説明

安全性に優れた過塩素酸塩溶液と、塩素含有樹脂組成物の熱安定化方法

【課題】塩素含有樹脂の安定剤としての過塩素酸塩溶液の取扱性および安全性を改良し、取扱性および安全性を改良した過塩素酸塩溶液および塩素含有樹脂組成物の熱安定化方法。
【解決手段】本発明の塩素含有樹脂の安定化方法手は、塩素含有樹脂100重量部に対して、(a) 過塩素酸塩1〜60重量%、水溶性有機溶剤5〜50重量%および水を20〜94重量%含有する塩素含有樹脂の安定剤用の過塩素酸塩溶液0.O04〜10重量部と、(b)下記一般式(I)で表される珪酸塩化合物の少なくとも一種0.O01〜10重量部とを添加する:
M(O)a・nSi02・mH20 (I)
(ここで、Mはアルカリ土類金属およびアルミニウムの中から選ばれた少なくとも一種、aは、Mがアルカリ土類金属のときには1、Mがアルミニウムのときには3/2、nは1〜5、mは任意の正の整数)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩素含有樹脂の安定剤助剤として使用される過塩素酸塩溶液の取扱性および安全性を改良する方法に関するものである。
本発明はさらに、取扱性および安全性が改良された塩素含有樹脂の安定剤用過塩素酸塩溶液に関するものである。
本発明はさらに、塩素含有樹脂組成物の熱安定化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリ塩化ビニル(PVC)などの塩素含有樹脂は種々の優れた性質を有するが、熱成型加工時に脱塩化水素を伴う分解を起こして成形品が着色し、商品価値を低下させるという欠点がある。これを改善するために従来から種々の安定剤を添加して塩素含有樹脂の熱安定性を改善することが広く行われている。そうした安定剤としては鉛系、有機錫系、金属石鹸系等がある。
【0003】
ポリ塩化ビニルなどの塩素含有樹脂組成物の成形品は、近年、自動車内装材料として広く用いられている。特に、クラッシュパッド、アームレスト、ヘッドレスト、コンソール、メーターカバー、ドアリムなどのカバーリング材料として用途が広がっている。そうしたPVC樹脂組成物を用いた車輌内装部品では反発弾性や風合いなどを改善する目的でポリウレタンフォームを裏面に接着したり、内部に注入する方法が採用されている。また、これらの自動車内装部品の成形法として、最近では粉末回転成形法と粉末スラッシュ成形法の粉末成形法が注目されている。
【0004】
上記車輌内装用成形品には、その用途目的に応じて70℃から140℃の温度で長時間曝されるという厳しい条件に十分耐え得る性能が要求されている。かかる長時間の高温条件下では、ポリウレタンフォームを接着あるいは内部に注入した塩素含有樹脂組成物製の車輌内装成形品が着色したり、物性劣化して、品質性能や商品価値が著しく低下するという欠点がある。すなわち、ポリウレタンフォーム中に残存あるいは熱分解によって生成したアミン化合物やシアン化合物などが塩素含有樹脂組成物製成形品の層中へ移行し、塩素含有樹脂組成物の熱劣化をより一層促進するものと推察される。
【0005】
そこで、このような技術課題に対して、安定剤として有機残基と結合する有機金属塩化合物(金属石ケン)と、過塩素酸塩を有機溶剤中に溶かした溶液あるいは過塩素酸塩の水溶液とを組み合わせて用いることが提案されている(例えば、特許文献1〜6を参照)。しかし、安定剤に有機溶剤を多く用いると車輌内の曇りや臭い、搭乗者の健康を害する等の問題が生じる。一方、過塩素酸塩の水溶液を用いた場合には、樹脂の配合を行う工場の配管内に付着した過塩素酸水溶液から水が蒸発して過塩素酸塩の結晶が生じ易い。その結果、摩擦や衝撃により爆発や火災を起こす危険性がある。
【0006】
従って、過塩素酸塩の効果を損なうことなく、取扱性と安全性とが改善された過塩素酸塩の使用方法に対するニーズがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭57-57056号公報
【特許文献2】特公昭57-47925号公報
【特許文献3】特公昭57-47926号公報
【特許文献4】特公昭57-47927号公報
【特許文献5】特公昭63-462号公報
【特許文献6】特開昭58-122951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、塩素含有樹脂の安定剤用の過塩素酸塩溶液の溶媒として、高沸点で水溶性の有機溶剤を水と混合して用いることによって、上記過塩素酸塩溶液の取扱性および安全性を改良することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、過塩素酸塩を1〜60重量%、水溶性有機溶剤を5〜50重量%、水を20〜94重量%含有する塩素含有樹脂の安定剤用の過塩素酸塩溶液を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の取扱性および安全性が改良された過塩素酸塩溶液を用いることによって、過塩素酸塩を用いた塩素含有樹脂組成物の製造時の作業性と安全性とが改善される。本発明の塩素含有樹脂組成物の熱安定化方法を用いることで、熱安定性、熱老化性、着色性に優れた粉体成形用の塩化ビニル系樹脂組成物等を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明で使用する水溶性有機溶剤は沸点が150℃以上であるのが望ましく、さらに望ましくは200℃以上であるのが好ましい。沸点がこれより低い溶剤を用いた場合、過塩素酸塩の結晶化を抑える効果が不十分になる。
【0012】
そうした水溶性有機溶剤の例としてはエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソシアミルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールアセテート、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、1・4一ブタンジオール、1・5一ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール、グリセリン、グリセリンモノアセテート、グリセリンジアセテート、グリセリンモノブチレート等がある。本発明ではこれらの溶剤を単独で用いても、複数混合して用いてもよい。
【0013】
この水溶性有機溶剤を下記の比率(全体で100重量%)で用いて本発明の塩素含有樹脂の安定剤用の過塩素酸塩溶液が得られる:
過塩素酸塩 1〜60重量%
水溶性有機溶剤 5〜50重量%
水 20〜94重量%
【0014】
この過塩素酸塩溶液を他の安定剤および/または安定化助剤と一緒に添加することもできる。
【0015】
塩素含有樹脂の安定剤として使用する場合、および、他の安定剤および/または安定化助剤と一緒に添加する場合の本発明の過塩素酸塩溶液の使用量は、他の安定剤の種類に依存するが、一般に、塩素含有樹脂100重量部に対してO.01から10重量部、好ましくはO.05から5重量部添加することができる。
【0016】
他の安定剤としては従来公知の鉛系、有機錫系、金属石鹸系等を使用することができる。本発明で使用可能な他の安定剤および/または安定化助剤としては、例えばバリウム−亜鉛系またはカルシウム−亜鉛系の金属カルボキシレートや金属フェノレート類を始めとする有機金属塩類、フェノール系あるいは硫黄系の酸化防止剤、有機亜リン酸エステル化合物類、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、初期着色防止剤、有機錫化合物類およびエポキシ化合物類などが挙げられる。
【0017】
本発明で用いる過塩素酸塩としては過塩素酸のリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩、亜鉛塩、アルミニウム塩、アンモニウム塩等が例示でき、これらの無水物でも含水塩でもよく、これらを単独で用いても混合で用いてもよい。
【0018】
本発明の好ましい実施例では、上記過塩素酸塩を塩素含有樹脂組成物の安定剤として用いる場合、塩素含有樹脂100重量部に対して下記(a)と(b)を下記の比率で添加する:
【0019】
(a) 過塩素酸塩を1〜60重量%、水溶性有機溶剤を5〜50重量%、水を20〜94重量%含有する過塩素酸塩溶液 O.O04〜10重量部、
(b) 下記一般式(I)で表される珪酸塩化合物の少なくとも一種 O.O01〜10重量部
M(O)a・nSiO2・mH2O (I)
(ここで、Mはアルカリ土類金属およびアルミニウムの中から選ばれた少なくとも一種、aは、Mがアルカリ土類金属のときには1、Mがアルミニウムのときには3/2、nは1〜5、mは任意の正の整数を表す)
【0020】
本発明では、さらに、(c)成分として下記一般式(II)で表されるハイドロタルサイトO.05〜10重量部を添加することで塩素含有樹脂組成物の安定化をより効果的に行うことができる:
【0021】
(1-x)Alx(OH)2(An-x/n)mH2O (II〕
(ここで、MはMgおよび/またはZnを示し、An-はn価の陰イオン(CO32-および/またはClO4-)を示し、xは0<x<0.5であり、mは0≦m<3の範囲)
【0022】
上記ハイドロタルサイト化合物は天然物でも合成品でもよい。また、ハイドロタルサイト化合物の表面をステアリン酸やオレイン酸のような高級脂肪酸、高級脂肪酸の金属塩、ドデシルベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩などの有機スルホン酸金属塩、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、ワックスあるいは過塩素酸などで被覆したものも使用できる。
【0023】
上記の有機金属塩の金属はナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム等が挙げられる。有機酸残基としてはカルボン酸、フェノール、アルキルフェノール等がある。カルボン酸は炭素数1〜22の飽和または不飽和脂肪族のカルボン酸、炭素数7〜16の環式または複素環式カルボン酸、炭素数2〜10のヒドロキシ酸またはアルコキシ酸であり、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、カプリル酸、オクチル酸、2一エチルヘキシル酸、ネオデカン酸、イソデカン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ベヘニン酸、エポキシ化ステアリン酸、イソステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、12-ケトステアリン酸、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレイン酸、グリコール酸、乳酸、ヒドロアクリル酸、α−オキシ酢酸、グリセリン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、ラウリルメルカプトプロピオン酸、安息香酸、パラターシャリーブチル安息香酸、トルイル酸、ジメチル安息香酸、アミノ安息香酸、サリチル酸、アミノ酢酸、グルタミン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、フタル酸、マレイン酸、チオジプロピオン酸等が挙げられる。フェノール、アルキルフェノールの例としてはフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、ターシャリーブチルフェノール、オクチルフェノール、イソアミノフェノールおよびクレゾールが挙げられる。
【0024】
これらのカルボン酸の金属塩化合物およびアルキルフェノールの金属塩化合物は酸性塩または中性塩であってもよく、塩基性塩、炭酸塩あるいは過塩基性塩であってもよい。また、これら有機塩金属塩の添加量は塩素含有樹脂100重量部に対しては、O.1から10重量部、好ましくはO.2から5重量部である。これら金属塩類は1種または2種以上混合して使用することが出来る。
【0025】
上記有機錫系化合物の例としてはジメチル錫オキサイド、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、ジメチル錫サルファイド、ジブチル錫サルファイド、ジオクチル錫サルファイド、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジステアレート、ジオクチル錫ジオレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジステアレート、ジオクチル錫ビス(オレイルマレート)、ジブチル錫ビス(ステアリルマレート)、ジブチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫ビス(ブチルマレート)、ジブチル錫-β-メルカプトプロピオネート、ジオクチル錫-β-メルカプトプロピオネート、ジブチル錫メルカプトアセテート、モノブチル錫トリス(2-エチルヘキシルメルカプトアセテート)、ジブチル錫ビス(2一エチルヘキシルメルカプトアセテート)、モノオクチル錫トリス(2-エチルヘキシルメルカプトアセテート)、ジブチル錫ビス(イソオクチルメルカプトアセテート)、ジオクチル錫ビス(イソオクチルメルカプトアセテート〕、ジオクチル錫ビス(2-エチルヘキシルメルカプトアセテート)、ジメチル錫ビス(イソオクチルメルカプトプロピオネート)、モノブチル錫トリス(イソオクチルメルカプトプロピオネート)、モノオクチル錫トリス(イソオクチルメルカプトプロピオネート)などが挙げられる。これら有機錫系化合物の添加量は塩素含有樹脂100重量部に対してO.01から10重量部、好ましくはO.05から5重量部である。
【0026】
上記初期着色防止剤としてはβ-ジケトン化合物、スルホレン化合物を使用することができる。β-ジケトン化合物は例えばデヒドロ酢酸、シクロヘキサン-1,3-ジオン、2-ベンゾイルシクロペンタノン、2-アセチルシクロヘキサノン、2-ベンゾイルシクロヘキサノン、アセチルステアロイルメタン、ベンゾイルアセトン、パルミトイルベンゾイルメタン、ステアロイルベンゾイルメタン、ジベンゾイルメタン、トリベンゾイルメタン、4-メトキシベンゾイル-ベンゾイルメタン、ビス(4-メトキシベンゾイルメタン〕、4-クロロベンゾイル-ベンゾイルメタン、ベンゾイルトリフルオロアセトン、パルミトイルテトラロン、ステアロイルテトラロンおよびベンゾイルテトラロンなどである。
【0027】
上記β-ジケトン化合物は金属錯塩であってもよく、錯塩を構成する金属としてはナトリウム、カルシウム、バリウムまたは亜鉛などである。
【0028】
初期着色防止剤の添加量は塩素含有樹脂100重量部に対し、0.0005から10重量部、好ましくは0.O05から5重量部である。これら初期着色防止剤は1種または2種以上混合して使用することができる。
【0029】
上記有機亜リン酸エステル化合物はトリアルキルホスファイト、トリアリールホスファイト、アルキルアリールホスファイト、ビスフェノール-A-ホスファイト、多価アルコールホスファイト、エステル残基の有機基の一つ以上が水素原子によって置換されたアシッドホスファイトなどによって代表され、このようなホスファイト化合物としては、例えばトリフェニルホスファイト、トリイソオクチルホスファイト、トリイソデシルホスファイト、トリイソトリデシルホスファイト、トリイソデシルチオホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ジフェニルトリデシルホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、ポリ(ジプロピレングリコール)フェニルホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリ-2,4-ジ-t-ブチルフェニルホスファイト、2,4-ジ-t-ブチルフェニルジイソデシルホスファイト、トリブトキシエチルホスファイト、4,4'-イソプロピリデンジフェニルアルキル(C12〜C15)ジホスファイト、ペプキタス(ジプロピレングリコール)トリホスファイト、4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-第三ブチルージートリデシルホスファイト)などがある。
【0030】
上記亜リン酸エステル化合物中の有機残基の一つあるいは二つが水素原子によって置換されたアシッドホスファイトも有効であり、例えばジフェニルアシッドホスファイト、モノフェニルアシッドホスファイト、ジイソオクチルアシッドホスファイト、モノイソオクチルアシッドホスファイト、ジトリデシルアシッドホスファイト、ジベンジルアシッドホスファイト、ジノニルフェニルアシッドホスファイトなどである。
【0031】
また、上記有機リン酸エステル化合物、例えばノニルフェニルポリオキシエチレン(5〜55)リン酸、トリデシルポリオキシエチレン(4〜10)リン酸などは加工助剤として用いられる。さらに有機リン酸エステルの金属付加物、例えばモノージ混合イソオクチルホスフェートのマグネシウム、カルシウム、バリウムまたは亜鉛塩、モノージ混合イソトリデシルホスフェートのマグネシウム、カルシウム、バリウムまたは亜鉛塩などは熱安定化助剤としてそれぞれ有用である。
【0032】
また、上記有機リン酸エステル中の有機残基の一つあるいは二つが水素原子によって置換されたアシッドホスフェートも有効であり、例えばブチルアシッドホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、2一エチルヘキシルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェートなどがある。さらにこれらアシッドホスフェートの金属塩、例えばマグネシウム、カルシウム、バリウムまたは亜鉛塩などがある。
【0033】
上記酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール類、例えばアルキル化フェノール、アルキル化フェノールエステル、アルキレンまたはアルキリデンビスフェノール、ポリアルキル化フェノールエステルであり、これらは、例えばブチル化ヒドロキシトルエン、4一ヒドロキシメチル-2,6-ジ-t-ブチルフェノール、4,4`-ジヒドロキシ-2,2'-ジフェニルプロパン、2,2`-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4'-チオビス(6-t-ブチルー3一メチルフェノール)、テトラキス[メチレン-3-(3`,5'-ジ-t-ブチル-4`-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンである。そして、含イオウアルカン酸アルキルエステルとしては、例えばジラウリルチオプロピオン酸エステル、ジステアリルチオプロピオン酸エステルなどである。
【0034】
上記エポキシ化合物は、エポキシ化不飽和油脂、エポキシ化不飽和脂肪酸エステル、エポキシシクロヘキサン誘導体またはエピクロロヒドリン誘導体であり、例えばエポキシ化大豆油、エポキシ化ヒマシ油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化サフラワー油、エポキシ化アマニ油脂肪酸ブチル、エポキシ化ブチル、イソオクチル、2-エチルヘキシルなどのアルキルエステル、およびカルシウム、亜鉛などの金属塩、3-(2-キセノキシ〕-1,2-エポキシプロパン、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ-2-エチルヘキシル、エポキシポリブタジエン、ビスフェノール-A-ジグリシジルエーテル、などである。
【0035】
その他の安定化助剤としては、多価アルコール、例えばモノおよびジペンタエリスリトール、マンニトール、ソルビトールであり、この多価アルコールとカルボン酸、アミノ酸またはロジンとのエステル化合物、例えばステアリン酸ペンタエリスリトール、アジピン酸ペンタエリスリトール、ピロリドンカルボン酸ペンタエリスリトール、グルタミン酸ペンタエリスリトール、ウッドロジンペンタエリスリトール、無水マレイン酸ウッドロジンペンタエリスリトール、ウッドロジングリセロールエステルである。また、含窒素化合物である1,2,3-ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系化合物、2-メルカプトベンゾチアゾールなどのチアゾール系化合物、β-アミノクロトン酸と1,3,または1,4-ブタンジオール、1,2-ジプロピレングリコール、チオジエチレングリコール、ラウリルアルコールなどとのエステル化合物、そしてトリス(2-ヒドロキシルエチル〕イソシアネート、トリス(メルカプトエチル〕イソシアヌレート化合物である。
【0036】
上記紫外線吸収剤として用いられるものは、ベンゾトリアゾール系およびベンゾフェノン系によって代表され、ベンゾトリアゾール系としては例えば、2(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル〕ベンゾトリアゾール、2(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2(3,5-ジ-t-アミルー2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール化合物、そしてコハク酸2,5-ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物である。ベンゾフェノン系としては例えば2,4-ジヒドロキシーベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシーベンゾフェノン2,2'一ジヒドロキシ-4-メトキシーベンゾフェノン、2,2'-ジヒドロキシ-4,4'ジメトキシ-ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシ-ベンゾフェノンなどがある。
【0037】
上記光安定剤として用いられるものは、例えばポリ[16-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル11(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル〕イミノ1ヘキサメチレン1(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル〕イミノ1]などのヒンダードアミン化合物である。
【0038】
本発明の過塩素酸塩溶液が用いられる塩素含有樹脂としては、例えばポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、塩化ビニルー酢酸ビニル共重合体、塩化ビニルーエチレン共重合体、塩化ビニループロピレン共重合体、塩化ビニルースチレン共重合体、塩化ビニルーイソブチレン共重合体、塩化ビニルー塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニルースチレンー無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニルーアルキル、シクロアルキル又はアリールマレイミド共重合体、塩化ビニルースチレンーアクリロニトリル共重合体、塩化ビニルーブタジエン共重合体、塩化ビニルーイソプレン共重合体、塩化ビニルー塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニルー塩化ビニリデンー酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニルーアクリル酸エステル共重合体、塩化ビニルーマレイン酸エステル共重合体、塩化ビニルーメタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニルーアクリロニトリル共重合体、塩化ビニルーウレタン共重合体、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、などを挙げる事が出来る。樹脂の形状や重合・製造方法には特に限定されない。
【0039】
本発明の過塩素酸塩溶液では、必要に応じて公知の添加剤をその目的に応じて適宜に使用することができる。そうした添加剤としては可塑剤、帯電防止剤、防曇剤、防錆剤等の金属不活性剤、防徽剤、殺菌剤、低分子アクリル酸エステルオリゴマーなどのプレートアウト防止剤、離型剤、粘度低下剤、界面活性剤、蛍光増白剤、発泡剤、アクリル系セル調整剤、加工助剤、滑剤等、無機塩または無機金属化合物や、顔料、炭酸カルシウムやクレーなどの充填剤、難燃剤、表面処理剤、架橋剤、補強剤等が挙げられる。
【0040】
上記可塑剤としては、例えば、ジ-2-エチルヘキシルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジ-混合-アルキル(C9〜C11)フタレート、ジヘプチルフタレート、ジイソノニルフタレートなどのフタレート系可塑剤、ジ-2-エチルヘキシルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジイソデシルアジペートなどのアジペート系可塑剤、トリ-2-エチルヘキシルトリメリテート、トリ-n-オクチルトリメリテート、トリイソデシルトリメリテート、トリブチルトリメリテートなどのトリメリテート系可塑剤、ジ-2-エチルヘキシルセバケート、ジブチルセバケートなどのセバケート系可塑剤、その他ホスフェート系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、塩素化パラフィン系可塑剤、ピロメリテート系可塑剤、エポキシ系可塑剤などがあげられる。
【0041】
上記の無機塩または無機金属化合物は、例えば金属がナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、アルミニウムまたはスズで、これらの金属の酸化物、水酸化物、ケイ酸塩、ホウ酸塩、硫酸塩、過塩素酸塩、亜リン酸塩、リン酸塩、塩基性炭酸塩、塩基性リン酸塩である。そしてこれらの化合物は複塩であってもよく、また無水和物でも結晶水を有する水和物であっても良く、さらには混合物などの形態をとっていてもよい。また、多価アルコール等との錯化合物であっても良い。
【0042】
これらの化合物の代表的なものは、例えば、下記式(III)で表されるカルシウム含有水酸化物、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カリウムーアルミニウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸アルミニウム、硫酸アルミニウム18水和物、硫酸アルミニウムーナトリウム12水和物、リン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、オルトリン酸カルシウム、オルトリン酸亜鉛、ナトリウム置換型A型ゼオライト、カルシウム置換型A型ゼオライト、マグネシウム置換型A型ゼオライト、ワラストナイト類、トベルモライト類などである。
Ca(1-x)x(OH)2 (III)
(ここで、MはMgおよびAlを示し、xは0.005<x<0.5の範囲)
【0043】
以下、本発明を実施例に基づいて更に説明するが、本発明が下記実施例によってなんら限定されるものではない。
【0044】
実施例1(合成例)
(実施例1-1)
60%過塩素酸ナトリウム水溶液66.7gと、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点:249℃)10gとを混合し、そこに更に水23.3gを混ぜ40%の過塩素酸ナトリウム溶液を調整した。
【0045】
(実施例1-2)
60%過塩素酸ナトリウム水溶液66.7gと、ポリエチレングリコール200(沸点:250℃以上)10gとを混合し、そこに更に水23.3gを混ぜ40%の過塩素酸ナトリウム溶液を調整した。
【0046】
(実施例1-3)
60%過塩素酸ナトリウム水溶液66.7gとグリセリン(沸点:290℃)10gを混合し、そこに更に水23.3gを混ぜ40%の過塩素酸ナトリウム水溶液を調整した。
【0047】
(実施例1-4)
60%過塩素酸ナトリウム水溶液66.7gと、グリセリン(沸点:290℃)20gを混合し、そこに更に水13.3gを混ぜ40%の過塩素酸ナトリウム溶液を調整した。
前記合成例で合成した安定剤成分を各シャーレ(直径約60mm)に10.Ogずつ秤量し、室温・開放状態で10日間放置して水分の揮発、結晶の析出状態を観察した
【0048】
[評価基準]:
揮発減量は10日間で減量した割合(%)を表し、
結晶の析出は10日間の中で析出が観測された日を示す。
【0049】
(比較例1-1)
60%過塩素酸ナトリウム水溶液66.7gに水33.3gを混合し、40%の過塩素酸ナトリウム水溶液を調整した。
【0050】
(比較例1-2)
60%過塩素酸ナトリウム水溶液66.7gと、プロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点:120℃)10gとを混合し、そこに更に水23.3gを混ぜ40%の過塩素酸ナトリウム溶液を調整した。
【0051】
【表1】

【0052】
[表1]から明らかなように、過塩素酸ナトリウム水溶液(比較例1-1)や低沸点の有機溶剤を添加した過塩素酸ナトリウム水溶液(比較例1-2)では、水分の揮発により容易に結晶が析出し、取扱いが危険であるのに対し、高沸点の水溶性有機溶剤を含有した場合(実施例1-1〜1-4)は、結晶の析出が抑制されている。実施例1-4については、10日間で結晶が析出しない。結晶の析出が抑制され、乾固しない事により結晶物の飛散による汚染事故を防ぎ、安全に取り扱うことが出来る。
【0053】
実施例2(ポリウレタンライニングシートの作成)
下記配合による塩化ビニル樹脂組成物に、前記合成例で合成した安定剤成分を、夫々添加した。その塩化ビニル樹脂組成物をギヤーオーブンで110℃で1時間ドライアップした後、らい潰機を用いて5分間撹拝してコンパウンドを作成した。このコンパウンドを用い、以下の粉末成形手順でシートを作成した。クロム鏡面板を300℃のギヤーオーブンに約15分間入れ240℃以上に加熱する。ギヤーオーブンから取り出した後、鏡面板が240℃になった時点で該コンパウンドを振り掛け、速やかに均一の厚さに広げて10秒間放置する。未ゲル化の余分なコンパウンドを落とし、350℃の電気炉に15秒間入れ完全にゲル化させる。取り出した金型を冷却し、シートを作成した。
【0054】
配合組成 重量
サスペンジョンPVC 100
ぺ一ストPVC 15
トリオクチルトリメリテート 80
ESB0(エポキシ化大豆油) 5
ベージュ顔料 5
ステアリン酸亜鉛 O.3
Na-A型ゼオライト 2.O
アルカマイザー7(協和化学工業、ハイドロタルサイト類化合物) 0.5
ジベンゾイルメタン O.2
n-オクタデシル1-3-(4'-ヒドロキシー3',5'-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート O.3
試験化合物([表2]に示す) 1.O
【0055】
PUF裏打ち試験
上記で作成したシートを金型にセットし、このシート上にウレタンフォーム用ポリオール (EP-3033、三井化学ポリウレタン(株)製)と ポリイソシアネート (CR-200、三井化学ポリウレタン(株)製)とを10対7の重量比で混合したポリウレタン原液(下記配合比(重量部)参照)を注入し、発泡させてPVCシートとポリウレタンフォームから成る厚さ20mmの一体成型品を得た。
EP-3033 90.00
トリエタノールアミン 7.21
水 2.25
TEDA 0.54
CR-200 71.5
(ここで、TEDA(トリエチレンジアミン、関東化学(株)製)とトリエタノールアミン(関東化学(株)製)は触媒)
【0056】
上記ポリウレタンライニングシートを120℃のオーブン中で500時間経時した後の色変化率ΔEで安定性を評価した。評価基準は以下のとおり:
10点 ΔE20以上、黒分解
0点 ΔE2以下
上記評価基準による結果を[表2]に示す。
【0057】
【表2】

【0058】
[表2]に示すように過塩素酸ナトリウム溶液を添加する事で明らかに熱老化性が改善されている。水溶液の一部に水溶性有機溶剤を含有しても其の効果を全く損なう事は無い。
【0059】
産業上の利用可能性
ポリ塩化ビニルなどの塩素含有樹脂組成物の着色や物性劣化を防止でき、特に、ポリウレタンフォームを貼り合わせて用いる自動車内装材料に有効に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過塩素酸塩を1〜60重量%、水溶性有機溶剤を5〜50重量%、水を20〜94重量%含有することを特徴とする、塩素含有樹脂の安定剤用の過塩素酸塩溶液。
【請求項2】
上記水溶性有機溶剤の沸点が150℃以上である請求項1に記載の過塩素酸塩溶液。
【請求項3】
塩素含有樹脂100に、(a)過塩素酸塩を1〜60重量%、水溶性有機溶剤を5〜50重量%、水を20〜94重量%含有する過塩素酸塩溶液0.O04〜10重量部と、(b)下記一般式(I)で表される珪酸塩化合物の少なくとも一種0.001〜10重量部とを添加することを特徴とする塩素含有樹脂組成物の熱安定化方法:
M(O)a・nSi02・mH2O (I)
(ここで、Mはアルカリ土類金属およびアルミニウムの中から選ばれた少なくとも一種、aは、Mがアルカリ土類金属のときには1、Mがアルミニウムのときには3/2、nは1〜5、mは任意の正の整数を表す)
【請求項4】
さらに、(c)成分として、ハイドロタルサイト0.05〜10重量部を添加する請求項3に記載の方法。
【請求項5】
水溶性有機溶剤の沸点が150℃以上である請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
過塩素酸塩を1〜60重量%、水溶性有機溶剤を5〜50重量%、水を20〜94重量%含有する過塩素酸塩溶液の、塩素含有樹脂組成物の熱安定化用安定化序助剤としての使用。

【公表番号】特表2012−526860(P2012−526860A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−547102(P2011−547102)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【国際出願番号】PCT/JP2010/058686
【国際公開番号】WO2010/131782
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000186810)昭島化学工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】