説明

官能化されたシランの形成法

ヘテロ原子ドープシラン化合物、例えば、リン含有シラン化合物を提供する。本出願は、ヘテロ原子含有求核剤との反応によりハロゲン置換シランからヘテロ原子ドープシラン化合物を生成する方法も提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願の相互参照
本出願は、2008年5月29日提出のMethod of Forming Functionalized Silanesなる表題の米国特許仮出願第61/130,271号の優先権の恩典を主張し、その開示は全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
政府の権利の言明
本研究は、Defense Microelectronics Activityの助成番号DMEA H94003-08-2-0801およびNational Science Foundationの助成番号EPS-0447679によって一部助成を受けた。米国政府は本発明における支払い済みの実施権を有し、特定の限定された状況において、国防総省により与えられた助成の期間によって規定されるものを含む、妥当な期間、他者に実施権を付与するよう特許権者に要求する権利を有する。
【背景技術】
【0003】
背景
ポリマーは電子材料の可撓層として評価の中心であったが、最近、より高い可動性を達成する手段として無機半導体へのプリント経路の開発に興味が持たれている。ロール・ツー・ロール製造環境において対費用効果の高いポリマー基板を用いるために、望ましい電気的性質を有する半導体への低温で大気圧の成膜経路が必要である。シクロヘキサシランなどの環式シランは、a-Si:H整流ダイオードおよび電界効果トランジスタへの液体シラン前駆体として有用であることが明らかにされている。液体環式シランは報告によるとアモルファスシリコンに変換し、続いて適当な条件下で結晶Siに変換することができる。初期の研究では、フィルム表面で集まる傾向のある、単純な無機ホウ素またはリン化合物をドーパントとして用いると、ドーパントの分布が不均一となる可能性が報告された。そのような不均一なドーピングは、得られる半導体フィルムの電気的性質が最適以下となる原因となりうる。シラン骨格に共有結合した1つまたは複数のヘテロ原子ドーパントを含む液体シランが入手可能であれば、他のシランとの良好な混和性を提供し、原子レベルでの混合および均一なドーパント分布が得られる可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
概要
本出願は、ヘテロ原子ドープシラン化合物およびそのような化合物の生成方法を目的とする。この方法は一般に、Si-E結合を有するドープシランを形成するためにハロゲン置換シランを求核試薬と反応させる段階を含み、ここで「E」は第13族、第14族、第15族および/または第16族元素から選択してもよい。ドープシランは望ましくは周囲温度かつ周囲圧の条件下(例えば、298℃、1気圧)で液体である。
【0005】
ハロゲン置換シランは、環式または非環式シランをハロゲン化試薬と反応させることによって形成してもよい。他の態様において、ハロゲン置換シランは、アリール置換(例えば、フェニル置換)環式または非環式シランをハロゲン化水素と、AlCl3などのルイス酸触媒存在下で反応させることによって形成してもよい。特定の態様において、出発原料、反応条件および/または化学量論を、反応生成物が主にモノハロゲン置換および/またはジハロゲン置換シランであるように制御することが有利でありうる。モノクロロシクロペンタシラン、モノクロロシクロヘキサシラン、モノブロモシクロペンタシランおよびモノブロモシクロヘキサシランなどの、モノハロゲン置換環式シランは、本ドープシラン化合物を生成する際に用いる中間体として特に望ましいと考えられる。
【0006】
本ヘテロ原子ドープシラン化合物は下記の式を有していてもよい:
SinHm-y(EHz)y
式中、nは3以上の整数であり;mは2n-2から2n+2までの整数であり;yは1からnまでの整数であり;zは2または3であり;かつEは第13族、第14族、第15族および/または第16族元素から選択される。
【0007】
本ヘテロ原子ドープシラン化合物の例には、下記の式を有する環式シラン化合物が含まれる:
SinHm-y(PH2)y
式中、nは3以上の整数(一般には3から10)であり;mは2n-2または2nであり;かつyは1からnまでの整数である。
【0008】
本ヘテロ原子ドープシラン化合物の他の例には、下記の式を有する、望ましくは周囲温度かつ周囲圧で液体である、非環式シラン化合物(例えば、分枝および/または直鎖シラン)が含まれる:
SinHm-y(PH2)y
式中、nは3以上の整数であり;mは2n+2であり;かつyは1からnまでの整数である。
【0009】
特定の態様において、1分子あたりヘテロ原子1個または2個だけを有するドープシラン化合物を生成することが有利でありうる。そのようなヘテロ原子ドープシラン化合物を生成するために用いうる適当な合成中間体には、下記の式を有するハロゲン置換環式シラン化合物が含まれる:
SinHm-yXy
式中、nは3以上の整数(一般には約3から10)であり;mは2n-2から2nまでの整数であり;yは1または2であり;かつXはそれぞれ独立にハロゲン原子を表す。適当な例には、シクロトリシラン、シクロペンタシラン、シクロヘキサシラン、シリルシクロペンタシラン、シリルシクロヘキサシランおよびスピロ[4.4]ノナシランのモノまたはジハロゲン化誘導体が含まれる。
【0010】
特定の態様において、本ヘテロ原子ドープシラン化合物は、式:SinHm-y(EHz)yのドープシラン化合物を提供するためにSinHm-yXyを含む混合物を式:M(EHz)aの求核剤と反応させることにより調製してもよい。上式において、nは3以上の整数であり;mは2n-2から2n+2までの整数であり;yは1からnまでの整数である。Eは第13族、第14族、第15族および/または第16族元素から選択されるヘテロ原子であり;zは2または3であり;aは1から4までの整数であり;かつMは金属原子含有部分である。反応は典型的には溶媒、例えば、グリム、ジグリムなどのエーテル溶媒存在下で実施する。例えば、ハロゲン化シランは式:M(PH2)aの求核剤と反応させてもよい。そのような求核剤の適当な例には、NaPH2、LiPH2、NaAl(PH2)4およびLiAl(PH2)4が含まれる。
【0011】
特定の態様において、本出願は、下記の式のハロゲン化環式シランの生成方法を提供する:
SinHm-yXy
式中、nは3以上の整数(一般には約3から10)であり;mは2n-2または2nであり;yは1または2であり;かつXはそれぞれ独立にハロゲン原子を表す。この方法は、式:SinHm-yXyを有するハロ-シランを提供するために環式シラン(例えば、単環式または二環式のいずれか)をハロゲン化剤と反応させる段階を含む:
式中、nは3以上の整数(一般には約3から10であり;mは2n-2から2nまでの整数であり;yは1または2であり;かつXはそれぞれ独立にハロゲン原子を表す。適当なハロゲン化剤の例にはAgCl、HgCl2、HgBr2、N-クロロスクシンイミド(「NCS」)、N-ブロモスクシンイミド(「NBS」)、SnCl4およびヨウ素(I2)が含まれる。
【0012】
他の態様において、ヘテロ原子ドープシラン化合物は、SinHm-yXyを含む混合物を他のリン含有求核剤と反応させることによって調製してもよい。例えば、式:SinHm-y(PHSiH3)yを有するヘテロ原子ドープシランを提供するために、ハロゲン化シランをM*がアルカリ金属(例えば、Li)である式:M*PHSiH3のリン含有求核剤と反応させてもよく、式中、nは3以上の整数であり;mは2n-2から2n+2までの整数であり;かつyは1からnまでの整数(しばしば望ましくは1または2)である。
【0013】
特定の他の態様において、ヘテロ原子ドープシラン化合物は、式:SinHm-y(P(SiH3)2)yを有するヘテロ原子ドープシランを提供するために、SinHm-yXyを含む混合物を、M*がアルカリ金属(例えば、Li)である式:M*P(SiH3)2のリン含有求核剤と反応させることにより調製してもよく、式中、nは3以上の整数であり;mは2n-2から2n+2までの整数であり;かつyは1からnまでの整数(しばしば望ましくは1または2)である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、実施例1に記載する手順に従って生成した生成物溶液のGC-MSを示す。
【図2】図2は、実施例2に記載する手順に従って生成した生成物溶液のGC-MSを示す。
【図3】図3は、Si-P結合形成を示す、実施例2に記載する手順に従って生成した生成物溶液のGC-MSを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
詳細な説明
本ヘテロ原子ドープシラン化合物は、ドープシランを形成するためにハロゲン置換シランを求核試薬と反応させることにより生成してもよい。例えば、ハロゲン化シランをリン含有求核剤と反応させて、Si-P結合を含む化合物を形成してもよい。得られる生成物、すなわちリンドープシランは、望ましくは周囲温度かつ周囲圧(例えば、298℃、1気圧)で液体である。
【0016】
ハロゲン置換シランは、環式または非環式シランをハロゲン化試薬と反応させることによって形成してもよい。いくつかの態様において、出発原料、反応条件および/または化学量論を、反応生成物が主にハロゲン原子1個または2個だけで置換されたシランであるように制御してもよい。ハロゲン化反応は、典型的には溶媒、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素および/またはジクロロエタンなどの塩素化炭化水素溶媒の存在下で実施する。
【0017】
いくつかの態様において、ハロゲン置換シランは、シラン化合物、例えば、シクロトリシラン、シクロペンタシラン、またはシクロヘキサシランなどの環式シランを塩素化溶媒(例えば、塩化メチレン)に溶解し、シランの溶液をAgCl、HgCl2、HgBr2、BCl3、またはSnCl4などの無機ハロゲン化試薬と共に撹拌することにより形成してもよい。そのような場合、過剰のハロゲン化試薬を用いてもよい。反応混合物を数時間撹拌した後、モノおよびジハロゲン化シランを含む混合物が典型的に得られる。
【0018】
他の態様において、シラン化合物、例えば、シクロトリシラン、シクロペンタシラン、またはシクロヘキサシランなどの環式シランを塩素化溶媒(例えば、塩化メチレンまたは四塩化炭素)に溶解し、化学量論量のN-クロロスクシンイミド(「NCS」)またはN-ブロモスクシンイミド(「NBS」)を溶液に加えてもよい。化学量論量とは、シランに付加されることが望まれる各ハロゲンについて、1当量のハロゲン化試薬を加えることを意味する。例えば、モノハロゲン化シランが望まれる生成物である場合、各1モルのシランに対し1モルのNBSまたはNCSを溶液に加える。ジハロゲン化シランが望まれる生成物である場合、各1モルのシランに対し2モルのNBSまたはNCSを溶液に加える。
【0019】
適当なハロゲン化シラン中間体の例には下記が含まれる:
シクロトリシランに結合している1個または2個のハロゲン原子を有する該シクロトリシラン;
シクロペンタシランに結合している1個または2個のハロゲン原子を有する該シクロペンタシラン;
シクロヘキサシランに結合している1個または2個のハロゲン原子を有する該シクロヘキサシラン;
シリルシクロペンタシランに結合している1個または2個のハロゲン原子を有する該シリルシクロペンタシラン;
シリルシクロヘキサシランに結合している1個または2個のハロゲン原子を有する該シリルシクロヘキサシラン;および
スピロ[4.4]ノナシランに結合している1個または2個のハロゲン原子を有する該スピロ[4.4]ノナシラン。
【0020】
本ヘテロ原子ドープシラン化合物を生成するために用いうるハロゲン化シラン化合物は、ハロゲン化試薬を対応するシラン前駆体と反応させることにより生成してもよい。適当なハロゲン化試薬の例には下記が含まれる:
AgCl、HgCl2、HgBr2、SnCl4、I2、N-クロロスクシンイミド(「NCS」)、およびN-ブロモスクシンイミド(「NBS」)。
【0021】
本ヘテロ原子ドープシラン化合物を生成するために用いうる適当なリン含有求核剤の例には下記が含まれる:
LiPH2、NaPH2、KPH2、LiAl(PH2)4、NaAl(PH2)4、LiHPSiH3、LiP(SiH3)2およびLiAl(PHSiH3)4
【実施例】
【0022】
以下、本組成物の生成方法のいくつかの実例に言及する。以下の態様はそのような方法および組成物の例示にすぎないと考えられるべきであり、いかなる様式においても限定的であると考えられるべきではない。
【0023】
実施例1:Si6H12-nCln(n=l、2)へのAgCl経路
所望のクロロシラン生成物、Si6H12-nCln(n=1、2)を下記のとおりに調製した:2mLの塩化メチレン(CH2Cl2)中に185.5mg(1.03mmol、1.00当量)のシクロヘキサシラン、Si6H12を溶解し、これに過剰量(515.4mg、3.60mmol、3.50当量)の塩化銀、AgClを固体で激しく撹拌しながら加えた。銀化合物は光感受性であるため、反応混合物を暗所で撹拌した。室温(25℃)で3.5時間撹拌した後、反応混合物は金属銀、Ag0の形成を示す暗灰色であった。この混合物をろ過して灰色沈澱(ppt)を除去し、無色澄明の溶液を得た。この生成物溶液をGC-MSで分析し(図1参照)、Si6H12の69.1%がモノクロロシクロヘキサシラン、Si6H11Clに変換され、11.8%がジクロロシクロヘキサシラン、Si6H1OCl2に変換されたことが確立された。したがって、Si6H12出発原料の19.1%は未反応のままであった。
【0024】
実施例2:Si6H12-nCln(n=l、2)へのHgCl2経路
所望のクロロシラン生成物、Si6H12-nCln(n=1、2)を下記のとおりに調製した:5mLのCH2Cl2中に217.5mg(1.20mmol、1.00当量)のSi6H12を溶解し、これに過剰量(1.31g、4.81mmol、4.00当量)の塩化水銀(II)、HgCl2を固体で激しく撹拌しながらゆっくり加えた。最初、観察可能な反応は認められず、したがって、反応混合物を撹拌した。夜の間に液体水銀が生じ、所望の反応が起こったことを示唆した。溶液混合物をろ過して未反応のHgCl2を除去した。これは、生じた液体水銀副生成物から溶液混合物を注意深くデカンテーションすることにより行った。ろ過後、ろ液は無色澄明溶液となった。生成物溶液をGC-MSで分析し(図2参照)、Si6H12の91.5%がSi6H11Clに変換され、7.6%がSi6H1OCl2に変換されたことが結論づけられた。したがって、0.9%の未反応Si6H12が残っていた。
【0025】
実施例3:Si6H12-nCln(n=l、2)へのSnCl4経路
所望のクロロシラン生成物、Si6H12-nCln(n=1、2)を下記のとおりに調製した:まず100mLフラスコ内の30mLのCH2Cl2中に2.40g(13.33mmol)のSi6H12を溶解した。次いで、この溶液を-10℃に冷却し、その時点で過剰のSnCl4(5.20g、20mmol)を混合物に加えた。反応物を2分間激しく撹拌し、次いでフリーザー(-10℃)内で2日間保存した。生じた白色沈澱をろ去し、ろ液を減圧下で蒸留して、無色の液体1.8gを得た。液体生成物をGC-MSで分析し、Si6H12の65%がSi6H11Clに変換され、5%がSi6H1OCl2に変換されたことが結論づけられた。したがって、30%の未反応Si6H12が残っていた。
【0026】
実施例4:NaAl(PH2)4を介してのH2PHSiMe2の形成
NaAl(PH2)4を下記のとおりに調製した:2mLのジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)中に懸濁した50.4mgのNaPH2(0.90mmol、1.00当量)を1mLに溶解した30.8mgのAlCl3(0.231mmol、3.90当量)と反応させ、混濁白色スラリーを生じた。この白色沈澱は塩化ナトリウム、NaClの形成に一致した。バイアルを3×1mLのジグリムで洗浄することによりAlCl3を定量的に移して6mLの混合物とし、これを終夜撹拌した。終夜撹拌した後、反応混合物をろ過して淡黄色澄明ろ液および白色固体を得た。固体を3×1mLのジグリムで洗浄して所望の生成物を溶液に定量的に移した。このNaAl(PH2)4の溶液を撹拌しながら、これに103μLのクロロジメチルシラン(0.852g/mL、0.93mmol、4.01当量)、HSiMe2Clをマイクロシリンジにより加え、混濁溶液を生じた。混濁はNaCl副生成物の形成によるものであった。混合物を10分間撹拌した後、ろ過し、淡黄色の生成物溶液を得た。この生成物ろ液をGC-MSで分析し(図3)、所望のH2PHSiMe2のSi-P含有生成物の形成が示された。
【0027】
例示的態様:
以下、本明細書に記載する対象物のいくつかの例示的態様に言及する。以下の態様は本明細書に記載する対象物の様々な特徴、特性、および利点を含みうる例示的態様を記載する。したがって、以下の態様は可能な態様すべてを包括するものと考えられるべきではなく、またはそうではなく、本明細書に記載する方法、材料およびコーティングの範囲を限定すると考えられるべきではない。
【0028】
一つの態様は、ドープシランの調製方法であって、式:SinHm-y(PH2)yを有するヘテロ原子ドープシランを提供するためにSinHm-yXyおよびMPH2を含む混合物を反応させる段階を含み、式中、nは3以上の整数であり;mは2n-2から2n+2までの整数であり;yは1からnまでの整数であり;Xはそれぞれ独立にハロゲン原子であり;かつMは金属原子含有部分である方法を提供する。MPH2の適当な例にはLiPH2、NaPH2、KPH2、LiAl(PH2)4、およびNaAl(PH2)4が含まれる。
【0029】
この態様において、方法は、SinH2n-yXyをNaPH2と反応させる段階、
またはSinH2n-yXyをNaAl(PH2)4と反応させる段階;例えば、
Si6H11ClをNaAl(PH2)4と;
Si5H9ClをNaAl(PH2)4と;
Si3H5ClをNaAl(PH2)4と;または
Si7H13ClをNaAl(PH2)4と反応させる段階を含んでいてもよい。
【0030】
別の態様において、ヘテロ原子ドープシラン化合物は、式:SinHm-y(P(SiH3)2)yを有するヘテロ原子ドープシランを提供するためにSinHm-yXyおよびLiP(SiH3)2を含む混合物を反応させることにより形成してもよく、式中、nは3以上の整数であり;mは2n-2から2n+2までの整数であり;かつyは1からnまでの整数である。
【0031】
別の態様において、ヘテロ原子ドープシラン化合物は、式:SinHm-y(PHSiH3)yを有するヘテロ原子ドープシランを提供するためにSinHm-yXyおよびLiPHSiH3を含む混合物を反応させることにより形成してもよく、式中、nは3以上の整数であり;mは2n-2から2n+2までの整数であり;かつyは1からnまでの整数である。
【0032】
本ヘテロ原子ドープシラン化合物の適当な例には、下記の式を有するドープシランが含まれる:
SinHm-y(PH2)y
式中、nは3以上の整数であり;mは2n-2から2n+2までの整数であり;かつyは1からnまでの整数であり、しばしばyは1または2である。本ヘテロ原子ドープシラン化合物は、望ましくは下記の式の1つまたは複数を有する化合物を含んでいてもよい:
Si6H11(PH2);
Si6H10(PH2)2
Si5H9(PH2);および
Si5H8(PH2)2
【0033】
本ヘテロ原子ドープシラン化合物の他の例には、下記の式を有するドープ環式シランが含まれる:
SinHm-y(PH2)y
式中、nは3から10までの整数であり;mは2n-2または2nであり;かつyは1からnまでの整数である。
【0034】
本ヘテロ原子ドープシラン化合物の他の例には、下記の式を有するドープシランが含まれる:
SinHm-y(P(SiH3)2)y
式中、nは3以上の整数(典型的には3から10)であり;mは2n-2から2n+2までの整数であり;かつyは1からnまでの整数(しばしば望ましくは1または2)である。
【0035】
本ヘテロ原子ドープシラン化合物の他の例には、下記の式を有するドープシランが含まれる:
SinHm-y(PHSiH3)y
式中、nは3以上の整数(典型的には3から10)であり;mは2n-2から2n+2までの整数であり;かつyは1からnまでの整数(しばしば望ましくは1または2)である。
【0036】
特定の態様は、下記の式を有するハロゲン置換環式シランを提供する:
SinHm-yXy
式中、nは3以上の整数(一般には3から10)であり;mは2nまたは2n-2であり;yは1または2であり;かつXはそれぞれ独立にハロゲン原子を表す。適当な例には下記が含まれる:
nが3であり;mが6であり;yが1であり;かつXが塩素原子である、ハロゲン置換環式シラン;
nが5であり;mが10であり;yが1であり;かつXが塩素原子である、ハロゲン置換環式シラン;
nが6であり;mが12であり;yが1であり;かつXが塩素原子である、ハロゲン置換環式シラン;または
nが7であり;mが14であり;yが1であり;かつXが塩素原子である、ハロゲン置換環式シラン。
【0037】
ハロゲン置換環式シランのさらなる適当な例には下記が含まれる:
nが3であり;mが6であり;yが1であり;かつXが臭素原子である、ハロゲン置換環式シラン;
nが5であり;mが10であり;yが1であり;かつXが臭素原子である、ハロゲン置換環式シラン;
nが6であり;mが12であり;yが1であり;かつXが臭素原子である、ハロゲン置換環式シラン;または
nが7であり;mが14であり;yが1であり;かつXが臭素原子である、ハロゲン置換環式シラン。
【0038】
適当なハロゲン置換環式シランの他の例には下記が含まれる:
クロロシクロペンタシランおよび/またはジクロロシクロペンタシラン;
クロロシクロヘキサシランおよび/またはジクロロシクロヘキサシラン;
シリルシクロヘキサシランのモノクロロおよび/またはジクロロ誘導体;
シリルシクロペンタシランのモノクロロおよび/またはジクロロ誘導体;
スピロ[4.4]ノナシランのモノクロロおよび/またはジクロロ誘導体;
1および/または2つの塩素置換基を有するシリルシクロペンタシラン;
1および/または2つの塩素置換基を有するスピロ[4.4]ノナシラン;
1および/または2つの塩素置換基を有するシリルシクロヘキサシラン;
1および/または2つの塩素置換基を有するシクロヘキサシラン;
1および/または2つの塩素置換基を有するシクロペンタシラン;ならびに
1および/または2つの塩素置換基を有するシクロトリシラン。
【0039】
適当なハロゲン置換環式シランの他の例には下記が含まれる:
ブロモシクロペンタシランおよび/またはジブロモシクロペンタシラン;
ブロモシクロヘキサシランおよび/またはジブロモシクロヘキサシラン;
シリルシクロヘキサシランのモノブロモおよび/またはジブロモ誘導体;
シリルシクロペンタシランのモノブロモおよび/またはジブロモ誘導体;
スピロ[4.4]ノナシランのモノブロモおよび/またはジブロモ誘導体;
1および/または2つの臭素置換基を有するシリルシクロペンタシラン;
1および/または2つの臭素置換基を有するスピロ[4.4]ノナシラン;
1および/または2つの臭素置換基を有するシリルシクロヘキサシラン;
1および/または2つの臭素置換基を有するシクロヘキサシラン;
1および/または2つの臭素置換基を有するシクロペンタシラン;ならびに
1および/または2つの臭素置換基を有するシクロトリシラン。
【0040】
本発明の範囲および精神から逸脱することなく本明細書に開示する方法および組成物に様々な置換および改変を加えうることは、当業者には容易に明らかになるであろう。用いた用語および表現は、説明のために用いるものであって、限定のためではなく、そのような用語および表現の使用において、明示し、記載した特徴またはその部分の任意の等価物を除外する意図はないが、本発明の範囲内で様々な改変が可能であることが理解される。したがって、本発明を特定の態様および任意の特徴によって例示してきたが、本明細書において開示する概念の改変および/または変形が当業者によって行われてもよく、そのような改変および変形は本発明の範囲内であることが理解されるべきである。
【0041】
加えて、本発明の特徴または局面をマーカッシュ群または他の代替物の群に関して記載する場合、当業者であれば、本発明はマーカッシュ群または他の群の任意の個々のメンバーまたはメンバーの下位群に関してもそれにより記載されることが理解されるであろう。
【0042】
同様に、そうでないと示されていないかぎり、態様に対して様々な数値が提供される場合、範囲の終点として任意の2つの異なる値を取ることによりさらなる態様が記載される。そのような範囲も記載する発明の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式を有するドープシラン:
SinHm-y(PH2)y
式中、nは3以上の整数であり;mは2n-2から2n+2までの整数であり;かつyは1からnまでの整数である。
【請求項2】
下記の式を有する環式化合物である、請求項1記載のドープシラン:
SinHm-y(PH2)y
式中、nは3から10までの整数であり;mは2n-2または2nであり;かつyは1からnまでの整数である。
【請求項3】
nが3から10までの整数である、請求項1記載のドープシラン。
【請求項4】
シクロトリシランに結合している1つまたは2つの-PH2部分を有する該シクロトリシランである、請求項1記載のドープシラン。
【請求項5】
シクロペンタシランに結合している1つまたは2つの-PH2部分を有する該シクロペンタシランである、請求項1記載のドープシラン。
【請求項6】
シクロヘキサシランに結合している1つまたは2つの-PH2部分を有する該シクロヘキサシランである、請求項1記載のドープシラン。
【請求項7】
シリルシクロペンタシランに結合している1つまたは2つの-PH2部分を有する該シリルシクロペンタシランである、請求項1記載のドープシラン。
【請求項8】
シリルシクロヘキサシランに結合している1つまたは2つの-PH2部分を有する該シリルシクロヘキサシランである、請求項1記載のドープシラン。
【請求項9】
スピロ[4.4]ノナシランに結合している1つまたは2つの-PH2部分を有する該スピロ[4.4]ノナシランである、請求項1記載のドープシラン。
【請求項10】
周囲温度かつ周囲圧の条件下(例えば、298℃、1気圧)で液体である、請求項1記載のドープシラン。
【請求項11】
mが2nである、請求項1記載のドープシラン。
【請求項12】
mが2n-2である、請求項1記載のドープシラン。
【請求項13】
mが2n+2である、請求項1記載のドープシラン。
【請求項14】
式:Si6H11(PH2)を有する、請求項1記載のドープシラン。
【請求項15】
式:Si6H10(PH2)2を有する、請求項1記載のドープシラン。
【請求項16】
式:Si5H9(PH2)を有する、請求項1記載のドープシラン。
【請求項17】
式:Si5H8(PH2)2を有する、請求項1記載のドープシラン。
【請求項18】
下記の式を有するヘテロ原子ドープシラン:
SinHm-y(P(SiH3)2)y
式中、nは3から10までの整数であり;mは2n-2または2nであり;かつyは1または2である。
【請求項19】
下記の式を有するヘテロ原子ドープシラン:
SinH2n-y(P(SiH3)2)y
式中、nは3から7までの整数であり;かつyは1または2である。
【請求項20】
下記の式を有するハロゲン置換環式シラン:
SinHm-yXy
式中、nは3以上の整数(一般には3から10)であり;mは2n-2または2nであり;yは1または2であり;かつXはそれぞれ独立にハロゲン原子を表す。
【請求項21】
ドープシランの調製方法であって、
式:SinHm-y(PH2)yを有するヘテロ原子ドープシランを提供するためにSinHm-yXyおよびM(PH2)zを含む混合物を反応させる段階を含み、
式中、nは3以上の整数であり;mは2n-2から2n+2までの整数であり;yは1からnまでの整数であり;zは1から4までの整数であり;Xはそれぞれ独立にハロゲン原子であり;かつMは金属原子含有部分である、方法。
【請求項22】
Mがアルカリ金属である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
M(PH2)zがLiPH2、NaPH2、KPH2、LiAl(PH2)4、またはNaAl(PH2)4である、請求項21記載の方法。
【請求項24】
ドープシランの調製方法であって、
式:SinHm-y(PRSiH3)yを有するヘテロ原子ドープシランを提供するためにSinHm-yXyおよびM*PRSiH3を含む混合物を反応させる段階を含み、
式中、nは3以上の整数であり;mは2n-2から2n+2までの整数であり;yは1からnまでの整数であり;M*はアルカリ金属であり;RはHまたはSiH3であり;かつXはそれぞれ独立にハロゲン原子を表す、方法。
【請求項25】
M*PRSiH3がLiPHSiH3および/またはLiP(SiH3)2である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
ドープシランの調製方法であって、
式:SinHm-y(P(SiH3)2)yを有するヘテロ原子ドープシランを提供するためにSinHm-yXyおよびM*P(SiH3)2を含む混合物を反応させる段階を含み、
式中、nは3以上の整数であり;mは2n-2から2n+2までの整数であり;yは1からnまでの整数であり;M*はアルカリ金属(例えばLi)であり;かつXはそれぞれ独立にハロゲン原子を表す、方法。
【請求項27】
ハロゲン原子が臭素および/または塩素原子である、請求項26記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−521953(P2011−521953A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511749(P2011−511749)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【国際出願番号】PCT/US2009/045132
【国際公開番号】WO2009/148878
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(506102042)エヌディーエスユー リサーチ ファウンデーション (2)
【Fターム(参考)】