説明

安定な殺菌防カビ組成物

【課題】有効成分の懸濁状態が長期間安定に保持された工業用、家庭用などとして適した殺菌防カビ組成物を提供すること。
【解決手段】成分(A):イソチアゾロン系化合物の1種以上、成分(B):燐酸塩型アニオン系界面活性剤、及び成分(C):アニオン系多糖類を含有することを特徴とする殺菌防カビ組成物であり、好ましくは、成分(A)を4〜50質量%、成分(B)を0.5〜10質量%、及び成分(C)を0.05〜1質量%含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期安定な殺菌防カビ組成物であって、特に工業用として適した殺菌防カビ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、澱粉糊、にかわ、塗工紙、紙用塗工液、塗料、接着剤、補修剤、合成ゴムラテックス、印刷インキ、有機素材フィルム、プラスチック製品、セメント混和剤などの各種工業製品や、製紙パルプ工場、冷却水循環工程などの種々の工業用水には、それに含まれる有機質を栄養源として有害な微生物が繁殖し、製品の汚損、着色など品質の低下、悪臭の発生が問題となっている。そのため有害微生物の繁殖の防除や殺菌のため、工業製品や工業用水には数多くの種類の防腐剤や殺菌剤が使用されている。工業製品などにおける有害微生物の発生を抑制ないしは防除する薬剤の1つとしてイソチアゾロン系化合物が知られており、このイソチアゾロン系化合物は工業用殺菌剤や防カビ剤として優れた効果を有している。
【0003】
これらイソチアゾロン系化合物は、水中では徐々に分解し安定な状態で長期保存が難しい為、水を含まない有機溶媒に溶解させた状態で保存することもある。溶解に適した有機溶媒として、グリコール系有機溶媒等が用いられているが、該グリコール系有機溶媒で溶液化した製剤は、消防法による危険物の指定を受けており、その取扱いや保存には特別な注意を払う必要があった。そこで、安全かつ簡便に使用できるイソチアゾロン系化合物含有の製剤として、水で希釈され、有機溶媒の濃度が下げられた製剤が求められるようになっていた。また、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンに着目すると水酸化ナトリウムで溶解させた水溶性製剤が広く使われているが、強アルカリであるため、上記製剤と同様にその取扱いや保存には特別な注意を払う必要があった。以上のような理由から、イソチアゾリン系化合物を有効成分とする製剤に於いては、弱酸性もしくは中性の水性懸濁製剤が要求されている。
以下に、イソチアゾロン系殺菌剤の安定化に関する文献を記載する。
【0004】
化合物特許文献1には、安定な水性配合物に関し、キサンタンガムを含有し、実質的に有機溶媒を含有しない1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンの安定な水性分散液が記載されている。
【0005】
特許文献2には、イソチアゾロン系化合物の安定化に関し、臭素酸もしくはヨウ素酸のアルカリ金属塩、及び水を含有し、pHを、3.5〜4.5の範囲内になるように調整した、イソチアゾロン系化合物含有組成物が記載されている。
特許文献3には、工業用殺菌剤に関し、アルカリ性域において優れた抗菌性および抗かび性を発揮し、毒性が低く、さらに長期間安定に保持される工業用殺菌組成物が記載されている。
【0006】
しかし、特許文献1では、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンを単独あるいは主成分とする製剤に限定されており、複数種のイソチアゾリン系化合物が共存した場合は、キサンタンガムによる安定化は不可能であった。特許文献2では、イソチアゾロン系化合物の化学的安定性のみに限定され、製剤安定性に関しては言及しておらず、特許文献3では本発明で使用した界面活性剤に関する記載は無い。さらに、実施例に記載されている界面活性剤は、内分泌攪乱物質の疑いがあり、使用を差し控えざるを得ない。いずれの発明も本発明の課題である結晶性化合物である1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンと液状化合物である2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(MIT)、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(Cl―MIT)等が共存する製剤の安定性を確立するには至っていない。
【0007】
【特許文献1】特表平8−511555号公報
【特許文献2】特開平9−263504号公報
【特許文献3】特開2003−73214号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、有効成分の懸濁状態が長期間安定に保持された工業用、家庭用などとして適した殺菌防カビ組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、有効成分がイソチアゾロン系化合物でそれらが単独あるいは複数種の混合状態で含まれる製剤中に、燐酸塩型アニオン界面活性剤及びアニオン系多糖類を含有させることで、懸濁状態が長期間安定化することを見出した。
【0010】
即ち、本発明は、
(1)成分(A):イソチアゾロン系化合物の1種以上、成分(B):燐酸塩型アニオン系界面活性剤、及び成分(C):アニオン系多糖類を含有することを特徴とする殺菌防カビ組成物、
(2)イソチアゾロン系化合物が、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(H−MIT)、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(Cl−MIT)、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(DCOIT)、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(OIT)、2−メチル−4,5−トリメチレン−4−イソチアゾリン−3−オン(MTI)、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン(BIT)、N−n−ブチル−1,2−ベンツイソチアゾリン−3−オン(Bu−BIT)からなる群から選択される1種類以上であることを特徴とする(1)に記載の殺菌防カビ組成物、
(3)燐酸塩型アニオン系界面活性剤が、ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルホスフェートカリウム塩であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の殺菌防カビ組成物、
(4)アニオン系多糖類がキサンタンガムであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の殺菌防カビ組成物、及び
(5)成分(A)を4〜50質量%、成分(B)を0.5〜10質量%、及び成分(C)を0.05〜1質量%含有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の殺菌防カビ組成物に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の工業用殺菌剤組成物は、分散性、流動性に優れ、しかも、長期間にわたり製剤安定性を保つことが出来る。また、従来安定的に製剤することが難しかった有効成分を組み合わせて製剤することが可能になったため、少量の使用で優れた抗菌性及び防カビ性を期待することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、安定な殺菌防カビ組成物に関する発明であり、殺菌防カビ組成物を構成する成分組成としては、成分(A)イソチアゾロン系化合物の1種以上、成分(B)燐酸塩型アニオン系界面活性剤及び成分(C)アニオン系多糖類を含有することを特徴とする殺菌防カビ組成物である。
本発明において、「殺菌防カビ用組成物」とは、農医薬用を除く、工業用、家庭用などの細菌、カビ、酵母、藻などに対する防除剤を意味する。
【0013】
(イソチアゾロン系化合物)
本発明においては、成分(A)として、イソチアゾロン系化合物を1種以上用いる。
本発明で用いるイソチアゾロン系化合物は、好ましくは、以下の式で表される化合物である。
【0014】
【化1】

【0015】
(式中、Rは水素原子又は炭素数が1〜10のアルキル基を、R〜Rは、夫々独立して、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数が1〜6のアルキル基を示す。)
における「炭素数が1〜10のアルキル基」としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、ノニル基及びデシル基等が挙げられる。
〜Rにおける「ハロゲン原子」は、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子を意味する。
〜Rにおける「炭素数が1〜6のアルキル基」としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。
【0016】
上記式で表される化合物は、1種以上で用いられる。好ましくは、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(H−MIT)、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(Cl―MIT)、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(OIT)、2−メチル−4,5−トリメチレン−4−イソチアゾリン−3−オン(MTI)、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン(BIT)、N−n−ブチル−1,2−ベンツイソチアゾリン−3−オン(Bu−BIT)からなる群から選択される1種類以上である。より好ましくは、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(MIT)、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン(BIT)のいずれか、又は両化合物の混合物が挙げられる。
【0017】
(燐酸塩型アニオン系界面活性剤)
本発明においては、成分(B)として、燐酸塩型アニオン系界面活性剤を用いる。
本発明で用いる燐酸塩型アニオン系界面活性剤としては、例えば、アルキル(C8〜12)ホスフェートの塩、ポリオキシエチレンアルキル(C12〜18)エーテルホスフェートの塩、ポリオキシエチレン(モノまたはジ)アルキル(C8〜12)フェニルエーテルホスフェートの塩、ポリオキシエチレン(モノ、ジまたはトリ)アルキル(C8〜12)フェニルエーテルのポリマーのホスフェートの塩、ポリオキシエチレン(モノ、ジまたはトリ)フェニルフェニルエーテルホスフェートの塩、ポリオキシエチレン(モノ、ジまたはトリ)アリルフェニルエーテルホスフェートの塩、ポリオキシエチレン(モノ、ジまたはトリ)ベンジルフェニルエーテルホスフェートの塩、ポリオキシエチレン(モノ、ジまたはトリ)スチリルフェニルエーテルホスフェートの塩、ポリオキシエチレン(モノ、ジまたはトリ)スチリルフェニルエーテルのポリマーのホスフェートの塩、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーのホスフェートの塩、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールイミンおよび縮合燐酸(例えばトリポリリン酸等)等の燐酸エステルの塩が挙げられる。塩としては、アルカリ金属(リチウム、ナトリウムおよびカリウム等)、アルカリ土類金属(カルシウムおよびマグネシウム等)、アンモニウムおよび各種アミン(例えばアルキルアミン、シクロアルキルアミンおよびアルカノールアミン等)等が挙げられる。
燐酸塩型アニオン系界面活性剤として、好ましくは、ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルホスフェートカリウム塩が挙げられる。
【0018】
(アニオン系多糖類)
本発明においては、成分(C)として、アニオン系多糖類を用いる。
本発明で用いるアニオン系多糖類とは、構成糖としてウロン酸を有する多糖類を示す。ウロン酸としては、グルクロン酸、ガラクツウロン酸及びマンヌロン酸を挙げることができる。これらのウロン酸類を含むアニオン系多糖類としては、ジェランガム、アルギン酸ナトリウム、カラギナン、ペクチン、低メトキシペクチン、ファーセラン、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、キサンタンガム、アラビアガム、トラガント酸等が挙げられる。
好ましくは、生産量が多く入手が容易なキサンタンガムが挙げられる。
【0019】
本発明は、成分(A)〜(C)に水を溶剤として加え製剤する。また、凍結防止機能を付与するためグリコール系溶剤等を併用することもできる。
【0020】
本発明の殺菌防カビ組成物の調製は、公知の調製方法で行えば良い。例えば、成分(A)〜(C)を混合攪拌し調製することができる。この際混合する順は任意である。
本発明の殺菌防カビ組成物においては、成分(A)は、殺菌防カビ組成物の用途に応じ好適な含量を選択することができるが、好ましくは4〜50質量%である。さらに好ましくは25〜45質量%である。
成分(B)及び成分(C)の含量は、殺菌防カビ組成物が良好な懸濁状態を維持するために、それぞれ、成分(B)は、0.1〜15質量%、成分(C)は0.1〜10質量%である。
【0021】
本発明は、本発明の効果を損なわない範囲内において所望により、pH調整剤、燐酸塩型アニオン系界面活性剤以外の界面活性剤、酸化防止剤、光安定剤、濡れ剤(あるいは消泡剤)などの補助剤を添加してもよい。さらに本発明は、その目的および用途によって、他の殺菌剤、防カビ剤などを添加してもよい。
【0022】
上記組成物の好ましいpH範囲としては、3.5〜8.0、より好ましくは、4.0〜7.0が良い。pH調整剤としては例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、アンモニア、アンモニア水、トリエタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロパノールアミン、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、塩酸、クエン酸、酸化マグネシウム、硝酸、硫酸などが挙げられる。
【0023】
また、燐酸塩型アニオン系界面活性剤以外の界面活性剤としては、例えば石鹸類、他のアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両イオン系界面活性剤、高分子界面活性剤など、公知の界面活性剤が挙げられ、好ましくは他のアニオン系界面活性剤が挙げられる。
【0024】
燐酸塩型アニオン系界面活性剤以外の他のアニオン系界面活性剤としては、例えばアルキルベンゼンスルホン酸金属塩、アルキルナフタレンスルホン酸金属塩、ポリカルボン酸型界面活性剤、ジアルキルスルホコハク酸エステル金属塩、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテルサルフェートアンモニウム塩、リグニンスルホン酸金属塩などが挙げられる。また、これらの金属塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩などが挙げられる。好ましくは、たとえば、リグニンスルホン酸ナトリウム塩が挙げられる。
【0025】
また、酸化防止剤としては、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−メチレンビス[4−メチル−6−t−ブチルフェノール]などのフェノール系酸化防止剤、例えばアルキルジフェニルアミン、N,N’−ジ−s−ブチル−p−フェニレンジアミンなどのアミン系酸化防止剤などが挙げられる。
光安定剤としては、例えばビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートなどのヒンダードアミン系光安定剤などが挙げられる。
濡れ剤(あるいは消泡剤)としては、例えば、2,2,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールなどのアセチレン系化合物などが挙げられる。
これらの界面活性剤、酸化防止剤、光安定剤、濡れ剤(あるいは消泡剤)は、組成物100質量%に対して約0.01〜10質量%程度が添加することができる。
【0026】
他の殺菌剤としては、第4級アンモニウム塩系殺菌剤、ビグアナイド系殺菌剤、ピリジニウム系殺菌剤などが挙げられる。
例えば、第4級アンモニウム塩系殺菌剤としては、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド(DDAC)、ジデシルジメチルアンモニウムアジペート(DDAA)等が挙げられ、
ビグアナイド系殺菌剤としては、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)、グルコン酸クロルへキシジン等が挙げられ、
ピリジニウム系殺菌剤としては、セチルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムクロライド等を挙げることができる。
他の防カビ剤としては、ニトロアルコール系化合物、ニトリル系化合物、ジチオール系化合物、フェノール系化合物、フェニルウレア系化合物、カーバメート系化合物、スルファミド系化合物、フタルイミド系化合物、ピリジン系化合物、トリアジン系化合物、グアニジン系化合物、トリアゾール系化合物、チアゾール系化合物およびベンズイミダゾール系化合物などが挙げられる。
例えば、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール(DBNE)、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール(BNPD)、2−ヒドロキシメチル−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール等のニトロアルコール系化合物、
テトラクロロイソフタロニトリル、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル等のニトリル系化合物、
4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オン、4,5−ジブロモ−1,2−ジチオール−3−オン等のジチオール系化合物、
o−フェニル−フェノール、p−クロロメタキシレノール等のフェノール系化合物、
3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレアなどのフェニルウレア系化合物、
3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメート(IPBC)等のカーバメート系化合物、
N−ジメチルアミノスルホニル−N−トリル−ジクロロフルオロメタンスルファミド(Tolylfluanide)、N−ジメチルアミノスルホニル−N−フェニル−ジクロロフルオロメタンスルファミド(Dichlofluanide)などのスルファミド系化合物、
N−1,1,2,2−テトラクロロエチルチオ−テトラヒドロフタルイミド(Captafol)、N−トリクロロメチルチオ−テトラヒドロフタルイミド(Captan)、N−ジクロロフルオロメチルチオフタルイミド(Fluorfolpet)、N−トリクロロメチルチオフタルイミド(Folpet)などのフタルイミド系化合物、
2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジン等のハロピリジン化合物およびジンクピリチオン(ZPT)、ソディウムピリチオン等のピリチオン化合物などのピリジン系化合物、
ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジン等のトリアジン系化合物、
ドデシルグアニジンハイドロクロライド、ドデシルグアニジンハイドロブロマイド、デシルグアニジンハイドロクロライド、1,1’−ヘキサメチレンビス[5−(4−クロロフェニル)ビグアニド]ジハイドロクロライド等のグアニジン系化合物、
α−[2−(4−クロロフェニル)エチル]−α−(1,1−ジメチルエチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノール(テブコナゾール)、1−[[2−(2,4−ジクロロフェニル)−4−n−プロピル−1,3−ジオキソラン−2−イル]メチル]−1H−1,2,4−トリアゾール(プロピコナゾール)、1−[[2−(2,4−ジクロロフェニル)−1,3−ジオキソラン−2−イル]メチル]−1H−1,2,4−トリアゾール(アザコナゾール)、α−(4−クロロフェニル)−α−(1−シクロプロピルエチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノール(シプロコナゾール)などのトリアゾール系化合物、
2−(4−チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾールなどのチアゾール系化合物、
メチル−2−ベンズイミダゾールカーバメート(MBC)、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾール等のベンズイミダゾール系化合物を挙げることができる。
【0027】
これらの殺菌剤、防カビ剤は、その剤型および目的ならびに用途によって単独または2種以上併用し、組成物100質量部%に対して約0.1〜10質量部%程度添加することができる。
【0028】
本発明の殺菌防カビ組成物は、その目的および用途に応じて、例えば液剤(水懸濁剤、および油剤を含む)、ペースト剤、粉剤、粒剤、マイクロカプセルなどの公知の剤型に製剤化して使用することができる。
本発明の殺菌防カビ組成物を使用する際には、例えば滴下法、間欠添加法、塗布法、噴霧法、浸漬法等の公知の方法を使用することができ、使用の対象となる物や目的等により前記の方法を使い分ければよい。
【0029】
本発明の殺菌防カビ組成物は、細菌、カビ、酵母、藻などに対する防除剤として優れた効果を発揮することができる。
例えば、澱粉糊、にかわ、塗工紙、紙用塗工液、塗料、接着剤、補修剤、合成ゴムラテックス、印刷インキ、有機素材フィルム、プラスチック製品、セメント混和剤などの各種工業製品や、製紙パルプ工場、冷却水循環工程などの種々の工業用水などの有害微生物の防除に有効に用いることができる。このほか、家庭においても有害微生物の防除に使用することができる。
【実施例】
【0030】
本発明を以下の実施例に基づいて更に説明する。
【0031】
(実施例1)
水29.25質量部に、ベストサイドSW(登録商標、日本曹達社製 BIT80質量%)25質量部、ベストサイド600(日本曹達社製 H−MIT50質量%)40質量部、サンエキスP252(登録商標、日本製紙ケミカル社製、リグニンスルホン酸ナトリウム)0.5質量部、ニューカルゲンFS3K(ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルホスフェートカリウム塩)5質量部、サーフィノール104(登録商標、エアープロダクツ社製、アセチレン系消泡剤)0.05質量部を混合し、ポリトロンミキサー(9000rpm/分)で20分攪拌した。次にこの溶液を、ダイノーミル(シンマルエンタープライズ社製)を使い、液流量80ml/分、ガラスビーズ粒径φ1.5mm、ビーズ充填率80%で粉砕し、その後、その後、ロードポールG(登録商標、ローディア日華社製、キサンタンガム)を0.2質量部添加し水性製剤を得た。
【0032】
(実施例2)
水29.15質量部に、ベストサイドSW(日本曹達社製 BIT80質量%)25質量部、ベストサイド600(日本曹達社製 H−MIT50質量%)40質量部、サンエキスP252(日本製紙ケミカル社製、リグニンスルホン酸ナトリウム)0.5質量部、ニューカルゲンFS3K(ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルホスフェートカリウム塩)5質量部、サーフィノール104(エアープロダクツ社製、アセチレン系消泡剤)0.05質量部を混合し、ポリトロンミキサー(9000rpm/分)で20分攪拌した。次にこの溶液を、ダイノーミル(シンマルエンタープライズ社製)を使い、液流量80ml/分、ガラスビーズ粒径φ1.5mm、ビーズ充填率80%で粉砕し、その後、その後、ロードポールG(ローディア日華社製、キサンタンガム)を0.3質量部添加し水性製剤を得た。
【0033】
(実施例3)
水29.05質量部に、ベストサイドSW(日本曹達社製 BIT80質量%)25質量部、ベストサイド600(日本曹達社製 H−MIT50質量%)40質量部、サンエキスP252(日本製紙ケミカル社製、リグニンスルホン酸ナトリウム)0.5質量部、ニューカルゲンFS3K(ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルホスフェートカリウム塩)5質量部、サーフィノール104(エアープロダクツ社製、アセチレン系消泡剤)0.05質量部を混合し、ポリトロンミキサー(9000rpm/分)で20分攪拌した。次にこの溶液を、ダイノーミル(シンマルエンタープライズ社製)を使い、液流量80ml/分、ガラスビーズ粒径φ1.5mm、ビーズ充填率80%で粉砕し、その後、その後、ロードポールG(ローディア日華社製、キサンタンガム)を0.4質量部添加し水性製剤を得た。
【0034】
(比較例1)
水29.15質量部に、ベストサイドSW(日本曹達社製 BIT80質量%)25質量部、ベストサイド600(日本曹達社製 H−MIT50質量%)40質量部、サンエキスP252(日本製紙ケミカル社製、リグニンスルホン酸ナトリウム)0.5質量部、ペネロールSP24(松本油脂製薬社製、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)5質量部、サーフィノール 104(エアープロダクツ社製、アセチレン系消泡剤)0.05質量部を混合し、ポリトロンミキサー(9000rpm/分)で20分攪拌した。次にこの溶液を、ダイノーミル(シンマルエンタープライズ社製)を使い、液流量80ml/分、ガラスビーズ粒径φ1.5mm、ビーズ充填率80%で粉砕し、その後、セロゲンBS(登録商標、第一工業製薬社製、カルボキシメチルセルロースナトリウム)を0.3質量部添加し水性製剤を得た。
【0035】
(比較例2)
水29.15質量部に、ベストサイドSW(日本曹達社製 BIT80質量%)25質量部、ベストサイド600(日本曹達社製 H−MIT50質量%)40部、サンエキスP252(日本製紙ケミカル社製、リグニンスルホン酸ナトリウム)0.5質量部、ペネロールSP24(松本油脂製薬社製、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)5質量部、サーフィノール104(エアープロダクツ社製、アセチレン系消泡剤)0.05質量部を混合し、ポリトロンミキサー(9000rpm/分)で20分攪拌した。次にこの溶液を、ダイノーミル(シンマルエンタープライズ社製)を使い、液流量80ml/分、ガラスビーズ粒径φ1.5mm、ビーズ充填率80%で粉砕し、その後、ロードポールG(ローディア日華社製、キサンタンガム)を0.3質量部添加し水性製剤を得た。
【0036】
(比較例3)
水29.15質量部に、ベストサイドSW(日本曹達社製 BIT80質量%)25質量部、ベストサイド600(日本曹達社製 H−MIT50質量%)40質量部、サンエキスP252(日本製紙ケミカル社製、リグニンスルホン酸ナトリウム)0.5質量部、ソプロフォールBSU(登録商標、ローディア日華社製ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)5質量部、サーフィノール104(エアープロダクツ社製、アセチレン系消泡剤)0.05質量部を混合し、ポリトロンミキサー(9000rpm/分)で20分攪拌した。次にこの溶液を、ダイノーミル(シンマルエンタープライズ社製)を使い、液流量80ml/分、ガラスビーズ粒径φ1.5mm、ビーズ充填率80%で粉砕し、その後、セロゲンBS(第一工業製薬社製、カルボキシメチルセルロースナトリウム)を0.3質量部添加し水性製剤を得た。
【0037】
(比較例4)
水29.15質量部に、ベストサイドSW(日本曹達社製 BIT80質量%)25質量部、ベストサイド600(日本曹達社製 H−MIT50質量%)40質量部、サンエキスP252(日本製紙ケミカル社製、リグニンスルホン酸ナトリウム)0.5質量部、ソプロフォールBSU(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)5質量部、サーフィノール 104(エアープロダクツ社製、アセチレン系消泡剤)0.05質量部を混合し、ポリトロンミキサー(9000rpm/分)で20分攪拌した。次にこの溶液を、ダイノーミル(シンマルエンタープライズ社製)を使い、液流量80ml/分、ガラスビーズ粒径φ1.5mm、ビーズ充填率80%で粉砕し、その後、ロードポールG(ローディア日華社製、キサンタンガム)を0.3質量部添加し水性製剤を得た。
【0038】
(比較例5)
水29.15質量部に、ベストサイドSW(日本曹達社製 BIT80質量%)25質量部、ベストサイド600(日本曹達社製 H−MIT50質量%)40質量部、サンエキスP252(日本製紙ケミカル社製、リグニンスルホン酸ナトリウム)0.5質量部、ニューカルゲンFS3K(ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルホスフェートカリウム塩)5質量部、サーフィノール 104(エアープロダクツ社製、アセチレン系消泡剤)0.05質量部を混合し、ポリトロンミキサー(9000rpm/分)で20分攪拌した。次にこの溶液を、ダイノーミル(シンマルエンタープライズ社製)を使い、液流量80ml/分、ガラスビーズ粒径φ1.5mm、ビーズ充填率80%で粉砕し、その後、セロゲンBS(第一工業製薬社製、カルボキシメチルセルロースナトリウム)を0.3質量部添加し水性製剤を得た。
【0039】
実施例及び比較例の各成分の配合割合を表1に示す。下記表中、Ex.は実施例を、C.Ex.は比較例を意味する。
【0040】
【表1】

【0041】
(試験例1)
実施例1〜3及び比較例1〜5で得られた各製剤を60ml容量のガラス瓶に50ml入れ、それぞれ−5℃、5℃、40℃、50℃及び−5℃から50℃のサイクル(3日交互の−5℃及び50℃放置、温度変更各半日の7日間インターバール)恒温器に20日間放置し(サイクル試験は21日)、浮き水の現れ方を観察した。浮き水の比率(相分離率)は、製剤品の全高さに対する沈降物の高さの比率で表した。
相分離率(%)=(沈降物の高さ/全高さ)×100
結果を表2に示す。
【0042】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A):イソチアゾロン系化合物の1種以上、
成分(B):燐酸塩型アニオン系界面活性剤、及び
成分(C):アニオン系多糖類
を含有することを特徴とする殺菌防カビ組成物。
【請求項2】
イソチアゾロン系化合物が、
2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(H−MIT)、
5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(Cl―MIT)、
4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(DCOIT)、
2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(OIT)、
2−メチル−4,5−トリメチレン−4−イソチアゾリン−3−オン(MTI)、
1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン(BIT)、
N−n−ブチル−1,2−ベンツイソチアゾリン−3−オン(Bu−BIT)
からなる群から選択される1種類以上であることを特徴とする請求項1に記載の殺菌防カビ組成物。
【請求項3】
燐酸塩型アニオン系界面活性剤が、ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルホスフェートカリウム塩であることを特徴とする請求項1又は2に記載の殺菌防カビ組成物。
【請求項4】
アニオン系多糖類がキサンタンガムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の殺菌防カビ組成物。
【請求項5】
成分(A)を4〜50質量%、
成分(B)を0.5〜10質量%、及び
成分(C)を0.05〜1質量%
含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の殺菌防カビ組成物。



【公開番号】特開2009−209044(P2009−209044A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−50431(P2008−50431)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【Fターム(参考)】