説明

定着装置及び画像形成装置

【課題】加圧回転体の加圧力を解除するときに加圧回転体を支持する支持板が変形するのを抑制することができる定着装置及び画像形成装置を得る。
【解決手段】定着装置100は、加熱ロール104と、加圧ベルト106と、加圧ベルト106の軸方向を板厚方向として加圧ベルト105の両端部を回転可能に支持する一対のレバー部材140と、外力が作用したとき、レバー部材140を加熱ロール104から遠ざかる方向に移動させる操作レバー142と、を有している。ここで、操作レバー142がレバー部材140の両側に設けられているので、板厚方向においてレバー部材140の一方側に作用する荷重と、他方側に作用する荷重との差が低減される。これにより、レバー部材140が板厚方向に変形するのを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の定着装置は、加熱部材と、アーム部材で支持された加圧部材との接触状態を解除する圧力解除レバーが設けられている。圧力解除レバーは、外力が作用したときに回転移動して、アーム部材を加熱部材と加圧部材との接触圧力が解除される方向に移動させる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−058709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、加圧回転体の加圧力を解除するときに加圧回転体を支持する支持板が変形するのを抑制することができる定着装置及び画像形成装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る定着装置は、記録媒体に形成された現像剤像を加熱する加熱回転体と、前記加熱回転体とで記録媒体を挟んで加圧する加圧回転体と、前記加圧回転体の軸方向を板厚方向として前記加圧回転体及び前記加熱回転体の一方の両端部を回転可能に支持する一対の支持板と、前記支持板を前記板厚方向で両側から挟んで前記支持板に取付けられる取付部と、外力が作用する操作部と、を備え、前記操作部に定められた方向の外力が作用したとき、前記支持板を前記加圧回転体及び前記加熱回転体の他方から遠ざかる方向に移動させて、前記加圧回転体及び前記加熱回転体の他方に対する前記加圧回転体及び前記加熱回転体の一方の加圧状態を解除する解除部材と、を有する。
【0006】
本発明の請求項2に係る定着装置は、前記解除部材は、前記支持板を前記加圧回転体及び前記加熱回転体の他方から遠ざかる方向に引っ張って移動させる。
【0007】
本発明の請求項3に係る定着装置は、前記支持板の移動軌跡と前記操作部の移動軌跡が同一平面内にある。
【0008】
本発明の請求項4に係る画像形成装置は、現像剤像を形成する現像剤像形成手段と、前記現像剤像を記録媒体に転写する転写手段と、前記転写手段で転写された記録媒体上の現像剤像を前記加熱回転体及び前記加圧回転体で挟んで記録媒体に定着する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の定着装置と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明は、解除部材の取付部が板厚方向で支持板の片側のみに取り付けられている構成に比べて、加圧回転体の加圧力を解除するときに加圧回転体を支持する支持板が変形するのを抑制することができる。
【0010】
請求項2の発明は、加熱回転体側から支持部材を押して加圧回転体の加圧状態を解除する構成に比べて、加圧回転体の加圧力を解除するときに加圧回転体を支持する支持板が変形するのを抑制することができる。
【0011】
請求項3の発明は、操作部が支持板の面内方向の延長線上からずれて設けられている構成に比べて、加圧回転体の加圧力を解除するときに加圧回転体を支持する支持板が変形するのを抑制することができる。
【0012】
請求項4の発明は、解除部材の取付部が板厚方向で支持板の片側のみに設けられている定着装置を有する構成に比べて、記録媒体の幅方向の画像むらを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の全体構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る定着装置の内部の構成図である。
【図3】本発明の実施形態に係る加圧ベルト及び支持ユニットの分解図である。
【図4】(A)、(B)本発明の実施形態に係る加熱ロール及び加圧ベルトの端部の支持構造を示す斜視図及び側面図である。
【図5】(A)本発明の実施形態に係る加熱ロール及び加圧ベルトの端部の支持構造を示す斜視図である。(B)本発明の実施形態に係る操作レバーとレバー部材との連結状態を示す模式図である。
【図6】(A)、(B)本発明の実施形態に係る操作レバーを回転したときの状態を示すハウジングの部分斜視図である。
【図7】(A)、(B)本発明の実施形態に係る操作レバーを回転したときの加熱ロールと加圧ベルトのニップ解除状態を示す説明図である。
【図8】本発明の実施形態に係る操作レバー、レバー部材、及びブラケットに力が作用している状態を示す模式図である。
【図9】(A)比較例の定着装置の部分斜視図である。(B)比較例の操作レバー、レバー部材、及びブラケットに力が作用している状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態に係る画像形成装置の一例について説明する。
【0015】
(全体構成)
図1には、本発明の実施形態の一例としての画像形成装置10が示されている。画像形成装置10は、筐体12を有している。筐体12は、後述する用紙収納部52から排出ロール46までの各ユニット及び各部材が収納された本体部12Aと、本体部12Aにヒンジ部材13で連結されたカバー部12Bとを含んで構成されている。ここで、カバー部12Bを矢印B方向(図示の時計回り方向)に円弧状に移動させることで、後述する定着装置100が露出するようになっている。また、カバー部12Bを矢印C方向(図示の反時計回り方向)に円弧状に移動させることで、筐体12内が箱状に一体化されるようになっている。そして、筐体12の内部には、入力される画像データに対して画像処理を行なう画像処理部14が設けられている。
【0016】
画像処理部14は、入力された画像データをイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色の階調データに処理するようになっている。また、筐体12の内部中央には、画像処理部14で処理された階調データを受け取ってレーザ光LBによる露光を行う露光装置16が設けられている。
【0017】
露光装置16は、4つの画像形成ユニット20Y、20M、20C、20K(詳細は請後述する)に共通に構成された4つの半導体レーザ(図示省略)が設けられており、これらの半導体レーザからレーザ光LB−Y、LB−M、LB−C、LB−Kが階調データに応じて出射されるようになっている。
【0018】
なお、半導体レーザから出射されたレーザ光LB−Y、LB−M、LB−C、LB−Kは、シリンドリカルレンズ(図示省略)を介して回転多面鏡であるポリゴンミラー17に照射され、ポリゴンミラー17によって偏向走査されるようになっている。そして、ポリゴンミラー17によって偏向走査されたレーザ光LB−Y、LB−M、LB−C、LB−Kは、結像レンズ及び複数枚のミラー(図示省略)を介して、感光体22(詳細は後述する)上の露光ポイントに、斜め下方から走査露光されるようになっている。
【0019】
また、露光装置16は、周囲が直方体状のフレーム18によって密閉されている。そして、フレーム18の上部には、4本のレーザ光LB−Y、LB−M、LB−C、LB−Kを、各画像形成ユニット20Y、20M、20C、20Kの感光体22上に向けて透過させる透明なガラス製の窓部19Y、19M、19C、19Kが設けられている。
【0020】
露光装置16の上方には、現像剤像形成手段の一例として、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4つの画像形成ユニット20Y、20M、20C、20Kが、水平方向に対して傾斜する方向に間隔をおいて配置されている。なお、Y、M、C、Kを区別して説明する必要が無い場合は、符号の末尾のトナー色を表す添字Y、M、C、Kを省略して記載することがある。
【0021】
画像形成ユニット20Y、20M、20C、20Kは、使用するトナー(現像剤)を除いて同様に構成されており、予め決められた速度で回転駆動される円柱状の感光体22と、感光体22の外周面を帯電する帯電ロール24と、帯電した感光体22の外周面に露光装置16の露光によって形成された静電潜像を予め決められた色のトナーで現像してトナー画像(現像剤像)として可視化する現像器26と、トナー画像を転写した後の感光体22の外周面を清掃する清掃ブレード28とを含んで構成されている。また、帯電ロール24の下側には、帯電ロール24と接して帯電ロール24の外周面を清掃する清掃ロール29が設けられている。
【0022】
一方、各画像形成ユニット20Y、20M、20C、20Kの上方には、転写手段の一例としての一次転写ユニット30が設けられている。
【0023】
一次転写ユニット30は、無端状の中間転写ベルト32と、中間転写ベルト32が巻き掛けられ回転駆動されることで中間転写ベルト32を矢印方向に周回移動させる駆動ロール36と、中間転写ベルト32が巻き掛けられ中間転写ベルト32に張力を付与する張力付与ロール40と、張力付与ロール40の上方に設けられ中間転写ベルト32と従動回転する従動ロール42と、中間転写ベルト32を挟んで感光体22Y、22M、22C、22Kの反対側に配置される一次転写ロール34Y、34M、34C、34Kと、駆動ロール36と一次転写ロール34Yとの間に設けられ中間転写ベルト32の裏面を支持する支持ロール37と、を含んで構成されている。
【0024】
そして、画像形成ユニット20Y、20M、20C、20Kの感光体22上に順次形成されたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー画像が、4つの一次転写ロール34Y、34M、34C、34Kによって、中間転写ベルト32上に多重に転写される構成となっている。さらに、中間転写ベルト32を挟んで駆動ロール36の反対側には、中間転写ベルト32の外周面を清掃する清掃ブレード38が設けられている。
【0025】
また、中間転写ベルト32を挟んで従動ロール42の反対側には、転写手段の一例としての二次転写ロール44が設けられている。二次転写ロール44及び従動ロール42には、電圧印加手段(図示省略)が接続されており、二次転写ロール44の電位と従動ロール42の電位との間には電位差が形成されている。そして、中間転写ベルト32上に多重に転写されたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー画像は、中間転写ベルト32により搬送され、従動ロール42と二次転写ロール44との電位差による電界が作用することにより、記録用紙P(記録媒体)に二次転写されるようになっている。なお、筐体12内には用紙搬送路50が設けられており、用紙搬送路50の経路上に中間転写ベルト32と二次転写ロール44との接触部である二次転写位置が設定(配置)されている。
【0026】
二次転写ロール44に対して記録用紙Pの搬送方向の下流側(以下単に下流側と言う)には、記録用紙Pに転写されたトナー画像を熱及び圧力の作用により記録用紙Pに定着する定着装置100が設けられている。なお、定着装置100の詳細については後述する。また、定着装置100の下流側には、トナー画像が定着された記録用紙Pを画像形成装置10の筐体12の上部に設けられた排出部48に排出する排出ロール46が設けられている。
【0027】
一方、筐体12内の下側には、記録用紙Pが収納される用紙収納部52が設けられている。用紙収納部52上には、用紙収納部52内に積載された記録用紙Pを用紙搬送路50へ送り出す給紙ロール54が設けられており、給紙ロール55の下流側には、記録用紙Pを1枚ずつ分離して搬送する分離ロール56が設けられている。また、分離ロール56の下流側には、二次転写位置への記録用紙Pの搬送タイミングを合わせるための位置合せロール58が設けられている。これにより、用紙収納部52から搬送された記録用紙Pは、予め決められたタイミングで回転する位置合せロール58によって、二次転写位置へ送り出される構成となっている。
【0028】
さらに、用紙搬送路50における分離ロール56と位置合せロール58との間、及び定着装置100と排出ロール46との間には、記録用紙Pの両面に画像形成及び定着を行うための両面用搬送路60が接続されている。そして、両面用搬送路60上で排出ロール46の隣には、定着装置100によって表面にトナー画像が定着された記録用紙Pを、排出ロール46によって排出部48上にそのまま排出せずに、両面用搬送路60に搬送する搬送ロール62が設けられている。これにより、両面用搬送路60に沿って搬送される記録用紙Pは、表裏が反転された状態で位置合せロール58へと再度搬送され、記録用紙Pの裏面にトナー画像が転写及び定着されて、排出部48上に排出されるようになっている。
【0029】
次に、画像形成装置10の画像形成工程について説明する。
【0030】
先ず、画像処理部14から露光装置16に各色の階調データが順次出力され、露光装置16から階調データに応じてレーザ光LB−Y、LB−M、LB−C、LB−Kが出射される。そして、レーザ光LB−Y、LB−M、LB−C、LB−Kは、帯電ロール24によって帯電した感光体22の外周面に走査露光され、感光体22の外周面に静電潜像が形成される。
【0031】
続いて、感光体22上に形成された静電潜像は、現像器26Y、26M、26C、26Kによって、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー画像として可視化される。そして、これらのトナー画像は、周回移動する中間転写ベルト32上に、一次転写ロール34によって多重に転写される。
【0032】
続いて、周回移動する中間転写ベルト32上に多重に転写された各色のトナー画像は、位置合せロール58によって用紙搬送路50の二次転写位置に予め決められたタイミングで搬送された記録用紙Pに、二次転写ロール44により二次転写される。
【0033】
続いて、トナー画像が転写された記録用紙Pは、定着装置100へと搬送される。そして、記録用紙Pに転写されたトナー画像は、定着装置100によって記録用紙Pに定着される。なお、片面のみ画像を形成させる場合は、トナー画像定着後の記録用紙Pが、排出ロール46によって排出部48へ排出される。
【0034】
一方、記録用紙Pの両面に画像を形成させる場合は、定着装置100によって表面にトナー画像が定着された記録用紙Pを排出ロール46でそのまま排出せずに、搬送方向を切り替え、搬送ロール62を介して両面用搬送路60へと搬送する。ここで、両面用搬送路60に沿って記録用紙Pを搬送することで、記録用紙Pの表裏が反転され、記録用紙Pが再度、位置合せロール58へと搬送される。そして、表面のときと同様に記録用紙Pの裏面にトナー画像が転写及び定着され後、両面に画像形成された記録用紙Pが、排出ロール46によって排出部48上に排出される。
【0035】
(要部構成)
次に、定着装置100について説明する。
【0036】
図2に示すように、定着装置100は、直方体状のハウジング102を有している。また、定着装置100は、加熱回転体の一例としての加熱ロール104と、加圧回転体の一例としての加圧ベルト106と、加圧ベルト106の両端部を回転可能に支持する支持板の一例としてのレバー部材140(図4(A)参照)と、加熱ロール104に対する加圧ベルト106の加圧状態を解除する解除部材の一例としての操作レバー142(図4(A)参照)と、を含んで構成されている。
【0037】
加熱ロール104は、一例として、記録用紙P(図1参照)の幅方向であり且つ露光装置16(図1参照)の主走査方向となる矢印Z方向を軸方向とすると共に、矢印Z方向の両端部が開放された円筒状の部材であり、鋼材で構成された薄肉円筒状の基材の外周面にシリコンゴムからなる弾性層及びフッ素樹脂を含む離型層が重ねて形成された多層構造となっている。また、加熱ロール104の内側には、矢印Z方向を軸方向として、熱源の一例としてのハロゲンランプ108が加熱ロール104の内周面と間隔をあけて設けられている。なお、矢印Z方向と直交する水平方向を矢印X方向、矢印X方向及び矢印Z方向と直交する鉛直方向を矢印Y方向として、以後の説明では、単にX方向、Y方向、Z方向と記載する。
【0038】
加圧ベルト106は、一例として、矢印Z方向を軸方向とすると共に矢印Z方向の両端部が開放された無端状のベルト部材であり、ポリイミドで構成された薄肉円筒状の基材の外周面にシリコンゴムからなる弾性層及びフッ素樹脂を含む離型層が重ねて形成された多層構造となっている。また、加圧ベルト106の内側には、レバー部材140(図4(A)参照)と共に加圧ベルト106を回転自在に支持する支持ユニット110と、支持ユニット110に取り付けられ、加熱ロール104の外周面に加圧ベルト106の外周面を押し付けるニップ部材112とパッド部材122とが設けられている。そして、加圧ベルト106は、加熱ロール104とで記録用紙P(図示省略)を挟んで加圧するようになっており、加熱ロール104の外周面と加圧ベルト106の外周面とが接触する(記録用紙Pを挟む)部位をニップ部Nとする。
【0039】
図3に示すように、支持ユニット110は、合成樹脂製のニップ部材112と、ニップ部材112の上側の面に直立して固定される2枚の金属板からなるベルトフレーム114、115と、ベルトフレーム114、115の上端に取り付けられるフェルト部材116と、ニップ部材112に取り付けられ加圧ベルト106を摺動させるための摺動シート117と、ベルトフレーム114、115のZ方向の一端部114A、115Aに取り付けられるベルトガイド部材118と、ベルトフレーム114、115のZ方向の他端部114B、115Bに取り付けられるベルトガイド部材119と、を有している。
【0040】
ニップ部材112は、ニップ部N側(図2参照)に開口した凹部112Aが形成されており、凹部112A内にパッド部材122が固定されるようになっている。また、フェルト部材116は、潤滑用のオイルが含浸されており、加圧ベルト106の内周面と接触することで当該内周面にオイルを供給するようになっている。
【0041】
ベルトガイド部材118は、Z方向に開口した円筒状の周壁118Aと、周壁118AのZ方向とは反対方向の一端で周壁118Aの半径方向に突出したフランジ部118Bと、を含んで構成されており、周壁118Aの内側には、ベルトフレーム114、115の一端部114A、115Aが差し込まれて固定される固定部(図示省略)が形成されている。
【0042】
同様に、ベルトガイド部材119は、Z方向とは反対方向に開口した円筒状の周壁11)Aと、周壁119AのZ方向の一端で周壁119Aの半径方向に突出したフランジ部119Bと、を含んで構成されており、周壁119Aの内側には、ベルトフレーム114、115の他端部114B、115Bが差し込まれて固定される固定部119C、119Dが形成されている。なお、フランジ部118B、119Bは、ニップ部N(図2参照)側に配置される部位が切り欠かれており、加圧ベルト106がニップ部Nで変形したときに加圧ベルト106と接触しないようになっている。
【0043】
図4(A)、(B)に示すように、加熱ロール104の端部は、ベアリング126に挿入されており、ベアリング126は、Z方向に見て略コ字状に形成されたブラケット128に嵌め込まれて固定されている。これにより、加熱ロール104がブラケット128に対して回転可能に支持されている。
【0044】
ブラケット128は、コ字状に形成されベアリング126が取付けられた取付部128Aと、取付部128Aの一端部(下側開口端部)に設けられ後述するレバー部材140が円弧状に移動可能に支持された支点部128Bと、取付部128Aの他端部(支点部128B側とは反対側の上端部)に設けられた付勢部128Cと、を有しており、X方向に見てY方向に直立配置されている。
【0045】
支点部128Bには、Z方向(厚さ方向)に貫通した貫通孔(図示省略)が形成されており、この貫通孔と、レバー部材140の下端部に形成された貫通孔(図示省略)とに円柱状のピン部材132が挿入されることで、レバー部材140がブラケット128に対して円弧状に相対移動可能となっている。
【0046】
付勢部128Cの端部は、Z方向に折り曲げ加工されてY−Z面に沿った取付面128Dが形成されている。そして、取付面128Dには、支持ブラケット134がネジ(図示省略)で固定されている。支持ブラケット134は、1枚の金属板を2か所で直角に折り曲げたものであり、取付面128Dに取付けられる被取付部134Aと、被取付部134Aに対してX方向に直角に折り曲げられた中央部134Bと、中央部134Bに対してZ方向とは反対方向に直角に折り曲げられた支持部134Cと、を有している。
【0047】
支持部134Cは、Y−Z面に沿っており、X方向とは反対方向に延びる円柱状のロッド136の軸方向の一端が固定されている。そして、ロッド136は、レバー部材140を加熱ロール104側(X方向とは反対方向)に付勢するスプリング138に挿入されている。なお、ロッド136の他端は固定されておらず、自由端となっている。
【0048】
ここで、取付部128Aには、Z方向とは反対方向に直角に折り曲げられた折曲部128Eが形成されており、支点部128Bには、Z方向とは反対方向に折り曲げられた折曲部128Fが形成されている。そして、折曲部128E、128Fがハウジング102(図2参照)にネジ(図示省略)で固定されることにより、ブラケット128がハウジング102内で直立して固定されている。
【0049】
一方、図5(A)に示すように、レバー部材140は、ベルトガイド部材119の凸部(図示省略)が嵌め込まれて取り付けられる2箇所の取付孔141が形成された平板状(X−Y面に位置)の中央部140Aと、中央部140Aの下端に突出形成され支点部128Bにピン部材132で回転可能に取り付けられた支点取付部140Bと、中央部140Aの上部で付勢部128Cに隣接する位置(加熱ロール104側)へ延びる被付勢部140Cと、中央部140Aの上部でX方向における被付勢部140Cとは反対側へ延びる腕部140Dと、を含んで構成されている。そして、レバー部材140は、加圧ベルト106(図2参照)の両端部を回転可能に支持している。
【0050】
また、被付勢部140CのX方向とは反対方向の端部には、Z方向とは反対方向に折り曲げられてY−Z面に沿った被付勢面140Eが形成されている。そして、被付勢面14Eとブラケット128の支持部134Cとは、X方向で対向配置されており、被付勢面140Eにスプリング138の他端が接触して、レバー部材140の上部をX方向とは反対方向に付勢している。さらに、腕部140DのX方向の端部には、外力が作用したとき、レバー部材140を加熱ロール104(図2参照)から遠ざかる方向に移動させて、加熱ロール104に対する加圧ベルト106(図2参照)の加圧状態を解除する操作レバー142が回転可能に連結されている。
【0051】
操作レバー142は、レバー部材140の腕部140Dに回転可能に取り付けられる取付部142Bと、使用者が指で摘んで操作する操作部142Aと、を含んで構成されている。また、図4(B)に示すように、操作レバー142のY方向の上部には、操作レバー142がY方向に吊下げられた状態でZ方向に見て、後述するハウジング102の側壁102A(図6(A)参照)と対向配置される側面142Eが形成されている。そして、側面142Eの上端に連続して、レバー部材140から離れる方向(斜め上方)に傾斜した傾斜面142Fが形成されている。
【0052】
ここで、図7(A)に示すように、操作レバー142は、シャフト144の回転中心Oから側面142Eまでの距離L1よりも、回転中心Oから傾斜面142Fまでの距離L2の方が長くなるように形成されている。これにより、操作レバー142をY方向に吊下げた状態から矢印R方向に回転させたとき、ハウジング102の側壁102Aと接触するようになっている。
【0053】
さらに、図5(B)に示すように、操作レバー142の取付部142Bには、レバー部材140の腕部140Dが挿入される凹部142Cが形成されている。また、取付部142Bには、Z方向に貫通した取付孔142Dが形成されている。そして、レバー部材140の腕部140Dに形成されたZ方向に貫通する貫通孔140Fと取付孔142Dとを同軸(Z方向)上に配置した状態で、貫通孔140F及び取付孔142Dに円柱状のシャフト144を挿入することで、レバー部材140に対して操作レバー142が回転可能に取り付けられている。このように、取付部142Bは、レバー部材140をZ方向(板厚方向)で両側から挟んでレバー部材140に取付けられている。
【0054】
一方、図6(A)に示すように、ハウジング102のZ方向の端部で且つX方向側でY方向に直立する側壁102Aには、レバー部材140の腕部140Dが挿入される挿入孔103が形成されている。そして、腕部140Dの端部は、挿入孔103を通してハウジング102の外側へ延出されている。さらに、操作レバー142は、ハウジング102の外側で回転可能に設けられている。
【0055】
ここで、図6(A)に示すように、操作レバー142がY方向に吊下げられた状態では、スプリング138(図4(A)参照)の付勢力により、図2に示すように、加熱ロール104と加圧ベルト106が接触してニップ部Nを形成するようになっている。
【0056】
一方、図6(B)に示すように、操作レバー142が、X方向に沿って配置されるように回転された状態では、図2において、加圧ベルト106が加熱ロール104から退避されるようになっている。
【0057】
また、図7(A)及び図8に示すように、レバー部材140の移動軌跡(矢印−R方向)と操作レバー142の移動軌跡(矢印R方向)は、同一平面MA内にある。なお、平面MAは、X−Y面に沿った平面である。
【0058】
なお、図4(A)、(B)、図5(A)、(B)、及び図6(A)、(B)では、定着装置100のベルトガイド部材119(図3参照)側について説明しており、ベルトガイド部材118(図3参照)側については説明していないが、ベルトガイド部材118側は、ベルトガイド部材119側と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0059】
次に、比較例の定着装置200について説明する。なお、本実施形態の定着装置100と基本的に同様の構成である部材については、定着装置100と同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0060】
図9(A)、(B)に示すように、定着装置200は、Z方向にみて略コ字状に形成され加熱ロール104の端部が支持されるブラケット202と、Z方向にみて略コ字状に形成され加圧ベルト106の端部が支持されるレバー部材204と、レバー部材204をX方向に移動させる操作レバー208と、を含んで構成されている。ブラケット202とレバー部材204は、略コ字状の部位が対向配置されており、レバー部材204は、ブラケット202の下端にピン206で回転可能に連結されている。
【0061】
ブラケット202は、定着装置200のハウジング(図示省略)に固定されている。また、ブラケット202の上部には、X方向を軸方向とする円柱状のロッド212が固定された取付部202Aが形成されている。さらに、ブラケット202には、操作レバー208が、X方向に操作力F1を作用させるように回転可能に取り付けられている。
【0062】
一方、レバー部材204は、加圧ベルト106の端部が支持される略コ字状の支持部204Aと、支持部204Aの上部でY−Z面に沿って配置され操作レバー208と接触する第1被付勢部204Bと、平面視で支持部204Aを基準として第1被付勢部204B側とは反対側でY−Z面と平行に配置される第2被付勢部204Cと、を含んで構成されている。
【0063】
第2被付勢部204Cには、X方向に貫通した貫通孔(図示省略)が形成されており、この貫通孔にロッド212が挿入されている。そして、ロッド212は、スプリング214に挿入され、スプリング214が脱落しないように保持している。なお、通常は、スプリング214の付勢力F2により、加熱ロール104と加圧ベルト106を接触させている。
【0064】
このような比較例の定着装置200では、操作レバー208を第1被付勢部204Bがブラケット202から遠ざかる方向に回転させると、第1被付勢部204BがX方向に移動すると共に、第2被付勢部204Cがスプリング214のX方向とは反対方向の付勢力F2に抵抗しながらX方向に移動して、レバー部材204がX方向に移動する。そして、加圧ベルト106は、加熱ロール104の外周面から退避される(加熱ロール104との接触が解除される)。
【0065】
ここで、図9(B)に示すように、比較例の定着装置200は、操作レバー208を加圧ベルト106による加圧が解除される方向に回転させたとき、付勢力F1が作用する位置が支持部204AからZ方向にずれている。このため、支持部204Aには、Z方向とは反対方向の曲げ応力F3が作用し、レバー部材204が許容値を超えて曲げ変形する場合がある。
【0066】
そして、レバー部材204が曲げ変形することにより、再度、レバー部材204を回転させて加熱ロール104と加圧ベルト106を接触させたとき、Z方向で加熱ロール104と加圧ベルト106の圧力バランスがずれることになる。さらに、記録用紙P上のトナー画像に作用する圧力バランスが不均一となるので、定着後の記録用紙Pの幅方向(Z方向)の画像むらや紙しわが生じることになる。
【0067】
(作用)
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0068】
図7(A)に示すように、加熱ロール104と加圧ベルト106が接触してニップ部Nが形成されている状態において、操作レバー142の操作部142Aを摘んで矢印R方向(X−Y面内であり、Y方向に吊下げられた操作レバー142がX方向に沿って配置される方向)に回転させると、操作レバー142の側面142E又は傾斜面142Fが、ハウジング102の側壁102Aと接触する。
【0069】
なお、シャフト144の回転中心Oから側面142Eまでの距離L1よりも、回転中心Oから傾斜面142Fまでの距離L2の方が長いため、操作レバー142の回転角を大きくしていくと、シャフト144の回転中心Oは、ハウジング102の側壁102AからX方向に離れる。そして、レバー部材140は、ピン部材132を中心として、矢印−R方向に円弧状に移動する。
【0070】
即ち、図7(B)に示すように、操作レバー142がレバー部材140の上部をX方向に引っ張って移動させるため、レバー部材140に支持されている加圧ベルト106もX方向に移動する。これにより、加熱ロール104の外周面から加圧ベルト106が退避して、加圧ベルト106による加圧力が解除される。
【0071】
図8に示すように、定着装置100では、操作レバー142がハウジング102の側壁102Aと接触して、レバー部材140にX方向の引張力F1が作用している。ここで、操作レバー142は、レバー部材140を挟んでZ方向(板厚方向)の両側に設けられているため、Z方向において、比較例の定着装置200(図9(A)、(B)参照)と比べて、レバー部材140の一方側に作用する荷重と、他方側に作用する荷重との差が低減される。これにより、レバー部材140がZ方向に変形することが抑制される。
【0072】
また、定着装置100では、比較例の定着装置200(図9(B)参照)のように、レバー部材140に対して押し付ける力F1は作用しておらず、レバー部材140を面内方向(X方向)に引っ張る引張力F1が作用しているので、レバー部材140がZ方向に曲げ変形することが抑制される。
【0073】
さらに、定着装置100では、レバー部材140の移動軌跡と操作レバー142の移動軌跡が同一平面MA内にあるので、操作レバー142がレバー部材140の両側に取り付けられているが操作部142AがZ方向にずれているものに比べて、レバー部材140がZ方向に曲げ変形することが抑制される。
【0074】
このように、定着装置100では、比較例の定着装置200に比べて、レバー部材140がZ方向に変形(曲げ変形)することが抑制されるので、再度、レバー部材140を回転させて加熱ロール104と加圧ベルト106を接触させたとき、Z方向で加熱ロール104と加圧ベルト106の圧力バランスがずれることが抑制される。そして、記録用紙P上のトナー画像に作用する圧力バランスが均等となるので、定着後の記録用紙Pの幅方向(Z方向)の画像むらや紙しわが抑制される。
【0075】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されない。
【0076】
操作レバー142は、レバー部材140を挟んでZ方向で対称形状となるように形成してもよい。また、加圧ベルト106に換えて、加圧ロールを設けてもよい。
【0077】
転写手段は、中間転写ベルト32を用いる構成に限らず、感光体22から記録用紙P上へ直接、トナー画像を転写する構成であってもよい。
【0078】
加熱ロール104から遠ざかる方向に加圧ベルト106を移動させて加圧状態を解除するものに限らず、加熱ロール104側にレバー部材140を設けて、加圧ベルト106から遠ざかる方向に加熱ロール104を移動させて加圧状態を解除するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0079】
10 画像形成装置
20Y 画像形成ユニット(現像剤像形成手段の一例)
20M 画像形成ユニット(現像剤像形成手段の一例)
20C 画像形成ユニット(現像剤像形成手段の一例)
20K 画像形成ユニット(現像剤像形成手段の一例)
30 一次転写ユニット(転写手段の一例)
44 二次転写ロール(転写手段の一例)
100 定着装置
104 加熱ロール(加熱回転体の一例))
106 加圧ベルト(加圧回転体の一例)
140 レバー部材(支持板の一例)
142 操作レバー(解除部材の一例)
142A 操作部
142B 取付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に形成された現像剤像を加熱する加熱回転体と、
前記加熱回転体とで記録媒体を挟んで加圧する加圧回転体と、
前記加圧回転体の軸方向を板厚方向として前記加圧回転体及び前記加熱回転体の一方の両端部を回転可能に支持する一対の支持板と、
前記支持板を前記板厚方向で両側から挟んで前記支持板に取付けられる取付部と、外力が作用する操作部と、を備え、前記操作部に定められた方向の外力が作用したとき、前記支持板を前記加圧回転体及び前記加熱回転体の他方から遠ざかる方向に移動させて、前記加圧回転体及び前記加熱回転体の他方に対する前記加圧回転体及び前記加熱回転体の一方の加圧状態を解除する解除部材と、
を有する定着装置。
【請求項2】
前記解除部材は、前記支持板を前記加圧回転体及び前記加熱回転体の他方から遠ざかる方向に引っ張って移動させる請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記支持板の移動軌跡と前記操作部の移動軌跡が同一平面内にある請求項1又は請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
現像剤像を形成する現像剤像形成手段と、
前記現像剤像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記転写手段で転写された記録媒体上の現像剤像を前記加熱回転体及び前記加圧回転体で挟んで記録媒体に定着する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の定着装置と、
を有する画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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