害獣類侵入防止具
【課題】 比較的簡単な構造で、シカ、サル、イノシシ、ハクビシンおよびタヌキなどの害獣類の種類に応じて好適な先鋭部材からなる撃退金具を容易に着脱できるとともに、学習能力が高いといわれるサルなどであっても先鋭部材からなる撃退金具が接触する可能性が高い害獣類防止具を提供する。
【解決手段】 ワイヤ3が所定形状に組んで構成され枠体2に取り付けている。ワイヤ3に、止め具4に先鋭突起物5を有する撃退金具2が着脱自在に取り付けられる。害獣類がワイヤ3に接触するとワイヤ3に取り付けられた撃退金具2が害獣類の予想外の移動をすることができる。
【解決手段】 ワイヤ3が所定形状に組んで構成され枠体2に取り付けている。ワイヤ3に、止め具4に先鋭突起物5を有する撃退金具2が着脱自在に取り付けられる。害獣類がワイヤ3に接触するとワイヤ3に取り付けられた撃退金具2が害獣類の予想外の移動をすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シカ、サル、イノシシ、ハクビシンやタヌキなどの害獣類により作物や住居などが荒らされる被害を防止する害獣類侵入防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、農場、果樹菜園等では、シカ、サル、イノシシ、ハクビシンやタヌキといった害獣類による作物の被害を防ぐために、農場、果樹園等の周りを害獣類侵入防止具で取り囲むことが行われる。
従来、この種の害獣類侵入防止具としては、図12に示すように、所定の間隔で植設された主柱102A、102Aと、この主柱に張設された防止ネット102Bとから構成されるものがある。この害獣類侵入防止具101では、防止ネット102Bが線径4mmの太い線種のワイヤ等を用いて、害獣類が接触しても防止ネット102Bの網目構造が崩れないように強く張り詰めて構成されている。これにより、害獣類が害獣類侵入防止具101に接触して揺らしたりしても、網目を広げて侵入する穴を作ったりすることができない強固な構造となっている(特許文献1、2、4)。そして、このような強固な構造の害獣類侵入防止具に、例えば、有刺鉄線の刺(先鋭突起物)のような痛み等を与える撃退金具を配置して、侵入を防止する工夫が多くなされている(特許文献3、5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平2−120172号
【特許文献2】特開2009−183166号
【特許文献3】特開2007−175041号
【特許文献4】特開平10−4854号
【特許文献5】実用新案登録第3045775号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の害獣類侵入防止具では、撃退金具が固定されているか、若しくはその動きが一定の予測可能なものであるため、害獣類が撃退金具を避けて接触する確率が低く、痛み等を与える効果は非常に小さいという問題があった。
特に、害獣類の中には、サルのように学習能力が高い害獣類の場合は、一度有刺鉄線の刺のような撃退金具に接触すれば痛み等を覚えて、次にはその有刺鉄線の刺をずらしたり取ったりなどすることができ、ワイヤに接触してよじ登り、柵を越えて侵入することができてしまう。その結果、従来の害獣類侵入防止具では、どのような害獣類に対しても、特に知能が比較的高い害獣類に対して、確実に痛み等を与えて撃退させることはできないという問題があった。タヌキヤやハクビシンについては、ネットの隙間等、頭部が潜れる大きさの隙間から侵入できるので、小さな穴も補修する必要がある。
一方、電流線による害獣類侵入防止具においては、設置面積が広いと、その費用が高く漏電防止のための草刈と電源を必要をしている。また、破損に対する修理費用も高く、そのコストに比べて侵入防止効果は薄く、非常に効率が悪いという問題があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、比較的簡単な構造で、シカ、サル、イノシシ、ハクビシンやタヌキなどの害獣類の種類に応じて好適な先鋭部材からなる撃退金具を容易に着脱できるとともに、学習能力が高いといわれるサルであっても先鋭部材からなる撃退金具が接触する可能性が高い害獣類防止具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の害獣類侵入防止具は、外枠や支柱部材やワイヤ等の所定の枠体にワイヤを所定形状に組んで取り付けられて、シカ、サル、イノシシ、ハクビシンやタヌキなどの害獣類により作物や住居などが荒らされる被害を防止する害獣類侵入防止具において、前記ワイヤに、止め具に先鋭突起物を有する撃退金具が着脱自在に取り付けられて、害獣類が前記ワイヤに接触すると当該ワイヤに取り付けられた前記撃退金具が移動可能であることを特徴とする。ここで、ワイヤは、外枠や支柱部材やワイヤ等の所定の枠体に緩く所定形状に組んで取り付けられていることが好ましい。
【0007】
本発明によればシカ、サル、イノシシ、ハクビシンやタヌキなどの害獣類の種類に応じて撃退金具を着脱して使用する。害獣類の種類に応じて効果が異なる場合にも対応可能にするためであるが、複数種類の撃退金具を枠体に装着しても良い。害獣類がワイヤに接触すると撃退金具がワイヤに沿って移動可能とされているので、従来の固定式のものと比較して、害獣類が撃退金具から逃げることが難しく、シカ、サルやイノシシなどでも学習することが難しくなる。また、本発明によれば、従来の固定式のものと比較して、ネットの隙間からの侵入を防止する確率が高くなる。
【0008】
本発明の害獣類侵入防止具は、前記ワイヤが所定方向に並列して配置されて所定の間隔で重ね合わされ、この重ね合わせ箇所を接合手段により接合して多数の所定形状の枠目が構成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、ワイヤを交差させて枠目構造を形成しなくとも、ワイヤを所定の方向に並列配置して、2本のワイヤを所定の間隔で重ね合わせて接合手段で接合するだけで、簡単に多数の所定形状の枠目を構成することができる。このようにして構成された枠目構造は、ワイヤを交差させる場合より一つ一つの枠目が安定しており、害獣類の接触によりワイヤに荷重がかかった場合でもその構造が偏ったりすることはない。
【0010】
本発明の害獣類侵入防止具は、前記外枠には、前記ワイヤを挿通させる挿通穴が形成されており、前記ワイヤが前記枠体に移動可能に取り付けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、ワイヤが枠体に形成された挿通穴を通って枠体内を移動可能に取り付けられる。これにより、ワイヤを緩く張ることができ、大きな移動が可能となる。その結果、害獣類がワイヤに荷重をかけると、ワイヤが不安定な動きをするため、ワイヤに取り付けられた撃退金具が予測不能な動きをする。したがって、比較的知能の高い害獣類が撃退金具に一度接触して痛み等を覚えて学習したとしても、予測不能な動きに対応でき難くする。また、ワイヤが重なり合うように緩く組まれることで、撃退金具が所定形状の頂点部近傍に配置された場合に、その頂点部のただ一点だけではなく、接合手段が配置された前記ワイヤの重ね合わせ箇所近傍を左右に移動することができ、害獣類と接触する可能性が高くなる。
【0012】
本発明の害獣類侵入防止具は、前記撃退金具の止め具は、断面C状に構成されて、その内部には空間が形成され、前記接合手段が配置された前記ワイヤの重ね合わせ箇所近傍を通過する構成であることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、撃退金具が断面C状に構成されることで、略菱形状に組まれるワイヤの重ね合わせ箇所である各頂点部に停止せずにその内部に形成された空間を各頂点部が通過することができる。したがって、各頂点部を跨いで片側からその反対側に害獣類が逃げたとしても、撃退金具が追いかけるように移動して、接触する可能性が高くなる。また、ワイヤが重なり合うように緩く組まれていることで、断面C状に構成された撃退金具が荷重方向に傾き、害獣類に接触して痛み等を与える確率が高くなる。この撃退金具の動きは、荷重をかける位置、荷重の重さ等により変動する予測不能なものであるため、知能の高い害獣類でも、撃退金具を避けることは難しいものとなる。
【0014】
本発明の害獣類侵入防止具は前記撃退金具の止め具は、断面C状に構成されて、その内部から外部に向かって当該先鋭突起物が突出して設けられ、当該先鋭突起物の先端が外方に向かうように支持する錘が当該断面C状の止め具内に配されていることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、撃退金具の内部から外部に向かって突出する針が、止め具内に配された錘で強固に固定されることで、撃退金具を外側に向かって支持するとともに、害獣類が撃退金具に強く接触しても針が外れたりすることがない。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、害獣類が前記ワイヤに接触すると当該ワイヤに取り付けられた前記撃退金具が移動可能であるから、シカやサルなどの害獣類の種類に応じて好適な先鋭部材からなる撃退金具を容易に着脱できるとともに、学習能力が高いといわれるサルであっても先鋭部材からなる撃退金具が接触する可能性を高くすることが可能である。また、本発明によれば、従来の固定式のものと比較して、ネットの隙間からの侵入を防止する確率が高くなる。
特に、断面C状に形成された撃退金具を用いることで、撃退金具が略菱形状に組まれる各頂点部に停止しないため、各頂点部を跨いで片側からその反対側に害獣類が逃げたとしても、撃退金具が追いかけるように移動して、撃退金具が接触する可能性を高くすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態の害獣類侵入防止具を説明する外観斜視図である。
【図2】図1の害獣類侵入防止具を模式的に示す正面図である。
【図3】図1の撃退金具を説明する斜視図であり、図3(a)は撃退金具の開閉部を開いた状態の図であり、図3(b)は開閉部を閉じた状態の図である。
【図4】上記撃退金具の他の例を説明する図であり、図4(a)はワイヤの移動を大きく許容する例の側面図であり、図4(b)は錘の間でワイヤを介在させる例の側面図である。
【図5】図1の害獣類侵入防止具に害獣類が荷重をかけた状態を説明する図であり、図5(a)はワイヤに接触した直後の状態を示す図であり、図5(b)はワイヤに沿って移動した後、撃退金具に接触した状態を示す図である。
【図6】図1の害獣類侵入防止具の設置状態を例示する図であり、図6(a)は正面図、図3(b)は側面図である。
【図7】本発明の他の実施形態の害獣類侵入防止具を模式的に示す正面図である。
【図8】本発明の他の実施形態の害獣類侵入防止具を模式的に示す正面図である。
【図9】本発明の他の実施形態の害獣類侵入防止具を模式的に示す正面図である。
【図10】本発明の他の実施形態の害獣類侵入防止具を模式的に示す正面図である。
【図11】本発明の他の実施形態の害獣類侵入防止具を模式的に示す正面図である。
【図12】従来技術の害獣類侵入防止具を説明する正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を図面を引用しながら説明する。
図1は本発明の実施形態の害獣類侵入防止具を説明する外観斜視図であり、図2は、図1の害獣類侵入防止具を模式的に示す正面図である。図3(a)(b)は、図1の撃退金具2を説明する斜視図である。
【0019】
本実施の形態の害獣類進入防止具1は、主に学習能力の高いサルが作物や住居などが荒らされる被害を防止するためのもので、ワイヤ3が略長方形状の枠体9内で所定形状に組んで構成され、図1及び図2に示すように、撃退金具2がワイヤ3に取り付けられている。
【0020】
撃退金具2は、図3に示すように、止め具4に針(先鋭突起物)5が設けられている。本実施の形態では、止め具4は、開閉部7を有する断面C状に構成されて、その内部から外部に向かって3本の針5が突出して設けられている。そして、止め具4の針5が断面C状の外方に向かうように支持する錘6が断面C状の止め具4内に配されている。止め具4の開閉部7をワイヤ3が通過することで、撃退金具2はワイヤ3に着脱自在に取り付けられている。この撃退金具2は、軟質の合成樹脂で構成されることで、ワイヤの動きに連動して柔軟に動くことができるが、材料はこれに限定されない。そして、撃退金具2は、図3(a)に示すように、止め具4の開閉部7を介してワイヤ3に取り付けた後、図3(b)に示すように止め具4の開閉部7をプラスチック溶接で接着して、溶接部7aとすることで、ワイヤ3の動きに対応しつつ、ワイヤ3から取り外れることがなくなる。
撃退金具2は、シカ、サル、イノシシ、ハクビシンやタヌキなどの害獣類に応じて作成することが好ましく、それを複数種類を用意して、ワイヤ3に装着させても良い。例えば、錘6には着色することもでき、この場合は、例えば、警戒色として赤色を用いて、視覚的にも侵入防止の効果を与えたり、赤色や紫色の果実や或いはブルーのぶどうの色等にして、これらによりサルを誘き寄せるようにしたりすることができる。さらに、錘6にすず等の音のでるものを用いることで、聴覚的にも侵入防止の効果を与えることができる。
【0021】
ワイヤ3は、支柱部材として枠体9内で所定方向に並列して配置されて、枠体9に形成された挿通穴10を挿通して、枠体9に移動可能に取り付けられる。なお、2本の支柱部材の間でも適用可能であり、図11に示すように、外枠や支柱部材としては、ワイヤ20を用いられることができる。
本実施の形態では、図2に示すように、枠体9内に4本のワイヤ3,3が並列して配置されている。そして、最上部に配されたワイヤ3は、まず、左側の枠体9aの挿通穴10を通り、上側の枠体9bの挿通穴10を順に通った後、右側の枠体9aの挿通穴10を通って、最後に左側の枠体9aの挿通穴10を通った後、クリップなどの締結部材12で締結されて枠体9に取り付けられる。中間部に配された2本のワイヤ3は、枠体9の左右の枠体9a、9aの挿通穴10を通って、締結部材12でそれぞれ締結され、枠体9に取り付けられる。最下部に配されたワイヤ3は、左側の枠体9aの挿通穴10を通り、右側の枠体9aの挿通穴10を通って、下側の枠体9bの挿通穴10を順に通った後、左側の枠体9aの挿通穴10を通った後、最後に締結部材12で締結されて枠体9に取り付けられる。ワイヤ3としては、細い径で強度が大きい材料、例えば安価なピアノ線などが用いられることができる。強度の大きいピアノ線を用いることで、ワイヤがサル等の害獣類によって仕切られて破損するのを防止することができる。これより、ワイヤ3を緩く張ることができるが、所定長さのものを使用するので、その長さ以上には緩まない。そして、害獣類がワイヤ3に荷重をかけると、ワイヤ3が不安定な動きをするため、ワイヤ3に取り付けられた撃退金具2が予測不能な動きをする。したがって、比較的知能の高い害獣類が撃退金具2に一度接触して痛み等を覚えて学習したとしても、予測不能な動きに対応できず、撃退金具2に接触することで侵入を防止することができる。
【0022】
上記ワイヤ3は、所定の間隔で重ね合わされ、図3に示すように、この重ね合わせ箇所13を接合手段11により接合される。本実施の形態では、図1に示すように、上下方向に隣接して並列配置された2本のワイヤ3が、それぞれ均等な間隔で重ね合わされて、この重ね合わせ箇所13を接合手段11により接合されて、重ね合わせ箇所13を頂点に持つ略菱形状の均一な枠目が構成されている。ワイヤ3は、害獣類の荷重がかかると隣接して並列配置された2本のワイヤ3が略菱形状の各頂点部13の近傍で重なり合うように、緩く組まれている。
これにより、ワイヤ3を交差させて枠目構造を形成しなくとも、ワイヤ3を所定の方向に並列配置して、2本のワイヤ3を所定の間隔で重ね合わせて接合手段11で接合するだけで、簡単に多数の略菱形状の枠目を構成することができる。そして、枠目構造が接合手段11によって接合されて形成されることで、ワイヤ3をただ交差させるだけの場合より安定したものとなり、害獣類の接触により撃退金具2の配列が偏らない安定したものとなる。また、撃退金具2の針5の長さを長くすると、上記枠目の隙間からの侵入を防止する確率が高くなる。
【0023】
そして、撃退金具2は、ワイヤ3の重ね合わせ箇所13に配置される。撃退金具2の止め具4は、断面C状に構成されており、その内部に空間8が形成されている。撃退金具2は、この空間8を介して、接合手段11が配置されたワイヤ3の重ね合わせ箇所13の近傍を通過できる構成である。これより、撃退金具2は、略菱形状に組まれるワイヤ3の重ね合わせ箇所13である各頂点部13に停止せずに、その内部に形成された空間8を各頂点部13が通過することができる。したがって、各頂点部13を跨いで片側からその反対側に害獣類が逃げたとしても、撃退金具2が追いかけるように移動して、接触する可能性が高くなる。また、ワイヤ3が重なり合うように緩く組まれていることで、断面C状に構成された撃退金具2が荷重方向に傾き、害獣類に接触して痛み等を与える確率が高くなる。この撃退金具2の動きは、荷重をかける位置、荷重の重さ等により変動する予測不能なものであるため、知能の高い害獣類でも、撃退金具2を避けることは難しいものとなる。
ここで、図4は、撃退金具2の他の例を示し、図4(a)に示す撃退金具22aは、接合手段11が設けられておらず、その分、断面C状の止め具4内において、ワイヤ3の移動する許容度を大きくしている。図4(b)に示す撃退金具22bは、錘6が大きなもので、3つの錘が接触する隙間において、ワイヤ3の移動する許容するものである。
【0024】
図5は、本発明の害獣類侵入防止具1に害獣類が荷重をかけた状態を説明する図であり、図5(a)はワイヤ2に接触した直後の状態を示す図であり、図5(b)はワイヤ2に沿って移動した後、撃退金具に接触した状態を示す図である。
図5(a)に示すように、ワイヤ3に害獣類(サルの手や足)14が接触して荷重をかけると、ワイヤ3は、緩く張られており、また、細い線径であることで、害獣類3はワイヤ上を滑ってしまう。その結果、害獣類14は、ワイヤ3の略菱形状の一辺の上部で安定してじっとしていることはできず、図5(a)の矢印の方向へとワイヤ3上を滑って、ワイヤ3の重ね合わせ箇所13である各頂点部13の近傍へと移動する。そうすると、ワイヤ3により構成された略菱形状の形状は変形して、撃退金具2は、図5(b)の矢印の方向(半時計周り)に回転して、害獣類14に接触する。その結果、撃退金具の針5が害獣類14に刺さり、害獣類12に痛み等を与えることができる。実際には、接触してからワイヤ上を滑る速度が速いことため、刺さる度合いも痛み等を与える効果が大きくなる。
なお、サルが枠体(柵)9を乗り越えようとするとき、通常の金網ではワイヤの交差する安定感のある箇所に手や足を掛けることが多いが、本実施の形態では、重ね合わせ箇所13には、撃退金具2が配されているので、手や足を掛けることができず、その周辺を探そうとする。しかし、周辺に手や足を掛けても、緩くワイヤ3が配されていること等から、手や足が重ね合わせ箇所13に移動するので、どこも手や足を掛けることができなくなる。
【0025】
害獣類侵入防止具1の設置例を、図6に示す。害獣類侵入防止具1は、枠体9の下方に備えられた固定ピン15の先端を土台16中に埋め込むことによって固定設置される。そして、上方の枠体9に吊下用ワイヤ17を備えて、この吊下用ワイヤ17を柱18から水平方向に突出して固定された吊下用パイプ19に取り付け固定する。これにより、上下方向で安定して設置されることができる。
【0026】
本発明の害獣類侵入防止具の他の実施例を図7に示す。図7に示すように、害獣類侵入防止具21は、上述した害獣類侵入防止具1の縦横を反対にして構成したものである。すなわち、上述した害獣類侵入防止具1では、撃退金具2は、止め具4が有する内部の空間8をワイヤ3が左右に通過するよう取り付けられていたのに対し、本実施の形態の獣類侵入防止具21では、上下に通過するよう取り付けられている。この害獣類侵入防止具21では、撃退金具2の針5が左右方向に配されて、荷重がかかった場合に、図7に示すように、ワイヤ3を中心に回転する。
【0027】
また、本発明の害獣類侵入防止具の他の実施例を図8に示す。本発明の害獣類侵入防止具31は、上述した害獣類侵入防止具1では4本のワイヤ3が並列配置され各4箇所で締結されていたのに対し、1本のワイヤ3が並列配置され1箇所で締結されている。これにより、ワイヤ3の取り付け箇所が少なくなることで、取り付けが容易となると共に、ワイヤ3の締結が外れる危険性を減少させることができる。
【0028】
また、本発明の害獣類侵入防止具の他の実施例を図9に示す。本発明の害獣類侵入防止具41は、上述した害獣類侵入防止具1では均一な略菱形状の枠目が構成されていたのに対し、大小の略菱形状が重なって枠目が構成されている。そして、小さな略菱形状の各枠目にも撃退金具2が配置されている。これにより、枠目構造が細かくなって、撃退金具2が多く配されるので、痛み等を与え、侵入防止の確率が高くなる。
【0029】
本発明の害獣類侵入防止具の他の実施例を図10に示す。図10に示すように、害獣類侵入防止具51は、上述した害獣類侵入防止具1ではワイヤ3が重ね合わせ箇所13で接合手段11により連結固定されて枠目構造が形成されていたのに対し、ワイヤ3が連結固定されずに枠目構造が形成されている。すなわち、本実施の害獣類侵入防止具51では、ワイヤ3を交差させて枠体9に取り付ける。そして、ワイヤ3の交差点51に撃退金具2を配置する。その結果、本実施の害獣類侵入防止具51では、害獣類がワイヤ3に手や足をかけると、ワイヤ3は接合手段11で接合されていないので、各ワイヤ3を障害なく、上方から下方まで滑り落ちることとなる。下方まで滑り落ちた害獣類は、下方で堆積した撃退金具2により痛み等を受ける。なお、交差点52では、撃退金具2が配置されて接合手段11の役割を担っているので、部品点数の減少化となる。そして、上記撃退金具2と、他の撃退金具22a,22bを混在させている。
【0030】
本発明の害獣類侵入防止具の他の実施例を図11に示す。図11に示すように、害獣類侵入防止具61は、上述した害獣類侵入防止具1では支柱部材として外枠9が用いられていたのに対し、ワイヤ20が枠体として用いられている。すなわち、本実施の害獣類侵入防止具61では、ワイヤ3が外枠としてのワイヤ20に引っ掛けられている。本実施の害獣類侵入防止具61では、ワイヤ3を枠体9の挿通穴10に挿通させなくてよいので、容易にワイヤ3を支柱部材に取り付けられると共に、ワイヤ3がワイヤ20内での動く自由度が増すとともに、外枠としてのワイヤ20とともにワイヤ3が移動する割合が高くなる。
【0031】
以上、本実施の形態では、適用される害獣類として主に、シカ、サル、イノシシ、ハクビシンおよびタヌキなどを例に説明したが、撃退金具の構成を種々変更可能であるから、広く害獣類に適用可能である。すなわち、カラスのような鳥類に対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0032】
1,11,21,31,41,51,61 害獣類侵入防止具、
2,22a,22b 撃退金具、
3 ワイヤ、
4 止め具、
5 針(先鋭突起物)、
6 錘、
7 止め具の開閉部
7a 止め具の溶接部
8 止め具の空間、
9,9a,9b 枠体(外枠)、
10 挿通穴、
11 接合手段、
12 締結部材、
13 重ね合わせ箇所(頂点部)、
14 害獣類、
15 固定ピン、
16 土中、
17 吊り下げ用ワイヤ、
18 柱、
19 吊り下げ用パイプ、
20 支柱ワイヤ
【技術分野】
【0001】
本発明は、シカ、サル、イノシシ、ハクビシンやタヌキなどの害獣類により作物や住居などが荒らされる被害を防止する害獣類侵入防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、農場、果樹菜園等では、シカ、サル、イノシシ、ハクビシンやタヌキといった害獣類による作物の被害を防ぐために、農場、果樹園等の周りを害獣類侵入防止具で取り囲むことが行われる。
従来、この種の害獣類侵入防止具としては、図12に示すように、所定の間隔で植設された主柱102A、102Aと、この主柱に張設された防止ネット102Bとから構成されるものがある。この害獣類侵入防止具101では、防止ネット102Bが線径4mmの太い線種のワイヤ等を用いて、害獣類が接触しても防止ネット102Bの網目構造が崩れないように強く張り詰めて構成されている。これにより、害獣類が害獣類侵入防止具101に接触して揺らしたりしても、網目を広げて侵入する穴を作ったりすることができない強固な構造となっている(特許文献1、2、4)。そして、このような強固な構造の害獣類侵入防止具に、例えば、有刺鉄線の刺(先鋭突起物)のような痛み等を与える撃退金具を配置して、侵入を防止する工夫が多くなされている(特許文献3、5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平2−120172号
【特許文献2】特開2009−183166号
【特許文献3】特開2007−175041号
【特許文献4】特開平10−4854号
【特許文献5】実用新案登録第3045775号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の害獣類侵入防止具では、撃退金具が固定されているか、若しくはその動きが一定の予測可能なものであるため、害獣類が撃退金具を避けて接触する確率が低く、痛み等を与える効果は非常に小さいという問題があった。
特に、害獣類の中には、サルのように学習能力が高い害獣類の場合は、一度有刺鉄線の刺のような撃退金具に接触すれば痛み等を覚えて、次にはその有刺鉄線の刺をずらしたり取ったりなどすることができ、ワイヤに接触してよじ登り、柵を越えて侵入することができてしまう。その結果、従来の害獣類侵入防止具では、どのような害獣類に対しても、特に知能が比較的高い害獣類に対して、確実に痛み等を与えて撃退させることはできないという問題があった。タヌキヤやハクビシンについては、ネットの隙間等、頭部が潜れる大きさの隙間から侵入できるので、小さな穴も補修する必要がある。
一方、電流線による害獣類侵入防止具においては、設置面積が広いと、その費用が高く漏電防止のための草刈と電源を必要をしている。また、破損に対する修理費用も高く、そのコストに比べて侵入防止効果は薄く、非常に効率が悪いという問題があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、比較的簡単な構造で、シカ、サル、イノシシ、ハクビシンやタヌキなどの害獣類の種類に応じて好適な先鋭部材からなる撃退金具を容易に着脱できるとともに、学習能力が高いといわれるサルであっても先鋭部材からなる撃退金具が接触する可能性が高い害獣類防止具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の害獣類侵入防止具は、外枠や支柱部材やワイヤ等の所定の枠体にワイヤを所定形状に組んで取り付けられて、シカ、サル、イノシシ、ハクビシンやタヌキなどの害獣類により作物や住居などが荒らされる被害を防止する害獣類侵入防止具において、前記ワイヤに、止め具に先鋭突起物を有する撃退金具が着脱自在に取り付けられて、害獣類が前記ワイヤに接触すると当該ワイヤに取り付けられた前記撃退金具が移動可能であることを特徴とする。ここで、ワイヤは、外枠や支柱部材やワイヤ等の所定の枠体に緩く所定形状に組んで取り付けられていることが好ましい。
【0007】
本発明によればシカ、サル、イノシシ、ハクビシンやタヌキなどの害獣類の種類に応じて撃退金具を着脱して使用する。害獣類の種類に応じて効果が異なる場合にも対応可能にするためであるが、複数種類の撃退金具を枠体に装着しても良い。害獣類がワイヤに接触すると撃退金具がワイヤに沿って移動可能とされているので、従来の固定式のものと比較して、害獣類が撃退金具から逃げることが難しく、シカ、サルやイノシシなどでも学習することが難しくなる。また、本発明によれば、従来の固定式のものと比較して、ネットの隙間からの侵入を防止する確率が高くなる。
【0008】
本発明の害獣類侵入防止具は、前記ワイヤが所定方向に並列して配置されて所定の間隔で重ね合わされ、この重ね合わせ箇所を接合手段により接合して多数の所定形状の枠目が構成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、ワイヤを交差させて枠目構造を形成しなくとも、ワイヤを所定の方向に並列配置して、2本のワイヤを所定の間隔で重ね合わせて接合手段で接合するだけで、簡単に多数の所定形状の枠目を構成することができる。このようにして構成された枠目構造は、ワイヤを交差させる場合より一つ一つの枠目が安定しており、害獣類の接触によりワイヤに荷重がかかった場合でもその構造が偏ったりすることはない。
【0010】
本発明の害獣類侵入防止具は、前記外枠には、前記ワイヤを挿通させる挿通穴が形成されており、前記ワイヤが前記枠体に移動可能に取り付けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、ワイヤが枠体に形成された挿通穴を通って枠体内を移動可能に取り付けられる。これにより、ワイヤを緩く張ることができ、大きな移動が可能となる。その結果、害獣類がワイヤに荷重をかけると、ワイヤが不安定な動きをするため、ワイヤに取り付けられた撃退金具が予測不能な動きをする。したがって、比較的知能の高い害獣類が撃退金具に一度接触して痛み等を覚えて学習したとしても、予測不能な動きに対応でき難くする。また、ワイヤが重なり合うように緩く組まれることで、撃退金具が所定形状の頂点部近傍に配置された場合に、その頂点部のただ一点だけではなく、接合手段が配置された前記ワイヤの重ね合わせ箇所近傍を左右に移動することができ、害獣類と接触する可能性が高くなる。
【0012】
本発明の害獣類侵入防止具は、前記撃退金具の止め具は、断面C状に構成されて、その内部には空間が形成され、前記接合手段が配置された前記ワイヤの重ね合わせ箇所近傍を通過する構成であることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、撃退金具が断面C状に構成されることで、略菱形状に組まれるワイヤの重ね合わせ箇所である各頂点部に停止せずにその内部に形成された空間を各頂点部が通過することができる。したがって、各頂点部を跨いで片側からその反対側に害獣類が逃げたとしても、撃退金具が追いかけるように移動して、接触する可能性が高くなる。また、ワイヤが重なり合うように緩く組まれていることで、断面C状に構成された撃退金具が荷重方向に傾き、害獣類に接触して痛み等を与える確率が高くなる。この撃退金具の動きは、荷重をかける位置、荷重の重さ等により変動する予測不能なものであるため、知能の高い害獣類でも、撃退金具を避けることは難しいものとなる。
【0014】
本発明の害獣類侵入防止具は前記撃退金具の止め具は、断面C状に構成されて、その内部から外部に向かって当該先鋭突起物が突出して設けられ、当該先鋭突起物の先端が外方に向かうように支持する錘が当該断面C状の止め具内に配されていることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、撃退金具の内部から外部に向かって突出する針が、止め具内に配された錘で強固に固定されることで、撃退金具を外側に向かって支持するとともに、害獣類が撃退金具に強く接触しても針が外れたりすることがない。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、害獣類が前記ワイヤに接触すると当該ワイヤに取り付けられた前記撃退金具が移動可能であるから、シカやサルなどの害獣類の種類に応じて好適な先鋭部材からなる撃退金具を容易に着脱できるとともに、学習能力が高いといわれるサルであっても先鋭部材からなる撃退金具が接触する可能性を高くすることが可能である。また、本発明によれば、従来の固定式のものと比較して、ネットの隙間からの侵入を防止する確率が高くなる。
特に、断面C状に形成された撃退金具を用いることで、撃退金具が略菱形状に組まれる各頂点部に停止しないため、各頂点部を跨いで片側からその反対側に害獣類が逃げたとしても、撃退金具が追いかけるように移動して、撃退金具が接触する可能性を高くすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態の害獣類侵入防止具を説明する外観斜視図である。
【図2】図1の害獣類侵入防止具を模式的に示す正面図である。
【図3】図1の撃退金具を説明する斜視図であり、図3(a)は撃退金具の開閉部を開いた状態の図であり、図3(b)は開閉部を閉じた状態の図である。
【図4】上記撃退金具の他の例を説明する図であり、図4(a)はワイヤの移動を大きく許容する例の側面図であり、図4(b)は錘の間でワイヤを介在させる例の側面図である。
【図5】図1の害獣類侵入防止具に害獣類が荷重をかけた状態を説明する図であり、図5(a)はワイヤに接触した直後の状態を示す図であり、図5(b)はワイヤに沿って移動した後、撃退金具に接触した状態を示す図である。
【図6】図1の害獣類侵入防止具の設置状態を例示する図であり、図6(a)は正面図、図3(b)は側面図である。
【図7】本発明の他の実施形態の害獣類侵入防止具を模式的に示す正面図である。
【図8】本発明の他の実施形態の害獣類侵入防止具を模式的に示す正面図である。
【図9】本発明の他の実施形態の害獣類侵入防止具を模式的に示す正面図である。
【図10】本発明の他の実施形態の害獣類侵入防止具を模式的に示す正面図である。
【図11】本発明の他の実施形態の害獣類侵入防止具を模式的に示す正面図である。
【図12】従来技術の害獣類侵入防止具を説明する正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を図面を引用しながら説明する。
図1は本発明の実施形態の害獣類侵入防止具を説明する外観斜視図であり、図2は、図1の害獣類侵入防止具を模式的に示す正面図である。図3(a)(b)は、図1の撃退金具2を説明する斜視図である。
【0019】
本実施の形態の害獣類進入防止具1は、主に学習能力の高いサルが作物や住居などが荒らされる被害を防止するためのもので、ワイヤ3が略長方形状の枠体9内で所定形状に組んで構成され、図1及び図2に示すように、撃退金具2がワイヤ3に取り付けられている。
【0020】
撃退金具2は、図3に示すように、止め具4に針(先鋭突起物)5が設けられている。本実施の形態では、止め具4は、開閉部7を有する断面C状に構成されて、その内部から外部に向かって3本の針5が突出して設けられている。そして、止め具4の針5が断面C状の外方に向かうように支持する錘6が断面C状の止め具4内に配されている。止め具4の開閉部7をワイヤ3が通過することで、撃退金具2はワイヤ3に着脱自在に取り付けられている。この撃退金具2は、軟質の合成樹脂で構成されることで、ワイヤの動きに連動して柔軟に動くことができるが、材料はこれに限定されない。そして、撃退金具2は、図3(a)に示すように、止め具4の開閉部7を介してワイヤ3に取り付けた後、図3(b)に示すように止め具4の開閉部7をプラスチック溶接で接着して、溶接部7aとすることで、ワイヤ3の動きに対応しつつ、ワイヤ3から取り外れることがなくなる。
撃退金具2は、シカ、サル、イノシシ、ハクビシンやタヌキなどの害獣類に応じて作成することが好ましく、それを複数種類を用意して、ワイヤ3に装着させても良い。例えば、錘6には着色することもでき、この場合は、例えば、警戒色として赤色を用いて、視覚的にも侵入防止の効果を与えたり、赤色や紫色の果実や或いはブルーのぶどうの色等にして、これらによりサルを誘き寄せるようにしたりすることができる。さらに、錘6にすず等の音のでるものを用いることで、聴覚的にも侵入防止の効果を与えることができる。
【0021】
ワイヤ3は、支柱部材として枠体9内で所定方向に並列して配置されて、枠体9に形成された挿通穴10を挿通して、枠体9に移動可能に取り付けられる。なお、2本の支柱部材の間でも適用可能であり、図11に示すように、外枠や支柱部材としては、ワイヤ20を用いられることができる。
本実施の形態では、図2に示すように、枠体9内に4本のワイヤ3,3が並列して配置されている。そして、最上部に配されたワイヤ3は、まず、左側の枠体9aの挿通穴10を通り、上側の枠体9bの挿通穴10を順に通った後、右側の枠体9aの挿通穴10を通って、最後に左側の枠体9aの挿通穴10を通った後、クリップなどの締結部材12で締結されて枠体9に取り付けられる。中間部に配された2本のワイヤ3は、枠体9の左右の枠体9a、9aの挿通穴10を通って、締結部材12でそれぞれ締結され、枠体9に取り付けられる。最下部に配されたワイヤ3は、左側の枠体9aの挿通穴10を通り、右側の枠体9aの挿通穴10を通って、下側の枠体9bの挿通穴10を順に通った後、左側の枠体9aの挿通穴10を通った後、最後に締結部材12で締結されて枠体9に取り付けられる。ワイヤ3としては、細い径で強度が大きい材料、例えば安価なピアノ線などが用いられることができる。強度の大きいピアノ線を用いることで、ワイヤがサル等の害獣類によって仕切られて破損するのを防止することができる。これより、ワイヤ3を緩く張ることができるが、所定長さのものを使用するので、その長さ以上には緩まない。そして、害獣類がワイヤ3に荷重をかけると、ワイヤ3が不安定な動きをするため、ワイヤ3に取り付けられた撃退金具2が予測不能な動きをする。したがって、比較的知能の高い害獣類が撃退金具2に一度接触して痛み等を覚えて学習したとしても、予測不能な動きに対応できず、撃退金具2に接触することで侵入を防止することができる。
【0022】
上記ワイヤ3は、所定の間隔で重ね合わされ、図3に示すように、この重ね合わせ箇所13を接合手段11により接合される。本実施の形態では、図1に示すように、上下方向に隣接して並列配置された2本のワイヤ3が、それぞれ均等な間隔で重ね合わされて、この重ね合わせ箇所13を接合手段11により接合されて、重ね合わせ箇所13を頂点に持つ略菱形状の均一な枠目が構成されている。ワイヤ3は、害獣類の荷重がかかると隣接して並列配置された2本のワイヤ3が略菱形状の各頂点部13の近傍で重なり合うように、緩く組まれている。
これにより、ワイヤ3を交差させて枠目構造を形成しなくとも、ワイヤ3を所定の方向に並列配置して、2本のワイヤ3を所定の間隔で重ね合わせて接合手段11で接合するだけで、簡単に多数の略菱形状の枠目を構成することができる。そして、枠目構造が接合手段11によって接合されて形成されることで、ワイヤ3をただ交差させるだけの場合より安定したものとなり、害獣類の接触により撃退金具2の配列が偏らない安定したものとなる。また、撃退金具2の針5の長さを長くすると、上記枠目の隙間からの侵入を防止する確率が高くなる。
【0023】
そして、撃退金具2は、ワイヤ3の重ね合わせ箇所13に配置される。撃退金具2の止め具4は、断面C状に構成されており、その内部に空間8が形成されている。撃退金具2は、この空間8を介して、接合手段11が配置されたワイヤ3の重ね合わせ箇所13の近傍を通過できる構成である。これより、撃退金具2は、略菱形状に組まれるワイヤ3の重ね合わせ箇所13である各頂点部13に停止せずに、その内部に形成された空間8を各頂点部13が通過することができる。したがって、各頂点部13を跨いで片側からその反対側に害獣類が逃げたとしても、撃退金具2が追いかけるように移動して、接触する可能性が高くなる。また、ワイヤ3が重なり合うように緩く組まれていることで、断面C状に構成された撃退金具2が荷重方向に傾き、害獣類に接触して痛み等を与える確率が高くなる。この撃退金具2の動きは、荷重をかける位置、荷重の重さ等により変動する予測不能なものであるため、知能の高い害獣類でも、撃退金具2を避けることは難しいものとなる。
ここで、図4は、撃退金具2の他の例を示し、図4(a)に示す撃退金具22aは、接合手段11が設けられておらず、その分、断面C状の止め具4内において、ワイヤ3の移動する許容度を大きくしている。図4(b)に示す撃退金具22bは、錘6が大きなもので、3つの錘が接触する隙間において、ワイヤ3の移動する許容するものである。
【0024】
図5は、本発明の害獣類侵入防止具1に害獣類が荷重をかけた状態を説明する図であり、図5(a)はワイヤ2に接触した直後の状態を示す図であり、図5(b)はワイヤ2に沿って移動した後、撃退金具に接触した状態を示す図である。
図5(a)に示すように、ワイヤ3に害獣類(サルの手や足)14が接触して荷重をかけると、ワイヤ3は、緩く張られており、また、細い線径であることで、害獣類3はワイヤ上を滑ってしまう。その結果、害獣類14は、ワイヤ3の略菱形状の一辺の上部で安定してじっとしていることはできず、図5(a)の矢印の方向へとワイヤ3上を滑って、ワイヤ3の重ね合わせ箇所13である各頂点部13の近傍へと移動する。そうすると、ワイヤ3により構成された略菱形状の形状は変形して、撃退金具2は、図5(b)の矢印の方向(半時計周り)に回転して、害獣類14に接触する。その結果、撃退金具の針5が害獣類14に刺さり、害獣類12に痛み等を与えることができる。実際には、接触してからワイヤ上を滑る速度が速いことため、刺さる度合いも痛み等を与える効果が大きくなる。
なお、サルが枠体(柵)9を乗り越えようとするとき、通常の金網ではワイヤの交差する安定感のある箇所に手や足を掛けることが多いが、本実施の形態では、重ね合わせ箇所13には、撃退金具2が配されているので、手や足を掛けることができず、その周辺を探そうとする。しかし、周辺に手や足を掛けても、緩くワイヤ3が配されていること等から、手や足が重ね合わせ箇所13に移動するので、どこも手や足を掛けることができなくなる。
【0025】
害獣類侵入防止具1の設置例を、図6に示す。害獣類侵入防止具1は、枠体9の下方に備えられた固定ピン15の先端を土台16中に埋め込むことによって固定設置される。そして、上方の枠体9に吊下用ワイヤ17を備えて、この吊下用ワイヤ17を柱18から水平方向に突出して固定された吊下用パイプ19に取り付け固定する。これにより、上下方向で安定して設置されることができる。
【0026】
本発明の害獣類侵入防止具の他の実施例を図7に示す。図7に示すように、害獣類侵入防止具21は、上述した害獣類侵入防止具1の縦横を反対にして構成したものである。すなわち、上述した害獣類侵入防止具1では、撃退金具2は、止め具4が有する内部の空間8をワイヤ3が左右に通過するよう取り付けられていたのに対し、本実施の形態の獣類侵入防止具21では、上下に通過するよう取り付けられている。この害獣類侵入防止具21では、撃退金具2の針5が左右方向に配されて、荷重がかかった場合に、図7に示すように、ワイヤ3を中心に回転する。
【0027】
また、本発明の害獣類侵入防止具の他の実施例を図8に示す。本発明の害獣類侵入防止具31は、上述した害獣類侵入防止具1では4本のワイヤ3が並列配置され各4箇所で締結されていたのに対し、1本のワイヤ3が並列配置され1箇所で締結されている。これにより、ワイヤ3の取り付け箇所が少なくなることで、取り付けが容易となると共に、ワイヤ3の締結が外れる危険性を減少させることができる。
【0028】
また、本発明の害獣類侵入防止具の他の実施例を図9に示す。本発明の害獣類侵入防止具41は、上述した害獣類侵入防止具1では均一な略菱形状の枠目が構成されていたのに対し、大小の略菱形状が重なって枠目が構成されている。そして、小さな略菱形状の各枠目にも撃退金具2が配置されている。これにより、枠目構造が細かくなって、撃退金具2が多く配されるので、痛み等を与え、侵入防止の確率が高くなる。
【0029】
本発明の害獣類侵入防止具の他の実施例を図10に示す。図10に示すように、害獣類侵入防止具51は、上述した害獣類侵入防止具1ではワイヤ3が重ね合わせ箇所13で接合手段11により連結固定されて枠目構造が形成されていたのに対し、ワイヤ3が連結固定されずに枠目構造が形成されている。すなわち、本実施の害獣類侵入防止具51では、ワイヤ3を交差させて枠体9に取り付ける。そして、ワイヤ3の交差点51に撃退金具2を配置する。その結果、本実施の害獣類侵入防止具51では、害獣類がワイヤ3に手や足をかけると、ワイヤ3は接合手段11で接合されていないので、各ワイヤ3を障害なく、上方から下方まで滑り落ちることとなる。下方まで滑り落ちた害獣類は、下方で堆積した撃退金具2により痛み等を受ける。なお、交差点52では、撃退金具2が配置されて接合手段11の役割を担っているので、部品点数の減少化となる。そして、上記撃退金具2と、他の撃退金具22a,22bを混在させている。
【0030】
本発明の害獣類侵入防止具の他の実施例を図11に示す。図11に示すように、害獣類侵入防止具61は、上述した害獣類侵入防止具1では支柱部材として外枠9が用いられていたのに対し、ワイヤ20が枠体として用いられている。すなわち、本実施の害獣類侵入防止具61では、ワイヤ3が外枠としてのワイヤ20に引っ掛けられている。本実施の害獣類侵入防止具61では、ワイヤ3を枠体9の挿通穴10に挿通させなくてよいので、容易にワイヤ3を支柱部材に取り付けられると共に、ワイヤ3がワイヤ20内での動く自由度が増すとともに、外枠としてのワイヤ20とともにワイヤ3が移動する割合が高くなる。
【0031】
以上、本実施の形態では、適用される害獣類として主に、シカ、サル、イノシシ、ハクビシンおよびタヌキなどを例に説明したが、撃退金具の構成を種々変更可能であるから、広く害獣類に適用可能である。すなわち、カラスのような鳥類に対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0032】
1,11,21,31,41,51,61 害獣類侵入防止具、
2,22a,22b 撃退金具、
3 ワイヤ、
4 止め具、
5 針(先鋭突起物)、
6 錘、
7 止め具の開閉部
7a 止め具の溶接部
8 止め具の空間、
9,9a,9b 枠体(外枠)、
10 挿通穴、
11 接合手段、
12 締結部材、
13 重ね合わせ箇所(頂点部)、
14 害獣類、
15 固定ピン、
16 土中、
17 吊り下げ用ワイヤ、
18 柱、
19 吊り下げ用パイプ、
20 支柱ワイヤ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外枠や支柱部材やワイヤ等の所定の枠体にワイヤを所定形状に組んで取り付けられて、シカ、サル、イノシシ、ハクビシンやタヌキなどにより作物や住居などが荒らされる被害を防止する害獣類侵入防止具において、
前記ワイヤに、止め具に先鋭突起物を有する撃退金具が着脱自在に取り付けられて、害獣類が前記ワイヤに接触すると当該ワイヤに取り付けられた前記撃退金具が移動可能であることを特徴とする害獣類侵入防止具。
【請求項2】
前記ワイヤが所定方向に並列して配置されて所定の間隔で重ね合わされ、この重ね合わせ箇所を接合手段により接合して多数の所定形状の枠目が構成されていることを特徴とする請求項1記載の害獣類侵入防止具。
【請求項3】
前記所定の枠体に、ワイヤを挿通させる挿通穴が形成されており、前記ワイヤが前記枠体に移動可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の害獣類侵入防止具。
【請求項4】
前記撃退金具の止め具は、断面C状に構成されて、その内部には空間が形成され、前記接合手段が配置された前記ワイヤの重ね合わせ箇所近傍を通過する構成であることを特徴とする請求項1記載の害獣類侵入防止具。
【請求項5】
前記撃退金具の止め具は、断面C状に構成されて、その内部から外部に向かって当該先鋭突起物が突出して設けられ、当該先鋭突起物の先端が外方に向かうように支持する錘が当該断面C状の止め具内に配されていることを特徴とする請求項4記載の害獣類侵入防止具。
【請求項1】
外枠や支柱部材やワイヤ等の所定の枠体にワイヤを所定形状に組んで取り付けられて、シカ、サル、イノシシ、ハクビシンやタヌキなどにより作物や住居などが荒らされる被害を防止する害獣類侵入防止具において、
前記ワイヤに、止め具に先鋭突起物を有する撃退金具が着脱自在に取り付けられて、害獣類が前記ワイヤに接触すると当該ワイヤに取り付けられた前記撃退金具が移動可能であることを特徴とする害獣類侵入防止具。
【請求項2】
前記ワイヤが所定方向に並列して配置されて所定の間隔で重ね合わされ、この重ね合わせ箇所を接合手段により接合して多数の所定形状の枠目が構成されていることを特徴とする請求項1記載の害獣類侵入防止具。
【請求項3】
前記所定の枠体に、ワイヤを挿通させる挿通穴が形成されており、前記ワイヤが前記枠体に移動可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の害獣類侵入防止具。
【請求項4】
前記撃退金具の止め具は、断面C状に構成されて、その内部には空間が形成され、前記接合手段が配置された前記ワイヤの重ね合わせ箇所近傍を通過する構成であることを特徴とする請求項1記載の害獣類侵入防止具。
【請求項5】
前記撃退金具の止め具は、断面C状に構成されて、その内部から外部に向かって当該先鋭突起物が突出して設けられ、当該先鋭突起物の先端が外方に向かうように支持する錘が当該断面C状の止め具内に配されていることを特徴とする請求項4記載の害獣類侵入防止具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−249609(P2012−249609A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126549(P2011−126549)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(511137231)株式会社KAHUKA21 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(511137231)株式会社KAHUKA21 (1)
【Fターム(参考)】
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