説明

安全帯使用状況の監視及び警報システム

【課題】高所作業者の安全帯の適正使用の監視並びに注意喚起及び安否確認作業の効率を向上する。
【解決手段】高所作業エリアHWを含むエリアを電波到達範囲RAとするように作業現場内に配設された3個以上のRFIDタグリーダ1に接続された管理コンピュータ2と、安全帯の命綱が所定長さ引き出された状態であることを検出して電波発信を行うアクティブ型RFIDタグ17と、双方向通信タイプのアクティブ型RFIDタグ23からなる位置発信手段、管理コンピュータ2からの警報指令を受信して作動状態となる警報手段並びにスイッチ操作により警報手段の動作を停止させると共に警報確認信号をRFIDタグ23により発信する警報確認手段を備えた位置発信及び警報確認装置と、RFIDタグ23からの電波をRFIDタグリーダ1により受信して電波の強弱からRFIDタグ23の位置を演算する演算手段とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転落防止のために高所作業者が装着する安全帯の使用状況を監視するとともに安全帯を使用していない作業者に警報を発する、安全帯使用状況の監視及び警報システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
作業者が腰に巻く腰ベルトと、この腰ベルトに装着された巻取り装置と、この巻取り装置から引き出される命綱の先端に取り付けられたフックとからなる安全帯を高所作業者が適正に使用すること、すなわち、高所作業の際に前記フックを親綱(転落防止綱)に掛けた適正使用状態とすることが徹底されれば、高所作業者の転落事故を防止することができる。
しかし、作業への慣れによる注意力の低下や安全意識の欠如等により安全帯の適正使用がされない場合が多く、したがって高所作業者の転落事故が依然として発生していることから、安全帯の適正使用率を向上させることが急務である。
よって、このような必要性に鑑みて、安全帯の適正使用率を向上するための多くの提案がされている。
【0003】
例えば、安全帯に取り付けた端末機のケース内に、命綱が巻き取り装置から所定長さ以上引き出された場合に検出信号を出力するバーコードリーダ及び前記検出信号を固有の識別データとともに発信する発信機を内装し、発信機から送信された信号を作業現場から離れた監視室内の受信機で受信し、作業者の安全帯の使用状況を監視することにより、受信した識別データから、複数の作業者のうち安全帯を使用していない作業者を特定して安全帯使用の勧告をするものがある(例えば、特許文献1参照。)。
また、安全帯に取り付けたケース内に、命綱のトルク変動を検出するトルクセンサ、警報装置、電源を備えたRFIDタグ及び制御部を内装し、命綱のトルク変動がない状態が所定時間以上続いた場合に制御部の指令に基づいて警報装置により警報を発するとともに、RFIDタグから発信された識別用ID信号を作業場内に設置された3個以上の受送信機により受信して演算装置に送信し、演算装置により安全帯の位置(作業者の位置)を演算し、該位置が高所又は危険地域以外の場合は受送信機により警報装置を停止させる信号を発信するものがある(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−336367号公報(図1−2、図4−5)
【特許文献2】特開2006−313425号公報(図1−2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、安全帯及び端末機の貸出時に作業現場から離れた監視室内の監視盤に手動で点灯させる貸出表示ランプと、端末機の発信機から送信された信号を受信機で受信して前記監視盤に点灯させる使用表示ランプとを組み合わせて監視し、貸出表示ランプのみが点灯している場合には安全帯の適正使用がされていないと判断し、現場への電話や現場へ出向いての勧告により安全帯の適正使用を促すようにしている。
しかし、このような構成では、警報装置がないことから高所作業者に注意を促すまでに時間がかかり、このようなタイムラグにより高所作業者の対応が遅れて転落事故が発生する可能性がある。
【0006】
その上、貸出表示ランプのみが点灯し使用表示ランプが点灯していない場合であっても、安全帯を使用していない高所作業者が実際に作業現場にいるのか、あるいは一時的に作業現場から離れているのか等の識別ができないことから、作業者が高所作業に従事していない場合であっても注意を促すために電話を掛けたり現場に出向く必要がある。
その上さらに、高所作業者が作業現場から離れている場合に作業者の安否の確認をするために捜し回る手間が必要になる場合もある。
よって、特許文献1の構成は、安全帯の適正使用率向上のための一定の効果はあるものの、高所作業者の安全帯の適正使用の監視並びに注意喚起及び安否確認作業の効率が悪いため、高所作業の安全性を向上するためには改良の余地がある。
【0007】
また、特許文献2では、安全帯に取り付けた制御部がトルクセンサの情報を基に警報装置に指令を与えて警報装置が警報を発するように構成しているとともに、作業者が高所又は危険地域以外にいる場合には警報を発する必要がないため、演算装置により演算した安全帯の位置(作業者の位置)が高所又は危険地域以外の場合には、作業場内に設置された受送信機により警報装置を停止させる信号を発信することにより警報を発しないようにしている。
しかし、このような高所又は危険地域にいる作業者が安全帯を適正使用していない場合にその安全帯に取り付けた警報装置が警報を発するのみの構成では、安全帯の適正使用率向上のための一定の効果はあるものの、安全帯を装着している作業者に対して、安全帯に取り付けた制御部が警報装置に指令を与えて警報を発する構成であるため、作業者以外の安全管理者等に対して安全帯の使用状態に関する情報が伝達されず、したがって安全帯の適正使用は警報を受けた作業者自身の判断に委ねられており、作業者が警報を無視すれば事故の発生を防止できない場合があることや作業者の安否確認ができないことから、高所作業者の安全帯の適正使用の監視及び安否確認作業の効率が悪いため、高所作業の安全性を向上するためには改良の余地がある。
【0008】
そこで本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、高所作業者の安全帯の適正使用の監視並びに注意喚起及び安否確認作業の効率が良く、高所作業の安全性を向上することができる安全帯使用状況の監視及び警報システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る安全帯使用状況の監視及び警報システムは、前記課題解決のために、高所作業エリアを含む所定の作業エリアを電波到達範囲とするように作業現場内の所定箇所に配設された3個以上のRFIDタグリーダと、前記作業エリアから離れた位置に設置又は携帯可能とされ、前記RFIDタグリーダに無線又は有線で接続された管理コンピュータと、高所作業者が腰に巻く腰ベルト、この腰ベルトに装着された巻取り装置、及び、この巻取り装置から引き出される命綱の先端に取り付けられたフックからなる安全帯に、前記命綱が所定長さ引き出された状態であることを検出して周期的な電波発信を行うアクティブ型RFIDタグを取り付けてなる使用状況発信装置と、携帯可能な筐体に、常時周期的な電波発信を行う双方向通信タイプのアクティブ型RFIDタグからなる位置発信手段、前記管理コンピュータからの警報指令を前記RFIDタグリーダ経由で前記双方向通信タイプのアクティブ型RFIDタグにより受信して作動状態となり、鳴動若しくは振動又は発光する警報手段、並びに、スイッチの操作により前記警報手段の動作を停止させるとともに警報確認信号を前記双方向通信タイプのアクティブ型RFIDタグにより発信する警報確認手段を備え付けてなる、位置発信及び警報確認装置と、前記位置発信手段からの電波を前記3個以上のRFIDタグリーダにより受信し、これらの電波の強弱から前記位置発信手段の位置を演算する演算手段とを備え、前記位置発信及び警報確認装置を高所作業者に携帯させ、前記演算手段により演算した前記位置発信手段の位置が前記高所作業エリア内である場合であって、かつ、前記使用状況発信装置からの電波発信がない場合に、この電波発信がない使用状況発信装置が取り付けられた安全帯を装着している高所作業者が携帯する前記位置発信及び警報確認装置の警報手段に対して、前記管理コンピュータから警報指令を発し、該警報手段を作動状態としてなるものである。
【0010】
ここで、前記位置発信及び警報確認装置を高所作業を行わない作業者にも携帯させ、前記電波発信がない使用状況発信装置が取り付けられた安全帯を装着している高所作業者、並びに、この高所作業者以外の高所作業者及び高所作業を行わない作業者の中から選択した作業者が携帯する前記位置発信及び警報確認装置の警報手段に対して、これらの警報手段が作動状態となるように前記管理コンピュータから警報指令を発すると好ましい。
【0011】
また、前記命綱の前記巻取り装置側端部に取り付けたマグネットによりリードスイッチをオンにして前記使用状況発信装置のアクティブ型RFIDタグに電力を供給することにより該アクティブ型RFIDタグが電波発信すると好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る安全帯使用状況の監視及び警報システムによれば、高所作業エリアを含む所定の作業エリアを電波到達範囲とするように作業現場内の所定箇所に配設された3個以上のRFIDタグリーダと、前記作業エリアから離れた位置に設置又は携帯可能とされ、前記RFIDタグリーダに無線又は有線で接続された管理コンピュータと、高所作業者が腰に巻く腰ベルト、この腰ベルトに装着された巻取り装置、及び、この巻取り装置から引き出される命綱の先端に取り付けられたフックからなる安全帯に、前記命綱が所定長さ引き出された状態であることを検出して周期的な電波発信を行うアクティブ型RFIDタグを取り付けてなる使用状況発信装置と、携帯可能な筐体に、常時周期的な電波発信を行う双方向通信タイプのアクティブ型RFIDタグからなる位置発信手段、前記管理コンピュータからの警報指令を前記RFIDタグリーダ経由で前記双方向通信タイプのアクティブ型RFIDタグにより受信して作動状態となり、鳴動若しくは振動又は発光する警報手段、並びに、スイッチの操作により前記警報手段の動作を停止させるとともに警報確認信号を前記双方向通信タイプのアクティブ型RFIDタグにより発信する警報確認手段を備え付けてなる、位置発信及び警報確認装置と、前記位置発信手段からの電波を前記3個以上のRFIDタグリーダにより受信し、これらの電波の強弱から前記位置発信手段の位置を演算する演算手段とを備え、前記位置発信及び警報確認装置を高所作業者に携帯させ、前記演算手段により演算した前記位置発信手段の位置が前記高所作業エリア内である場合であって、かつ、前記使用状況発信装置からの電波発信がない場合に、この電波発信がない使用状況発信装置が取り付けられた安全帯を装着している高所作業者が携帯する前記位置発信及び警報確認装置の警報手段に対して、前記管理コンピュータから警報指令を発し、該警報手段を作動状態としてなるので、高所作業者が安全帯の命綱を所定長さ引き出してフックを親綱に掛けた適正使用状態では、使用状況発信装置のアクティブ型RFIDタグが電波発信するため、作業エリアから離れた管理コンピュータ上で適正使用状態の確認をすることができる。
【0013】
その上、演算手段により位置発信手段の位置がわかり、したがって位置発信及び警報確認装置を携帯している高所作業者の位置がわかるため、この高所作業者が高所作業エリアにいない場合には、使用状況発信装置からの電波発信がない場合であっても管理コンピュータから警報指令を発しないため、誤報をなくすことができる。
その上さらに、高所作業者が警報確認手段のスイッチを操作すると警報確認信号が双方向通信タイプのアクティブ型RFIDタグにより発信されるため、作業エリアから離れた管理コンピュータ上で高所作業者の安否確認をすることができる。
その上、安全管理者が安全パトロールを行う際に携帯可能な管理コンピュータ(携帯情報端末)を携帯することにより、安全パトロール中に高所作業者の位置を確認しながら、安全帯を適正使用していない高所作業者が携帯する位置発信及び警報確認装置の警報手段に対して警報指令をするとともに、この高所作業者に対して注意をし、確実に安全帯の適正使用をさせることができる。
【0014】
また、前記位置発信及び警報確認装置を高所作業を行わない作業者にも携帯させ、前記電波発信がない使用状況発信装置が取り付けられた安全帯を装着している高所作業者、並びに、この高所作業者以外の高所作業者及び高所作業を行わない作業者の中から選択した作業者が携帯する前記位置発信及び警報確認装置の警報手段に対して、これらの警報手段が作動状態となるように前記管理コンピュータから警報指令を発すると、前記効果に加え、警報手段の作動に対応して安全帯の適正使用をしていない高所作業者が、仮に安全帯の命綱を所定長さ引き出すことにより使用状況発信装置のアクティブ型RFIDタグに電波発信させた状態でフックを親綱に掛けず、さらに警報確認手段のスイッチを操作して警報確認信号を発信させたとしても、例えばその近くにいる高所作業者又は高所作業を行わない作業者が、自身が携帯している位置発信及び警報確認装置の警報手段の作動に対応して、安全帯の適正使用をしていない高所作業者に注意を喚起し、該高所作業者が安全帯を適正使用したか否かの確認を行うため、このような作業者相互によるチェック機能により安全帯の適正使用率をさらに向上することができる。
【0015】
さらに、前記命綱の前記巻取り装置側端部に取り付けたマグネットによりリードスイッチをオンにして前記使用状況発信装置のアクティブ型RFIDタグに電力を供給することにより該アクティブ型RFIDタグが電波発信すると、前記効果に加え、接触信頼性が非常に高いリードスイッチと命綱の巻取り装置側端部に取り付けたマグネットとにより、使用状況発信装置のアクティブ型RFIDタグに接続された電源回路をオンにして、該アクティブ型RFIDタグに電力を供給する構成であるため、使用状況発信装置の信頼性を長期にわたって高く維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に本発明の実施の形態を添付図面に基づき詳細に説明するが、本発明は、添付図面に示された形態に限定されず特許請求の範囲記載の要件を満たす実施形態の全てを含むものである。
図1〜図4は、本発明の実施の形態に係る安全帯使用状況の監視及び警報システムを示す概略図であり、図1は高所作業者が安全帯を適正使用している状態を示す斜視図、図2(a)は安全帯及び使用状況発信装置の構成を示す拡大正面図、図2(b)は位置発信及び警報確認装置の構成を示す拡大正面図、図3(a)はシステム構成例を示す図、図3(b)は管理コンピュータにおける作業者位置確認画面の例を示す図、図4は管理コンピュータにおける位置発信及び警報確認装置(位置発信手段)のIDナンバーと使用状況発信装置のIDナンバーとの関連付け画面の例を示す図である。
【0017】
図1に示すように、高所作業エリアHWで作業を行う高所作業者Wが、安全帯11の腰ベルト12を腰に巻いた状態で、命綱14の先端に取り付けられたフック15を親綱(転落防止綱)10に掛けた状態(適正使用状態)で作業を行うことにより、高所作業者Wの転落事故を防止することができる。
【0018】
図2(a)に示すように、安全帯11は、前記のように高所作業者Wが腰に巻く腰ベルト12、腰ベルト12に装着された巻取り装置13、巻取り装置13から引き出される命綱14及び命綱14の先端に取り付けられたフック15からなる。
また、安全帯11には、使用状況発信装置16である、命綱14が所定長さ引き出された状態であることを検出して周期的な電波発信を行う単方向通信タイプのアクティブ型RFID(Radio Frequency Identification)タグ17が取り付けられており、該RFIDタグ17は図示しない電源及びリードスイッチ18と直列に接続される。
【0019】
なお、アクティブ型RFIDタグ17は、単方向通信タイプに限定されるものではなく、双方向通信タイプであってもよい。
さらに、命綱14の巻取り装置13側端部には、マグネットである例えば磁気テープ19が取り付けられており、命綱14は引き出された状態でロックされこの状態が保持されるとともに、磁気テープ19はリードスイッチ18に対向する。
【0020】
したがって、命綱14を所定長さ引き出すと、その巻取り装置13側端部の磁気テープ19の磁気によりリードスイッチ18がオンになり、単方向通信タイプのアクティブ型RFIDタグ17には電源から電力が供給されるため、該RFIDタグ17から周期的な電波発信(IDナンバーの発信)がされる。
なお、リードスイッチ18は、不活性ガスが封入され、外気から遮断されたガラス管内のリード片を磁気で開閉させるものであり、接触信頼性が非常に高いものであるため、長期にわたって高い信頼性を維持することができる。
【0021】
図2(b)に示すように、位置発信及び警報確認装置20は、携帯可能な筐体21に、図示しない電源回路により電力が供給され常時周期的な電波発信を行う双方向通信タイプのアクティブ型RFIDタグ23からなる位置発信手段22、後述する管理コンピュータ2からの警報指令を後述するRFIDタグリーダ1経由でRFIDタグ23により受信して作動状態となり、鳴動するブザー25及び発光するランプ26からなる警報手段24、並びに、押し釦28又はトグルスイッチ等の例えばオン・オフスイッチであるスイッチの操作により警報手段24の動作を停止させるとともに警報確認信号をRFIDタグ23により発信する警報確認手段27を備え付けてなるものである。
なお、警報手段24は、振動することにより作業者に警報するバイブレータであってもよく、ブザー25、ランプ26及びバイブレータの少なくとも1つからなる。
【0022】
したがって、位置発信及び警報確認装置20の位置発信手段22である双方向通信タイプのアクティブ型RFIDタグ23からは常時周期的な電波発信(IDナンバーの発信)がされ、警報手段24が作動している状態で警報確認手段27を操作すると、警報手段24が停止するとともに、警報確認信号が双方向通信タイプのアクティブ型RFIDタグ23から発信される。
【0023】
図1に示す高所作業者Wは、使用状況発信装置16を備えた安全帯11を装着するとともに、位置発信及び警報確認装置20も携帯している。なお、位置発信及び警報確認装置20は、その警報手段24の構成にもよるが、例えば腰ベルト12に取り付けるか、作業服のポケット等に入れることにより高所作業者Wが携帯するようにすればよい。
【0024】
次に、以上のような使用状況発信装置16並びに位置発信及び警報確認装置20を用いた安全帯使用状況の監視及び警報システムについて説明する。
図3(a)に示すように、高所作業エリアHWを含む所定の作業エリアを電波到達範囲RAとするように、作業現場内の所定箇所には、例えば4個のRFIDタグリーダ1,…が設置されており、位置発信及び警報確認装置20の双方向通信タイプのアクティブ型RFIDタグ23並びに使用状況発信装置16の単方向通信タイプのアクティブ型RFIDタグ17と交信することができる。
【0025】
RFIDタグリーダ1は、制御装置とアンテナ1Aとからなり、アンテナ1Aを通してRFIDタグ23及び17と交信するものであり、作業エリアから離れた位置に設置された管理コンピュータ2との通信を自動的に行うための通信手順の変換器であるプロトコルコンバータ(ゲートウェイ端末)が一体又は別体に設けられる。
ここで、RFIDタグリーダ1と管理コンピュータ2とは、無線LANアクセスポイント5及びLAN6を介して無線で接続されるが、有線で接続する構成であってもよく、RFIDタグリーダ1,…の数は3個以上であればよい。
【0026】
また、管理コンピュータ2は、例えばサーバー3及びクライアント4により構成され、クライアント4はパーソナルコンピュータの本体4A及びモニター4Bからなり、サーバー3又はクライント4内には、RFIDタグ23(位置発信手段22)からの電波をRFIDタグリーダ1,…により受信し、これらの電波の強弱からRFIDタグ23(位置発信手段22)の位置を3点測量法により演算する演算手段を備えている。
【0027】
図4に示すように、作業開始前の例えば朝礼の際に、高所作業者W,…を含む作業者全員に位置発信及び警報確認装置20を配布して携帯させ、作業者と位置発信及び警報確認装置20のRFIDタグ23(位置発信タグ)のIDナンバーとの関連付けを管理コンピュータ2により行うとともに、高所作業者W,…が装着する安全帯11に取り付けられた使用状況発信装置16のRFIDタグ17(使用状況発信タグ)のIDナンバーも関連付ける。
すなわち、図4の例では、全作業者の中でA,B,C,Dが高所作業者であり、これらの使用状況発信タグのIDナンバー及び位置発信タグのIDナンバーは、(101,001),(102,002),(103,003),(104,004),…である。
【0028】
作業が開始され、高所作業者A及びBは安全帯11を適正使用しており、高所作業者C及びDは安全帯11を適正使用していないとすると、高所作業者A及びBが装着する安全帯11に取り付けられた使用状況発信装置16のRFIDタグ17からのIDナンバーの発信があり、高所作業者C及びDが装着する安全帯11に取り付けられた使用状況発信装置16のRFIDタグ17からのIDナンバーの発信がない。
この状況では、図3(b)に示す作業者位置確認画面では、安全帯11を適正使用している高所作業者A及びBの使用状況発信タグ101,102には例えば「○」印が表示され、安全帯11を適正使用していない高所作業者C及びDの使用状況発信タグ103,104には例えば「×」印が表示される。
【0029】
また、前記演算手段によりRFIDタグ23(位置発信タグ)の位置が演算され、画面上にその位置(各作業者の位置)が、その位置発信タグのIDナンバー001,002,…により表示される。
例えば、図3(b)の画面中の符号7に示す高所作業者A,Bの位置発信タグのIDナンバー001,002は高所作業エリアHW内に位置し、符号8に示す高所作業者Cの位置発信タグのIDナンバー003も高所作業エリアHW内に位置しており、符号9に示す高所作業者Dの位置発信タグのIDナンバー004は高所作業エリアHW外に位置している。
【0030】
なお、図3(b)に示す作業者位置確認画面に表示された、高所作業者以外の作業者E,F,G,Hの位置発信タグのIDナンバー005,006,007,008の中で、作業者E,F,Hの位置発信タグのIDナンバー005,006,008が高所作業エリアHW内に位置しているが、これらは例えば地上又は高さの低い箇所での作業を行う作業者であり高所作業者ではない。
また、図3(b)中の「◎」印は、使用状況発信タグのIDナンバーと位置発信タグのIDナンバーとの区切りを示しており、高所作業者でない作業者E,F,G,Hは安全帯11を装着しないことから使用状況発信タグのIDナンバーがないため、位置発信タグのIDナンバー005,006,007,008の前に「◎」印が表示される。
【0031】
図3(b)において、符号8に示す高所作業者Cの位置発信タグのIDナンバー003は高所作業エリアHW内に位置しており、この高所作業者Cの使用状況発信タグ103には前記のとおり「×」印が表示されているため、高所作業者Cは高所作業中に安全帯11を適正使用していないことがわかる。
また、このように高所作業中に安全帯11を適正使用していない高所作業者の識別を容易かつ確実にするために、作業者位置確認画面内の符号8に示す高所作業者Cの表示は、例えば赤色等、他の表示と色を変えている。
なお、符号9に示す高所作業者Dの位置発信タグのIDナンバー004は高所作業エリアHW内にないため、この高所作業者Dの使用状況発信タグ104には前記のとおり「×」印が表示されているが、高所作業を行っていないため、色を変えて表示されない。
【0032】
例えば安全管理者が管理コンピュータ2のモニター4Bの作業者位置確認画面を見て、上記のとおり色を変えて表示された高所作業者C(位置発信タグのIDナンバー003)を発見した場合には、高所作業者Cが携帯する位置発信及び警報確認装置20のRFIDタグ23(IDナンバー003)を指定して安全管理者が管理コンピュータ2からRFIDタグリーダ1経由で警報信号を発信する。
なお、このような管理コンピュータ2からの警報信号の発信は、安全管理者等の手動入力ではなく自動で行ってもよい。
【0033】
以上のような構成によれば、前記演算手段により演算したRFIDタグ23(位置発信タグ)の位置が高所作業エリアHW内である場合であって、かつ、RFIDタグ17(使用状況発信タグ)からの電波発信がない場合に、この電波発信がないRFIDタグ17が取り付けられた安全帯11を装着している高所作業者Wが携帯する位置発信及び警報確認装置20の警報手段24に対して警報指令を発するものであり、高所作業者W,…が高所作業エリアHWにいない場合には、RFIDタグ17からの電波発信がない場合であっても管理コンピュータ2から警報指令を発しないため、誤報をなくすことができる。
【0034】
上記警報信号により高所作業者Cが携帯する図2(b)に示す位置発信及び警報確認装置20の警報手段24(例えばブザー25及びランプ26)が作動状態となるため、高所作業者Cに対して迅速に注意を促すことができる。
また、高所作業者Cは、押し釦28を押すことにより警報手段24の動作を停止することができるとともに、RFIDタグ23から警報確認信号が発信されるため、作業エリアから離れた管理コンピュータ2上で高所作業者Cの安否を確認することができる。
さらに、高所作業者Cが、図2(a)に示す安全帯11の命綱14を所定長さ引き出してフック15を親綱(転落防止綱)10に掛けた状態(適正使用状態)とすると、磁気テープ19によりリードスイッチ18がオンになり、RFIDタグ17から周期的な電波発信(IDナンバー103の発信)がされるため、図3(b)に示す作業者位置確認画面で、符号8に示す「×」印が「○」印に変わるとともに、例えば赤色から他の表示色と同色に色が変わるため、高所作業者Cが安全帯11を適正使用したことを容易かつ確実に確認することができる。
【0035】
また、前記のとおり、高所作業者W,…を含む作業者全員に位置発信及び警報確認装置20を配布して携帯させているため、高所作業を行わない作業者も位置発信及び警報確認装置20を携帯している。
したがって、図3(b)の作業者位置確認画面における高所作業者C(符号8参照。)が高所作業中に安全帯11を適正使用していない状態で、高所作業者C以外の高所作業者A及びB(符号7参照。)並びに高所作業者以外の作業者H(位置発信タグのIDナンバー008)等の中から選択した作業者(高所作業者Cになるべく近い者が好ましい。)が携帯する位置発信及び警報確認装置20の警報手段24に対しても、高所作業者Cに警報するのと同様に管理コンピュータ2から警報指令を発するのが好ましい。
【0036】
このように高所作業中に安全帯11を適正使用していない高所作業者C以外に対しても、なるべく高所作業者Cに近い作業者に警報指令を発して注意を促すことにより、例えば高所作業者Cが、仮に安全帯11の命綱14を所定長さ引き出すことによりRFIDタグ17に電波発信させた状態でフック15を親綱10に掛けず、さらに押し釦28を押して警報確認信号を発信させたとしても、例えばその近くにいる高所作業者又は高所作業を行わない作業者が、自身が携帯している位置発信及び警報確認装置20の警報手段24の作動に対応して、安全帯11の適正使用をしていない高所作業者Cに注意を喚起するとともに、該高所作業者Cが安全帯11を適正使用したか否かの確認を行うため、このような作業者相互によるチェック機能により安全帯の適正使用率をさらに向上することができる。
【0037】
また、管理コンピュータ2を、少なくともクライアント4を携帯可能なものとし、この携帯可能な管理コンピュータ(携帯情報端末)を安全管理者が安全パトロールを行う際に携帯するようにすれば、安全パトロール中に高所作業者W,…の位置を確認しながら、安全帯11を適正使用していない高所作業者Wが携帯する位置発信及び警報確認装置20の警報手段24に対して警報指令をするとともに、この高所作業者に対して注意をし、確実に安全帯の適正使用をさせることができる。
【0038】
その上、前記のとおり接触信頼性が非常に高いリードスイッチ18と命綱14の巻取り装置側端部に取り付けた磁気テープ19とにより、単方向通信タイプのアクティブ型RFIDタグ17に接続された電源回路をオンにして、該RFIDタグ17に電力を供給する構成であるため、安全帯11の適正使用状況を管理コンピュータ2に知らせるための使用状況発信装置16の信頼性を長期にわたって高く維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】高所作業者が安全帯を適正使用している状態を示す斜視図である。
【図2】(a)は安全帯及び使用状況発信装置の構成を示す拡大正面図、(b)は位置発信及び警報確認装置の構成を示す拡大正面図である。
【図3】(a)はシステム構成例を示す図、(b)は管理コンピュータにおける作業者位置確認画面の例を示す図である。
【図4】管理コンピュータにおける位置発信及び警報確認装置(位置発信手段)のIDナンバーと使用状況発信装置のIDナンバーとの関連付け画面の例を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
HW 高所作業エリア
RA 電波到達範囲
W 高所作業者
1 RFIDタグリーダ
1A アンテナ
2 管理コンピュータ
3 サーバー
4 クライアント
4A 本体
4B モニター
5 無線LANアクセスポイント
6 LAN
10 親綱(転落防止綱)
11 安全帯
12 腰ベルト
13 巻取り装置
14 命綱
15 フック
16 使用状況発信装置
17 単方向通信タイプのアクティブ型RFIDタグ
18 リードスイッチ
19 磁気テープ(マグネット)
20 位置発信及び警報確認装置
21 筐体
22 位置発信手段
23 双方向通信タイプのアクティブ型RFIDタグ
24 警報手段
25 ブザー
26 ランプ
27 警報確認手段
28 押し釦(スイッチ)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高所作業エリアを含む所定の作業エリアを電波到達範囲とするように作業現場内の所定箇所に配設された3個以上のRFIDタグリーダと、
前記作業エリアから離れた位置に設置又は携帯可能とされ、前記RFIDタグリーダに無線又は有線で接続された管理コンピュータと、
高所作業者が腰に巻く腰ベルト、この腰ベルトに装着された巻取り装置、及び、この巻取り装置から引き出される命綱の先端に取り付けられたフックからなる安全帯に、前記命綱が所定長さ引き出された状態であることを検出して周期的な電波発信を行うアクティブ型RFIDタグを取り付けてなる使用状況発信装置と、
携帯可能な筐体に、常時周期的な電波発信を行う双方向通信タイプのアクティブ型RFIDタグからなる位置発信手段、前記管理コンピュータからの警報指令を前記RFIDタグリーダ経由で前記双方向通信タイプのアクティブ型RFIDタグにより受信して作動状態となり、鳴動若しくは振動又は発光する警報手段、並びに、スイッチの操作により前記警報手段の動作を停止させるとともに警報確認信号を前記双方向通信タイプのアクティブ型RFIDタグにより発信する警報確認手段を備え付けてなる、位置発信及び警報確認装置と、
前記位置発信手段からの電波を前記3個以上のRFIDタグリーダにより受信し、これらの電波の強弱から前記位置発信手段の位置を演算する演算手段とを備え、
前記位置発信及び警報確認装置を高所作業者に携帯させ、
前記演算手段により演算した前記位置発信手段の位置が前記高所作業エリア内である場合であって、かつ、前記使用状況発信装置からの電波発信がない場合に、この電波発信がない使用状況発信装置が取り付けられた安全帯を装着している高所作業者が携帯する前記位置発信及び警報確認装置の警報手段に対して、前記管理コンピュータから警報指令を発し、該警報手段を作動状態としてなることを特徴とする安全帯使用状況の監視及び警報システム。
【請求項2】
前記位置発信及び警報確認装置を高所作業を行わない作業者にも携帯させ、前記電波発信がない使用状況発信装置が取り付けられた安全帯を装着している高所作業者、並びに、この高所作業者以外の高所作業者及び高所作業を行わない作業者の中から選択した作業者が携帯する前記位置発信及び警報確認装置の警報手段に対して、これらの警報手段が作動状態となるように前記管理コンピュータから警報指令を発する請求項1記載の安全帯使用状況の監視及び警報システム。
【請求項3】
前記命綱の前記巻取り装置側端部に取り付けたマグネットによりリードスイッチをオンにして前記使用状況発信装置のアクティブ型RFIDタグに電力を供給することにより該アクティブ型RFIDタグが電波発信する請求項1記載の安全帯使用状況の監視及び警報システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−165517(P2009−165517A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−3816(P2008−3816)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(000211695)中西金属工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】