説明

害虫駆除用毒餌剤およびその製造方法

【課題】害虫駆除用毒餌剤が、注射器様の容器から漏れ出たり、垂れるのを有効に防止し、かつ毒餌剤の軟らかさを保持して、高い害虫駆除効果を長期間維持すること。
【解決手段】殺虫成分、水、水溶性多価アルコールおよびゼラチンを含有する害虫駆除用毒餌剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴキブリやアリなどの害虫を駆除するために適した害虫駆除用毒餌剤およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴキブリやアリなどの害虫を駆除するために、従来、殺虫成分を含んだ乳剤、油剤、エアゾール剤等の液剤または粉剤が、散布して用いられてきた。しかしこれらの液剤または粉剤は、カーペットや壁紙などを汚すという問題があるため、使用範囲に制限があった。また液剤は、それを使用した部屋に臭いを残すという問題を有し、またエアゾール剤や粉剤には、作業者や居住者がそれを吸引するという危険性がある。
【0003】
これらの液剤や粉剤の使用に比べて、殺虫成分および誘引成分を含んだ毒餌剤(一般に「ベイト剤」と呼ばれることがある。)を設置することによる害虫駆除は、臭いや汚れの問題が少なく、また作業者や居住者が殺虫成分を吸引するおそれがない点で優れている。殊に粘性液状ないしゲル状の毒餌剤は、一般に注射器様の容器(以下、「シリンジ」と省略する。)に充填され、シリンジをベイトガンと呼ばれる押出器具に装填し、部屋の隅などにシリンジ内の毒餌剤をベイトガンで押し出すことにより、簡単に設置することができる。
【0004】
このような粘性液状ないしゲル状の毒餌剤は、殺虫成分を飛散させないため、およびシリンジからベイトガンを用いて容易に適用できるようにするため、殺虫成分と溶剤とを混練して製造される。そのような溶剤として、一般に水が用いられる。また水以外にも、害虫に対する忌避性の無い溶剤として、特許文献1ではポリエチレングリコールが、特許文献2では3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールおよび二塩基酸メチルエステル系溶剤が提案されている。
【0005】
また毒餌剤の適用範囲を拡げるため、殊にゲル状毒餌剤を垂直な壁に適用できるようにするために特許文献3は、殺虫成分、ポリビニルアルコールおよびカラギーナンを含有するゲル状毒餌剤を提案している。
【特許文献1】特開2002−212011号公報
【特許文献2】特開2004−143077号公報
【特許文献3】特開2002−212011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし上記のような粘性液状ないしゲル状の毒餌剤を、シリンジに充填し、それから押し出して適用する場合、毒餌剤の押し出しを止めた後も、シリンジの先端部分から毒餌剤が出続けるということが多く見られた。その結果、押し出しを途中で止めたシリンジ(またはそのようなシリンジが装填されているベイトガン)の保管場所や運搬中の車内に毒餌剤が漏れ出し、汚染するという問題があった。さらに粘性液状ないしゲル状の毒餌剤は、溶剤として含まれている水が蒸発していくと軟らかさが失われ、害虫の摂食量が低下し、害虫駆除効果が低下するという問題があった。
【0007】
よって本発明が達成しようとする目的は、粘性液状ないしゲル状の毒餌剤が、シリンジから漏れ出たり、垂れるのを有効に防止することである。これに加えて本発明は、毒餌剤の軟らかさを保持することによって、高い害虫駆除効果を長期間維持することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成し得た本発明とは、殺虫成分、水、水溶性多価アルコールおよびゼラチンを含有することを特徴とする害虫駆除用毒餌剤である。本発明の実施態様において、JIS K6503に規定する方法により測定したゼリー強度が135〜215gであり、粘度が3.5〜4.5mPa・sであるゼラチンを使用することが好ましい。また本発明の害虫駆除用毒餌剤は、好ましくはゼラチンを、害虫駆除用毒餌剤の全質量中に0.1〜10質量%含有する。
【0009】
前記水溶性多価アルコールの融点は、25℃未満であることが望ましく、本発明の好ましい害虫駆除用毒餌剤は、水溶性多価アルコールを、害虫駆除用毒餌剤の全質量中に5〜50質量%含有する。好ましい水溶性多価アルコールとして、グリセリンおよび平均分子量200〜600のポリエチレングリコールを挙げることができる。本発明の好ましい実施態様において水の量は、害虫駆除用毒餌剤の全質量中に4〜30質量%の範囲に抑えられる。
【0010】
本発明の害虫駆除用毒餌剤中に多くの気泡が存在すると、そこで微生物が繁殖し、製品の品質に影響し得る。また気泡の多い毒餌剤は、シリンジからの押し出しを止めた後の漏出や垂れが増える傾向がある。よって本発明の毒餌剤を減圧脱気して得られる害虫駆除用の脱気毒餌剤が好ましい。また気泡の無いまたは少ない脱気毒餌剤を製造するために、必須成分である殺虫成分、水、水溶性多価アルコールおよびゼラチンを、減圧下で混練することが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の害虫駆除用毒餌剤は、充填されたシリンジから押し出しを止めた後の漏れ出しが少なく、押し出しを途中で止めたシリンジ(またはそのようなシリンジが装填されているベイトガン)の保管または運搬中において、漏出による汚染を防止することができる。また本発明の害虫駆除用毒餌剤は、水以外に水溶性多価アルコールを含有し、相対的に水の量が少ないため、乾燥して硬くなりにくく、高い害虫駆除効果を長期間持続させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の害虫駆除用毒餌剤は、殺虫成分以外に、水、水溶性多価アルコールおよびゼラチンを含有することを特徴とする。このように水、水溶性多価アルコールおよびゼラチンを組み合わせることにより、該毒餌剤をシリンジに充填し、これからベイトガンを用いて押し出して適用する場合、押し出しを止めた後にシリンジからの漏出が有効に防止される。殊にゼラチンは、害虫に対する忌避性が無いため、害虫駆除用毒餌剤中で好適に使用することができる。
【0013】
本発明において、JIS K6503に規定する方法により測定したゼリー強度が85〜315gであり、粘度が2.5〜5.0mPa・sであるゼラチンを、一般的に使用することができる。ここでJIS K6503では、6.67質量%のゼラチン溶液をゼリーカップに入れ、10℃±0.1℃の恒温槽で17±1時間冷却してゼリー(ゲル)を調製し、このゼリーに、1mm/sの速度で径12.7mmのプローブにより荷重をかけ、ゼリー表面が4mm押し下げられたときの荷重(g)をゼリー強度と定めている。またJIS K6503では、濃度6.67質量%および温度60℃±0.2℃の一定量のゼラチン溶液が、ピペット形粘度計を流下(約160mmの標線間を通過)する時間を測定し、この時間から粘度(mPa・s)を算出している(詳しくはJIS K6503を参照されたい)。
【0014】
ゼラチンのゼリー強度が小さすぎると、毒餌剤全体を固める力が弱く、使用後の漏出や垂れの防止効果が低下するおそれがあり、一方ゼリー強度が大きすぎても、毒餌剤をシリンジから押し出す際に大きな圧力をかける必要があり、その結果としてシリンジ内に圧力が残ることで漏出が増大する場合がある。また粘度が小さすぎると、粘着性が無くなり、壁面などに処理した場合に垂れやすくなるおそれがある。一方、粘度が大きすぎると充填や使用の際に糸引きが起きるなどの不都合が生じ得る。
【0015】
よってシリンジの先端からの垂れや漏出をより有効に防止するために、本発明の害虫駆除用毒餌剤は、JIS K6503に規定する方法により測定したゼリー強度が、135〜215gであり、粘度が3.5〜4.5mPa・sであるゼラチンを含有することが好ましい。
【0016】
本発明の好ましい害虫駆除用毒餌剤は、ゼラチンを、害虫駆除用毒餌剤の全質量中に0.1〜10質量%含有する。ゼラチン量が0.1質量%未満であると、シリンジからの毒餌剤の垂れや漏出を防止する効果が少なく、一方10質量%を超えると、ゼリー強度の高いゼラチンを使用した場合と同様に、毒餌剤全体が硬くなってシリンジ内に圧力が残ることで漏出が増えることがあり、また他の成分を溶解できなくなるなどの不都合が生じ得る。害虫駆除用毒餌剤中のゼラチン量は、害虫駆除用毒餌剤の全質量中に、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは1.0質量%以下である。なお一般に市販されているゼラチンは8〜14質量%の水分を含むが、本発明では、水分を除いた不揮発分としてゼラチン量を考慮する。
【0017】
本発明の害虫駆除用毒餌剤は、1種または2種以上の水溶性多価アルコールを含有する。この水溶性多価アルコールは、水に比べて沸点が高くて蒸発しにくいことから、本発明の毒餌剤は、設置後に長期間放置されても、硬くなりすぎず、害虫の摂食量の低下を抑えることができる。長期間放置した後の毒餌剤の軟らかさを保つために、本発明の水溶性多価アルコールは、その融点が25℃未満であること、即ち室温(25℃)で液状(粘性液状を含む。)であることが好ましい。
【0018】
本発明の好ましい害虫駆除用毒餌剤は、水溶性多価アルコールを、害虫駆除用毒餌剤の全質量中に5〜50質量%含有する。水溶性多価アルコール量が5質量%未満であると、水が蒸発した後の毒餌剤が硬くなって、害虫の摂食量が低下し、一方50質量%を超えると水溶性多価アルコールによる忌避性や摂食阻害が生じ得るからである。水溶性多価アルコール量は、害虫駆除用毒餌剤の全質量中に、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。なお水溶性多価アルコールは、水溶液の形態で市販されていることもあるが、本発明では、水分を除いた不揮発分として水溶性多価アルコール量を考慮する。
【0019】
水溶性多価アルコールの好適例としてグリセリンを挙げることができる。グリセリンを使用する場合、害虫駆除用毒餌剤中のグリセリン量は、害虫駆除用毒餌剤の全質量中に、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、好ましくは45質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。
【0020】
さらに水溶性多価アルコールの好適例として、室温で液状または粘性液状であるポリエチレングリコールを挙げることができる。室温で液状または粘性液状であるポリエチレングリコールの平均分子量は、該技術分野で一般的に200〜600とされている。よって本発明では、平均分子量200〜600のポリエチレングリコールを使用することが好ましい。このようなポリエチレングリコールを使用する場合、害虫駆除用毒餌剤中のポリエチレングリコール量は、害虫駆除用毒餌剤の全質量中に、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。
【0021】
さらに、そのほかの水溶性多価アルコールの例として、エチレングリコール、プロピレングリコール若しくはポリプロピレングリコール(例えばジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール)、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ポリグリセリン(例えばジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン)、またはポリオキシアルキレンアルキルグリコシドなどを挙げることができる。
【0022】
害虫駆除用毒餌剤中の水分量は、害虫駆除用毒餌剤の全質量中に、4〜30質量%に制限することが好ましい。水分量が30質量%を超えると、水が蒸発しきった後の毒餌剤が硬くなりすぎて、害虫の摂食量が低下し、一方、水分量が4質量%未満であると、他の成分量、特に水溶性多価アルコール量が増えることなどの原因により、摂食量が低下することがあるからである。より好ましい水分量は、害虫駆除用毒餌剤の全質量中に、15質量%以上で、25質量%以下である。
【0023】
本発明の害虫駆除用毒餌剤は、殺虫成分を含有する。殺虫成分として、ピレスロイド化合物、有機リン化合物、カーバメート化合物、N−アリールジアゾール化合物、ヒドラゾン化合物、ネオニコチノイド系化合物、スルホンアミド化合物、天然殺虫成分、ホウ酸、幼若ホルモン様物質、キチン合成阻害物質等の昆虫成長制御物質やこれらの混合物が挙げられる。中でも、神経毒であるネオニコチノイド系化合物が好ましい。
【0024】
なお本発明は、水、水溶性多価アルコールおよびゼラチンの組合せを用いることに要旨があり、その殺虫成分について特に限定は無い。よって以下に殺虫成分の具体例を挙げるが、本発明はそれらの具体例に限定されない。また殺虫成分は、下記の具体例の異性体や異性体混合物であってもよい。
【0025】
上記ピレスロイド化合物としては、下記(1)〜(8)のクリサンテマート類、(9)〜(14)のカルボキシラート類、(15)〜(16)のブチラート類、(17)のエーテル類等が挙げられる:(1)5−ベンジル−3−フリルメチルクリサンテマート、(2)3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチルクリサンテマート、(3)3−フェノキシベンジルクリサンテマート、(4)2−メチル−4−オキソ−3−(2−プロペニル)シクロペント−2−エニルクリサンテマート、(5)2−メチル−4−オキソ−3−(2−プロピニル)シクロペント−2−エニルクリサンテマート、(6)1−エチニル−2−メチル−2−ペンテニルクリサンテマート、(7)α−シアノ−3−フェノキシベンジルクリサンテマート、(8)3−フェノキシベンジル−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラート、(9)2−メチル−4−オキソ−3−(2−プロペニル)シクロペント−2−エニル−2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキシラート、(10)2,3,5,6−テトラフルオロベンジル−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラート、(11)2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラート、(12)α−シアノ−3−フェノキシベンジル−2,2−ジメチル−3−(1,2,2,2−テトラブロモエチル)シクロプロパンカルボキシラート、(13)α−シアノ−3−フェノキシベンジル−2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキシラート、(14)α−シアノ−3−フェノキシベンジル−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラート、(15)α−シアノ−3−フェノキシベンジル−2−(4−クロロフェニル)−3−メチルブチラート、(16)α−シアノ−3−フェノキシベンジル−2−(2−クロロ−4−トリフルオロメチルアニリノ)−3−メチルブチラート、(17)2−(4−エトキシフェニル)−2−メチルプロピル−3−フェノキシベンジルエーテル。
【0026】
上記有機リン化合物としては、下記(18)〜(24)の化合物等が挙げられる:(18)O,O−ジメチル−O−(3−メチル−4−ニトロフェニル)ホスホロチオエート、(19)O,O−ジエチル−O−(2−イソプロピル−6−メチル−4−ピリミジニル)ホスホロチオエート、(20)O,O−ジエチル−O−(3,5,6−トリクロロ−2−ピリジニル)ホスホロチオエート、(21)O,O−ジメチル−O−(3,5,6−トリクロロ−2−ピリジニル)ホスホロチオエート、(22)S−6−クロロ−2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1,3−オキサゾロ[4,5−b]ピリジン−3−イルメチル−O,O−ジメチルホスホロチオエート、(23)(E)−O−2−イソプロポキシカルボニル−1−メチルビニル−O−メチルエチルホスホロアミドチオエート、(24)2,2−ジクロロビニルジメチルホスフェート。
【0027】
上記カーバメート化合物としては、下記(25)〜(26)の化合物等が挙げられる:(25)2−(1−メチルエトキシ)フェニルメチルカーバメート、(26)1−ナフチルメチルカーバメート。
上記N−アリールジアゾールとしては、下記(27)の化合物等が挙げられる:(27)5−メトキシ−3−(2−メトキシフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2(3H)−オン。
上記ヒドラゾン化合物としては、下記(28)の化合物等が挙げられる:(28)テトラヒドロ−5,5−ジメチル−2(1H)−ビリミジノン[[3−(4−トリフルオロメチル)フェニル]−1−[2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]エテニル]−2−プロペニリデン]ヒドラゾン。
【0028】
上記ネオニコチノイド系化合物としては、例えば化学式(1)〜(3)で示されるものが挙げられる:
【0029】
【化1】

【0030】
上記化学式(1)の化合物としては、(E)−N1−〔(6−クロロ−3−ピリジル)メチル〕−N2−シアノ−N1−メチルアセトアミジン、N−〔(6−クロロ−3−ピリジニル)メチル〕−N−エチル−N’−メチル−2−ニトロ−1,1−エチリデンジアミン、1−(6−クロロ−3−ピリジニル)メチル−3−メチル−2−シアノグアニジン、1−メチル−2−ニトロ−3−(テトラヒドロ−3−フリルメチル)グアニジン(「ジノテフラン」と呼ばれることがある。)、1−(6−クロロ−3−ピリジニル)メチル−1,3−ジメチル−2−シアノグアニジン、1−(6−クロロ−3−ピリジニル)メチル−1−エチル−3−メチル−2−シアノグアニジン、1−(6−クロロ−3−ピリジニル)メチル−1,3−ジメチル−3−(6−クロロ−3−ピリジニル)メチル−2−シアノグアニジン、1−(6−クロロ−3−ピリジニル)メチル−3−メチル−2−ニトログアニジン、1−(6−クロロ−3−ピリジニル)メチル−3,3−ジメチル−2−ニトログアニジン、1−(6−クロロ−3−ピリジニル)メチル−1−メチル−2−ニトログアニジン、1−(6−クロロ−3−ピリジニル)メチル−1,3−ジメチル−2−ニトログアニジン、1−(6−クロロ−3−ピリジニル)メチル−3−エチル−2−ニトログアニジン、1−(6−クロロ−3−ピリジニル)メチル−3−(6−クロロ−3−ピリジニル)メチル−2−ニトログアニジン、1−(6−クロロ−3−ピリジニル)メチル−3−メチル−2−トリフルオロアセチルグアニジン、1−(6−クロロ−3−ピリジニル)メチル−1−エチル−3−メチル−2−ニトログアニジン、1−(6−クロロ−3−ピリジニル)メチル−1,3,3−トリメチル−2−ニトログアニジン、1−(6−クロロ−3−ピリジニル)メチル−2−ニトログアニジン、1−(6−クロロ−3−ピリジニル)メチル−1−エチル−2−ニトログアニジン、1−(3−ピリジニル)メチル−3−メチル−2−ニトログアニジン、1−(6−ブロモ−3−ピリジニル)メチル−3−メチル−2−ニトログアニジン、1−(2−クロロ−5−チアゾリル)メチル−3−メチル−2−ニトログアニジン、1−(3−シアノフェニル)−3−メチル−2−ニトログアニジン、1−(4−クロロフェニル)メチル−3−メチル−2−ニトログアニジン、1−(6−クロロ−3−ピリジニル)メチル−3,3−ジメチル−1−ホルミル−2−ニトログアニジン、1−(6−クロロ−3−ピリジニル)メチル−3,3−ジメチル−1−アセチル−2−ニトログアニジン、1−(6−クロロ−3−ピリジニル)−3−メチル−2−シアノグアニジン、1−(2−クロロ−5−チアゾリル)メチル−3,3−ジメチル−2−ニトログアニジン、1−(2−クロロ−5−チアゾリル)メチル−1−エチル−3−メチル−2−ニトログアニジン、1−(2−クロロ−5−チアゾリル)メチル−1−アセチル−3,3−ジメチル−2−ニトログアニジン、1−(6−クロロ−3−ピリジニル)メチル−1−メチル−2−トリフルオロアセチルグアニジン、1−(2−クロロ−5−チアゾリル)メチル−1,3−ジメチル−2−ニトログアニジン、1−(2−クロロ−5−チアゾリル)メチル−1−メチル−2−ニトログアニジン、1−(5−チアゾリル)メチル−3−メチル−2−ニトログアニジン、1−(2−メチル−5−チアゾリル)メチル−3,3−ジメチル−2−ニトログアニジン、1−(2−メチル−5−チアゾリル)メチル−3−メチル−2−ニトログアニジン、1−(2−フェニル−5−チアゾリル)メチル−3−メチル−2−ニトログアニジン、1−(2−クロロ−5−チアゾリル)メチル−3,3−ジエチル−2−ニトログアニジン、1−(2−クロロ−5−チアゾリル)メチル−3−メチル−3−エチル−2−ニトログアニジン、1−(2−クロロ−5−チアゾリル)メチル−3−(1−ピロリジニル)−2−ニトログアニジン、1−(2−クロロ−5−チアゾリル)メチル−1,3,3−トリメチル−2−ニトログアニジン、1−(2−ブロモ−5−チアゾリル)メチル−3−メチル−2−ニトログアニジン、1−(2−ブロモ−5−チアゾリル)メチル−3,3−ジメチル−2−ニトログアニジン、1−(2−クロロ−5−チアゾリル)メチル−3−メチル−2−シアノグアニジン、1−(テトラヒドロフラン−3−イル)メチル−3−メチル−2−ニトログアニジン、1−(テトラヒドロフラン−2−イル)メチル−3−メチル−2−ニトログアニジン等が挙げられる。
【0031】
上記化学式(2)の化合物としては、3−〔(6−クロロ−3−ピリジニル)メチル〕−N−シアノ−2−チアゾリジンイミン、1−[(6−クロロ−3−ピリジニル)メチル]−N−ニトロテトラヒドロピリミジン−2−イミン等が挙げられる。
【0032】
上記化学式(3)の化合物としては、3−〔(2−クロロ−5−チアゾリル)メチル〕−5−メチル−4−ニトロイミノテトラヒドロ−1,3,5−オキサジアジン、3,5−ジメチル−1−[(6−クロロ−3−ピリジニル)メチル]−N−ニトロヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン−2−イミン、3,5−ジメチル−1−[(2−クロロ−5−チアゾリル)メチル]−2−ニトロイミノヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン、3−エチル−5−メチル−1−[(6−クロロ−3−ピリジニル)メチル]−N−ニトロヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン−2−イミン、3−n−プロピル−5−メチル−1−[(6−クロロ−3−ピリジニル)メチル]−N−ニトロヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン−2−イミン、3−n−プロピル−5−メチル−1−[(2−クロロ−5−チアゾリル)メチル]−N−ニトロヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン−2−イミン、3−(2−プロペニル)−5−メチル−1−[(6−クロロ−3−ピリジニル)メチル]−N−ニトロヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン−2−イミン、3−(2−プロピニル)−5−メチル−1−[(6−クロロ−3−ピリジニル)メチル]−N−ニトロヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン−2−イミン等が挙げられる。
【0033】
上記スルホンアミド化合物としては、下記(29)の化合物等が挙げられる:(29)N−エチルペルフルオロオクタンスルホンアミド。
上記以外の化合物としては、下記(30)〜(42)等の化合物等が挙げられる:(30)4−(2−ブロモ−1,1,2,2−テトラフルオロエチル)−1−(3−クロロ−5−トリフルオロメチルピリジン−2−イル)−2−メチルイミダゾール、(31)アバメクチン、(32)ホウ酸、(33)2−[1−メチル−2−(4−フェノキシフエノキシ)エトキシ]ピリジン、(34)イソプロピル−11−メトキシ−3,7,11−トリメチルドデカ−2,4−ジエノエート、(35)エチル−3,7,11−トリメチルドデカ−2,4−ジエノエート、(36)1−(4−クロロフェニル)−3−(2,6−ジフルオロベンゾイルウレア)、(37)1−(3,5−ジクロロ−2,4−ジフルオロフェニル)−3−(2,6−ジフルオロベンゾイルウレア)、(38)1−(4−トリフルオロメトキシフェニル)−3−(2−フルオロベンゾイルウレア)、(39)N−シクロプロピル−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン、(40)2−t−ブチルイミノ−3−イソプロピル−5−フェニルペルヒドロ−1,3,5−チアジアジン−4−オン、(41)5−アミノ−1−(2,6−ジクロロ−α,α,α−トリフルオロ−p−トリル)−4−トリフルオロメチルスルフィニルピラゾール−3−カルボニトリル、(42)4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−1−(エトキシメチル)−5−(トリフルオロメチル)−1(H)−ピロール−3−カルボニトリル。
【0034】
本発明の害虫駆除用毒餌剤中の殺虫成分量は、殺虫成分の種類により異なるが、一般に害虫駆除用毒餌剤の全質量中に0.01〜10質量%であることが好ましい。殺虫成分量が0.01質量%よりも少ないと、殺虫効果が充分に発揮できない場合があり、一方10質量%を超えると、害虫に対する忌避性がみられたり、摂食性が低下する場合がある。殺虫成分量のより好ましい下限は0.1質量%であり、より好ましい上限は5質量%である。
【0035】
本発明の害虫駆除用毒餌剤は、上記の必須成分以外に、糖、油脂および穀物粉などを含有することができる。糖の具体例として、ショ糖、ブドウ糖、グラニュー糖、果糖、乳糖、麦芽糖、黒砂糖、赤砂糖、三温糖、糖蜜などが挙げられる。油脂の具体例として、ゴマ油、大豆油、菜種油、小麦胚芽油、綿実油、コーン油、ヒマワリ油、オリーブ油、ヤシ油、サフラワー油、パーム油、ライス油、パンプキン油、ピーナッツバター、マーガリン等の植物油、またはバター、ラード、スクワラン油等の動物油が挙げられる。また穀物粉として、トウモロコシ、ジャガイモ、サツマイモ等由来のデンプン粉、トウモロコシ粉、ジャガイモ粉、サツマイモ粉、小麦粉、米粉などが挙げられる。殊に本発明の害虫駆除用毒餌剤は、糖、植物油およびデキストリンを含有することが好ましい。必要に応じて本発明の害虫駆除用毒餌剤中に、酸化防止剤、保存料、誤食防止剤、増量剤、界面活性剤、香料などを添加してもよい。
【0036】
本発明の害虫駆除用毒餌剤は、一般的に、殺虫成分、水、水溶性多価アルコール、ゼラチンおよび場合によりその他の任意成分を、適当な装置(撹拌機、乳化機、混練機)内で混練することにより製造することができる。しかし本発明の毒餌剤は粘性液状ないしゲル状であるため、製造工程、殊に混練工程で多くの気泡を含むことがある。このような気泡が毒餌剤中に存在することは、微生物を発生させる原因になり、製品の品質に影響し得る。また多くの気泡を含む場合、押し出し時の圧力が、毒餌剤を充填しているシリンジ内に残り、シリンジからの押し出しを止めた後に、毒餌剤の漏出や垂れが起こりやすくなる。
【0037】
よって気泡を除去するため、または減少させるために、本発明の毒餌剤を減圧脱気することが好ましい。ここで本発明において「減圧」とは、混練を行う装置内の圧力を大気圧未満に低下させることをいい、「毒餌剤の減圧脱気」とは、毒餌剤中の気泡を除去するために、毒餌剤を減圧下で保持することをいう。毒餌剤の減圧脱気における真空度(減圧度)は、毒餌剤の粘度によって変わり得るが、好ましくは0.1MPa以下、より好ましくは0.08MPa以下、さらに好ましくは0.06MPa以下である(MPa絶対基準)。但し装置上の制約や運転コスト、毒餌剤中の水分制御の観点から、減圧脱気の際の真空度(減圧度)は、好ましくは0.01MPa以上、より好ましくは0.02MPa以上、さらに好ましくは0.04MPa以上である。減圧脱気の時間は、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上、さらに好ましくは60分以上であり、好ましくは180分以下、より好ましくは150分以下、さらに好ましくは120分以下である。減圧脱気では、単に減圧下に毒餌剤を静置してもよく、また場合により減圧下で加熱および/または撹拌してもよい。減圧脱気のための装置は、毒餌剤を減圧下に保持することができる装置であれば特に限定は無く、例えば真空乳化機などを減圧脱気のために使用することができる。
【0038】
また気泡を除去するため、または減少させるために、殺虫成分、水、水溶性多価アルコール、ゼラチンおよび場合によりその他の任意成分を減圧下で混練することにより、本発明の害虫駆除用毒餌剤(脱気毒餌剤)を製造することが好ましい。本発明の毒餌剤成分を混練する際の真空度(減圧度)は、場合により加熱して混練する際の成分混合物の粘度によって変わり得るが、好ましくは0.1MPa以下、より好ましくは0.08MPa以下、さらに好ましくは0.06MPa以下であり、好ましくは0.01MPa以上、より好ましくは0.02MPa以上、さらに好ましくは0.04MPa以上である(MPa絶対基準)。減圧下における混練時間は、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上、さらに好ましくは60分以上であり、好ましくは180分以下、より好ましくは150分以下、さらに好ましくは120分以下である。このような減圧混練を行うために、当業者に知られているあらゆる装置、例えば真空乳化機などを使用することができる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0040】
実施例1(ゼラチンの有無による影響)
表1に示す成分を、真空乳化機内に添加し、温度80℃、撹拌速度3000rpmの条件および大気圧下で60分混練して害虫駆除用毒餌剤No.1およびNo.2を製造した(表1の成分量は質量部である、以下同じ)。
これらの毒餌剤をシリンジに充填し、シリンジをベイトガンに装填し、シリンジ内の毒餌剤をベイトガンにより10点押し出した後に、ベイトガンに装填したシリンジを30秒および1時間静置し、シリンジの先端から漏出した毒餌剤を全てとり切って、その質量を測定した。結果を表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
表1の結果から明らかなように、ゼラチンを含有する本発明の毒餌剤No.1では、ゼラチンを含有しないNo.2と比べて、シリンジからの漏出量が大幅に低減されている。
【0043】
実施例2(ゼラチンの種類による影響)
実施例1と同様にして、表2に示す成分を混練して害虫駆除用毒餌剤No.3〜7を製造し、10点押し出した後、30秒静置したシリンジからの毒餌剤の漏出量を測定した。結果を表2に示す。
【0044】
【表2】

【0045】
表2の結果から示されるように、JIS K6503に規定する方法により測定したゼリー強度が135〜215gであり、粘度が3.5〜4.5mPa・sであるゼラチンを使用した場合、毒餌剤の漏出量が特に低減されている。
【0046】
実施例3(水および水溶性多価アルコールの量による影響)
実施例1と同様にして、表3に示す成分を混練して害虫駆除用毒餌剤No.8〜12を製造した。
これらの毒餌剤を、80℃の恒温乾燥機に24時間投入し、その乾燥による質量の減少率を測定した。結果を表3に示す。
80℃の恒温乾燥機に24時間投入して乾燥した毒餌剤を、チャバネゴキブリ(雄、雌、幼虫各10匹)を入れたプラスチック製容器(32cm×25cm×10cm)に投入し、1時間放置した。1時間後、チャバネゴキブリによって摂食された量を測定した。この試験を3回行い、その平均摂食量を求めた。結果を表3に示す。なおチャバネゴキブリは、毒餌剤投入前には、水のみを与えるだけで24時間馴致絶食させていた。
【0047】
【表3】

【0048】
表3の結果から示されるように、製造時の水分量が多くて、グリセリン(水溶性多価アルコール)量が少ない、毒餌剤No.11および12は、乾燥後の害虫摂食量が15.4mgおよび13.7mgと少なかった。これらに比べて水およびグリセリンの量が本発明の好ましい範囲内(水:4〜30質量%、グリセリン:15〜45質量%)にある毒餌剤No.8は、乾燥後の平均摂食量が40.9mgと特に良好であった。
【0049】
実施例4(減圧混練による影響)
表4に示す成分を、真空乳化機内に添加し、温度80℃、撹拌速度3000rpmの条件下で60分混練して害虫駆除用毒餌剤No.13およびNo.14を製造した。但し毒餌剤No.13は、減圧下(真空度:0.05MPa)で混練し、No.14は減圧せずに大気圧下で混練した。これらの毒餌剤を、内径2.7cm、高さ6.0cmの円筒形ガラス容器(容積34cm3)に隙間無く充填して、その質量を測定した。結果を表4に示す。
またこれらの毒餌剤をシリンジに充填し、シリンジをベイトガンに装填し、シリンジ内の毒餌剤をベイトガンにより10点押し出した後に、ベイトガンに装填したシリンジを30秒静置し、シリンジの先端から漏出した毒餌剤を全てとり切って、その質量を測定した。その結果も表4に示す。
【0050】
【表4】

【0051】
表4の結果から、減圧混練により製造した毒餌剤No.13は、大気圧下での混練により製造したNo.14よりも質量が多くて気泡が少ないこと、およびシリンジからの漏出量がさらに低減されていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺虫成分、水、水溶性多価アルコールおよびゼラチンを含有することを特徴とする害虫駆除用毒餌剤。
【請求項2】
JIS K6503に規定する方法により測定したゼリー強度が135〜215gであり、粘度が3.5〜4.5mPa・sであるゼラチンを含有する請求項1に記載の害虫駆除用毒餌剤。
【請求項3】
ゼラチンを、害虫駆除用毒餌剤の全質量中に0.1〜10質量%含有する請求項1または2に記載の害虫駆除用毒餌剤。
【請求項4】
水溶性多価アルコールの融点が、25℃未満である請求項1〜3のいずれかに記載の害虫駆除用毒餌剤。
【請求項5】
水溶性多価アルコールを、害虫駆除用毒餌剤の全質量中に5〜50質量%含有する請求項1〜4のいずれかに記載の害虫駆除用毒餌剤。
【請求項6】
水溶性多価アルコールとして、グリセリンを含有する請求項1〜5のいずれかに記載の害虫駆除用毒餌剤。
【請求項7】
水溶性多価アルコールとして、平均分子量200〜600のポリエチレングリコールを含有する請求項1〜6のいずれかに記載の害虫駆除用毒餌剤。
【請求項8】
水を、害虫駆除用毒餌剤の全質量中に、4〜30質量%含有する請求項1〜7のいずれかに記載の害虫駆除用毒餌剤。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の害虫駆除用毒餌剤を減圧脱気して得られることを特徴とする害虫駆除用の脱気毒餌剤。
【請求項10】
殺虫成分、水、水溶性多価アルコールおよびゼラチンを、減圧下で混練することを特徴とする害虫駆除用の脱気毒餌剤の製造方法。

【公開番号】特開2007−99704(P2007−99704A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−292778(P2005−292778)
【出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【出願人】(000205432)大阪化成株式会社 (21)
【Fターム(参考)】