説明

定量採血管及び定量採血器具

【課題】血液Sの定量採取及びその血液Sと試薬Rとの定量混合を簡単且つ確実に行うことである。
【解決手段】一端に開口を有する採血管本体21と、血液導入口、及びその血液導入口と前記採血管本体21とを連通する血液流路を有する蓋部材22と、を具備し、前記採血管本体21が、減圧吸引作用により前記血液導入口221Aから血液Sを吸引する減圧採血室21A、及び前記血液Sを希釈する試薬Rを収容する試薬収容室21Bを有し、前記蓋部材22が、前記血液流路から所定量の血液Sを採取して、前記試薬収容室21B内に導入する定量採取部222を有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液を採取するための採血管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば血液を分析する場合、前処理工程として、真空採血管又はシリンジなどで採血する工程、ガラスキャピラリー管又はピペット等を用いて、真空採血管内の血液を一定量採取する工程、及び一定量採取した血液を一定量の試薬の入った容器に導入して、振動装置などを用いて混合する工程がある。
【0003】
しかしながら、上述したように作業工程が多く、特にガラスキャピラリー管又はピペット等を用いて血液を一定量採取する作業には熟練が必要である。
【0004】
一方、特許文献1に示すように、血液を収容する採血管を血液分析装置に導入して、一定量の血液及び試薬を自動で吸い取り、同一の容器内に導入して定量混合を行うものがある。
【0005】
しかしながら、この定量混合は、当該血液分析装置専用に行うものであり、その混合液体を他の分析装置に用いることができない。また、血液分析装置内に一体に設けられた機構により定量混合を行うものであり、血液を定量混合する為だけに用いる場合でも、血液分析装置を用いる必要があり、作業が大がかりになってしまう。
【特許文献1】特開2002−55069号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、血液の定量採取及びその血液と試薬との定量混合を簡単且つ確実に行うことをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る定量採血管は、一端に開口を有する採血管本体と、血液導入口、及びその血液導入口と前記採血管本体とを連通する血液流路を有する蓋部材と、を具備し、前記採血管本体が、減圧吸引作用により前記血液導入口から血液を吸引する減圧採血室、及び前記血液と混合する試薬を収容する試薬収容室を有し、前記蓋部材が、前記血液流路から所定量の血液を採取して、前記試薬収容室内に導入する定量採取部を有することを特徴とする。
【0008】
このようなものであれば、採血管本体が減圧採血室及び試薬収容室を有し、蓋部材が、所定量の血液を採取して、試薬収容室内に導入する定量採取部を有しているので、血液の定量採取及びその血液と試薬との定量混合を簡単且つ確実に行うことができる。
【0009】
定量採取部の具体的な実施の態様としては、前記定量採取部が、前記採血管本体に対して相対移動することにより、前記血液流路の一部を移動させて、その流路を前記試薬収容室に連通させるものであることが考えられる。これならば、非常に簡単な操作で血液の定量採取及び定量混合を行うことができる。
【0010】
また、本発明に係る定量採血器具は、前記定量採血管と、その定量採血管が挿入される採血ホルダと、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
このように構成した本発明によれば、血液の定量採取及びその血液と試薬との定量混合を簡単且つ確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の一実施形態に係る定量採血器具について、図面を参照して説明する。なお、図1は、本実施形態に係る定量採血器具1の縦断面図である。図2は、採血管ホルダ3に定量採血管2を挿入した状態を示す断面図である。図3は、採血後の定量採血管2を示す断面図である。図4は、定量採取部222を回転させた後の状態を示す断面図である。
【0013】
<装置構成>
本実施形態に係る定量採血器具1は、図1に示すように、定量採血管2と、採血を行う際に定量採血管2が挿入される採血管ホルダ3とを備えている。
【0014】
まず、採血管ホルダ3について説明する。
【0015】
採血管ホルダ3は、図1に示すように、一端(後端部)に開口を有し、その開口から定量採血管2が挿入される円筒状のホルダ本体31と、そのホルダ本体31の他端(先端部)に取り付けられ、ホルダ本体31の外方に延出した穿刺針部321と内方に延出した採血管用針部322とからなる採血針32と、を備え、前記採血管用針部322が採血に際し定量採血管2の蓋部材22を刺通するように設けられている。
【0016】
ホルダ本体31は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネイト、ポリスチレン等のプラスチックにより一体成形されるものであり、開口が形成されている一端部には、径方向外方に突設されたフランジ部33が形成されている。
【0017】
次に、定量採血管2について説明する。
【0018】
定量採血管2は、真空採血管に定量採血機機能及び定量混合機構を付与したものであり、図1〜図4に示すように、等採血管ホルダ3内に、その後端部の開口から挿入されるもので、一端に開口を有する採血管本体21と、その開口内に着脱自在に閉塞する蓋部材22とを備えている。
【0019】
採血管本体21は、一端が開口し且つ他端が閉塞された横断面が円形の有底管であり、その内部は、仕切壁211によって減圧採血室21Aと試薬収容室21Bに区画されている。また、採血管本体21は、ガラス又はプラスチックから一体成形されるものである。
【0020】
そして、減圧採血室21Aは、所定圧力(例えば真空)に減圧されている。また、試薬収容室21Bは、血液Sの前処理に使用する希釈液等の試薬Rが収容される部屋であり、採血前に予めその試薬Rを収容させている。その収容方法としては、例えば減圧採血室21Aを減圧する前に、試薬収容室21Bに所定の試薬を導入し、蓋部材22により栓をして、試薬を封止する。
【0021】
また、減圧採血室21Aの開口側部分には、蓋部材に設けられた血液流路と連通する流路を備えた肉厚部212が形成されている。その肉厚部212には、後述する蓋部材22を取り付けるための固定軸224が取り付けられる。
【0022】
蓋部材22は、前記採血管本体21の開口を閉塞するものであり、血液導入口221Aと、その血液導入口221A及び採血管本体21の減圧採血室21Aを連通する血液流路を内部に有する。そして、蓋部材22は、ゴムからなる蓋部材本体221と、その基端部(採血管本体21側)に設けられた定量採取部222とを備えている。
【0023】
蓋部材本体221は、一端面に血液導入口221Aを備え、内部に血液流路を形成しており、その先端面に、前記採血管用針部322が刺し通されるゴム製の蓋223が取り付けられている。
【0024】
定量採取部222は、その内部に前記血液流路の一部を形成しており、採血管本体21と、蓋部材本体221との間で固定軸224により回転可能に軸支されている。そして、採血中においては、血液流路が減圧採血室21Aに連通するようにしている。これにより、採血管用針部322が、前記ゴム製の蓋223に刺し通されることにより、減圧採血室21Aの減圧吸引作用により、血液Sが血液流路内を通って減圧採血室21A内に流入する。その後、採血者が、定量採取部222を180度回転させることにより、図4に示すように、定量採取部222内に形成された流路のみが切り取られて、その流路が試薬収容室21Bに連通される。
【0025】
また、定量採取量は、定量採取部222内に形成された流路の断面積(太さ)及び定量採取部222の厚みを変えること、つまり、定量採取部222内に形成された流路の体積を変えることにより、自由に変更することができる。例えば、約1μL〜20μL等に変更することができる。
【0026】
本実施形態においては試薬収容室21Bには、試薬Rが収容されているので、定量採血管2を振ることにより、定量採取部222により定量採取された血液S(切り取られた流路内にある血液S)と、試薬Rとが混合される。このとき、試薬収容室21B内に収容する試薬Rの量を調節することにより、血液Sと試薬Rとの定量混合が可能となる。
【0027】
また、定量採取部222と採血管本体21とは、定量採取部222が回転移動しても試薬R及び血液Sが外に漏れでない液密となるようにシールされている。
【0028】
<使用方法>
次に、本実施形態に係る定量採血器具1の使用方法について説明する。
【0029】
まず、採血管ホルダ3の穿刺針部321を被採血者の腕などに刺入して、採血管ホルダ3を固定する。次に、その採血管ホルダ3に、定量採血管2をまっすぐ挿入する。そうすると、採血管ホルダ3の採血管用針部322が、定量採血管2のゴム製の蓋221Aに刺し通されて(図2参照)、採血針32と血液流路とが連通し、減圧吸引作用により、血液Sが血管から減圧採血室21Aに流入する(図3参照)。採血の血流が停止したら直ちに定量採血管2を採血管ホルダ3から抜去する。なお、連続して採血する場合には、採血管ホルダ3を固定したまま定量採血管2を取り替える。採血が終了した場合には、採血管ホルダ3の針32を抜き出し、消毒などの一般的な措置を行う。
【0030】
次に、採血管ホルダ3から取り出した定量採血管2の定量採取部222を回転させる(図4参照)。その後、定量採血管2を転倒混和する。そして、転倒混和させた後、その定量採血管2を血球カウンタ等の分析装置に導入して測定を行う。
【0031】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態に係る定量採血器具1によれば、従来から使用されている真空採血管と同様の手順により採血を行うことができるとともに、定量採取部222により一定量の血液Sを採取することができるので、簡単且つ確実に血液Sの定量採血を行うことができる。
【0032】
また、血液採取後、定量採取部222を回転させるという一動作(1アクション)により、定量採取及び定量混合を同時に行うことができるので、極めて簡単に定量採血及び定量混合を行うことができる。
【0033】
その上、定量採血及び定量混合を、本器具1により行うことができるので、従来の血液分析装置等の内部に設けられた定量機、試薬混合機構等の一部を省略可能にでき、その結果、血液分析装置の小型化、低コスト化等も実現することができる。
【0034】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【0035】
例えば、前記実施形態では、試薬収容室21B内には、採血前から試薬Rを収容しているが、定量採取した後に、試薬収容室21B内に試薬Rを収容するようにしても良い。
【0036】
また、前記定量採取部222は、採血管本体21及び蓋部材本体221に回転可能に軸支されて回転することにより、定量採取した血液Sを試薬収容室21B内に導入するようにしているが、その他、例えば図5に示すように、採血管本体21及び蓋部材本体221に対してスライド移動するようにしても良い。このときの定量採取及び定量混合の動作としては、突出部222aを押すだけで良い。
【0037】
さらに、前記実施形態では、採血管ホルダ3を用いて、定量採血管2に血液Sを導入しているが、採血管ホルダ3を用いないものであって良い。
【0038】
その上、採血管本体21を光学的に透明な材質により形成して、定量採血管2を吸光度等を測定する分析装置にそのまま導入することもできる。
【0039】
その他、前述した実施形態や変形実施形態の一部又は全部を適宜組み合わせてよいし、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態に係る定量採血器具の模式的断面図。
【図2】同実施形態における採血管ホルダに定量採血管を挿入した状態を示す断面図。
【図3】同実施形態における採血後の定量採血管を示す断面図。
【図4】同実施形態における定量採取部を回転させた後の状態を示す断面図。
【図5】変形実施形態に係る定量採血管の断面図。
【符号の説明】
【0041】
1 ・・・定量採血器具
2 ・・・定量採血管
21 ・・・採血管本体
21A ・・・減圧採血室
21B ・・・試薬収容室
22 ・・・蓋部材
221 ・・・蓋部材本体
221A・・・血液導入口
222 ・・・定量採取部
3 ・・・採血ホルダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に開口を有する採血管本体と、
血液導入口、及びその血液導入口と前記採血管本体とを連通する血液流路を有する蓋部材と、を具備し、
前記採血管本体が、前記血液導入口から血液を吸引する減圧採血室、及び前記血液と混合する試薬を収容する試薬収容室を有し、
前記蓋部材が、前記血液流路から所定量の血液を採取して、前記試薬収容室内に導入する定量採取部を有するものである定量採血管。
【請求項2】
前記定量採取部が、前記採血管本体に対して相対移動することにより、前記血液流路の一部を移動させて、その流路を前記試薬収容室に連通させるものである請求項1記載の定量採血管。
【請求項3】
請求項1又は2記載の定量採血管と、その定量採血管が挿入される採血ホルダと、を備えた定量採血器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−154702(P2008−154702A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−345230(P2006−345230)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【出願人】(504255685)国立大学法人京都工芸繊維大学 (203)
【Fターム(参考)】