説明

害獣防護柵

【課題】簡単に設置することができ、猪や鹿の侵入を確実に阻止することができる害獣防護柵を提供すること。
【解決手段】中空状に形成され、地面に立設される第1支柱10と、第1支柱10に上部から挿入可能に設けられ、ネット4を係止可能なネット係止部が上部に設けられた第2支柱11と、第1支柱10に対し第2支柱11を所定高さ位置に支持可能な支持手段と、を備え、地面Gに立設した第1支柱10に第2支柱11を挿入し、ネット係止部にネットを係止して該第2支柱11を上昇させた後、支持手段により第2支柱11を第1支柱10に対し所定高さ位置に支持可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、猪や鹿等の野生動物が農地に侵入するのを防止するための害獣防護柵に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、猪や鹿などの害獣が山から下りてきて農作物の被害が各地で見られているが、取り分け猪による被害が増大してきている。このような猪や鹿による被害対策の一例としては、農作物等を栽培する農地の周囲を、金網や樹脂ネット、トタン板、樹脂波板等を用いた防護柵で囲むことが一般的に行なわれていた。
【0003】
また、所定の間隔をあけて地面に立設された複数本の支柱に、複数枚の板状部材を害獣の目線の高さまで固定し、害獣から害獣防護柵内の農作物が見えにくくするとともに、害獣の目線より上方となる板状部材が設けられなかった該支柱間には樹脂製のネットを設け、該害獣防護柵内の安全確認が視覚では出来なくても、農作物を食べようと強引に柵内に侵入してくる例えば鹿のような跳躍力のある害獣が害獣防護柵の板状部材からなる板部を乗り越えようとしても、該害獣防護柵の上方にあるネットによって害獣の侵入を防止したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3161355公報(第3頁、第6図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鹿の中には約2mの柵を飛び越える固体も存在するため、上記特許文献1に記載の防護柵で猪だけでなく鹿の侵入も防ぐためは支柱を高くする必要があるが、支柱が長くなると運搬性や取り扱いが悪くなる。また、支柱を地面に立設したり、支柱の高位置にネットを張設する設置作業を足場が悪い畑で脚立等を用いて行わなければならないため、安全性に問題があるばかりか、防護柵の設置作業が大掛かりになって各農家が個別で対応するのが困難であるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、簡単に設置することができ、猪や鹿の侵入を確実に阻止することができる害獣防護柵を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の害獣防護柵は、
所定の間隔をあけて地面(G)に複数の支柱(2)を立設し、該複数の支柱によりネット(4)を張設可能な害獣防護柵(1)において、
前記支柱は、
中空状に形成され、地面に立設される第1支柱(10)と、
前記第1支柱に上部から挿入可能に設けられ、前記ネットを係止可能なネット係止部(係止キャップ33)が上部に設けられた第2支柱(11)と、
前記第1支柱に対し前記第2支柱を所定高さ位置に支持可能な支持手段(差込孔15、差込部材16)と、を備え、
地面に立設した前記第1支柱に前記第2支柱を挿入し、前記ネット係止部に前記ネットを係止して該第2支柱を上昇させた後、前記支持手段により前記第2支柱を前記第1支柱に対し所定高さ位置に支持可能とした(図6〜図8参照)、
ことを特徴としている。
この特徴によれば、ネットを張設する支柱が第1支柱と第2支柱とからなることで、1本の長い支柱よりも運搬や取り扱いが容易になる。また、ネットが係止されて荷重がかかる第2支柱を、地面に固設された第1支柱により安定的にガイドした状態で上昇させることができるとともに、第1支柱に対し第2支柱を支持手段により所定高さ位置に支持するだけで所定長さの支柱を簡単に構成できるので、所定高さのネットを安全に、かつ、簡単に張設することができる。
【0008】
本発明の害獣防護柵は、
複数の前記支柱(2)間に横架され、該支柱同士を連結する連結杆(3)と、
前記第1支柱(10)の上部に嵌挿可能に形成され、かつ、前記連結杆の端部(係止フック20の係止部20b)を係止可能に形成される連結リング(連結部材18)と、を備え、
前記支持手段は、
前記第1支柱の周面における対向位置に形成される一対の差込孔(15)と、
前記一対の差込孔に差込可能に形成される差込部材(16)と、から構成され、
前記連結リングは、前記差込部材により下方から受支されることで前記第1支柱の所定高さ位置に支持される(図3参照)、
ことを特徴としている。
この特徴によれば、複数の支柱の共倒れが防止されるとともに、第2支柱を支持する差込部材に連結リング及び連結杆の荷重もかかることになるので、差込部材の抜脱が効果的に防止される。
【0009】
本発明の害獣防護柵は、
前記連結リング(連結部材18)は、
前記第1支柱に嵌挿されるリング部(18a)と、
前記リング部の周面に設けられる連結杆係止部(18b)と、から構成され、
前記リング部には、前記差込部材が嵌合される嵌合部(切欠溝19)が形成されている、
ことを特徴としている。
この特徴によれば、連結リングの回転が防止される。
【0010】
本発明の害獣防護柵は、
前記ネット(4)は、
前記第1支柱(10)に張設される第1ネット(下ネット40)及び前記第2支柱に張設される第2ネット(上ネット41)を含み、
前記第1ネットは、前記第2ネットよりも透過率が低い(図8参照)、
ことを特徴としている。
この特徴によれば、害獣から害獣防護柵内の農作物が見えにくくすることができるとともに、支柱上部のネットが風の影響を極力受けにくくするようにすることができる。
【0011】
本発明の害獣防護柵は、
前記支柱(2)とは別個に地面に立設される支持部材(ペグ61)と、
前記ネット(4,40,41)とは別個に設けられ、前記支柱間に張設された前記ネットの外側に前記支持部材を介して地面の上方所定高さ位置(例えば、約5〜20cm上方の高さ位置)に略水平に配設される忌避ネット(60)と、を備え、
前記忌避ネットは、少なくとも前記ネットよりも目が粗い(図10(b)参照)、
ことを特徴としている。
この特徴によれば、害獣防護柵に侵入しようとする害獣の脚が忌避ネットに入り込んで絡まることで忌避が促進される。また、忌避ネットは防護柵のネットとは別個に単独で配設されるので、害獣が忌避ネットに絡まり暴れることでネットや支柱が引っ張られるなどして害獣防護柵が傾倒することが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】害獣防護柵の設置状況を示す斜視図である。
【図2】(a)は支柱の構成を示す斜視図、(b)は係止キャップを示す断面図である。
【図3】支柱の要部拡大断面図である。
【図4】ネットに支柱を通した状態を示す正面図である。
【図5】ネットに支柱を通した状態を示す斜視図である。
【図6】(a)は第1支柱をネットに差し込む工程、(b)は第1支柱を地面に立設する工程を示す図である。
【図7】(c)は第2支柱を挿入する工程、(d)は上ネットを係止する工程を示す図である。
【図8】(e)は第2支柱を上昇させる工程、(f)は連結杆で支柱を連結する工程を示す図である。
【図9】(a)は変形例としての支柱の構造を示す要部斜視図、(b)は(a)の要部断面図である。
【図10】(a)は変形例としての害獣防護柵の設置状況を示す正面図、(b)は(a)の要部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る害獣防護柵を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0014】
実施例1に係る害獣防護柵につき、図1〜図8を参照して説明する。図1は、害獣防護柵の設置状況を示す斜視図である。図2は、(a)は支柱の構成を示す斜視図、(b)は係止キャップを示す断面図である。図3は、支柱の要部拡大断面図である。図4は、ネットに支柱を通した状態を示す正面図である。図5は、ネットに支柱を通した状態を示す斜視図である。図6は、(a)は第1支柱をネットに差し込む工程、(b)は第1支柱を地面に立設する工程を示す図である。図7は、(c)は第2支柱を挿入する工程、(d)は上ネットを係止する工程を示す図である。図8は、(e)は第2支柱を上昇させる工程、(f)は連結杆で支柱を連結する工程を示す図である。尚、説明上、図2の左斜め下方を支柱の正面、右斜め上方を背面、左斜め上方を左側面、右斜め下方を右側面として説明する。
【0015】
図1に示すように、害獣防護柵1は、例えば猪や鹿等の害獣による被害対策の対象となる農作物等を栽培する農地を囲むように設置される。具体的には、所定の間隔をあけて地面に立設される複数の支柱2と、複数の支柱2,2間に横架され、該支柱2,2同士を連結する連結杆3と、該複数の支柱2に張設されるネット4と、から構成される。
【0016】
図2及び図3に示すように、支柱2は、中空状に形成され地面に立設される第1支柱10と、第1支柱10に上部から挿入可能に設けられる第2支柱11と、から構成される。第1支柱10及び第2支柱11は例えばスチール製の管体にて構成されているとともに、第2支柱11の外径L2は、第1支柱10の内径L1よりも小径に形成されている(L1>L2)。
【0017】
また、第1支柱10の全長L3は、例えば約100〜150cmの範囲内とされ、猪が飛び越えることが困難な長さとされている。また、第2支柱11の全長L4は、例えば約100〜150cmの範囲内とされ、長さは種々に変更可能とされている。尚、第1支柱10の全長L3と第2支柱11の全長L4とは種々に変更可能であるが、好ましくは第1支柱10は第2支柱11よりも短寸に形成されていることが好ましく、このようにすれば、第1支柱10を地面に打ち込んで立設する作業が容易になるとともに、鹿など跳躍力がある害獣に対しては第2支柱11を長寸化することで対応できる。
【0018】
第1支柱10の下部には、下端に向けて漸次先細りに形成される縮径部12が形成されている。下端から約40cm程上方位置にはマーク13が表示されており、地面に埋め込む深さを目視にて確認できるようになっている。上端縁における左右対向位置には、後述する係止キャップ33の回転を規制するための溝状の切欠部14がそれぞれ下方に向けて延設されている。また、上端よりも約20〜30cm程下方位置には、縦長長方形状の差込孔15が前後対向位置にそれぞれ形成されている。
【0019】
差込孔15,15には、差込部材16が差し込まれるようになっている。差込部材16は、前後の差込孔15,15に挿入可能な差込板16aと、差込板16aの一端に連設される上下方向を向く取手部16bと、から側面視略T字形に形成された板部材からなる。また、差込板16aの下端辺には、抜け止め用の凸部16cが形成されている。
【0020】
尚、この凸部16cの長手幅寸法L6は、第1支柱10の内径L1よりも短寸とされるとともに(L1>L6)、差込板16aにおける幅広部の上下幅寸法L5は差込孔15の上下幅寸法L7よりも短寸とされている(L5<L7)。よって、差込板16aは一方の差込孔15の外側から挿入可能とされているとともに、前後の差込孔15,15に挿入された状態において、凸部16cが前後の差込孔15,15間に配置され係止されることで、差込部材16の逸脱が防止される。
【0021】
第1支柱10の下部には、平面視円形状をなす支柱固定盤17が嵌挿されている。支柱固定盤17は、図6(b)中拡大図に示すように、周縁から中心に向けて上方に傾斜する略三角錐形状に形成され、中心には支柱挿通孔17aが形成されている。
【0022】
第1支柱10の上部には、連結杆3の端部を連結するためのスチール製の連結部材18が挿入されるようになっている。連結部材18は、第1支柱10の上部に嵌挿可能な内径を有するリング部18aと、リング部18aの周面に設けられる複数の連結杆係止部18bと、から構成されている。リング部18aの下端縁における前後対向位置には、差込板16aの上端に嵌合可能な前後一対の切欠溝19が形成され、差込板16aの上端に切欠溝19が嵌合されることでリング部18aの軸周りの回転が規制されるようになっている。
【0023】
連結杆係止部18bは、リング部18aよりも小径の筒体を、該リング部18aの外周面における左右及び後位置にそれぞれ軸心が上下方向を向くように溶接固定することで係止孔を形成している。このように連結杆係止部18bが左右及び後位置に予め形成されていることで、例えば図1に示すようにコーナー以外に設置される支柱2では左右に対向配置される連結杆係止部18bを使用し、コーナーに設置される支柱2では90度の角度で隣り合う連結杆係止部18bを使用すれば連結することができるため、1種類の連結部材18を用意すれば、支柱の立設位置に関わらず使用することができる。
【0024】
尚、連結杆係止部18bが左右対向配置される並設用の第1連結部材18と、連結杆係止部18bが90度の角度で隣接配置されるコーナー用の第2連結部材18と、の2種類の連結部材を予め用意しておいてもよい。また、このような連結部材18は、径の異なる別個の管体を溶接等により接続することで形成するものに限定されるものではなく、管体を押し曲げることによりリング部18aと連結杆係止部18bとを一体形成してなるものであってもよい。
【0025】
連結杆3は、スチール製の管体からなり、それらの長手方向の両端部には、円柱状の棒部材を略L字形に屈曲することにより形成された係止フック20が溶着されている。係止フック20は、詳しくは長手方向を向く基部20aが、連結杆3の端部周面に軸心方向を向くように溶着されるとともに、基部20aの先端から下方に屈曲され、連結杆3の端面から連結杆係止部18bの肉厚分以上の隙間を隔てて垂下される係止部20bと、から構成されている。
【0026】
このように構成された係止フック20は、係止部20bを連結杆係止部18bの係止孔に上方から挿入され、基部20aが連結杆係止部18bの上端縁に係止されることで、連結杆3の端部が第1支柱10に対して連結されるようになっている。
【0027】
一方、第2支柱11の下端縁における前後対向位置には、差込板16aの上端に嵌合可能な前後一対の切欠溝31が形成されており、これにより第1支柱10に対する第2支柱11の軸周りの回転が規制されるようになっている。また、上端における左右対向位置には、溝状の切欠部32がそれぞれ下方に向けて延設されている。さらに、第2支柱11の前面における上端から約20cm程下方位置には、規制ピン37が突設されている。
【0028】
第2支柱11の上端部には、ネット4の上部を係止するための係止キャップ33が着脱可能に嵌合されている。係止キャップ33は、例えば合成樹脂材からなり、第2支柱11の上端部に嵌合される筒状部34と、筒状部34の上面を閉塞する平板部35と、平板部35の左右方向に凹設される凹溝部36と、から構成されている。平板部35は、筒状部34の周面よりも外側に突出する大きさを有している。また、凹溝部36は、後述するネット4の紐を挿通可能な幅寸法を有し、この凹溝部36を介して筒状部34の前半分または後半分に紐を巻回できるようになっているとともに、巻回された紐の上方への逸脱が突出した平板部35により規制されるようになっている(図2(b)参照)。
【0029】
図1に示すように、ネット4は、第1支柱10に張設される下ネット40と、第2支柱11に張設される上ネット41と、から構成されてなる。尚、本実施例では、これら下ネット40と上ネット41とは別個に構成されていたが、一体に構成されていてもよい。また、対象となる害獣の種類によっては、下ネット40を第1,2支柱10,11双方を利用して上下に張設してもよいし、下ネット40よりも目の粗い上ネット41を第1,2支柱10,11双方を利用して上下に張設してもよい。
【0030】
図4及び図5に示すように、下ネット40は、約10〜15cmの上下幅寸法L9をなす横長の目隠し部42が、約10mm程の上下幅寸法L10を有する横長のスリット孔43を挟んで上下方向に複数段設けられてなる。スリット孔43の左右幅L8は、直径L1’の第1支柱10の円周長さの半分(L8=L1’×π/2)の数値にクリアランス寸法(例えば、約2cm)を加算した寸法とされている。よって、上下方向に並設される複数段の目隠し部42を上下方向に向けて前後に交互にずらして第1支柱10の挿通部を形成することで、下ネット40を第1支柱10に上下方向に挿通できるようになっている。
【0031】
このように下ネット40は、比較的目が細かく、透過率が小さくなるように形成されているため、下ネット40を透して目視することは困難とされているとともに、スリット孔43により最低限の通気性が確保されている。また、下ネット40の上部には、下係止紐44が複数の下支持片45を介して下ネット40の長手方向に沿うように配設されている。
【0032】
上ネット41は、下ネット40よりも目が粗い、つまり下ネット40よりも透過性が高い網目からなるネットにて構成されており、上部には、上係止紐54が複数の上支持片55を介して下ネット40の長手方向に沿うように配設されている(図7(d)参照)。
【0033】
次に、害獣防護柵1の形成工程について、図6〜図8にもとづいて説明する。
【0034】
(1)まず、特に図示はしないが、農地において保護の対象となる農作物を囲むように、複数の支柱固定盤17を所定間隔おき(例えば、2メートル間隔)に配置しておく。
【0035】
(2)下ネット40の長手方向に、支柱固定盤17の配置間隔に合わせて複数本の第1支柱10を挿通しておく(図6(a)参照)。
【0036】
(3)下ネット40に挿通した第1支柱10の縮径部を、農地に配置した各支柱固定盤17の支柱挿通孔17aに上方から差し込み、ハンマーや金槌等で約40cm程度地面に打ち込む(図6(b)参照)。このとき、支柱固定盤17の上端部にマーク13が位置する程度に打ち込むことで、各第1支柱10の打ち込み深さをほぼ同一とすることができるので、高さ位置を均一にすることができる。また、支柱固定盤17の上面を足で踏みつけることで、第1支柱10の周囲近傍の土が、支柱固定盤17の傾斜面にて第1支柱10側に寄せられるように固まる。よって、例えば畑等の地表が柔らかい場所でも、第1支柱10を安定的に、かつ、地面Gに対して垂直に立設することが可能となる。
【0037】
(4)立設された第1支柱10の上端から、連結部材18のリング部18aを嵌挿するとともに、第2支柱11を、第1支柱10の上端開口から内部に挿入する。挿入された第2支柱11は、第1支柱10の上端に規制ピン37が係止されることにより、第1支柱10内に第2支柱11が完全に入り込んでしまうことなく、少なくとも第1支柱10の上端開口から第2支柱11の上部が露呈された状態で維持される(図7(c)参照)。
【0038】
(5)各第2支柱11の上端に嵌合された係止キャップ33に、上ネット41の上係止紐54を巻回して係止させる。そして、上係止紐54が係止された第2支柱11を、第1支柱10に対して上昇させる(図7(d)参照)。
【0039】
(6)第1支柱10に対して第2支柱11が所定高さ位置まで上昇されたとき、具体的には、第1支柱10の下端が差込孔15の上方位置まで上昇されたときに、連結部材18を差込孔15よりも上方位置に押し上げながら、正面側の差込孔15から差込部材16を差し込む(図8(e)参照)。これにより、図3に示すように、差込板16aの上端に切欠溝31が嵌合され、第1支柱10に対して、第2支柱11が所定高さ位置にて、軸心周りに回転不能に支持されるため、各第2支柱11に上係止紐54を介して係止された上ネット41が、下ネット40の上方位置に張設される。
また、第2支柱11の荷重が差込部材16にかかることで、凸部16cが差込孔15の下縁に係止され、差込部材16の差込孔15からの逸脱が規制される。さらに、差込板16aの上端に切欠溝19が嵌合されることで、第1支柱10の外周上部に、連結部材18が所定高さ位置にて軸心周りに回転不能に支持される。
【0040】
(7)最後に、各第1支柱10の上部に支持された連結部材18の連結杆係止部18bに、連結杆3の両端に設けられた係止フック20を差し込むことで、各第1支柱10の上部間に連結杆3が横架され、各第1支柱10が連結杆3を介して四角枠状に連結されるため、各第1支柱10の共倒れが防止される(図8(f)参照)。
【0041】
さらに、下ネット40の下係止紐44を、各第1支柱10の差込部材16の取手部16bや連結部材18に係止させたり、上ネット41の下端に結び付けるなどして、上ネット41の下方位置に張設することができる。また、図1に示すように、下ネット40の下部の余剰部を外側に折り出してその上からペグ等を打ち込んで固定することにより、猪等が下ネット40と地面Gとの間を掘り起こして侵入することが防止される。
【0042】
以上説明したように、本発明の実施例としての害獣防護柵1にあっては、ネット4を張設する支柱2が第1支柱10と第2支柱11とからなることで、1本の長い支柱よりも運搬や取り扱いが容易になる。また、ネット4が係止されて荷重がかかる第2支柱11を、地面Gに固設された第1支柱10により安定的にガイドした状態で上昇させることができるとともに、第1支柱10に対し第2支柱11を支持手段である差込部材16により所定高さ位置に支持するだけで所定長さの支柱2を簡単に構成できるので、所定高さのネット4を安全に、かつ、簡単に張設することができる。
【0043】
また、支柱2が第1支柱10と第2支柱11とからなることで、例えば冬期など作付けしない期間において、害獣防護柵1を地面Gに打ち込まれた第1支柱10を取り外すことなく、第2支柱11だけを第1支柱10から抜き出して下ネット40、上ネット41等を取り外しておけば、短寸の第1支柱10だけなら風等の影響を受けにくく傾倒する恐れもないので、害獣防護柵1を全て撤去したり設置する作業を繰り返す手間が効果的に軽減される。
【0044】
また、支柱2が第1支柱10と第2支柱11とからなることで、例えば被害が猪やアライグマによるものであり、鹿等の跳躍力がある害獣による被害がない場合には、第1支柱10及び下ネット40’のみで低高さ(例えば、約100〜150cm)の防護柵1を構成することが可能であるため、害獣の種類に対応して、高さの異なる支柱2を立設することができる。
【0045】
具体的には、図10に示すように、第1支柱10の上端に係止キャップ33を装着し、下ネット40’のみを上記したように張設すればよい。また、前記実施例では、下ネット40の風通しを向上させるために、第1支柱10を挿通する箇所だけでなく、各支柱2,2間にもスリット孔43が左右方向に複数形成されていたが、例えばネットが十分な通気性を有していれば、必ずしも各支柱2,2間にスリット孔43を形成しなくてもよい(図10参照)。
【0046】
また、前記実施例では、下ネット40の下部の余剰部を外側に折り出してその上からペグ等を打ち込んで固定することにより、猪等が下ネット40と地面Gとの間を掘り起こして侵入することを防止していたが、例えば図10に示すように、下ネット40の下部の余剰部40aから約5〜20cm程上方の高さ位置、つまり少なくとも第1支柱10の上端よりも下方位置に、平面視横長帯状の忌避ネット60を略水平に張設することで、該忌避ネット60に侵入しようとする害獣の足を絡ませて忌避を促進するようにしてもよい。
【0047】
このような忌避ネット60として、例えば約8〜20cm角の目の粗いネットを使用することで、猪等の害獣の脚が目の中に挿入されやすくなり、これに害獣が気が付かずに歩き続けようとすることで忌避ネット60に絡まりやすくなる。すなわち、忌避ネット60は、少なくとも害獣の侵入を防止する目的である下ネット40’や上ネット40等のネット4よりも目が粗いことが好ましい。
【0048】
また、忌避ネット60は、下ネット40’とは別個に構成され、かつ、該下ネット40’や第1支柱10を利用して張設することなく、単独で張設することが好ましく、このようにしておくことで、害獣が忌避ネット60に絡まって暴れても、それにより下ネット40’や第1支柱10が引っ張られるなどして負荷がかかり、ネット40,41や支柱2を傾倒することが防止される。
【0049】
また、忌避ネット60を所定高さ位置に張設する方法としては、余剰部40aを固定するためのペグ61を長寸として共用し、その上部に忌避ネット60を係止して張設してもよいし、余剰部40aを固定するペグとは別個のペグで張設してもよい。あるいは、ペグ61以外の支持部材(例えば短寸の支柱や棒材等でもよい)を利用して張設してもよい。
【0050】
また、忌避ネット60は、害獣防護柵1内に侵入しようとする猪等の害獣の脚が目の中に挿入されやすい目の粗さを有するネットであれば、合成樹脂製の線材からなる網状部材であってもよいし、あるいは金属製の線材からなる網状部材であってもよく、材質は限定されるものではない。
【0051】
また、忌避ネット60のように合成樹脂製線材からなる網状部材の場合、ネットは変形可能であるため、害獣が忌避ネット60を足場にして下ネット40’を乗り越えてしまうことがない。一方、金属製線材からなるネットの場合、ネットが変形しないので張設する必要がないので、配設作業が容易になる。
【0052】
また、複数の前記支柱2間に横架され、該支柱2同士を連結する連結杆3と、第1支柱10の上部に嵌挿可能に形成され、かつ、連結杆3の係止部20bを係止可能に形成される連結部材18と、を備え、第1支柱10の周面における対向位置に形成される一対の差込孔15と、一対の差込孔15に差込可能に形成される差込部材16と、から構成され、連結部材18は、差込部材16により下方から受支されることで第1支柱10の所定高さ位置に支持されることで、複数の支柱2の共倒れが防止されるとともに、第2支柱11を支持する差込部材16に連結部材18及び連結杆3の荷重もかかることになるので、差込部材16の抜脱が効果的に防止される。
【0053】
このように、連結部材18を、第2支柱11を第1支柱10に対し所定高さ位置に支持する支持部材としての差込部材16にて支持することで、第2支柱11及び連結杆3双方の荷重を利用して差込部材16の抜け止め効果を向上させることができるばかりか、連結部材18の支持部と第2支柱11の支持部とを別個に設けなくて済むため、構造を簡素化して製造コストを低減することができる。
【0054】
また、本実施例では、第1支柱10に対し第2支柱11を所定高さ位置に支持する支持手段として、第1支柱10を貫通するように差し込まれ、第2支柱11の下端を下方から受支する差込部材16としていたが、例えば第2支柱11の下部周面に上下方向に向けて複数の差込孔(図示略)を形成し、いずれかの高さの差込孔に差込部材16を差し込むことで、第1支柱10に対し第2支柱11を複数の高さ位置のうちからいずれかを選択して支持できるようにしてもよい。また、第1支柱10に螺入された蝶ネジを第2支柱11の周面に圧接させることで第2支柱11を支持するようにしてもよい。
【0055】
また、ネット4は、第1支柱10に張設される下ネット40及び第2支柱11に張設される上ネット41を含み、下ネット40は、上ネット41よりも透過率が低いことで、害獣から害獣防護柵1内の農作物が見えにくくすることができるとともに、支柱2上部のネットが風の影響を極力受けにくくするようにすることができるため、風による支柱2の共倒れが防止される。
【0056】
また、本実施例では、第2支柱11の上部に嵌合された係止キャップ33に上係止紐54を係止することで、上ネット41を各第2支柱11の上端に係止できるようになっていたが、例えば規制ピン37に係止してもよいし、あるいは別個の係止部に係止するようにしてもよい。
【0057】
また、本実施例では、連結部材18は、リング部18aと連結杆係止部18bとから構成されていたが、例えば図9に示すように、上方に向けて漸次拡径する筒体18’のみから構成されていてもよい。つまり、リング部が連結杆係止部を兼ねていてもよい。この場合、連結杆3の係止フック20’が筒体18’の上方から筒体18’と第1支柱10の該周面との間に差し込まれ、該係止フック20’の先端が縮径部内に嵌り込むことで連結部材18’が所定高さ位置に保持される。
【0058】
また、前記実施例の差込部材16は、下端辺に凸部16cが形成されているだけであったが、差込部材16’のように、複数の凸部16dが長手方向に向けて複数箇所に形成されていてもよい。
【0059】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0060】
例えば、前記実施例では、複数の支柱2は所定の農作物を囲むように立設されていたが、農地全体を囲むように農地の外に立設されていてもよい。
【0061】
また、前記実施例では平面視四角形状をなすように複数の支柱2が配置されていたが、平面視三角形状や円形状をなすように配置されてもよく、支柱2の配置形態は種々に変更可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 害獣防護柵
2 支柱
3 連結杆
4 ネット
10 第1支柱
11 第2支柱
15 差込孔
16 差込部材
16a 差込板
16b 取手部
16c 凸部
18 連結部材
18a リング部
18b 連結杆係止部
20 係止フック
33 係止キャップ
40 下ネット
41 上ネット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔をあけて地面に複数の支柱を立設し、該複数の支柱によりネットを張設可能な害獣防護柵において、
前記支柱は、
中空状に形成され、地面に立設される第1支柱と、
前記第1支柱に上部から挿入可能に設けられ、前記ネットを係止可能なネット係止部が上部に設けられた第2支柱と、
前記第1支柱に対し前記第2支柱を所定高さ位置に支持可能な支持手段と、を備え、
地面に立設した前記第1支柱に前記第2支柱を挿入し、前記ネット係止部に前記ネットを係止して該第2支柱を上昇させた後、前記支持手段により前記第2支柱を前記第1支柱に対し所定高さ位置に支持可能とした、
ことを特徴とする害獣防護柵。
【請求項2】
複数の前記支柱間に横架され、該支柱同士を連結する連結杆と、
前記第1支柱の上部に嵌挿可能に形成され、かつ、前記連結杆の端部を係止可能に形成される連結リングと、を備え、
前記支持手段は、
前記第1支柱の周面における対向位置に形成される一対の差込孔と、
前記一対の差込孔に差込可能に形成される差込部材と、から構成され、
前記連結リングは、前記差込部材により下方から受支されることで前記第1支柱の所定高さ位置に支持される、
ことを特徴とする請求項1に記載の害獣防護柵。
【請求項3】
前記連結リングは、
前記第1支柱に嵌挿されるリング部と、
前記リング部の周面に設けられる連結杆係止部と、から構成され、
前記リング部には、前記差込部材が嵌合される嵌合部が形成されている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の害獣防護柵。
【請求項4】
前記ネットは、
前記第1支柱に張設される第1ネット及び前記第2支柱に張設される第2ネットを含み、
前記第1ネットは、前記第2ネットよりも透過率が低い、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の害獣防護柵。
【請求項5】
前記支柱とは別個に地面に立設される支持部材と、
前記ネットとは別個に設けられ、前記支柱間に張設された前記ネットの外側に前記支持部材を介して地面の上方所定高さ位置に略水平に配設される忌避ネットと、を備え、
前記忌避ネットは、少なくとも前記ネットよりも目が粗い、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の害獣防護柵。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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