説明

安定な粉末組成物の製造方法

この発明は、
-センシティブな物質およびこのセンシティブな物質に対する含浸剤としての少なくとも一つの粘性化合物を含むコア、および
-粘着剤としての少なくとも一つの粘性化合物を含む、上記のコアに対するコーティング
を含む粒子を含む粉末組成物中に含まれる、温度20℃〜100℃および/または圧力106〜107 Paおよび/または相対湿度60%〜100%に対してセンシティブな物質の分解を実質的に防ぐための、粘度が5 Pa.s-1より高い少なくとも一つの粘性化合物の使用
に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定な粉末組成物の新規な製造方法に関する。
本発明は、特に温度および/または圧力および/または相対湿度の影響を受けやすい物質を含む粉末組成物の新規な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
影響を受けやすい物質は、医薬、またはヒトおよび動物の食品、洗浄剤などのような医薬とは異なった分野で用いられる組成物中に含まれる活性物質であることが多い。
【0003】
そのような例としては、プロテイン、特に酵素、ビタミン類、バクテリア、イースト、抗酸化剤、カロテノイド、精油、または抗生物質のような薬理学的に活性な物質が挙げられる。
【0004】
しかしながら、これらの組成物の製造中、特に造粒過程において、上記の物質はいくつかのストレスに曝される。
事実、これらの操作を行なう機械の主な特徴は、それらが最終組成物を構成する物質に対して、異なったサイズの孔を有するダイを通過させて顕著な剪断力を生じさせ、該物質のコア部分に温度上昇をもたらすということである。
【0005】
さらに、この過程をより容易に通過させるために、該物質は標準的なやり方で予め熱せられ、凝集を生じさせるために蒸気が加えられる。このような異なった温度、圧力および湿気のストレスは、鋭敏な(sensitive)物質にとって有害であり、上記のような操作中に該物質の活性をいくらか損なうこともあり得る。
【0006】
これらの問題を解決するために、従来、異なった解決方法が提案されてきた。
例えば、ヨーロッパ特許EP 0569468 は、動物の食品用に意図された酵素を含み、造粒条件に対する抵抗を増すために高い融点を有する脂肪またはワックスでコーティングされた顆粒の製造方法を提案している。
しかしながら、そのようなコーティングは、顆粒が長い時間溶けた状態に置かれ、酵素の動物に対するバイオアベイラビリティを低下させるという欠点を有している。
【0007】
同様に、WO 00/47060は、酵素を含み、ポリエチレングリコールでコーティングされた顆粒の製造方法を記載している。このコーティングは、造粒工程の間、酵素の安定性を増すが、水溶性の無機塩(例えばZnSO4)またはトレハロースのような添加剤の存在下だけである。これらの添加剤は、考慮されている顆粒の使用にとって必ずしもためになっておらず、ただコストを増しているだけである。
【0008】
ポリオレフィンで被覆された酵素を含む顆粒、特に動物用の食品分野で使用される顆粒の製造方法も、WO 03/059087に開示されている。
特に、採用されるコーティングは、造粒工程の間、酵素の安定性を増す。しかしながら、この方法は、動物用の食品に不必要なポリマー誘導体の使用を必要とし、しかも顆粒の製造コストを高めている。
【0009】
WO2005/074707は、安定化されたホスファターゼ製剤を記載しており、安定化剤は、寒天、アルギン、カラギーナン、フルセレラン、ガッチガム、トラガントガム、カラヤガム、 グアラン、カロブビーンガム、タマリンド種ガム、アラビノガラクタンおよびキサンタンガムから専ら選択される。
これらの製剤は、分子量6000〜80000を有するセルロース誘導体から特に選択されるポリマーでコーティングされ得る。この出願では、用いられる物質の粘度については何も述べられていない。
【0010】
EP0600775は、コーティングにより安定化された活性剤を記載している。このコーティング組成物は、特にセルロースアセテート、エチルセルロースまたはメチルセルロースのようなセルロース誘導体であり得るフィルム形成剤、および体液に対する好ましいアクセスポイントを形成することにより該コーティング組成物を急速に崩壊させる細孔形成剤を含む。
【0011】
WO03/059086は、顆粒製剤およびその製造方法を記載している。しかしながら、用いられる物質の粘度については、いかなる情報も与えられていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の一つの観点は、少なくとも一つのセンシティブな物質を含み、高い温度、圧力および相対湿度の条件に耐え得る、しかも輸送および保管の間中、安定である粉末組成物の新規な製造方法を提案するものであり、この方法は容易に実施することができ、コストも高くない。
【0013】
本発明の課題は、より詳細には、粉末組成物中に含まれる少なくとも一つの粘性の化合物の使用に関し、その粘度は5 Pa.s-1より高く、20℃〜100℃の温度および/または106〜107 Paの圧力および/または60%〜100%の相対湿度に対して、センシティブな物質の分解を実質的に防ぐ。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の粉末組成物は、:
-センシティブな物質およびこのセンシティブな物質に対する含浸(impregnating)剤としての少なくとも一つの粘性の化合物を含むコア、および
-粘着剤としての少なくとも一つの粘性の化合物を含む、上記のコアに対するコーティング
を含む粒子を含む。
【0015】
本発明で用いられる粘性の化合物は、106〜107 Paのオーダーの高圧に付されると、実質的に疎水性になる性質を有しているが、溶液中に戻されるとその溶解特性を完全に回復する。
【0016】
したがって、この化合物は、造粒工程での顆粒製造の間はセンシティブな物質を保護することができるが、その後では粉末組成物中の粒子の溶解時間が短くなる結果、センシティブな物質の良好なバイオアベイラビリティを保証する。
特に、粉末組成物が動物食品用に意図されているとき、活性成分でもあるセンシティブな物質が動物の消化器官中に直接放出される。
【0017】
「造粒」とは、ダイを通して、1〜10 mmの直径および1〜5 cmの長さの円柱状の粒を製造する工程を意味する。
この工程は、センシティブな物質にダメージを与え得るストレス、すなわち高い温度および圧力のストレスおよび剪断ストレスにより、また蒸気の圧力によっても特徴づけられる。
【0018】
粘度の測定は、共軸のシリンダーシステムを備えたBROOKFIELD粘度計モデルLVDV-Eを用い、 粘度によりスピンドルNo.18または31を使い、サーモスタット浴を用いて温度調節された測定チャンバー中で行われる。
これらの測定は、粘性化合物の乾燥エキスの10%水溶液について、20℃で、スピンドルの異なった回転速度10〜100 rpm で行われる。
保持された粘度の値は、器具のトーショントルク(最大80%)の制限値に適合する最大回転速度で得られた値である。
【0019】
粘性の化合物は、植物性ガムもしくは発酵産物、澱粉ベース、キチン類、またはカルボキシメチルセルロース、(CMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロースもしくは微結晶性セルロースのようなセルロース誘導体から選択するのが有利である。
【0020】
本発明の特に有利な形態において、粘性の化合物はカルボキシメチルセルロース(CMC)である。この化合物は、センシティブな物質を熱と圧力の条件下で保護して実質的に不溶性にするが、溶液中に戻されると、水和して再びバイオアベイラブルとなる。
【0021】
「センシティブな物質」とは、高い温度および/または圧力および/または相対湿度に付されると、その活性をいくらか、あるいはすべて失いやすい物質を意味する。これらのストレスは、特に該物質を含む組成物を製造する間、とりわけ造粒の間に遭遇する。この物質は、特にセンシティブな物質の混合物であり得る。
【0022】
「分解」とは、センシティブな物質の変化を意味し、該物質の変質、またはいくつかの物質、特に例えば精油の場合のように、揮発性の物質を含む組成物中の含量の変化による、活性の部分的または全体的な喪失を含む。
【0023】
センシティブな物質は、特にプロテイン類、特に酵素、ビタミン類、バクテリア、酵母、抗酸化剤、カロテノイド類、精油類、または抗生物質のような医薬的に活性な物質から選択され得る。
【0024】
一例として、酵素としてはスーパーオキシジスムターゼが挙げられ、ビタミン類としてはリボフラビンまたはアスコルビン酸が挙げられ、バクテリアとしてはラクトバチルスが挙げられ、酵母類としてはサッカロマイセス・セレビシアエが挙げられ、抗酸化剤としてはポリフェノール類またはビタミンEが挙げられ、カロテノイド類としてはルテイン、アスタキサンチン、リコペン、キサントフィルまたはカロテン類が挙げられ、天然の精油類としてはニンニク、タイムもしくはローズマリーから得られる油類が挙げられ、抗生物質類としてはアモキシシリンまたはタイロシンが挙げられる。
【0025】
これらのセンシティブな物質は、特に動物もしくはヒトの食品分野、医薬もしくは動物薬の分野、クリーニングの洗剤およびとりわけ衣類用の洗浄製品の分野で用いられ得る。
【0026】
「粉末組成物」とは、30〜3 000 μmの平均粒径を有する粒子を含む粉末組成物を意味する。
粉末組成物の粒子は、2つの極めて異なった部分:コアとこのコアの保護フィルムを形成するコーティングとを含む。
【0027】
コアは、センシティブな物質および少なくとも一つの含浸剤として作用する粘性の化合物により構成される。
コーティングは、粘着剤として作用する少なくとも一つの粘性の化合物を含む。それゆえ、粘性の化合物は、コアとコーティングの両方に存在するので、2つのレベルを含む。一方がコア中に含まれ、他方がコーティング中に含まれる、2つの異なった粘性の化合物を用いることができる。
【0028】
含浸剤として用いられる粘性の化合物は、組成物を構成する成分をデミックスしないでも均一な混合物を得ることを可能ならしめるが、すべての粒子を一つに結合させる。
【0029】
粘着剤として用いられる粘性の化合物は、永続する保護を達成し得る。したがって、造粒工程の間中、一方では、食料と混合する間に組成物の温度が用いられる蒸気で上昇したときに遭遇する高い湿度と温度の状態に対する保護を確かなものとし、他方ではダイを通過するときに遭遇する高い圧力状態と剪断状態に対する保護を確実なものとする。
【0030】
上記の粉末組成物中の粒子のコアは、センシティブな物質のための少なくとも一つの担体を含むのが有利である。
事実、その吸収性ゆえに、担体は乾燥状態にあるものから選択される物質である。担体が液状のセンシティブな物質と接触し、乾燥工程の間に噴霧されるときに、水の作用を安定化することにより、センシティブな物質を保護する。
【0031】
この担体は、特に、澱粉、穀粉、とりわけ小麦、コーン、カッサヴァもしくは米の粉、タルク、ビートパルプ、マルトデキストリン、炭酸カルシウムのような塩またはコーン蒸留酒製造所の穀粒であり得る。
【0032】
含浸剤と粘着剤とは、同じであると有利である。
しかしながら、粘性の化合物は、たとえそれが同じ化合物であっても、前記のように、それが含浸剤として用いられるか、あるいは粘着剤として用いられるかによって、きわめて異なった機能を有する。
特に有利な形態において、含浸剤および粘着剤はカルボキシメチルセルロース(CMC)を含むか、あるいはカルボキシメチルセルロースから構成される。
【0033】
特定の形態において、センシティブな物質は粉末組成物の乾燥エキスの5〜40%、好ましくは10〜30%を表し、担体は粉末組成物の乾燥エキスの10〜60%、好ましくは20〜50%を表し、含浸剤は粉末組成物の乾燥エキスの5 〜40%、好ましくは10〜30%を表し、粘着剤は粉末組成物の乾燥エキスの5〜 30%、好ましくは10〜20%を表す。
【0034】
もう一つの特定の形態において、センシティブな物質はβ-グルカナーゼ、キシラナーゼおよびセルラーゼから主に構成される酵素の混合物で構成され、担体は小麦粉で構成され、含浸剤および粘着剤はカルボキシメチルセルロース(CMC)で構成される。
【0035】
本発明は:
-温度20℃〜100℃、および/または圧力106〜107 Pa、および/または相対湿度60%〜100%に対してセンシティブな少なくとも一つの物質、およびセンシティブな物質に対する含浸剤としての5 Pa.s-1より高い粘度を有する少なくとも1つの粘性化合物を含むコア、ならびに
-5 Pa.s-1より高い粘度を有する粘着剤としての少なくとも一つの粘性化合物を含む、上記のコアに対するコーティング
を含む粒子を含む安定な粉末組成物にも関する。
上記のセンシティブな物質は、ヒト以外の動物の食品用に意図された酵素でない。
【0036】
「安定な粉末組成物」とは、該組成物が60℃〜100℃の温度、および/または2x106〜107 Pa の圧力、および/または60%〜100%の相対湿度に付されたときに、センシティブな物質の20%未満が分解される組成物を意味する。
【0037】
粘性の化合物は、植物性ガムもしくは発酵産物、澱粉ベース、キチン類、またはカルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロースもしくは微結晶性セルロースのようなセルロース誘導体から選択するのが有利である。
粘性の化合物は、カルボキシメチルセルロース(CMC)であるのが、特に有利である。
【0038】
センシティブな物質は、特にプロテイン類、ビタミン類、バクテリア、酵母類、抗酸化剤、カロテノイド類、精油類、または抗生物質のような医薬的に活性な物質から選択され得る。
【0039】
有利な形態において、コアはセンシティブな物質のための少なくとも一つの担体を含む。
この担体は、特に、澱粉、穀粉、とりわけ小麦、コーン、カッサヴァもしくは米の粉、タルク、ビートパルプ、マルトデキストリン、炭酸カルシウムのような塩またはコーン蒸留酒製造所の穀粒であり得る。
【0040】
有利な形態において、含浸剤と粘着剤とは同じである。含浸剤および粘着剤がカルボキシメチルセルロース(CMC)を含むか、あるいはカルボキシメチルセルロースから構成されていると、特に有利である。
【0041】
特定の形態において、粉末組成物は、センシティブな物質の乾燥エキス5〜40%、好ましくは10〜30%、担体の乾燥エキス10〜60%、好ましくは20〜50%、含浸剤の乾燥エキス5 〜40%、好ましくは10〜30%、および粘着剤の乾燥エキス5〜 30%、好ましくは10〜20%から構成される。
【0042】
本発明は、
-温度20℃〜100℃、および/または圧力106〜107 Pa、および/または相対湿度60%〜100%に対してセンシティブな少なくとも一つの物質、およびセンシティブな物質に対する含浸剤としての5 Pa.s-1より高い粘度を有する少なくとも1つの粘性化合物を含むコア、ならびに
-粘着剤としての5 Pa.s-1より高い粘度を有する少なくとも一つの粘性化合物を含む、上記のコアに対するコーティング
を含む粒子を含む安定な粉末組成物の製造方法にも関する。
【0043】
上記の方法は、上記のセンシティブな物質と上記の含浸剤との混合物を微細粒化して、コアを得る工程、および上記のコアを粘着剤でコーティングする工程を含む。
【0044】
本発明は、
-温度20℃〜100℃、および/または圧力106〜107 Pa、および/または相対湿度60%〜100%に対してセンシティブな少なくとも一つの物質、センシティブな化合物に対する含浸剤としての5 Pa.s-1より高い粘度を有する少なくとも1つの粘性化合物、およびセンシティブな物質のための少なくとも一つの担体を含むコア、ならびに
-5 Pa.s-1より高い粘度を有する、粘着剤としての少なくとも一つの粘性化合物を含む、上記のコアに対するコーティング
を含む粒子を含む安定な粉末組成物の製造方法にも関する。
【0045】
上記の方法は:上記のセンシティブな物質、上記の担体および上記の含浸剤の混合物を微細粒化して、コアを得る工程、および上記のコアを粘着剤でコーティングする工程を含む。
【0046】
この安定な粉末組成物の製造方法の間に、この粉末組成物の粒子のコアは、3つの成分、センシティブな物質、担体および含浸剤の混合物から、微細粒化の工程により得られる。
【0047】
粒子のコアは、次いで粘着剤でコーティングされ、粒子の周りに保護フィルムが形成されて、センシティブな物質が曝されるその後のストレス、特に造粒工程における顆粒の製造中のストレスから該粒子を保護する。これは、輸送および保管中に保持することもできる。
【0048】
含浸剤および粘着剤ならびに技術の組合せは、得られる安定な粉末組成物が、保護フィルムに固着し、新たな性状を示す粒子を含むことを確かなものとする。
特に、該粉末組成物は疎水性を有し、粉末組成物中に含まれるセンシティブな物質は温度および圧力に耐性を有するものとなり、輸送または保管中にも安定性を維持する。
しかしながら、該粉末組成物は、それが溶液中に戻されると、再び水和されてバイオアベイラブルとなる。
【0049】
微細粒化の工程は、予め共−乾燥されたセンシティブな物質および担体ならびにすべての含浸剤の混合物から出発して行われる。
この方法の間、予め乾燥されたセンシティブな物質および担体は、含浸剤と混合できるように、調整された粒子径および分散性を有する完全に均一な物質の形態にある。
【0050】
微細粒化の工程は、予め共−乾燥されているセンシティブな物質、担体およびすべての含浸剤の混合物から出発して行うこともできる。
この方法は、完全に均一な物質を直接用いると、混合工程の費用を節減できて有利である。
【0051】
微細粒化の工程は、予め共−乾燥されたセンシティブな物質、担体および含浸剤の一部の混合物、および残りの含浸剤から出発して行うこともできる。
この方法は、低減された分散性で粒子径が調整された、中間の粉末をもたらす。含浸剤の大部分はすでに存在しているので、次の工程へ進むために、残りの含浸剤を補足すれば充分である。
【0052】
特定の形態において、上記の方法は、センシティブな物質、センシティブな物質の担体および任意にすべての、もしくは一部の含浸剤を含む混合物について、微細粒化する前に共−乾燥する工程を含む。共−乾燥する工程は、60℃より低い出口温度および45℃より低い粉末温度で行われる。
【0053】
本発明の方法の好ましい形態において、センシティブな物質は液体の形態で用いられ、担体は乾燥状態で用いられる。
【0054】
もう一つの特定の形態において、上記の方法は:
−センシティブな物質およびセンシティブな物質の少なくとも一つの担体を含む混合物を、60℃より低い出口温度および45℃より低い粉末温度で、共−乾燥して、中間の均一な粉末を得る工程、
−均一な中間の粉末を含浸剤とともに微細粒化して、上記のコアに相当するコーティングされていない粒子からなる高密度の微細粒化された粉末を得る工程
を含む。
【0055】
本発明の方法の好ましい形態において、センシティブな物質は液体の形態で用いられ、担体は乾燥状態で用いられ、含浸剤は固体の形態で用いられる。
共−乾燥する工程は、センシティブな物質を95%より多く保持し得る低温で行われ、均一な粉末が得られ、平均粒子径はD(v,0.5)で測定して50〜 250 μmに調整され得る。
【0056】
かくして、均一な中間の粉末は、乾燥エキスにおいてセンシティブな物質を10〜100%、特に40〜65%、特に55%含む。
均一な中間の粉末の最終的な水分は、0%から特に5〜12%の間で変動し、微生物の増殖を避けるために水の作用は0.6より低い。
【0057】
微細粒化の工程は、センシティブな物質を損なわないように、通常、最高温度45℃で、かつ所定の水分含量、すなわち用いられる全乾燥エキスに対して加えられる水は約5〜20%、好ましくは10%であり、製品の水分含量および硬さは、湿気の程度をモニタリングし、拡大双眼鏡を用いる目視チェックまたはイメージ分析により、粒子の均一性を調整することにより達成される。
【0058】
高密度化された粉末は、スタート時の粉末の状態における粒子の凝集による製品の状態の変化が観察されることにより特徴付けられる。
そして、このことは、糊状物質の濃さを得る直前に、急速に上昇する温度により、または微細粒化機械の主モータの電力消費量によりモニターされる。
【0059】
得られる高密度化された粉末は、D(v,0.5)として測定して100〜200 μmの平均粒子径を有し、5〜10%の水分含量を有する。
この高密度化された粉末は、乾燥エキスにおいてセンシティブな物質5〜50%、好ましくは10〜35%、乾燥エキス中の担体10〜70%、好ましくは20〜60%、含浸剤5〜50%、好ましくは10〜30%で構成されている。
【0060】
特定の態様において、粉末組成物を製造する本発明の方法は、次の工程を含む。
−センシティブな物質およびセンシティブな物質の少なくとも一つの担体を含む混合物を、60℃より低い出口温度および45℃より低い粉末温度で共−乾燥して、中間の均一な粉末を得る工程、
−均一な中間の粉末を含浸剤とともに微細粒化して、上記のコアに相当するコーティングされていない粒子からなる高密度の微細粒化された粉末を得る工程、
−高密度化された微細粒化粉末のコーティングされていない粒子をコーティングして被覆された粉末を得る工程。
【0061】
本発明の方法の好ましい態様において、センシティブな物質は液体の形態で用いられ、担体は乾燥状態で用いられ、含浸剤は固体の形態で用いられ、粘着剤は液体の形態、特に水溶液の形態で用いられる。
【0062】
コーティング工程において、粒子のコアの周りの粘着剤の沈積割合は、安定な粉末組成物の所望する最終粒子径に依存する。特に、それは粉末組成物の乾燥エキス5〜30%、好ましくは10〜20%の間で変動する。
【0063】
粘着剤は、乾燥エキス4〜10%の水溶液から出発して、特に液体の形態で沈積される。
粘着剤を含む溶液は、コーティングされる高密度化された粉末が、粒子の凝集を伴わないで、連続的にスプレーされるに適した粘度を有する。
上記で得られるコーティングされた粉末は、D(v,0.5)として測定して、平均粒子径300〜400 μm、および水分含量5〜12%を有する。
【0064】
このコーティングされた粉末は、乾燥エキスとしてセンシティブな物質5〜 40%、好ましくは10〜30%、乾燥エキスとして担体10〜60%、好ましくは20〜50%、乾燥エキスとして含浸剤5〜40%、好ましくは10〜30%、および乾燥エキスとして粘着剤5〜30%、好ましくは10〜20%により構成される。
【0065】
本発明のもう一つの態様において、上記の方法は次の工程を含む:
−センシティブな物質およびセンシティブな物質の少なくとも一つの担体を含む混合物を、60℃より低い出口温度および45℃より低い粉末温度で共−乾燥して、中間の均一な粉末を得る工程、
−均一な中間の粉末を含浸剤とともに微細粒化して、上記のコアに相当するコーティングされていない粒子で構成された高密度の微細粒化された粉末を得る工程、
−任意に、高密度化された粉末を45℃より低い温度で乾燥して、乾燥した高密度化され微細粒化された粉末を得る低温乾燥工程、
−任意に、高密度化され、微細粒化され、篩い分けられた粉末を得る篩過工程、
−高密度化され、微細粒化された粉末のコーティングされていない粒子を粘着剤でコーティングし、任意に乾燥し、任意に篩い分けて、被覆された粉末を得る工程、および
−コーティングされた粉末を乾燥して、安定な粉末組成物を得る工程。
【0066】
「低温乾燥」とは、温度が45℃を超えない乾燥工程を意味する。
この乾燥工程は、微細粒化され、高密度化された粉末が10%より高い水分含量を有しているときに、微細粒化工程の後で行われ、9%より低い、好ましくは7%より低い水分含量を得る。
【0067】
篩過工程は、微細粒化工程の後で行われ、コーティング前に均等な大きさの粒子をもたらす。
任意に乾燥され、任意に篩い分けられてコーティング前に得られた、高密度化され、微細粒化された粉末は、D(v,0.5)として測定して100〜200μm の平均粒子径および最大水分含量10%を有する。
【0068】
コーティング工程の後に行われる乾燥工程は、低温、すなわちコア中の最高温度45℃で、センシティブな物質に適した条件下に行われ、10%より少ない、好ましくは8%より低い水分含量を有する安定な粉末組成物が得られる。
安定な粉末組成物の粒子径は、主に100〜500 μmの範囲内のものを含む。
【0069】
このようにして得られる安定な粉末組成物は、この粒子径が動物の食品用に意図された調製物におけるデミキシングを避けるものであるので、特に動物の食品用の顆粒中に加えられる原料として直接販売され得る。
【0070】
粘性の化合物は、植物性ガムもしくは、発酵産物、澱粉ベース、キチン類、またはカルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロースもしくは微結晶性セルロースのようなセルロース誘導体から選択するのが有利である。
粘性の化合物はカルボキシメチルセルロース(CMC)であるのが特に有利である。
【0071】
センシティブな物質は、プロテイン類、特に、酵素、ビタミン類、バクテリア、酵母類、抗酸化剤、カロテノイド類、精油類、または抗生物質のような薬理活性物質から選択され得る。
【0072】
センシティブな物質の担体は、特に、澱粉、穀粉、とりわけ小麦、コーン、カッサヴァもしくは米の粉、タルク、ビートパルプ、マルトデキストリン、炭酸カルシウムのような塩類、コーン蒸留酒製造所の穀粒から選択され得る。
【0073】
有利な態様において、含浸剤および粘着剤は同じである。
含浸剤および粘着剤がカルボキシメチルセルロース(CMC) を含んでいるか、またはカルボキシメチルセルロース(CMC) で構成されていると、特に有利である。
【0074】
この方法は、一方ではCMCが高価でなく、他方ではこの方法が(含浸剤および粘着剤として用いられる) CMCのレベルを(通常55%であるのに)最終粉末組成物の乾燥エキスにおいて35%あるいは25%まで低減しても、温度および圧力に対する耐性を高められるので、経済的により魅力的である。
【0075】
特定の態様において、センシティブな物質は粉末組成物の乾燥エキス5〜40%、好ましくは10〜30%を表し、担体は粉末組成物の乾燥エキス10〜60%、好ましくは20〜50%を表し、含浸剤は粉末組成物の乾燥エキス5〜40%、好ましくは10〜30%を表し、粘着剤は粉末組成物の乾燥エキス5〜30%、好ましくは10%〜20%を表す。
【0076】
本発明は、上記のような方法により得られる粉末組成物にも関する。
本発明は、
-温度20℃〜100℃、および/または圧力106〜107 Pa 、および/または相対湿度60%〜100%に対してセンシティブな少なくとも一つの物質、および5 Pa.s-1 より高い粘度を有する少なくとも一つの粘性化合物を上記のセンシティブな物質に対する含浸剤として含むコア、および
-5 Pa.s-1 より高い粘度を有する少なくとも一つの粘性化合物を粘着剤として含む、上記のコアに対するコーティングを含み、
センシティブな物質が当初の活性の少なくとも80%、特に少なくとも90%を保持している粒子を含む安定な粉末組成物を活性物質として含み、医薬的に許容される担体と組み合わさった医薬組成物にも関する。
この医薬組成物は、特に、動物用に意図され得る。
【0077】
本発明は、本発明における上記の安定な粉末組成物および少なくとも一つの食用物質を含む食品組成物に関するものでもあり、該組成物においてセンシティブな物質は、ヒト以外の動物食品用の酵素でなく、当初の活性の少なくとも80%、特に少なくとも90%を保持している。この食品組成物は、特に動物用に意図され得る。
この食品組成物は、ペレットまたは顆粒の形態で提供されるという点でさらに特徴づけることもできる。
【0078】
本発明は、上記のような安定な粉末組成物および少なくとも一つの食用物質を含む食品組成物の製造方法に関するものでもある。
この方法は、安定な粉末組成物と食用物質との混合物を、湿った雰囲気で、特に水分14%において適用圧力2x106〜107 Paで圧縮する工程を含む。
【0079】
特定の態様において、前記の共−乾燥工程は、特に噴霧および/または流動床を備えた乾燥塔で連続的に行なわれる。
センシティブな物質は、この工程の間中、乾燥担体用の入り口の周りに設けられたノズルを通して、または中央の注入パイプにより、あるいは塔に備えられたShugi(商標)もしくはBepex(商標)タイプのダイナミックミキサー (HOSOKAWA販売)により導入される。
【0080】
共−乾燥工程は、特に単分散性エアゾルの形態にあるセンシティブな物質を、適当な装置により直接担体粉末上に連続的に噴霧することにより行なうことができ、こうして完全に均一な粒子をより効果的に得ることができる。
【0081】
特定の態様において、前記の微細粒化工程は、含浸微細粒化および剪断により、特に流動床上で行なわれる。
この工程は、特に中間の均一な粉末を含浸剤で湿らせ、それを静的ミキサー中で断続的に高密度化させるか、または例えば湿ったもしくはペースト状の物質用の高速ミキサー (カッター)のような回転装置を用いるSHUGI(商標)動的ミキサー(HOSOKAWA販売) 、あるいは医薬分野で用いられる適当な噴霧システムを備えたDIOSNA(商標)、TURBOSPHERE(商標)もしくはGLATT(商標)湿式造粒機 (それぞれDIOSNA、Pierre GUERINおよびGLATT販売)中で連続的に高密度化させることからなる。
【0082】
本発明の好ましい態様において、上記の微細粒化工程は、単分散性エアゾルで湿らすことにより連続的に行なわれ、均一な粒子を効果的に得ることができる。
【0083】
特定の態様において、前記の低温乾燥工程は、不連続的な流動床中で、または含浸段階が連続的に起こるのであれば直接、あるいはチューブもしくはShugi共−乾燥装置を用いた乾燥塔で行なわれる。
【0084】
特定の態様において、前記のコーティング工程は、粘着剤の適当なフィルムを沈積させ、次いでコーティング物質を乾燥することからなる。上記のフィルムは、通常、流動空気乾燥機の適当なスプレーノズルにより沈積される。
【0085】
本発明の好ましい態様において、噴霧によりフィルムコーティングする工程は、単分散性エアゾルで連続的に行なわれ、均一な粒子をより効果的に得ることができ、粒子の密度を向上させ、沈積される粘着剤の量を制限することができる。
【0086】
本発明の好ましい態様において、ROTOJET(商標)ノズル(INNOJET販売)を備えたINNOJET(商標)装置 (INNOJET販売)で開発された含浸粉末を含むために先進的なシステムを用いることができ、粒子の密度を向上させ、沈積される粘着剤の量を制限することができる。このシステムによれば、粒子を高流速でノズルの前を均一に通過させることができる。
【0087】
被覆された粉末は、標準的なGLATTもしくはAEROMATICボトムスプレー式 流動床(それぞれGLATTおよびGEA販売)、INNOJET(商標)、トップスプレーもしくは斜めスプレー式流動床で連続バッチ式に乾燥するか、あるいはノズルのバンクを有する連続流動床もしくはSHUGIアグロミレータで連続的に乾燥するか、あるいはバッチ式に乾燥される。
その目的は、被覆された粉末の水分含量を元に戻して10%より少なく、好ましくは8%より低くすることにある。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】図1は、本発明による安定な粉末組成物の製造方法の異なった工程を模式的に示し、原材料物質は灰色の長方形で示され、操作は白色のひし形で示され、用いられる装置およびパラメータは灰色の楕円形で示される。 用いられるコードを次に図示する。
【数1】

【図2】標準的なコーティング方法により得られた粒子の走査電子顕微鏡写真(倍率 x50)
【図3】標準的なコーティング方法により得られた粒子の走査電子顕微鏡写真(倍率 x200)
【図4】標準的なコーティング方法により得られた粒子の走査電子顕微鏡写真(倍率 x800)
【図5】本発明の方法により得られた粒子の走査電子顕微鏡写真(倍率 x50)
【図6】本発明の方法により得られた粒子の走査電子顕微鏡写真(倍率 x200)
【図7】本発明の方法により得られた粒子の走査電子顕微鏡写真(倍率 x800)
【0089】
図2〜7は、走査電子顕微鏡を通して見た粉末組成物の粒子の異なった写真を示す。
図2(倍率 x50)、図3(倍率x200)および図4(倍率x800)は、 流動床で標準的なコーティング方法により得られた粒子に関するものである。
図5(倍率x50)、図6(倍率x200)および図7(倍率x800)は、INNOJET(商標)装置で開発された先進的な含浸システムを用いる本発明の方法により得られた粒子を表す。
【実施例】
【0090】
実施例1:酵素の混合物を含む安定な粉末組成物の製造
センシティブな物質が酵素の混合物であり、担体が穀粉であり、含浸剤および粘着剤がCMCからなる安定な粉末組成物の製造方法を、以下の実験的プロトコールに記載する。
【0091】
1.共−乾燥工程
酵素溶液475 kg/時間を28.7%乾燥物質(DM)とともに、穀粉タイプの担体上に113 kg/時間の割合で、低温で、165×105 Paで噴霧して、連続的に共−乾燥する。
− 入り口空気温度:146℃
− 出口空気温度:49℃
− 静止床中の空気温度:40℃
− ビブロ(vibro)−流動(第1セクション)中の空気温度:35℃
− ビブロ(vibro)−流動(第2セクション)中の空気温度:27℃
乾燥エキスの配分は、したがって次のとおりである:酵素の混合物55% および担体としての小麦粉45%。
【0092】
酵素の混合物は、ペニシリウム・フニクロスム(funiculosum) (IMI 378536)の発酵から得られる濃縮ろ過発酵麦芽汁(wort)であり、19の酵素活性を含み、その中で最も重要なものはセルラーゼ、キシラーゼおよびβグルカナーゼである。
【0093】
用いられたペニシリウム・フニクロスムは、特許EP 1007743で保護されており、ブダペスト条約で認められている国際寄託機関IMI (International Mycological Institute, Bakeham Lane, Englefield Green, Egham, Surrey, TW20 9TY, UK)に、1998年3月24日にADISSEOにより寄託番号IMI 378536 で寄託されている。
【0094】
この工程で得られた均一な粉末は、63 μmより微細なものを含まない粉末特性を有しており、この粉末を含浸剤で湿らす第2工程で処理することができる。D(v,0.5)としての平均粒子径は117 μmであり、水分含量は7.5%である。
これらの装置を用いることにより、物質が小麦やコーンの穀粉のように造粒するのが難しい場合であっても、強固な結合が担体と酵素含有液との間に形成される。
この工程により、予め安定化され、乾燥した、中間の均一な粉末を得ることができる。
【0095】
2.含浸剤での含浸工程
含浸化は、湿った糊状物質用の高速ミキサー(カッター)中で行われ、次の工程を含む:
成分(乾燥した中間の均一な粉末エキスのキログラム当たり0.77 kgの乾燥CMCエキス)を30秒間予備混合する、
乾燥した中間の粉末エキスのキログラム当たり0.18 kgの水を、撹拌しながら120秒間で加える、そして
最終的に 120秒間混合する。
【0096】
この工程の目的は、センシティブな物質が分解しないように、45℃より低い温度に該物質を維持しながら、150〜200 μmのオーダーの平均粒子径を有する粒子を得ることである。
上記の物質は、入口温度55℃、出口温度25℃の流動床乾燥機で乾燥される。
得られる高密度化され、微細粒化された粉末は、7〜8%の水分含量を有する。
【0097】
3.粘着剤でのコーティング工程
高密度化され、微細粒化された粉末上に噴霧する前に、7〜7.5%のCMC水溶液を60℃〜70℃に加熱する。沈積されたCMCの量は、被覆される乾燥高密度化微細粒化粉末のキログラム当たり、乾燥CMC 0.25 kgである。
【0098】
この工程で得られた粉末は、平均粒子径300〜400 μmおよび水分含量10〜11%を有する。
被覆された物質は、次いで流動床で連続的に、またはバッチ式に乾燥される。その目的は、物質の水分含量を10%より低く、好ましくは8%より低くすることである。
【0099】
最終物質として得られた安定な粉末組成物は、次の組成を有する:酵素の乾燥エキス25%、乾燥担体エキス20%、乾燥CMCエキス55%(35%は含浸工程用に用いられ、20%はコーティング工程用に用いられる)。
【0100】
さらに、上記の粉末組成物は、水分含量7.6%、密度450 g/lおよび次の粒子径分布を有する:
800μm以上 → 0%
500〜800μm → 12%
300〜500μm → 46%
200〜300μm → 26%
100〜200μm → 16%
100μm未満 → 0%
【0101】
4.結果
各工程の終わりの段階で得られた粉末の性状を次の表1に示す。
【0102】
【表1】

【0103】
実施例2:スーパーオキシジムスターゼ(SOD)酵素を含有する安定な粉末組成物の製造
センシティブな物質がスーパーオキシジムスターゼ酵素であり、担体が小麦マルトデキストリンであり、含浸剤および粘着剤がCMCからなる安定な粉末組成物の製造方法を、以下の実験的プロトコールに記載する。
1.共−乾燥工程
酵素溶液95kg/時間を28.7%乾燥物質(DM)とともに、マルトデキストリンタイプの担体上に9.5 kg/時間の割合で、低温で、95×105 Paで噴霧して、連続的に共−乾燥する。
− 入り口空気温度:110℃
− 出口空気温度:50℃
− 静止床中の空気温度:40℃
【0104】
乾燥エキスの配分は、次のとおりである:精製酵素50% および小麦マルトデキストリン担体50%。
得られた粉末のD(v,0.5)としての平均粒子径は95 μmであり、水分含量は4.5%である。
この工程により、予め安定化され、乾燥した、中間の均一な粉末を得ることができる。
【0105】
2.含浸剤での含浸工程
含浸化は、湿った糊状物質用の高速ミキサー(カッター)中で行われ、次の工程を含む:
成分(乾燥した中間の粉末エキスのキログラム当たり0.25 kgの乾燥CMCエキス)を60秒間予備混合する、
乾燥した中間の粉末エキスのキログラム当たり1 kgの水を、撹拌しながら90秒間で加える、そして
最終的に 120秒間混合する。
上記の物質は、入口温度60℃、出口温度40℃の流動床乾燥機で乾燥される。
得られる高密度化され、微細粒化された粉末は、8%の水分含量を有する。
【0106】
3.粘着剤でのコーティング工程
7%のCMC水溶液を70℃に加熱する。沈積されたCMCの量は、被覆される乾燥高密度化微細粒化粉末のキログラム当たり、乾燥CMC 0.5 kgである。
この工程で得られた粉末は、平均粒子径300μmおよび水分含量レベル9%を有する。
【0107】
最終物質として得られた安定な粉末組成物は、次の組成を有する:酵素の乾燥エキス20%、乾燥担体エキス20%、乾燥CMCエキス60%(10%は含浸工程用に用いられ、50%はコーティング工程用に用いられる)。
【0108】
さらに、上記の粉末組成物は、水分含量9%、密度400 g/lおよび次の粒子径分布を有する:
800μm以上 → 0%
500〜800μm → 7%
300〜500μm → 35%
200〜300μm → 38%
100〜200μm → 20%
100μm未満 → 0%
【0109】
実施例3:バクテリアを含有する安定な粉末組成物の製造
センシティブな物質がラクトバチルス・タイプのバクテリウムであり、担体および含浸剤がPerfectamyl(商標)澱粉であり、粘着剤がCMCからなる安定な粉末組成物を製造する実験的プロトコールを以下に記載する。
【0110】
1.共−乾燥工程
発酵媒体105kg/時間を、グラム当たり109バクテリア含有乾燥物質(DM) 10%とともに、Perfectamyl(商標)澱粉担体上に45 kg/時間の割合で、低温で、50×105Paで噴霧して、連続的に共−乾燥する。
− 入り口空気温度:90℃
− 出口空気温度:50℃
乾燥エキスの配分は、次のとおりである:精製バクテリウムの乾燥エキス20% および澱粉担体80%。
得られた粉末のD(v,0.5)としての平均粒子径は45 μmであり、水分含量は4%である。
この工程により、予め安定化され、乾燥した、中間の均一な粉末を得ることができる。
【0111】
2.含浸剤での含浸工程
含浸は、温度や湿度が調整された雰囲気で、高速ミキサー中で行われ、次の工程を含む:
成分(乾燥した中間の粉末エキスのキログラム当たり0.2 kgの乾燥CMCエキス)を30秒間予備混合する、
乾燥した中間の粉末エキスのキログラム当たり水0.4 kgの割合で撹拌しながら30秒間に加える、そして
最終的に 30秒間混合する。
【0112】
上記の物質は、空気のキログラム当たり水2g未満を含む入口空気で、入口温度50℃、最高出口温度40℃の流動床乾燥機で乾燥される。
得られる高密度化され、微細粒化された粉末は、7%の水分含量を有する。
【0113】
3.粘着剤でのコーティング工程
7%のCMC水溶液を60〜70℃に加熱する。沈積されたCMCの量は、被覆される乾燥高密度化微細粒化粉末のキログラム当たり、乾燥CMCエキス 0.66 kgである。
この工程で得られた粉末は、平均粒子径350μmおよび水分含量7%を有し、コア中のバクテリアを安定化するために水の活性は0.2未満である。
【0114】
最終物質として得られた安定な粉末組成物は、次の組成を有する:精製バクテリア醗酵媒体の乾燥エキス10%、澱粉の乾燥エキス50%(40%は担体として用いられ、10%は含浸剤として用いられる)および粘着剤として用いられる乾燥CMCエキス40%。
さらに、上記の粉末組成物は、水分含量7%、および密度450g/lを有する:
【0115】
実施例4:抗生物質を含有する安定な粉末組成物の製造
センシティブな物質が抗生物質であり、担体が穀粉であり、含浸剤および粘着剤がCMCからなる安定な粉末組成物の製造方法の実験的プロトコールを以下に記載する。
【0116】
1.共−混合工程
(DM)96.4%を含む粉末の形態にある抗生物質タイロシン10kgを、小麦粉13kgと混合する。
得られた粉末のD(v,0.5)としての平均粒子径は40 μmであり、水分含量は4.7%である。
この工程により、水に関連して予め安定化され、乾燥した、中間の均一な粉末を得ることができる。
【0117】
2.含浸剤での含浸工程
温度や湿度が調整された雰囲気で、高速ミキサー中で行われ、次の工程を含む:
成分(乾燥した中間の粉末エキスのキログラム当たり0.4 kgの乾燥CMCエキス)を90秒間予備混合する、
乾燥した中間の粉末エキスのキログラム当たり水0.1 kgの割合で、撹拌しながら60秒間水を加える、そして
最終的に60秒間混合する。
上記の物質は、空気のキログラム当たり水2g未満を含む入口空気で、入口温度60℃、最高出口温度50℃の流動床乾燥機で乾燥される。
得られた高密度化され、微細粒化された粉末は、7%の水分含量を有する。
【0118】
3.粘着剤でのコーティング工程
7%のCMC水溶液を60〜70℃に加熱する。沈積されたCMCの量は、被覆される乾燥高密度化微細粒化粉末エキスのキログラム当たり、乾燥CMCエキス 0.14 kgである。
この工程で得られた粉末は、平均粒子径500μmおよび水分含量5.6%を有し、適用する間、混合物中の抗生物質を安定化するために、水の活性は0.2未満である。
【0119】
最終物質として得られた安定な粉末組成物は、次の組成を有する:抗生物質乾燥エキス27.5%、乾燥担体エキス35%、乾燥CMCエキス37.5%(25%は含浸工程用であり、12.5%はコーティング工程用である)。
さらに、上記の安定な粉末組成物は、密度450g/lを有する:
【0120】
実施例5:カロテノイド類の混合物を含有する安定な粉末組成物の製造
センシティブな物質がアスタキサンチン55%含有カロテノイド類の混合物であり、担体が炭酸カルシウムであり、含浸剤および粘着剤がCMCからなる安定な粉末組成物の製造方法の実験的プロトコールを以下に記載する。
【0121】
1.共−乾燥工程
乾燥物質(DM) 15%を有するアスタキサンチンを豊富に含む発酵媒体400kg/時間を、100×105 Paで噴霧し、炭酸カルシウムタイプの担体上で20kg/時間の割合で、低温で、連続的に共−乾燥する。
− 入り口空気温度:130℃
− 出口空気温度:50℃
− 静止床中の空気温度:40℃
乾燥エキスの配分は、次のとおりである:カロテノイド類の溶液の乾燥物質75% および炭酸カルシウム担体25%。
得られた粉末のD(v,0.5)としての平均粒子径は105 μmである。
この工程により、予め安定化され、乾燥した、中間の均一な粉末を得ることができる。
【0122】
2.含浸剤での含浸工程
含浸は、湿った糊状物質用の高速ミキサー(カッター)中で行われ、次の工程を含む:
成分(乾燥した中間の粉末エキスのキログラム当たり0.5 kgの乾燥CMCエキス)を90秒間予備混合する、
乾燥した中間の粉末エキスのキログラム当たり1 kgの割合で、水を90秒間撹拌しながら加える、そして
最終的に 180秒間混合する。
上記の物質は、入口温度70℃、出口温度50℃の流動床乾燥機で乾燥される。
得られた高密度化され、微細粒化された粉末は、8%の水分含量を有する。
【0123】
3.粘着剤でのコーティング工程
7%のCMC水溶液を60〜70℃に加熱する。沈積されたCMCの量は、被覆される乾燥高密度化微細粒化粉末エキスのキログラム当たり、CMC乾燥エキス 0.25 kgである。
この工程で得られた粉末は、平均粒子径300μmおよび水分含量8%を有する。
【0124】
最終物質として得られた安定な粉末組成物は、次の組成を有する:カロテノイド溶液の乾燥エキス40%、担体としての炭酸カルシウムの乾燥エキス13%、乾燥CMCエキス47%(27%は含浸工程用であり、20%はコーティング工程用である)。
さらに、上記の安定な粉末組成物は、水分含量8%および密度510g/lを有する:
【0125】
実施例6:精油を含有する安定な粉末組成物の製造
センシティブな物質が精油であり、担体が小麦粉であり、含浸剤および粘着剤がCMCからなる安定な粉末組成物の製造方法の実験的プロトコールを、以下に記載する。
【0126】
1.共−混合工程
ニンニクの精油50kg/時間を、小麦粉タイプの担体上に54 kg/時間の割合で、低温で、150×105 Paで噴霧して、連続的に共−混合する。
− 入り口空気温度:20℃
乾燥エキスの配分は、次のとおりである:ガーリックの精油の乾燥物質50% および小麦粉担体50%。
得られた粉末のD(v,0.5)としての平均粒子径は50μmであり、水分含量は7%である。
この工程により、予め安定化された、中間の均一な粉末を得ることができる。
【0127】
2.含浸剤での含浸工程
含浸は、湿った糊状物質用の高速ミキサー(カッター)中で行われ、次の工程を含む:
成分(乾燥した中間の粉末エキスのキログラム当たり0.15 kgの乾燥CMCエキス)を120秒間予備混合する、
乾燥した中間の粉末エキスのキログラム当たり水1 kgの割合で、水を90秒間、撹拌しながら加える、そして
最終的に 180秒間混合する。
上記の物質は、入口温度50℃、出口温度40℃の流動床乾燥機で乾燥される。
得られた高密度化され、微細粒化された粉末は、7%の水分含量を有する。
【0128】
3.粘着剤でのコーティング工程
7%のCMC水溶液を60〜70℃に加熱する。沈積されたCMCの量は、被覆される乾燥高密度化微細粒化粉末エキスのキログラム当たり、CMC乾燥エキス 0.18 kgである。
この工程で得られた粉末は、平均粒子径450μmおよび水分含量8%を有する。
【0129】
最終物質として得られた安定な粉末組成物は、次の組成を有する:ニンニク精油の乾燥エキス37.5%、担体としての小麦粉乾燥エキス37.5%、CMC乾燥エキス25%(10%は含浸工程用であり、15%はコーティング工程用である)。
さらに、上記の安定な粉末組成物は、水分含量8%および密度550g/lを有する。
【0130】
実施例7:酵素の混合物を含む安定な粉末組成物の顕微鏡的な特徴づけ
1.実験プロトコール
2つのタイプの安定な粉末組成物を、走査電子顕微鏡を用いて観察した:
− GLATT(商標)またはAEROMATIC(商標)タイプの標準的なコーティング方法を用いて得られた、乾燥エキスのパーセントとしてCMCを55%含む粉末組成物、および
− INNOJET(商標)装置で開発された革新的な含浸システムによるコーティング方法を用い、ROTOJET(商標)ノズルで得られた、乾燥エキスのパーセントとしてCMCを35%含む粉末組成物。
【0131】
標準的なコーティング方法は、被覆されるべき材料を空気流中に懸濁させ、ビルドアップされた流動床中にコーティング液をスプレーすることにより、固体の担体を物質の層で被覆することからなる。
革新的なシステムを用いるコーティング方法は、保護フィルムを形成するために、単分散性のエアゾルで連続的に粘着剤をスプレーすることからなる。そうすることにより、粒子の密度を改善し、沈積される粘着剤の量を制限するために、より効果的に均一な粒子が得られる。
【0132】
このシステムにより、粒子がノズルを高流速で均一に通過することができる。
かくして、標準的なコーティング方法(図2〜4参照)と比べて、革新的な方法では粘着剤の沈積がより規則正しく、コンパクトで、かつ高密度化されている(図5〜7参照)ことが観察され、したがって用いられるCMCの量を有利な方法で低減させることができる。
【0133】
2.結果
粒子のコアを被覆する保護フィルム(すなわちコーティング)は、走査電子顕微鏡で見ることができる。
標準的なコーティング方法の場合には、部分的に孔が存在して、粒子の異質性が認められ、それゆえ形成された孔の中に粘着剤を沈積させるのが困難である(図2,3および4参照)。
革新的な含浸システムでのコーティング方法により得られた、CMCをより少なく含む粒子は、よりコンパクトであり、より高密度である(図5、6および7参照)。
【0134】
実施例8:安定な粉末組成物中に含まれる酵素の温度および圧力に対する耐性
1.顆粒を製造する実験のプロトコール
目的は、成長促進用食料ベースの養鶏飼料に添加される酵素を含む粉末組成物からなる調製物の、造粒後の酵素活性を試験することである。
以下に記載するプロトコールに従って、3つのコンディショナー・アウトプット加工温度(80、85および90℃)が各混合物について用いられた。
【0135】
1.1. 酵素含有製剤
試験1:
60 rpm で回転する水平翼を備えたミキサーを用いて、成長促進用食料ベースの養鶏飼料59.998 kgおよび粉末組成物3g からなる混合物60 kgを調製した。混合は2分間続けた。
【0136】
試験2:
粉末組成物2 gおよび成長促進用食料ベースの養鶏飼料498 gで、予備混合物500gを製造した。
60 rpm で回転する水平翼を備えたミキサーを用いて、成長促進用食料ベースの養鶏飼料39.500 kgおよび上記の予備混合物で調製された混合物40 kgを調製した。混合は2分間続けた。
【0137】
用いられた粉末組成物は、次のものからなる:
− ADISSEO France SASにより販売されている製品ROVABIO EXCEL APに相当する、保護されていない製品AおよびCのための標準的な組成物であり、小麦粉80%およびセンシティブな物質20%を含む、および
−センシティブな物質20%、小麦粉担体25%、および製品Bについて(含浸剤および粘着剤として用いられた)CMC 55%、または製品DおよびEについてCMC 35% を含む、保護された本発明による組成物。
上記の粉末組成物の、成長促進用食料ベースの養鶏飼料中への配合割合は、50 g/T である。
【0138】
同じバッチのセンシティブな物質、すなわちペニシリウム・フニクロスム(funiculosum )(IMI 378536)から得られた濃縮濾過発酵麦芽汁から調製されたこれらの異なった組成物は、19の酵素活性を含んでおり、そのうち最も重要なものはキシラナーゼ、β−グルカナーゼおよびセルラーゼであり、市販製品ROVABIO EXCEL APはこれをベースとしている。
【0139】
上記の混合物(試験1または2)は、バッグに入れられる前に直方体の容器に移された。混合物の代表的なサンプルおよそ1 kgをとり、直方体の容器中で4等分することにより、20サンプルのグループを得た。
【0140】
1.2 造粒工程
平らなダイを備えたラボラトリー・プレス (3 kW KAHL 14-175 プレス) で造粒試験を行った。用いられたプレス・ダイは、直径4 mmおよび厚さ24 mm (圧縮レート: 6)のチャンネルを有している。
各造粒試験について、ダイを去り、集められる熱い顆粒のサンプルを乾燥し冷却するために、ラボラトリー・クーラー−ドライヤーが用いられた。冷却−乾燥時間は、クーラー当たり、およそ熱い顆粒の1装填3.5 kgについて少なくとも5分間であった。
顆粒の各製造バッチから代表的なサンプル約500 gをとった。
【0141】
1.3 造粒のチェック用に意図されたサンプルの取得および測定
測定およびサンプルは、プレス(一定の流速、安定した電力消費、および温度)の安定した操作の間に取られた。
ダイの中の水分含量および滞留時間の測定は、各試験の安定化されたフェーズの間に採取されたサンプルに基づいて行われた。
特徴づけおよびプレス操作パラメーターは、試験中にノートされ記録された(添付の造粒チャート参照)。
【0142】
スチーム測定
蒸気圧および流速は、取得ソフトウェアにより、1秒間に1回記録された。
蒸気の調整バルブの開は調整ユニット上、手で記録された。
【0143】
温度および水分含量の測定
温度(室内空気、コンディショナー前後の製剤、ダイ)は、取得ソフトウェアにより、1秒間に1回記録された。
ダイの温度は、顆粒の温度に相当する。
水分含量の測定は、5gのサンプルをオーブン中、103℃で4時間乾燥した後に行われた。測定はすべて2回行われた。
【0144】
ビス・スクリュー・フィーダーのセット・ポイントの測定:
この測定は、各試験の途中で手動で行われた。
【0145】
プレス・アウトプットの測定
プレス・アウトプットは、ダイを去るサンプルを30秒間にわたって秤量することにより行われた。
【0146】
電力消費量の測定
変圧器により計算したこの測定は、取得ソフトウェアにより、1秒間に1回記録された。
アウトプットでもって、このパラメーターにより、ネット・スペシフィック・プロダクション(kg/kWh)およびネット・スペシフィック・コンサンプション(kWh/T)を計算することができる。
【0147】
顆粒のダイ中の滞留時間の測定:
この測定は、プレスのアウトプットに関連して計算される。この計算は、顆粒20 cmの重量を測ることにより行われる。
造粒パラメーターは、次の表に示されており、物質の各変化フェーズについてまとめられている。
【0148】
【表2】

【0149】
* 各試験中の読取値
** 試験記録中の平均 (毎秒1つの値)
*** 2回測定の平均
【0150】
【表3】

【0151】
*試験記録中の平均 (毎秒1つの値)
** 2回の測定の平均
【0152】
【表4】

【0153】
*試験記録中の平均 (毎秒1つの値)
**試験記録中の計算(ダイの温度-コンディショナーを出る製剤の温度)
*** 顆粒20 cmの重量から計算
**** 30秒間サンプリングして測定
【0154】
プレスの調整ポイントは次のとおりである:
流速:約41 kg/時間、
コンディショナーからの出口の処理温度:80、85および90℃
蒸気圧:1.6x105 Pa、
ナイフのカッティング高さのセッティング:10 mm。
【0155】
2.酵素活性を測定するための実験プロトコール
2.1.DNS方法によるβ−グルカナーゼ
この試験は、大麦からのβ−グルカン、すなわちβ-1,3(4)-グルカンの酵素的加水分解に基づいている。反応生成物は、3,5-ジニトロサリチル酸(DNS)を用いて、還元基の増加を測定することによる比色により測定される。酵素的加水分解後に得られる還元糖の濃度は、吸光度が540 nm で測定される標準的なグルコースの曲線を用いて測定される。計算された酵素活性は、グルコース等量で表される。
【0156】
pH 5.0の0.1 M酢酸ナトリウム緩衝液中に1% β-グルカン溶液(m/V) 1 mlを含む溶液、および適当なレベルに希釈された酵素の溶液1 mlを、50℃で10分間培養する。DNS溶液(蒸留水中の1% (m/V) 3,5-ジニトロサリチル酸、1.6% (m/V) NaOH, 30% (m/V) 酒石酸カリウムナトリウム (+)) 2 mlを加えて、酵素反応を止める。溶液をホモゲナイズし、次いで少なくとも95℃の沸騰水浴中に置き、次いで(5分間かけて)水浴中で室温に冷却する。この溶液に超純水10mlを加え、光路長1cm を有するガラスセル中、540 nmで吸光度を測定する。
酵素溶液の前にDNS を加えた参照液について得られた値で、吸光度を補正する。
【0157】
上記の試験のようにDNSで処理されたグルコース濃度0.00〜0.04% (m/V)にわたる種々の標準溶液と比較して、上記の結果を還元糖のμモルに変換する。
エンド-1,3(4)-β-グルカナーゼ活性の1単位は、試験条件(pH 5.0 および50℃)の下で、1分当たり、物質のグラム当たり、1 μモルのグルコース等量を生成する酵素の量として定義される。
【0158】
2.2.DNS法によるキシラナーゼ
この試験は、バーチ・キシラン、β-D-1,4 リンケージを含むキシロースポリマーの酵素的加水分解に基づいている。反応生成物は、3,5-ジニトロサリチル酸を用いて、還元基の増加を測定することによる比色により測定される。酵素的加水分解後に得られる還元糖の濃度は、吸光度が540 nm で測定される標準的なキシロースの曲線を用いて測定される。計算された酵素活性は、キシロース等量で表される。
【0159】
pH 5.0の0.1 M酢酸ナトリウム緩衝液中に1% バーチ・キシラン溶液(m/V) 1 mlを含む溶液、および適当なレベルに希釈された酵素の溶液1 mlを、50℃で10分間培養する。DNS溶液(蒸留水中の1% (m/V) 3,5-ジニトロサリチル酸、1.6% (m/V) NaOH、30% (m/V) 酒石酸カリウムナトリウム (+)) 2 mlを加えて、酵素反応を止める。溶液をホモゲナイズし、次いで少なくとも95℃の沸騰水浴中に置き、次いで(5分間かけて)水浴中で室温に冷却する。この溶液に超純水10mlを加え、光路長1cm を有するガラスセル中、540 nmで吸光度を測定する。
酵素溶液の前にDNS を加えた参照液について得られた値で、吸光度を補正する。
【0160】
上記の試験のようにDNSで処理されたキシロース濃度0.00〜0.04% (m/V)にわたる種々の標準溶液と比較して、上記の結果を還元糖のμモルに変換する。
エンド-1,4-β-キシラナーゼ活性の1単位は、試験条件(pH 5.0 および50℃)の下で、1分当たり、物質のグラム当たり、1 μモルのキシロース等量を生成する酵素の量として定義される。
【0161】
2.3.ビスコーシメトリー(viscosimetry)法によるキシラナーゼ
この方法は、食品中のエンド-1,4-β-キシラナーゼ活性を測定する特殊なものである。エンド-1,4-β-キシラナーゼは、キシランのキシロシディック・リンケージを加水分解する。
この試験は、小麦からのアラビノース、アラビノースで置換されたβ-1,4-キシランポリサッカライドの溶液のキシローシック・リンケージの酵素的加水分解に基づいている。この酵素活性は、試験されるべき酵素の存在下における小麦のアラビノキシラン溶液の粘度の低下に比例している。
エンド-1,4-β-キシラナーゼの1単位は、試験条件:pH 5.5 および 30℃の下で、基質を加水分解して、1分当たり、1ディメンションレス単位の相対的な流動性の変化を生じて、溶液の粘度を低下させる酵素の量として定義される。
【0162】
3.結果
【表5】

【0163】
これらの結果は、異なった粉末組成物において、主な酵素活性が、当初の酵素濃度に比して、保持されていることを示している。
【0164】
【表6】

* 粘性により測定したキシラナーゼ活性
【0165】
上記の表6に挙げられた結果は、本発明による粉末組成物がセンシティブな物質に与えた安定性を示している。
保護されていない酵素は80℃でその活性の1/4を失っているが、保護された酵素はその活性を100% 保持している(表1)。
【0166】
保護された酵素は、85℃より高い温度で、その活性を80%より高く保持している。
試験1および2で同等の保護が得られていることは、留意されるべきである。試験1および2はCMC をそれぞれ55%および35%含む粉末組成物に対応している。
【0167】
CMCの含量35% で得られた粒子は、圧力および密度が大きければ大きいほど、CMCの量が少なくても酵素の安定性を保持することができる。
酵素の保護の程度を同等に維持しながら、用いられるCMC の%を減らすことができ、特にCMC 20%まで減らすこともできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
-センシティブな物質およびこのセンシティブな物質に対する含浸剤としての少なくとも一つの粘性化合物を含むコア、および
-粘着剤としての少なくとも一つの粘性化合物を含む、上記のコアに対するコーティング
を含む粒子を含む粉末組成物中に含まれる、20℃〜100℃の温度および/または106〜107 Paの圧力および/または60%〜100%の相対湿度に対して、センシティブな物質の分解を実質的に防ぐための、粘度が5 Pa.s-1より高い少なくとも一つの粘性化合物の使用。
【請求項2】
粘性化合物が、植物性ガムもしくは発酵産物、澱粉ベース、キチン類、またはカルボキシメチルセルロース、(CMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロースもしくは微結晶性セルロースのようなセルロース誘導体から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
コアがセンシティブな物質のための少なくとも一つの担体を含む、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
センシティブな物質が粉末組成物の乾燥エキス5〜40%、好ましくは10〜30%を表し、担体が粉末組成物の乾燥エキス10〜60%、好ましくは20〜50%を表し、含浸剤が粉末組成物の乾燥エキス5 〜40%、好ましくは10〜30%を表し、粘着剤が粉末組成物の乾燥エキス5〜 30%、好ましくは10〜20%を表す、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
センシティブな物質がβ-グルカナーゼ、キシラナーゼおよびセルラーゼから主に構成される酵素の混合物からなり、担体が小麦粉からなり、含浸剤および粘着剤がカルボキシメチルセルロース(CMC)からなる、請求項3に記載の使用。
【請求項6】
-温度20℃〜100℃、および/または圧力106〜107 Pa、および/または相対湿度60%〜100%に対してセンシティブな少なくとも一つの物質、およびセンシティブな物質に対する含浸剤としての5 Pa.s-1より高い粘度を有する少なくとも1つの粘性化合物を含むコア、ならびに
-5 Pa.s-1より高い粘度を有する粘着剤としての少なくとも一つの粘性化合物を含む、上記のコアに対するコーティング
を含む粒子を含み、
センシティブな物質がヒト以外の動物食品用の酵素でない安定な粉末組成物。
【請求項7】
粘性の化合物が、植物性ガムもしくは発酵産物、澱粉ベース、キチン類、またはカルボキシメチルセルロース、(CMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロースもしくは微結晶性セルロースのようなセルロース誘導体から選択される、請求項6に記載の安定な粉末組成物。
【請求項8】
センシティブな物質が、プロテイン類、ビタミン類、バクテリア、酵母類、抗酸化剤、カロテノイド類、精油類、または抗生物質のような医薬的に活性な物質から選択される、請求項6に記載の安定な粉末組成物。
【請求項9】
コアがセンシティブな物質のための少なくとも一つの担体を含む、請求項6〜8のいずれか一つに記載の安定な粉末組成物。
【請求項10】
担体が、澱粉、穀粉、とりわけ小麦、コーン、カッサヴァもしくは米の粉、タルク、ビートパルプ、マルトデキストリン、炭酸カルシウムのような塩またはコーン蒸留酒製造所の穀粒である、請求項9に記載の安定な粉末組成物。
【請求項11】
含浸剤および粘着剤が同一物である、請求項6〜10のいずれか一つに記載の安定な粉末組成物。
【請求項12】
含浸剤および粘着剤がカルボキシメチルセルロース(CMC)を含むか、CMCからなる、請求項11に記載の安定な粉末組成物。
【請求項13】
センシティブな物質が粉末組成物のエキス5〜40%、好ましくは10〜30%、担体が粉末組成物の乾燥エキス10〜60%、好ましくは20〜50%、含浸剤が粉末組成物の乾燥エキス5〜40%、好ましくは10〜30%、および粘着剤が粉末組成物の乾燥エキス5〜30%、好ましくは10〜20%を表す、請求項9に記載の安定な粉末組成物。
【請求項14】
-温度20℃〜100℃、および/または圧力106〜107 Pa、および/または相対湿度60%〜100%に対してセンシティブな少なくとも一つの物質、センシティブな化合物に対する含浸剤としての5 Pa.s-1より高い粘度を有する少なくとも1つの粘性化合物を含むコア、ならびに
-5 Pa.s-1より高い粘度を有する粘着剤としての少なくとも一つの粘性化合物を含む、上記のコアに対するコーティングを含む粒子を含む安定な粉末組成物の製造方法であって、
上記のセンシティブな物質および上記の含浸剤の混合物を微細粒化してコアを得る工程、および上記のコアを粘着剤でコーティングする工程を含む製造方法。
【請求項15】
-温度20℃〜100℃、および/または圧力106〜107 Pa、および/または相対湿度60%〜100%に対してセンシティブな少なくとも一つの物質、センシティブな化合物に対する含浸剤としての5 Pa.s-1より高い粘度を有する少なくとも1つの粘性化合物およびセンシティブな物質のための少なくとも1つの担体を含むコア、ならびに
-5 Pa.s-1より高い粘度を有する粘着剤としての少なくとも一つの粘性化合物を含む、上記のコアに対するコーティングを含む粒子を含む安定な粉末組成物の製造方法であって、
上記のセンシティブな物質、上記の担体および上記の含浸剤の混合物を微細粒化してコアを得る工程、および上記のコアを上記の粘着剤でコーティングする工程を含む製造方法。
【請求項16】
共−乾燥された上記のセンシティブな物質および上記の担体、ならびにすべての含浸剤の混合物を微細粒化する工程を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
共−乾燥された上記のセンシティブな物質、上記の担体およびすべての含浸剤の混合物を微細粒化する工程を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
共−乾燥された上記のセンシティブな物質および上記の担体および一部の含浸剤の混合物、ならびに残りの含浸剤を微細粒化する工程を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
特に液体の形態にあるセンシティブな物質、センシティブな物質のための特に乾燥形態にある担体、および任意にすべての、もしくは一部の含浸剤を含む混合物を共−乾燥する工程を含み、上記の共−乾燥が出口温度60℃未満、粉末の温度45℃未満で行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
− 特に液体の形態にあるセンシティブな物質、およびセンシティブな物質のための特に乾燥形態にある担体を含む混合物を、出口温度60℃未満、粉末の温度45℃未満で共−乾燥して、中間の均一な粉末を得る工程、および
− 中間の均一な粉末を好ましくは固体の形態にある含浸剤とともに微細粒化して、被覆されていない粒子からなる高密度化され、微細粒化された粉末を得る工程を含む、請求項15〜19のいずれか一つに記載の方法。
【請求項21】
− 特に液体の形態にあるセンシティブな物質、特に乾燥形態にあるセンシティブな物質の担体、およびセンシティブな物質の少なくとも一つの担体を含む混合物を、出口温度60℃未満および粉末温度45℃未満で、共−乾燥して、中間の均一な粉末を得る工程、
− 中間の均一な粉末を特に固体の形態にある含浸剤とともに微細粒化して、前記のコアに相当する被覆されていない粒子からなる、高密度化され、微細粒化された粉末を得る工程、
− 高密度化され、微細粒化された粉末の被覆されていない粒子を液体の形態にある粘着剤でコーティングして、被覆された粉末を得る工程
を含む、請求項15〜20のいずれか一つに記載の方法。
【請求項22】
− 特に液体の形態にあるセンシティブな物質、センシティブな物質のための少なくとも一つの特に乾燥形態にある担体を含む混合物を、出口温度60℃未満および粉末温度45℃未満で、共−乾燥して、中間の均一な粉末を得る工程、
− 中間の均一な粉末を特に固体の形態にある含浸剤とともに微細粒化して、前記のコアに相当する被覆されていない粒子からなる、高密度化され、微細粒化された粉末を得る工程、
− 高密度化され微細粒化された粉末を、任意に45℃未満の温度で低温乾燥して、高密度化され、微細粒化された乾燥粉末を得る工程、
− 任意に篩過して、高密度化され、微細粒化され、篩い分けられた粉末を得る工程、
− 任意に乾燥され、任意に篩い分けられた、高密度化され、微細粒化された、被覆されていない粒子を、好ましくは液体の形態にある粘着剤でコーティングして、被覆された粉末を得る工程、および
− 被覆された粉末を乾燥して、安定な粉末組成物を得る工程
を含む、請求項15〜21のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項23】
-温度20℃〜100℃および/または圧力106〜107 Pa および/または相対湿度60%〜100%に対してセンシティブな少なくとも一つの物質、および上記のセンシティブな物質に対する含浸剤としての5 Pa.s-1 より高い粘度を有する少なくとも一つの粘性の化合物を含むコア、および
-粘着剤としての、5 Pa.s-1 より高い粘度を有する少なくとも一つの粘性の化合物を含む、上記のコアに対するコーティング
を含み、
センシティブな物質が当初の活性の少なくとも80%、特に少なくとも90%を保持している粒子を含む安定な粉末組成物を、医薬的に許容される担体と組み合わせて含む医薬組成物。
【請求項24】
請求項6〜13のいずれか一つに記載の安定な粉末組成物および少なくとも一つの食品物質を含む食品組成物であって、該組成物においてセンシティブな物質は、ヒト以外の動物食品用の酵素でなく、当初の活性の少なくとも80%、特に少なくとも90%を保持している食品組成物。
【請求項25】
ペレットまたは顆粒の形態で提供されることを特徴とする、請求項24に記載の食品組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−534226(P2010−534226A)
【公表日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517443(P2010−517443)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【国際出願番号】PCT/FR2008/001069
【国際公開番号】WO2009/043988
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(510019163)
【氏名又は名称原語表記】INNOV’IA
【住所又は居所原語表記】4, rue Samuel Champlain, Zone Agrocean−Chef de baie, F−17000 La Rochelle, France
【Fターム(参考)】