説明

定量化手段を有する植物用基材

本発明は植物の土無し栽培又は生育用の基材に関する。基材は繊維質材料のスラブ(2)からなる。さらに定量化手段(5)が設けられている。定量化手段は、植物の発達を非破壊的に可視化し、及び/又は監視する。これにより、植物の生長、特に根の成長を監視することができ、この監視はもはや植物の犠牲を必要としない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は土無し栽培又は植物成長用の基材に関する。このような基材はこの技術分野で公知であり、繊維材料のスラブ(slab)からなる。
【背景技術】
【0002】
何年もの間、土に替わる基材の品質を改良する多くの開発が行われている。これらの成果が現実化され、最も可能性のある基材が提供されている。
【0003】
しかしながら、最も可能性のある植物成長を達成するために、温室や例えば実験室でのテスト条件で、多くのパラメータが設定され、従来の基材ではどこに問題があるかが監視された。実験室の技術者や植物栽培者は、スラブの中を見て、植物の発達を検査し監視することはできない。
【0004】
これまで根の成長に基づいて植物の発達を決定することが通常行われてきた。しかしながら、実験室の技術者や植物栽培者が根の成長を検査する従来の唯一の解決手段は、スラブを分離し、根の発達を視覚的に検査することであった。しかしながら、これは根系を損傷するので植物を必然的に死に至らしめる。しかし、一つの試料を採取するよりも統計的により有効な根成長の決定をするために、多くの植物は従来の監視方法から身を守れないであろう。これは明らかに望ましくない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来の欠点を除去し又は少なくとも軽減するために、本発明によれば、植物の発達を非破壊的に可視化し、及び/又は監視する定量化手段定量化手段により特徴づけられる基材が提供されている。
【0006】
本発明による基板を用いて、植物の発達を監視し、該植物の発達の記録を適時に行うことができる。一つの植物の発達の記録を適時に行うことで、監視行為によって破壊されることがなく、所望の植物発達に対して維持し及び/又は調整すべき正しい条件を洞察することができる。これは、植物生育の実際、実験室環境でのスラブ又は基材の開発者にとって、真実である。後者は実験室技術者と呼ばれ、新たな基材製品を開発し、品質を確認することが望まれている。
【0007】
好ましい実施形態では、定量化手段は根の成長の少なくとも1つの指標からなる。前述したように、根の成長は植物の発達を監視するときの主要な関心事の一つである。根の成長の指標を配置することで、根の成長を遅れずに監視することができ、定量化手段により検出され指標により測定された根の成長に従って、温度、湿度、水の供給量等のようなパラメータを設定し又は調整することができる。指標は、本発明によれば、スラブの側面又は内部の少なくとも2つの平行なラインからなる。これにより、少なくとも2つの時間的痕跡、すなわち、根が下方の成長方向に2つの平行なラインの最初のラインに達したとき、根が2つの平行なラインの低い方に達したときを決定することができる。このために、ラインはスラブの異なる高さ又は深さに配置されている。水平方向の根の成長を監視するために、同様の垂直線を使用することもできる。水平で平行な線を使用することで、格子に指標を形成することができ、垂直下及び側方のすべての方向における根の成長を監視する機会が与えられる。指標は、スラブの上又は内部に配置された透明材料の追加のシートの上に配置されるのが好ましい。スラブは繊維質材料からなるので、指標又は他の定量化手段を印刷し又は配置することは困難である。このため、前記追加のシートを指標の支持手段として利用することが有用である。このような実施形態では、シートを高密度ポリウレタンのような印刷可能な透明材料から形成することができ、その上に指標を配置することができる。ポリウレタン(この材料のみではないが)のような材料は、平均温度より高い湿気のような植物の成長に関連する条件に対抗する好ましい特性を示す。
【0008】
追加又は代案として、定量化手段は、監視した植物の発達を登録する登録手段(registration means)からなる、このような登録手段は、根成長進度(root growth progress)と関連するコードを維持するために、指標と対応するコードからなる。例えば、定量化手段が格子(grid)からなる実施形態では、格子は垂直方向は文字、水平方向は数字のように、コードで指定することができる。記録は、ある形態の根成長進度の概観(overview)で構成してもよい。ここで、スラブ上又は内部の特定の位置で特定の植物の根が文字と数字の組み合わせで指定されたグリッド部に到達したときに、登録される。言うまでもないが、多くの他の種類のコードを使用することができるが、一つの方向が文字で他の方向が数字の形態の提案されたコードは、全ての格子要素が別個の識別コード又は参照符号を有する必要はないという利点を有している。なぜなら、文字と数字はスラブの縁に沿って配置されるからである。スラブの縁からある距離にある格子要素は自動的に文字と数字の組み合わせにより参照することができる。
【0009】
追加又は代案として、定量化手段は、スラブの少なくとも1つの自由側面に沿って配置されている。これにより、スラブの側面に沿って配置された全ての植物の発達を監視することができる。あるいは、定量化手段がその側面に沿って延びている限り、少なくとも植物の発達を監視することができる。特に、定量化手段がスラブの1つの自由側面に固定されていれば、取り外し可能で取り替え可能なカバーは定量化手段の上に配置するのが好ましい。そのようなカバーを持ち上げることによる視覚検査は、植物の発達と根の成長を適切に洞察するのに十分である。その後、カバーを定量化手段の上に戻すことができる。これにより、スラブの側面に向かう根の成長が入射光により妨げられることが回避される。根は自由側面に向かって、スラブの繊維質材料の外であっても自由に成長し、これらの根を定量化手段に関して可視化する。
【0010】
追加又は代案として、スラブは、少なくとも1つの取り外し可能で取り替え可能な繊維質材料のスラブ部品からなり、スラブの側面から離れた植物の発達と根の成長を観察することができる。使用時には、繊維質材料のスラブ部品は、少なくとも部分的にスラブ(の残りの部分)によって囲まれる。定量化手段は、スラブ部品、又は該スラブ部品を少なくとも部分的に囲むスラブ部の少なくとも1つの側面に配置されてもよい。このようなスラブ部品はブロック形状又は円筒であってもよいし、植物の発達の監視の意図された目的に適した他の都合のよい形状を有していてもよい。いずれの場合にも、このようなスラブ部品は、該スラブ部品を少なくとも部分的に囲む残りのスラブ部に接着又は固定できることが好ましい。このために、スラブ部品又はスラブ部を選択的に接合する係合手段を設けてもよい。可能な実施形態では、そのような係合手段は、ベルクロ又はバンド、テープの形態で提供されてもよい。これらは、スラブ部品が容易に解放できるように制限された接合能力を有し、好ましくは、バンドやテープが解放された後、繊維質材料及び/又は該繊維質材料を覆うカバーの材料に接着する能力を維持する。
【0011】
以下、本発明による基材の選択された幾つかの実施形態を添付図面を参照して説明する。ここで、同一又は類似の要素には同一参照符号で指定されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明による基材1を示す。この基材1は繊維質材料のスラブ2からなり、該スラブ2は図2に示すように通常プラスチック箔(foil)3により覆われている。
【0013】
繊維質材料からなるスラブ2の側面に沿って、定量化手段(quantification means)5が配置されている。定量化手段5は根成長の指標(indicator)を形成する。根成長の指標としての定量化手段は図1と2に示す実施形態では、格子6の形態である。格子6は、繊維質材料のスラブ2の側面4を識別可能な部分に再分割するように形成されている。これらの部分は、スラブ2の辺縁に沿って配置されているコード7,8の組み合わせにより識別可能である。コード7は文字であり、コード8は数字である。コード7としての文字の一つとコード8としての数字の一つとの特定の組み合わせは、スラブ2の側面が格子6によって分割された一つの部分の一義的な指標である。
【0014】
実験室の技術者及び/又は植物栽培者は、根が成長する垂直下方及び側方の両方の根の成長に基づいて、ある特定の1つの植物又は任意の数の植物の根が格子の線を任意の方向に横切った日時を記録することで、植物の発達を記録することができる。根の成長が予想又は所望のスケジュールから外れている場合、例えば、温度を高く又は低く設定するか、水を多く又は少なく供給することにより、植物成長のパラメータを調整することができる。実験室の技術者又は繊維質材料からなるスラブの開発者に対して、実験スラブの植物成長の監視結果は、実験スラブが所望の保水特性、凝集力等を有するか否かの重要な情報を提供することができる。このように、新規に開発されたスラブの特質をテストすることができる。
【0015】
根の成長の指標を形成する定量化手段5は、図2に示すように基材1から箔3を持ち上げることで検査することができる。指標5により形成される定量化手段を視覚的に又は自動的に検査した後、箔を降ろし、スラブ2を日光から遮断し、定量化手段5が配置されているスラブの側面に向かって根が成長するのを妨げる。植物の根はスラブ2の側面4に向かって自由に成長するので、側面4の表面で見えるようになりユーザに観察される。実施例では、高密度ポリウレタンのシートを使用し、スラブ2の側面4に配置することができる。このようなシートは、印刷により格子6、好ましくは文字コード7及び数値コード8も可視化することができる。このようなシートはスラブ2の少なくとも1つの側面に固定することができるが、緩めて解放できるようにして、少なくとも1つの側面で箔3を持ち上げた後(図2)、植物の発達と根の成長を定量化するために他の基材で繰り返し使用することができる。実際には、本発明による定量化手段の実施形態として、取り外し可能で、好ましくは透明なルーラーなどを使用することができる。代案として、シートの代わりに、魚網形部材を使用し、スラブ2の側面4に配置し、定量化手段を構成することもできる。このような実施形態のポリウレタン製固定シートを超える利点は、魚網型部材はスラブ2への空気の侵入の影響や効果が少なく、排水が容易であることである。コード7,8及び/又は格子6をレーザマーキングにより側面4に設ける他の実施形態、すなわち、スラブ2の側面4にコード7,8及び/又はグリッド6を形成する「焼」マーキングを行うのにレーザが使用される実施形態では、同一ではないが同様の考察を行うことができる。
【0016】
図3は、代案又は追加の実施形態を図1,2と比較して示す。図1、2では、スラブ2の側面4に定量化手段が設けられている。図3では、図4に詳細に示すように、定量化手段5は機材1のスラブ2の内面に配置されている。定量化手段5が配置された内面は、繊維質材料の隙間部であるブロック9との境界を形成している。使用時には、通常、ブロック9は定量化手段5に対向して配置し、箔3の一部を形成するプラスチック製のフラップ10をブロック9の上に配置する。フラップ10を開放することで、ブロック9を取り除くことができ、定量化手段を視覚検査することができる。視覚検査し、できれば結果を記録に登録した後、ブロック9を定量化手段に戻し、該ブロック9の上にフラップ10を閉じることができる。フラップ10は、ブロック9上に確実に閉じたままに維持するために、接着バンド11やベルクロのような他の任意の手段で箔に固定することができる。
【0017】
フラップ10を開放し、ブロック9を取り除くことで、図4に示すような視界が得られる。図4に根12を明瞭に視認することができる。根は、例えば外観及び/又は色等により、スラブ2の繊維質材料に対して、容易に視認することができる。植物の発達は、根の成長により高度に決定される。根の成長は根12が定量化手段を形成する格子6の境界を横切った瞬間の記録を適時に行うことで、容易に監視される。根の成長が所望の又は予想のスケジュール内になければ、温度、湿度、水や栄養の供給等のパラメータを調整することができる。
【0018】
ここで注意すべきことは、図4の矢視は図3の矢印IVの正しい方向ではないが、図4に示す表示は例えばデジタル写真の登録画像とすることができる。写真では、根が何処にどのように成長しているかを決定するのに画像処理技術を利用することができる。
【0019】
前述したように、根はその色により識別可能であり、認識可能である。画像処理を利用して格子6の正方形の表面のいくつが根に覆われているかを決定することができる。これは、全体画像、及び/又は格子6の各正方形領域に対して決定することができる。
【0020】
さらに、これらの結果を例えばデータベース、又は類似のデータ処理プログラム又は集計表プログラムでの処理に利用可能にすることができる。格子6の各正方形の根成長、及び格子6の正方形の各々の被覆率(coverage)増加を記憶し、例えばグラフで視覚化することもできる。標準の例えば平均根成長についての情報と比較することで、前記平均根成長、優良根成長、実験室又は温室でのパラメータ設定の調整を決定することができる。そのような標準は、グラフの形とし、標準に対する植物発達の可視化を容易にしてもよいし、単純に、格子6の選択された正方形の根の被覆の数、植付日に対する時間の比率、パーセンテージの形を有していてもよい。
【0021】
ここで、注意すべきことは、多くの追加の又は代案の実施形態は、本発明についての学習により、基材の技術分野における当業者に明らかである。そのような代案や追加の実施形態は、請求の範囲に規定された保護範囲及び本発明の精神に従う限り、本発明の保護範囲内である。例えば、繊維質材料のスラブの内表面又は外表面に沿ったラインを形成する糸を設けることは、本発明の範囲である。文字コードや数字コードは根の成長を登録するのに適した他の手段と置き換えることができる。ここに記載された実施形態では、前記直線を使用し、格子を形成している。代案として、又は追加で、カップ形又はU字形のラインを使用し、植物を生育する意図された位置に中心を置くことができる。根成長を登録するのに情報が少なくてすむ。カップ形又は半円形のラインを横切る根はその位置からあらゆる方向の根の成長に関する十分な情報を提供するからである。しかしながら、この試みは、植物をスラブに配置するときに高精度を要するが、正確な設置はスラブに設けられた空間の最適な使用に既に必要であるから、有利であると考えることができる。さらに、その方向に拘わらず、傾斜線や、不連続線、点線、鎖線等も利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による基材の斜視図を示す。
【図2】カバーに包装された図1と同じ基材を示す。
【図3】図1と異なる本発明の実施形態を示す。
【図4】本発明による基材の一部としての定量化手段の特定の実施形態を示す図。
【符号の説明】
【0023】
1 基材
2 スラブ
3 箔
4 側面
5 定量化手段
6 格子
7 文字
8 数字
9 ブロック
10 フラップ
11 接着バンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の土無し栽培又は生育用の基材において、繊維質材料のスラブと、植物の発達を非破壊的に可視化し、及び/又は監視する定量化手段とからなる基材。
【請求項2】
前記定量化手段は根の成長の少なくとも1つの指標からなる請求項1に記載の基材。
【請求項3】
前記指標は、前記スラブの側面又は内部にある少なくとも2つの平行なラインからなる請求項2に記載の基材。
【請求項4】
前記ラインは、前記スラブの異なる高さ又は深さに配置されている請求項2に記載の基材。
【請求項5】
前記指標は格子からなる請求項2,3,4のいずれかに記載の基材。
【請求項6】
前記指標は、前記スラブ上又は内部に固定し又は選択的に除去可能に設けられた透明材料からなる追加シートに配置されている請求項2に記載の基材。
【請求項7】
前記シートは、高密度ポリウレタンのような印刷可能な透明材料からなり、その上に前記指標が配置されている請求項6に記載の基材。
【請求項8】
前記指標は魚網形要素からなる請求項2−7のいずれかに記載の基材。
【請求項9】
前記指標はレーザマーキングからなる請求項2−8のいずれかに記載の基材。
【請求項10】
前記定量化手段はスラブの上又は内部に選択的に配置されている請求項1から9のいずれかに記載の基材。
【請求項11】
前記定量化手段は監視された植物の発達を登録する登録手段からなる請求項1から10のいずれかに記載の基材。
【請求項12】
前記登録手段は前記指標と対応するコードからなり、該コードを根成長進度に関連させて記録する請求項2から11のいずれかに記載の基材。
【請求項13】
前記定量化手段は前記スラブの少なくとも1つの自由側面に沿って配置されている請求項1から12のいずれかに記載の基材。
【請求項14】
移動可能で取り替え可能なカバーが前記定量化手段の上に配置されている請求項13に記載の基材。
【請求項15】
前記スラブは、少なくとも1つの移動可能で取り替え可能な繊維質材料のスラブ部品からなり、使用時に少なくとも部分的に前記スラブにより囲まれ、
ここで前記定量化手段は、前記スラブ部品、又は該スラブ部品を少なくとも部分的に囲むスラブ部の少なくとも1つの側面に配置されている請求項1から14のいずれかに記載の基材。
【請求項16】
前記スラブ部品はブロック形状である請求項15に記載の基材。
【請求項17】
前記スラブ部品と前記スラブ部を選択的に結合する係合手段をさらに有する請求項15に記載の基材。
【請求項18】
前記請求項のいずれかによる実験基材をテストし、又は例えば温室で前記実験基材上の植物の発達を監視する方法において、前記定量化手段から得られた植物の発達の情報を登録することからなる方法。
【請求項19】
前記実験基材のパラメータ又は温室の設定の調整をする必要性を決定し、その必要性を決定したときに前記パラメータの調整を行う請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記情報を登録するステップは、前記定量化手段の画像を獲得し、画像処理により植物発達の尺度を提供することからなる請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
前記画像処理はコンピュータを用いてデジタルで行い、前記画像をデジタルである請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記植物発達の尺度は、将来参照し又は標準と比較するために保管され又は記憶される請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記植物発達の尺度は、根成長であり、前記画像又は該画像の選択部分の根の被覆率により決定される請求項20,21,22のいずれかの記載の方法。
【請求項24】
前記画像の選択部分は、前記ラインにより分割された側面又は内部と対応する請求項23に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−511299(P2008−511299A)
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−528789(P2007−528789)
【出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【国際出願番号】PCT/EP2005/009516
【国際公開番号】WO2006/024546
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(500336306)ロックウール・インターナショナル・アクティーゼルスカブ (7)
【Fターム(参考)】