説明

定着装置

【課題】定着ベルトを良好に回転させることができる定着装置を提供する。
【解決手段】定着装置は、定着ベルト110と、ハロゲンランプ120と、ニップ板130と、加圧ローラ140と、ニップ板130と加圧ローラ140との間に向けて定着ベルト110を案内するガイド部材300とを備えている。ニップ板130は、金属板を屈曲させることにより形成されており、定着ベルト110と摺接し、加圧ローラ140との間で定着ベルト110を挟む本体部131と、本体部131の前端部から加圧ローラ140とは反対側に向けて延びる接続部132と、接続部132の前端部から前方に向けて延び、接続部132とともに潤滑剤保持部137を形成するフランジ部133とを有している。フランジ部133の前端部(第2屈曲部B2)は、第1屈曲部B1と、ガイド部材300の下端部310とに接する平面PL1よりもハロゲンランプ120側に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録シートに転写された現像剤像を熱定着する定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置で用いられる定着装置として、例えば、特許文献1に示すように、筒状のベルト(筒状部材)と、筒状部材の内側に配置されるハロゲンヒータと、筒状部材の内周面に摺接する板状の押圧支持部材(ニップ板)と、ニップ板との間で筒状部材を挟む加圧ローラとを備えたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−230774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記したような構成の定着装置において、本願発明者等は、ニップ板の端部を筒状部材の内側に段差状に折り曲げることによりニップ板に筒状部材の内周面に対面する潤滑剤保持部を形成し、この部分に潤滑剤を保持させることを検討している。これによれば、筒状部材の回転に伴い潤滑剤がニップ板と筒状部材の間に入り込むので、特にニップ板と加圧ローラとの間において、ニップ板と筒状部材との摩擦を低減することができる。
【0005】
一方、ニップ板の段差状に折り曲げた部分の端部は、ニップ板と加圧ローラとの間に向けて搬送される筒状部材の内周面と接触する可能性がある。そして、段差状に折り曲げた部分の端部と筒状部材の内周面が接触すると、筒状部材の回転トルクが大きくなったり、筒状部材の内周面に傷がついたりするおそれがある。
【0006】
本発明は、以上のような背景に鑑みてなされたものであり、筒状部材を良好に回転させることができる定着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)前記した目的を達成するため、本発明の定着装置は、可撓性を有する筒状部材と、筒状部材の内側に配置されたヒータと、筒状部材の内周面に摺接するように配置されたニップ板と、ニップ板との間で筒状部材を挟むバックアップ部材と、筒状部材の内側に配置され、ニップ板とバックアップ部材との間に向けて筒状部材を案内するガイド部材とを備えている。
ニップ板は、金属板を屈曲させることにより形成されており、筒状部材と摺接し、バックアップ部材との間で筒状部材を挟む本体部と、本体部の記録シートの搬送方向上流側の端部からバックアップ部材とは反対側に向けて延びる接続部と、接続部の端部から前記搬送方向上流側に向けて延び、接続部とともに、筒状部材の内周面に対面して潤滑剤を保持する潤滑剤保持部を形成するフランジ部とを有している。
フランジ部の前記搬送方向上流側の端部は、本体部と接続部をつなぐ第1屈曲部と、ガイド部材の筒状部材の回転方向下流側の端部とに接する平面よりもヒータ側に位置する。
【0008】
このような構成によれば、ニップ板(フランジ部)の搬送方向上流側の端部が、ニップ板の第1屈曲部と、ガイド部材の筒状部材の回転方向下流側の端部とに接する平面よりもヒータ側に位置するので、筒状部材の内周面とニップ板の搬送方向上流側の端部との接触を防止することができる。また、ニップ板の接続部とフランジ部が、潤滑剤保持部を形成しているので、潤滑剤保持部に保持された潤滑剤が本体部と筒状部材の間に入り込むことで、ニップ板と筒状部材との摩擦を低減することができる。
【0009】
これらにより、筒状部材の回転トルクが小さくなるので、筒状部材を良好に回転させることができる。また、筒状部材の内周面とニップ板(フランジ部)の搬送方向上流側の端部とが接触しないことで、筒状部材の内周面に傷がつくことや、筒状部材の内周面の摩耗を抑制することができる。
【0010】
(2)前記した定着装置において、ガイド部材の筒状部材の回転方向下流側の端部は、ニップ板とヒータが対向する方向において、本体部の筒状部材と摺接する面と、フランジ部のバックアップ部材側の面との間に位置することが好ましい。
【0011】
このような構成によれば、筒状部材の内周面とフランジ部の搬送方向上流側の端部との接触をより確実に防止することができる。これにより、より確実に、筒状部材を良好に回転させることができるとともに、筒状部材の内周面の傷や摩耗を抑制することができる。
【0012】
(3)前記した各定着装置において、ニップ板は、フランジ部の搬送方向上流側の端部からバックアップ部材が配置された側とは反対側に向けて延び、ニップ板の筒状部材と摺接する面とは反対側の面への潤滑剤の流入を防止する流入防止部を有することが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、流入防止部によりニップ板の筒状部材と摺接する面とは反対側の面への潤滑剤の流入を防止することができるので、ニップ板と筒状部材との間に保持される潤滑剤の減少を抑制することができる。これにより、筒状部材の良好な回転を維持することができる。
【0014】
(4)ニップ板が流入防止部を有する定着装置において、第1屈曲部の曲率は、フランジ部と流入防止部をつなぐ第2屈曲部の曲率よりも小さいことが好ましい。
【0015】
第1屈曲部は、ニップ板(本体部)とバックアップ部材との間に向けて案内される筒状部材の内周面が摺接する可能性があるので、この部分の曲率を小さくすることで、筒状部材の回転トルクを小さくすることができ、筒状部材を良好に回転させることができる。また、筒状部材の内周面に傷がつくことや、筒状部材の内周面の摩耗を抑制することができる。
【0016】
(5)前記した各定着装置は、前記搬送方向において、フランジ部の前記搬送方向上流側の端部とガイド部材との間に隙間が形成されていることが好ましい。
【0017】
このような構成によれば、ヒータによって加熱されるニップ板からガイド部材への熱の移動を抑制することができるので、ニップ板を迅速に加熱することができ、定着装置の立ち上がり時間を短くすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ニップ板は、接続部とフランジ部により潤滑剤保持部が形成され、フランジ部の上流側の端部が第1屈曲部とガイド部材の下流側の端部とに接する平面よりもヒータ側に位置するので、筒状部材を良好に回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の定着装置を備えたレーザプリンタの概略構成を示す図である。
【図2】実施形態に係る定着装置の断面図である。
【図3】定着装置の拡大断面図である。
【図4】ニップ板の変形例を示す図である。
【図5】ニップ板の他の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明では、まず、本発明の実施形態に係る定着装置100を備えたレーザプリンタ1(画像形成装置)の概略構成を簡単に説明した後、定着装置100の詳細な構成について説明する。
【0021】
また、以下の説明において、方向は、レーザプリンタ1を使用するユーザを基準にした方向で説明する。すなわち、図1における右側を「前」、左側を「後」とし、手前側を「左」、奥側を「右」とする。また、図1における上下方向を「上下」とする。
【0022】
<レーザプリンタの概略構成>
図1に示すように、レーザプリンタ1は、本体筐体2内に、記録シートの一例としての用紙Sを供給する給紙部3と、露光装置4と、用紙S上にトナー像(現像剤像)を転写するプロセスカートリッジ5と、用紙S上に転写されたトナー像を熱定着する定着装置100とを主に備えている。
【0023】
給紙部3は、本体筐体2内の下部に設けられ、給紙トレイ31と、用紙押圧板32と、給紙機構33とを主に備えている。給紙トレイ31に収容された用紙Sは、用紙押圧板32によって上方に寄せられ、給紙機構33によってプロセスカートリッジ5(感光体ドラム61と転写ローラ63との間)に向けて供給される。
【0024】
露光装置4は、本体筐体2内の上部に配置され、図示しないレーザ発光部や、符号を省略して示すポリゴンミラー、レンズ、反射鏡などを備えている。この露光装置4では、レーザ発光部から出射される画像データに基づくレーザ光(鎖線参照)が、感光体ドラム61の表面で高速走査されることで、感光体ドラム61の表面を露光する。
【0025】
プロセスカートリッジ5は、露光装置4の下方に配置され、本体筐体2に設けられたフロントカバー21を開いたときにできる開口から本体筐体2に対して着脱可能に装着される構成となっている。このプロセスカートリッジ5は、ドラムユニット6と、現像ユニット7とから構成されている。
【0026】
ドラムユニット6は、感光体ドラム61と、帯電器62と、転写ローラ63とを主に備えている。また、現像ユニット7は、ドラムユニット6に対して着脱可能に装着される構成となっており、現像ローラ71と、供給ローラ72と、層厚規制ブレード73と、トナー(現像剤)を収容するトナー収容部74とを主に備えている。
【0027】
このプロセスカートリッジ5では、感光体ドラム61の表面が、帯電器62により一様に帯電された後、露光装置4からのレーザ光の高速走査によって露光されることで、感光体ドラム61上に画像データに基づく静電潜像が形成される。また、トナー収容部74内のトナーは、供給ローラ72を介して現像ローラ71に供給され、現像ローラ71と層厚規制ブレード73の間に進入して一定厚さの薄層として現像ローラ71上に担持される。
【0028】
現像ローラ71上に担持されたトナーは、現像ローラ71から感光体ドラム61上に形成された静電潜像に供給される。これにより、静電潜像が可視像化され、感光体ドラム61上にトナー像が形成される。その後、感光体ドラム61と転写ローラ63の間を用紙Sが搬送されることで感光体ドラム61上のトナー像が用紙S上に転写される。
【0029】
定着装置100は、プロセスカートリッジ5の後方に設けられている。用紙S上に転写されたトナー像(トナー)は、定着装置100を通過することで用紙S上に熱定着される。トナー像が熱定着された用紙Sは、搬送ローラ23,24によって排紙トレイ22上に排出される。
【0030】
<定着装置の詳細構成>
図2に示すように、定着装置100は、筒状部材の一例としての定着ベルト110と、ヒータの一例としてのハロゲンランプ120と、ニップ板130と、バックアップ部材の一例としての加圧ローラ140と、反射部材150と、ステイ160と、ガイド部材300とを主に備えている。
【0031】
定着ベルト110は、耐熱性と可撓性を有する無端状(筒状)のベルトであり、後述するガイド部材300や図示しないその他のガイド部材により回転が案内されている。
【0032】
本発明において、定着ベルト110の材質は特に限定されず、例えば、ステンレス鋼などの金属から形成されていてもよいし、ポリイミド樹脂などの樹脂から形成されていてもよいし、ゴムなどの弾性を有する材料から形成されていてもよい。また、定着ベルト110は、多層構造、例えば、金属製ベルトの表面に摺動抵抗を低減するための樹脂層を有する構造であってもよいし、金属製ベルトの表面にゴム層などの弾性層を有する構造であってもよい。
【0033】
ハロゲンランプ120は、輻射熱を発してニップ板130および定着ベルト110(ニップ部N)を加熱することで用紙S上のトナーを加熱するヒータであり、定着ベルト110の内側において定着ベルト110およびニップ板130の内面から所定の間隔をあけて配置されている。
【0034】
ニップ板130は、ハロゲンランプ120からの輻射熱を受ける板状の部材であり、その下面が筒状の定着ベルト110の内周面に摺接するように配置されている。本実施形態において、ニップ板130は、金属板、例えば、後述するスチール製のステイ160より熱伝導率が大きい、アルミニウム板などを屈曲させることにより形成されており、図3に示すように、本体部131と、接続部132と、フランジ部133と、流入防止部134とを主に有している。
【0035】
本体部131は、定着ベルト110の内周面と摺接して加圧ローラ140との間で定着ベルト110を挟む部分であり、前後方向に沿って平らに延びる平板状に形成されている。本体部131の定着ベルト110と摺接する面は、用紙Sの搬送方向(前後方向)および定着ベルト110の軸方向(左右方向)の全範囲にわたって略均一な平面となっている。本実施形態において、ニップ板130は、この本体部131においてのみ加圧ローラ140との間で定着ベルト110を挟持するようになっている。
【0036】
接続部132は、本体部131の前端部(用紙Sの搬送方向における上流側の端部)から加圧ローラ140とは反対側、具体的には、前斜め上方に向けて延びる部分であり、本体部131とフランジ部133を接続するように形成されている。
【0037】
フランジ部133は、接続部132の前端部から搬送方向上流側(前方)に向けて延びる部分である。このフランジ部133と接続部132は、略V形状をなしており、定着ベルト110の内周面に対面する潤滑剤保持部137を形成している。この潤滑剤保持部137には、潤滑剤Gが保持されている。
【0038】
潤滑剤保持部137に保持された潤滑剤Gは、定着ベルト110の回転に伴って、ニップ板130(本体部131)と定着ベルト110との間に入り込むことで、ニップ板130と定着ベルト110との摩擦を低減する。なお、潤滑剤Gとしては、例えば、耐熱性のフッ素グリスなどを採用することができる。
【0039】
流入防止部134は、フランジ部133の前端部(搬送方向上流側の端部)から加圧ローラ140が配置された側とは反対側、具体的には、上方に向けて延びる部分である。この流入防止部134は、前方から見て、ニップ板130とステイ160の継ぎ目、より詳細には、ニップ板130とステイ160とによって挟持された反射部材150のフランジ部152を覆うように形成されている。
【0040】
このような流入防止部134を形成することにより、流入防止部134が壁となって、ニップ板130の上面(定着ベルト110と摺接する面とは反対側の面)、さらにいうと、ニップ板130とステイ160の継ぎ目への潤滑剤Gの流入を防止することができるようになっている。これにより、ニップ板130と定着ベルト110との間に保持される潤滑剤Gの減少を抑制することができる。
【0041】
本実施形態において、ニップ板130は、本体部131と接続部132をつなぐ第1屈曲部B1の曲率が、フランジ部133と流入防止部134をつなぐ第2屈曲部B2の曲率よりも小さくなっている。別の言い方をすると、第1屈曲部B1は、略鈍角形状をなしており、第2屈曲部B2は、略直角形状をなしている。
【0042】
ここで、第1屈曲部B1は、本体部131の前端部にあるため、ニップ板130(本体部131)と加圧ローラ140との間に向けて案内される定着ベルト110の内周面が摺接する可能性がある。そこで、第1屈曲部B1の曲率を小さくすることで、第1屈曲部B1と定着ベルト110の内周面が摺接した場合における、定着ベルト110の回転トルクの増大や、定着ベルト110の内周面の傷や摩耗を抑制している。
【0043】
図2に示すように、加圧ローラ140は、ニップ板130(本体部131)との間で定着ベルト110を挟むことで定着ベルト110との間にニップ部Nを形成する部材であり、ニップ板130の下方に配置されている。本実施形態においては、ニップ部Nを形成するために、ニップ板130および加圧ローラ140の一方を他方に向けて付勢している。
【0044】
加圧ローラ140は、本体筐体2内に設けられた図示しないモータから駆動力が伝達されて回転駆動するように構成されており、回転駆動することで定着ベルト110(または用紙S)との摩擦力により定着ベルト110を従動回転させる。トナー像が転写された用紙Sは、加圧ローラ140と加熱された定着ベルト110の間(ニップ部N)を搬送されることでトナー像(トナー)が熱定着されることとなる。
【0045】
図示は省略するが、本実施形態において、加圧ローラ140は、左右方向両端に向けて徐々に径が大きくなる逆クラウン形状のローラである。これにより、ニップ板130と加圧ローラ140の間を搬送される定着ベルト110に皺が発生したり、定着ベルト110が左右方向の一方側に寄ったりすることを抑制することができるようになっている。
【0046】
反射部材150は、ハロゲンランプ120からの輻射熱(主に前後方向や上方向に向けて放射された輻射熱)をニップ板130に向けて反射する部材であり、定着ベルト110の内側でハロゲンランプ120を取り囲む(覆う)ように、ハロゲンランプ120から所定の間隔をあけて配置されている。
【0047】
このような反射部材150によってハロゲンランプ120からの輻射熱をニップ板130に集めることで、ハロゲンランプ120からの輻射熱を効率良く利用することができ、ニップ板130および定着ベルト110を迅速に加熱することができる。
【0048】
反射部材150は、赤外線および遠赤外線の反射率が大きい、例えば、アルミニウム板などを断面視略U形状に屈曲させることにより形成されている。より詳細に、反射部材150は、湾曲形状(断面視略U形状)をなす反射部151と、反射部151の前後方向における両端部から前後方向外側に向けて延びるフランジ部152とを主に有している。
【0049】
ステイ160は、前後方向におけるニップ板130の両端部を支持する部材であり、定着ベルト110の内側でハロゲンランプ120および反射部材150を覆うように配置されている。このステイ160は、比較的剛性が高い、例えば、鋼板などを反射部材150(反射部151)に沿った形状(断面視略U形状)に屈曲させることにより形成されている。
【0050】
より詳細に、断面視略U形状のステイ160は、ニップ板130を挟んで加圧ローラ140とは反対側に配置され、図3に示すように、前側の下端部161が、反射部材150の前側のフランジ部152を介してニップ板130のフランジ部133を上から支持しており、後側の下端部162が、反射部材150の後側のフランジ部152を介して本体部131の後端(ニップ部Nよりも下流側の部分)を上から支持している。
【0051】
このようなステイ160は、ニップ板130に対し下方(加圧ローラ140側)から力が作用したときにその力を受け止めてニップ板130を支持する。なお、ここでいう力は、主に、加圧ローラ140がニップ板130を付勢する構成においては、加圧ローラ140からの付勢力をいうものとし、ニップ板130が加圧ローラ140を付勢する構成においては、ニップ板130が加圧ローラ140を付勢する力の反力をいうものとする。
【0052】
ニップ板130は、フランジ部133と本体部131の後端とが反射部材150のフランジ部152を介してステイ160に支持されていることで、本体部131と接続部132の上面がハロゲンランプ120と直接対向するように配置されることとなる。そのため、本体部131や接続部132は、ハロゲンランプ120や反射部材150からの輻射熱により直接加熱されることとなる。
【0053】
これにより、潤滑剤保持部137を直接温めることができるので、潤滑剤保持部137に保持された潤滑剤Gを迅速に温めることができ、潤滑剤Gを迅速に適正な粘度とすることができる。その結果、特に冬場や寒冷地などの低温の状況下において定着装置100を動作させる場合であっても、ニップ板130と定着ベルト110との摩擦を迅速に低減できるため、定着ベルト110を良好に回転させることが可能となっている。
【0054】
ガイド部材300は、ニップ板130と加圧ローラ140との間に向けて定着ベルトを案内する部材であり、定着ベルト110の内側でステイ160を覆うように配置されている。このようなガイド部材300は、例えば、液晶ポリマーやPEEK樹脂、PPS樹脂などから形成することができる。
【0055】
本実施形態において、ガイド部材300は、ステイ160を覆う断面視略U形状に形成されており(図2参照)、その前側の壁の下端部310(定着ベルト110の回転方向下流側の端部)で、回転する定着ベルト110をニップ板130と加圧ローラ140との間に向けて案内する。
【0056】
すなわち、ガイド部材300の下端部310は、定着ベルト110の回転方向(矢印参照)におけるニップ板130の上流側の端部(第2屈曲部B2)のすぐ上流側において定着ベルト110の進行方向を案内する部材であり、ガイド部材300の下端部310とニップ板130との間には、定着ベルト110の進行を案内するための他の部材は設けられていない。
【0057】
下端部310は、定着ベルト110の軸方向の全範囲にわたって形成されている。この下端部310は、定着ベルト110を良好に案内するため、定着ベルト110の内周面に向けて凸となる一定断面を有し、これにより、下端面が曲面形状をなしている。
【0058】
ガイド部材300とニップ板130は、ニップ板130の第2屈曲部B2(フランジ部133の前端部)が、ニップ板130の第1屈曲部B1と、ガイド部材300の下端部310とに接する仮想的な平面PL1よりもハロゲンランプ120側、具体的には、平面PL1の上側に位置するように互いに配置されている。さらに述べると、本実施形態において、ガイド部材300の下端部310は、上下方向(ニップ板130とハロゲンランプが対向する方向)において、本体部131の定着ベルト110と摺接する摺接面PL2と、フランジ部133の下面(加圧ローラ140側の面)PL3との間に位置している。
【0059】
以上のような、ガイド部材300とニップ板130の配置によれば、定着ベルト110の内周面と第2屈曲部B2との接触を防止することができる。
【0060】
ここで、第2屈曲部B2は、アルミニウム板(金属板)を略直角形状に折り曲げた部分であるため、その表面が粗面となっている可能性がある。この部分に定着ベルト110の内周面が摺接すると、定着ベルト110の回転トルクが大きくなって定着ベルト110の回転を妨げたり、定着ベルト110の内周面に傷がついたり、定着ベルト110の内周面が摩耗したりする可能性がある。
【0061】
本実施形態では、ガイド部材300とニップ板130を上記したような配置とすることで、定着ベルト110の内周面と第2屈曲部B2との接触を防止し、これにより、定着ベルト110の回転トルクの増大や、定着ベルト110の内周面の傷や摩耗を抑制している。
【0062】
さらに、本実施形態において、ガイド部材300とニップ板130は、前後方向において、フランジ部133の前端部(流入防止部134)とガイド部材300との間に隙間Dが形成されるように互いに配置されている。言い換えると、ガイド部材300とニップ板130とは、前後方向に所定の隙間Dをあけて互いに接触しないように配置されている。これにより、ハロゲンランプ120によって加熱されるニップ板130からガイド部材300への熱の移動(熱が逃げること)を抑制できるようになっている。
【0063】
以上によれば、本実施形態において以下のような作用効果を得ることができる。
ニップ板130の前端部(第2屈曲部B2)が、第1屈曲部B1と、ガイド部材300の下端部310とに接する平面PL1よりも上側に位置するので、定着ベルト110の内周面と第2屈曲部B2との接触を防止することができる。また、ニップ板130に潤滑剤保持部137が形成されているので、潤滑剤保持部137に保持された潤滑剤Gが本体部131と定着ベルト110の間に入り込むことで、ニップ板130と定着ベルト110との摩擦を低減することができる。
【0064】
以上により、定着ベルト110の回転トルクが小さくなるので、定着ベルト110を良好に回転させることができる。また、定着ベルト110の内周面と第2屈曲部B2とが接触しないことで、定着ベルト110の内周面の傷や摩耗を抑制することができる。
【0065】
特に、本実施形態では、下端部310が、本体部131の摺接面PL2と、フランジ部133の下面PL3との間に位置するので、定着ベルト110の内周面と第2屈曲部B2との接触をより確実に防止することができる。これにより、より確実に、定着ベルト110を良好に回転させることができるとともに、定着ベルト110の内周面の傷や摩耗を抑制することができる。
【0066】
ニップ板130が流入防止部134を有するので、ニップ板130とステイ160の継ぎ目(ニップ板130の上面)への潤滑剤Gの流入を防止することができる。これにより、ニップ板130と定着ベルト110との間に保持される潤滑剤Gの減少を抑制できるので、定着ベルト110の良好な回転を維持することができる。
【0067】
第1屈曲部B1の曲率が第2屈曲部B2の曲率よりも小さいので、第1屈曲部B1と定着ベルト110の内周面が摺接した場合の定着ベルト110の回転トルクを小さくでき、定着ベルト110を良好に回転させることができる。また、定着ベルト110の内周面の傷や摩耗を抑制することができる。
【0068】
ニップ板130とガイド部材300との間に隙間Dが形成されているので、ニップ板130の熱がガイド部材300(外部)に逃げることを抑制することができる。これにより、ニップ板130を迅速に加熱することができるので、定着装置100の立ち上がり時間を短くすることができる。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。具体的な構成については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0070】
前記実施形態では、ニップ板130は、本体部131の前側(搬送方向上流側)にのみ潤滑剤保持部137(接続部132およびフランジ部133)が形成されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図4に示すように、潤滑剤保持部137(接続部132およびフランジ部133)は、本体部131の前後両方(搬送方向の両側)に形成されていてもよい。
【0071】
前記実施形態では、ニップ板130は、本体部131が前後方向に沿って平らに延びる平板状に形成されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、本発明において、ニップ板の本体部は、曲面に沿って延びる平板状であってもよい。
【0072】
例えば、本体部131(少なくとも定着ベルト110と摺接する面)は、図5に示すように、加圧ローラ140側に向けて凸となる曲面形状をなしていてもよいし、図示は省略するが、ハロゲンランプ120側に向けて凸となる曲面形状をなしていてもよい。なお、筒状部材の良好な回転を実現するため、曲面形状の本体部の曲率は、本体部と接続部をつなぐ第1屈曲部の曲率よりも小さいことが好ましい。
【0073】
前記実施形態では、ステイ160が、ニップ板130のフランジ部133と本体部131の後端とを支持するように構成されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図5に示すように、本体部131の前後にフランジ部133が形成される場合には、ステイ160が前後のフランジ部133を支持するように構成されていてもよい。
【0074】
前記実施形態では、ニップ板130に流入防止部134が形成されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、本発明において、流入防止部は任意の構成であるため、形成されていなくてもよい。
【0075】
なお、流入防止部を有しないニップ板(フランジ部)の搬送方向上流側の端部は、前記実施形態の第2屈曲部B2と比較して鋭い断面形状をなすことになるので、筒状部材の内周面と摺接した場合には、筒状部材の回転トルクが大きくなったり、筒状部材の内周面に傷がついたりするおそれが高まることとなる。したがって、このような場合に本発明は特に有効である。
【0076】
前記実施形態の定着装置100は、ニップ板130を介して定着ベルト110(筒状部材)を加熱する構成であったが、本発明はこれに限定されず、例えば、ヒータによって筒状部材を直接加熱するような構成であってもよい。言い換えると、ニップ板は、ヒータによって加熱されないものであってもよい。
【0077】
前記実施形態では、反射部材150とステイ160の両方を備える構成を例示したが、本発明はこれに限定されず、ステイのみを備える構成としてもよいし、反射部材のみを備える構成としてもよいし、ステイと反射部材の両方を設けない構成としてもよい。
【0078】
なお、ステイのみを備える(反射部材を設けない)構成とした場合、ステイは、ヒータと対向する側の面に、ヒータからの輻射熱をニップ板に向けて反射する反射面を有していてもよい(すなわち、ステイと反射部材が一体に構成されていてもよい。)。これによれば、ヒータからの輻射熱を効率良く利用することができるので、ニップ板や筒状部材を迅速に加熱することができる。
【0079】
また、別部品としての反射部材を備えないことで、反射部材を配置するためのスペースが不要となるので、ステイをヒータにより近づけることができ、ステイやニップ板を記録シートの搬送方向に小型化することができる。これにより、定着装置100の小型化を図ることができる。また、ニップ板130が小型化することにより、ニップ板130の熱容量が小さくなるので、ハロゲンランプ120によりニップ板130を迅速に加熱することができ、定着装置100の立ち上がり時間の短縮化を図ることができる。
【0080】
前記実施形態で示したガイド部材300の構成は一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、ガイド部材は、ニップ板とバックアップ部材との間に向けて筒状部材を案内することができるものであれば、具体的な構成は適宜変更が可能である。例えば、ガイド部材は、記録シートの搬送方向におけるヒータやニップ板の上流側に配置される、筒状部材の軸方向に長い略板状の部材であってもよい。
【0081】
前記実施形態では、ヒータとしてハロゲンランプ120(ハロゲンヒータ)を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、カーボンヒータやIHヒータなどであってもよい。
【0082】
前記実施形態では、バックアップ部材として加圧ローラ140を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、ベルト状の加圧部材などであってもよい。
【0083】
前記実施形態では、記録シートとして、普通紙やはがきなどの用紙Sを例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、OHPシートなどであってもよい。
【0084】
前記実施形態では、本発明の定着装置を備える画像形成装置として、モノクロの画像を形成するレーザプリンタ1を例示したが、これに限定されず、例えば、カラーの画像を形成するプリンタであってもよい。また、画像形成装置は、プリンタに限定されず、例えば、フラットベッドスキャナなどの原稿読取装置を備える複写機や複合機などであってもよい。
【符号の説明】
【0085】
100 定着装置
110 定着ベルト
120 ハロゲンランプ
130 ニップ板
131 本体部
132 接続部
133 フランジ部
134 流入防止部
137 潤滑剤保持部
140 加圧ローラ
300 ガイド部材
310 下端部
B1 第1屈曲部
B2 第2屈曲部
D 隙間
G 潤滑剤
PL1 平面
PL2 摺接面
PL3 下面
S 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録シートに転写された現像剤像を熱定着する定着装置であって、
可撓性を有する筒状部材と、
前記筒状部材の内側に配置されたヒータと、
前記筒状部材の内周面に摺接するように配置されたニップ板と、
前記ニップ板との間で前記筒状部材を挟むバックアップ部材と、
前記筒状部材の内側に配置され、前記ニップ板と前記バックアップ部材との間に向けて前記筒状部材を案内するガイド部材と、を備え、
前記ニップ板は、金属板を屈曲させることにより形成されており、前記筒状部材と摺接し、前記バックアップ部材との間で前記筒状部材を挟む本体部と、前記本体部の記録シートの搬送方向上流側の端部から前記バックアップ部材とは反対側に向けて延びる接続部と、前記接続部の端部から前記搬送方向上流側に向けて延び、前記接続部とともに、前記筒状部材の内周面に対面して潤滑剤を保持する潤滑剤保持部を形成するフランジ部と、を有し、
前記フランジ部の前記搬送方向上流側の端部は、前記本体部と前記接続部をつなぐ第1屈曲部と、前記ガイド部材の前記筒状部材の回転方向下流側の端部とに接する平面よりも前記ヒータ側に位置することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記ガイド部材の前記筒状部材の回転方向下流側の端部は、前記ニップ板と前記ヒータが対向する方向において、前記本体部の前記筒状部材と摺接する面と、前記フランジ部の前記バックアップ部材側の面との間に位置することを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記ニップ板は、前記フランジ部の前記搬送方向上流側の端部から前記バックアップ部材が配置された側とは反対側に向けて延び、前記ニップ板の前記筒状部材と摺接する面とは反対側の面への潤滑剤の流入を防止する流入防止部を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記第1屈曲部の曲率は、前記フランジ部と前記流入防止部をつなぐ第2屈曲部の曲率よりも小さいことを特徴とする請求項3に記載の定着装置。
【請求項5】
前記搬送方向において、前記フランジ部の前記搬送方向上流側の端部と前記ガイド部材との間には隙間が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の定着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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