説明

室内配置物の移動防止装置

【課題】地震により大きな揺れが生じても、家具類が床面上を移動しないようにして近くにいる人がケガをするのを防止するようにした家具・ベッドの移動防止装置を提供する。
【解決手段】一端に室内配置物Bの下側部に宛がう受止部4が設けられ他端に嵌合孔5が開設された押え金具1と、頭部に嵌合孔に嵌る鍔状突部11が設けられ該鍔状突部から軸線方向に沿って螺子孔15が設けられた棒状の打込部材2と、を有し、鍔状突部が設置面Fから突出するようにして該設置面に打込部材を植設し、鍔状突部を押え金具の嵌合孔に嵌めると共に打込部材の螺子孔に締付ボルト19を螺締めすることにより設置面に取着されるようにし、嵌合孔と鍔状突部とは該嵌合孔に該鍔状突部を嵌めたとき押え金具が該嵌合孔を中心とし設置面に沿って回転しないような形状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震が起きて大きな揺れが生じても病室に置かれるキャビネットやベッド等または事務室に置かれるキャビネットやコピー機等の室内配置物が勝手に床面を移動しないように固定できる室内配置物の移動防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば病院の病室内には、床面に患者の収容人数に合わせてベッドや患者の小物を収容したり衣類を収容するキャビネットが配置されている。病室内におけるキャビネットやベッドは他の部屋に移動することが多いことから、下面にキャスターが取り付けられ、自在に移動できるようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
ところで、わが国は地震国であって頻繁に地震が起きており、地震により建物が揺れると部屋の床面上に配置される各種の室内配置物は勝手に移動する。特に、前記病室にあって、患者用のキャビネットやベッドには下面の四隅部にキャスターが取り付けてある関係上、それらが非常に移動し易い。このように、キャビネットやベッドが床面上を勝手に移動すると、近くの人に当たってケガをさせるといった危険性が有る。
【0004】
これに対し、特許文献2に示すような室内配置物の移動防止装置が有る。該室内配置物の移動防止装置は、地震が起き揺れが発生したときにキャスターが付いた室内配置物(筺体)の移動を防止するようにしたものであり、起立するターンバックルの上・下両端にU字型の固定板と止め板とを軸装してなる。そして、上下の固定板と止め板とにキャスターを入れた状態で室内配置物の移動防止装置を床面と筺体との間に介在させ、この状態でターンバックルを回転させ筺体を持ち上げて固定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−113916号公報(第5−7頁、図3)
【特許文献2】実開平4−76502号公報(第1頁、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記室内配置物の移動防止装置では、筺体を下から持ち上げて支持しているにすぎないので、大きな揺れが生ずると、筺体に対して床面が大きく揺れその室内配置物の移動防止装置が簡単に横に倒れてしまう。このように、室内配置物の移動防止装置が倒れると、各キャスターが床面に設置して筺体が床面上を勝手に移動できるようになり、近くにいる人に当たってケガをさせるといった課題が生ずる。
【0007】
そこで、本発明は前記課題を解決すべくなされたもので、地震が発生し大きな揺れが生じても室内配置物が床面上を移動しないようにして、近くにいる人に当たってケガをさせるのを防止するようにした室内配置物の移動防止装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するため本発明の室内配置物の移動防止装置は、一端に室内配置物の下側部に宛がう受止部が設けられると共に他端に嵌合孔が開設された押え金具と、頭部に前記嵌合孔に嵌る鍔状突部が設けられ該鍔状突部から軸線方向に沿って螺子孔が設けられた棒状の打込部材と、を有し、前記鍔状突部が設置面から突出するようにして該設置面に前記打込部材を植設し、前記鍔状突部を前記押え金具の嵌合孔に嵌めると共に前記打込部材の螺子孔に締付ボルトを螺締めすることにより前記設置面に取着されるようにした室内配置物の移動防止装置であって、前記嵌合孔と鍔状突部とは該嵌合孔に該鍔状突部を嵌めたとき前記押え金具が該嵌合孔を中心とし前記設置面に沿って回転しないような形状に形成されていることを特徴とする。
【0009】
この際、前記嵌合孔と鍔状突部とは、互いに嵌合する正六角形状に形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る室内配置物の移動防止装置は、一端に室内配置物の下側部に宛がう受止部が設けられると共に他端に嵌合孔が開設された押え金具と、頭部に嵌合孔に嵌る鍔状突部が設けられ該鍔状突部から軸線方向に沿って螺子孔が設けられた棒状の打込部材と、を有し、鍔状突部が設置面から突出するようにして該設置面に打込部材を植設し、鍔状突部を押え金具の嵌合孔に嵌めると共に打込部材の螺子孔に締付ボルトを螺締めすることにより設置面に取着されるようにした室内配置物の移動防止装置であって、嵌合孔と鍔状突部とは該嵌合孔に該鍔状突部を嵌めたとき押え金具が該嵌合孔を中心とし設置面に沿って回転しないような形状に形成されている。そして、室内配置物の四隅下側部に対応して室内配置物の移動防止装置を設置面に取着するようにすれば、各押え金具は、設置面に沿って回転するようなことがなくしっかりと固定される。よって、地震が起きて大きな揺れが生じても、室内配置物がその位置に固定され安易に移動するようなことがない。これにより、近くにいる人に当たってケガをさせたりする危険性が防止される。
【0011】
ここで、室内配置物とは、例えば病院の病室内であって患者用の小物や衣類を収納するキャビネットやベッドまたは一般の事務室内において書類を収納するキャビネット、コピー機、机、ロッカーなどそれら部屋の床面に置いて使用される物をいう。本発明にあっては、特に下面にキャスターが付いた室内配置物を固定するに実益がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る室内配置物の移動防止装置の分解斜視図。
【図2】(イ)は中空本体の正面図、(ロ)は同平面図、(ハ)は同縦断面図。
【図3】本発明に係る室内配置物の移動防止装置の使用状態を示す斜視図。
【図4】(イ)は室内配置物の移動防止装置部位の平面図、(ロ)は同縦断面図、(ハ)は押え金具を使用しない場合の打込部材の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る室内配置物の移動防止装置(以下、単に「移動防止装置」という。)の最良の実施の形態を図面に基き詳しく説明する。図1は本発明に係る移動防止装置の分解斜視図、図2(イ)は中空本体の正面図、同図(ロ)は同平面図、同図(ハ)は同縦断面図である。
【0014】
本発明に係る移動防止装置は、例えば病院の病室や一般の仕事場である事務室内の床面に配置される室内配置物について使用される。そのうち本発明は、コンクリート製の建物からなる病院の病室であって収容される患者ごとにベッドと共に揃えられ衣類や小物を収容するキャビネット、特にキャスター付のキャビネットに適用される場合について説明する。
【0015】
移動防止装置Aは、後記するキャビネットB下面の各キャスター105に対応してそれぞれ宛がわれる押え金具1と、設置面である床面Fに植設され、押え金具1を該床面Fに固定するための打込部材2とからなる。
【0016】
押え金具1は、金属製であって床面F上に水平に配置される基板3の一端にキャビネットBのキャスター105に横から宛がう受止部4が設けられ、他端に平面正六角形状をなす嵌合孔5が開設されている。受止部4は基板3に対して直交状に起立し平面L字状に屈曲する側板6a,6bからなり、その一方の側板6aの下端縁が前記基板3と一体に設けられている。また、受止部4における基板3とは反対側となる各側板6a,6bの内側面に、ゴム、合成樹脂材などの柔軟な素材からなる緩衝材7が貼着されている。これは、室内配置物の下側部となるキャスター105に当接して該キャスター105に傷が付かないようにするためである。前記基板3の厚みは、例えば2〜3mmに設定されている。
【0017】
またこの場合、移動防止装置Aは、キャビネットBに取り付けられたキャスター105の個数分用意される。しかも右と左では受止部4の向きが互いに逆方向になるため、床面F上に押え金具1を置いたとき線対称となるような一対の押え金具1を多数対用意しておく。なお、図では、その一方のみを示す。
【0018】
打込部材2は、金属製の中空本体8とその中に頭側から挿入される同じく金属製の打込ピン9とからなる。中空本体8は図2に示すように棒状の胴体部10からなる。そして、その胴体部10の頭部に、外径が該胴体部10より大きくしかも厚みが比較的薄く(例えば、2〜3mm)前記嵌合孔5に嵌る鍔状突部11が設けられている。前記押え金具1の基板3の厚み寸法と鍔状突部11の厚み寸法は、ほぼ同じに設定される。
【0019】
前記胴体部10の先端側は、外周面が先端に進むに従い漸次細くなるテーパ面としたすり割り部12としており、その先端に環状凸部13が周設されている。また、このすり割り部12には、その軸線方向に沿って先端で開放する4本の割り溝14が等間隔に設けられている。すなわち、割り溝14が前記軸線の中心に交差部14aの中心が位置するようにして十文字状に設けられる。
【0020】
胴体部10の内部には、頭部の鍔状突部11から軸線方向に沿って螺子孔15が設けられている。また、その奥に中空部16が形成され、その先端であってすり割り部12に途中まで入った位置での内周面に先端に向かうに従い窄まるテーパ面16aが形成されている。そして、図2(ロ)に示すようにその中心には前記十文字状の割り溝14の交差部14aの中心が位置することになる。
【0021】
打込ピン9は、先端側に円錐状に尖る尖鋭部17aが形成され、基端側には円柱部17bが形成されている。そして、この打込ピン9の円柱部17bの外径は、前記十文字状の割り溝14の交差部14aの内径よりも大きく設定されている。これは、該打込ピン9を中空本体8内に挿入して押し込み割り溝14により分割される各分割片部18を外側へ押し開き、中空本体8を床面F内に抜脱不能に固定するためである。
【0022】
本発明に係る移動防止装置Aは上記構成からなり、次にその使用方法について説明する。図3は本発明に係る移動防止装置の使用状態を示す斜視図である。図中、Bはキャビネットであり、底板100の上面一側に小物を収容する複数段の引き出し101を上下に多段に列設し、他側にタオルなどの洗面用具を置く棚102を設け、上面にはお茶を収納するポットや薬を入れた袋を置いておく天板103を配置して構成される。そして、前記底板100の下面であってその四隅部に、それぞれ車輪104を有すると共に床面F上で自在に向きが変えられるキャスター105が取着されている。
【0023】
そこで、病室内で前記キャビネットBの設置位置が決まれば、図4(イ)(ロ)に示すように各キャスター105に対応させてそれぞれ床面Fに移動防止装置Aを取着する。
【0024】
まず、床面Fにドリルで所定内径の穴106を開ける。そして、該穴106内にすり割り部12側から中空本体8を押し込み、その頭部の鍔状突部11が床面Fから出るようにしておく。この際、必要であれば鍔状突部11の下面にワッシャ(図示せず。)を重ねるようにしても良い。そして、鍔状突部11側から螺子孔15内に先鋭部17aを先にして打込ピン9を挿入し、外側から該螺子孔15内に棒状物(図示せず。)を入れて前記打込ピン9を更に打ち込む。これにより、該打込ピン9が十文字状の割り溝14の交差部14aを押し開き、これに伴いすり割り部12における各分割片部18の先端が外側へ広がり穴106の内周面に食い込む。これにより、打込部材2の抜脱が不能になる。このようにして、床面Fに打込部材2がしっかりと植設される。
【0025】
次に、受止部4によりキャスター105を外側から囲うように押え金具1の位置を決め、床面Fから上方へ露出する鍔状突部11を嵌合孔5に嵌める。また、この状態で螺子孔15に別途用意した締付ボルト19を螺締する。該締付ボルト19の頭部19aの外径寸法は、前記嵌合孔5の内径寸法よりも大きく設定されている。この際、締付ボルト19は手で操作しても良く、このため図示は省略するが頭部19aの上面に指を掛けるための指掛片を設けるようにしても良い。以後は、各キャスター105に対応する三箇所で同様な作業を行なう。
【0026】
このように鍔状突部11と該鍔状突部11が嵌る嵌合孔5とは同じ正六角形状をなすことから、固定された押え金具1は床面Fに沿って嵌合孔5を中心として回転することがなく、締付ボルト19を外さないと押え金具1が外れることはない。しかも、各押え金具1の受止部4が各キャスター105を周囲から囲うように配置されている。よって、地震が起きて大きな揺れが生じても、各移動防止装置Aにより各キャスター105の動きが止められ、キャビネットBが前後または左右に移動するようなことがなくその位置に固定される。
【0027】
ところで、前記キャビネットBを一時使用しなくなった場合は、各移動防止装置Aを床面Fから外すことになるが、打込部材2は床面Fから引き抜くことができないので、締付ボルト19を外し押え金具1のみを外す。そしてこの場合、図4(ハ)に示すように打込部材2の螺子孔15に、頭部20aの上面20bが鍔状突部11の上面11aと面一となるような皿螺子20を螺締する。このようにすれば、床面Fに高さの低い鍔状突部11が露出するのみであるから、ほとんど邪魔にならない。しかも、螺子孔15内にゴミや埃が入らないので、再び移動防止装置Aを使用する場合に都合が良い。
【0028】
本発明にあっては、押え金具1の嵌合孔5と打込部材2の鍔状突部11とを正六角形状に形成したが、これは仮に嵌合孔5と該嵌合孔5に嵌る鍔状突部11が共に円形状であると、受止部4に床面Fと平行な面内で基板3に対し直交する大きな力(この場合はキャスター105によりもたらされる。)が加わったとき、押え金具1が嵌合孔5を中心として回転してしまいキャスター105が移動防止装置Aから外れその移動を許してしまうからである。このため、嵌合孔5と鍔状突部11とを正六角形状にして固定された押え金具1が床面Fに沿って回転しないようにしている。回転しない形状であれば、正六角形状以外の正多角形状にしても良く、他に例えば長方形、台形、直角三角形、楕円形がある。要するに、嵌合孔5と鍔状突部11とはどちらか一方または両方とも円形状でないことである。
【0029】
また、本発明では、押え金具1の受止部4の形状を平面L字状に設定したが、該押え金具1を固定する箇所によっては、単に平板状であっても良く、平面コ字状であっても良い。更に、移動防止装置AによりキャビネットBのキャスター105を固定するようにしたが、ベッドが移動しないようにそのキャスターを固定することもできる。更には、キャスターの付いてない室内配置物、例えばキャビネット、ロッカーについてもその四隅部の下側部に本発明に係る移動防止装置Aを宛がってその目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 押え金具
2 打込部材
4 受止部
5 嵌合孔
11 鍔状突部
15 螺子孔
19 締付ボルト
A 移動防止装置
B キャビネット
F 設置面(床面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に室内配置物の下側部に宛がう受止部が設けられると共に他端に嵌合孔が開設された押え金具と、
頭部に前記嵌合孔に嵌る鍔状突部が設けられ該鍔状突部から軸線方向に沿って螺子孔が設けられた棒状の打込部材と、を有し、
前記鍔状突部が設置面から突出するようにして該設置面に前記打込部材を植設し、前記鍔状突部を前記押え金具の嵌合孔に嵌めると共に前記打込部材の螺子孔に締付ボルトを螺締めすることにより前記設置面に取着されるようにした室内配置物の移動防止装置であって、
前記嵌合孔と鍔状突部とは該嵌合孔に該鍔状突部を嵌めたとき前記押え金具が該嵌合孔を中心とし前記設置面に沿って回転しないような形状に形成されていることを特徴とする室内配置物の移動防止装置。
【請求項2】
前記嵌合孔と鍔状突部とが互いに嵌合する正六角形状をなす請求項1記載の室内配置物の移動防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−106757(P2013−106757A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253526(P2011−253526)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(503221942)日興産業株式会社 (3)
【出願人】(506043527)
【出願人】(500275832)
【出願人】(500275843)
【Fターム(参考)】