説明

安定した熱凝固性ポリウレタン分散物

耐湿性のポリウレタン品を形成することができる安定した熱凝固性ポリウレタンは、外的界面活性剤と、電解質と、ポリウレタン粒子とをその中に有する水から構成され、この場合、ポリウレタン粒子は、エチレンオキシドユニットを、安定した水性ポリウレタン分散物を外的界面活性剤の非存在下で与えるのに不十分である量で有する非イオン性ポリウレタンから構成される。エチレンオキシドユニットの一部分が、分子量が400〜1500であるモノヒドロキシルポリエチレンオキシド、分子量が800〜3000であるポリエチレンオキシドジオール、又は、その組合せからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された熱凝固性ポリウレタン分散物に関連する。
【背景技術】
【0002】
様々なポリウレタンが、ポリイソシアネートと、ポリオール又はポリアミン(活性水素を有する化合物)との反応によって製造されている。ポリウレタン粒子の水性分散物が知られている。例えば、米国特許第2,968,575号及び同第3,294,724号には、別個に加えられた界面活性剤を使用して分散された水性ポリウレタン分散物が記載される。このようなポリウレタン分散物は、外的に安定化される(externally stabilized)と一般に呼ばれる。まさにその特徴によって水に可溶性である外的界面活性剤(external surfactant)のために、このような分散物から作製された被覆は、低下した性質(例えば、低下した耐湿性など)を有する(米国特許第4,066,591号及び同第3,920,598号を参照のこと)。
【0003】
外的に安定化されたポリウレタン分散物に関する上記問題を改善するために、内的に安定化された分散物(internally stabilized dispersions)が記載されている。内的に安定化されたポリウレタン分散物は、イオン性又は非イオン性の親水性ペンダント基を、液体媒体に分散された粒子のポリウレタンの内部に組み込むことによって安定化されるポリウレタン分散物である。非イオン性の内因的に安定化されたポリウレタン分散物の例が米国特許第3,905,929号及び同第3,920,598号によって記載され、これらはペンダント状のポリエチレンオキシド側鎖を含有する。
【0004】
イオン性の内的に安定化された様々なポリウレタン分散物が周知であり、米国特許第6,231,926号の第5欄4行〜68行ならびに第6欄1行及び2行に、また、米国特許第3,412,054号、同第3,479,310号及び同第4,066,591号に記載される。典型的には、ジヒドロキシアルキルカルボン酸、例えば、米国特許第3,412,054号によって記載されるジヒドロキシアルキルカルボン酸などが、アニオン性の内的に安定化されたポリウレタン分散物を作製するために使用される。アニオン性の内的に安定化されたポリウレタン分散物を作製するために使用される一般的なモノマーはジメチロールプロピオン酸(DMPA)である。
【0005】
様々な熱凝固性(coaguable)ポリウレタン分散物が、織物又は羊毛に含浸させるために、繊維フィラメントを作製するために、また、薄い層状品(例えば、グローブ)を作製するために、また、より効率的に乾燥された被覆を作製するために記載されている。例えば、非イオン的に安定化された分散物は、適度な温度で熱感受性であることが知られており、しかし、このような分散物から作製された品物は、安定した水性分散物を作製するために必要である多量の親水性ポリエチレンオキシド鎖のために、低い耐湿性を示す。
【0006】
米国特許第4,293,474号には、熱凝固性の水性ポリウレタン分散物が記載されており、この場合、ポリウレタン粒子が内的なイオン性界面活性剤成分及び非イオン性界面活性剤成分の両方を有し、かつ、分散物は、水に溶解された電解質を含有する。しかしながら、ドイツ国特許出願公開明細書第2,659,617号(これは米国特許第4,293,474号に対応する)を参照する米国特許第4,888,379号に記載されるように、凝固点(温度)を精度よく調節することができず、また、凝固点(温度)が貯蔵期間中に変化する。
【0007】
より近年には、米国特許第4,888,379号が、ポリウレタン粒子が、水に溶解された電解質と一緒に、内的なイオン性界面活性剤及び水溶性のポリエーテルウレタンを有する水性の熱凝固性分散物を記載する。より低分子量の水溶性化学種の濃度が大きいために、このような分散物から作製された被覆は不良な性質(例えば、低い耐湿性など)に悩まされる。
【0008】
従って、先行技術の諸問題(例えば、貯蔵安定性、貯蔵したときの変動する凝固温度、及び、低下した耐湿性を有する被覆など)を回避する熱凝固性ポリウレタン分散物を提供することは望ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、室温で長期間にわたって貯蔵された後でさえ、実質的に変わらない高い温度での凝固を示すポリウレタン分散物に関する。加えて、本発明のポリウレタン分散物は、被覆、セル構造を伴う低密度品、又は、他の熱凝固性ポリウレタン分散物と比較した場合、改善された耐湿性を有する含浸層を作製するために使用することができる。
【0010】
本発明の第1の態様は、外的界面活性剤と、電解質と、ポリウレタン粒子とをその中に有する水を含み、ポリウレタン粒子が、エチレンオキシドユニットを、安定した水性ポリウレタン分散物を外的界面活性剤の非存在下で与えるのに不十分である量で有する非イオン性ポリウレア/ウレタンから構成され、エチレンオキシドユニットの少なくとも一部分が、分子量が400〜1500であるモノヒドロキシルポリエチレンオキシド、分子量が800〜3000である非イオン性ポリエチレンオキシドジオール、又は、その組合せからなる安定した熱凝固性ポリウレタン分散物である。驚くべきことに、本発明の熱凝固性分散物は、長期間にわたって依然として安定でありながら、貯蔵されたとき、実質的に変わらない凝固温度を有する。
【0011】
本発明の第2の態様は、
(i)外的界面活性剤と、電解質と、非イオン性ポリウレタンから構成されるポリウレタン粒子とをその中に有する水から構成されるポリウレタン分散物を、凝固したポリウレタン品(a coagulated polyurethane article)を形成するために充分な時間にわたって凝固温度に加熱すること、及び
(ii)凝固したポリウレタン品を第2の乾燥温度に加熱し、その結果、外的界面活性剤の少なくとも一部及び電解質の少なくとも一部が、耐湿性ポリウレタン品の内部に分散された水不溶性の化合物を形成するようにすること
を含む、耐湿性ポリウレタン品の形成方法である。
【0012】
本発明の第3の態様は、本発明の第1の態様の凝固したポリウレタン粒子から構成されるポリウレタン品である。
【0013】
本発明の第4の態様は、本発明の第2の態様の方法によって作製されるポリウレタン品である。
【0014】
本発明のポリウレタン分散物は、ポリウレタンを典型的には利用している様々な用途に有用である。本発明のポリウレタン分散物、方法及びポリウレタン品は、織物及び非織物の床材システムのためのクッション用の下敷き又は裏張りのための被覆、積層体、含浸織物、合成皮革、柔軟なフォームなどとしての使用に特に好適である。
【0015】
本発明は、剪断及び貯蔵に安定した熱凝固性ポリウレタン分散物である。安定したとは、2週間以上経った後でも元のままの状態にある分散物が凝固しておらず、また、粒子サイズ又は粘度において実質的に変化しておらず、一方で、新しく作製された後と実質的に同じ凝固温度で依然として凝固することを意味する。粒子サイズは一般には、体積基準での平均粒子直径が約100パーセントを超えて増大するとき、実質的に変化する。同様に、粘度の実質的な変化は一般には、粘度が所与の剪断条件のもとで約50パーセントを超えて増大するときである。実質的に同じ凝固温度は一般には、凝固温度が2週間の貯蔵の後で最初の凝固温度の少なくとも5℃以内であるときである。
【0016】
好ましくは、ポリウレタン分散物は、新しく作製されたときの平均粒子サイズと比較して、2週間の貯蔵の後での体積平均基準で最大でも約90パーセント大きい平均粒子サイズを有する。粒子サイズは、例えば、動的光散乱技術によって求めることができる。より好ましくは、平均粒子サイズは、新しく作製されたときの平均粒子サイズよりも、最大でも約80パーセント大きく、最も好ましくは最大でも約50パーセント大きい。同様に、粘度は、新しく作製されたときの粘度よりも、好ましくは最大でも約40パーセント大きく、より好ましくは最大でも約35パーセント大きく、最も好ましくは最大でも約30パーセント大きい。最も好ましい実施形態において、粘度は2週間以上の貯蔵の後で最初の粘度の10パーセント以内である。
【0017】
2週間以上の貯蔵の後での凝固温度は、新しく作製されたときの凝固温度の好ましくは約4℃以内であり、より好ましくは3℃以内であり、最も好ましくは約2℃以内である。最も好ましい実施形態において、凝固温度は、2週間以上の貯蔵の後で、新しく作製されたポリウレタン分散物の約1℃以内である。
【0018】
ポリウレタン分散物は非イオン性ポリウレタンのポリウレタン粒子から構成される。非イオン性ポリウレタンは、親水性のイオン性基を含有しないポリウレタンである。親水性のイオン性基は、水において容易にイオン化する基であり、例えば、ジメチロールプロピオン酸(DMPA)などである。他のイオン性基の例には、アニオン性基(例えば、カルボン酸、スルホン酸、及び、それらのアルカリ金属塩など)が含まれる。カチオン性基の例には、第三級アミンと、強い鉱酸(例えば、リン酸、硫酸、ハロゲン化水素酸など)又は強い有機酸との反応によるか、あるいは、好適な四級化剤(例えば、C1〜C6アルキルハリド又はベンジルハリド(例えば、Br又はCl)など)との反応によるアンモニウム塩が含まれる。
【0019】
非イオン性ポリウレタンは、エチレンオキシドユニットを、外的界面活性剤の非存在下で安定した水性ポリウレタン分散物を与えるのに不十分である量で有する。エチレンオキシドユニットの不十分な量とは、何らかの外的界面活性剤を有しないポリウレタン分散物が、まず最初に作製され得ないか、又は、以前に定義されたように安定でない(室温で2週間貯蔵された後で凝固するか、あるいは、その平均粒子サイズ又は粘度を実質的に変化させる)かのいずれかを意味する。
【0020】
しかしながら、非イオン性ポリオウレタンは、本発明の安定した熱凝固性ポリウレタン分散物を作製するために、ある程度のエチレンオキシドユニットを含有しなければならない。一般に、非イオン性ポリウレタンにおけるエチレンオキシドユニットの量は非イオン性ポリウレタンの少なくとも0.1重量パーセント〜最大でも20重量パーセントである。好ましくは、エチレンオキシドユニットの量は、非イオン性ポリウレタンの少なくとも約0.5重量パーセント(より好ましくは少なくとも約0.75重量パーセント、さらに一層より好ましくは少なくとも約1重量パーセント、最も好ましくは約1.5重量パーセント)から、好ましくは最大でも約15重量パーセント(より好ましくは最大でも約10重量パーセント、さらに一層より好ましくは最大でも約9重量パーセント、最も好ましくは最大でも約8重量パーセント)までである。
【0021】
本明細書中におけるエチレンオキシドユニットは、下記の式によって示されるようにエチレンオキシドから形成される基を意味する。
−CH−CH−O−
【0022】
ポリウレタン内のエチレンオキシドユニットは少なくとも部分的には、分子量が400〜1500であるモノヒドロキシルポリエチレンオキシド、分子量が800〜3000であるポリエチレンオキシドジオール、又は、その組合せに由来する。例示的には、ポリウレタンのエチレンオキシドの少なくとも約10重量パーセントが上記ヒドロキシルポリエチレンオキシドの1つ又は複数であることが好ましい。ポリウレタンにおけるエチレンオキシドのより好ましくは少なくとも約25重量パーセント、さらに一層より好ましくは少なくとも約35重量パーセント、最も好ましくは少なくとも約50重量パーセントが上記ポリエチレンオキシドである。そのようなポリエチレンオキシドは周知であり、The Dow Chemical CompanyからCARBOWAXの商品名で入手可能である(The Dow Chemical Companyの商標)。
【0023】
ポリウレタンに存在する上記ポリエチレンオキシド化合物の量は一般にはポリウレタンの約6重量パーセント未満であり、そうでない場合には、分散物は、安定になりすぎ、熱凝固することが困難になり得るか、又は、親水性になりすぎて、例えば、薄膜特性(例えば、耐水性(膨潤性)など)に悪影響を及ぼし得る。好ましくは、これらの化合物の量は分散物のポリウレタン粒子の最大でも約5.5重量パーセントであり、より好ましくは最大でも約5重量パーセントであり、最も好ましくは最大でも約4.5重量パーセントである。
【0024】
ポリウレタン分散物は外的界面活性剤を含有する。外的界面活性剤は、カチオン性、アニオン性又は非イオン性であり得る。界面活性剤の好適な種類(class)には、エトキシル化フェノールの硫酸塩、例えば、ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)α−スルホ−ω(ノニルフェノキシ)アンモニウム塩など;アルカリ金属の脂肪酸塩、例えば、アルカリ金属のオレイン酸塩及びステアリン酸塩など;ポリオキシアルキレン非イオン性界面活性剤、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド、及び、その共重合体など;アルコールアルコキシラート;エトキシル化脂肪酸エステル及びアルキルフェノールエトキシラート;アルカリ金属のラウリル硫酸塩;アミンのラウリル硫酸塩、例えば、トリエタノールアミンのラウリル硫酸塩など;第四級アンモニウム界面活性剤;アルカリ金属のアルキルベンゼンスルホン酸塩、例えば、分枝状及び直鎖のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなど;アミンのアルキルベンゼンスルホン酸塩、例えば、トリエタノールアミンのドデシルベンゼンスルホン酸塩など;アニオン性及び非イオン性のフルオロカーボン界面活性剤、例えば、フッ素化アルキルエステル及びアルカリ金属のペルフルオロアルキルスルホン酸塩など;有機ケイ素界面活性剤、例えば、変性ポリジメチルシロキサン;及び、変性樹脂のアルカリ金属石けんが含まれるが、これらに限定されない。
【0025】
好ましくは、外的界面活性剤はイオン性である。より好ましくは、外的界面活性剤はアニオン性である。好ましい実施形態において、界面活性剤は、水不溶性の化合物(例えば、有機酸の不溶性の多価カチオン水不溶性塩など)が、例えば、凝固したポリウレタン分散物を乾燥したときに形成されるように、ポリウレタン分散物に存在する電解質の1つ又は複数に存在する多価カチオンと反応することができるイオン性界面活性剤である。例示的な好ましい界面活性剤には、二ナトリウムオクタデシルスルホスクシンイマート(disodium octadecy sulfosuccinimate)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム及びステアリン酸アンモニウムが含まれる。
【0026】
ポリウレタン分散物は電解質を含有する。電解質は、水に溶解することができ、かつ、非イオン性の水性ポリウレタン分散物を上記で記載されたように熱凝固させる一価又は多価の中性塩であり得る。好ましくは、そのような凝固剤は、外的界面活性剤と少なくとも一部が反応して、水不溶性の化合物(例えば、有機酸の水不溶性塩など)を、例えば、凝固温度又は第2のより高い温度において形成する中性塩である。
【0027】
望ましくは、不溶性塩は、例えば、界面活性剤の一価カチオンを置換し、従って、有機酸の多価カチオン水不溶性塩をもたらす、電解質の多価カチオンの反応から生じる。中性塩の例には、塩化ナトリウム、塩化銀、臭化銀、クロム酸銀、フッ化バリウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硝酸銀、硫酸銅、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム及び硝酸バリウムが含まれる。好ましくは、凝固剤はアルカリ土類の塩である。より好ましくは、凝固剤はアルカリ土類の硝酸塩である。最も好ましくは、凝固剤はカルシウム塩であり、例えば、硝酸カルシウムなどである。
【0028】
外的界面活性剤及び電解質の量は任意の好適な量であり得る。一般に、外的界面活性剤の量はポリウレタン分散物の総重量の0.1重量パーセント〜10重量パーセントである。好ましくは、外的界面活性剤の量は、ポリウレタン分散物の総重量の少なくとも約0.5重量パーセント(より好ましくは少なくとも約1重量パーセント、最も好ましくは少なくとも約1.5重量パーセント)から、好ましくは最大でも約8重量パーセント(より好ましくは最大でも約7重量パーセント、最も好ましくは最大でも約6重量パーセント)までである。
【0029】
電解質の量は、ポリウレタン分散物が上記で記載されたように依然として安定であり、かつ、熱凝固可能であるような、任意の好適な量であり得る。一般に、界面活性剤の量に対するモル比率によって与えられる電解質の量は約0.01〜10であり、選ばれる量は、所望される用途及び凝固温度に依存する。好ましくは、電解質対界面活性剤の比率は少なくとも約0.1であり、より好ましくは少なくとも約0.25であり、最も好ましくは少なくとも約0.5である。
【0030】
好ましい実施形態において、安定した熱凝固性ポリウレタン分散物は、分散物が実質的に有機溶媒を含まないものである。実質的に有機溶媒を含まないとは、分散物が、プレポリマー又は分散物を作製するために、有機溶媒の何らかの意図的な添加を伴うことなく作製されたことを意味する。すなわち、若干量の溶媒が、意図的でない供給源(例えば、反応装置を洗浄することからの混入など)に起因して存在し得る。一般に、水性分散物は分散物の総重量の最大でも約1重量パーセントを有する。好ましくは、水性分散物は最大でも100万部あたり約2000部(重量比)(2000ppm)の溶媒を有し、より好ましくは最大でも約1000ppmの溶媒を有し、さらに一層より好ましくは最大でも約500ppmの溶媒を有し、最も好ましくは最大でも微量の溶媒を有する。好ましい実施形態において、有機溶媒は全く使用されず、水性分散物は何らかの検出可能な有機溶媒が存在しない(すなわち、有機溶媒を「本質的に含まない」)。
【0031】
安定した熱凝固性ポリウレタン分散物は、分散物の大部分がポリウレタン分散物であり、かつ、安定性及び凝固が悪影響を受けない限り、別のポリマー分散物又はエマルションと混合することができる。ポリウレタン分散物と混合されるとき、有用であり得る別のポリマー分散物又はエマルションには、様々なポリマーが含まれ、例えば、ポリアクリラート、ポリイソプレン、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ニトリルゴム、天然ゴム、及び、スチレンとブタジエンとの共重合体などが含まれる。最も好ましくは、ポリウレタン分散物は、非イオン性ポリウレタンのポリウレタン粒子のみであるポリマー粒子から構成される。
【0032】
安定した熱凝固性ポリウレタン分散物は、用途に依存して、他の好適な成分(例えば、当分野で既知の成分など)を有することができる。例えば、ポリウレタン分散物は様々な添加剤(例えば、レオロジー改変剤、消泡剤、酸化防止剤、顔料、水不溶性フィラー、色素、架橋剤、及び、それらの組合せなど)を有することができる。
【0033】
安定した熱凝固性ポリウレタン分散物はポリウレタン粒子の任意の好適な固体負荷量を有することができ、固体負荷量は典型的には具体的な用途に依存する。一般に、ポリウレタン粒子の固体負荷量は分散物総重量の1重量パーセント〜70重量パーセントの間である。好ましくは、固体負荷量は、少なくとも2重量パーセント(より好ましくは少なくとも4重量パーセント、最も好ましくは少なくとも6重量パーセント)から、好ましくは最大でも65重量パーセント(より好ましくは最大でも60重量パーセント、最も好ましくは最大でも55重量パーセント)までである。
【0034】
一般に、安定した熱凝固性ポリウレタン分散物は、ポリウレタン粒子の固体負荷量、及び、存在し得る何らかの他の添加剤に依存して、広範囲にわたって変化する粘度を有することができる。望ましくは、ポリウレタン分散物は容易にポンプ移送され、一方で、ポリウレタン分散物は依然として、ポリウレタン品を形成するために注入成形することができ、かつ、その形状を保持することができる。一般に、粘度は、20回転/分(rpm)で回転させられる#6スピンドルを用いるBrookfield Model RVDVE 115粘度計を使用して測定されたとき、少なくとも約10センチポアーズ(cp)から、最大でも約40,000cpまでである。好ましくは、粘度は少なくとも50cpから、最大でも30000cpまでである。より好ましくは、粘度は少なくとも100cpから、最大でも25000cpまでである。分散物は望ましくは、特定の用途(例えば、カーペット裏材など)のために使用されるとき、非ニュートン偽塑性挙動を示すことがある。このレオロジーは、例えば、フィラーのフォールアウト(fall−out)を阻止し、被覆の設置及び被覆重量の制御を助ける。
【0035】
ポリウレタン粒子の体積比の平均粒子サイズは一般に、直径が最大でも約10マイクロメートルから、少なくとも約0.01マイクロメートルまでである。好ましくは、平均粒子サイズは最大でも約5マイクロメートル(より好ましくは最大でも約2マイクロメートル、最も好ましくは最大でも約1マイクロメートル)から、好ましくは少なくとも約0.03マイクロメートル(より好ましくは少なくとも約0.05マイクロメートル、最も好ましくは少なくとも約0.1マイクロメートル)までである。
【0036】
一般に、安定した熱凝固性ポリウレタン分散物の凝固温度は室温よりも少なくとも約5℃高く、しかし、水の沸点よりも低い。好ましくは、分散物の凝固温度は、少なくとも約30℃(より好ましくは少なくとも約35℃であり、最も好ましくは少なくとも約40℃)から、好ましくは最大でも約80℃(より好ましくは最大でも約65℃、最も好ましくは最大でも約60℃)までである。
【0037】
一般に、非イオン性ポリウレタンは、反応物の少なくとも1つが、上記に記載されたエチレンオキシドユニットを含有する限り、ポリウレタン/ウレア/チオウレアのプレポリマーを水性媒体において安定化量の外的界面活性剤の存在下で鎖伸張剤と反応させることによって調製される。ポリウレタン/ウレア/チオウレアのプレポリマーは任意の好適な方法(例えば、当分野で周知の方法など)によって調製することができる。プレポリマーは、少なくとも2つの活性な水素原子を有する高分子量の有機化合物を、充分なポリイソシアネートと、また、米国特許第5,959,027号(これは参考として本明細書中に組み込まれる)に記載されるように、プレポリマーがイソシナートを末端に有することを確実にするためのそのような条件のもとで接触させることによって都合よく調製される。
【0038】
ポリイソシアネートは好ましくは有機ジイソシアナートであり、芳香族、脂肪族又は脂環族、あるいは、その組合せであり得る。プレポリマーを調製するために好適なジイソシアナートの代表的な例には、米国特許第3,294,724号の第1欄55行〜72行及び第2欄1行〜9行(これは参考として本明細書中に組み込まれる)、ならびに、米国特許第3,410,817号の第2欄62行〜72行及び第3欄1行〜24行(これもまた参考として本明細書中に組み込まれる)に開示されるジイソシアナートが含まれる。好ましいジイソシアナートには、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、2,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、イソホロンジイソシアナート、p−フェニレンジイソシアナート、2,6−トルエンジイソシアナート、ポリフェニルポリメチレンポリイソシアナート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアナート、1,5−ナフタレンジイソシアナート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニルジイソシアナート、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、2,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン及び2,4−トルエンジイソシアナート、又は、それらの組合せが含まれる。より好ましいジイソシアナートは、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、2,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン及び2,4’−ジイソシアナトジフェニルメタンである。最も好ましいものが4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン及び2,4’−ジイソシアナトジフェニルメタンである。
【0039】
本明細書中で使用される用語「活性水素基」は、下記の一般的な反応によって例示されるように、イソシアナート基と反応して、ウレア基、チオウレア基又はウレタン基を形成する基を示す:
【化1】

(式中、Xは、O、S、NH又はNであり、かつ、R及びR’は、脂肪族、芳香族又は脂環族、あるいは、それらの組合せであり得る結合基である)。少なくとも2つの活性水素原子を有する高分子量の有機化合物は500ダルトン以上の分子量を有する。
【0040】
少なくとも2つの活性水素原子を有する高分子量の有機化合物は、ポリオール、ポリアミン、ポリチオール、又は、アミン、チオール及びエーテルの組合せを含有する化合物であり得る。所望される性質に依存して、ポリオール化合物、ポリアミン化合物又はポリチオール化合物は主に、より大きな活性水素官能性を有するジオール、トリオール又はポリオール、あるいは、それらの混合物であり得る。このような混合物は、例えば、ポリオール混合物における少量のモノール(monol)のために、わずかに2未満である全体的な活性水素官能性を有し得ることもまた理解される。
【0041】
好ましくは、少なくとも2つの活性水素原子を有する高分子量の有機化合物は、下記の一般式を有するポリアルキレングリコールエーテル又はポリアルキレングリコールチオエーテルあるいはポリエステルポリオール又はポリエステルポリチオールである:
【化2】

(式中、各Rは独立してアルキレン基であり、R’はアルキレン基又はアリーレン基である;Xは独立してS又はOであり、好ましくはOである;nは正の整数である;かつ、n’は負でない整数である)。
【0042】
一般に、少なくとも2つの活性水素原子を有する高分子量の有機化合物は、重量平均分子量が少なくとも約500ダルトンであり、好ましくは少なくとも約750ダルトンであり、より好ましくは少なくとも約1000ダルトンである。好ましくは、重量平均分子量は最大でも約20,000ダルトンであり、より好ましくは最大でも約10,000ダルトンであり、より好ましくは最大でも約5000ダルトンであり、最も好ましくは最大でも約3000ダルトンである。
【0043】
ポリアルキレンエーテルグリコール及びポリエステルポリオールが好ましい。ポリアルキレンエーテルグリコールの代表的な例には、ポリエチレンエーテルグリコール、ポリ−1,2−プロピレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリ−1,2−ジメチルエチレンエーテルグリコール、ポリ−1,2−ブチレンエーテルグリコール及びポリデカメチレンエーテルグリコールがある。好ましいポリエステルポリオールには、ポリブチレンアジパート、カプロラクトン系ポリエステルポリオール、及び、ポリエチレンテレフタラートが含まれる。
【0044】
NCO:XHの比率は、例えば、OH末端化プレポリマーのもたらす比率を含めて、ポリウレタン分散物を形成するために任意の好適な比率であり得る。好ましくは、NCO:XHの比率は1.1:1以上であり、より好ましくは1.2:1以上であり、かつ、好ましくは5:1以下である。
【0045】
ポリウレタンプレポリマーは回分プロセス又は連続プロセス(a batch or a continuous process)によって調製することができる。有用な方法には、様々な方法(例えば、当分野で既知の方法など)が含まれる。例えば、化学量論的過剰なジイソシアナートと、ポリオールとを、これらの試薬の制御された反応のために好適な温度で、典型的には40℃〜100℃で、静的ミキサー又は能動的ミキサーに別々の流れで導入することができる。触媒を、これらの試薬の反応を促進させるために使用することができる(例えば、有機スズ触媒(例えば、オクタン酸第一スズ)など)。反応は一般には、プレポリマーを形成させるための混合タンクにおいて実質的に完了するまで行われる。
【0046】
外的な安定化界面活性剤は、カチオン性、アニオン性又は非イオン性であり得る。界面活性剤の好適なクラスには、エトキシル化フェノールの硫酸塩、例えば、ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)α−スルホ−ω(ノニルフェノキシ)アンモニウム塩など;アルカリ金属の脂肪酸塩、例えば、アルカリ金属のオレイン酸塩及びステアリン酸塩など;ポリオキシアルキレン非イオン性界面活性剤、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド、及び、その共重合体など;アルコールアルコキシラート;エトキシル化脂肪酸エステル及びアルキルフェノールエトキシラート;アルカリ金属のラウリル硫酸塩;アミンのラウリル硫酸塩、例えば、トリエタノールアミンのラウリル硫酸塩など;第四級アンモニウム界面活性剤;アルカリ金属のアルキルベンゼンスルホン酸塩、例えば、分枝状及び直鎖のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなど;アミンのアルキルベンゼンスルホン酸塩、例えば、トリエタノールアミンのドデシルベンゼンスルホン酸塩など;アニオン性及び非イオン性のフルオロカーボン界面活性剤、例えば、フッ素化アルキルエステル及びアルカリ金属のペルフルオロアルキルスルホン酸塩など;有機ケイ素界面活性剤、例えば、変性ポリジメチルシロキサン;及び、変性樹脂のアルカリ金属石けんが含まれるが、これらに限定されない。
【0047】
ポリウレタン分散物は、任意の好適な方法によって、例えば、当分野で周知の方法などによって調製することができる(例えば、米国特許第5,539,021号の第1欄9行〜45行を参照のこと。その教示は参考として本明細書中に組み込まれる)。
【0048】
ポリウレタン分散物を作製するとき、プレポリマーを水だけによって伸張させることができ、又は、鎖伸張剤(例えば、当分野で既知の鎖伸張剤など)を使用して伸張させることができる。使用されるとき、鎖伸張剤は、任意のイソシアナート反応性ジアミン、又は、別のイソシアナート反応性基及び60〜450の分子量を有する任意のアミンであり得るが、好ましくは、アミン化ポリエーテルジオール、ピペラジン、アミノエチルエタノールアミン、エタノールアミン、エチレンジアミン及びヒドラジン、そのジエチルトリエマイン(diethyl triemaine)混合物からなる群から選択される。好ましくは、アミン系の鎖伸張剤が、分散物を作製するために使用される水に溶解される。
【0049】
ポリウレタン分散物を作製することにおいて、電解質をプロセス期間中の任意の好適なときに加えることができる。好ましくは、電解質は、ポリウレタン分散物が形成された後で添加される。電解質は最初に水に溶解され、続いて、分散物に添加され得るか、又は、ポリウレタン分散物を撹拌しながら直接に添加され得る。
【0050】
分散物が形成されると、ポリウレタン目的物をその分散物から作製することができる。ポリウレタン目的物は、目的物をポリウレタン分散物から作製するための任意の知られている方法によって作製することができる。例えば、分散物を基体に被覆し、そして、分散物が凝固し、その後、凝固物が第2の温度でさらに乾燥され得るように温度を上げることができる。加えて、他の形状物及び形態物を同様な様式(例えば、繊維を延伸すること)で作製することができる。
【0051】
好ましい実施形態において、分散物は、形状体又は被覆などを形成するために凝固温度で凝固させられ、続いて、より高い第2の温度に上げられる。より高い第2の温度は乾燥を助け、また、外的界面活性剤及び電解質からの水不溶性化合物の形成を助けることができる。
【0052】
この好ましい実施形態において、得られるポリウレタン品はポリウレタン及び水不溶性化合物から構成される。例示的及び好適には、水不溶性化合物は、例えば、電解質における多価金属カチオンと、上記に記載された水溶性の一価カチオン有機酸界面活性剤との反応から生じる、有機酸の多価カチオンの実質的に水不溶性の塩(例えば、スルホン酸塩、硫酸塩及びカルボン酸)である。
【0053】
多価カチオンの水不溶性塩の例には、酪酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、ステアリン酸、リノレン酸、ガムロジン、ウッドロジン、タル油ロジン、アビエチン酸、カルボン酸基を含有する酸化されたポリエチレン、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、不飽和カルボン酸によりグラフト化されたポリオレフィン、無水物によりグラフト化されたポリオレフィン、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸及びアルキルベンゼンスルホン酸からなる群から選択される有機酸の多価カチオン塩が含まれる。
【0054】
他の例には、アルカリ金属のラウリル硫酸塩、アミンのラウリル硫酸塩(例えば、トリエタノールアミンのラウリル硫酸塩など)、第四級アンモニウム界面活性剤、アルカリ金属のアルキルベンゼンスルホン酸塩(例えば、分枝状又は直鎖のアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムなど)、アミンのアルキルベンゼンスルホン酸塩(例えば、トリエタノールアミンのドデシルベンゼンスルホン酸塩など)、アニオン性及び非イオン性のフルオロカーボン界面活性剤(例えば、フッ素化アルキルエステル及びアルカリ金属のペルフルオロアルキルスルホン酸塩など)、有機ケイ素界面活性剤(例えば、変性ポリジメチルシロキサンなど)、ならびに、変性樹脂のアルカリ金属石けんと反応した多価カチオンが含まれる。好ましくは、多価カチオンの水不溶性塩は、カチオンが、二ナトリウムオクタデシルスルホスクシンイマート(disodium octadecy sulfosuccinimate)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム及びステアリン酸アンモニウムと反応しているアルカリ土類である塩である。
【0055】
多価カチオンは好ましくはアルカリ土類のカチオンである。より好ましくは、多価カチオンは、Ca、Mg又はSr、あるいは、Alである。最も好ましくは、多価カチオンはCaである。
【0056】
ポリウレタン品に残留する多価カチオンの量は広範囲にわたって変化することがあり、しかし、典型的には、ポリウレタンの10ppm〜20,000ppm(重量比)である。用いられる量は、例えば、使用された界面活性剤のモル当量数、及び、分散物を凝固させるために所望される温度のために変化し得る。好ましくは、ポリウレタンにおける多価カチオンの量は、重量比でポリウレタンの少なくとも20ppm(より好ましくは少なくとも50ppm、最も好ましくは少なくとも100ppm)から、好ましくは最大でも10,000ppm(より好ましくは最大でも5000ppm、最も好ましくは最大でも2500ppm)までである。多価カチオンの量は、知られている方法(例えば、中性子活性化分析など)によって測定することができる。
【0057】
驚くべきことに、分散物が外的界面活性剤を有するとしても、ポリウレタン品(例えば、被覆、合成皮革又はカーペット裏材)は良好な耐水性を有する。これは、水不溶性化合物をポリウレタン品において外的界面活性剤から形成する能力、ポリウレタン自体に存在するエチレンオキシドユニットの低い濃度、及び、親水性のイオン性基がポリウレタン内に存在しないことのためであると考えられる。これらの性質は、例えば、ポリウレタンを任意の好適な方法(例えば、当分野で既知の方法など、例えば、アミノシラン、エポキシシラン、アジリジド架橋剤又はカルボジイミド架橋剤を用いる架橋化技術など)によってさらに改善することができる。
【0058】
凝固温度は、上記に記載されたように任意の温度であり得る。凝固した分散物を乾燥するために使用される第2の温度は、用途に依存して任意の好適な温度であり得る。好ましくは、第2の温度は凝固温度よりも高い。好ましくは、第2の温度は凝固温度よりも少なくとも10℃高い。より好ましくは、乾燥温度は水の沸点よりも高く、しかし、ポリウレタンが分解するほど高くはない。
【実施例】
【0059】
下記の実施例及び比較例のそれぞれでは、別途言及されない限り、下記のプレポリマーが使用される。約447重量部(pbw)のVORANOL 222−056(合計で12.5重量パーセントのエチレンオキシドの末端キャッピングを有する、分子量(「MW」)が2000のポリオキシプロピレンジオール、The Dow Chemical Company(Midland、MI)から入手可能)、約16pbwのCARBOWAX 1000(950〜1050のMW範囲を有するポリエチレンオキシドグリコール、The Dow Chemical Companyから入手可能)及び約16pbwのメトキシポリエチレングリコール(約950の分子量を有するポリエーテルモノール)をフラスコに入れ、フラスコを、70℃で保たれたオーブンに30分間入れる。この混合物に、約289pbwのISONATE 125M(約97パーセントの4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート及び約3パーセントの2,4’−ジフェニルメタンジイソシアナートを有するジフェニルメタンジイソシアナート、The Dow Chemical Companyから入手可能)を加える。混合物を30分間激しく撹拌し、その後、オーブンに70℃で約12時間入れる。得られたプレポリマーのNCO含有量は約6.9重量パーセントである。(The Dow Chemical Companyの商標)。
【0060】
実施例:1〜3
ポリウレタン分散物を、(1)アミノエチルエタノールアミン(AEEA)がピペラジン系の鎖伸張剤の代わりに使用され、使用されたAEEAの量が、プレポリマーのNCO含有量の30パーセントと等価な量であること、及び、(2)ポリウレタンの重量比で100部あたり3重量部のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム界面活性剤がトリエタノールアミンドデシルベンゼンスルホン酸塩の代わりに使用されたことを除いて、米国特許第6,087,440号に記載される実施例と同じ手順を使用して、上記のプレポリマーを使用して作製する。分散物を撹拌しながら、一定量の硝酸カルシウムを、表1に示されるような界面活性剤1モルあたりの硝酸カルシウムのモル量で加えた。
【0061】
動的光散乱を使用する体積平均粒子サイズ及び数平均粒子サイズ、ならびに、凝固温度を、それぞれの分散物が作製された同じ日、及び、18日後に測定した。これらの結果を表1に示し、また、慣例により、「a」実施例は、新たに作製された分散物の結果を示し、「b」実施例は、同じ分散物を18日間にわたって時効処理した後の結果を示す。凝固温度は、分散物の粘度を測定しながら、分散物を80℃にゆっくり加熱することによって求めた。凝固温度は粘度の急激な上昇によって与えられた。
【0062】
比較例1:
分散物を、硝酸カルシウムが分散物に加えられなかったことを除いて、実施例1〜3について記載されるのと同じ方法で作製した。動的光散乱を使用する体積平均粒子サイズ及び数平均粒子サイズ、ならびに、凝固温度を、それぞれの分散物が作製された同じ日、及び、18日後に測定した。この分散物の場合、凝固温度は、分散物を80℃に加熱した後でさえ見出されなかった。
【0063】
比較例2:
ポリウレタンプレポリマーを、52.3wtパーセントのVORANOL 222−056、14.7wtパーセントのポリプロピレングリコールP425(MWが425のポリプロピレンオキシド型ジオール、The Dow Chemical Companyから入手可能)及び33wtパーセントのISONATE 125M(MDI)を混合することによって調製した。1滴のベンゾイルクロリドを、混合物を80℃に加熱する前に加えた。混合物を低いrpmにおいて80℃で4時間混合した。得られたプレポリマーは5.9wtパーセントのNCOを有し、34,000cpsの粘度を有していた。(The Dow Chemical Companyの商標)。
【0064】
その後、このプレポリマーを実施例1〜3と同じ方法で分散させた。ポリウレタン分散物は固形物含有量が約50wtパーセントであった。硝酸カルシウムを添加したとき、分散物は凝固した。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外的界面活性剤(an external surfactant)と、電解質と、ポリウレタン粒子とをその中に有する水を含み、ポリウレタン粒子が、エチレンオキシドユニットを、安定した水性ポリウレタン分散物を外的界面活性剤の非存在下で与えるのに不十分である量で有する非イオン性ポリウレタンから構成され、エチレンオキシドユニットの少なくとも一部分が、分子量が400〜1500であるモノヒドロキシルポリエチレンオキシド、分子量が800〜3000であるポリエチレンオキシドジオール、又は、その組合せからなる、安定した熱凝固性ポリウレタン分散物。
【請求項2】
非イオン性ポリウレタン内のエチレンオキシドユニットの量が非イオン性ポリウレタンの少なくとも0.1重量パーセント〜最大でも20重量パーセントである、請求項1に記載のポリウレタン分散物。
【請求項3】
エチレンオキシドユニットの量が少なくとも約0.5パーセントである、請求項2に記載のポリウレタン分散物。
【請求項4】
エチレンオキシドユニットの量が少なくとも約1パーセントである、請求項3に記載のポリウレタン分散物。
【請求項5】
エチレンオキシドユニットの量が最大でも約15パーセントである、請求項2に記載のポリウレタン分散物。
【請求項6】
エチレンオキシドユニットの量が最大でも約10パーセントである、請求項5に記載のポリウレタン分散物。
【請求項7】
有機溶媒を実質的に含まない、請求項1に記載のポリウレタン分散物。
【請求項8】
最大でも2000ppm(重量比)の有機溶媒を有する、請求項7に記載のポリウレタン分散物。
【請求項9】
電解質が多価カチオンの中性塩である、請求項1に記載のポリウレタン分散物。
【請求項10】
電解質がアルカリ土類カチオンの塩である、請求項9に記載のポリウレタン分散物。
【請求項11】
アルカリ土類カチオンの塩が、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硝酸ストロンチウム及び硝酸バリウム、又は、その混合物である、請求項10に記載のポリウレタン分散物。
【請求項12】
ポリウレタンが0.01〜10の電解質対界面活性剤のモル比率を有する、請求項1に記載のポリウレタン分散物。
【請求項13】
前記比率が少なくとも約0.25である、請求項12に記載のポリウレタン分散物。
【請求項14】
前記比率が少なくとも約0.5である、請求項13に記載のポリウレタン分散物。
【請求項15】
外的界面活性剤がイオン性界面活性剤である、請求項9に記載のポリウレタン分散物。
【請求項16】
イオン性界面活性剤がアニオン性界面活性剤である、請求項15に記載のポリウレタン分散物。
【請求項17】
アニオン性界面活性剤が一価の金属カチオンを有する、請求項16に記載のポリウレタン分散物。
【請求項18】
一価の金属カチオンが、Na、K、Li、又は、その組合せである、請求項17に記載のポリウレタン分散物。
【請求項19】
分子量が400〜1500であるモノヒドロキシルポリエチレンオキシド、分子量が800〜3000である非イオン性ポリエチレンオキシドジオール、又は、その組合せからなるエチレンオキシドユニットの一部分が、ポリウレタン粒子に存在するエチレンオキシドユニットの総量の少なくとも10重量パーセントである、請求項1に記載のポリウレタン分散物。
【請求項20】
前記一部分が少なくとも約25パーセントである、請求項19に記載のポリウレタン分散物。
【請求項21】
(i)外的界面活性剤と、電解質と、非イオン性ポリウレタンから構成されるポリウレタン粒子とをその中に有する水から構成されるポリウレタン分散物を、凝固したポリウレタン品を形成するために充分な時間にわたって凝固温度に加熱すること、及び
(ii)凝固したポリウレタン品を第2の乾燥温度に加熱し、その結果、外的界面活性剤の少なくとも一部及び電解質の少なくとも一部が、耐湿性ポリウレタン品の内部に分散された水不溶性の化合物を形成するようにすること
を含む、耐湿性ポリウレタン品の形成方法。
【請求項22】
電解質が多価カチオンの中性塩である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
電解質がアルカリ土類カチオンの塩である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
アルカリ土類カチオンの塩が、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硝酸ストロンチウム及び硝酸バリウム、又は、その混合物である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
外的界面活性剤がイオン性界面活性剤である、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
外的界面活性剤がアニオン性界面活性剤である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
アニオン性界面活性剤が一価の金属カチオンを有する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
非イオン性ポリウレタンが、エチレンオキシドユニットを、安定した水性ポリウレタン分散物を外的界面活性剤の非存在下で与えるのに不十分である量で有し、エチレンオキシドユニットの少なくとも一部分が、分子量が400〜1500であるモノヒドロキシルポリエチレンオキシド、分子量が800〜3000である非イオン性ポリエチレンオキシドジオール、又は、その組合せからなる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
分子量が400〜1500であるモノヒドロキシルポリエチレンオキシド、分子量が800〜3000である非イオン性ポリエチレンオキシドジオール、又は、その組合せからなるエチレンオキシドユニットの一部分が、非イオン性ポリウレタンに存在するエチレンオキシドユニットの総量の少なくとも10重量パーセントである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記一部分が少なくとも約25パーセントである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
第2の乾燥温度が凝固温度よりも高い、請求項21に記載の方法。
【請求項32】
第2の乾燥温度が凝固温度よりも少なくとも10℃高い、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
請求項1に記載されるポリウレタン分散物の溶融ポリウレタン粒子から構成されるポリウレタン品。
【請求項34】
請求項21に記載される方法によって形成されるポリウレタン品。

【公表番号】特表2008−522019(P2008−522019A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−544644(P2007−544644)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【国際出願番号】PCT/US2005/044942
【国際公開番号】WO2006/060824
【国際公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】