説明

実施計画作成支援装置及び実施計画作成支援プログラム

【課題】実施対象に対して複数の標準化された実施行為を実施するための実施計画の作成を支援する実施計画作成支援装置及び実施計画作成支援プログラムを提供することを目的とする。
【解決手段】作成サーバ10は、実施行為情報を格納する標準実施行為情報DB11aと、実施計画に含めるべき複数の実施行為の入力を受け付けると共に当該複数の実施行為の相互間における実施順序の入力を受け付けるネットワークIF13と、実施計画情報を生成する実施計画情報生成部12aと、複数の実施行為の相互間の関連性に関する関連性情報を生成する関係性情報生成部12bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実施対象に対して複数の標準化された実施行為を実施するための実施計画の作成を支援する実施計画作成支援装置及び実施計画作成支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療関連行為を二次元構造で示したクリティカルパスが知られている。このクリティカルパスは、それまで医師の個人的な暗黙知として蓄積された膨大な医療知識を、標準化及び可視化を通じて形式知として提示することで、医療の質と効率を系統的に保証及び向上させることができる点で有用である。しかしながら、患者の状態によっては、クリティカルパスを適用できなかったり、予め想定された標準的な経過から乖離してしまいクリティカルパスを逸脱する可能性があるという問題が指摘されていた。
【0003】
この点に鑑みて本願発明者は、医療プロセス質管理システム及び医療プロセス質管理方法を提案した(特許文献1参照)。このシステムは、患者に対して実施する複数の医療プロセス及び各医療プロセスの実施順序等を記憶する記憶部と、次に実施する医療プロセスを読み出すプロセス管理部等を備えて構成されている。このシステムにおいては、「プロセスチャート(臨床プロセスチャート)」と「ユニットシート」を用いて、医療行為の内容を臨床経路に従って医師等に順次提示する。「ユニットシート」とは、患者の目標状態毎に形成された医療行為単位である「ユニット(プロセス)」を視覚化したものである。「プロセスチャート」は、複数のユニットを連結して構成される臨床経路の俯瞰図である。
【0004】
このようにプロセスチャートとユニットシートという2種類のツールによって、医療行為の内容や実施順序を標準化された内容で各医師に提示することで、各医師が個別的に独自判断で医療行為の内容や実施順序を決定する場合に比べて、医療行為の標準化を図ることができ、延いては医療プロセスの質を維持及び向上させることができる。また、このシステムによれば、患者の個別性に柔軟に対応できるので、従来のクリティカルパスの問題点を解消することが可能になる。
【0005】
しかしながら、このようなプロセスチャートを作成する場合において、各医師が個人的な判断に基づいて逐一作成したのでは、その労力が負担になるために当該システムの普及を図ることが困難になり、あるいは、異なる判断基準や知識に基づいた作成作業が行われることによって標準化の質が維持できなくなる可能性がある。
【0006】
この点に鑑みて本願発明者は、プロセスチャートの作成を支援するための装置を提案した(特許文献2参照)。このような装置によれば、症例に対する処置に関連する質問を医師に回答してもらうことで、患者に対して実施する複数の医療プロセスによって構成されるプロセスチャートのフォーマットを自動的に生成することができる。
【0007】
【特許文献1】国際公開第2006/057336号パンフレット
【特許文献2】特開2007−128351号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の作成支援装置で作成されたプロセスチャートは、医療現場においては必ずしも利便性の高いものとは言えない場合があった。すなわち、プロセスチャートに含まれる複数のユニットシートは、相互に特定の関連性を持っている可能性があるが、このような関連性は従来のプロセスチャートには表現されていないため、プロセスチャート全体におけるユニットシートの位置付けや、ユニットシート間での移行経路の予測が困難であった。
【0009】
例えば、プロセスチャートには、患者のあらゆる状態に適応できるように、患者の状態に応じて取り得る臨床経路が複数含まれる。これら複数の臨床経路の中で実際に実施される可能性が高い臨床経路については、医師であれば自らの知識や経験によって事前に予測することが可能であるが、医師以外の医療従事者(看護士や薬剤師等)にとっては予測し難い場合がある。しかしながら、従来の作成支援装置で作成されたプロセスチャートにおいては、これら複数の臨床経路がその実施の可能性に関わらず単に併記されているに過ぎないため、実際に実施される可能性が高い臨床経路を看護士等が予測することが困難であり、近日中に実施される可能性が高い医療行為が存在する場合であっても、当該医療行為で使用されるリソース(薬剤や医療機器等の各種の医療資源)の準備を事前に行うことができない等、プロセスチャートの利便性に問題があった。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、実施計画の作成を支援する場合において、実施計画に含まれる複数の実施行為の相互の関連性を当該実施計画に付与することによって、利便性の高い実施計画の作成を支援することができる、実施計画作成支援装置及び実施計画作成支援プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の本発明は、実施対象に対して実施され得る複数の実施行為を実施行為単位で特定するための実施行為情報を格納する実施行為情報格納手段と、前記複数の実施行為の中から前記実施対象に対する実施計画に含めるべき複数の実施行為の入力を受け付けると共に、当該実施計画に含めるべき複数の実施行為の相互間における実施順序の入力を受け付ける実施計画入力手段と、前記実施計画入力手段にて受け付けられた前記複数の実施行為と前記実施順序とに基づいて、前記実施対象に対する実施計画を特定する実施計画情報を生成する実施計画情報生成手段と、前記複数の実施行為の相互間の関連性に関する関連性情報を生成する関連性情報生成手段と、前記実施計画情報生成手段にて生成された前記実施計画情報と、前記関連性情報生成手段にて生成された前記関連性情報とを、前記実施計画情報にて特定される実施計画の実施を管理する実施計画管理装置に出力する出力手段とを備える。
【0012】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の本発明において、前記関連性情報生成手段は、前記実施計画管理装置から取得した過去の前記実施計画の実行の履歴に関する実施計画履歴情報に基づいて、前記関連性情報を生成することを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の本発明は、請求項2に記載の本発明において、前記実施計画入力手段は、前記実施順序を組み合わせて構成される複数の移行経路の入力を受け付け、前記実施計画履歴情報は、前記複数の移行経路のうち、過去の実施計画における各移行経路の実際の実施履歴に関する情報を含み、前記関連性情報生成手段は、前記実施計画履歴情報に含まれる前記実施履歴に関する情報に基づいて、前記複数の移行経路の出現頻度に関する情報を、前記関連性情報として生成することを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の本発明は、請求項2に記載の本発明において、前記複数の移行経路の出現頻度を特定するための出現頻度情報を格納する出現頻度情報格納手段を備え、前記関連性情報生成手段は、前記出現頻度情報格納手段にて格納された前記出現頻度情報に基づいて、前記複数の移行経路の出現頻度に関する情報を、前記関連性情報として生成することを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の本発明は、請求項3又は4に記載の本発明において、前記関連性情報生成手段は、第1閾値以上の出現頻度の移行経路である最頻出移行経路を他の移行経路から区別するための情報を、前記関連性情報として生成することを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載の本発明は、請求項5に記載の本発明において、前記関連性情報生成手段は、前記第1閾値より小さい第2閾値以上の出現頻度の移行経路であって前記第1閾値未満の出現頻度の移行経路である準頻出移行経路を他の移行経路から区別するための情報を、前記関連性情報として生成することを特徴とする。
【0017】
請求項7に記載の本発明は、請求項5及び6に記載の本発明において、前記関連性情報生成手段は、前記最頻出移行経路又は前記準頻出移行経路がその他の移行経路に分岐する際の分岐点となるユニットを他のユニットから区別するための情報を、前記関連性情報として生成することを特徴とする。
【0018】
請求項8に記載の本発明は、請求項2から7のいずれか一項に記載の本発明において、前記実施計画入力手段は、前記実施計画履歴情報に含まれる情報の中から前記関連性情報の生成を行う際に考慮すべき情報を指定するための生成モードの入力を受け付け、前記関連性情報生成手段は、前記実施計画入力手段にて受け付けられた生成モードにて指定される情報に基づいて、前記関連性情報を生成することを特徴とする。
【0019】
請求項9に記載の本発明は、実施対象に対して実施され得る複数の実施行為を実施行為単位で特定するための実施行為情報を格納する実施行為情報格納手段と、前記複数の実施行為の中から前記実施対象に対する実施計画に含めるべき複数の実施行為の入力を受け付けると共に、当該実施計画に含めるべき複数の実施行為の相互間における実施順序の入力を受け付ける実施計画入力手段と、を備えた実施計画作成支援装置に実施計画作成支援方法を実行させるプログラムであって、前記複数の実施行為と前記実施順序とを前記実施計画入力手段を介して受け付ける受け付けステップと、前記受け付けステップにおいて受け付けられた前記複数の実施行為と前記実施順序とに基づいて、前記実施対象に対する実施計画を特定する実施計画情報を生成する実施計画情報生成ステップと、前記複数の実施行為の相互間の関連性に関する関連性情報を生成する関連性情報生成ステップと、前記実施計画情報生成ステップにおいて生成した実施計画情報と、前記関連性情報生成ステップにおいて生成した関連性情報とを、前記実施計画管理装置に出力する出力ステップとを前記実施計画作成支援装置に実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1、9に記載の本発明によれば、関連性情報を付加することで、実施計画を実施計画管理装置を介して実施した際には当該関連性情報の出力等を行うことが可能になり、実施計画における各実施行為の相互間の関連性を把握できるので、実施計画の見通しを立てることが可能になる等、利便性の高い実施計画の作成を支援することができる。
【0021】
請求項2に記載の本発明によれば、過去の前記実施計画の実行の履歴に関する実施計画履歴情報に基づいて関連性情報を生成するので、過去の実績を反映した関連性情報が生成され、過去の実績に基づいて実施計画の見通しを立てることが可能になる。
【0022】
請求項3に記載の本発明によれば、移行経路の出現頻度に関する情報を付加することで、実施計画を実施計画管理装置を介して実施した際には当該出現頻度に関する情報の出力等を行うことが可能になり、実際に実施される可能性が高い移行経路を把握する事が可能になるため、移行経路の予測能力を自ら持たない者であっても、当該実施計画を参照しただけで必要なリソースの準備等を行うことができるようになる等、利便性の高い実施計画の作成を支援することができる。
【0023】
請求項4に記載の本発明によれば、出現頻度情報格納手段に格納された出現頻度に基づいて関係性情報が生成されるので、必要に応じて事前に登録した任意の出現頻度を反映した関連性情報が生成される。
【0024】
請求項5に記載の本発明によれば、最頻出移行経路に関する情報を付加することで、実施計画を実施計画管理装置を介して実施した際には当該最頻出移行経路の出力等を行うことが可能になり、最も実施される可能性が高い移行経路を容易に把握することができる。
【0025】
請求項6に記載の本発明によれば、準頻出移行経路に関する情報を付加することで、実施計画を実施計画管理装置を介して実施した際には当該準頻出移行経路の出力等を行うことが可能になり、最頻出移行経路の次に実施される可能性が高い移行経路を把握する事が可能になる。特に、最頻出移行経路と準頻出移行経路とを区別可能に出力できるので、各移行経路に至る可能性やその程度について一層詳細に認識することができる。
【0026】
請求項7に記載の本発明によれば、最頻出移行経路又は準頻出移行経路がその他の移行経路に分岐する際の分岐点となるユニットを他のユニットから区別するための情報を付加することで、実施計画を実施計画管理装置を介して実施した際には当該分岐点となるユニットの出力等を行うことが可能になり、当該プロセスチャートに含まれる医療行為の中で、最頻出移行経路や準頻出移行経路を維持するために重要なユニットを容易に特定でき、当該ユニットにおける医療行為の実施に特に留意すること等ができる。
【0027】
請求項8に記載の本発明によれば、生成モードにて指定される情報に基づいて関連性情報を生成することで、病院、医師、あるいは疾患の如き様々な要素の中から任意に指定した要素についての共通性を有する関連性情報が出力できることになり、ニーズに応じた様々な側面から実施行為間の関係性を把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る実施計画作成支援装置及び実施計画作成支援プログラムを実施するための最良の形態について詳細に説明する。まず、〔I〕本実施の形態の基本概念を説明した後、〔II〕本実施の形態の具体的内容について説明し、〔III〕最後に本実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0029】
〔I〕本実施の形態の基本概念
まず、本実施の形態の基本概念について説明する。本実施の形態に係る実施計画作成支援装置(以下「本装置」)及び実施計画作成支援プログラム(以下「本プログラム」)は、実施対象に対する実施行為を実施する実施者に対して、当該実施行為を標準化された内容及び実施順序で実施するための実施計画の作成を支援するための装置及びプログラムである。
【0030】
本装置及び本プログラムは、広範な分野に適用可能であり、概念的には、当該分野における形式知(具体的には、実施対象に対して実施者が実施する複数の実施行為の内容と、これら複数の実施行為の相互間の実施順序)を構造化することで可視化が可能な全ての分野に適用可能である。この適用分野の例としては、「医療分野」、「防災分野」、「教育分野」を挙げることができ、この適用分野に応じて、「実施対象」、「実施者」、「実施行為」、「実施計画」の具体的内容は異なり得る。例えば、医療分野では、実施対象=患者、実施者=医師(又は病院の如き医療機関)、実施行為=医療行為、実施計画=医療計画である。同様に、防災分野では、実施対象=災害やテロ行為の被災者や被災物、実施者=救援者、実施行為=救援行為、実施計画=救援計画が該当し、教育分野では、実施対象=生徒、実施者=教師、実施行為=教育行為、実施計画=教育計画が該当する。以下では、本装置及び本プログラムを医療分野に適用した場合について説明するものとし、実施対象=患者、実施者=医師(又は病院)、実施行為=医療行為、実施計画=医療計画と読み替えて説明する(必要に応じて、本装置を「実施計画作成支援システム」、本プログラムを「実施計画作成支援プログラム」と称する)が、本装置及び本プログラムを他の分野に適用する場合には、上述のように「実施対象」、「実施者」、「実施行為」、「実施計画」の内容を当該他の分野に応じた内容に読み替えばよい。
【0031】
図1は、実施計画作成支援システムの全体構成を概念的に示す説明図である。この図1に示すように、統合支援センター1に設置された作成サーバ10と、複数の病院2の各々に設置された管理サーバ20とが、WAN(Wide Area Network)やインターネットの如きネットワーク3を介して相互に通信可能に接続されている。また、各病院2の内部では、管理サーバ20に対して、オーダサーバ30及び複数の支援端末40がLAN(Local Area Network)の如きネットワーク4を介して相互に通信可能に接続されている。
【0032】
本実施形態では、上述の特許文献1又は特許文献2に全部又は一部が開示された「患者状態適応型パスシステム(PCAPS:Patient Condition Adaptive Path System)」を利用する。この患者状態適応型パスシステムは、患者の初期状態から最終目標状態に至る臨床経路を示す俯瞰的なモデルであり、この臨床経路を、「患者状態」を基軸とする複数の「目標状態」を相互にリンクして視覚化したものであって、具体的には「プロセスチャート(臨床プロセスチャート)」と「ユニットシート」の2つのツールを用いて構成される。
【0033】
図2には、これらプロセスチャート及びユニットシートの基本構成モデルを示す。プロセスチャートとは、患者の目標状態毎に形成された医療行為単位(医療の質を管理するために適切な大きさに設定された単位)である「ユニット(プロセス)」を連結することで構成される臨床経路の俯瞰図であり、疾患毎に構成され、当該疾患を有する患者の初期状態から最終目標状態に至る間に想定されるすべての臨床状態を包含する。各ユニットは「実行エレメント」と「判断エレメント」とから構成されている。実行エレメントは、患者状態を当該ユニットの目標状態に達するように組み込まれた医療業務を実行していく行為を示し、判断エレメントは、患者状態が当該ユニットの目標状態に達したか否かを判断する行為を示す。そして、各実行エレメントと、当該各実行エレメントの直後の判断エレメントとを、視覚的に表示する手段として「ユニットシート」が構成される。
【0034】
このユニットシートの表示画面例を図3に示す。具体的にはユニットシートは、「患者ID」、「ユニットID」、「医療行為」、「患者状態」、「目標状態」、「ユニット移行ロジック」、「条件付き指示」、「離脱条件」を含む。患者IDは、当該ユニットシートが適用されている患者を一意に特定するための識別情報である。ユニットIDは、当該ユニットシートに対応するユニットを一意に特定するための識別情報である。医療行為は、当該ユニットシートに対応する実行エレメントにおいて実行すべき医療行為の項目や内容を記述した情報であり、例えば、医行為、ケア行為、及び調整行為を含む。患者状態は、当該ユニットシートに対応するユニットにおいて注目すべき患者状態の内容を記述した情報である。ユニット移行ロジックは、当該ユニットシートに対応するユニットから次順のユニットに移行するときの条件及び移行先のユニットシートに対応するユニットIDを記述した情報である。条件付き指示は、当該ユニットにおける医療行為中に発生した患者状態に早急に対応するための指示内容を含んで構成されている。離脱条件は、目標状態からの危険な乖離の判断基準を示す遷移状態になった場合には、当該ユニットシートを離脱すべき場合があるため、この離脱を行うための条件を含んで構成されている。
【0035】
このように構成される「プロセスチャート」及び「ユニットシート」は、作成サーバ10によるASP(Application Service Provider)サービスを用いて、各病院2の医師等が作成することができる。すなわち、作成サーバ10には、このように構成される「プロセスチャート」及び「ユニットシート」を特定するための情報と、これら「プロセスチャート」及び「ユニットシート」の作成を支援するための機能とが設けられており、各病院2の医師等は、これら情報及び機能に対して支援端末40を介してネットワーク3、4を通じてアクセスし、プロセスチャート及びユニットシートの作成を行うことができる。
【0036】
このように作成された「プロセスチャート」及び「ユニットシート」の実施は、管理サーバ20によって制御される。すなわち、作成された「プロセスチャート」及び「ユニットシート」に関する情報は、管理サーバ20に格納される。この管理サーバ20は、プロセスチャートにおける最初のユニットに対応するユニットシートの内容を支援端末40を介して医師に対して表示出力等にて提示する。そして、医師が、当該提示されたユニットシートに含まれる医療行為を行い、その後の患者状態を支援端末40に入力すると、この患者状態が支援端末40を介して管理サーバ20にて受け付けられる。次いで、管理サーバ20は、患者状態が当該ユニットの目標状態に達したか否かを判断する。目標状態に達したと判断した場合には、当該最初のユニットの次順のユニットをプロセスチャートに基づいて特定し、当該次順のユニットに対応するユニットシートの内容を支援端末40を介して医師に対して提示する。以降同様に、プロセスチャートにて定義された順序に従ったユニットに対応するユニットシートの内容の提示処理と、医師による患者状態の入力を受け付ける処理と、目標状態に達したか否かを判断する判断処理とが繰り返し行われ、プロセスチャートにおける最後のユニットの医療行為が終了することで、一連の処理が終了する。
【0037】
図4は、プロセスチャートの具体例である。このプロセスチャートは、前立腺全摘除を行う場合の例である。このプロセスチャートは、複数のユニットの各々を構成する実行エレメント及び判断エレメントと、これら各エレメントを相互に接続する線分とを含んでおり、当該線分によって各エレメントの相互間の実施順序が視覚的に示されている。例えば、実行エレメント「A−1 前立腺全摘除術」の医療行為を実行した後、判断エレメント「SA−1」において患者状態と目標状態とに基づく判断を行い、この判断結果に応じて、実行エレメント「A−2 術後急性期」又は実行エレメント「B−2 術後急性期」」のいずれかに移行する。図4における各実行エレメントの枠内には、各実行エレメントに対応するユニットの名称及びユニットIDを示す。例えば、最初の実行エレメントに対応するユニットの名称は「入院 術前」であり、ユニットIDは「A−0」である。
【0038】
この実施の形態の特徴の一つは、作成サーバ10を用いたプロセスチャートの作成時に、当該プロセスチャートに含まれる複数のユニットの相互の関連性に関する関連性情報を、プロセスチャートに付加する点にある。例えば、関連性情報としては、複数の移行経路の各々の実施頻度を示す情報が該当する。このような関連性情報をプロセスチャートに付加することで、管理サーバ20においてプロセスチャート及びユニットシートの実施制御を行う際に、この関連性情報を看護士等に提示することで、看護士等は将来実施される医療行為を予測でき、リソースを事前に予約する等の準備を行うことができる。
【0039】
〔II〕本実施の形態の具体的内容
次に、本実施の形態の具体的内容について説明する。以下では、図1に示した実施計画作成支援システムの各部の構成について説明し、次いで、実施計画作成支援システムを用いて実行される実施計画作成支援プログラムの処理内容について説明する。
【0040】
(構成−作成サーバ)
最初に、図1の作成サーバ10の構成を説明する。この作成サーバ10は、患者に対して実施され得る医療行為の内容及び実施順序を含んだ医療計画を作成するもので、特許請求の範囲における実施計画作成支援装置に対応する。機能概念的には、作成サーバ10は、記憶部11、制御部12、及びネットワークインターフェース(以下「ネットワークIF」)13を、バスにて相互に通信可能に接続して構成されている。
【0041】
記憶部11は、各種処理に必要な情報やパラメータを不揮発的に格納する格納手段であり、例えば、HD(Hard Disk)にて構成される(後述する記憶部21において同じ)。具体的には、この記憶部11は、機能概念的に、標準実施行為情報DB11a、病院情報DB11b、医師情報DB11c、疾患情報DB11d、実施履歴情報DB11e、及び出現頻度情報DB11fを備える。これら各DBに格納される情報の具体的内容については後述する。
【0042】
制御部12は、作成サーバ10の各部を制御する制御手段であり、機能概念的に、実施計画情報生成部12a、関係性情報生成部12b、及び実施履歴管理部12cを備える。実施計画情報生成部12aは、プロセスチャート及びユニットシートを特定する実施計画情報を生成するもので、特許請求の範囲における実施計画情報生成手段に対応する。関係性情報生成部12bは、複数の実施行為の相互間の関連性に関する関連性情報を生成するもので、特許請求の範囲における関連性情報生成手段に対応する。実施履歴管理部12cは、管理サーバ20で実行された実施計画の実行履歴を作成サーバ10において管理する実施履歴管理手段である。この制御部12は、具体的には、CPU(Central Processing Unit)や、このCPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの制御プログラムや、各種の処理手順などを規定したプログラム)、及び、所要プログラムや所要データを格納するためのキャッシュメモリを備えて構成される(後述する制御部22において同じ)。このCPU上で解釈実行される各種のプログラムには本プログラムが含まれ、本プログラムは、例えば、CD−ROMやDVDを含む任意の記憶媒体に記憶された後、インストールされて記憶部11に不揮発的に記憶され、CPUにて解釈実行されることで制御部12の実質的機能を構成する。
【0043】
ネットワークIF13は、ネットワーク3を介した通信を行うための通信手段であり、例えばネットワークボードとして構成される(後述するネットワークIF23において同じ)。このネットワークIF13を介して支援端末40からの情報入力の受け付けが行われることから、当該ネットワークIF13は特許請求の範囲における実施計画入力手段に対応する。また、このネットワークIF13を介して各種の情報の出力が行われることから、当該ネットワークIF13は特許請求の範囲における出力手段を構成する。
【0044】
(構成−管理サーバ)
次に、管理サーバ20の構成を説明する。この管理サーバ20は、作成サーバ10にて作成された医療計画の実施を管理するもので、特許請求の範囲における実施計画制御装置に対応する。機能概念的には、管理サーバ20は、記憶部21、制御部22、及びネットワークIF23を、バスにて相互に通信可能に接続して構成されている。
【0045】
記憶部21には、具体的には、機能概念的に、患者情報DB21a、実施計画情報DB21b、及び実施履歴情報DB21cを備える。これら各DBに格納される情報の具体的内容については後述する。
【0046】
制御部22は、管理サーバ20の各部を制御する制御手段であり、機能概念的に、実施計画管理部22a及び実施履歴管理部22bを備える。実施計画管理部22aは、作成サーバ10にて作成された標準的な医療計画の実行を管理する実施計画管理手段である。実施履歴管理部22bは、実施計画の実行履歴を管理する実施履歴管理手段である。
【0047】
(構成−オーダサーバ)
オーダサーバ30は、各種のリソースの発注、在庫管理、あるいは予約管理を行う資源管理装置である。このオーダサーバ30の具体的構成は任意であり、管理サーバ20との通信機能を有する限りにおいて、公知のサーバ装置と同様に構成できるために、その詳細な説明は省略する。なお、病院2に配置されるサーバとしては、このオーダサーバ30以外にも、医事会計サーバの如き任意のサーバを含めることができる。
【0048】
(構成−支援端末)
各支援端末40は、医師を含む医療従事者が管理サーバ20に対して入出力を行うための端末装置であり、特に、患者状態の入力を受け付ける入力機能と、プロセスチャート及びユニットシートの出力を行う出力機能を有する。この支援端末40は、管理サーバ20との通信機能や各種情報の入出力機能を有する限りにおいて、公知のパーソナルコンピュータと同様に構成できるために、その詳細な説明は省略する。
【0049】
(構成−データベースの具体的内容−作成サーバ)
次に、作成サーバ10及び管理サーバ20の各DBの具体的内容について説明する。ただし、以下の構成例では本実施の形態に係る情報のみを格納する例を示し、実際には以下に説明する情報以外の任意の情報を各DBに格納することができ、あるいは一部の情報については適宜省略することもある。また、各DBに格納される情報のうち、同一名称の情報については、特記する場合を除いて相互に同一の内容であるものとし、重複説明は行わないものとする。
【0050】
まず、作成サーバ10の各DBの具体的内容について説明する。図1の標準実施行為情報DB11aは、患者に対して実施すべき標準化された医療行為の内容を医療行為単位で特定するためのユニットシートの内容を特定する情報(標準実施行為情報であり、特許請求の範囲における実施行為情報)を格納する手段であり、特許請求の範囲における実施行為情報格納手段に対応する。この標準実施行為情報は、図5に例示するように、項目「ユニットID」、項目「医療行為」、項目「患者状態」、項目「目標状態」、項目「ユニット移行ロジック」、項目「条件付き指示」、項目「離脱条件」、及び項目「標準滞在日数」に対応する情報を相互に関連付けて構成されている。項目「標準滞在日数」に対応する情報は、各ユニットの標準的な滞在日数(当該ユニットに移行してから次順のユニットへ移行するまでの日数)である。その他の各項目に対応する情報は、図3の表示画面の説明において述べた通りである。
【0051】
この標準実施行為情報を格納する方法及びタイミングは任意であるが、例えば、当該標準実施行為情報を、医師のヒアリング等に基づいて標準化することで決定し、作成サーバ10に接続した図示しない管理用端末を介して標準実施行為情報DB11aに予め格納しておくことができる。この標準実施行為情報の標準化は、必ずしも硬直的なものではなく、各医療機関や各患者の実情に合致するように、各医療機関や各医師が支援端末40を用いて任意の内容にカスタマイズできるようにしてもよい。なお、これら各情報の具体的な記述構造としては、図5に示した構成例以外の任意の構造を採用することができ、例えばXML(Extensible Markup Language)形式により、タグを用いて各情報の意味を構造化することができる。
【0052】
図1の病院情報DB11bは、各病院2に関する情報(病院情報)を格納する病院情報格納手段である。この病院情報は、図6に例示するように、項目「病院ID」、項目「住所」、項目「分類」、及び項目「ベッド数」を相互に関連付けて構成されている。項目「病院ID」に対応する情報は、各病院2を一意に識別するための識別情報である。項目「住所」に対応する情報は、各病院2の住所である。項目「分類」に対応する情報は、各病院2の分類(ここでは急性期と慢性期のいずれか)を示す情報である。項目「ベッド数」に対応する情報は、各病院2のベッドの総数である。
【0053】
図1の医師情報DB11cは、各医師に関する情報(医師情報)を格納する医師情報格納手段である。この医師情報は、図7に例示するように、項目「医師ID」、項目「病院ID」、項目「専門」、及び項目「経験年数」を相互に関連付けて構成されている。項目「医師ID」に対応する情報は、各医師を一意に識別するための識別情報である。項目「病院ID」に対応する情報は、各医師が所属する病院2の病院IDであり、その内容は図6の項目「病院ID」に対応する情報と共通である。項目「専門」に対応する情報は、各医師の専門分野である。項目「経験年数」に対応する情報は、各医師の医師としての経験年数である。
【0054】
図1の疾患情報DB11dは、各医療計画による治療の対象になる疾患に関する情報(疾患情報)を格納する疾患情報格納手段である。この疾患情報は、図8に例示するように、項目「疾患ID」、及び項目「疾患名」を相互に関連付けて構成されている。項目「疾患ID」に対応する情報は、各疾患を一意に識別するための識別情報である。項目「疾患名」に対応する情報は、各疾患の名称(病名)である。
【0055】
図1の実施履歴情報DB11eは、各管理サーバ20における医療計画の実施履歴に関する情報(実施履歴情報)を格納する実施履歴情報格納手段である。この実施履歴情報は、図9に例示するように、項目「病院ID」、項目「医師ID」、項目「疾患ID」、及び項目「移行経路及び滞在日数」に対応する情報を相互に関連付けて構成されている。項目「病院ID」に対応する情報は、各医療計画が実施された各病院2を一意に識別するための識別情報であり、その内容は図6の項目「病院ID」に対応する情報と共通である。項目「医師ID」に対応する情報は、各医療計画を実施した各医師を一意に識別するための識別情報であり、その内容は図7の項目「医師ID」に対応する情報と共通である。項目「疾患ID」に対応する情報は、各医療計画における治療の対象となった各疾患を一意に識別するための識別情報であり、その内容は図8の項目「疾患ID」に対応する情報と共通である。項目「移行経路及び滞在日数」に対応する情報は、各医療計画が各病院2において実際に実施された場合における、プロセスチャート内での各ユニットの移行経路を特定するための情報及び各ユニットの実際の滞在日数を特定するための情報である。
【0056】
図9の例では、実施された各ユニットのユニットIDが実施順に記載されることで移行経路が特定されており、例えば「A−0(1),A−1(1),A−2(2)」との情報によって、最初に実施されたユニットは「ユニットID=A−0のユニット」、次に実施されたユニットは「ユニットID=A−1のユニット」、3番目に実施されたユニットは「ユニットID=A−2のユニット」であることが判る。また図9の例では、各ユニットIDの直後に付された括弧内の数値が、当該ユニットの滞在日数となっており、例えば「A−0(1)」との情報によって、「ユニットID=A−0のユニット」の滞在日数は1日であったことが判る。ただし、これら移行経路や滞在日数を特定するための情報の具体的な構成は任意に変更することができる。
【0057】
図1の出現頻度情報DB11fは、移行経路の出現頻度を特定するための情報(出現頻度情報)を格納するもので、特許請求の範囲における出現頻度情報格納手段に対応する。この出現頻度情は、図10に例示するように、項目「病院ID」、項目「医師ID」、項目「疾患ID」、項目「最頻出移行経路」、及び項目「準頻出移行経路」に対応する情報を相互に関連付けて構成されている。項目「病院ID」、項目「医師ID」、及び項目「疾患ID」に対応する情報は、図9の同一項目に対応する情報と共通である。項目「最頻出移行経路」に対応する情報は、複数の移行経路の中で最も頻出する移行経路(以下「最頻出移行経路」)を特定するための情報、項目「準頻出移行経路」に対応する情報は、複数の移行経路の中で最頻出移行経路の次に頻出する移行経路(以下「準頻出移行経路」)を特定するための情報である。これら情報の具体的形式は任意であるが、ここでは、各ユニットのユニットIDが実施順に記載されることで最頻出移行経路又は準頻出移行経路が特定されており、図10の例では、「A−0,A−1,A−2,A−3&4,・・・」との情報によって、「ユニットID=A−0のユニット」→「ユニットID=A−1のユニット」→「ユニットID=A−2のユニット」→「ユニットID=A−3&4のユニット」、・・・となる移行経路が、最頻出移行経路であることが判る。
【0058】
(構成−データベースの具体的内容−管理サーバ)
次に、図1の管理サーバ20の各DBの具体的内容について説明する。患者情報DB21aは、医療行為の対象である患者に関する情報(患者情報)を格納する手段である。この患者情報は、図11に例示するように、項目「患者ID」、項目「年齢」、項目「性別」、項目「住所」、及び項目「疾患ID」に対応する情報を相互に関連付けて構成されている。項目「患者ID」に対応する情報は、各医療計画の対象となる患者を一意に識別するための識別情報である。項目「年齢」、項目「性別」、項目「住所」に対応する情報は、それぞれ、各患者の年齢、性別、住所である。項目「疾患ID」に対応する情報は、各患者の各疾患を一意に識別するための情報であり、その内容は図8の項目「疾患ID」に対応する情報と共通である。
【0059】
図1の実施計画情報DB21bは、患者に対して実施すべき医療行為及び実施順序を特定するための情報(実施計画情報)を格納する実施計画情報格納手段である。この実施計画情報は、図12に例示するように、項目「患者ID」、項目「医師ID」、項目「疾患ID」、項目「ユニットID」、項目「医療行為」、項目「患者状態」、項目「目標状態」、項目「ユニット移行ロジック」、項目「条件付き指示」、項目「離脱条件」、及び項目「標準滞在日数」に対応する情報を相互に関連付けて構成されている。これら各項目に対応する情報は、図5から図11の同一項目に対応する情報と共通である。ここでは、一つの患者ID及び疾患IDに対して複数のユニットIDを関連付けることで、当該患者IDにて特定される患者に対して、当該疾患IDにて特定される疾患を治療するための複数の医療行為が特定される。この医療行為の実施順序は図示しない任意の情報にて特定される。例えば、後述する実施計画作成処理においてフローチャートにて指定された各ユニットの配置をXML形式のデータとして構造化することで特定され、あるいはフローチャートにおける描画データとして特定されて、当該実施計画情報DB21bに格納される。
【0060】
図1の実施履歴情報DB21cは、管理サーバ20における実施履歴に関する情報(実施履歴情報)を格納する実施履歴情報格納手段である。この実施履歴情報は、図13に例示するように、項目「患者ID」、項目「医師ID」、項目「疾患ID」、及び項目「移行経路及び滞在日数」に対応する情報を相互に関連付けて構成されている。項目「患者ID」に対応する情報は、各医療計画が実施された患者を一意に識別するための識別情報であり、その内容は図11の項目「患者ID」に対応する情報と共通である。その他の各項目に対応する情報は、図9の同一項目に対応する情報と共通である。
【0061】
(処理)
次に、本装置において本プログラムを実行すること等によって行われる実施計画作成支援処理(以下、本処理)について説明する。なお、以下の本処理の説明において、制御主体を特記しない処理については、作成サーバ10の制御部12又は管理サーバ20の制御部22にて実行されるものとし、情報の取得元や取得経路を特記しない場合については、公知のタイミング及び公知の方法にて、作成サーバ10の記憶部11又は管理サーバ20の記憶部21に予め格納されており、あるいは、支援端末40を介して医師等の医療従事者によって手入力されたものとする。
【0062】
(処理−全体)
まず、本処理の全体について説明する。図14は、本処理全体のフローチャートである。最初に、作成サーバ10が、「実施計画情報生成処理(ステップSA−1)」を行うことで、医療の実施計画を特定する実施計画情報を生成し、「関係性情報生成処理(ステップSA−2)」を行うことで、各ユニットの相互間の関係性を特定する関係性情報を生成し、これら実施計画情報及び関係性情報を管理サーバ20に送信する。次いで、管理サーバ20が、「実施計画管理処理(ステップSA−3)」を行うことで実施計画を実行する。その後、管理サーバ20が「実施履歴管理処理(ステップSA−4)」を行うと共に、作成サーバ10が「実施履歴管理処理(ステップSA−5)」を行うことで、実施履歴が作成サーバ10に蓄積される。このように蓄積された実施履歴は、次回以降の関係性情報生成処理(ステップSA−2)において利用される。以降同様に、これら各処理が繰り返して実行される。
【0063】
(処理−実施計画情報生成処理)
まず実施計画情報生成処理について説明する。図15は、実施計画情報生成処理のフローチャートである。最初に、各病院2の医師は、支援端末40を介して所定方法にて作成サーバ10にアクセスして医療計画の作成要求を送信する。この際、医師は、自己が属する病院2に予め割り当てられた病院ID、自己に予め割り当てられた医師ID、及び医療計画の対象になる患者の疾患に予め割り当てられた疾患ID、及び当該患者に割り当てられた患者IDを支援端末40に入力する。このうち、患者IDを当該病院2の外部に提示することには患者の個人情報保護の観点から問題が生じる可能性があるので、病院ID、医師ID、及び疾患IDのみが作成要求と共に作成サーバ10に送信される。
【0064】
一方、作成サーバ10の実施計画情報生成部12aは、作成要求の受信の有無を監視しており(ステップSB−1)、作成要求を受信すると共に(ステップSB−1,Yes)、病院ID、医師ID、及び疾患IDを受信した場合には、(ステップSB−2)、所定の初期画面の画面データを支援端末40に送信する。
【0065】
この初期画面の画面データは、支援端末40に予めインストールされた汎用又は専用のブラウザソフトウェアによって解釈され、初期画面が支援端末40のモニタに表示される。この初期画面の表示例を図16に示す。この初期画面は、例えば、接続ボタンB1、ユニットボタンB2、及びモード選択ボタンB3〜B6と、計画描画領域A1とを備えている。接続ボタンB1は、プロセスチャートに含まれる各ユニットや「スタート(プロセスチャートの始点)」又は「エンド(プロセスチャートの終点)」の相互の接続を指示するための指示ボタンである。ユニットボタンB2は、ユニットの追加を指示するための指示ボタンである。モード選択ボタンB3〜B6は、図14の関連性情報生成処理(ステップSA−2)における生成モードを指定するための指示ボタンである。ここでは、生成モードとして、「総合モード」、「病院優先モード」、「医師優先モード」、及び「疾患優先モード」の4つのモードがあり、これら4つのモードのいずれか一つのみを選択することができる。これら各モードの内容については関連性情報生成処理の説明において述べる。計画描画領域は、プロセスチャートを描画する領域である。初期画面の計画描画領域には、「スタート」及び「エンド」がそれぞれ一つずつデフォルトで描画されている。
【0066】
その後、医師は、支援端末40のマウス等の入力装置を介してモード選択ボタンB3〜B6のいずれかを選択することで、一つのモードを選択する。また医師は、支援端末40の入力装置を介してユニットボタンB2を選択することで、図17の表示例に示すように、計画描画領域に一つの「ユニット」を追加することができる。医師は、同様にユニットボタンB2を繰り返し選択することで、必要に応じた任意の数の「ユニット」を計画描画領域に追加することができる。さらに医師は、入力装置を介して接続ボタンB1を選択した後、相互に接続したい「スタート」、「ユニット」あるいは「エンド」を入力装置を介して一組以上指定することで、当該指定された「スタート」、「ユニット」あるいは「エンド」を相互に接続する矢印が描画される。図18の表示例では、「スタート」と「ユニット」を相互に接続する矢印AR1を示す。このような接続指定を行うことで、プロセスチャートにおける移行経路(実施行為の実施順序)が特定される。
【0067】
医師が、任意の「ユニット」を支援端末40の入力装置を介して指定した後、当該「ユニット」に設定する詳細情報(ここでは、標準実施行為情報)の提示を支援端末40の入力装置を介して要求すると、作成サーバ10の実施計画情報生成部12aは、標準実施行為情報DB11aから標準実施行為情報を取得し、この標準実施行為情報を提示するための提示画面の画面データを生成して支援端末40に送信する(ステップSB−3,Yes、SB−4)。
【0068】
この提示画面の画面データは、支援端末40に予めインストールされた汎用又は専用のブラウザソフトウェアによって解釈され、提示画面が支援端末40のモニタに表示される。この提示画面の表示例を図19に示す。この提示画面では、例えば、予め構造化されて標準実施行為情報DB11aに格納された標準実施行為情報が、その構造に応じたツリー構造にて階層化して表示される。そして、医師は、この内容を確認し、必要に応じて支援端末40の入力装置を介して編集を行った後、所定方法にて標準実施行為情報の適用を指示すると、当該標準実施行為情報が当該指定されている「ユニット」の詳細(当該ユニットにおける実施行為の内容)として設定される。この提示画面には、当該ユニットの標準滞在日数を入力するための入力欄IN1が設けられており、この入力欄IN1に入力した日数が標準滞在日数として設定される。この入力欄IN1に表示されるデフォルト値としては、標準実施行為情報DB11aの項目「標準滞在日数」に対応する情報が表示される。さらに、提示画面には、医療行為に含まれる複数の業務を包括的な実施管理単位に関連付けるための設定欄IN2が設けられている。すなわち、医療行為に含まれる複数の業務は、業務単独での実施管理ではなく、包括的な単位で実施管理したい場合がある。例えば、「生化学検査」には、ALB(アルブミン検査)やALP(血清アルカリフォスファターゼ検査)の如き業務が含まれるが、通常の医療現場においてはこれらを包括して「生化学検査」として管理しているため、当該運用上の管理単位に合致させた医療計画を作成することが好ましい。従って、設定欄IN2にチェックマークを入力した場合には、これらALBやALPが「生化学検査」として相互に関連付けられた包括的な業務として登録され、包括的な業務としてユニットシートに表示される。
【0069】
以降、プロセスチャートに配置した各「ユニット」について同様の手順を繰り返すことで、全ての「ユニット」の内容が特定され、これまでに特定されたプロセスチャートにおける移行経路及び各「ユニット」の内容を含んだ所定形式の実施計画情報が生成されることになり、実施計画情報生成処理が終了する(ステップSB−5,Yes)。この実施計画情報生成処理は、特許請求の範囲における受け付けステップ及び実施計画情報生成ステップに対応する。
【0070】
(処理−関係性情報生成処理)
次に、図14の関係性情報生成処理(ステップSA−2)について説明する。図20は、関係性情報生成処理のフローチャートである。作成サーバ10の関係性情報生成部12bは、関係性分析に使用する母集団を抽出し(ステップSC−1)、この母集団を用いて各ユニットの相互間の関係性を分析し(ステップSC−2)、この分析結果を示す関係性情報を実施計画情報に付加して管理サーバ20に出力する(ステップSC−3)。
【0071】
(処理−関係性情報生成処理−母集団の抽出処理)
この分析母集団抽出処理(ステップSC−1)のフローチャートを図21に示す。作成サーバ10の関係性情報生成部12bは、実施履歴情報DB11eから実施履歴情報を取得する(ステップSD−1)。そして、先の実施計画情報生成処理において医師に選択された生成モードに応じて、以下のステップSD−2〜SD−11を行う。
【0072】
生成モードとして「総合モード」が選択されている場合について説明する。「総合モード」とは、病院2、医師、及び疾患の全ての要素の共通性を反映した関係性情報を生成するモードである。この「総合モード」が選択されている場合(ステップSD−2、Yes)、関係性情報生成部12bは、実施履歴情報DB11eから取得した実施履歴情報のうち、先の実施計画情報生成処理において支援端末40から送信された病院ID、医師ID、及び疾患IDと同一の病院ID、医師ID、及び疾患IDを含む全ての実施履歴情報を、母集団として抽出する(ステップSD−6)。
【0073】
次に、生成モードとして「病院優先モード」が選択されている場合について説明する。「病院優先モード」とは、病院2の特徴の共通性のみを反映した関係性情報を生成するモードである。この「病院優先モード」が選択されている場合(ステップSD−3、Yes)、関係性情報生成部12bは、先の実施計画情報生成処理において支援端末40から送信された病院IDに基づいて病院情報DB11bを参照することで、当該送信された病院IDに対応する分類及びベッド数を特定し、当該特定した分類及びベッド数と同一の分類及びベッド数に関連付けられている全ての病院IDを取得する(ステップSD−7)。そして、関係性情報生成部12bは、当該取得した病院IDのいずれかと同一の病院IDを含む全ての実施履歴情報を、母集団として抽出する(ステップSD−8)。
【0074】
次に、生成モードとして「医師優先モード」が選択されている場合について説明する。「医師優先モード」とは、医師の特徴の共通性のみを反映した関係性情報を生成するモードである。この「医師優先モード」が選択されている場合(ステップSD−4、Yes)、関係性情報生成部12bは、先の実施計画情報生成処理において支援端末40から送信された医師IDに基づいて医師情報DB11cを参照することで、当該送信された医師IDに対応する専門及び経験年数を特定し、当該特定した専門及び経験年数と同一の専門及び経験年数に関連付けられている全ての医師IDを取得する(ステップSD−9)。そして、関係性情報生成部12bは、当該取得した医師IDのいずれかと同一の医師IDを含む全ての実施履歴情報を、母集団として抽出する(ステップSD−10)。
【0075】
次に、生成モードとして「疾患優先モード」が選択されている場合について説明する。「疾患優先モード」とは、疾患の共通性のみを反映した関係性情報を生成するモードである。この「疾患優先モード」が選択されている場合(ステップSD−5、Yes)、関係性情報生成部12bは、実施履歴情報DB11eから取得した実施履歴情報のうち、先の実施計画情報生成処理において支援端末40から送信された疾患IDと同一の疾患IDを含む全ての実施履歴情報を、母集団として抽出する(ステップSD−11)。これにて母集団の抽出処理を終了する。
【0076】
(処理−関係性情報生成処理−関係性の分析処理)
次に、図20の関係性分析処理(ステップSC−2)について説明する。図22は、関係性分析処理のフローチャートである。作成サーバ10の関係性情報生成部12bは、先の母集団の抽出処理において抽出された母集団である実施履歴情報の移行経路に含まれる各ユニットについて、当該各ユニット(当該移行経路の始端のユニット)から次の移行先の各ユニット(当該移行経路の終端のユニット)への移行経路の出現頻度を算定する(ステップSE−1)。この出現頻度は、当該ユニットの出現総数に対する移行先の各ユニットの出現総数の百分率として算定する。例えば、母集団に含まれる一つ目の実施履歴情報の移行経路が「A−0,A−1,A−2」であり、母集団に含まれる二つ目の実施履歴情報の移行経路が「A−0,A−1,A−3」である場合、ユニット「A−0」について、移行先のユニットは「A−1」であり、当該ユニット「A−0」から当該ユニット「A−1」への移行経路の出現頻度は100%となる。また、ユニット「A−1」について、移行先のユニットはユニット「A−2」とユニット「A−3」があり、当該ユニット「A−1」から当該ユニット「A−2」への移行経路の出現頻度は50%、当該ユニット「A−1」から当該ユニット「A−3」への移行経路の出現頻度は50%となる。このように、母集団である実施履歴情報の移行経路に含まれるユニットの全てについて、移行先のユニットへの移行経路の出現頻度を算定する。
【0077】
次いで、関係性情報生成部12bは、算定した出現頻度を所定の第1閾値と比較し、第1閾値以上の出現頻度の移行経路を「最頻出移行経路」として特定する(ステップSE−2)。この第1閾値は、最も頻出する移行経路を判別するために予め記憶部11に設定される値であり、具体的な数値は任意であるが、例えば「80%」と設定される。
【0078】
次いで、関係性情報生成部12bは、算定した出現頻度を所定の第1閾値及び第2閾値と比較し、第2閾値以上かつ第1閾値未満の出現頻度の移行経路を「準頻出移行経路」として特定する(ステップSE−3)。この第1閾値はステップSE−2の第1閾値と同じであり、第2閾値は、最頻出移行経路に次いで頻出する移行経路を判別するために予め記憶部11に設定される値であり、第1閾値より小さい値であって、具体的な数値は任意であるが、例えば「60%」と設定される。
【0079】
その後、関係性情報生成部12bは、ステップSE−2において特定した最頻出移行経路において移行先のユニットとなっているユニット(ただしプロセスチャートのエンドは除く)であって、複数の移行経路への分岐点となっているユニットを、「クリティカル分岐ユニット」として特定する(ステップSE−4)。「クリティカル分岐ユニット」とは、最頻出移行経路が準頻出移行経路やその他の移行経路に分岐する際の分岐点となるユニットであり、当該ユニットにおける患者状態が当該最頻出移行経路に続く移行経路の決定に大きな影響を与えるため、当該ユニットにおける患者状態に特に注意を要すると考えられるユニットである。ただし、この他にも、最頻出移行経路及び準頻出移行経路がその他の移行経路に分岐する際の分岐点となるユニットを「クリティカル分岐ユニット」としてもよく、あるいは、頻出経路に基づいた他の基準によって「クリティカル分岐ユニット」を特定してもよい。関係性情報生成部12bは、このように特定した最頻出移行経路、準頻出移行経路、及びクリティカル分岐ユニットを特定するための情報を生成し、関係性の分析を終了する。これらの各処理は、特許請求の範囲における関連性情報生成ステップに対応する。
【0080】
次に、図20の関係性情報生成処理に戻り、関係性情報生成部12bは、先に生成された実施計画情報に対して先に生成した関係性情報を付加し、これら情報を管理サーバ20に送信する(ステップSC−3)。これらの各処理は、特許請求の範囲における出力ステップに対応する。なお、関係性情報の付加の具体的な方法は任意であるが、例えば、最頻出移行経路、準頻出移行経路、及びクリティカル分岐ユニットを示す識別子や描画情報を実施計画情報に付加することができる。このように送信された情報は、先の実施計画情報生成処理の最初の段階で医師によって入力された患者ID、医師ID、及び疾患IDと共に、管理サーバ20の実施計画情報DB21bに格納される。
【0081】
ここで、関係性情報生成処理においては、上述のように各移行経路の出現頻度を実施履歴情報に基づいて自動的に算定することに代えて、医師が登録した任意の出現頻度を用いることもできる。例えば、図16の初期画面に、出現頻度の手動登録を指示するための指示ボタンを設けておき、医師は、支援端末40のマウス等の入力装置を介して当該指示ボタンを選択すると、作成サーバ10の実施計画情報生成部12aは、出現頻度登録画面の画面データを支援端末40に送信する。この出現頻度登録画面の表示例を図23に示す。この出現頻度登録画面は、最頻出移行経路を入力するための入力欄IN3と、準頻出移行経路を入力するための入力欄IN4を含んで構成されている。そして、これら入力欄IN3、IN4に医師がユニットIDを入力し、図示しない登録ボタンを選択すると、入力されたユニットIDによって、最頻出移行経路や準頻出移行経路が特定される。その後、図22のステップSE−4以降と同様の処理が行われる。
【0082】
また、このように医師によって登録された最頻出移行経路及び準頻出移行経路は、先の実施計画情報生成処理の最初の段階で医師によって入力された病院ID、医師ID、及び疾患IDに関連付けて作成サーバ10の出現頻度情報DB11fに格納される。このように登録された最頻出移行経路及び準頻出移行経路は、図23の出現頻度登録画面において、医師が病院ID、医師ID、又は疾患IDの少なくとも一つを指定することで呼び出し、当該呼び出した最頻出移行経路又は準頻出移行経路を再利用することができるので、出現頻度について、複数の医師の相互間での共有化や標準化を図ることができる。
【0083】
なお、図23の出現頻度登録画面の入力方法は一例に過ぎない。この他、最頻出移行経路や準頻出移行経路のみならず、3番目以降の出現頻度の移行経路を入力可能としてもよい。あるいは、移行経路と当該移行経路の出現率を入力可能とし、図22のステップSE−2やSE−3において最頻出移行経路や準頻出移行経路を自動判定するようにしてもよい。
【0084】
(処理−実施計画管理処理)
次に、図14の実施計画管理処理(ステップSA−3)について説明する。図24は、実施計画管理処理のフローチャートである。先の関係性情報生成処理の終了後、任意のタイミングで、医師が支援端末40を介して診療を行いたい患者の患者IDを入力することにより医療プロセスの開始を指示すると(ステップSF−1,Yes)、管理サーバ20の実施計画管理部22aは、当該患者IDに対応する実施計画情報を実施計画情報DB21bから取得し、当該実施計画情報をプロセスチャート又はユニットシートとして当該支援端末40のモニタに出力する(ステップSF−2)。従って、医師は、患者の疾患に対応する医療行為やその実施手順を確認し、標準化された内容及び手順にて医療行為を行うことができる。
【0085】
医師は、各ユニットシートに表示されている医療行為を実施する毎に、当該医療行為が行われた患者の状態を、支援端末40を介して管理サーバ20に入力する(ステップSF−3)。管理サーバ20の実施計画管理部22aは、入力された患者状態と、実施計画情報における当該ユニットシートの目標状態とを比較して、患者状態が目標状態に達したか否かを判定する(ステップSF−4)。そして、患者の状態が目標状態に達したと判定された場合(ステップSF−4,Yes)、実施計画管理部22aは、実施計画情報によって規定される次順のユニットのユニットシートの内容を支援端末40に送信してモニタに表示させる(ステップSF−8)。このユニットシートの内容を支援端末40を介して閲覧することで、医師は、患者状態に合致したユニットシートの内容を閲覧でき、医療行為の実施内容を確認できる。
【0086】
一方、ステップSF−4において患者状態が目標状態に達していないと判定された場合(ステップSF−4,No)、実施計画管理部22aは、次のユニットシートに移行することなく、次の患者状態の入力が受け付けられるまで待機する。ここで、患者状態が目標状態から大きく乖離して離脱条件に合致した場合には、当該ユニットを離脱する(ステップSF−5,Yes)。この離脱後の行為の特定方法としては種々の方法を取り得るが、ここでは、実施計画情報に含まれる各ユニットシートの内容を支援端末40に順次提示し(ステップSF−6)、この中から離脱先として最適だと思われるユニットシートを医師に選択させ、選択があった場合には(ステップSF−7,Yes)、このユニットシートを表示し(ステップSF−8)、それ以降は、当該ユニットシートを開始点として、当該ユニットシートに規定されるユニット移行ロジックに基づいて移行する。
【0087】
このように患者状態の入力が行われた場合や、ユニットの移行や離脱が行われた場合、実施履歴管理部22bは、その都度、実施履歴情報を実施履歴情報DB21cに格納する(ステップSF−9)。例えば、ユニットの移行が行われた場合には、当該移行元のユニットID及び当該移行先のユニットのユニットIDを移行経路として実施履歴情報DB21cに格納すると共に、当該移行元のユニットから当該移行先のユニットに移行するまでの経過日数を滞在日数として実施履歴情報DB21cに格納する。これにて実施計画管理処理が終了する。
【0088】
ここで、ステップSF−2及びSF−8において表示されるプロセスチャートには、図20の関係性情報生成処理のステップSC−3において実施計画情報に付加された関連性情報が反映される。図25には関連性情報が反映されたプロセスチャートの表示例を示す。このプロセスチャートにおいて、最頻出移行経路の近傍には、当該移行経路が最頻出移行経路であることを示す情報として、太字の矢印AR2が示されている。また、準頻出移行経路の近傍には、当該移行経路が準頻出移行経路であることを示す情報として、細字の矢印AR3が示されている。従って、看護士や薬剤師等は、当該プロセスチャートを医師と同様の手順で支援端末40を介して閲覧することで、今後の取り得る移行経路を把握でき、次に準備すべきリソース等を特定できる。特に、最頻出移行経路と準頻出移行経路とを視覚的に区別できるように表示しているので、各移行経路に至る可能性やその程度について認識することができる。なお、最頻出移行経路や準頻出移行経路の具体的な表示方法は任意であり、図25の例以外にも、例えば、最頻出移行経路や準頻出移行経路の各ユニットを接続する矢印を他の矢印から区別可能な特定の色で表示したり、当該矢印を点滅表示したり、あるいは最頻出移行経路や準頻出移行経路の各ユニットを一覧表形式でプロセスチャートの側方に表示してもよい。
【0089】
また図25に示すように、このプロセスチャートにおいて、クリティカル分岐ユニットの近傍には、当該ユニットがクリティカル分岐ユニットであることを示す情報として、星印ST1が示されている。従って、看護士等は、当該プロセスチャートを医師と同様の手順で支援端末40を介して閲覧することで、当該プロセスチャートに含まれる医療行為の中で、最頻出移行経路(最も理想的に患者を治療できていると考えられる移行経路)を維持するために重要なユニットを容易に特定でき、当該ユニットにおける医療行為の実施に特に留意すること等ができる。なお、クリティカル分岐ユニットの具体的な表示方法は任意であり、図25の例以外にも、例えば、クリティカル分岐ユニットを他のユニットから区別可能な特定の色で表示したり、当該クリティカル分岐ユニットを点滅表示したり、あるいはクリティカル分岐ユニットを一覧表形式でプロセスチャートの側方に表示してもよい。
【0090】
(処理−実施履歴管理処理)
次に、図14の実施履歴管理処理(ステップSA−4、SA−5)について説明する。図26は、実施履歴管理処理のフローチャートである。作成サーバ10の実施履歴管理部12cは、実施履歴管理処理の所定の実行タイミングが到来したか否かを監視しており(ステップSG−1)、実行タイミングが到来した場合には(ステップSG−1,Yes)、各病院2の管理サーバ20に対して、実施履歴情報の送信を要求する(ステップSG−2)。この実行タイミングの決定方法は任意であり、実施履歴情報が更新される毎に行ってもよいが、日単位や週単位によるバッチ処理として行ってもよい。
【0091】
各管理サーバ20の実施履歴管理部22bは、実施履歴情報の送信要求を受信すると、自己の実施履歴情報DB21cから実施履歴情報を取得し、当該取得した実施履歴情報を作成サーバ10に送信する(ステップSG−3)。この際、実施履歴管理部22bは、患者の個人情報を保護するために、当該実施履歴情報から患者IDを削除する。また、実施履歴管理部22bは、当該各管理サーバ20に予め割り当てられて記憶部21に記憶されている病院IDを実施履歴情報に付加する。作成サーバ10の実施履歴管理部12cは、各管理サーバ20から送信された実施履歴情報を実施履歴情報DB11eに格納する(ステップSG−4)。これにて実施履歴管理処理が終了する。このように実施履歴情報DB11eに格納された実施履歴情報は、その後に実施される関係性情報生成処理に用いられる。
【0092】
(実施の形態の効果)
このように本実施の形態によれば、最頻出移行経路や準頻出移行経路を識別可能に出力できるので、看護士等は、当該プロセスチャートを医師と同様の手順で支援端末40を介して閲覧することで、今後の取り得る移行経路を把握でき、次に準備すべきリソース等を特定できる。特に、最頻出移行経路と準頻出移行経路とを視覚的に区別できるように表示しているので、各移行経路に至る可能性やその程度について認識することができる。
【0093】
また、ユニットがクリティカル分岐ユニットを識別可能に出力できるので、看護士等は、当該プロセスチャートを医師と同様の手順で支援端末40を介して閲覧することで、当該プロセスチャートに含まれる医療行為の中で、最頻出移行経路を維持するために重要なユニットを容易に特定でき、当該ユニットにおける医療行為の実施に特に留意すること等ができる。
【0094】
さらに、生成モードとして総合モードを選択した場合には、病院2、医師、及び疾患の全ての要素において共通性を有する最頻出移行経路、準頻出移行経路、あるいはクリティカル分岐ユニットが出力できることになり、あらゆる側面から最も共通性が高い最頻出移行経路、準頻出移行経路、あるいはクリティカル分岐ユニットを把握することができる。
【0095】
また、生成モードとして病院優先モードを選択した場合には、病院2の特徴において共通性を有する最頻出移行経路、準頻出移行経路、あるいはクリティカル分岐ユニットが出力できることになり、病院2の特徴に合致した最頻出移行経路、準頻出移行経路、あるいはクリティカル分岐ユニットを把握することができる。
【0096】
また、生成モードとして医師優先モードを選択した場合には、医師の特徴において共通性を有する最頻出移行経路、準頻出移行経路、あるいはクリティカル分岐ユニットが出力できることになり、医師の特徴に合致した最頻出移行経路、準頻出移行経路、あるいはクリティカル分岐ユニットを把握することができる。
【0097】
また、生成モードとして疾患優先モードを選択した場合には、疾患において共通性を有する最頻出移行経路、準頻出移行経路、あるいはクリティカル分岐ユニットが出力できることになり、疾患に合致した最頻出移行経路、準頻出移行経路、あるいはクリティカル分岐ユニットを把握することができる。
【0098】
また、医師が任意に登録した出現頻度に基づいて関係性情報が生成されるので、必要に応じて事前に登録した任意の出現頻度を反映した関連性情報が生成される。特に、登録した移行経路や出現頻度を再利用することができるので、移行経路や出現頻度について、複数の医師の相互間での共有化や標準化を図ることができる。
【0099】
〔III〕各実施の形態に対する変形例
以上、本発明に係る各実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良できる。以下、このような変形例について説明する。
【0100】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0101】
(構成及び制御について)
また、上記実施の形態で自動的に行われるものとして説明した制御の全部または任意の一部を手動で行っても良く、逆に、手動で行われるものとして説明した制御の全部または任意の一部を公知技術または上述した思想に基づいて自動化しても良い。また、上記実施の形態において示した各構成要素の各機能ブロックの一部又は全部を、ハードワイヤードロジックにて構成しても良い。
【0102】
(分散や統合について)
また、上述した各電気的構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各部の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成できる。例えば、作成サーバ10と管理サーバ20とを相互に統合したり、作成サーバ10や管理サーバ20の一部の機能を他のサーバに分散配置してもよい。
【0103】
(関係性情報について)
関係性情報生成部12bが関係性情報生成処理において生成する関係性情報としては、上述した最頻出移行経路、準頻出移行経路、あるいはクリティカル分岐ユニット以外にも、種々の情報を採用することができる。例えば、最頻出移行経路のみで相互に接続されている3つ以上のユニットを「最頻出移行ブロック」としたり、準頻出移行経路のみで相互に接続されている3つ以上のユニットを「準頻出移行ブロック」とし、これら各ブロックを他のユニットから識別可能な形成でプロセスチャートに表示することで、実施される可能性が高いユニット群を容易に把握できる。
【産業上の利用可能性】
【0104】
この発明は、医療分野を含む様々な分野における実施行為の標準化システムに適用できるもので、実施計画に含まれる複数の実施行為の相互の関連性を当該実施計画に付与することによって、利便性の高い実施計画の作成を支援することに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の実施の形態に係る実施計画作成支援システムの全体構成を概念的に示す説明図である。
【図2】プロセスチャート及びユニットシートの基本構成モデルを示す図である。
【図3】ユニットシートの表示画面例を示す図である。
【図4】プロセスチャートの具体例を示す図である。
【図5】標準実施行為情報の構成例を示す図である。
【図6】病院情報の構成例を示す図である。
【図7】医師情報の構成例を示す図である。
【図8】疾患情報の構成例を示す図である。
【図9】実施履歴情報の構成例を示す図である。
【図10】出現頻度情報の構成例を示す図である。
【図11】患者情報の構成例を示す図である。
【図12】実施計画情報の構成例を示す図である。
【図13】実施履歴情報の構成例を示す図である。
【図14】実施計画作成支援処理全体のフローチャートである。
【図15】実施計画情報生成処理のフローチャートである。
【図16】初期画面の表示例を示す図である。
【図17】図16の初期画面にユニットを追加した状態の表示例を示す図である。
【図18】図17の画面に矢印を追加した状態の表示例を示す図である。
【図19】提示画面の表示例を示す図である。
【図20】関係性情報生成処理のフローチャートである。
【図21】分析母集団抽出処理のフローチャートである。
【図22】関係性分析処理のフローチャートである。
【図23】出現頻度登録画面の表示例を示す図である。
【図24】実施計画管理処理のフローチャートである。
【図25】関係性情報が反映されたプロセスチャートの表示例である。
【図26】実施履歴管理処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0106】
1 統合支援センター
2 病院
3、4 ネットワーク
10 作成サーバ
11、21 記憶部
11a 標準実施行為情報DB
11b 病院情報DB
11c 医師情報DB
11d 疾患情報DB
11e、21c 実施履歴情報DB
11f 出現頻度情報DB
12、22 制御部
12a 実施計画情報生成部
12b 関係性情報生成部
12c、22b 実施履歴管理部
13、23 ネットワークIF
20 管理サーバ
21a 患者情報DB
21b 実施計画情報DB
22a 実施計画管理部
30 オーダサーバ
40 支援端末
B1 接続ボタン
B2 ユニットボタン
B3〜B6 モード選択ボタン
A1 計画描画領域
AR1〜AR3 矢印
ST1 星印
IN1〜IN4 入力欄

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実施対象に対して実施され得る複数の実施行為を実施行為単位で特定するための実施行為情報を格納する実施行為情報格納手段と、
前記複数の実施行為の中から前記実施対象に対する実施計画に含めるべき複数の実施行為の入力を受け付けると共に、当該実施計画に含めるべき複数の実施行為の相互間における実施順序の入力を受け付ける実施計画入力手段と、
前記実施計画入力手段にて受け付けられた前記複数の実施行為と前記実施順序とに基づいて、前記実施対象に対する実施計画を特定する実施計画情報を生成する実施計画情報生成手段と、
前記複数の実施行為の相互間の関連性に関する関連性情報を生成する関連性情報生成手段と、
前記実施計画情報生成手段にて生成された前記実施計画情報と、前記関連性情報生成手段にて生成された前記関連性情報とを、前記実施計画情報にて特定される実施計画の実施を管理する実施計画管理装置に出力する出力手段と、
を備えることを特徴とする実施計画作成支援装置。
【請求項2】
前記関連性情報生成手段は、前記実施計画管理装置から取得した過去の前記実施計画の実行の履歴に関する実施計画履歴情報に基づいて、前記関連性情報を生成すること、
を特徴とする請求項1に記載の実施計画作成支援装置。
【請求項3】
前記実施計画入力手段は、前記実施順序を組み合わせて構成される複数の移行経路の入力を受け付け、
前記実施計画履歴情報は、前記複数の移行経路のうち、過去の実施計画における各移行経路の実際の実施履歴に関する情報を含み、
前記関連性情報生成手段は、前記実施計画履歴情報に含まれる前記実施履歴に関する情報に基づいて、前記複数の移行経路の出現頻度に関する情報を、前記関連性情報として生成すること、
を特徴とする請求項2に記載の実施計画作成支援装置。
【請求項4】
前記複数の移行経路の出現頻度を特定するための出現頻度情報を格納する出現頻度情報格納手段を備え、
前記関連性情報生成手段は、前記出現頻度情報格納手段にて格納された前記出現頻度情報に基づいて、前記複数の移行経路の出現頻度に関する情報を、前記関連性情報として生成すること、
を特徴とする請求項2に記載の実施計画作成支援装置。
【請求項5】
前記関連性情報生成手段は、第1閾値以上の出現頻度の移行経路である最頻出移行経路を他の移行経路から区別するための情報を、前記関連性情報として生成すること、
を特徴とする請求項3又は4に記載の実施計画作成支援装置。
【請求項6】
前記関連性情報生成手段は、前記第1閾値より小さい第2閾値以上の出現頻度の移行経路であって前記第1閾値未満の出現頻度の移行経路である準頻出移行経路を他の移行経路から区別するための情報を、前記関連性情報として生成すること、
を特徴とする請求項5に記載の実施計画作成支援装置。
【請求項7】
前記関連性情報生成手段は、前記最頻出移行経路又は前記準頻出移行経路がその他の移行経路に分岐する際の分岐点となるユニットを他のユニットから区別するための情報を、前記関連性情報として生成すること、
を特徴とする請求項5及び6に記載の実施計画作成支援装置。
【請求項8】
前記実施計画入力手段は、前記実施計画履歴情報に含まれる情報の中から前記関連性情報の生成を行う際に考慮すべき情報を指定するための生成モードの入力を受け付け、
前記関連性情報生成手段は、前記実施計画入力手段にて受け付けられた生成モードにて指定される情報に基づいて、前記関連性情報を生成すること、
を特徴とする請求項2から7のいずれか一項に記載の実施計画作成支援装置。
【請求項9】
実施対象に対して実施され得る複数の実施行為を実施行為単位で特定するための実施行為情報を格納する実施行為情報格納手段と、
前記複数の実施行為の中から前記実施対象に対する実施計画に含めるべき複数の実施行為の入力を受け付けると共に、当該実施計画に含めるべき複数の実施行為の相互間における実施順序の入力を受け付ける実施計画入力手段と、
を備えた実施計画作成支援装置に実施計画作成支援方法を実行させるプログラムであって、
前記複数の実施行為と前記実施順序とを前記実施計画入力手段を介して受け付ける受け付けステップと、
前記受け付けステップにおいて受け付けられた前記複数の実施行為と前記実施順序とに基づいて、前記実施対象に対する実施計画を特定する実施計画情報を生成する実施計画情報生成ステップと、
前記複数の実施行為の相互間の関連性に関する関連性情報を生成する関連性情報生成ステップと、
前記実施計画情報生成ステップにおいて生成した実施計画情報と、前記関連性情報生成ステップにおいて生成した関連性情報とを、前記実施計画管理装置に出力する出力ステップと、
を前記実施計画作成支援装置に実行させることを特徴とする実施計画作成支援プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2009−205654(P2009−205654A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−50252(P2008−50252)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(502099201)
【出願人】(504426089)
【出願人】(505411756)
【出願人】(301018603)株式会社サイバー・ラボ (11)
【Fターム(参考)】