説明

安定化コリンエステラーゼ基質溶液

【課題】溶解コリンエステラーゼ基質の長期間にわたる保存可能方法の提供。
【解決手段】緩衝液中で少なくとも1つの基質が少なくとも1種の極性有機溶媒によって安定化されている、コリンエステラーゼ基質溶液の安定化のための極性有機溶媒の使用、及びサンプル中のコリンエステラーゼ活性を測定するためのこの溶液の使用に関する。また、少なくとも1つの基質が少なくとも1種の極性有機溶媒によって安定化されている、サンプル中のコリンエステラーゼ活性を測定するための安定化コリンエステラーゼ基質溶液が含まれる。 さらに、サンプル中のコリンエステラーゼ活性の測定方法、並びにサンプル中のコリンエステラーゼ活性を測定するためのキット及びサンプル中のコリンエステラーゼ活性の測定方法を実施するためのキットに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体サンプルにおける酵素活性測定の分野に関する。さらに具体的には、本発明は、コリンエステラーゼ基質溶液の安定化のための極性有機溶媒の使用、及びサンプル中のコリンエステラーゼ活性測定のための該溶液の使用に関する。さらに、コリンエステラーゼ活性測定のための方法及びキットを提供する。
【背景技術】
【0002】
コリンエステラーゼは、アシルエステルのアルコールとカルボン酸への加水分解を触媒する、1つの酵素活性の一般名称である。コリンエステラーゼは、フェニルアルコール、インドキシルアルコールなどのアルコール部分、及び好ましくはコリンを有する基質、並びに炭酸、ジカルボン酸、及び安息香酸などのカルボン酸部分を有する基質などの多様な基質に作用する(Brownら, Adv. Clin. Chem., 22:1-123 (1981))。カルボン酸部分に対する特異性に基づき、コリンエステラーゼは2つのグループに分類される。「真のコリンエステラーゼ」すなわちアセチルコリンエステラーゼ(アセチルコリンアセチルヒドロラーゼ、EC 3.1.1.7)は、アセチル部分について際立った選択性を示し、一方「疑似コリンエステラーゼ」すなわちアシルコリンエステラーゼ(アシルコリンアシルヒドロラーゼ、EC 3.1.1.8)は、ブチリル又はベンゾイルなどのより大きなカルボン酸部分を有する基質を好んで加水分解する。
【0003】
アセチルコリンエステラーゼは、神経系内及び神経と筋肉との間のシグナル伝達において最も重要な役割を果たす。アセチルコリンエステラーゼは、赤血球中にも存在する。この酵素は、サリンなどの神経ガスによって不可逆的に不活性化されるが、殺虫剤中毒においても不活性化される。
【0004】
アシルコリンエステラーゼの生物学的機能は知られていない。アシルコリンエステラーゼは、膵臓、心臓、腸粘膜、血清、脳の白質及び肝臓に見られる。
【0005】
コリンエステラーゼ及びその活性の測定は、特に臨床的関心事となっている。肝臓起源であることが明らかであるという理由から、活性の測定は主にアシルコリンエステラーゼに適用される。肝機能の指標として検出されるため、この酵素はまた、疑わしい殺虫剤中毒の臨床指標としても用いられる。筋弛緩剤の分解遅延によって引き起こされる遷延性無呼吸の予防を目的として、アシルコリンエステラーゼの術前スクリーニングによりこの酵素の異型を有する患者を認定することができる。減少レベルのアシルコリンエステラーゼは、有機リン化合物、肝炎、肝硬変、心筋梗塞、急性感染症による中毒及びこの酵素の異型に関連して見られる。
【0006】
生体サンプルにおけるコリンエステラーゼ活性の検出方法は、従来技術に記載されている(Burtis及びAshwood(編), Tietz fundamentals of clinical chemistry-第4版, ISBN 0-7216-3763-9)。一般的な試験原理は、アセチルチオコリン、プロピオニルチオコリン、ブチリルチオコリン及びスクシニルビスチオコリンなどのチオコリンエステルの使用に基づく。これらの中で、アセチルチオコリン及びプロピオニルチオコリンのみがアセチルコリンエステラーゼの測定に役立つ。血清アシルコリンエステラーゼは、これらの基質全てに対して活性を有するが、好ましくはスクシニルビスチオコリン及び、特にブチリルチオコリンを用いて測定される。これらのチオエステルは全て、チオエステル結合の加水分解のため水溶液中で不安定である。冷蔵保存された試薬液の安定性が低いことは、数名の著者によって立証されており、例えば、アセチルチオコリン、7日(Whittaker M. Cholinesterases. In: Bergmeyer HU, 編; Methods of Enzymatic Analyses, 第3版, Weinheim Verlag Chemie, 1984:52-74);プロピオニルチオコリン、1日(Dietzら, Colorimetric Determination of Serum Cholinesterase and Its Genetic Variance by the Propionylthiocholine-Dithiobis(nitrobenzoic Acid) Procedure. Clinical Chemistry 1973;19:1309-1313); ブチリルチオコリン、30日(Schmidt E.ら, Proposal of Standard Methods for the Determination of Enzyme Catalytic Concentrations in Serum and Plasma at 37°C. Eur.J.Clin.Chem.Clin.Biochem.1992;30:163-170)が挙げられる。上記アシルコリンエステラーゼの基質の幾つかもまた、アセチルコリンエステラーゼ、アリールエステラーゼ(アリールエステルヒドロラーゼ、EC 3.1.1.2)、及びアルブミンによっても開裂するが、ブチリルチオコリン(BTC; Knedel及びBottger, Klin Wschr 45:325-327 (1967))はこれらの不利益を受けない。従って、BTCは通常、最も特異的な基質の一つと考えられ、国が推奨するコリンエステラーゼアッセイ法に選ばれる(Association of Clinical Biochemists, News Sheet Assoc. Clin. Biochemists, Suppl. 202:31s-36s (1980);Cholinesterase, In: Kommentare zum Arzneibuch der Deutschen Demokratischen Republik, Heft 2: Enzym-Aktivitatsbestimmung in der Laboratoriumsdiagnostik, Akademie-Verlag, Berlin, 56-65 (1988))。アシルコリンエステラーゼ活性に依存して、BTCはチオコリンと酪酸へと加水分解される。
【0007】
チオコリンは、5,5'-ジチオビス-2-ニトロベンゾエート(DTNB)と反応して、黄色色素5-メルカプト-2-ニトロベンゾエートの形成をもたらす。
【化1】

【0008】
5-メルカプト-2-ニトロベンゾエートの生成率は、アシルコリンエステラーゼの触媒活性に正比例し、480nmの波長における吸光の増大に準じて測定される。基質の特異性によって、血清を用いて行われる試験は、限界の溶血のために赤血球から放出されるアセチルコリンエステラーゼによる干渉を受けない。
【0009】
別のアシルコリンエステラーゼアッセイにおいて、Knedel及びBottger, Klin. Wschr. 45:325-327 (1967)による試験原理は改変され、アシルコリンエステラーゼ駆動反応の産物としてのチオコリンが、黄色ヘキサシアノ鉄酸(III)をほぼ無色のヘキサシアノ鉄酸(II)へと即時に還元し、このようにして反応の直接分光モニタリングもまた可能となる。
【0010】
ヒト血清中のアシルコリンエステラーゼの触媒活性測定のための最適反応条件は、研究され且つ確立されている(Schmidtら, Eur. J. Clin. Chem. Clin. Biochem. 30(3): 163-170 (1992))。これらの条件は、酵素反応速度論並びに手動での実施及び機械による実施の技術的側面の両方を考えに入れたものである。これらの条件は、必ずしも最大限の変換率を提供するものではなく、この方法の最高の利用可能なロバスト性のみを提供する。
【0011】
しかし、チオエステル化合物としてのブチリルチオコリンが自己加水分解しやすいため、根本的且つ未解決の問題はBTCの低い安定性である。従って、真のアシルコリンエステラーゼ活性を得るためには、BTCのターンオーバーからアッセイ条件下のBTCの自発的開裂を常に差し引かなければならない。基質濃度及びバッファー条件を最適化することによって、この試薬ブランク反応をある程度最小化することができるということが知られている。溶液中のBTCの安定性は、保存時間の増加に伴って著しく減少するため、この安定性についての必須の前提条件は、新たに調製したBTC溶液の供給である。現在のところ、これはBTC顆粒の再構成によってのみ達成することが可能であり、その工程は複雑且つ時間がかかる。
【非特許文献1】Brownら, Adv. Clin. Chem., 22:1-123 (1981)
【非特許文献2】Burtis及びAshwood(編), Tietz fundamentals of clinical chemistry-第4版, ISBN 0-7216-3763-9
【非特許文献3】Whittaker M. Cholinesterases. In: Bergmeyer HU, 編; Methods of Enzymatic Analyses, 3rd edition, Weinheim Verlag Chemie, 1984:52-74
【非特許文献4】Dietzら, Colorimetric Determination of Serum Cholinesterase and Its Genetic Variance by the Propionylthiocholine-Dithiobis(nitrobenzoic Acid) Procedure. Clinical Chemistry 1973;19:1309-1313)
【非特許文献5】Schmidt E.ら, Proposal of Standard Methods for the Determination of Enzyme Catalytic Concentrations in Serum and Plasma at 37°C. Eur.J.Clin.Chem.Clin.Biochem.1992;30:163-170
【非特許文献6】BTC; Knedel及びBottger, Klin Wschr 45:325-327 (1967)
【非特許文献7】Association of Clinical Biochemists, News Sheet Assoc. Clin. Biochemists, Suppl. 202:31s-36s (1980)
【非特許文献8】Cholinesterase, In: Kommentare zum Arzneibuch der Deutschen Demokratischen Republik, Heft 2: Enzym-Aktivitatsbestimmung in der Laboratoriumsdiagnostik, Akademie-Verlag, Berlin, 56-65 (1988)
【非特許文献9】Knedel及びBottger, Klin. Wschr. 45:325-327 (1967)
【非特許文献10】Schmidtら, Eur. J. Clin. Chem. Clin. Biochem. 30(3): 163-170 (1992)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来技術には、自己加水分解活性の増加を生じさせないで酵素の不存在下におけるBTCなどの溶解コリンエステラーゼ基質の長期間にわたる保存を可能とする、利用可能な試薬がない。コリンエステラーゼアッセイにおける試薬ブランク反応を最小化するため、新たに溶解した基質を供給する必要性から、より大きなサンプルセットにおけるコリンエステラーゼ活性を平行して検出することは、複雑且つ無益だろう。多数のサンプルにおける簡単且つ有効なコリンエステラーゼ活性の検出、例えば自動分析装置におけるハイスループットプロセスを実施することによる検出を、その時点で行うことは不可能である。
【0013】
従って、本発明の根本的な技術的課題は、安定化コリンエステラーゼ基質溶液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的は、少なくとも1つの基質が少なくとも1種の極性有機溶媒により安定化されている、安定化コリンエステラーゼ基質溶液である。
【0015】
本発明はまた、少なくとも1つの基質が少なくとも1種の極性有機溶媒により安定化されている、安定化コリンエステラーゼ基質溶液の使用にも関する。本発明はさらに、緩衝液中で少なくとも1つの基質が少なくとも1種の極性有機溶媒によって安定化されている、コリンエステラーゼ基質溶液の安定化のための極性有機溶媒の使用に関する。また、本発明の範囲内には、サンプル中のコリンエステラーゼ活性を測定するための、少なくとも1つの基質が少なくとも1種の極性有機溶媒により安定化されている安定化コリンエステラーゼ基質溶液が含まれる。
【0016】
さらに本発明は、酵素活性に好適な条件下でこの酵素を含有している疑いがあるサンプルと、少なくとも1つの基質が少なくとも1種の極性有機溶媒により安定化されている安定化コリンエステラーゼ基質溶液を含む試薬とを合わせて混合するステップ、並びにこの酵素の活性をモニタリングするステップを含む、サンプル中のコリンエステラーゼ活性の測定方法に関する。
【0017】
本発明の範囲内には、パッケージ化された組み合わせ中に、コリンエステラーゼ活性に好適な緩衝液を含む第1の試薬、及び少なくとも1つの基質が少なくとも1種の極性有機溶媒によって安定化されている安定化コリンエステラーゼ基質溶液を含む第2の試薬を含む、サンプル中のコリンエステラーゼ活性を測定するためのキットが含まれる。本発明の範囲内にはまた、サンプル中のコリンエステラーゼ活性の測定方法であって、酵素活性に好適な条件下でこの酵素を含有している疑いがあるサンプルと、少なくとも1つの基質が少なくとも1種の極性有機溶媒により安定化されている安定化コリンエステラーゼ基質溶液を含む試薬とを合わせるステップ、並びにこの酵素の活性をモニタリングするステップを含む前記方法を実施するためのキットが含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
驚くべきことに、少なくとも1つのコリンエステラーゼ基質と、少なくとも1種の極性有機溶媒とを組み合わせると、安定化されたコリンエステラーゼ基質溶液が得られることが見出された。従って、本発明は少なくとも1つの基質が少なくとも1種の極性有機溶媒で安定化されている、安定化コリンエステラーゼ基質溶液を提供する。
【0019】
「安定化」という用語は、本発明によるコリンエステラーゼ基質溶液が、基質の著しい不活性化を生じることなく酵素活性の不存在下で保存することができることを意味する。
【0020】
「基質の著しい不活性化を生じることなく」とは、例えば、少なくとも18日の期間の35℃における安定化溶液の保存後、又は少なくとも15ヶ月間4〜8℃で冷蔵する典型的な実験室条件下の保存後、BTCの損失が起こらず、新たに調製しインキュベートした基質溶液を用いて得たCHE触媒濃度のプロット中に、約+/-300 U/l未満の切片及び直線の+/-3%未満の傾きを生じることを意味する。
【0021】
「コリンエステラーゼ」という用語は、アシルエステルの、アルコールとカルボン酸への加水分解を触媒する酵素活性を含む。本発明の範囲内には任意のコリンエステラーゼが含まれ、好ましくはEC 3.1.1.7により規定されるアセチルコリンエステラーゼ又はEC 3.1.1.8により規定されるアシルコリンエステラーゼが含まれる。「コリンエステラーゼ」はまた、コリンエステラーゼに加えて、生物学的な意味でコリンエステラーゼと同様の挙動を示す、すなわちアシルエステルのアルコールとカルボン酸への加水分解を示す、コリンエステラーゼの生物活性サブフォーム、断片及びサブユニットも包含して意味するものと了解されたい。
【0022】
本発明による安定化コリンエステラーゼ基質溶液は、使用前に顆粒から再構成しなければならなかった従来公知のコリンエステラーゼ基質溶液と比較して顕著な利点を有する。本発明による安定化基質溶液の場合、液体試薬であるため、もはや顆粒から再構成する必要はない。これは、コリンエステラーゼ活性検出の一定の精度にとって必須の要件である。再構成、すなわち顆粒を溶液とすることは、通常時間がかかり且つ間違いが発生しやすい。各再構成の後、個別に再構成した基質溶液を用いて得られた実験データを確認するために追加の較正アッセイを行わなければならない。対照的に、安定化コリンエステラーゼ基質溶液が提供されると、試薬瓶の全てのロットに及ぶ組成の均一性が可能となり、これによって精度の向上及び較正アッセイの回数の低減が保証される。
【0023】
本発明の一実施形態において、安定化コリンエステラーゼ基質溶液は、安定化アシルコリンエステラーゼ基質溶液である。本発明の別の実施形態において、安定化コリンエステラーゼ基質溶液は、安定化アセチルコリンエステラーゼ基質溶液である。
【0024】
「コリンエステラーゼ基質」という用語は、アシルエステル類に属する基質を含み、コリンエステラーゼによって加水分解される全ての基質を含む。本発明の一実施形態において、安定化コリンエステラーゼ基質溶液の少なくとも1つの基質は、コリンエステルである。別の実施形態において、安定化コリンエステラーゼ基質溶液の少なくとも1つの基質はチオエステルであり、好ましくはブチリルチオコリン(BTC)又はアセチルチオコリン(ATC)である。
【0025】
「極性有機溶媒」という用語は、炭素原子を含み、且つ有機化合物中で電荷が不均等に分布していて各分子の一方の端が他方の端より正になっているため親水性を有する有機化合物からなる溶媒を指す。本発明の一実施形態において、前記少なくとも1種の極性有機溶媒は、プロトン性極性有機溶媒である。「プロトン性極性有機溶媒」という用語は、その有機溶媒の有機化合物が、「非プロトン性極性有機溶媒」とは対照的に、1つ以上の酸性水素原子を含む有機溶媒を指す。本発明の好ましい実施形態において、前記少なくとも1種のプロトン性極性有機溶媒は、アルコールである。「アルコール」という用語は、一価のアルコールすなわち唯1つのヒドロキシル基を有するアルコール、及び1つより多くのヒドロキシル基を含む多価アルコールを指す。
【0026】
好ましくは、前記少なくとも1種のプロトン性極性有機溶媒は、1〜7個の炭素原子の鎖長を有する群から選択されるアルコールである。本発明の範囲において、1〜7個の炭素原子の鎖長を有するアルコールは、3-メチルヘキサン-3-オールなどの分枝炭素鎖を有するアルコール及びエタノールなどの直鎖炭素鎖を有するアルコールを含む。本発明の好ましい実施形態において、安定化コリンエステラーゼ基質溶液は、少なくとも1つの基質がメタノール、エタノール、プロパノール及びイソプロパノールからなる群から選択されるアルコールによって安定化されていることを特徴とする。本発明の別の好ましい実施形態において、安定化コリンエステラーゼ基質溶液は、グリセリンによって安定化されている。
【0027】
本発明によれば、前記少なくとも1種の極性有機溶媒はまた、カルボン酸も含み得る。「カルボン酸」という用語は、カルボキシル基の存在により特徴付けられる有機酸を指す。「カルボン酸」はまた、カルボキシレートと呼ばれるカルボン酸の塩及びアニオン、並びに1分子につき2つ以上のカルボン酸基を有するカルボン酸も含む。
【0028】
本発明の一実施形態において、前記少なくとも1種の極性有機溶媒は、非プロトン性極性有機溶媒であり、好ましくはカルボニル化合物又はヘテロカルボニル化合物からなる群から選択される。本発明のさらに好ましい実施形態において、前記カルボニル化合物又はヘテロカルボニル化合物は、1〜12個の炭素原子を含む群から選択される。本発明の別の好ましい実施形態において、安定化コリンエステラーゼ基質溶液は、少なくとも1つの基質が、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトン、アセチルアセトン、アセトニトリル及びヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPT)からなる群から選択されるカルボニル化合物又はヘテロカルボニル化合物によって安定化されていることを特徴とする。
【0029】
本発明の別の好ましい実施形態において、前記少なくとも1種の非プロトン性極性有機溶媒は、エーテルである。「エーテル」という用語は、エーテル基、すなわち2つの置換アルキル基と結合した1つの酸素原子を含む化合物の類を指す。本発明のさらに好ましい実施形態において、安定化コリンエステラーゼ基質溶液は、少なくとも1つの基質が、1〜12個の炭素原子を含む群から選択されるエーテルによって安定化されていることを特徴とする。本発明の範囲内には、1〜12個の炭素原子を含む任意のエーテル、例えば環状エーテル及び分枝炭素鎖又は直鎖炭素鎖を有するエーテルが含まれる。本発明の一実施形態において、安定化コリンエステラーゼ基質溶液は、少なくとも1つの基質が、環状エーテル、好ましくはテトラヒドロフラン(THF)又はジオキサンによって安定化されていることを特徴とする。
【0030】
また本発明の範囲内には、反応混合物中の少なくとも1種の極性有機溶媒の濃度が最低0.25容量パーセント且つ最大100容量パーセントである、安定化コリンエステラーゼ基質溶液が含まれる。
【0031】
本発明の好ましい実施形態において、安定化コリンエステラーゼ基質溶液中の少なくとも1種の極性有機溶媒の濃度は、DMSOについては最低0.25容量パーセント且つ最大100容量パーセント、好ましくは最低0.25容量パーセント且つ最大20容量パーセント、エタノールについては最低0.25容量パーセント且つ最大100容量パーセント、好ましくは最低0.25容量パーセント且つ最大20容量パーセント、イソプロパノールについては最低0.5容量パーセント且つ最大95容量パーセント、好ましくは最低0.5容量パーセント且つ最大20容量パーセント、及び/又はTHFについては最低0.5容量パーセント且つ最大100容量パーセント、好ましくは最低0.5容量パーセント且つ最大20容量パーセントである。
【0032】
本発明の別の態様は、少なくとも1つの基質が少なくとも1種の極性有機溶媒により安定化されている、安定化コリンエステラーゼ基質溶液の使用である。本発明のさらなる態様は、緩衝液中で少なくとも1つの基質が少なくとも1種の極性有機溶媒により安定化されている、コリンエステラーゼ基質溶液の安定化のための極性有機溶媒の使用である。本発明の範囲内にはまた、サンプル中のコリンエステラーゼ活性を測定するための、少なくとも1つの基質が少なくとも1種の極性有機溶媒により安定化されている安定化コリンエステラーゼ基質溶液が含まれる。
【0033】
「サンプル」という用語は、コリンエステラーゼを含んでいる疑いがある任意のサンプルを指す。このサンプルは、典型的には水溶液である。本発明の実施形態において、このサンプルは、ホストから得た体液などの生体サンプルであり、例えば、尿、全血、血漿、血清、唾液、精液、大便、痰、脳脊髄液、涙、粘液等が挙げられるが、好ましくは血漿又は血清である。このサンプルは、必要に応じて前処理することが可能であり、アッセイに干渉しない任意の便利な媒質中で調製することができる。水性媒質が好ましい。
【0034】
コリンエステラーゼ活性は、定量法、半定量法及び定性法によって、並びに他の全てのコリンエステラーゼ測定方法により測定することができる。例えば、コリンエステラーゼを含有している疑いがあるサンプル中のコリンエステラーゼの存否を単に検出する方法は、本発明の範囲内に含まれると考えられる。用語「検出する」、「モニタリングする」、及び「計測又は測定する」、並びに測定のための他の一般的な同義語は、本発明の範囲内に含まれると意図される。
【0035】
本発明によるコリンエステラーゼ活性の測定は、単位時間当たりのコリンエステラーゼ活性産物の吸光度の変化を計測するレートアッセイ法によって、又は一定時間経過後に反応を停止させるエンドポイント法により行うことができる。本発明によれば、コリンエステラーゼ活性の測定はまた、実際の酵素反応の産物の1つから開始する二次反応から生じた産物の吸光度の変化を計測することによっても行うことができる。この方法は、実験室分析又は臨床分析用の自動アナライザーに容易に適用することができる。本発明の一実施形態において、コリンエステラーゼ活性のモニタリングは、チオコリン形成の測定により行い、好ましくは、分光光度法によってヘキサシアノ鉄酸塩(III)のヘキサシアノ鉄酸塩(II)への還元を計測することにより行う。本発明の別の実施形態において、チオコリンのコリンエステラーゼ依存的形成は、チオコリンと5,5'-ジチオビス-2-ニトロベンゾエートとの反応産物としての5-メルカプト-2-ニトロベンゾエート形成の、分光光度法による計測によって測定される。本発明によれば、コリンエステラーゼ活性のモニタリングは、自動アナライザーを用いることにより行うことができる。
【0036】
本発明の範囲内にはまた、酵素活性に好適な条件下でコリンエステラーゼを含有している疑いがあるサンプルと、少なくとも1つの基質が少なくとも1種の極性有機溶媒により安定化されている安定化コリンエステラーゼ基質溶液を含む試薬とを合わせるステップ、並びにこの酵素の活性をモニタリングするステップを含む、サンプル中のコリンエステラーゼ活性の測定方法が含まれる。
【0037】
本発明の至便性を高めるため、本発明の方法に有用な試薬は、試薬の割合が方法及びアッセイの実質的な最適化を与えるように、パッケージ化された組み合わせにおいて、同一の又は別個の容器中に液体又は凍結乾燥形態で提供することができる。各試薬は別個の容器に入っていてもよく、或いは試薬の交差反応性及び安定性に応じて、多様な試薬を1つ又は複数の容器中で組み合わせることもできる。従って、本発明の1つの態様は、コリンエステラーゼ活性を測定するための本発明のアッセイ法を便利に実施するために有用なキットに関する。
【0038】
本発明の範囲内には、パッケージ化された組み合わせ中に、コリンエステラーゼ活性に好適な緩衝液を含む第1の試薬と、少なくとも1つの基質が少なくとも1種の極性有機溶媒により安定化されている安定化コリンエステラーゼ基質溶液を含む第2の試薬とを含む、サンプル中のコリンエステラーゼ活性を測定するためのキットが含まれる。本発明の範囲にはまた、サンプル中のコリンエステラーゼ活性の測定方法を実施するためのキットであって、この測定方法が、酵素活性に好適な条件下でこの酵素を含有している疑いがあるサンプルと、少なくとも1つの基質が少なくとも1種の極性有機溶媒によって安定化されている安定化コリンエステラーゼ基質溶液を含む試薬とを組み合わせるステップ、並びにこの酵素の活性をモニタリングするステップを含む前記キットが含まれる。本発明の実施形態において、前記サンプル中のコリンエステラーゼ活性の測定方法を実施するための前記キットは、パッケージ化された組み合わせ中に、コリンエステラーゼ活性に好適な緩衝液を含む第1の試薬と、少なくとも1つの基質が少なくとも1種の極性有機溶媒によって安定化されている安定化コリンエステラーゼ基質溶液を含む第2の試薬とを含む。
【0039】
この試薬は、液体又は凍結乾燥形態を保つことができる。前記キットは、既知量のコリンエステラーゼを含む較正試薬などの、他のパッケージ化された較正物質をさらに含み得る。較正物質は、既知量の計測対象の分析物を含む標準物質又は基準物質を意味する。該分析物を含んでいる疑いがあるサンプルと較正物質とを類似条件下でアッセイする。その後分析物濃度を、未知の試料について得られた結果を標準について得られた結果と比較することにより計算する。好ましい実施形態において、このキットは、コリンエステラーゼ活性用に最適化された緩衝液、並びに最低0.25容量パーセント且つ最大100容量パーセントのDMSO、最低0.25容量パーセント且つ最大100容量パーセントのエタノール、最低0.5容量パーセント且つ最大95容量パーセントのイソプロパノール及び/又は最低0.5容量パーセント且つ最大100容量パーセントのTHFによって安定化されたコリンエステラーゼ基質溶液を含む。本発明の別の好ましい実施形態において、このキットは、コリンエステラーゼ活性用に最適化された緩衝液、並びに最低0.25容量パーセント且つ最大20容量パーセントのDMSO、最低0.25容量パーセント且つ最大20容量パーセントのエタノール、最低0.5容量パーセント且つ最大20容量パーセントのイソプロパノール及び/又は最低0.5容量パーセント且つ最大20容量パーセントのTHFによって安定化されたコリンエステラーゼ基質溶液を含む。
【0040】
本発明による基質溶液又はアッセイにおいて、多様な補助物質が用いられることが多い。例えば緩衝液は通常、アッセイ媒質、並びにこのアッセイ媒質用の安定剤及びアッセイの構成成分中に存在するだろう。しばしば、これらの添加剤に加えて、アルブミンなどの付加的なタンパク質、又は界面活性剤、特に非イオン性界面活性剤等を含むことができる。
【実施例】
【0041】
本発明を、下記の実施例又は図面を用いてさらに詳細に記載するが、当然これらに限定されるものではない。
【0042】
実施例1
コリンエステラーゼ活性の測定
コリンエステラーゼ(CHE)活性の測定は、下記の反応スキームによるチオコリンの形成及び検出に基づく:
【化2】

【0043】
コリンエステラーゼ活性に依存して、チオコリンはブチリルチオコリンから特異的に遊離する。チオコリンは黄色ヘキサシアノ鉄酸塩IIIをほぼ無色のヘキサシアノ鉄酸塩IIへと即時に還元する。吸光度の減少は、波長405 nm、温度37℃において分光光度的に測定することができる。コリンエステラーゼ濃度を、ヘキサシアノ鉄酸カリウムIIIのモル吸光係数(92.7 +/- 0.4 m2/mol)を用いて計算する。
【0044】
特にコリンエステラーゼ活性の測定を以下のとおりに行った:
2つの試薬液、R1及びR2を新たに調製した:
R1:91.5 mM ピロリン酸塩
2.44 mM ヘキサシアノ鉄酸カリウム
クエン酸を用いてpHを7.7に調整した
R2:10 mM HEPPS
45.7 mM ヨウ化ブチリルチオコリン
リン酸を用いてpHを4.0に調整した
極性有機溶媒、例えば10%(Vol.)DMSO
サンプル物質としての血清、ヘパリン若しくはEDTA血漿又は0.9%(w/v)NaCl、R1及びR2を、下記のスキームによりキュベット中へピペッティングし、最終濃度を75.2 mM ピロリン酸塩、2.0 mM ヘキサシアノ鉄酸塩(III)、7.5 mM ブチリルチオコリン及び1.6 mM HEPPSとした。
【表1】

【0045】
上記の試薬及び溶液は全て、37℃に調整した希釈標準溶液として用いた。これに応じて、キュベット中の混合物の温度がピペッティング後確実に37±0.05℃となるようさらに調整した。
【0046】
その後180μlのR2を加え、サンプルを十分に混合することにより反応を開始した。
【0047】
手動式の光度計を用いて、R2添加の厳密に90、120、150及び180秒後に下記の条件により分光光度測定を行った:
温度: 37 ± 0.05℃
波長: 405 nm
帯域幅: 2 nm
光路長: 10 mm
遅延時間:90秒
計測時間:90秒
さらに、サンプル物質の下記の希釈限界を考慮に入れた:
ΔE/分 = 0.380(計測時間:60秒)
活性が高い場合、100μlのサンプルを100μlの0.9%(w/v)NaCl溶液と混合し、計測を繰り返して、その結果に係数2を乗じた。
【0048】
ΔE/分の活性が0.007未満の場合、サンプル容量を倍にして(30μl)、試薬ブランクを差し引き、その結果に係数33914を乗じた。
【0049】
この計測は、吸光度の減少を測定するため空気と対照して行った。各一連の計測について、ブランク反応の値を5回測定し、どの時点でも実際の酵素反応の値からブランク反応の値を差し引いた。
【0050】
従って、サンプル中のコリンエステラーゼのターンオーバー速度は、サンプル反応とブランク反応との差に等しい:
(ΔE/分)CHE = (ΔE/分)サンプル - (ΔE/分)試薬ブランク
コリンエステラーゼの触媒濃度(U/L)を、ターンオーバー速度(ΔE/分)CHEに係数78749を乗じて計算した:
【数1】

【0051】
式中:1000 U/L = 16.67 μkat/L;1μkat/L = 60 U/Lである。
【0052】
係数78749を用いた式は、下記の計算に基づく:
波長405 nm及び計測温度37℃において、触媒濃度は:
【数2】

【0053】
- 405 nmにおけるヘキサシアノ鉄酸カリウムのモル吸光係数:
ε= 92.7 m2・mol-1 (DGKC提案参照)
- 光路長、l: 0.01 m
- 反応量、V: 1.095・10-3 L
(R1:0.900・10-3 L + R2:0.180・10-3 L + サンプル)
- サンプル容量、v:0.015・10-3 L
- A:60秒間の吸光度の減少
以下の式に適合する:
【数3】

【0054】
下記の実施例における実験は、同様の手順により、自動アナライザーRoche/Hitachi 917を使用し、ピペッティング容量:R1:180μl、サンプル:3μl、及びR2:36μlを用いて波長415 nmにおいて行った。
【0055】
実施例2
様々な極性有機溶媒を用いたブチリルチオコリン(BTC)の安定性の評価
BTCの不十分な安定化は、この試薬のエージングによる結果の変化によって理解することができた。BTC安定性の評価のために、調整基質溶液(18〜21日間35℃で調整)を用いて得たコリンエステラーゼの触媒濃度を、新たに調製した基質溶液を用いて得たコリンエステラーゼの触媒濃度と比較した。測定は、実施例1に記載の手順と同様にRoche/Hitachi 917アナライザーで行った。
【0056】
上記の「エージングモデル」は、18〜21日間35℃で調整した試薬が、15〜18ヶ月間冷蔵される日常の条件下で保存された試薬に相当するため、様々なコリンエステラーゼ基質溶液を迅速に評価するために適している。
【0057】
この「エージングモデル」を用いて、新たに調製し且つ調整した基質溶液(例えば図1及び2参照)を用いて得たCHE触媒濃度のプロットにおける直線の切片及び傾きから、特定の極性有機溶媒を-/+した様々なコリンエステラーゼ基質溶液の安定性を決定した。これらのパラメータ(切片及び傾き)を、安定化されていないコリンエステラーゼ基質溶液、例えばDGKC(Deutsche Gesellschaft fur Klinische Chemie、Schmidtら参照、Eur. J. Clin. Chem. Clin. Biochem. 30(3):163-170 (1992)による提案のとおりに調製したコリンエステラーゼ基質溶液(図2参照)、又は実施例1(すなわち、極性有機溶媒を含まないR2)により調製したコリンエステラーゼ基質溶液のパラメータと比較した。
【0058】
従って、約+/-300 U/l未満の切片及び+/-3%未満の傾きは、35℃で21日間のインキュベーションの間実質的にBTCの損失がなかったことを示す、安定化コリンエステラーゼ基質溶液についての基準となった。
【0059】
対照的に、DGKCによる提案のとおりの、又は実施例1に従って調製した(すなわち極性有機溶媒を含まないR2)、安定化されていない最初の製剤を用いて同様に測定したこれらのパラメータの値は、BTCの安定化を示すパラメータの値とは著しく異なる:
DGKC製剤:y = -1464 + 0.8105*x (図2参照)
この新たな試薬をRoche calibrator CFASを用いて較正し、この調整した試薬を新たな試薬の較正曲線から読み取った。
【0060】
下記の極性有機溶媒を用いて安定化されているコリンエステラーゼ基質溶液を試験したところ、BTC安定化のための要件を満たした(各容量パーセント濃度を括弧内に示した)。
【0061】
極性有機溶媒(vol.%) 直線関数
エタノール(20%) y = -178+1.016*x
DMSO(20%) y = 14+0.985*x (図1参照)
イソプロパノール(20%) y = 180+0.976*x
THF(5%) y = 252+0.982*x
アセトニトリル(20%) y = 187+0.995*x
スルファノール(Sulfanol)(20%) y = 58+1.020*x
グリセリン(20%) y = 302+0.976*x
実施例3
ブチリルチオコリン(BTC)安定性のための様々な極性有機溶媒の限界濃度の測定
実施例2に記載の「エージングモデル」に基づき、新たに調製し且つ調整した基質溶液を用いて得たCHE触媒濃度のプロットにおける直線の切片及び傾きから、極性有機溶媒の最小濃度(容量パーセント)を測定した。
【表2】

【0062】
安定化コリンエステラーゼ基質溶液についての基準、すなわち約+/- 300 U/l未満の切片及び+/- 3%未満の傾きを考慮に入れると、安定化効果を有する最低濃度は、各エタノール及びDMSOについては1%(容量パーセント)であり、各THF及びイソプロパノールについては2%(容量パーセント)であった。
【0063】
実施例4
様々な極性有機溶媒の組合せを用いたブチリルチオコリン(BTC)の安定性の評価
表2にまとめたデータから、BTCの安定化溶液は、0.25%DMSO、0.25%エタノール、0.5%イソプロパノール及び0.5%THFを用いて調製し得ると結論付けることができる。
【0064】
試薬R1は実施例1に従って調製する。試薬R2は実施例1に従って調製し、極性有機溶媒DMSO、0.25%;ETOH、0.25%;イソプロパノール、0.5%;THF、0.5%を含む。
【0065】
新たに調製したR2の1つのアリコートを、35℃で21日間保存する。別のアリコートを4〜8℃で冷蔵保存する。このエージング期間後、実施例1によるコリンエステラーゼ活性の測定において、3000〜15000 U/lのCHE活性を有する少なくとも30のサンプルに対して両アリコートをR1と共に用いる。
【0066】
上記の安定化コリンエステラーゼ基質溶液についての基準によれば、冷蔵保存したR2の結果と対比した、エージングしたR2を用いた結果のプロットは、実質的にBTCの損失がなかったことを示す結果を与えると期待される。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】DMSO(20% vol.)を用いて安定化させた、新たに調製したCHE基質溶液を用いて得たコリンエステラーゼ(CHE)の触媒濃度と、18日間35℃で調整した同じ安定化溶液を用いて得たコリンエステラーゼ(CHE)の触媒濃度との比較を示す。
【図2】DGKC(Deutsche Gesellschaft fur Klinische Chemie、Schmidtら、Eur. J. Clin. Chem. Clin. Biochem. 30(3): 163-170 (1992)参照)の提案に従って、新たに調製したCHE基質溶液を用いて得たコリンエステラーゼ(CHE)の触媒濃度と、21日間35℃で調整した同じ溶液を用いて得たコリンエステラーゼ(CHE)の触媒濃度との比較を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緩衝液中で、少なくとも1つの基質が少なくとも1種の極性有機溶媒によって安定化されている、コリンエステラーゼ基質溶液の安定化のための極性有機溶媒の使用。
【請求項2】
前記基質がコリンエステルである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記基質がチオエステルである、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記チオエステルが、ブチリルチオコリン(BTC)又はアセチルチオコリン(ATC)である、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記コリンエステラーゼ基質溶液が、アシルコリンエステラーゼ基質溶液又はアセチルコリンエステラーゼ基質溶液である、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
前記少なくとも1種の極性有機溶媒が、プロトン性極性有機溶媒である、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
前記プロトン性極性有機溶媒がアルコールである、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記アルコールが、1〜7個の炭素原子の鎖長を有する群から選択される、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記アルコールが、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール及びグリセリンからなる群から選択される、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記少なくとも1種の極性有機溶媒が、非プロトン性極性有機溶媒である、請求項1に記載の使用。
【請求項11】
前記非プロトン性極性有機溶媒が、カルボニル化合物及びヘテロカルボニル化合物からなる群から選択される、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記カルボニル化合物又はヘテロカルボニル化合物が、1〜12個の炭素原子を含む群から選択される、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記カルボニル化合物又はヘテロカルボニル化合物が、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトン、アセチルアセトン、アセトニトリル及びヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPT)からなる群から選択される、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記非プロトン性極性有機溶媒がエーテルである、請求項10に記載の使用。
【請求項15】
前記エーテルが、1〜12個の炭素原子を含む群から選択される、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記エーテルが環状エーテルである、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記環状エーテルが、テトラヒドロフラン(THF)及びジオキサンからなる群から選択される、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記少なくとも1種の極性有機溶媒の濃度が、DMSOについては最低0.25容量パーセント且つ最大20容量パーセントであり、エタノールについては最低0.25容量パーセント且つ最大20容量パーセントであり、イソプロパノールについては最低0.5容量パーセント且つ最大20容量パーセントであり、及び/又はTHFについては最低0.5容量パーセント且つ最大20容量パーセントである、請求項1に記載の使用。
【請求項19】
前記基質が、少なくとも18日の期間の35℃における保存後、著しくは不活性化されていない、請求項1〜18のいずれか1項に記載の使用。
【請求項20】
前記基質が、少なくとも15ヶ月の期間の4〜8℃における保存後、著しくは不活性化されていない、請求項1〜18に記載の使用。
【請求項21】
サンプル中のコリンエステラーゼ活性を測定するためのキットであって、パッケージ化された組み合わせにおいて:
a.該酵素の活性に好適な緩衝液を含む第1の試薬、
b.緩衝液中で少なくとも1つの基質が少なくとも1種の極性有機溶媒によって安定化されている、安定化コリンエステラーゼ基質溶液を含む第2の試薬、
を含む、前記キット。
【請求項22】
前記キットが、既知量の前記酵素を含有する較正試薬をさらに含む、請求項21に記載のキット。
【請求項23】
前記サンプルが、全血、血漿又は血清である、請求項21に記載のキット。
【請求項24】
前記コリンエステラーゼがアシルコリンエステラーゼ又はアセチルコリンエステラーゼである、請求項21に記載のキット。
【請求項25】
前記基質が、少なくとも18日の期間の35℃における保存後、著しくは不活性化されていない、請求項21に記載のキット。
【請求項26】
前記基質が、少なくとも15ヶ月の期間の4〜8℃における保存後、著しくは不活性化されていない、請求項21に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−151553(P2007−151553A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−331198(P2006−331198)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】