説明

定電位電解式酸性ガス検出器

【課題】応答速度を低下させることなくオキシダントが存在する環境においても酸性ガスを高い精度で検出すること
【解決手段】電解液に作用極と対極とを接しさせてなる定電位電解式酸性ガス検出器において、前記電解液が、ヨウ素酸塩を含む溶液に臭化物塩とヨウ化物塩を、ヨウ化物イオン量/(ヨウ化物イオン量+臭化物イオン量)が、0.1乃至10%となるように混合して調整さている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性ガスを検出するための電気化学式ガス検出器、より詳細にはその電解液の組成に関する。
【背景技術】
【0002】
三フッ化塩素やフッ化水素などの弱酸性ガスを検出する定電位電解式酸性ガス検出器には、特許文献1に見られるように、被検ガス透過が可能で、かつ撥水性を備えた隔膜と貴金属の層を有する作用極と対極と備えた定電位電解型ガス検出器に、沃素酸塩と、臭化物塩とを含む溶液を電解液として収容したものが用いられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-271234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記定電位電解式酸性ガス検出器は、大気中に存在するオキシダント(オゾンO3)に対する感度をできる限り抑えて三フッ化塩素やフッ化水素などのを高い精度で検出することができるものの、応答速度が若干低いという不都合がある。
【0005】
本発明の目的は、このような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところはオキシダントに対する感度を抑制しつつ、弱酸性ガスに対する応答速度(定常値の60%に到達するに要する時間)を改善できる定電位電解式酸性ガス検出器の電解液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような問題を解消するために本発明においては、電解液に作用極と対極とを接しさせてなる定電位電解式酸性ガス検出器において、前記電解液が、ヨウ素酸塩を含む溶液に臭化物塩とヨウ化物塩を、ヨウ化物イオン量/(ヨウ化物イオン量+臭化物イオン量)が、0.1乃至10%となるように混合して調整されている。
【発明の効果】
【0007】
オキシダントに対する感度を抑えて低い濃度の三フッ化塩素やフッ化水素などの弱酸性ガスを従来よりも早い速度で検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】同図(A)は、ヨウ化物イオン量と臭化物イオン量との合計に対するヨウ化物イオン量の比率と弱酸性ガスに対する応答速度との関係を示す線図であり、また図(B)はヨウ化物イオン量と臭化物イオン量との合計に対するヨウ化物イオンの比率とオゾンに対する感度との関係を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
そこで以下に本発明の詳細を図示した実施例に基づいて説明する。
三フッ化塩素やフッ化水素などの弱酸性ガスを検出するのに適した定電位電解式酸性ガス検出器の電解液は、ヨウ素酸塩としてヨウ素酸リチウムを使用しその濃度を20mmol/L、また臭化物塩として臭化リチウム、ヨウ化物塩としてヨウ化ナトリウムを使用し、これらの合計濃度が500mmol/Lとなるように調整し、その上で電解液中のヨウ化物イオン量を、臭化物イオン量との合計に対する比率、つまりヨウ化物イオン量/(ヨウ化物イオン量+臭化物イオン量)を変化させてオゾンに対する検出感度及び弱酸性ガス応答速度を調査した。
【0010】
図1(A)は、ヨウ化物イオン量と臭化物イオン量との合計に対するヨウ化物イオン量との比率と弱酸性ガスの応答速度(定常値の60%に到達するに要する時間)との関係を示すものであって、ヨウ化物イオン量の比率が0.01%を越えると応答速度が急激に上昇する。
【0011】
一方、図1(B)は、ヨウ化物イオン量と臭化物イオン量との合計に対するヨウ化物イオン量の比率とオゾン0.1ppmによるガス検出器の指示値との関係を示すものであって、ヨウ化物イオン量の比率が大きくなるにつれて指示値も大きくなる。オゾンの管理濃度(TLV)は0.1ppmであり、またフッ化水素の管理濃度(TLV)は0.5ppmで、酸性ガスの管理濃度(TLV)に対するオゾンによる影響(誤差)は、20%程度まで許容できるから、ヨウ化物イオン量の比率は10%以下に設定する必要がある。
【0012】
したがって、ヨウ化物イオン量/(ヨウ化物イオン量+臭化物イオン量)の値を0.01%〜10%に設定すると、オゾンに対する誤差を抑えつつ、酸性ガスを迅速に検出することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解液に作用極と対極とを接しさせてなる定電位電解式酸性ガス検出器において、
前記電解液が、ヨウ素酸塩を含む溶液に臭化物塩とヨウ化物塩を、ヨウ化物イオン量/(ヨウ化物イオン量+臭化物イオン量)が、0.1乃至10%となるように混合して調整されている定電位電解式酸性ガス検出器

【図1】
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【公開番号】特開2012−2707(P2012−2707A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138843(P2010−138843)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(000250421)理研計器株式会社 (216)