説明

定着装置および画像形成装置

【課題】記録材上の画像をレーザを用いて定着するにあたり定着画像の光沢を増大させる。
【解決手段】(a)に示すように、定着装置60は、定着ベルト610を備える定着ベルトモジュール61と、定着ベルトモジュール61における定着ベルト610に接触して配置された加圧ロール62と、定着ベルトモジュール61に設けられた定着ベルト610の外周面にレーザ光を出射するレーザ照射装置63とを備えている。ニップ部Nにて用紙Pに対し作用する熱は、主として定着ベルト610によって供給される。定着ベルト610は、定着ロール611の内部に配置されたハロゲンヒータHGから供給される熱と、支持ロール612の内部に配置されたハロゲンヒータHGから供給される熱と、レーザ照射装置63により照射されるレーザ光とによって加熱される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録紙上に形成された未定着のトナー像にレーザビームを照射し、発生した熱により記録紙上にトナー像を定着させるレーザ定着装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−191560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、記録材上の画像をレーザを用いて定着するにあたり定着画像の光沢を増大させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、回転可能に設けられ、画像が形成された記録材を押圧面にて押圧する押圧部材と、前記押圧部材のうちの記録材を押圧する前記押圧面に対してレーザを照射するレーザ照射装置と、を備え、前記レーザ照射装置によりレーザが照射され加熱された前記押圧面が前記記録材に押圧されることで当該記録材上の前記画像が当該記録材に定着される定着装置である。
請求項2に記載の発明は、前記レーザ照射装置は、前記押圧面の部位毎に、照射するレーザの出力を異ならせ、前記画像のうちの画像密度が予め定められた閾値よりも大きい箇所に接触する部位に対しては予め定められた出力でレーザを照射し、当該画像のうちの画像密度が当該予め定められた閾値よりも小さい箇所に接触する部位に対しては当該予め定められた出力よりも小さい出力でレーザを照射することを特徴とする請求項1記載の定着装置である。
請求項3に記載の発明は、前記レーザ照射装置は、前記押圧面のうちの前記画像と接触する部位に対して予め定められた出力でレーザを照射し、当該押圧面のうちの当該画像と接触しない部位に対しては当該予め定められた出力よりも小さい出力でレーザを照射し又はレーザを照射しないことを特徴とする請求項1又は2に記載の定着装置である。
請求項4に記載の発明は、前記レーザ照射装置とは別に、前記押圧面を加熱する加熱源が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の定着装置である。
請求項5に記載の発明は、前記押圧面に接触して配置され、搬送されてきた前記記録材が通過する通過部を当該押圧面との間に形成する形成部材を更に備え、回転する前記押圧部材は、前記押圧面と前記形成部材との接触部にて前記記録材を押圧し、前記レーザ照射装置は、前記押圧面のうち、当該押圧面と前記形成部材との前記接触部に達する直前の部位に対しレーザを照射することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の定着装置である。
請求項6に記載の発明は、前記押圧部材は、一方向に搬送される前記記録材を回転しながら押圧するとともに当該一方向と交差する方向に幅を有して形成され、前記レーザ照射装置は、前記押圧部材の幅方向に並んで配置された複数のレーザ発光素子を備え、当該複数のレーザ発光素子を用いて前記押圧面にレーザを照射することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の定着装置である。
請求項7に記載の発明は、前記押圧面のうち前記レーザ照射装置からのレーザが照射される箇所は、黒色で形成されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の定着装置である。
請求項8に記載の発明は、記録材に画像を形成する画像形成部と、回転可能に設けられ、前記画像形成部により画像が形成された記録材を押圧面にて押圧する押圧部材と、前記押圧部材のうちの記録材を押圧する前記押圧面に対してレーザを照射するレーザ照射装置と、を備え、前記レーザ照射装置によりレーザが照射され加熱された前記押圧面が前記記録材に押圧されることで当該記録材上の前記画像が当該記録材に定着されることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、記録材上の画像をレーザを用いて定着するにあたり定着画像の光沢を増大させることができる。
請求項2の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、使用するエネルギーを低減することができる。
請求項3の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、使用するエネルギーを低減することができる。
請求項4の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、出力の小さいレーザ照射装置を用いることが可能となる。
請求項5の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、エネルギーの損失を減らすことが可能となる。
請求項6の発明によれば、回転多面鏡などを用いてレーザを押圧面に対し照射する場合に比べ、定着装置の小型化が可能となる。
請求項7の発明によれば、押圧面のうちのレーザが照射される箇所が黒色以外の色である場合に比べ、エネルギーの損失が低減される。
請求項8の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、記録材上の画像をレーザを用いて定着するにあたり定着画像の光沢を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施形態に係る画像形成装置の全体構成を示した図である。
【図2】定着装置の概略構成を示す側断面図である。
【図3】定着装置に設けられた定着ベルトを説明するための図である。
【図4】レーザ照射装置を説明するための図である。
【図5】定着ベルトの温度変化を示した図である。
【図6】定着ベルトからトナー像に供給される熱エネルギーを説明するための図である。
【図7】画像データの受信から定着処理がなされるまでに実行される処理であって定着処理に関して実行される処理の流れを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る画像形成装置の全体構成を示した図である。図1に示す画像形成装置は、一般にタンデム型と呼ばれる中間転写方式の画像形成装置である。この画像形成装置には、電子写真方式により各色成分のトナー像が形成される複数の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kが設けられている。また、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにより形成された各色成分トナー像を中間転写ベルト15に順次転写(一次転写)させる一次転写部10が設けられている。さらに、本画像形成装置には、中間転写ベルト15上に転写された重畳トナー画像を記録材である用紙Pに一括転写(二次転写)させる二次転写部20が設けられている。また、二次転写された画像を用紙P上に定着させる定着装置60が設けられている。さらに、各装置(各部)の動作を制御する制御部40、表示パネルにより構成されユーザからの情報を受け付けるとともにユーザに対して情報を表示するUI(User Interface)70が設けられている。ここで、画像形成ユニット1Y,1M,1C,1K、中間転写ベルト15、および二次転写部20は、用紙Pに画像を形成する画像形成部として捉えることができる。
【0009】
本実施の形態において、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kには、次のような電子写真用デバイスが順次配設されている。まず、矢印A方向に回転する感光体ドラム11の周囲に、感光体ドラム11を帯電する帯電器12が設けられている。また、感光体ドラム11上に静電潜像を書込むレーザ露光器13(図中露光ビームを符号Bmで示す)が設けられている。さらに、各色成分トナーが収容され、感光体ドラム11上の静電潜像をトナーにより可視像化する現像器14が設けられている。また、感光体ドラム11上に形成された各色成分トナー像を一次転写部10にて中間転写ベルト15に転写する一次転写ロール16が設けられている。また、感光体ドラム11上の残留トナーを除去するドラムクリーナ17が設けられている。
【0010】
中間転写ベルト15は、定速性に優れたモータ(図示せず)により駆動される駆動ロール31などのロール状部材によって、図1に示す矢印B方向に予め定められた速度で循環駆動する。一次転写部10は、中間転写ベルト15を挟んで感光体ドラム11に対向配置される一次転写ロール16を含んで構成されている。そして、各々の感光体ドラム11上のトナー像が中間転写ベルト15に順次、静電吸引され、中間転写ベルト15上に重畳されたトナー像が形成される。二次転写部20は、中間転写ベルト15のトナー像保持面側に配置される二次転写ロール22と、バックアップロール25とを含んで構成される。二次転写ロール22は中間転写ベルト15を挟んでバックアップロール25に圧接配置されている。そして本実施形態では、二次転写ロール22とバックアップロール25との間に二次転写バイアスが形成され、二次転写部20に搬送される用紙P上にトナー像が二次転写される。
【0011】
次に、本実施の形態に係る画像形成装置の基本的な作像プロセスについて説明する。まず画像形成装置にて用紙Pにトナー像が形成されるにあたっては、制御部40が、図示しない画像読取装置やパーソナルコンピュータ(PC)から出力された画像データを取得する。そして、制御部40は、この画像データを解析して画像密度(トナーの密度)などを把握する(詳細は後述)。また、この画像データに対して予め定められた画像処理を施す。この画像処理によって画像データはY、M、C、Kの4色の色材階調データに変換され、レーザ露光器13に出力される。
【0012】
レーザ露光器13では、入力された色材階調データに応じて、例えば半導体レーザから出射された露光ビームBmを画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各々の感光体ドラム11に照射する。各感光体ドラム11では、帯電器12によって表面が帯電された後、このレーザ露光器13によって表面が走査露光され、静電潜像が形成される。そして現像器14により感光体ドラム11上にトナー像が形成された後、このトナー像は、各感光体ドラム11と中間転写ベルト15とが接触する一次転写部10において、中間転写ベルト15上に転写される。
【0013】
トナー像が中間転写ベルト15の表面に順次一次転写された後、中間転写ベルト15の移動によりトナー像が二次転写部20に搬送される。二次転写部20では、二次転写ロール22が中間転写ベルト15を介してバックアップロール25に押圧される。このとき、第1用紙収容部53や第2用紙収容部54から搬送ロール52等により搬送された用紙Pが、中間転写ベルト15と二次転写ロール22との間に挟み込まれる。そして中間転写ベルト15上に保持された未定着のトナー像は、二次転写部20において、用紙P上に一括して静電転写される。その後、トナー像が静電転写された用紙Pは、中間転写ベルト15から剥離された後、二次転写ロール22よりも用紙搬送方向下流側に設けられた搬送ベルト55へと搬送される。そして搬送ベルト55は、予め定められた速度で用紙Pを定着装置60まで搬送する。
【0014】
次に、定着装置60について説明する。
ここで図2は、定着装置60の概略構成を示す側断面図である。図3は、定着装置60に設けられた定着ベルトを説明するための図である。
図2(a)に示すように、定着装置60は、定着ベルト610を備える定着ベルトモジュール61と、定着ベルトモジュール61における定着ベルト610に接触して配置された加圧ロール62と、定着ベルトモジュール61に設けられた定着ベルト610の外周面(用紙Pを押圧する押圧面)にレーザ光を出射するレーザ照射装置63とを備えている。ここで本実施形態における定着装置60では、定着ベルトモジュール61と加圧ロール62との間に、通過する用紙Pを加圧および加熱し用紙P上のトナー像をこの用紙Pに定着させるニップ部Nが形成されている。ここで、ニップ部Nは、搬送されてきた用紙Pが通過する通過部として捉えることができる。また加圧ロール62は、この通過部を定着ベルト610との間に形成する形成部材として捉えることができる。
【0015】
定着ベルトモジュール61は、無端状に形成されるとともに循環移動が可能(回転可能)に設けられニップ部Nにて用紙Pを押圧する押圧部材の一例としての定着ベルト610と、アルミニウムからなる筒状の部材により構成され定着ベルト610を張架しながら回転駆動する定着ロール611と、同じくアルミニウムからなる筒状の部材により構成され回転可能に設けられ内側から定着ベルト610を支持する支持ロール612とを備えている。また定着ベルトモジュール61は、定着ロール611を図中矢印Cに示す方向に回転駆動させる駆動モータ(不図示)を備えている。
【0016】
また定着ベルトモジュール61は、ニップ部Nの下流側に、用紙Pに接触し用紙Pを予め定められた搬送路に案内する案内部材64を有している。なお、定着ロール611の内部および支持ロール612の内部には、ハロゲンヒータHGが設けられており、定着ロール611および支持ロール612はこのハロゲンヒータHGにより加熱される。このため、本実施形態における定着ロール611および支持ロール612は、定着ベルト610を内側から加熱する機能も有している。
【0017】
定着ベルト610は、フレキシブルなエンドレスベルトである。ここで定着ベルト610は、図3に示すように、厚さ80μmのポリイミド樹脂で形成されたベース層610Aと、ベース層610Aの表面側(外周面側)に積層された厚さ400μmのシリコーンゴムからなる弾性体層610Bと、弾性体層610B上に被覆された厚さ30μmのテトラフルオロエチレン−ペルフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)からなる剥離層610Cとで構成されている。
【0018】
ここで弾性体層610Bには、顔料であるカーボンブラックが含まれており、弾性体層610Bは黒色に形成されている。このため、レーザ照射装置63により定着ベルト610にレーザ光が照射された際には、この弾性体層610Bの表面が発熱する。付言すると、弾性体層610Bの表面には熱潜像が形成される。なお、カーボンブラックはベルト表面のPFAに含ませることも可能である。この場合、熱潜像がベルト表面のPFAに形成される。
なお、定着ベルト610の構成は、使用目的や使用条件等の装置設計条件に応じて、材質・厚さ・硬度等を選択することができる。また本実施形態では、弾性体層610Bが黒色に形成されているが、黒色以外に、黒色に近いエネルギー吸収率を有している色とすることもできる。なお定着ベルト610は、定着ロール611の回転によって予め定められた速度で図2(a)における矢印D方向に回転する。
【0019】
加圧ロール62は、円柱状ロールを基体として、この基体側から順に、シリコーンゴムからなる弾性層と、PFAチューブからなる剥離層とが積層されて構成されたソフトロールである。加圧ロール62は、回転自在に支持されると共に、図示しないスプリングによって、定着ベルト610が定着ロール611を巻回する部位に圧接されて設けられている。これにより、定着ロール611への圧接部位にニップ部Nが形成される。加圧ロール62は、定着ロール611が矢印C方向へ回転するのに伴い定着ロール611に従動して矢印E方向に回転駆動する。
【0020】
上記のように構成された画像形成装置では、トナー像が静電転写された用紙Pをニップ部N内に搬送し、ニップ部Nにて用紙Pに作用する圧力と熱とによって、トナー像を用紙Pに定着させる。ここで、ニップ部Nにて用紙Pに対し作用する熱は、主として定着ベルト610によって供給される。定着ベルト610は、定着ロール611の内部に配置されたハロゲンヒータHGから定着ロール611を通じて供給される熱と、支持ロール612の内部に配置されたハロゲンヒータHGから支持ロール612を通じて供給される熱と、レーザ照射装置63により照射されるレーザ光とによって加熱される。
【0021】
ここで、ニップ部Nを形成する一方の定着ロール611は、前述のごとくアルミニウム製のハードロールであり、他方の加圧ロール62は弾性層を有したソフトロールである。このため、本実施の形態のニップ部Nは、加圧ロール62の弾性層が変形することで形成される。ニップ部Nにおいて、定着ベルト610がラップしている定着ロール611は殆ど変形しないため、その表面に沿って移動する定着ベルト610の回転半径は変化しない。このため、定着ベルト610はその進行速度を一定に維持してニップ部Nを通過する。また本実施形態では、ニップ部Nに用紙Pが搬入され用紙Pがニップ部Nを通過する。この際、用紙Pに対し圧力が加わるとともに定着ベルト610から熱が供給され、用紙P上の画像は用紙P上に定着される。そしてこの用紙Pは、ニップ部Nを通過した後、案内部材64により案内され更に下流側へと搬送されていく。
【0022】
なお上記では、定着ベルト610が設けられた定着装置60を一例に説明したが、図2(b)に示すように、定着ベルト610を省略した形で定着装置60を構成することもできる。なおこの定着装置60では、定着ロール611の表面に対しレーザ光が照射される。またこの定着装置60では、ハロゲンヒータHGを内蔵するとともに定着ロール611に接触配置され、定着ロール611を外部から加熱する外部加熱ロール65が設けられている。
【0023】
次に、レーザ照射装置63について説明する。
図4は、レーザ照射装置63を説明するための図である。なお同図(a)は、レーザ照射装置63を側方から眺めた場合の状態を示し、同図(b)は、レーザ照射装置63を上方から眺めた場合の状態を示している。
【0024】
本実施形態おけるレーザ照射装置63は、レーザ光を上述した定着ベルト610に向けて出射する複数の半導体レーザ631(レーザ発光素子の一例)と、この複数の半導体レーザ631を支持するレーザブロック632と、半導体レーザ631から出射されたレーザ光各々の副走査成分を定着ベルト610に集光させるシリンドリカルレンズ633とを有している。ここで本実施形態におけるレーザ照射装置63では、半導体レーザ631の各々は、定着ベルト610の幅方向(定着ベルト610の回転方向と直交する方向、用紙Pの搬送方向である一方向と直交(交差)する方向)に並んで配置されている。
【0025】
また本実施形態では、半導体レーザ631の各々が個別に制御部40(図1参照)により制御されており、複数出射されるレーザ光の一部のレーザ光の出力(強度)を高めたり弱めたりすることができる。また一部の半導体レーザ631からはレーザ光が出射されないようにすることもできる。なお、レーザ照射装置63は、例えば、レーザ光を出射する半導体レーザ631と、この半導体レーザ631からのレーザ光を偏光する回転多面鏡などにより構成することもできるが、この場合、装置の大型化などを招きやすい。このため本実施形態では、複数個の半導体レーザ631を定着ベルト610の幅方向に並べた構成を採用している。
【0026】
図5は、定着ベルト610の温度変化を示した図である。また図6は、定着ベルト610からトナー像に供給される熱エネルギーを説明するための図である。
まず図5を参照し定着ベルト610の温度変化について説明する。図5における領域Aは、レーザ照射装置63からのレーザ光が照射される照射位置に達する前における定着ベルト610の温度を示している。レーザ光の照射位置に達する前においては、ハロゲンヒータHGを有した支持ロール612によって加熱されることで、定着ベルト610の温度は約100℃となっている。図5における領域Bは、レーザ光の上記照射位置に定着ベルト610が達した際の定着ベルト610の温度を示している。本実施形態では、上記のように、半導体レーザ631の各々が個別に制御部40により制御されており、定着ベルト610のうち用紙Pに対してのみ接触する部位(トナー像と接触しない部位)へ照射されるレーザ光は弱められ、同図の符号5Aに示すように、この部位は、例えば140℃まで温度が上昇する。
【0027】
一方で、定着ベルト610のうち、用紙P上の画像と接触する部位であってこの画像のうちトナーの密度(画像密度)が低い箇所(トナーの密度が予め定められた第1の閾値よりも小さい箇所)に接触する部位へ照射されるレーザ光は、上記よりも強められる。これにより、同図の符号5Bに示すように、この部位は、約190℃まで温度が上昇する。また定着ベルト610のうち、用紙P上の画像と接触する部位であってトナーの密度が上記低い箇所よりも高い箇所(トナーの密度が上記第1の閾値よりも大きく第2の閾値(>第1の閾値)よりも小さい箇所)に接触する部位へ照射されるレーザ光は、強められる。これにより、同図の符号5Cに示すように、この部位は、約230℃まで温度が上昇する。さらに、定着ベルト610のうち、用紙P上の画像と接触する部位であってトナーの密度が高い箇所(トナーの密度が上記第2の閾値よりも大きい箇所)に接触する部位へ照射されるレーザ光は、さらに強められ、同図の符号5Dに示すように、この部位は、約250℃まで温度が上昇する。なお本実施形態では、定着ベルト610は、レーザ光の上記照射位置(領域B)を5〜10msecで通過する。
【0028】
ここで図6(b)を参照してさらに説明すると、本実施形態では、定着ベルト610のうち、用紙P上の画像と接触する部位であってこの画像のうちトナーの密度が高い箇所に接触する部位へ照射されるレーザ光は強められる。一方で、定着ベルト610のうち、用紙P上の画像と接触する部位であってトナーの密度が低い箇所に接触する部位へ照射されるレーザ光は弱められる。
【0029】
ここで、同図(a)に示すように、トナーの密度が高い部分に合わせて一律に定着ベルト610を加熱してしまう従来の加熱方式では、エネルギーの損失が大きくなってしまう。また、トナーの密度が高い部分に合わせて一律に定着ベルト610を加熱してしまうと、用紙P内に温度むらが生じやすく用紙の反りや用紙のしわなどが発生しやすい。本実施形態の構成では、定着ベルト610のうちトナーの密度が低い箇所に接触する部位へ照射されるレーザ光は弱められる。このため本実施形態の構成では、上記従来の態様に比べ、エネルギーの損失が抑制されるようになる。また用紙Pに対し供給される熱量の均一化が図られるために温度むらが低減され、用紙Pの反りやしわが低減される。
【0030】
図5に戻り更に説明を続ける。
領域Bにて定着ベルト610が加熱された後、本実施形態では、直ぐに、定着ベルト610がニップ部Nに侵入する(領域C参照)。付言すると、本実施形態における定着装置60では、定着ベルト610のうちニップ部Nに達する直前の部位に対してレーザ光が照射されるようになっている。付言すると、定着ベルト610のうちニップ部Nの下流側ではなく上流側に位置する部位に対しレーザ光が照射される構成となっている。この場合、レーザ光により定着ベルト610に与えられた熱エネルギーが定着ベルト610の内部に拡散する前に、トナー像と定着ベルト610とが接触するようになり、トナー像の加熱効率が高まる。
【0031】
ここでニップ部Nでは、定着ベルト610の熱が用紙Pにより奪われ、符号Yに示すように、ニップ部Nの出口では、定着ベルト610の温度が約90℃近くとなる。これにより、溶融したトナー像が固化し、トナー像が固化した状態で用紙Pが定着ベルト610から剥離されるようになる。その後、本実施形態では、定着ベルト610が支持ロール612に達し、支持ロール612(ハロゲンヒータHG)により定着ベルト610が再び加熱される(領域D参照)。これにより、定着ベルト610の温度が100℃まで回復する。その後は、上記と同様であり、次の用紙Pが定着装置60に搬送されてくるタイミングに合わせ、レーザ光が定着ベルト610に照射される。なお本実施形態では、定着ベルト610は、ニップ部N(領域C)を10〜20msecで通過し、支持ロール612との接触箇所(領域D)を約100msecで通過する。
【0032】
図7は、画像データの受信から定着処理がなされるまでに実行される処理であって定着処理に関して実行される処理の流れを示したフローチャートである。
本実施形態では、まず制御部40が、不図示の画像読取装置やPCなどから画像データを取得する(ステップ101)。また、制御部40は、画像を形成する用紙Pに関する情報を取得する(ステップ102)。具体的には、画像を形成する用紙Pの厚み、坪量に関する情報や、用紙Pがコート紙であるか普通紙であるかなど用紙の種類に関する情報を取得する。次いで、制御部40は、ステップ101にて取得した画像データを解析し、形成する画像のうちトナーの密度が低い箇所、トナーの密度が高い箇所、トナーの密度が中間の箇所を把握する(ステップ103)。
【0033】
その後、制御部40は、半導体レーザ631から出射するレーザ光の出力(強度)を半導体レーザ631毎に個別に設定する(ステップ104)。より具体的には、定着ベルト610のうちトナーの密度が高い箇所に接触する部位へ照射されるレーザ光の出力が大きくなるように、また、定着ベルト610のうちトナーの密度が低い箇所に接触する部位へ照射されるレーザ光の出力が小さくなるように、半導体レーザ631から出射するレーザ光の出力を半導体レーザ631毎に個別に設定する。
【0034】
次いで、制御部40は、画像形成動作を開始するとともに半導体レーザ631をオンとし定着ベルト610に対しレーザ光を照射する(ステップ105)。なおこの際、上記ステップ104にて行われた設定により、定着ベルト610のうちトナーの密度が高い箇所と接触する部位に対しては出力の大きいレーザ光が照射され、トナーの密度が低い箇所と接触する部位に対しては出力の小さいレーザ光が照射される。
なお上記では説明を省略したが、上記ステップ102にて取得した用紙Pに関する情報に基づきレーザ光の出力を変化させることもできる。例えば、例えば用紙Pが厚く用紙Pの熱容量が大きい場合にはレーザ光の出力を大きくし、用紙が薄く用紙Pの熱容量が小さい場合にはレーザ光の出力を小さくすることができる。
【0035】
ここで、上記では、定着ベルト610のうち、トナー像と接触しない部位に対してもレーザ光を照射する態様を説明したが、このトナー像と接触しない部位に対するレーザ光の照射は省略することができる。この場合、消費エネルギーが更に低減される。なおこのようにレーザ光の照射を省略する場合、用紙P内の温度むらが大きくなり、用紙Pに反りやしわなどが生じやすくなる。このため本実施形態では、定着ベルト610のうちトナー像と接触しない部位に対してもレーザ光を照射し、用紙Pのうちトナー像が存在しない箇所も加熱されるようにしている。
【0036】
なお、トナー像に対してレーザ光を直接照射してトナー像を用紙Pに定着する態様は、従来から提案されている。ところでこの場合、用紙Pに対して圧力が加わらないために、光沢を有していない画像が形成されやすくなる。また定着の強度が小さいものとなりやすい。一方で本実施形態における構成では、レーザ光を照射するという点で従来の態様と同じであるが、本実施形態における構成では、レーザ光を定着ベルト610に照射するとともにレーザ光を照射したこの定着ベルト610をニップ部Nにて用紙Pに押し付ける構成としている。このため、用紙Pに圧力が加わるようになり、画像が光沢を有するようになる。また、定着の強度も大きいものとなる。
【0037】
またトナー像に対してレーザ光を直接照射してトナー像を用紙Pに定着する上記態様の場合、使用されているトナーがカラーのトナーであると、レーザーエネルギーの吸収率が低いために、加熱効率が低下してしまう。一方で本実施形態の構成では、トナーに対してではなく弾性体層610B(図3参照)に対してレーザ光を照射しているために、トナーの色の影響を排除できる。付言すると、本実施形態では、弾性体層610Bにはカーボンブラックが含まれ黒色に形成されており、レーザーエネルギーの吸収率が高いものとなっている。このため本実施形態の構成では、従来の態様に比して加熱効率(定着効率)が向上する。なお、カラーのトナーに対してレーザ光を直接照射する場合、トナーに赤外線吸収剤を混入させることで加熱効率を向上させることができるが、この場合、にごりが定着後の画像に生じやすくなってしまう。
【0038】
また、使用されているトナーがカラーのトナーであるか否かに関わらず、レーザ光をトナー像に対して直接照射してトナー像を用紙Pに定着する場合、レーザ光の強度がより大きなレーザ素子が必要となったり、レーザ素子を高密度に配置したりしなければならず、コストが増加しやすい。
なお、上記では定着ベルト610を加熱する加熱源として、レーザ照射装置63の他に、ハロゲンヒータHGを設けたが、このハロゲンヒータHGは省略することができる。但し、ハロゲンヒータHGを省略した場合、より出力の大きいレーザ照射装置63や、半導体レーザ631の実装密度がより大きいレーザ照射装置63が必要となる可能性がある。このため本実施形態のように、レーザ照射装置63以外の加熱源を設けることがより好ましくなる。
【符号の説明】
【0039】
1Y,1M,1C,1K…画像形成ユニット、15…中間転写ベルト、20…二次転写部、60…定着装置、62…加圧ロール、63…レーザ照射装置、610…定着ベルト、631…半導体レーザ、HG…ハロゲンヒータ、N…ニップ部、P…用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に設けられ、画像が形成された記録材を押圧面にて押圧する押圧部材と、
前記押圧部材のうちの記録材を押圧する前記押圧面に対してレーザを照射するレーザ照射装置と、
を備え、
前記レーザ照射装置によりレーザが照射され加熱された前記押圧面が前記記録材に押圧されることで当該記録材上の前記画像が当該記録材に定着される定着装置。
【請求項2】
前記レーザ照射装置は、前記押圧面の部位毎に、照射するレーザの出力を異ならせ、前記画像のうちの画像密度が予め定められた閾値よりも大きい箇所に接触する部位に対しては予め定められた出力でレーザを照射し、当該画像のうちの画像密度が当該予め定められた閾値よりも小さい箇所に接触する部位に対しては当該予め定められた出力よりも小さい出力でレーザを照射することを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項3】
前記レーザ照射装置は、前記押圧面のうちの前記画像と接触する部位に対して予め定められた出力でレーザを照射し、当該押圧面のうちの当該画像と接触しない部位に対しては当該予め定められた出力よりも小さい出力でレーザを照射し又はレーザを照射しないことを特徴とする請求項1又は2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記レーザ照射装置とは別に、前記押圧面を加熱する加熱源が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の定着装置。
【請求項5】
前記押圧面に接触して配置され、搬送されてきた前記記録材が通過する通過部を当該押圧面との間に形成する形成部材を更に備え、
回転する前記押圧部材は、前記押圧面と前記形成部材との接触部にて前記記録材を押圧し、
前記レーザ照射装置は、前記押圧面のうち、当該押圧面と前記形成部材との前記接触部に達する直前の部位に対しレーザを照射することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の定着装置。
【請求項6】
前記押圧部材は、一方向に搬送される前記記録材を回転しながら押圧するとともに当該一方向と交差する方向に幅を有して形成され、
前記レーザ照射装置は、前記押圧部材の幅方向に並んで配置された複数のレーザ発光素子を備え、当該複数のレーザ発光素子を用いて前記押圧面にレーザを照射することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の定着装置。
【請求項7】
前記押圧面のうち前記レーザ照射装置からのレーザが照射される箇所は、黒色で形成されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の定着装置。
【請求項8】
記録材に画像を形成する画像形成部と、
回転可能に設けられ、前記画像形成部により画像が形成された記録材を押圧面にて押圧する押圧部材と、
前記押圧部材のうちの記録材を押圧する前記押圧面に対してレーザを照射するレーザ照射装置と、
を備え、
前記レーザ照射装置によりレーザが照射され加熱された前記押圧面が前記記録材に押圧されることで当該記録材上の前記画像が当該記録材に定着されることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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