説明

安全スイッチ

【課題】操作ロッドが破損した場合や、操作部が破損したり脱落した場合であっても確実に開閉器を開状態にして安全性の向上を図ることができる安全スイッチの提供する。
【解決手段】開閉器39の可動接点39aがコイルバネ50によって固定接点39bに対して開離方向に付勢されている。そして、アクチュエータ3の操作部5への進入に伴う駆動カム15の回転により、連結部22がコイルバネ50の付勢力に抗しつつガイド溝15dに沿って移動することにより操作ロッド21が移動して開閉器39を閉状態に切り換える。したがって、コイルバネ50により操作ロッド21が下方に付勢されて可動接点39aが固定接点39bに対して開離方向に付勢されるため、操作ロッド21が破損した場合や、操作部が破損したり脱落した場合であっても開閉器39を確実に開状態とすることができ、安全性の向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば産業機械等の防護扉周縁の壁面に取り付けられ、防護扉が開かれたときには、産業機械等への電源供給を停止する安全スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、産業機械の防護扉などには、作業者が機械に巻き込まれて負傷するといったトラブルの発生を防止することを目的として、防護扉が完全に閉まっていないときには、機械を駆動させないようにする安全スイッチが配設されている。
【0003】
この種の安全スイッチは、ロボット等の産業機械に電気的に接続されるもので、スイッチ本体とアクチュエータとにより構成されており、スイッチ本体は防護扉周縁の壁面に固着され、またアクチュエータは防護扉に固着される。そのときのアクチュエータの固着位置はスイッチ本体のアクチュエータ進入口に対向し、かつ、防護扉を閉鎖した状態のときにスイッチ本体上部のヘッドケース内に進入可能なように設定されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
そして、アクチュエータの進入により、スイッチ本体のヘッドケース(操作部)の下方に位置する開閉器が閉に切り換わり、産業機械へ電源が供給されて機械が駆動可能な状態となる。一方、防護扉の開放によりアクチュエータが後退してヘッドケースから抜け出ると、内蔵の開閉器が開に切り換わり、機械への電源供給が遮断される。
【0005】
ところで、操作部の中央には、操作部の下方に位置するスイッチ部の操作ロッドを移動させて開閉器を開閉させるため駆動カムが設けられている。この駆動カムはその回転軸が操作部におけるケース部材の内面に枢支されて回転自在に支持されている。また、操作ロッドは、内蔵の開閉器が閉に切り換わる移動方向である操作部の方向に向ってコイルバネで付勢されている。
【0006】
そして、アクチュエータが操作部に進入していない状態では、操作ロッドは、コイルバネの付勢力に抗して駆動カムによりスイッチ部側へ押圧されており、内蔵の開閉器は開状態となり産業機械への電源供給が遮断されている。一方、専用のアクチュエータが操作部内に進入すると、アクチュエータの連結片が駆動カムを押圧して、駆動カムが回転され、その結果、操作ロッドがコイルバネの付勢力により駆動カム側へ移動し、内蔵の開閉器は閉状態に切り換わり産業機械への電源供給が行われる。
【0007】
【特許文献1】特開2002−140962号公報([0064]〜[0065],図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記した安全スイッチでは、アクチュエータが操作部へ進入、後退を繰り返すたびに、駆動カムが回転し、該駆動カムの外周面と操作ロッドとが摺接する。このように、駆動カムの外周面と操作ロッドとが摺接するたびに、駆動カムの外周面と操作ロッドとの間で、該操作ロッドの長手方向にほぼ直交する方向へ摩擦力が発生する。そのため、この摩擦力が繰り返し操作ロッドに加わることで該操作ロッドに疲労が蓄積し、該操作ロッドが破損するおそれがある。また、外的負荷により操作ロッドが途中で折れることもある。このように、操作ロッドが破損した場合、操作ロッドと駆動カムとの摺接状態が解除され、駆動カムによりスイッチ部側に押圧されていた操作ロッドがコイルバネの付勢力で駆動カム側へ移動し、アクチュエータが操作部内に進入していないにも関わらず、内蔵の開閉器は閉状態となるおそれがある。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、操作ロッドが破損した場合や、操作部が破損したり脱落した場合であっても確実に開閉器を開状態にして安全性の向上を図ることができる安全スイッチの提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決するため、本発明にかかる安全スイッチは、アクチュエータがスイッチ本体の操作部に進入し、前記アクチュエータの進入、後退に応じてスイッチ部に設けられた操作ロッドが往復移動し、該操作ロッドの往復移動に連動して開閉器の開閉状態が切り換わって前記アクチュエータの進入、後退を検出する安全スイッチにおいて、前記操作部に回転自在に設けられた駆動カムと、前記開閉器の可動接点を固定接点に対して開方向に付勢する付勢手段と、前記操作ロッドをその先端が前記駆動カムの外周面に沿うように前記駆動カムに連結する連結手段とを備え、前記駆動カムは、その外周面にカム曲線部と、その側面に前記カム曲線部の径大部から径小部に沿ったガイド部が形成され、前記アクチュエータの前記操作部への進入、後退に伴って両方向に回転し、前記アクチュエータの前記操作部への進入に伴い前記駆動カムが回転し、前記連結手段が前記ガイド部に沿って移動することにより、前記操作ロッドが前記付勢手段の付勢力に抗しつつ移動して前記開閉器を閉状態に切り換えることを特徴としている(請求項1)。
【0011】
このように構成された発明では、開閉器の可動接点が付勢手段によって固定接点に対して開方向に付勢されている。そして、アクチュエータの操作部への進入に伴う駆動カムの回転により、連結手段がガイド部に沿って移動することにより操作ロッドが付勢手段の付勢力に抗しつつ移動して開閉器を閉状態に切り換える。したがって、操作ロッドが破損した場合や、操作部が破損したり脱落した場合であっても、付勢手段が可動接点を固定接点に対して開方向に付勢しているため開閉器を確実に開状態とすることができ、安全性の向上を図ることができる。
【0012】
また、連結手段により駆動カムに連結された操作ロッドを、アクチュエータの進入、後退に伴う駆動カムの両方向への回転に応じて往復運動させ、確実に開閉器の開閉状態を切り換えることができる。
【0013】
また、前記連結手段は、前記操作ロッドをその軸回りに回転可能に前記駆動カムに連結されており、前記スイッチ本体は、前記操作部が前記操作ロッドの軸回りに回転可能に前記スイッチ部に結合されている構成でもよい(請求項2)。このような構成とすれば、操作部が操作ロッドの軸回りに回転可能にスイッチ部に結合されているため、スイッチの配設場所に応じて操作部を回転させて操作部に設けられたアクチュエータ進入口の向きを変更することができる。したがって、安全スイッチの取り付けの自由度が増し、安全スイッチ取り付けの選択範囲を広げることができる。
【0014】
また、前記スイッチ本体は、前記操作部が前記スイッチ部に脱着自在に結合されている構成でもよい(請求項3)。このような構成とすれば、必要に応じて操作部をスイッチ部から着脱できるので、スイッチ本体のメンテナンスを容易に行うことができる。また、操作部とスイッチ部とが外れた場合には、付勢手段が可動接点を固定接点に対して開方向に付勢しているため開閉器を確実に開状態とすることができる。
【0015】
また、前記操作部と前記スイッチ部との間に設けられた結合部材を備え、前記操作部と前記スイッチ部とが前記結合部材を介して着脱自在に結合されている構成でもよい。(請求項4)。このような構成とすれば、結合部材を介して、操作パネル等に安全スイッチを固定することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、請求項1に記載の発明によれば、開閉器の可動接点が付勢手段によって固定接点に対して開方向に付勢されているので、操作ロッドが破損した場合や、操作部が破損したり脱落した場合であっても、該付勢手段が可動接点を固定接点に対して開方向に付勢し、開閉器を確実に開状態とすることができ、安全性の向上を図ることができる。また、連結手段により駆動カムに連結された操作ロッドを、アクチュエータの進入、後退に伴う駆動カムの両方向への回転に応じて往復運動させ、確実に開閉器の開閉状態を切り換えることができる。
【0017】
また、請求項2に記載の発明によれば、操作部が操作ロッドの軸回りに回転可能にスイッチ部に結合されているため、スイッチの配設場所に応じて操作部を回転させて操作部に設けられたアクチュエータ進入口の向きを変更することができ、安全スイッチの取り付けの自由度が増し、安全スイッチ取り付けの選択範囲を広げることができる。
【0018】
また、請求項3に記載の発明によれば、必要に応じて操作部をスイッチ部から着脱できるので、スイッチ本体のメンテナンスを容易に行うことができる。また、操作部とスイッチ部とが外れた場合には、付勢手段が可動接点を固定接点に対して開方向に付勢しているため開閉器を確実に開状態とすることができる。
【0019】
また、請求項4に記載の発明によれば、結合部材を介して、操作パネル等に安全スイッチを固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
<第1実施形態>
この発明の第1実施形態について図1および図2を参照して説明する。図1および図2はスイッチ本体の断面図である。なお、図1(b)および図2(b)は、それぞれ図1(a)および図2(a)の紙面に向かって左方向から見た要部断面図である。また、図2(c)はアクチュエータの平面図である。
【0021】
本発明における安全スイッチは、外部装置であるロボット等の産業機械等にケーブルを介して電気的に接続されるスイッチであり、スイッチ本体1と、アクチュエータ3とにより構成される。
【0022】
このとき、スイッチ本体1は、操作部5とスイッチ部7とからなり、図示を省略する産業機械の防護扉周縁の壁面に固着される。また、アクチュエータ3は防護扉に固着され、その位置は操作部5の上面および側面に形成されたアクチュエータ進入口9a,9bのうち一方の進入口に対向する位置であり、防護扉を閉鎖した状態のときに操作部5のアクチュエータ進入口9a,9b内に進入する。なお、アクチュエータ3は、図2(c)に示すように、コ字状の基部3aと、該基部3aの先端寄りの両側を橋絡して一体形成された連結片3bとから構成されている。
【0023】
スイッチ本体1の上部に配設された操作部5は、図1および図2に示すように、ケース部材11と、回転軸13がこのケース部材11の内面に枢支されて回転自在に支持された駆動カム15とを備えている。この駆動カム15の上部外周面には、アクチュエータ3の連結片3bが嵌挿する係合部15a,15bが、上記したアクチュエータ進入口9a,9bから覗く位置に形成されている。また、駆動カム15の下部外周面の両側にはカム曲線部15cが形成されており、側面にはカム曲線部15cの径大部から径小部に沿ってカム曲線部15cと相似を成すガイド溝15d(本発明の「ガイド部」に相当)が形成されている。
【0024】
また、操作部5の下方に位置するスイッチ部7から先端部分が出退自在に操作部5内に突出する操作ロッド21が設けられ、その先端部には、上向きのコ字状基部の先端が互いに向き合うように屈曲された形状の連結部22が一体的に形成されている。そして、操作ロッド21の半球状の先端と駆動カム15のカム曲線部15cとが摺接するように、連結部22の互いに向き合う先端部22aが駆動カム15の両側のガイド溝15dそれぞれに係合することで操作ロッド21がその軸回りに回転不能に駆動カム15と連結されている。そして、駆動カム15の回転に伴って連結部22がガイド溝15dに沿って移動することで、操作ロッド21が操作部5に進入、後退して往復移動し、スイッチ部7に内蔵されている開閉器部70の開閉器の開閉状態が切り換えられる。このように連結部22が本発明の「連結手段」として機能している。
【0025】
次に、スイッチ部7について説明する。このスイッチ部7は、図1に示すように、ケース部材11と一体となって直方体状のスイッチ本体1を形成するケース部材33の内部であって操作部5の下方に配設され、開閉器が内蔵された開閉器部70と、上記した操作ロッド21とから構成されている。また、このケース部材33に、操作部5側のケース部材11が取り付けられている。
【0026】
ところで、開閉器部70は、操作ロッド21の往復移動に連動して開閉する開閉器39を備えている。開閉器39は、可動接点39aと固定接点39bとからなり、可動接点39aは操作ロッド21に上向きに固定され、固定接点39bは開閉器部70に配設された枠部材43に下向きに固定されている。ここで、開閉器39は産業機械への電源供給および遮断用であり、開閉器39が閉状態となることで、産業機械へ電源が供給される。
【0027】
また、図1に示すように、操作ロッドの下端に形成されたフランジ部21aと、枠部材43に設けられたフランジ部43aとの間に、コイルバネ50が操作ロッドに外嵌された状態で取り付けられ、これにより操作ロッド21が下方に付勢されている。そして、コイルバネ50は開閉器39の可動接点39aを固定接点39bに対して離間する方向(開方向)に付勢している。このように、この実施形態ではコイルバネ50が本発明の「付勢手段」として機能している。
【0028】
ここで、ケース部材33には、産業機械と電気的に接続されるケーブル(図示省略)が装着されており、開閉器部70の内部においてケーブルと開閉器39とが電気的に接続されている。そして、開閉器39が開閉することによる電気信号によって、産業機械への電源供給及び電源供給の遮断が行われるようになっている。
【0029】
なお、アクチュエータ3が進入していない図1の状態では、操作ロッド21はコイルバネ50の付勢力によりほとんどの部分がスイッチ部7側に没した状態となっている。この操作ロッド21のスイッチ部7側への移動により可動接点39aも同時に固定接点39bから開離する方向へ押し込まれ、開閉器39の可動接点39aおよび固定接点39bが離間し、開閉器39が開状態となり、産業機械への電源供給が遮断されて産業機械が操作不能な状態となっている。
【0030】
続いて、上記のように構成された安全スイッチの動作について図1および図2を参照して説明する。図1に示すように、アクチュエータ3がスイッチ本体1の操作部5に進入していない場合、操作ロッド21はコイルバネ50の付勢力によりほとんどの部分がスイッチ部7側に没した状態にあり、開閉器39は開状態となっており、産業機械への電源供給が遮断されて産業機械が操作不能な状態となっている。
【0031】
次に、図1に示す初期状態から防護扉等を閉じることによって、アクチュエータ3が操作部5に進入すると、図2に示すように、アクチュエータ3の連結片3bが駆動カム15の係合部15aと係合して、アクチュエータ3が進入するに連れて駆動カム15が時計方向に回転する。駆動カム15が回転するのに伴い、連結部22がコイルバネ50の付勢力に抗しつつガイド溝15dに沿って上動する。
【0032】
そして、連結部22の上動に伴って、操作ロッド21の先端がカム曲線部15cの径大部分から径小部分へと摺接しつつ、操作ロッド21がコイルバネ50の付勢力に抗して引っ張り上げられるように上方に移動する。さらに、操作ロッド21が上方に移動するに連れて、可動接点39aが固定接点39bに接触して開閉器39が開状態から閉状態となる。したがって、開閉器39が閉状態となるため、この開閉器39に直列に接続されているロボット等の産業機械に電源が供給され、産業機械が操作可能な状態となる。
【0033】
一方、防護扉等が開放されて、図1に示すように進入状態のアクチュエータ3が引抜かれると、アクチュエータ3の連結片3bと駆動カム15の係合部15aとの係合状態が解除されるまで駆動カム15がアクチュエータ3の引抜き方向に回転する。この駆動カム15の回転に伴って、連結部22がガイド溝15dに沿って下動することで操作ロッド21が駆動カム曲線部15cの径小部から径大部へと摺接する。
【0034】
そして、コイルバネ50の付勢力により、操作ロッド21はスイッチ部7の方向へ押し込まれ、可動接点39aは固定接点39bから開離して開閉器39が開状態になり、産業機械は操作不能な状態となる。
【0035】
ところで、図1および図2に示す安全スイッチの操作ロッド21が途中で折れるなどして破損した場合や、操作部5が破損したり脱落した場合について説明する。上記したように、開閉器39の可動接点39aはコイルバネ50によって、固定接点39bに対して離間する方向に付勢されている。したがって、何らかの外的負荷が操作ロッド21に加わり、操作ロッド21が破損した場合や、何らかの外的負荷が操作部5に加わり、操作部5が破損したり脱落した場合には、コイルバネ50の付勢力によって操作ロッド21の下部は下方に付勢されるため可動接点39aは確実に固定接点39bから開離して開閉器39は開状態となる。
【0036】
以上のように、この実施形態では、開閉器39の可動接点39aがコイルバネ50によって固定接点39bに対して開離方向に付勢されている。そして、アクチュエータ3の操作部5への進入に伴う駆動カム15の回転により、連結部22がガイド溝15dに沿って移動することにより操作ロッド21がコイルバネ50の付勢力に抗しつつ移動して開閉器39を閉状態に切り換える。したがって、コイルバネ50が操作ロッド21を下方に付勢して可動接点39aを固定接点39bに対して開離方向に付勢しているため、操作ロッド21が破損した場合や、操作部5が破損したり脱落した場合であっても開閉器39を確実に開状態とすることができ、安全性の向上を図ることができる。
【0037】
また、この実施形態では、連結部21によって操作ロッド21を駆動カム15に連結しているので、連結部22により駆動カム15に連結された操作ロッド21を、アクチュエータ3の進入、後退に伴う駆動カム15の両方向への回転に応じて往復運動させ、確実に開閉器39の開閉状態を切り換えることができる。
【0038】
また、上記した実施形態では、開閉器39を用い、その開閉動作により産業機械への電源供給及び供給遮断を行っているため、例えば、開閉器39が閉状態となって、産業機械への電源供給が行われている際に、開閉器39の可動接点39aと固定接点39bとが溶着した場合であっても、アクチュエータ3が後退し、コイルバネ50の付勢力および操作ロッド21によって可動接点39aが押し込まれることにより、溶着した可動接点39aと固定接点39bとを強制的に開離することができ、安全スイッチの信頼性を向上することができる。
【0039】
<第2実施形態>
本発明にかかる安全スイッチの第2実施形態について図3を参照して説明する。この第2実施形態において、上記第1実施形態と相違する点は、付勢手段の構成が異なる点であり、その他の構成および動作は上記第1実施形態と同様であるため、以下においては図1および図2も参照しつつ主として第1実施形態との相違点を詳述する。なお、第1実施形態と同一の構成および動作については、同一符号を引用してその構成および動作の説明を省略する。
【0040】
図3はスイッチ本体の断面図であり、図3(a)はアクチュエータが進入していない状態、図3(b)はアクチュエータが進入している状態を示す図である。同図に示すように、可動接点39aは固定接点39bに対して、互いに異なる磁極の磁石500a,500bの反発力によって開離する方向に付勢されている。このように、この実施形態では、磁石500a,500bが本発明の「付勢手段」として機能している。
【0041】
この実施形態では、図3に示すように、ドーナツ状の磁石500aに操作ロッド21が挿通、嵌着されて磁石500aが枠部材43のフランジ部43aに固定配置されるとともに、操作ロッド21の下端に、ドーナツ状もしくは短円柱状の磁石500bが配設されている。したがって、操作ロッド21が何らかの原因で破損した場合や、操作部5が破損したり脱落した場合には、上記第1実施形態と同様に、磁石500a,500bの付勢力によって可動接点39aを確実に固定接点39bから開離させて開閉器39を開状態とすることができ、安全性の向上を図ることができる。
【0042】
<第3実施形態>
本発明にかかる安全スイッチの第3実施形態について図4を参照して説明する。図4は本発明の第3実施形態における要部拡大図であって、駆動カムおよび操作ロッドの断面図である。この第3実施形態において、上記第1および第2実施形態と相違する点は、操作ロッド21を駆動カム150に連結する連結手段の構成が異なる点である。その他の構成および動作は上記第1および第2実施形態と同様であるため、以下においては図1および図2も参照しつつ主として第1および第2実施形態との相違点を詳述する。なお、第1および第2実施形態と同一の構成および動作については、同一符号を引用してその構成および動作の説明を省略する。
【0043】
図4に示すように、この実施形態における駆動カム150は、上記した駆動カム15と基本的に同様に構成されているが、ガイド溝15dに代わりカム曲線部150cに沿ってカム曲線部150cと相似を成すガイド孔150d(本発明の「ガイド部」に相当)が形成されている点が相違する。さらに、連結部23は、上記した連結部22と同様に上向きコ字状基部から成るが、その先端は屈曲されておらず、ガイド孔150dおよび連結部23の先端部に透設された透孔に連結ピン23aが挿通され、この連結ピン23aの両端が透孔より径大に形成されて抜け止めされ、これによって駆動カム150と操作ロッド21とが連結されている点が相違する。その他の構成および動作は、上記第1および第2実施形態と同一であり、上記第1および第2実施形態と同様の作用効果を奏することができる。このように、この実施形態では、連結部23および連結ピン23aが本発明の「連結手段」として機能している。
【0044】
<第4実施形態>
本発明にかかる安全スイッチの第4実施形態について図5および図6を参照して説明する。図5は本発明の第4実施形態における要部拡大図であって、図5(a)は操作ロッド210および連結部24(本発明の「連結手段」に相当)の正面図、図5(b)は同図(a)の断面図である。また、図6は本実施形態における安全スイッチの外観図である。
【0045】
この第4実施形態において上記第1ないし第3実施形態と相違するのは、操作ロッド210がその軸回りに回転可能に駆動カム15に連結部24によって連結されている点であり、その他の構成および動作は上記第1ないし第3実施形態と同様であるため、以下においては図1および図2も参照しつつ主として第1ないし第3実施形態との相違点を詳述する。なお、第1ないし第3実施形態と同一の構成および動作については、同一符号を引用してその構成および動作の説明を省略する。
【0046】
この実施形態では、図5に示すように、連結部24は、上端が半球状に形成された円柱状の基部24aと、該基部24aの上端部に一体形成された上向きのコ字状部24bと、該コ字状部24bの先端が互いに向き合うように屈曲されて一体形成された嵌挿部24cとを備え、基部24aの下端部外周には凹溝24dが形成されている。そして、連結部24の互いに向き合う嵌挿部24cが駆動カム15の両側のガイド溝15dそれぞれに係合する。
【0047】
また、図5に示すように、前記した操作ロッド21と同様の操作ロッド210の先端部210aは特に径大に形成され、先端部210aの上面側から、その断面形状が逆向きのT字状の嵌挿空間210bが形成され、この嵌挿空間210b内に連結部24の凹溝24dより下の部分が嵌挿し、これにより連結部24と操作ロッド210とが回転可能に連結される。したがって、操作ロッド210の軸回りに回転可能に操作部5がスイッチ部7に連結されることとなる。
【0048】
したがって、この実施形態では、操作部5が操作ロッド210の軸回りに回転可能にスイッチ部7に連結されているため、図6に示すように安全スイッチの配設場所に応じて、同図中の矢印方向に操作部5を例えば90°、180°、270°のいずれかだけ回転させて操作部5に設けられたアクチュエータ進入口9a,9bの向きを適宜変更することができる。したがって、安全スイッチの取り付けの自由度が増し、安全スイッチ取り付けの選択範囲を広げることができる。
【0049】
また、操作部5とスイッチ部7とが外れた場合には、コイルバネ50や磁石500a,500b等の付勢手段が操作ロッド210を下方に付勢して、可動接点39aを固定接点39bに対して開離させるため、開閉器39を確実に開状態とすることができる。
【0050】
<第5実施形態>
本発明にかかる安全スイッチの第5実施形態について図7および図8を参照して説明する。図7は本発明の第5実施形態におけるスイッチ本体の外観図を示し、図8はこの第5実施形態における安全スイッチをケース105に取り付けた図である。
【0051】
この第5実施形態において上記第4実施形態と相違する点は、操作部5とスイッチ部700との間に円筒状の結合部材701を備え、操作部5とスイッチ部700とが結合部材701を介して着脱自在に結合されている点である。その他の構成および動作は上記第4実施形態と同様であるため、以下では図1および図2も参照しつつ主として第1ないし第4実施形態との相違点について詳細に述べる。なお、第1ないし第4実施形態と同一の構成および動作については、同一符号を引用してその構成および動作の説明を省略する。
【0052】
この第5実施形態におけるスイッチ本体100は、図7に示すように、操作部5が円筒状の結合部材701を介してスイッチ部700と着脱自在に結合されて構成されている。また、結合部材701の外周には雄ネジ部701aが形成され、雄ネジ部701aにナット701bが螺着されている。こうすることで、図8に示すように、操作盤にスイッチ本体100を取り付けることが可能となり、キースイッチ101および非常停止ボタン102と並設することができる。
【0053】
そして、例えば、結合部材701の雄ネジ部701aが挿通する挿通孔が形成された操作盤にスイッチ本体100を取り付ける場合、まず、結合部材701からスイッチ部700を取り外した状態で結合部材701の雄ネジ部701aを操作盤の挿通孔に挿通する。続いて、雄ネジ部701aにナット701bを螺合して、操作盤が結合部材701に螺着されたナット701bと操作部5との間で介装された状態にする。そして、ナット701bを操作部5に対して締め付けることで、操作部5を操作盤に固定することができる。最後に、操作盤に固定された操作部5の結合部材701にスイッチ部700を取り付けることで、スイッチ本体100を操作パネルに固定配置することができる。
【0054】
したがって、この実施形態では、図8(a)、(b)に示すように、例えば、操作盤に対しスイッチ本体100、キースイッチ101、非常停止ボタン102を並設したケース105ごと取り付けることが可能となり、各種スイッチを配設する際、配線等をコンパクトにまとめて配設することができる。
【0055】
また、操作部5とスイッチ部700とが外れる異常が発生した場合であっても、コイルバネ50あるいは磁石500a,500b等の付勢手段の付勢により、操作ロッドが下方に付勢されて可動接点39aが固定接点39bに対して開離されるため、開閉器39を確実に開状態にすることができる。
【0056】
<その他>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記した第1ないし第5実施形態では、1つの開閉器39を備える安全スイッチを例に挙げて説明したが、開閉器の数としてはこれに限定されるものではなく、2個以上設けてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、コイルバネ50および磁石500a,500bが本発明の「付勢手段」として機能しているが、付勢手段の構成としては上記した構成に限定されない。要は、確実に可動接点を固定接点に対して開方向に付勢することのできる構成であればどのような構成であってもよい。
【0058】
また、上記した第1ないし第5実施形態では、可動接点39aを固定接点39bに対して開離する方向へ付勢する付勢手段を有する開閉器39を備えた安全スイッチを例に挙げて説明したが、このような開閉器39に加えて、可動接点を固定接点に対して閉塞する方向へ付勢する付勢手段を有するとともに開閉器39と逆の開閉動作を行う開閉器を備える構成でもよい。この場合、開閉器39を外部装置の動作制御に使用して、新たな開閉器をアクチュエータの進入を検出するための電気信号を得るための開閉器とすればよい。
【0059】
このような構成とすれば、アクチュエータ3の進入に伴い開閉器39が閉状態となって、外部装置が操作不能状態から操作可能状態となる一方、新たな開閉器はアクチュエータ3の進入に伴って開状態となる。このように、開閉器39と逆の開閉動作を行う開閉器の開閉状態をモニタすることにより、アクチュエータ3の進入、後退に加えて、外部装置の状態を外部から確認することができる。
【0060】
また、上記実施形態では、操作ロッド21または連結部24の先端がカム曲線部15cを摺接しつつ移動することで操作ロッド21,210が往復移動しているが、該先端部はカム曲線部15cに必ずしも摺接する必要はない。要は、連結部22,23,24(連結手段)がガイド溝15cやガイド孔150d等のガイド部に沿って移動することにより、操作ロッド21,210がコイルバネ50や磁石500a,500b等の付勢手段の付勢力に抗しつつ往復移動する構成であればどのような構成であってもよい。
【0061】
また、上記第1ないし第4実施形態において、操作部5とスイッチ部7とが着脱自在に結合される構成でもよい。このような構成とすれば、必要に応じて操作部5をスイッチ部7から着脱できるので、スイッチ本体1のメンテナンスを容易に行うことができる。また、操作部5とスイッチ部7とが外れた場合には、コイルバネ50や磁石500a,500b等の付勢手段が可動接点39aを固定接点39bに対して開方向に付勢しているため開閉器39を確実に開状態とすることができる。
【0062】
続いて、図9を参照して上記した操作部5とスイッチ部7とが着脱自在に結合される構成について説明する。図9は操作ロッド211の要部拡大図であって、(a)は操作ロッド211を構成する先端部211aと基部211bとが脱離している状態を示し、(b)は先端部211aが基部211bに装着された状態を示す。
【0063】
図9に示すように、操作ロッド211の先端部211aの下部には係合突起211a1が突設され、基部211bの上部には係合突起211a1が係合可能にガイド溝211b1が形成されている。したがって、図9(a)に示す操作部5とスイッチ部7とが脱離した状態から、操作部5をスイッチ部7に装着する場合には、図9(b)に示すように、係合突起211a1をガイド溝211b1に挿入することで操作部5をスイッチ部7に装着することができる。
【0064】
なお、図9では、連結部22,23が操作ロッド21をその軸回りに回転不能に駆動カム15,150に連結している第1ないし第3実施形態の構成を例に挙げて説明したが、連結部24が操作ロッド210をその軸回りに回転可能に駆動カムに連結している第4実施形態の構成に図9と同様の構成を採用してももちろんよい。また、上記第5実施形態において図9の構成を採用することで、連結手段が操作ロッドをその軸回りに回転不能に駆動カムに連結している場合であっても、操作部とスイッチ部とを介在部材を介して着脱自在に結合することができる。
【0065】
また、介在部材の形状としては上記した円筒状に限定されず、多角形状等、どのような形状であってもよく、操作部とスイッチ部とを着脱自在に結合することができればよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】この発明の第1実施形態におけるスイッチ本体の断面図である。
【図2】この発明の第1実施形態におけるスイッチ本体の断面図である。
【図3】この発明の第2実施形態におけるスイッチ本体の断面図である。
【図4】この発明の第3実施形態における要部拡大図である。
【図5】この発明の第4実施形態における要部拡大図である。
【図6】この発明の第4実施形態におけるスイッチ本体の外観図である。
【図7】この発明の第5実施形態におけるスイッチ本体の外観図である。
【図8】この発明の第5実施形態における安全スイッチをケースに取り付けた図である。
【図9】この発明の他の実施形態における要部拡大図である。
【符号の説明】
【0067】
1,100…スイッチ本体
3…アクチュエータ
5…操作部
15,150…駆動カム
15c,150c…カム曲線部
21,210,211…操作ロッド
22,23,24…連結部(連結手段)
39…開閉器
39a…可動接点
39b…固定接点
50…コイルバネ(付勢手段)
500a,500b…磁石(付勢手段)
7,700…スイッチ部
70…開閉器部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータがスイッチ本体の操作部に進入し、前記アクチュエータの進入、後退に応じてスイッチ部に設けられた操作ロッドが往復移動し、該操作ロッドの往復移動に連動して開閉器の開閉状態が切り換わって前記アクチュエータの進入、後退を検出する安全スイッチにおいて、
前記操作部に回転自在に設けられた駆動カムと、
前記開閉器の可動接点を固定接点に対して開方向に付勢する付勢手段と、
前記操作ロッドをその先端が前記駆動カムの外周面に沿うように前記駆動カムに連結する連結手段とを備え、
前記駆動カムは、その外周面にカム曲線部と、その側面に前記カム曲線部の径大部から径小部に沿ったガイド部が形成され、前記アクチュエータの前記操作部への進入、後退に伴って両方向に回転し、
前記アクチュエータの前記操作部への進入に伴い前記駆動カムが回転し、前記連結手段が前記ガイド部に沿って移動することにより、前記操作ロッドが前記付勢手段の付勢力に抗しつつ移動して前記開閉器を閉状態に切り換えることを特徴とする安全スイッチ。
【請求項2】
前記連結手段は、前記操作ロッドをその軸回りに回転可能に前記駆動カムに連結されており、
前記スイッチ本体は、前記操作部が前記操作ロッドの軸回りに回転可能に前記スイッチ部に結合されていることを特徴とする請求項1に記載の安全スイッチ。
【請求項3】
前記スイッチ本体は、前記操作部が前記スイッチ部に脱着自在に結合されていることを特徴とする請求項1または2に記載の安全スイッチ。
【請求項4】
前記操作部と前記スイッチ部との間に設けられた結合部材を備え、
前記操作部と前記スイッチ部とが前記結合部材を介して着脱自在に結合されていることを特徴とする請求項3に記載の安全スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−242509(P2007−242509A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−65586(P2006−65586)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(000000309)IDEC株式会社 (188)