説明

定着装置及び画像形成装置

【課題】自動で定着ニップの圧力を解除又は低減させることができると共に、専用の駆動手段が不要な定着装置を提供する。
【解決手段】本発明は、駆動手段から回転力が伝達される切換ギヤ31と、2つのギヤ部32a,32bの少なくとも一方に欠歯部321を設けた操作ギヤ32と、操作ギヤ32と一体的に回転して、支持部材25を押圧する押圧状態と、支持部材25を押圧しない非押圧状態とに切換操作される圧解除部材33と、切換ギヤ31を軸方向に往復移動させて、切換ギヤ31を2つのギヤ部32a,32bの間で切り換えて配置する軸方向移動手段29,30とを備える。欠歯部321を前記非押圧状態で切換ギヤ31と対向させた。さらに、一方のギヤ部32aに設けた欠歯部321と他方のギヤ部32bに設けた歯部との間に、欠歯部321から当該歯部に向かって高さが徐々に高くなる案内歯326を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体上の未定着画像を当該記録媒体に定着する定着装置、及びその定着装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等の電子写真方式の画像形成装置には、紙等の記録媒体に画像を定着させる定着装置が設けられている。定着装置は一対の定着部材を有し、定着部材は、例えば、内部に加熱源を有する定着ローラと、定着ローラを加圧する加圧ローラとによって構成される。そして、定着ローラと加圧ローラとが互いに圧接して形成された定着ニップに、記録媒体を通過させることによってトナー画像が記録媒体に定着される。
【0003】
しかしながら、この種の定着装置を備える画像形成装置において、定着ローラと加圧ローラとが圧接された状態で画像形成動作が長期間行われないと、定着ローラと加圧ローラの圧接される箇所でクリープが発生するといった問題がある。また、定着ローラと加圧ローラとの間で紙詰まりが発生した場合、定着ローラと加圧ローラとの間の加圧力が強いと、両ローラ間から詰まった紙を取り除きにくいといった問題もある。
【0004】
そこで、上記クリープの発生や紙詰まり処理の問題を解決するために、定着ローラと加圧ローラとの加圧力を解除する又は低減させる手段を備えた定着装置が提案されている。例えば、特許文献1に記載の定着装置は、定着ニップの圧力を解除する圧力解除レバーを備えている。この場合、圧力解除レバーを手動で操作することによって、加圧ローラを定着ローラに対して離間させ、定着ニップの圧力を解除する。また、特許文献2に記載されているように、電動で定着ニップの圧力を解除できる圧力解除機構を備えた定着装置もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、手動でニップ圧の解除を行う構成では、圧力解除レバーの操作が煩わしいといった問題や、レバーを操作し忘れるといった虞がある。また、一般に、圧力解除レバーは定着装置の近くに設けられていることから、定着装置が加熱されることにより圧力解除レバーも熱くなる可能性があり、手動でレバーを操作するのは安全上好ましくない。
【0006】
また、近年の小型化に伴う定着ニップ幅の減少と通紙速度の高速化などによる、紙への付与熱量の減少を補填するため、加圧ローラの加圧力を強くして定着ニップ幅を十分に確保することが行われているが、特にこのような加圧力を強くした構成においては、圧力解除レバーの操作が困難となる。
【0007】
これに対し、電動でニップ圧の解除を行う構成では、手動で圧力を解除する構成における上記問題を解決することができる。しかしながら、電動の場合は、圧力解除機構を駆動させるための専用のモータ等を設ける必要があり、装置の大型化やコスト増となる問題がある。
【0008】
本発明は、斯かる事情に鑑み、自動で定着ニップの圧力を解除又は低減させることができると共に、専用の駆動手段が不要な定着装置、及びその定着装置を備えた画像形成装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、記録媒体上の画像を当該記録媒体に定着させる一対の定着部材と、前記定着部材に回転力を与える駆動手段と、前記定着部材を互いに接近離間可能に支持する一対の支持部材と、前記定着部材を互いに接近させる方向に前記支持部材を付勢する付勢手段とを備えた定着装置において、前記駆動手段から回転力が伝達される切換ギヤと、軸方向の異なる位置に配設された2つのギヤ部の一方に欠歯部を設けた操作ギヤと、前記操作ギヤと一体的に回転して、前記一対の支持部材の一方を前記付勢手段に抗して押圧する押圧状態と、前記支持部材を押圧しない非押圧状態とに切換操作される圧解除部材と、前記切換ギヤと前記操作ギヤを相対的に軸方向に往復移動させて、前記切換ギヤを前記2つのギヤ部の間で切り換えて噛合可能に配置する軸方向移動手段とを備え、前記欠歯部を、前記圧解除部材が前記非押圧状態に配設された状態で切換ギヤと対向する位置に配設し、前記一方のギヤ部に設けた欠歯部と前記他方のギヤ部に設けた歯部との間に、当該欠歯部から当該歯部に向かって高さが徐々に高くなる案内歯を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、定着部材間の圧解除を自動で行うことができるので、従来のような圧解除レバーを操作する煩わしさや操作のし忘れがなく、操作性と信頼性を向上させることができる。また、熱くなる虞のある圧解除レバーを手動で操作する必要がないため、安全性も向上する。
【0011】
また、本発明によれば、定着部材に回転力を付与するための駆動手段の駆動力を用いて、定着部材間の圧解除を行うことができる。すなわち、本発明は、1つの駆動手段の駆動力を用いて定着動作と圧解除動作を行うことが可能であるので、圧解除を行うための専用の駆動手段を備える必要がない。これにより、定着装置及び画像形成装置の小型化や低コスト化を実現することができる。
【0012】
さらに、本発明によれば、欠歯部と歯部との間に、高さが徐々に高くなる案内歯を設けているので、切換ギヤを欠歯部から歯部へスムーズに移動させることができ、ニップ圧切換動作の安定性と信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る画像形成装置の実施の一形態を示す概略構成図である。
【図2】本発明に係る定着装置の一端部側の外観斜視図である。
【図3】前記定着装置の側面図である。
【図4】図2とは反対側から見た定着装置の一端部側の外観斜視図である。
【図5】(a)は、前記定着部材に設けた圧解除部材が加圧プレートを押圧していない非押圧状態を示す図であり、(b)は、前記圧解除部材が加圧プレートを押圧している押圧状態を示す図である。
【図6】前記圧解除部材の拡大図である。
【図7】前記実施形態における圧解除機構の動作を説明するための図である。
【図8】前記圧解除機構の動作を説明するための図である。
【図9】前記圧解除機構の動作を説明するための図である。
【図10】前記圧解除機構の動作を説明するための図である。
【図11】前記圧解除機構の動作を説明するための図である。
【図12】本発明の他の実施形態に係る定着装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0015】
まず、図1を参照して、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の全体構成及び動作について説明する。
図1に示す画像形成装置は、カラーレーザープリンタであり、その装置本体100には、画像形成ユニットとしての4つのプロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkが着脱可能に装着されている。各プロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の異なる色の現像剤を収容している以外は同様の構成となっている。なお、現像剤としては、トナーから成る一成分現像剤を用いてもよいし、トナーとキャリアから成る二成分現像剤を用いても構わない。
【0016】
具体的には、各プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkは、潜像担持体としてのドラム状の感光体2と、感光体2の表面を帯電させる帯電ローラ3等を備えた帯電装置と、感光体2の表面にトナーを供給する現像装置4と、感光体2の表面をクリーニングするためのクリーニングブレード5等を備えたクリーニング装置などを備える。なお、図1では、ブラックのプロセスユニット1Bkが備える感光体2、帯電ローラ3、現像装置4、クリーニングブレード5のみに符号を付しており、その他のプロセスユニット1Y,1C,1Mにおいては符号を省略している。
【0017】
各プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkの上方には、感光体2の表面を露光する露光装置6が配設されている。露光装置6は、光源、ポリゴンミラー、f−θレンズ、反射ミラー等を有し、画像データに基づいて各感光体2の表面へレーザー光を照射するようになっている。
【0018】
また、各プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkの下方には、転写装置7が配設されている。転写装置7は、転写体としての無端状のベルトから構成される中間転写ベルト8を有する。中間転写ベルト8は、支持部材としての駆動ローラ9と従動ローラ10に張架されており、駆動ローラ9が図の反時計回りに回転することによって、中間転写ベルト8は図の矢印で示す方向に周回走行(回転)するように構成されている。
【0019】
4つの感光体2に対向した位置に、一次転写手段としての4つの一次転写ローラ11が配設されている。各一次転写ローラ11はそれぞれの位置で中間転写ベルト8の内周面を押圧しており、中間転写ベルト8の押圧された部分と各感光体2とが接触する箇所に一次転写ニップが形成されている。また、各一次転写ローラ11は、図示しない電源に接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が各一次転写ローラ11に印加されるようになっている。
【0020】
また、駆動ローラ9に対向した位置に、二次転写手段としての二次転写ローラ12が配設されている。この二次転写ローラ12は中間転写ベルト8の外周面を押圧しており、二次転写ローラ12と中間転写ベルト8とが接触する箇所に二次転写ニップが形成されている。また、二次転写ローラ12は、一次転写ローラ11と同様に、図示しない電源に接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が二次転写ローラ12に印加されるようになっている。
【0021】
また、中間転写ベルト8の図の右端側の外周面には、中間転写ベルト8の表面をクリーニングするベルトクリーニング装置13が配設されている。このベルトクリーニング装置13から伸びた図示しない廃トナー移送ホースは、転写装置7の下方に配設された廃トナー収容器14の入口部に接続されている。
【0022】
画像形成装置本体100の下部には、記録媒体としての用紙Pを収容した給紙トレイ15や、給紙トレイ15から用紙Pを搬出する給紙ローラ16等が設けてある。なお、上記用紙Pは、厚紙、はがき、封筒、普通紙、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ等を含む。さらに、記録媒体には、用紙P以外に、OHPシートもしくはOHPフィルム等のシート材も含まれる。
【0023】
一方、画像形成装置本体100の上部には、用紙を外部へ排出するための一対の排紙ローラ17と、排出された記録媒体をストックするための排紙トレイ18とが配設されている。
【0024】
また、画像形成装置本体100内には、用紙Pを給紙トレイ15から二次転写ニップを通って排紙ローラ17へ搬送するための搬送路R1が配設されている。搬送路R1において、二次転写ローラ12の位置よりも用紙搬送方向上流側には、二次転写ニップへ用紙Pを給送する給送手段としての一対のレジストローラ19が配設されている。また、二次転写ローラ12の位置よりも用紙搬送方向下流側には、用紙Pに転写された未定着画像を定着するための定着装置20が配設されている。この定着装置20は、用紙に画像を定着させる一対の定着部材として、定着回転体としての定着ローラ21、加圧回転体としての加圧ローラ22を有する。また、定着ローラ21内には、熱源としてのヒータ23が設けられている。
【0025】
また、画像形成装置本体100内には、両面印刷を行う際に用紙を表裏反転させるための搬送路として、反転路R2が配設されている。反転路R2は、搬送路R1の搬送方向下流端部の手前側で分岐すると共に、レジストローラ19の手前側で搬送路R1に合流している。また、両面印刷を行う際、上記排紙ローラ17は、用紙Pを排出する方向とは逆方向に搬送して反転路R2へと送る、いわゆるスイッチバックローラとして機能する。
【0026】
上記画像形成装置は以下のように動作する。
作像動作が開始されると、各プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkの感光体2が図示しない駆動装置によって図の時計回りに回転駆動され、各感光体2の表面が帯電ローラ3によって所定の極性に一様に帯電される。帯電された各感光体2の表面には、露光装置6からレーザー光がそれぞれ照射されて、それぞれの感光体2の表面に静電潜像が形成される。このとき、各感光体2に露光する画像情報は所望のフルカラー画像をイエロー、シアン、マゼンタ及びブラックの色情報に分解した単色の画像情報である。このように感光体2上に形成された静電潜像に、各現像装置4によってトナーが供給されることにより、静電潜像はトナー画像として顕像化(可視像化)される。
【0027】
続いて、中間転写ベルト8を張架する駆動ローラ9が図の反時計回りに回転駆動されることにより、中間転写ベルト8が図の矢印で示す方向に走行駆動される。また、各一次転写ローラ11に、トナーの帯電極性と逆極性の定電圧又は定電流制御された電圧が印加される。これにより、各一次転写ローラ11と各感光体2との間の一次転写ニップにおいて転写電界が形成される。そして、各プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkの感光体2に形成された各色のトナー画像が、上記一次転写ニップにおいて形成された転写電界によって、中間転写ベルト8上に順次重ね合わせて転写される。かくして中間転写ベルト8はその表面にフルカラーのトナー画像を担持する。
【0028】
また、中間転写ベルト8に転写しきれなかった各感光体2上のトナーは、それぞれ、クリーニングブレード5によって除去される。次いで、各感光体2の表面が図示していない除電装置によって除電作用を受け、その表面電位が初期化されて次の画像形成に備えられる。
【0029】
一方、画像形成装置の下部では、給紙ローラ16が回転駆動することによって、給紙トレイ15に収容された用紙Pが搬送路R1に送り出される。搬送路R1に送り出された用紙Pは、レジストローラ19によってタイミングを計られて、二次転写ローラ12とそれに対向する駆動ローラ9との間の二次転写ニップに送られる。このとき二次転写ローラ12には、中間転写ベルト8上のトナー画像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加されており、これにより、二次転写ニップに転写電界が形成されている。そして、二次転写ニップに形成された転写電界によって、中間転写ベルト8上のトナー画像が用紙P上に一括して転写される。あるいは、駆動ローラ9に対しトナーの帯電極性と同極性の転写電圧を印加することにより、中間転写ベルト8上のトナー画像を用紙Pに転写するようにしてもよい。
【0030】
また、用紙Pに転写しきれなかった中間転写ベルト8上の残留するトナーは、ベルトクリーニング装置13によって除去される。そして、除去されたトナーは、図示しない廃トナー移送ホースを介して廃トナー収容器14へ搬送され回収される。
【0031】
トナー画像が転写された用紙Pは、定着装置20へと搬送され、定着ローラ21と加圧ローラ22によって用紙Pが加熱及び加圧されてトナー画像が定着される。その後、用紙Pは一対の排紙ローラ17の間へと搬送され、排紙ローラ17が用紙Pを挟持して回転することにより用紙Pが装置外へ排出される。
【0032】
また、両面印刷を行う場合は、上記定着装置20によって用紙Pの片面(表側の面)にトナー画像を定着した後、当該用紙Pは、上記排出ローラ17によって排出方向に搬送されるが、用紙Pの後端が反転路R2の分岐点を通過した時点で、排紙ローラ17を逆回転させる。これにより、用紙Pはスイッチバックされ反転路R2へと進行する。そして、用紙Pは、反転路R2内を通過すると、表裏が反転された状態で再び搬送路R1へ案内される。以降、上記と同様の工程を経て、用紙Pの裏面にトナー画像が転写され、その画像が定着された後、用紙Pは装置外へ排出される。
【0033】
以上の説明は、用紙上にフルカラー画像を形成するときの画像形成動作であるが、4つのプロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkのいずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つのプロセスユニットを使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
【0034】
次に、上記定着装置20について詳しく説明する。
上述のように、本実施形態の定着装置20は、定着回転体としての定着ローラ21と、加圧回転体としての加圧ローラ22とを有する。定着ローラ21は、アルミニウム又は鉄等の金属材料からなる円筒体(肉厚が1mm、外径が30mm)と、その表面に形成されたシリコーンゴム、フッ素ゴム、又は発泡性シリコーンゴム等からなる弾性層(肉厚は1mm程度)と、さらにその表面に形成されたPFA(4フッ化エチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂)、又はPTFA(ポリテトラフルオロエチレン)等からなる離型層(厚みは数十μm程度)とを有している。
【0035】
また、上記円筒体の内部には上記ヒータ23が設けられている。本実施形態のヒータ23は、ハロゲンヒータであって、その両端部が定着装置20のフレームに固定されている。ヒータ23は、画像形成装置本体に設けられている図示しない電源部(交流電源)により出力制御され、出力制御されたヒータ23からの輻射熱によって上記円筒体が加熱されるようになっている。さらに、加熱された円筒体の熱は、弾性層、離型層へと熱が伝えられ、用紙上のトナー画像に熱が加えられる。
【0036】
また、温度検知手段としての図示しないサーモパイルが、定着ローラ21の表面に対し非接触に対向して配設されており、このサーモパイルによる温度検知結果に基づいて上記ヒータ23の出力制御が行われるようになっている。詳しくは、サーモパイルの温度検知結果に基づいて定められた通電時間だけ、ヒータ23に交流電圧が印加される。このようなヒータ23の出力制御によって、定着ローラ21の温度(定着温度)を所望の温度(目標制御温度)に調整制御することができる。また、定着ローラ21は、駆動モータ(不図示)によって回転駆動されるようになっている。
【0037】
続いて、加圧ローラ22は、芯金と、その表面に形成されたシリコーンゴム、フッ素ゴム、又は発泡性シリコーンゴム等からなる弾性層(肉厚が4mm程度)とを有する。加圧ローラ22は外径が35mm程度に設定されている。なお、弾性層の表面にPFA又はPTFE等からなる離型層を設けることもできる。そして、加圧ローラ22は後述の加圧機構によって定着ローラ21に圧接する。こうして、加圧ローラ22と定着ローラ21との間に、所望の定着ニップが形成される。また、本実施形態において、加圧ローラ22を直接的に加熱するヒータ等の加熱手段を設置したり、ヒータ23の出力制御にローラ表面に接触対向するサーミスタを用いたりすることも可能である。
【0038】
また、定着ローラ21と加圧ローラ22とが当接する定着ニップの入口側には、用紙の搬送を案内するガイド板(不図示)が配設されている。また、定着ニップの出口側近傍には、定着ニップから送り出された用紙(定着工程後の用紙)が定着ローラ21に巻き付く不具合を抑止する分離板(不図示)が設置されている。
【0039】
上述のように構成された定着装置20は、以下のように動作する。
画像形成装置本体の電源スイッチが投入されると、交流電源からヒータ23に交流電圧が印加(給電)されると共に、不図示の駆動モータによって定着ローラ21が回転駆動を開始されて、それと同時に加圧ローラ22が従動回転する。その後、給紙トレイ15から用紙Pが給送されて、二次転写ニップの位置で用紙P上に未定着画像が担持される。未定着画像(トナー像)が担持された用紙Pは、定着装置20に搬送されて、圧接状態にある定着ローラ21と加圧ローラ22のニップに送入される。そして、定着ローラ21による加熱と、定着ローラ21及び加圧ローラ22の押圧力とによって、用紙Pの表面にトナー画像が定着される。その後、用紙Pは、回転する定着ローラ21及び加圧ローラ22によってそのニップから送り出され、排紙ローラ17によって排紙トレイ18に排出される。
【0040】
以下、図2〜図6に基づいて、本発明の特徴部分の構成について説明する。
図2は、定着装置20の一端部側の外観斜視図であり、図3は、その側面図である。図2及び図3に示すように、本実施形態の定着装置20は、定着ローラ21を回転可能に支持する支持部材としての定着プレート24と、加圧ローラ22を回転可能に支持する支持部材としての加圧プレート25を有する。定着プレート24と加圧プレート25は、それぞれの下部に設けた支軸26を介して連結されており、加圧プレート25はこの支軸26を中心に揺動可能に構成されている。これにより、加圧ローラ22は定着ローラ21に対して接近離間可能に構成されている。
【0041】
このように本実施形態では、定着プレート24が画像形成装置本体に対して固定され、加圧プレート25が揺動するように構成されているが、この構成に限定されるものではない。反対に、加圧プレート25を固定し、定着プレート24を揺動させるように構成することも可能である。また、定着プレート24と加圧プレート25の両方を揺動可能に構成してもよい。
【0042】
定着プレート24と加圧プレート25は、付勢手段としての加圧バネ27によって、互いに接近する方向に付勢されている。これにより、両プレート24,25に支持されている定着ローラ21と加圧ローラ22も互いに接近する方向に付勢され、両ローラ21,22が互いに圧接することで両ローラ21,22間に定着ニップが形成されている。ここでは、加圧バネ27として圧縮バネを用いているが、引張バネによって同様に付勢力を作用させてもよい。
【0043】
また、定着装置20は、定着ローラ21と加圧ローラ22との圧接を解除する加圧解除機構を備えている。具体的には、図2又は図3に示すように、加圧解除機構は、駆動ギヤ28と、定着ギヤ29と、移動力発生ギヤ30と、切換ギヤ31と、操作ギヤ32と、圧解除部材33等によって構成されている。
【0044】
駆動ギヤ28は、定着プレート24に回転可能に設けてある。また、駆動ギヤ28は、画像形成装置本体に設けられた図示しない駆動装置(駆動手段)と連結され、駆動力が伝達されるようになっている。
【0045】
定着ギヤ29は、定着ローラ21の一端部に設けられている。また、定着ギヤ29は、駆動ギヤ28と噛合している。これにより、駆動ギヤ28からの回転力が定着ギヤ29に伝達され、定着ローラ21が回転するようになっている。
【0046】
移動力発生ギヤ30と切換ギヤ31は、同軸上でかつ軸方向に異なる位置に配設されており、それぞれ定着プレート24に回転可能に設けられている。さらに、移動力発生ギヤ30と切換ギヤ31は、定着プレート24に対して図2の矢印A及びBで示す軸方向に往復移動可能に支持されている。また、移動力発生ギヤ30は上記定着ギヤ29と噛合しており、移動力発生ギヤ30と定着ギヤ29はそれぞれハスバギヤで構成されている。ハスバギヤは、その歯列がギヤの回転方向に対して傾斜して配設されており、ギヤ間の駆動力を軸方向にも伝達することが可能なギヤである。このため、移動力発生ギヤ30と定着ギヤ29とが正回転又は逆回転することにより、これらのギヤ間に図2の矢印A又はBで示す軸方向に移動力が生じるようになっている。すなわち、本実施形態では、移動力発生ギヤ30と定着ギヤ29は、軸方向移動手段として機能する。また、定着ギヤ29と噛合する駆動ギヤ28も、ハスバギヤとなっているが、駆動ギヤ28及び定着ギヤ29は図示しないストッパによって軸方向に移動しないように構成されている。
【0047】
本実施形態では、移動力発生ギヤ30及び切換ギヤ31を、射出成形された樹脂で一体的に構成している。これにより、小型で安価に生産することができる。その樹脂の材料としては、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、及び、これらのアロイ樹脂等を適用可能である。なお、移動力発生ギヤ30と切換ギヤ31とを別体で構成することも可能である。また、本実施形態では、移動力発生ギヤ30と切換ギヤ31におけるそれぞれの歯列の基準ピッチ円の直径を異ならせている。これにより、各ギヤ28〜32や圧解除部材33の配置の自由度が高まり、ギヤの配列の省スペース化及び定着装置20の小型化を図ることが可能となる。なお、移動力発生ギヤ30と切換ギヤ31におけるそれぞれの歯列の基準ピッチ円の直径を同一に設定しても、本発明の本質を逸脱するものではない。また、移動力発生ギヤ30と切換ギヤ31を、軸方向に連続して形成された1つのギヤにて構成することも可能である。
【0048】
操作ギヤ32は、同軸上で軸方向に異なる位置に配設された第1ギヤ部32aと第2ギヤ部32bとを有している。本実施形態では、第1ギヤ部32aと第2ギヤ部32bは、射出された樹脂によって一体的に構成されている。これにより、小型で安価に生産することが可能である。その樹脂の材料としては、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、及び、これらのアロイ樹脂等を適用可能である。なお、各ギヤ部32a,32bを別体で構成することも可能である。また、各ギヤ部32a,32bを軸方向に連続して形成された1つのギヤにて構成してもよい。各ギヤ部32a,32bの周方向の一部には、それぞれ歯列の無い欠歯部321,322が設けられている。各ギヤ部32a,32bに設けられた欠歯部321,322は、互いに周方向に異なる位置に配設されている。
【0049】
上記切換ギヤ31は、軸方向に往復移動することによって、第1ギヤ部32aと第2ギヤ部32bとの間で切り換えて噛合されるようになっている。なお、本実施形態において、移動力発生ギヤ30と定着ギヤ29の歯列(ハスバ)の傾斜を逆向きに形成すれば、回転に伴って発生する軸方向の移動力が逆向きに生じるので、第1ギヤ部32aと第2ギヤ部32bの配置を入れ換えることが可能である。また、本実施形態においては、各ギヤ部32a,32bの歯列は、切換ギヤ31と同じ平歯で構成されているが、各ギヤ部32a,32b及び切換ギヤ31をハスバで構成しても、本発明の本質を逸脱するものではない。
【0050】
また、図2に示すように、第2ギヤ部32bに設けた欠歯部322と、第1ギヤ部32aに設けた歯部との間には、その欠歯部322からその歯部に向かって高さが徐々に高くなる案内歯325が設けられている。この案内歯325の高さは、欠歯部322側に向かって0に近づき、歯部側に向かって当該歯部の高さと同じ高さに近づくようになっている。
【0051】
図4は、図2とは反対側から見た定着装置20の一端部側の外観斜視図である。
図4に示すように、第1ギヤ部32aに設けた欠歯部321と、第2ギヤ部32bに設けた歯部との間にも、上記と同様に、その欠歯部321からその歯部に向かって高さが徐々に高くなる案内歯326が設けられている。この案内歯326の高さも、上記案内歯325と同様に、欠歯部322側に向かって0に近づき、歯部側に向かって当該歯部の高さと同じ高さに近づくようになっている。
【0052】
図2又は図3に示す圧解除部材33は、操作ギヤ32と一体的に回転可能に構成されている。本実施形態において、圧解除部材33と操作ギヤ32は、射出された樹脂によって一体的に構成されている。これにより、小型で安価に生産することが可能である。圧解除部材33を構成する樹脂材料は、上述の操作ギヤ32に用いるものを適用可能である。なお、圧解除部材33と操作ギヤ32を別体で構成してもよい。また、圧解除部材33は、操作ギヤ32が回転することによって一体的に回転し、加圧プレート25に当接して押圧するように構成されている。
【0053】
図5において、(a)は、圧解除部材33が加圧プレート25を押圧していない非押圧状態を示す図であり、(b)は、圧解除部材33が加圧プレート25を押圧している押圧状態を示す図である。
図5(a)に示す非押圧状態では、第1ギヤ部32aと第2ギヤ部32bのそれぞれの欠歯部321,322のうち、第1ギヤ部32aの欠歯部321が、切換ギヤ31に対向した位置に配設されている。これに対し、図5(b)に示す押圧状態では、第2ギヤ部32bの欠歯部322が切換ギヤ31と対向して配設されている。このように、本実施形態では、非押圧状態と押圧状態とにおいて、異なる欠歯部321,322が切換ギヤ31と対向するように構成されている。
【0054】
図6は、圧解除部材33の拡大図である。
図6に示すように、本実施形態では、圧解除部材33の上記加圧プレート25を押圧する押圧面33aは、平面状に形成されており、その押圧面33aの回転方向両側に配設した面33b,33cは、凸曲面状に形成されている。ここで、圧解除部材33の回転中心Qと各凸曲面状の面33b,33cとの距離Db,Dcは、前記回転中心Qと押圧面33aとの距離Daよりも長くなるように設定されている。ただし、圧解除部材33の形状は図6に示す形状に限定されるものではない。
【0055】
以下、上記圧力解除機構の作用・効果について説明する。
定着ローラ21と加圧ローラ22との間の圧力を解除する場合は、画像形成装置本体に設けた図示しない駆動装置(駆動手段)を定着動作時の回転方向(正回転)とは逆方向に回転させる。これにより、図7に示すように、駆動装置から駆動力を受けた駆動ギヤ28は図の反時計回りに回転し、定着ギヤ29、移動力発生ギヤ30及び切換ギヤ31はそれぞれ図の矢印の方向へ回転する。このとき、回転開始時の切換ギヤ31は、操作ギヤ32の第1ギヤ部32aに設けられた欠歯部321に対向しているため、切換ギヤ31の回転力は操作ギヤ32には伝達されない。このため、操作ギヤ32は、切換ギヤ31が回転を開始した時点では回転しない。
【0056】
上記のように、各ギヤが回転すると、定着ギヤ29と移動力発生ギヤ30との間には、図7の矢印Aで示す方向の軸方向力が発生する。これにより、切換ギヤ31は、第1ギヤ部32aに対向する位置から第2ギヤ部32bに対向する位置に移動する。
【0057】
このとき、切換ギヤ31が、図4に示す案内歯326によって、第1ギヤ部32aの欠歯部321から第2ギヤ部32bの歯部へ案内されることによりスムーズな移動(切換)が行われる。すなわち、案内歯326によって切換ギヤ31を案内することで、移動時に切換ギヤ31が第2ギヤ部32bの歯部の端面に当接して移動がスムーズに行われなくなるのを回避できる。また、これにより、切換ギヤ31及び第2ギヤ部32bの歯部の損傷も防止できる。
【0058】
そして、切換ギヤ31が第2ギヤ部32bに対向する位置に移動すると、その軸方向(図7の矢印A方向)の移動が不図示のストッパによって止められ、図8に示す状態となる。
【0059】
図8に示すように、切換ギヤ31が第2ギヤ部32b側へ移動した状態では、第2ギヤ部32bの欠歯部322は、切換ギヤ31とは対向しない位置に配設されているので、切換ギヤ31は第2ギヤ部32bと噛合し、第2ギヤ部32bに切換ギヤ31からの回転力が伝達される。これにより、操作ギヤ32は図8の時計回りに回転する。また、操作ギヤ32が回転することにより、圧解除部材33もそれと一体的に回転する。
【0060】
上記のように、圧解除部材33が回転すると、図9に示すように、圧解除部材33は加圧プレート25の被押圧部25aに当接する。そして、圧解除部材33は加圧バネ27に抗して加圧プレート25を押圧し、加圧プレート25を定着プレート24に対して離間させる方向に移動させる。その結果、加圧ローラ22が定着ローラ21に対して離間する方向に移動し、定着ローラ21と加圧ローラ22との間の圧力が解除される。その後、画像形成装置本体に設けた駆動装置の駆動を停止する。
【0061】
このように、定着ローラ21と加圧ローラ22との間の圧力が解除されることによって、定着ローラ21及び加圧ローラ22にクリープが発生するのを抑制又は防止することができる。また、定着ニップにおいて紙詰まりが発生した場合は、定着ローラ21と加圧ローラ22との間の圧力を解除することによって、紙の除去処理が行いやすくなる。なお、本発明で言う上記「圧解除」は、定着ローラと加圧ローラとを完全に離間させて両ローラ間に接触圧が全く作用しない状態にする場合以外に、定着ローラと加圧ローラとが接触している状態でその接触圧を低減する場合を含む。
【0062】
また、図9に示すように、圧解除部材33が加圧プレート25を押圧する押圧状態となったとき、第2ギヤ部32bの欠歯部322が切換ギヤ31に対向する位置に配置されるため、第2ギヤ部32bと切換ギヤ31との噛合が解除される。これにより、上記押圧状態となった後、切換ギヤ31がしばらく回転しても操作ギヤ32が回転することがなく、圧解除部材33も回転しないため、確実に押圧状態を維持することが可能である。
【0063】
また、上記のように、圧解除部材33の押圧面33aが平面状に形成されているので(図6参照)、圧解除部材33の押圧面33aによって加圧プレート25(被押圧部25a)を押圧した状態で、圧解除部材33は不測に回転しにくく、押圧状態が安定して維持されるようになっている。さらに、押圧面33aの両側に配設された凸曲面状の面33b,33cと回転中心Qとの距離Db,Dcが、押圧面33aと回転中心Qとの距離Daよりも長くなるように設定されているため(図6参照)、各凸曲面状の面33b,33cによって、圧解除部材33の不測な回転を防止又は抑制できるようになっている。これにより、押圧状態をより安定して維持することが可能となる。
【0064】
また、本実施形態において、圧解除部材33が加圧プレート25の被押圧部25aを押圧する際、圧解除部材33は被押圧部25aに対して図9の上から下に向かって摺動するようになっている。すなわち、圧解除部材33は、被押圧部25aに対して揺動中心としての支軸26から遠い側から近い側へ向かって摺動するように構成されている。この場合、それと反対向きに摺動する場合に比べて、小さい力で加圧プレート25を押圧して離間する方向へ移動させることが可能である。これにより、加圧プレート25を押圧する際の圧解除部材33や各ギヤ等にかかる負荷を軽減することができると共に、確実に圧解除を行うことができる。
【0065】
次に、定着ローラ21と加圧ローラ22との間の圧力を元に戻して定着動作を行う場合について説明する。
定着動作を開始する場合は、画像形成装置本体に設けた図示しない駆動装置(駆動手段)を正回転させる。これにより、図10において、駆動ギヤ28は、図の時計回りに回転し、定着ギヤ29、移動力発生ギヤ30及び切換ギヤ31はそれぞれ図の矢印の方向に回転する。このとき、回転開始時の切換ギヤ31は、操作ギヤ32の第2ギヤ部32bに設けられた欠歯部322に対向しているため、切換ギヤ31の回転力は操作ギヤ32には伝達されない。このため、操作ギヤ32は、切換ギヤ31が回転を開始した時点では回転しない。
【0066】
上記のように、各ギヤが回転すると、定着ギヤ29と移動力発生ギヤ30との間には、図10の矢印Bで示す方向の軸方向力が発生する。これにより、切換ギヤ31は、第2ギヤ部32bに対向する位置から第1ギヤ部32aに対向する位置に移動する。
【0067】
このとき、切換ギヤ31は、図2に示す案内歯325によって、第2ギヤ部32bの欠歯部322から第1ギヤ部32aの歯部へ案内される。これにより、上記移動の場合と同様に、移動時に切換ギヤ31が第1ギヤ部32aの歯部の端面に当接するのを回避でき、スムーズな移動が行える。また、切換ギヤ31及び第1ギヤ部32aの歯部の損傷も防止することが可能である。
【0068】
そして、切換ギヤ31が第1ギヤ部32aに対向する位置に移動すると、その軸方向(図10の矢印B方向)の移動が不図示のストッパによって止められ、図11に示す状態となる。
【0069】
図11に示すように、切換ギヤ31が第1ギヤ部32a側へ移動した状態では、第1ギヤ部32aの欠歯部321は、切換ギヤ31とは対向しない位置に配設されているので、切換ギヤ31は第1ギヤ部32aと噛合し、第1ギヤ部32aに切換ギヤ31からの回転力が伝達される。これにより、操作ギヤ32は図11の反時計回りに回転し、圧解除部材33もそれと一体的に回転して、図7に示す非押圧状態に戻される。その結果、加圧ローラ22は定着ローラ21に対して接近して圧接され、各ローラ21,22間の圧力が元に戻る。その後、正回転する定着ローラ21と加圧ローラ22との間を、用紙が通過することによってトナー画像が用紙上に定着される。
【0070】
また、図7に示す非押圧状態に戻された際、第1ギヤ部32aの欠歯部321が切換ギヤ31に対向する位置に配置されるため、第1ギヤ部32aと切換ギヤ31との噛合が解除される。これにより、非押圧状態となった後、切換ギヤ31が正回転し続けても操作ギヤ32が回転することがなく、圧解除部材33も回転しないため、定着動作時に圧解除部材33によって圧力が解除されることがない。
【0071】
図12に、本発明の他の実施形態に係る定着装置の構成を示す。
図12に示す実施形態は、上記実施形態と比較すると、第2ギヤ部32bの上記欠歯部322を省略している。すなわち、第1ギヤ部32aにのみ欠歯部321を形成している。さらに、この実施形態では、ハスバギヤから成る上記移動力発生ギヤ30も省略している。その代わりに、図示しないアクチュエータによって切換ギヤ31を図の矢印A又はBで示す軸方向に往復移動可能に構成している。ただし、軸方向移動手段として一対のハスバギヤを用いる方が、別途アクチュエータを設けるよりも、駆動装置から得られる回転力を効果的に利用することができ、小型化及び低コスト化を図れるメリットがある。また、上記アクチュエータによって、切換ギヤ31ではなく、操作ギヤ32を軸方向に往復移動させるように構成することも可能である。
【0072】
図12に示す実施形態において、定着ローラ21と加圧ローラ22との間の圧力を解除する場合は、図示しないアクチュエータによって切換ギヤ31を図の矢印Aの方向に移動させ、第2ギヤ部32bと噛合させる。そして、切換ギヤ31から第2ギヤ部32bに回転力が伝達されることにより、圧解除部材33が回転し加圧プレート25を押圧して定着ニップ圧が解除される。このとき、本実施形態では、圧解除部材33が加圧プレート25を押圧した状態で駆動装置の逆回転を停止させる必要がある。
【0073】
また、定着ローラ21と加圧ローラ22との間の圧力を戻す場合は、上記アクチュエータによって切換ギヤ31を図の矢印Bの方向に移動させ、第1ギヤ部32aと噛合させる。そして、切換ギヤ31から第1ギヤ部32aに回転力が伝達されることにより、圧解除部材33が回転し加圧プレート25を押圧しない状態に戻され、定着ニップ圧が元に戻る。この場合は、上述の実施形態と同様に、第1ギヤ部32aの欠歯部321が切換ギヤ31に対向する位置に配置されるため、切換ギヤ31が正回転し続けても圧解除部材33が回転することがなく、定着動作時に圧力が解除されることはない。なお、図12に示す実施形態において、上記説明した構成以外は、図2等に示す上述の実施形態と同様に構成されているので説明を省略する。
【0074】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。上述の実施形態では、定着ローラ21を主たる駆動ローラ、加圧ローラ22を従動ローラとして機能させているが、加圧ローラ22を主たる駆動ローラ、定着ローラ21を従動ローラとして機能させることも可能である。また、定着ローラ21又は加圧ローラ22の代わりに、無端状のベルト等で構成された定着部材を適用することも可能である。また、本発明の定着装置は、図1に示すカラー画像形成装置に限らず、モノクロ画像形成装置や、複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等に搭載することも可能である。
【0075】
以上説明したように、本発明によれば、定着ニップの圧解除を自動で行うことができるので、従来のような圧解除レバーを操作する煩わしさや操作のし忘れがなく、操作性と信頼性を向上させることができる。また、熱くなる虞のある圧解除レバーを手動で操作する必要がないため、安全性も向上する。
【0076】
また、本発明によれば、定着部材に回転力を与えるための駆動手段(駆動装置)の駆動力を用いて、定着ニップの圧解除を行うことができる。すなわち、本発明は、1つの駆動手段の駆動力を用いて定着動作と圧解除動作を行うことが可能であるので、圧解除を行うための専用の駆動手段を備える必要がない。これにより、定着装置及び画像形成装置の小型化や低コスト化を実現することが可能となる。
【0077】
さらに、本発明によれば、欠歯部と歯部との間に、高さが徐々に高くなる案内歯を設けているので、切換ギヤを欠歯部から歯部へスムーズに移動させることができ、ニップ圧切換動作の安定性と信頼性が向上する。なお、上述の実施形態では、案内歯をギヤ回転方向に複数設けているが、案内歯は1つでもよい。すなわち、案内歯の数は1つ以上であればよいが、案内歯をギヤ回転方向に複数設けた場合は、切換ギヤのスムーズな移動をより確実に行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0078】
20 定着装置
21 定着ローラ(定着部材)
22 加圧ローラ(定着部材)
24 定着プレート(支持部材)
25 加圧プレート(支持部材)
26 支軸
27 加圧バネ(付勢手段)
31 切換ギヤ
32 操作ギヤ
32a 第1ギヤ部
32b 第2ギヤ部
33 圧解除部材
33a 押圧面
321 欠歯部
322 欠歯部
325 案内歯
326 案内歯
Da,Db,Dc 回転中心との距離
Q 回転中心
【先行技術文献】
【特許文献】
【0079】
【特許文献1】特開2009−122243号公報
【特許文献2】特開2009−139682号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体上の画像を当該記録媒体に定着させる一対の定着部材と、前記定着部材に回転力を与える駆動手段と、前記定着部材を互いに接近離間可能に支持する一対の支持部材と、前記定着部材を互いに接近させる方向に前記支持部材を付勢する付勢手段とを備えた定着装置において、
前記駆動手段から回転力が伝達される切換ギヤと、
軸方向の異なる位置に配設された2つのギヤ部の一方に欠歯部を設けた操作ギヤと、
前記操作ギヤと一体的に回転して、前記一対の支持部材の一方を前記付勢手段に抗して押圧する押圧状態と、前記支持部材を押圧しない非押圧状態とに切換操作される圧解除部材と、
前記切換ギヤと前記操作ギヤを相対的に軸方向に往復移動させて、前記切換ギヤを前記2つのギヤ部の間で切り換えて噛合可能に配置する軸方向移動手段とを備え、
前記欠歯部を、前記圧解除部材が前記非押圧状態に配設された状態で切換ギヤと対向する位置に配設し、
前記一方のギヤ部に設けた欠歯部と前記他方のギヤ部に設けた歯部との間に、当該欠歯部から当該歯部に向かって高さが徐々に高くなる案内歯を設けたことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記駆動手段を定着動作時の正回転及びそれと逆回転可能に構成し、
前記軸方向移動手段は、前記駆動手段によって正逆回転されることにより相対的に軸方向に往復移動可能な一対のハスバギヤを有し、
前記ハスバギヤの一方を前記切換ギヤと一体的に回転可能に設け、
正回転時に生じる前記ハスバギヤ間の軸方向移動によって、前記切換ギヤを前記一方のギヤ部に移動させ、逆回転時に生じる前記ハスバギヤ間の軸方向移動によって、前記切換ギヤを前記他方のギヤ部に移動させるように構成した請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記他方のギヤ部にも欠歯部を設け、当該欠歯部を、前記圧解除部材が前記押圧状態に配設された状態で切換ギヤと対向する位置に配設した請求項1又は2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記他方のギヤ部に設けた欠歯部と前記一方のギヤ部に設けた歯部との間に、当該欠歯部から当該歯部に向かって高さが徐々に高くなる案内歯を設けた請求項3に記載の定着装置。
【請求項5】
前記案内歯を、ギヤ回転方向に複数設けた請求項1又は4に記載の定着装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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