい値を超える(しきい値よりも小さくなる)ことになる。この場合、圧力センサ45は信号を出力するため、スイッチT1aがONになって(このとき、オートスイッチ32はOFFであるため、スイッチK1bはONである)、電磁弁46は異常状態に切り換わる(図5,6参照)。図5に示すように、電磁弁46が異常状態に切り換われば、操作弁42がエア排出状態にあっても、バイパス路47を通じてエア供給源からのエアが、各エアシリンダ31に供給されるため、ピストンロッド311が伸長することになる。つまり、下降中の安全カバー2が反転して上昇するようになり、安全カバー2は開状態になる。こうして、下降中の安全カバー2と例えばオペレータとが干渉したときには、安全カバー2が反転動作をすることで、オペレータが安全カバー2に挟まれることが、未然に防止される。尚、こうした安全装置の作動によって、安全カバー2が開状態になった後に、その安全カバー2を閉状態に切り換えるときには、リセットスイッチ57をON操作することによって、電磁弁46を通常状態に復帰させる。これによって、操作弁42をエア排出状態にすることで、安全カバー2を下降させることが可能になる。
【0052】
この構成の安全カバー2の開閉装置3では、エアシリンダ31にエアを供給及び排出する供給回路4上の圧力の変動を検出することによって、安全カバー2と障害物との干渉を検知している。このため、安全カバー2と障害物との干渉を直接的に検知するための、エリアセンサ、リミットスイッチ、近接センサ等のセンサは不要であると共に、そうしたセンサを配置した場合に生じ得る、センサの検出死角の問題も生じない。つまり、障害物がどのような位置で安全カバー2と干渉しようとも、安全カバー2の下降動作に対する抵抗となるような場合は、供給回路4上のエアの圧力は変動する。例えば下降中の安全カバー2の下側で、当該安全カバー2と干渉する場合は勿論のこと、下降中の安全カバー2が側方から押されるような場合でも、供給回路4上のエアの圧力が変動するようになる。そのため、安全カバー2と障害物との干渉を確実にかつ精度良く検知することが可能になる。しかも、エアの圧力の変動を一つの圧力センサ45のみで検知可能であるから、安全装置を安価に構成することでき、有利である。
【0053】
また、前記の圧力センサ45は、エアの圧力が予め設定したしきい値を超えたときに、信号を出力する構成であるため、簡易な構成としつつも、前述したように、安全カバー2と障害物との干渉を精度良く検知することが可能になる。この場合においては安全カバー2が最下位置に移動したときにも、圧力センサ45は信号を出力してしまうものの、エアシリンダ31の位置を検出するオートスイッチ32を組み合わせることによって、そうした誤検知が確実に排除され、干渉検知精度を高めることができる。尚、エアシリンダ31のピストンロッド311の位置は、オートスイッチ32によって検出することに限らず、例えばリミットスイッチや近接センサ等を利用してもよい。尚、この構成では、安全カバー2が最下位置に移動したときには安全装置が作動しないようにしているため、安全カバー2が最下位置に位置付けられたときに、その下端とテーブル10の天板との間に、所定の隙間、例えばオペレータの指が挟まれることがない程度の大きさの隙間等、適宜の大きさの隙間を設けておいてもよい。
【0054】
(他の実施形態)
尚、前記の構成では、安全カバー2と障害物との干渉を検知したときに、安全カバー2を反転動作させるようにしているが、安全カバー2を停止させるようにしてもよい。これは、前記の電磁弁46の構成を変更することによって実現し得る。
【0055】
また、前記の構成では、供給回路4上のエアの圧力を検知パラメータとしているが、これに限らず、供給回路4上のエアの流量を検知パラメータとしてもよい。つまり、安全カバー2の下降中は、通常時はエアの流量は一定となるが、安全カバー2と障害物とが干渉したときには、圧力と同様に流量も変動する。このことから、流量の変動を検知することによっても、安全カバー2と障害物との干渉を精度よく検知し得る。ここで、流量検出センサは、操作弁42よりも下流側の適宜の位置に配置することができる(尚、前述したように、クイックエキゾーストバルブを設ける場合には、当該クイックエキゾーストバルブ位置に流量センサを設けることが望ましい)。さらに、供給回路4上のエアの圧力に関連する適宜のパラメータ、又は、流量に関連する適宜のパラメータを検出するようにしてもよい。
【0056】
さらに、前記の構成では、制御回路5を、リレーを含んでハードウエア的に構成しているが、プロセッサとソフトウエアとを組み合わせたソフトウエア的な回路としてもよい。この回路は、制御プログラムによって動作するプロセッサが、圧力センサ45からの信号及びオートスイッチ32からの信号に基づいて両信号がONか否かを判断し、両信号がONのときには、電磁弁46を異常状態に切り換えるための信号を出力するようにすればよい。このようなソフトウエア型の回路では、例えば供給回路4上のエアの圧力値を逐次出力する圧力センサと組み合わせることによって、当該センサの圧力検出値の変化率を演算することも容易に実現する。図7(b)に一例を示すように、安全カバー2と障害物とが干渉したときには、圧力値が変動することで、変化率が大きくなり得ることから、圧力値の変化率が所定のしきい値を超えたときに、安全カバー2と障害物とが干渉したと検知するようにしてもよい。さらにまた、このようなソフトウエア型の回路では、前記の操作弁42を電磁弁に構成して当該回路が、電磁弁を制御するようにしてもよい。つまり、オペレータが例えば操作スイッチを操作することに応じ、前記回路が、前記の電磁弁の状態を切り換えて安全カバー2の昇降を切り換えるようにしてもよい。
【0057】
また、前記の構成では、供給回路4上のエアの圧力変動を、圧力センサ45の電気信号として取り出しているが、供給回路4上のエアの圧力が所定のしきい値を超えたことを、機械的な動作として取り出すようにしてもよい。この場合は、その機械動作を、例えばリンク機構を介して制御弁(前記の電磁弁46に対応する弁)に伝達することで、その状態を切り換えるようにすれば、安全カバー2の反転動作を実現し得る。
【0058】
また、前記の構成では、エアシリンダ31を単動式のシリンダとしているが、複動式のシリンダとすることも可能である。この場合も、エアシリンダ31の動作中の、供給回路上でのエアの圧力又は流量の変動を検出することによって、安全カバー2と障害物との干渉を検知し得る。また、安全カバー2を昇降するアクチュエータとしては、エアシリンダ31に限らず、例えばこれを油圧シリンダとしてもよい。つまり、供給回路4において供給する作動流体は、エアでなく作動油としてもよい。
【0059】
また、ここでは電線処理装置1の安全カバー2を例に、本技術について説明したが、ここに開示する技術は、電線処理装置1の安全カバー2に限定されるものではなく、主に工場等において、製造、加工、成形、及び処理等を行う製造装置、加工装置及び工作機械等を含む産業機械における、安全カバーの開閉装置として、広く適用することが可能である。また、安全カバーも、図1に示すように、当該産業機械において、オペレータから隔離すべき部分の全てを囲むような覆い(カバー)に限定されず、例えば扉(ドア)や鎧戸(シャッターとすることが可能である。
【0060】
そうした、カバー、ドア及びシャッター等の総称としての隔離体は、前記の構成のように、上下方向に昇降(移動)するものに限定されず、例えば水平方向にスライド移動するようなものであってもよいし、例えばシャッターのように展開及び巻回するように動くものであってもよい。また、隔離体の動きに応じてアクチュエータの動作を適宜設定すればよく、アクチュエータとしては、前記の構成のように、ピストンロッドが直線的に往復動作をするものに限らず、作動流体の供給及び非供給に応じて、所定の軸を中心として揺動動作をするようなアクチュエータを採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上説明したように、ここに開示した安全カバーの開閉装置は、隔離体と障害物との干渉を確実にかつ精度良く検出して、隔離体の停止又は判定動作を確実に行い得る安全装置を、安価に実現する上で有用である。
【符号の説明】
【0062】
1 電線処理装置
2 安全カバー(隔離体)
3 開閉装置
31 エアシリンダ(シリンダアクチュエータ)
311 ピストンロッド
32 オートスイッチ(状態検出手段)
4 供給回路
42 操作弁(操作手段)
45 圧力センサ(検出手段)
46 電磁弁(制御手段)
5 制御回路(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業機械における所定の隔離対象部分と前記オペレータとの間に介在して、前記隔離対象部分と前記オペレータとを互いに隔離するための隔離体と、
前記隔離体に連結されかつ、前記隔離対象部分と前記オペレータとを隔離する閉状態と、前記隔離対象部分とオペレータとを隔離しない開状態との間で前記隔離体を動かす、流体圧を利用したシリンダアクチュエータと、
前記シリンダアクチュエータに対し接続されかつ、当該シリンダアクチュエータに対し作動流体を供給する供給回路と、
前記供給回路上に設けられかつ、前記シリンダアクチュエータに対する前記作動流体の供給を制御することによって、前記隔離体を前記閉状態と開状態との間で動かすように前記シリンダアクチュエータを動作させる操作手段と、
前記供給回路上の所定箇所において前記作動流体の圧力又は流量に関連するパラメータを検出する検出手段と、
前記操作手段を操作することによって前記隔離体が前記閉状態と前記開状態との間で動いている最中に、前記検出手段によって検出されたパラメータが変動したときに、前記隔離体が停止又は反転動作するように、前記シリンダアクチュエータへの前記作動流体の供給を制御する制御手段と、を備えている安全カバーの開閉装置。
【請求項2】
請求項1に記載の安全カバーの開閉装置において、
前記制御手段は、前記検出手段によって検出されたパラメータの値が予め設定したしきい値を超えたときに、前記隔離体が停止又は反転動作するように前記シリンダアクチュエータへの前記作動流体の供給を制御するように構成されている安全カバーの開閉装置。
【請求項3】
請求項2に記載の安全カバーの開閉装置において、
前記隔離体が前記閉状態又は前記開状態でないことを検出する状態検出手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記状態検出手段が前記隔離体の閉状態又は開状態でないことを検出しているときであって、前記検出手段によって検出されたパラメータの値が変動したときに、前記隔離体が停止又は反転動作するように、前記シリンダアクチュエータへの前記作動流体の供給を制御するように構成されている安全カバーの開閉装置。
【請求項4】
請求項1に記載の安全カバーの開閉装置において、
前記制御手段は、前記検出手段によって検出されたパラメータの変化率が予め設定したしきい値を超えたときに、前記隔離体が停止又は反転動作するように、前記シリンダアクチュエータへの前記作動流体の供給を制御するように構成されている安全カバーの開閉装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の安全カバーの開閉装置において、
前記隔離体は上下方向に昇降するように構成され、
前記シリンダアクチュエータは、ピストンロッドを有していて、前記作動流体の供給及び排出に伴い当該ピストンロッドが上下方向に伸長及び収縮することにより、前記隔離体を開状態と閉状態との間で昇降させ、
前記制御手段は、前記隔離体が前記開状態から閉状態へと移動している最中に、前記検出手段によって検出されたパラメータの値が変動したときに、前記隔離体が停止又は反転動作するように、前記シリンダアクチュエータへの作動流体の供給を制御するように構成されている安全カバーの開閉装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate