説明

害虫捕獲器および害虫捕獲方法

【課題】容器内に誘引された害虫を効果的に捕獲及び/又は防除できる害虫捕獲器および害虫捕獲方法を提供する。
【解決手段】開口部を有する容器と、前記容器に層状に収容され、害虫誘引剤を含有した多数のゲル粒とを備えた害虫捕獲器であって、前記層状のゲル粒の間に、害虫が進入可能な空隙を設けることを特徴とする、害虫捕獲器に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハエ、コバエ等の害虫を容器内に誘引して捕獲及び/又は防除するための害虫捕獲器および害虫捕獲方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、害虫駆除装置として殺虫成分を周囲雰囲気中に拡散するものが使用されている。このような装置には、電力を使用するものや、発熱物質を使用するものがある。
他方、害虫捕獲器として、内部に害虫誘引剤を含む液体を入れた容器を備えたものが用いられている。このような害虫捕獲器は使用時に、前記容器に設けられた開口から害虫誘引剤を周囲雰囲気中に放出する。すると、害虫誘引剤によって誘引された害虫が、前記開口を介して前記容器内に入るとともに前記害虫誘引液にひたって溺死したり、併用されている殺虫剤によって殺虫されたりする(特許文献1)。
また、粘着ネットや粘着層からなる粘着捕獲部位で接触したハエを粘着して捕獲する捕獲器が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−70403号公報
【特許文献2】特開2002−142643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では誘引剤が液体であるため取り扱いにくく、内容物が漏洩しやすいという問題があった。また、害虫を捕獲することは難しく、粘着シート等の捕獲具を別途必要とするものであった。一方、特許文献2のように、誘引液や粘着シート、粘着捕獲部位を備えた捕獲器であっても、これらの表面に害虫が止まっても害虫の脚先の細かい毛や爪が接触しているに過ぎないため、十分な捕獲力は得られず再び脱出してしまうといった問題があった。
そこで本発明は前記問題に鑑み、容器内に誘引された害虫を効果的に捕獲及び/又は防除できる害虫捕獲器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は下記の害虫捕獲器および害虫捕獲方法に関する。
(1)開口部を有する容器と、
前記容器に層状に収容され、害虫誘引剤を含有した多数のゲル粒とを備えた害虫捕獲器であって、
前記層状のゲル粒の間に、害虫が進入可能な空隙を設けることを特徴とする、害虫捕獲器。
(2)開口部を有する容器と、
前記容器内に収容され、害虫誘引剤を含有した害虫誘引部材と、
前記容器内において前記開口部と害虫誘引部材との間に層状に収容された多数のゲル粒とを備えた害虫捕獲器であって、
前記層状のゲル粒の間に、害虫が進入可能な空隙を設けることを特徴とする、害虫捕獲器。
(3)前記ゲル粒のサイズが5〜25mmであることを特徴とする、(1)または(2)に記載の害虫捕獲器。
(4)前記ゲル粒の数が50〜200/100cmであることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の害虫捕獲器。
(5)ゲル粒を用い害虫を捕獲する方法であって、少なくとも一面に開口部を有する容器内に、多数のゲル粒を収容し、前記ゲル粒間に空隙を有するゲル粒層を形成し、害虫を前記ゲル粒層内部にまで潜り込ませ、後戻り不可能とさせることで捕獲することを特徴とする、害虫捕獲方法。
(6)ゲル粒を用い害虫を捕獲する方法であって、少なくとも一面に開口部を有する容器内に害虫誘引部材と多数のゲル粒とを収容し、前記開口部と害虫誘引部材との間に、前記ゲル粒間に空隙を有するゲル粒層を形成し、前記開口部から進入した害虫が害虫誘引部材に向かう経路中にゲル粒層が存在することで害虫を捕獲することを特徴とする、害虫捕獲方法。
【0006】
本発明の害虫捕獲器において、容器内には、多数のゲル粒が層状に収容されている。ここで層状とは、後述する図2に示すように容器上方(図2における上方向)に多数積重なった状態を意味する。また、ゲル粒層の数は3層以上であることが好ましい。ゲル粒の層が少なすぎると、一度進入した害虫が脱出する可能性がある。ゲル粒の層の数が前記範囲内であれば、進入した害虫の後退を妨げ、ゲル粒自体に害虫捕獲作用を付与することができ、またその作用が飽和することがないため好ましい。なお、後述する図2に示す態様では、ゲル粒層の数は6層である。
【0007】
そして、容器内のゲル粒間には、害虫が容器の深部(底部)へ進入可能となる空隙(以下単に空隙とも言う。)が設けられている。かかる空隙とは、害虫の大きさに応じて変動するが、ハエ、コバエ等を対象とする場合は2〜5mmが好ましい。アリ、ダンゴムシ、ワラジムシ、ゴキブリ等を対象とする場合は5〜10mmが好ましい。空隙を調整するには、例えば、ゲル粒のサイズ(例えば大きさや長さ)や容器内におけるゲルの収容状態を調整する方法が挙げられる。
【0008】
本発明の害虫捕獲器に収容されるゲル粒としては、吸液性を有し、ゲルを形成するものであれば限定されるものではない。また、ゲル粒の形状は球状、棒状、立方形状、直方形状等の定形状や、これらに準じた形状、または多角形状、破片状等の不定形状でもよいが、害虫が容器深部へ進入可能な空隙が生じるように収容されていることが重要である。また、均一の形状であっても、異なるサイズのゲル粒が混在していてもよい。
ゲル粒は、液状とした害虫誘引剤に吸液性ポリマーを浸漬し、飽和含浸量まで吸わせて膨潤させてゲルとしたもの、または寒天、カラギーナン等のゲル化剤を用いて害虫誘引剤をゲルとして、所期のサイズに粉砕したもの(クラッシュゲルとも言う)等を用いることができる。
特に害虫の羽、脚、体表と接触した際に捕獲効果に優れる吸液性ポリマーから得られるゲル粒が、本発明の作用、効果との関係から好ましい。捕獲効果に優れる吸液性ポリマーから得られるゲル粒とは、例えばゲル粒の表面での粘着性が高いものが挙げられる。
【0009】
また、ゲル粒のサイズは、ハエ、コバエ等の害虫では5〜25mm、さらには10〜15mmであることが好ましい。ゲル粒のサイズを前記範囲とすることで、害虫が容器深部に進入しやすくかつ脱出し難くすることが可能となり、効果的に捕獲及び/又は防除することができる。なお、ゲル粒のサイズとは、例えば球状であれば直径を指し、棒状や直方(立方)形状であれば長手方向の長さを指す。また、ゲル粒のサイズは、前記範囲の中であれば種々のものを併用してよい。例えば、大きいものから小さいものへとサイズに勾配をつけて積層してもよい。
【0010】
本発明の害虫捕獲器において、容器内におけるゲル粒数は15〜600/100cm、より好ましくは50〜200/100cmであることが好ましい。前記範囲とすることで、適度な空隙がゲル粒間に形成されてより効果的に害虫を捕獲及び/又は防除することができる。さらに、容器内におけるゲル粒間の距離は例えば10mm以下、より好ましくは5mm以下であることが好ましい。前記範囲であれば、害虫が進入可能な空隙を設けることが可能となる。
【0011】
さらに、容器内におけるゲル粒の充填深さは、1.5cm以上、より好ましくは2.5cm以上であることが好ましい。浅すぎると害虫誘引剤の濃度勾配が生じにくく、また害虫が再脱出しやすくなる可能性がある。
【0012】
本発明におけるゲル粒を調製するには、例えば、液状とした害虫誘引剤に吸液性ポリマーを浸漬して、飽和含浸量まで吸わせて膨潤させ、得られたゲル固体をスクレーパー等により粉砕、裁断等により所期のサイズとなるように調製してゲル粒を得る方法(クラッシュゲル)が挙げられる。吸液性ポリマーが造粒性を有する場合は害虫誘引剤を膨潤させてそのままゲル粒を得ることができる。
【0013】
吸液性ポリマーとしては、親水性、親油性ポリマーの何れであってもよい。例えば、澱粉−アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物、澱粉−アクリル酸ソーダグラフト重合体の架橋物、ポリアクリル酸共重合体、ポリアクリル酸ソーダの架橋物、イソブチレン−マレイン酸共重合体の架橋物及びその塩、ポリビニルアルコールアクリル酸ソーダグラフト重合体の架橋物、ポリ酢酸ビニル−エチレン系不飽和カルボン酸共重合体の架橋物の塩、長鎖アルキルアクリレート架橋重合体、ポリソルボルネン、アルキルスチレン−ジビニルベンゼン共重合体、メタクリレート系架橋重合体、変性アルキレンオキサイド等が挙げられる。
好ましくは、アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物、ポリアクリル酸共重合体が挙げられ、アクアコークTWB(住友精化社製)、ASCO HISOBEAD(AEKYUNG SPECIALTY CHEMICALS CO.LTD)が例示される。
【0014】
また、ゲル化剤を用いて害虫誘引剤を含有したゲル組成物を得て、前記と同様に所期のサイズに粉砕する(クラッシュゲル)ことでゲル粒を得る方法も挙げられる。ゲル化剤としては、寒天、カラギーナン、ジェランガム等の水溶性多糖類が好ましい。
【0015】
本発明で用いる害虫誘引剤としては、例えば紹興酒、ビール、ワイン、アセトイン、黒酢、赤酢、食酢、各種果実エキス、野菜や果物の発酵物、味噌、酵母、蜂蜜、液糖、黒糖、砂糖、および植物性または動物性食餌剤などが挙げられる。
【0016】
また、誘引性に影響を及ぼさない範囲で、各種殺虫成分を添加して殺虫効果を付与することも可能である。殺虫剤としては、例えば除虫菊エキス、天然ピレトリン、プラレトリン、イミプロトリン、フタルスリン、アレスリン、トランスフルトリン、レスメトリン、フェノトリン、シフェノトリン、ペルメトリン、サイパーメスリン、エトフェンプロックス、シフルスリン、デルタメスリン、ビフェントリン、フェンバレレート、フェンプロパスリン、エムペンスリン、シラフルオフェン、メトフルトリン、プロフルトリン等のピレスロイド系化合物、フェニトロチオン、ダイアジノン、マラソン、ピリダフェンチオン、プロチオホス、ホキシム、クロルピリホス、ジクロルボス等の有機リン系化合物、カルバリル、プロポクスル、メソミル、チオジカルブ等のカーバメート系化合物、メトキサジアゾン等のオキサジアゾール系化合物、フィプロニル等のフェニルピラゾール系化合物、アミドフルメト等のスルホンアミド系化合物、ジノテフラン、イミダクロプリド等のネオニコチノイド系化合物、メトプレン、ハイドロプレン、ピリプロキシフェン等の昆虫成長制御化合物等、およびオレンジ油、ハッカ油、ベンジルアルコール等の殺虫性精油等を殺虫成分として用いることができる。前記殺虫成分のなかでも、ゲル粒を得るのに水を用いることから水溶性殺虫剤であるジノテフランが好ましい。水溶性殺虫剤であるジノテフランであれば、界面活性剤や有機溶媒を用いなくてもよいので忌避等の問題が発生せず好ましい。
殺虫剤の含有量はゲル粒中において0.01〜0.5質量%であることが好ましい。具体例としては、ジノテフランを用いる場合には0.05〜0.2質量%であることが好ましい。
なお、殺虫剤を含有させるにあたり、前記害虫誘引剤と同じゲル粒に含有させてもよいし、害虫誘引剤と別個のゲル粒や他の粒状体に含有させる2剤系としてもよい。
【0017】
この他に、飛翔性害虫の行動を阻害し(羽等を濡らして動けなくする)、捕獲して死に至らしめるために、例えば、ポリブテン、天然ゴム、グアーガム、キサンタンガム、澱粉、糖類等の粘性成分を併用して薬剤の表面に高い粘性を付与するようにしてもよい。これにより、さらに捕獲性を高めることができる。
【0018】
本発明では前記成分に加え、通常溶剤としての水を含み、更に誘引性に支障を来たさない限りにおいてその他の成分を適宜配合することができる。
その他の成分としては、例えば誤食防止剤、防腐剤、pH調整剤、安定化剤、色素、香料等の各種補助成分が挙げられる。例えば、安息香酸デナトニウム(商品名 ビトレックス)、トウガラシエキス等の誤食防止剤、塩化セチルピリジニウム等の四級アンモニウム塩、ソルビン酸カリウム、パラベン等の防腐剤、クエン酸、リン酸これらの塩等のpH調整剤、BHT、BHA等の安定化剤、赤色、青色、黄色、緑色、黒色、茶色等を示す各種色素、メロン、バニラ、ストロベリー、マンゴー、リンゴ、ナシ、バナナ、ドリアン等の香調の香料、等が挙げられる。
また、保水剤としてトリメチルグリシンを配合すると、ゲルの水分揮散を抑えることができ、ゲルの保水性を長期に保つことができ、誘引、捕獲効果を維持できるため好ましい。トリメチリルグリシンの含有量は0.1〜10質量%であることが好ましい。
【0019】
本発明の害虫捕獲器においては、害虫の誘引性を高めるために発光体を併用してもよい。具体的には、発光体または蓄光体を害虫誘引剤と共にゲル粒中に含有させてゲル粒を発光させることや、容器の内外面に発光体や蓄光体を塗布して容器自体を発光させること、などが挙げられる。
【0020】
また、前述においてはゲル粒のみを充填させる態様について説明したが、ゲル粒以外の粒状体を混合してもよい。これにより、粒の層を増加させることができる。また、ゲル粒よりも軽量な材質を選択すれば、害虫捕獲器を吊るして使用する場合などに有用である。かかる粒状体としてはセルロース粒、パルプ粒などが挙げられる。
【0021】
本発明の害虫捕獲器の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、ゲル化剤が寒天のような水溶性多糖類の場合は前記成分を含有したゲル組成物をスクレーパー等により粉砕、裁断等により所期のサイズとなるように調製し(クラッシュゲル)、そのまま容器本体に収容することができる。一方、吸液性ポリマーの場合は、水溶性多糖類と同様にゲル組成物を粉砕したものを充填してもよい。また、造粒性の吸液性ポリマーを予め容器に充填後、吸液性ポリマーを除く液状の組成物を滴下するか、前記液状の組成物を予め容器に充填後、吸液性ポリマーを投入し、ポリマーを含浸、膨潤させることによって製造する方法を採用することもできる。
さらに、こうしてできたゲル粒層に、粘着性の液体を降りかけることでさらに捕獲性を高めることができる。
【0022】
本発明の害虫捕獲器によれば、屋内、屋外における種々の害虫を効果的に捕獲することが可能である。特に、キイロショウジョウバエ、カスリショウジョウバエ、クロショウジョウバエ、オオショウジョウバエ、ノミバエ、オナジショウジョウバエ、イエバエ、キンバエ、クロバエ等の飛翔性害虫に対して有効である。この他にも、カ、ハチ等の飛翔性害虫、およびワラジムシ、ダンゴムシ、ゴキブリ、ノミ、ダニやアリ等のほふく害虫に対しても有効である。
【0023】
次に、本発明の害虫捕獲方法について説明する。
本発明の害虫捕獲方法によれば、開口部から進入した害虫が、ゲル粒の層内部に潜り込む過程で、前述の作用と同様に害虫がゲル粒に捕獲される。害虫をゲル粒層内部に潜り込ませるには、害虫誘引剤を用いることができる。すなわち、開口部から進入した害虫が、誘引剤に向かう経路中にゲル粒層が存在することで害虫を捕獲することができる。
【0024】
本発明の害虫捕獲方法によれば、害虫誘引剤は、前述した本発明の害虫捕獲器と同様にゲル粒中に含有されていてもよく、ゲル粒には含有させずゲル粒層の中か深部に別製剤として備えていてもよい。この場合、容器における開口部の位置は誘引剤の位置に応じて選択することができる。そして開口部と害虫誘引剤の設置箇所との間にゲル粒を充填してゲル粒層を形成すればよい。
【0025】
開口部を容器上面に設ける場合は、容器の下方に誘引剤を設置する。誘引剤はゲル粒に含有させて重力による濃度勾配を生じさせてもよいし、また、容器底部に誘引剤を含有した担体を設置し、その上にゲル粒を充填してもよい。かかる方法によれば、特にコバエ等の飛翔性害虫に対して有効である。
【0026】
また、開口部を容器側面(周壁)に設ける場合は、後述する図5、6に示すように容器中心部に誘引剤を含有した担体(害虫誘引部材)を設置し、その周囲にゲル粒を収容することができる。かかる方法によれば、コバエなどの飛翔性害虫や、ゴキブリ等のほふく害虫に対して有効である。
【発明の効果】
【0027】
本発明の害虫捕獲器によれば、多数のゲル粒を層状としているので、重力の作用により層の深部(下方部)ほどゲル粒に含有される害虫誘引剤の濃度が高くなり、結果として濃度勾配が生じる。そしてゲル粒の間は害虫が進入可能な空隙を有するため、害虫は誘引剤の濃い容器深部へ進入しようとする。しかし深部へ進入するほど後退が困難となり、羽や体表面などがゲル粒表面と接触することで身動きがとれなくなり、容易に捕獲及び/又は防除することができる。
また、本発明のさらなる害虫捕獲器によれば、容器内において層状に収容される多数のゲル粒が容器開口部と害虫誘引部材との間に設けられ、かつゲル粒の間は害虫が進入可能な空隙を有するため、開口部から進入した害虫が害虫誘引部材に向かう経路中にゲル粒層が存在する。しかし害虫誘引部材の方へ進入するほど後退が困難となり、羽や体表面などがゲル粒表面と接触することで身動きがとれなくなり、容易に捕獲及び/又は防除することができる。
すなわち、本発明の害虫捕獲器は、ゲル粒自体が害虫を捕獲及び/又は防除する作用をもつ。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る一実施形態である害虫捕獲器の斜め上方から視た外観斜視図である。
【図2】図1の害虫捕獲器の縦端面図である。
【図3】図1の害虫捕獲器に用いられる本体を斜め上方から視た外観斜視図である。
【図4】図1の害虫捕獲器に用いられる蓋体を斜め下方から視た外観斜視図である。
【図5】本発明に係るさらなる実施形態である害虫捕獲器の斜め上方から視た分解斜視図である。
【図6】図5の害虫捕獲器の断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面に基づいて本発明の害虫捕獲器の一実施形態を説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態である害虫捕獲器10は、蓋体12と本体13とを備えた容器11と、害虫誘引剤を含有したゲル粒(図2参照)14と、から構成される。本発明の害虫捕獲器において、容器11(本体13)内には、多数のゲル粒14が層状に収容されている。なお、図2に示す態様では、ゲル粒層の数は6層である。ゲル粒14間には、害虫が容器11の深部(本体13の底部)へ進入可能な空隙が設けられている。蓋体12には、突出部15と外縁部との間に5個の大形側開口部16が円周方向に等間隔で形成されているとともに、突出部15の周囲に5個の小形側開口部17が等間隔で形成されている。蓋体12はドーム形状を好む飛翔性害虫の習性を利用して、蓋体に飛翔性害虫を集めて、さらに開口部から内部に進入することを促すことができる。なお、蓋体12の開口部の数や大きさは、害虫が容器11内に進入可能な限り特に限定されるものではない。また、容器11の外面は赤や茶やオレンジの暖色系に着色されることで、またシボ加工を設けることで誘引性をより高めることができるため好ましい。さらに、本体13の形状は後述するゲル粒を収容できる限り特に限定されるものではない。例えば、本体13の底部を突起状にすれば、害虫捕獲器を土壌に突き刺して設置することができ、農業用や園芸用として有用である。また、設置箇所に応じて粘着テープ、粘着剤等を付し、壁面、床面、柱等に固定可能としてもよい。
【0030】
図2に示すように、中央部に嵩上げ部22が突出して配置されることとなるので、当該嵩上げ部22は本体13内に収容されるゲル粒14の容量を必要以上多くしないようにしてゲル粒14を無駄に使うことを防止する機能を有するとともに、深さを設けることとなるのでゲル粒14に含まれる誘引剤の濃度勾配が生じやすい。なお、嵩上げ部22がゲル粒14の表面より上方に向けて突出する場合には、飛翔性害虫に止まり木を与える機能をさらに有することとなるのでさらに好ましい。
【0031】
図3に示すように、本体13の内面には、複数の線状の本体側突起部(線状突起部)20が円周方向に等間隔で突出形成されているとともに、底部に害虫誘引剤収容部21と嵩上げ部22とが形成されており、外縁部の上端部に、蓋体12に組み付けるための結合部受24を有する。
嵩上げ部22は、害虫誘引剤収容部21の中央部において、突出部15に相似する形状で底板23から上方に向けて突出形成されている。
【0032】
また、図4に示すように、蓋体12の内面には、複数の線状の蓋体側突起部(線状突起部)18が円周方向に等間隔で突出形成されていてもよい。
蓋体側突起部18は、予め定められた高さ寸法でもって、突出部15の内面から蓋体12の外縁部までと、大形側開口部16の外側から蓋体12の外縁部までと、にそれぞれ連続して形成されている。突起部18は、大形側開口部16または小形側開口部17から容器11内に進入してきた飛翔性害虫が集まって止まり易く且つ伝い易いようにする機能を有する。開口部から容器内に進入してきた飛翔性害虫は、内面に突出している線状突起部に集まって止まり、突起部上を伝いながら歩いて害虫誘引剤によって深部へと誘引されていき、ゲル粒に接触したところで羽等が濡れて動けなくなって死んだり、殺虫剤を併用したならばその作用も加わって死に至る。これにより、飛翔性害虫の歩く行動習性を利用して効果的に捕獲及び/又は防除することができる。
本体側突起部20は、蓋体12の蓋体側突起部18と同一の高さ寸法でもって、上端部から底板23まで連続して形成されている。本体側突起部20は、蓋体12が本体13に組み付けられた際に、蓋体側突起部18とともに、容器11内に進入してきた飛翔性害虫が集まって止まり易く且つ伝い易いようにする機能を有する。
【0033】
図5および6に、本発明に係る害虫捕獲器のさらなる実施形態を示す。本実施形態においては、害虫捕獲器50は 開口部56を有する容器51と、前記容器51内に収容され害虫誘引剤を含有した害虫誘引部材60と、前記容器51内において前記開口部56と害虫誘引部材60との間に層状に収容された多数のゲル粒54とを備える。図5、6に示す実施形態におけるゲル粒の層は3〜4である。そしてゲル粒54の間には、前述の害虫捕獲器と同様に、害虫が進入可能な空隙が設けられている。また、開口部56は容器51の側面と上面に設けられ、その大きさはゲル粒54が飛び出さないようにするためにゲル粒54のサイズよりも小さい。容器51は害虫誘引部材60を収容するための凹部を有し、この凹部側面には害虫誘引部材60に含有された害虫誘引剤を外部に放出するための開口部61が複数設けられている。開口部61の大きさは、ゲル粒54が飛び出さないようにするためにゲル粒54のサイズよりも小さい。容器51および害虫誘引部材60は支持部材62によって支持されている。なお、ゲル粒54に殺虫剤や誘引剤を含有させてもよい。
害虫誘引部材60の材質は、害虫誘引成分を含有保持できるものであれば特に限定されず、セラミック等の多孔質成形物、不織布、紙、およびパルプ等が挙げられる。
本実施形態において、開口部56から進入した害虫は害虫誘引部材60に向かう経路中にゲル粒層が存在することで捕獲及び/又は防除される。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明する。
【0035】
<製剤例>
下記に、本発明の害虫捕獲器に用いられるゲル粒の製剤例を示す。
(製剤例1)
黒酢10質量%、紹興酒10質量%、酒かすパウダー2質量%、メロン果汁1質量%を水50質量%に加えて攪拌し、さらにカルボキシメチルセルロース2.5質量%を含むプロピレングリコール溶液8.5質量%を加えて攪拌した。
次にメタケイ酸アルミン酸マグネシウム0.15質量%を含むプロピレングリコール溶液4.15質量%を加えて攪拌し、さらにカリミョウバン0.15質量%を残水に溶解させたものを加えて攪拌し、全量を100質量%とした。
その後、固化させて得たゲル状固体から、押し出し器を用いて5mm×5mmの略立方体からなるクラッシュゲル100gを製造した。
(製剤例2)
ワインビネガー10質量%、紹興酒30質量%、メロン果汁1質量%を水42.5質量%に加えて加熱混合し、寒天1.5質量%とショ糖15質量%とを混合したものを加えてさらに加熱混合した。
その後、冷却固化させて得たゲル状固体から、押し出し器を用いて10mm×10mmの略立方体からなるクラッシュゲル100gを製造した。
(製剤例3)
黒酢20質量%、紹興酒20質量%、メロン果汁2質量%を水41質量%に加えて加熱混合し、ゼラチン2質量%とショ糖15質量%とを混合したものを加えてさらに加熱混合した。
その後、冷却固化させて得たゲル状固体から、押し出し器を用いて15mm×15mmの略立方体からなるクラッシュゲル100gを製造した。
(製剤例4)
ワインビネガー10質量%、紹興酒20質量%、酒かすパウダー2質量%、ショ糖15質量%を水40質量%に加えて加熱混合した。
そこにジェランガム0.5質量%を含むプロピレングリコール溶液2質量%を加えて加熱混合し、さらに、さらに塩化カルシウム0.1質量%を残水に溶解させたものを加えて攪拌し、全量を100質量%として加熱混合した。
その後、冷却固化させて得たゲル状固体から、押し出し器を用いて20mm×20mmの略立方体からなるクラッシュゲル100gを製造した。
(製剤例5)
黒酢5質量%、ワインビネガー20質量%、紹興酒5質量%、酒かすパウダー1質量%、メロン果汁1質量%を水50.5質量%に加えて加熱混合し、寒天1質量%、ゼラチン1.5質量%、ショ糖15質量%を混合したものを加えてさらに加熱混合した。
その後、冷却固化させて得たゲル状固体から、押し出し器を用いて25mm×25mmの略立方体からなるクラッシュゲル100gを製造した。
(製剤例6)
黒酢10質量%、ワインビネガー5質量%、紹興酒10質量%、酒かすパウダー2質量%を水73質量%に加えて攪拌し、この溶液に造粒性を有する吸液性ポリマー[アクアコークTWB(住友精化社製)]15質量%を加えて膨潤させ、一辺が10〜15mmの略立方体からなるゲル100gを製造した。
(製剤例7)
黒酢10質量%、紹興酒10質量%、安息香酸デナトニウム0.1質量%を水64.9質量%に加えて攪拌し、この溶液に造粒性を有する吸液性ポリマー[アクアコークTWB(住友精化社製)]15質量%を加えて膨潤させ、一辺が10〜15mmの略立方体からなるゲル100gを製造した。
【0036】
<試験例1>
表1に示す処方例に基づき各検体を作成した。液タイプは、各配合成分が均一となるように混合し容器に入れた。ゲルタイプは、ショ糖と寒天を混合し約90℃のお湯に溶解させ、残りの配合成分と混合して容器に入れて固化した。ゲル粒タイプは、各配合成分が均一となるように混合した溶液を、造粒性を有する吸液性ポリマー(アクアコークTWB(住友精化社製))に含浸させてサイズ10〜15mmのブロック状ゲル粒とし容器に入れた。
各検体は、上部が開口した6.5cm×6.5cm×6.0cmのプラスチック製容器に100gずつ入れて試験に供した。なお、ゲル粒タイプではブロック状ゲル粒約230個を用い、ゲル粒層は4〜5層とした。
90cm×90cm×90cmの立方網ケージ内にキイロショウジョウバエ成虫(雌雄混合)約30頭を放ち、馴化させた。その後前記検体をケージ内に同時に設置し、18時間後の捕獲数を測定した。結果を合わせて表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
上記結果より、ゲル粒タイプにおいてのみ、捕獲が認められた。試験中および試験終了時の観察から、ゲル粒に飛来したキイロショウジョウバエは、層状のゲル粒の内部に向かって空隙を伝って移動し、その深部においてゲル粒の働きにより動きが阻止されて捕獲されることがわかった。このような状況は他の検体では全く観察されなかった。
【0039】
<試験例2>
表2に示す処方からなるゲルを作成した。まずショ糖および寒天を90℃の湯に溶解させた溶液と他の配合成分の混合液とを混合し、室温にて固化させた。その後、一辺が表3に示すサイズとなるように分割して略立方体のゲル粒とし、上部が開口した6.5cm×6.5cm×6.0cmのプラスチック製容器に100gずつ充填して試験に用いた。
試験は90cm×90cm×90cmの立方網ケージ内にキイロショウジョウバエ成虫(雌雄混合)約100頭を放ち、馴化させた。その後検体を4つずつ並置し、6時間後の捕獲数を測定した(1回目ではサイズが5〜20mm、2回目ではサイズが10〜25mm)。結果を表3に示す。
【0040】
【表2】

【0041】
【表3】

【0042】
上記結果より、ゲル粒のサイズが5〜25mmであれば捕獲可能であることが立証され、特にサイズが10〜15mmにおいて、効果に優れることが分かった。
一方、ゲル粒としないゲル固形物を容器に入れたものでは捕獲数は0であった。また、ゲル粒のサイズが1mmでも捕獲数は0であった。いずれもコバエを捕獲できなかったのは、空隙がないか、空隙が狭すぎて害虫が進入できなかったためと考えられる。
【0043】
<試験例3>
表4に示す処方とした以外は、試験例1のゲル粒タイプと同様に検体を作成した。トリメチルグリシンの増減分を水の量で調節することにより合計量を同量とした。
各検体を8cm×8cm×5cmの容器にそれぞれ充填して、表5に示す温度・湿度条件下に調節した80cm×80cm×150cmのチャンバー内に設置し、下記式によりゲルの残存率を算出した。
ゲル残存率(%)=(ゲル質量/初期ゲル質量)×100
ゲル質量は経過日数とともに変化するが、これは主に水などがゲルから揮発することによる。すなわち、ゲル残存率はゲルの水分残存率に相当する。経過日数とゲル残存率(%)の結果を表5に示す。なお、試験は5回行いその平均値を示した。
【0044】
また、表4に示す各処方A〜Dの効力を確認した。まず、90cm×90cm×90cmの立方網ケージ内にキイロショウジョウバエ成虫(雌雄混合)約50頭を放ち、馴化させた。その後、検体を4つずつ並置し、18時間後の捕獲数を測定した。検体は、作成直後(経過日数0日)のものと、温度25℃、湿度75%RH下で14日経過後のものを用いた。結果を表6に示す。
ここで、表6における捕獲率(%)は下記式により算出した。なお、試験は2回行いその平均値を示した。
捕獲率(%)=(捕獲数/供試数)×100
なお、吸液性ポリマーとしては「アクアコークTWB(住友精化社製)」を使用した。
【0045】
【表4】

【0046】
【表5】

【0047】
【表6】

【0048】
表5の結果より、トリメチルグリシンを配合することで、ゲル残存率、すなわちゲルの水分残存率をより長期に維持できることが分かった。
【0049】
表6の結果より、いずれの処方も十分な捕獲力を有することが分かった。
【0050】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変形、改良等が自在である。その他、前述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所等は、本発明を達成できるものであれば限定されない。
【0051】
なお、本発明は2006年11月21日出願の日本特許出願(特願2006−314632)と、2006年11月27日出願の日本特許出願(特願2006−318663)とに基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【符号の説明】
【0052】
10、50 害虫捕獲器
11、51 容器
12 蓋体
13 本体
14、54 ゲル粒
15 突出部
16、56 大形側開口部(開口部)
17 小形側開口部(開口部)
18 蓋体側突起部(線状突起部)
20 本体側突起部(線状突起部)
22 嵩上げ部
60 害虫誘引部材
61 開口部
62 支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する容器と、
前記容器に層状に収容され、害虫誘引剤を含有した多数のゲル粒とを備えた害虫捕獲器であって、
前記層状のゲル粒の間に、害虫が進入可能な空隙を設けることを特徴とする、害虫捕獲器。
【請求項2】
開口部を有する容器と、
前記容器内に収容され、害虫誘引剤を含有した害虫誘引部材と、
前記容器内において前記開口部と害虫誘引部材との間に層状に収容された多数のゲル粒とを備えた害虫捕獲器であって、
前記層状のゲル粒の間に、害虫が進入可能な空隙を設けることを特徴とする、害虫捕獲器。
【請求項3】
前記ゲル粒のサイズが5〜25mmであることを特徴とする、請求項1または2に記載の害虫捕獲器。
【請求項4】
前記ゲル粒の数が50〜200/100cmであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の害虫捕獲器。
【請求項5】
ゲル粒を用い害虫を捕獲する方法であって、少なくとも一面に開口部を有する容器内に多数のゲル粒を収容し、前記ゲル粒間に空隙を有するゲル粒層を形成し、害虫を前記ゲル粒層内部にまで潜り込ませ、後戻り不可能とさせることで捕獲することを特徴とする、害虫捕獲方法。
【請求項6】
ゲル粒を用い害虫を捕獲する方法であって、少なくとも一面に開口部を有する容器内に害虫誘引部材と多数のゲル粒とを収容し、前記開口部と害虫誘引部材との間に、前記ゲル粒間に空隙を有するゲル粒層を形成し、前記開口部から進入した害虫が害虫誘引部材に向かう経路中にゲル粒層が存在することで害虫を捕獲することを特徴とする、害虫捕獲方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−46090(P2010−46090A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255111(P2009−255111)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【分割の表示】特願2008−545335(P2008−545335)の分割
【原出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(000100539)アース製薬株式会社 (191)
【Fターム(参考)】