説明

家具と建物面との間の隙間閉塞装置

【課題】家具の周囲と建物側の壁面や天井面との間の隙間を閉塞するための装置のコストダウンを図る。
【解決手段】家具の建物面12aに対面する外側板2aに設けられた貫通孔22、この貫通孔22内に内嵌固定されたナット23、このナット23に螺合する螺軸部24を備えた調整支持具18、及び隙間閉塞部材19を備え、この隙間閉塞部材19には、家具の外側板2aに対面し且つ隙間閉塞部材19の長さ方向に連続する凹溝部29と、この隙間閉塞部材19が家具の外側板2aに対して遠近方向に移動したときに当該外側板2aに対して相対移動自在に重なる張出し板部30a,30bが設けられ、調整支持具18の螺軸部24の外端側には凹溝部29内に相対回転自在に嵌合する支持用鍔部25が設けられると共に、当該螺軸部24の内端側には回転操作部26が設けられた構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設建物内に収納家具を設置する場合に当該家具と建物面との間に生じる隙間を閉塞するための隙間閉塞装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
既設建物内に家具を設置する場合、当該家具の左右両外側板や天井板が建物の左右両側壁面や天井面にぴったりと隙間なく隣接するように家具を製造しておくことは容易ではなく、仮にそのように製造することが出来たとしても、その家具を建物内の所定位置に搬入設置することは現実的に難しい。このような問題点を解決するために、特許文献1に記載されるように、家具の左右両外側板の外側に、当該家具の前記外側板と建物面との間の隙間を埋める隙間閉塞部材を出退自在に取り付けて成る隙間閉塞装置が考えられた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−290264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された従来の隙間閉塞装置は、隙間閉塞部材を出退自在に支持する専用の支持部材と、この隙間閉塞部材を出退操作するためのネジ軸を家具の外側板に自転のみ可能に支持する構造複雑なネジ軸支持部材を必要とするものであって、部品点数が多く、大幅なコストアップを免れなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題点を解消することのできる家具と建物面との間の隙間閉塞装置を提案するものであって、請求項1に記載の本発明に係る家具と建物面との間の隙間閉塞装置は、後述する実施例との関係を理解し易くするために、当該実施例の説明において使用した参照符号を括弧付きで付して示すと、建物面(12a,12b,13)に隣り合うように設置される家具(1)と建物面(12a,12b,13)との間の隙間閉塞装置(16a,16b,17)であって、家具(1)の建物面(12a,12b,13)に対面する外側板(2a,2b,3)に当該家具(1)の内外にわたって貫通するように設けられた複数の貫通孔(22,32)、この各貫通孔(22,32)内に内嵌固定されたナット(23,33)、この各ナット(23,33)に螺合する螺軸部(24)を備えた複数の調整支持具(18,20)、及びこの複数の調整支持具(18,20)に長さ方向の複数か所が支持されて家具(1)の前記外側板(2a,2b,3)と建物面(12a,12b,13)との間の隙間を埋める隙間閉塞部材(19,21)を備え、この隙間閉塞部材(19,21)には、家具(1)の前記外側板(2a,2b,3)に対面し且つ当該隙間閉塞部材(19,21)の長さ方向に連続する凹溝部(29,37)と、この隙間閉塞部材(19,21)が家具(1)の前記外側板(2a,2b,3)に対して遠近方向に移動したときに当該外側板(2a,2b,3)に対して相対移動自在に重なる張出し板部(30a,30b,36a)が設けられ、前記調整支持具(18,20)の螺軸部(24)の外端側には前記凹溝部(29,37)内に相対回転自在に嵌合する支持用鍔部(25)が設けられると共に、当該螺軸部(24)の内端側には回転操作部(26)が設けられた構成になっている。
【発明の効果】
【0006】
本発明の家具と建物面との間の隙間閉塞装置によれば、家具の外側板には、内外にわたって貫通する貫通孔を複数穿設すると共に、各貫通孔にナットを内嵌固定するだけで良く、従来のように、隙間閉塞部材を出退移動自在に支持する支持部材や、隙間閉塞部材を出退操作するためのネジ軸を家具の外側板に自転のみ可能に支持するネジ軸支持部材を必要としないので、部品点数が少なく、装置全体を安価に実施することが出来る。又、家具設置時に隙間閉塞部材を必要としないことが判明した場合でも、前記ナットに螺合する調整支持具を家具の外側板から外側へ螺進させ、当該調整支持具で支持された隙間閉塞部材と共に家具から取り外せば、家具の外側板には、ナットが内嵌固定された複数の貫通孔が残るだけであって、従来の隙間閉塞装置を備えない一般的な家具と同じように取り扱って、家具の外側板を建物面に隣接させて設置することが出来るという格別の効果も有する。
【0007】
上記本発明を実施する場合、具体的には請求項2に記載のように、前記隙間閉塞部材(19,21)は、前記凹溝部(29,37)と張出し板部(30a,30b,36a)を備えた内側部材(27,34)と、この内側部材(27,34)の外側に付設されて建物面(12a,12b,13)に当接する外側部材(28,35)とから構成することが出来る。この構成によれば、前記凹溝部と張出し板部を成形する内側部材は硬質合成樹脂製又は金属製として必要な強度を持たせ、建物面に当接する外側部材は、建物面に密着させ易い軟質合成樹脂製とすることが出来る。
【0008】
又、隙間閉塞部材が家具の前記外側板に対して遠近方向に移動したときに当該隙間閉塞部材が備える張出し板部を家具の前記外側板に対して相対移動自在に重ねるための構成は、請求項3に記載のように、前記張出し板部(30a,30b)を、家具(1)の前記外側板(2a,2b)に設けられた溝(31a,31b)に出退自在に遊嵌させることにより実施することも出来るし、請求項4に記載のように、前記張出し板部(30a,36a)を、家具(1)の前記外側板(2a,2b,3)の家具正面側に重ねることによって実施することも出来る。前者の請求項3に記載の構成を採用した場合、家具の外側板に溝が形成されるだけであるから、既に説明した本発明の効果を損ねることはない。勿論、後者の請求項4に記載の構成を採用した場合には、家具の外側板に何らの加工も必要としないので、一層のコストダウンを図ることが出来る。
【0009】
尚、隙間閉塞部材(19)が備える張出し板部(30a,30b)を、調整支持具(18)を内外両側から挟むように一対並設することも出来る。この場合、隙間閉塞部材全体の強度を十分に高めることが出来るが、両方の張出し板部(30a,30b)を、請求項3に記載のように、家具の前記外側板に設けられた溝(31a,31b)に出退自在に遊嵌させても良いし、内側の張出し板部(30b)のみを家具(1)の前記外側板(2a,2b)に設けられた溝(31b)に出退自在に遊嵌させ、外側の張出し板部(30a)は、請求項4に記載のように、家具(1)の前記外側板(2a,2b)の家具正面側に重ねることが出来る。
【0010】
又、前記隙間閉塞部材(19,21)の凹溝部(29,37)は、前記調整支持具(18,20)の支持用鍔部(25)が前記凹溝部(29,37)の長さ方向に対して直角向き、即ち、調整支持具(18,20)の螺軸部(24)の軸心方向に出し入れ出来る、内側開放の断面形状であっても良いが、請求項5に記載のように、前記凹溝部(29)は、調整支持具(18)の支持用鍔部(25)の直径方向両側辺を当該凹溝部(29)の長さ方向に摺動自在に把持する断面形状に構成することも出来る。この構成によれば、家具の外側板に取り付ける前の隙間閉塞部材の凹溝部に、その端部から差し込む要領で複数の調整支持具を組付けて一体化することが出来るので、家具の設置作業が容易に行える。
【0011】
本発明の隙間閉塞装置は、請求項6に記載のように、家具の左右両側に配設したり、請求項7に記載のように、家具の天井側に配設することが出来る。勿論、家具の底部を除く左右両側と天井側の全てに本発明の隙間閉塞装置を配設することも出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の隙間閉塞装置の使用例を示す正面図である。
【図2】図2は、同縦断側面図である。
【図3】図3は、同横断平面図である。
【図4】図4は、側部の隙間閉塞装置の1つを示す横断平面図である。
【図5】図5は、側部の隙間閉塞装置の1つを示す縦断正面図である。
【図6】図6Aは、図5の縦断右側面図、図6Bは、図5の縦断左側面図である。
【図7】図7は、天井部の隙間閉塞装置の1つを示す縦断側面図である。
【図8】図8は、天井部の隙間閉塞装置の1つを示す縦断正面図である。
【図9】図9Aは、図7の横断底面図、図9Bは、図7の横断平面図である。
【図10】図10は、側部の隙間閉塞装置の第一変形例を示す横断平面図である。
【図11】図11は、側部の隙間閉塞装置の第二変形例を示す横断平面図である。
【図12】図12は、側部の隙間閉塞装置の第三変形例を示す横断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1において、1は箱形の収納家具であって、左右両外側板2a,2bと天井板3及び裏板4によって構成された箱形本体5内に、底板6、この底板6と天井板3との間に配設された2つの垂直仕切り板7a,7b、及び各垂直仕切り板7a,7bと左右両外側板2a,2bとの間と垂直仕切り板7a,7b間に水平に架設された上下複数段の棚板8によって、立体的に収納区画が形成されたもので、下端領域の収納区画を開閉する扉9a〜9dが併設されている。10は底板6を支持するように左右両外側板2a,2b間に配設された前後一対の底板支持板である。この収納家具1の箱形本体5内の構成は一例であって、その構造は限定されるものではない。
【0014】
上記構成の収納家具1は、図2及び図3に示すように、既設建物内に確保された設置空間、即ち、床面11、左右両側壁面12a,12b、及び天井面13で周囲が囲まれ、奥側が垂直壁面14で閉じられ、正面側が開放された設置空間15内に、収納家具1の裏板4が垂直壁面14に隣接するように据え付けられる。このとき、収納家具1の左右両外側板2a,2bの外側と天井板3の外側とに本発明による隙間閉塞装置16a,16b,17が前以て取り付けられている。
【0015】
左右両側の隙間閉塞装置16a,16bは、左右両外側板2a,2bの高さの全域に及ぶ長さのもので、その上下両端近傍位置と中間高さの3か所が夫々調整支持具18によって収納家具1の左右両外側板2a,2bに取り付けられる垂直隙間閉塞部材19を備えている。天井側の隙間閉塞装置17は、建物側の設置空間15を形成する左右両側壁面12a,12b間に丁度はまり込む水平長さのものであって、その左右両端近傍位置と中間位置の3か所が夫々調整支持具20によって収納家具1の天井板3に取り付けられる水平隙間閉塞部材21を備えている。
【0016】
左右両側の隙間閉塞装置16a,16bは、左右対称構造のものであるから、図4〜図6に示す片側の隙間閉塞装置16aについて詳細構造を説明すると、収納家具1の外側板2aには、調整支持具18が配置される上下3か所において、当該外側板2aを内外にわたって水平に貫通する貫通孔22が穿設され、これら各貫通孔22には、外側からインサートナット23が圧入固定されている。このインサートナット23は従来周知のもので、外周面には環状で断面鋸歯状の抜け止め用突条が軸方向複数段に一体形成され、同心状に貫通する雌ネジ孔を備えたもので、このインサートナット23の最少外径より若干大径の前記貫通孔22に対して外側板2aの外側から、当該インサートナット23の外端面が外側板2aの外側面と面一になる深さまで叩き込むことにより、抜け止め用突条が貫通孔22の内周面に食い込んで抜け止め状態に固定される。勿論、このようなインサートナット23を使用しないで、雌ネジ孔を有する各種ナットを適当な手段により貫通孔22に内嵌固定しても良い。
【0017】
各調整支持具18は、前記インサートナット23を外側板2aの外側から螺合貫通する螺軸部24と、この螺軸部24の外端に同心状に一体形成された支持用鍔部25と、螺軸部24の内端に設けられた回転操作部26から構成されている。回転操作部26としては、螺軸部24の内端に同心状に刻設された図示のプラスドライバー差し込み用の凹部や、螺軸部24の内端から同心状に突設させたボックススパナ嵌合用の角軸部などが採用できる。
【0018】
上下3か所の調整支持具18によって支持される垂直隙間閉塞部材19は、硬質合成樹脂製の内側部材27と、この内側部材26の外側に接着剤などにより固着された軟質合成樹脂製の外側部材28とから構成されている。内側部材26には、前記調整支持具18の支持用鍔部25が相対回転自在に嵌合する凹溝部29が全長にわたって連続するように形成されると共に、当該凹溝部29の両側から内向きに突出する前後一対の張出し板部30a,30bが一体形成されている。尚、凹溝部29は、前記調整支持具18の支持用鍔部25の直径方向両側辺を把持する前後一対の張出し溝部29a,29bを備えた断面形状のものである。従って調整支持具18は、垂直隙間閉塞部材19の長さ方向の両端に解放されている前記凹溝部29の長さ方向の一端に支持用鍔部25を嵌合させ、当該凹溝部29内で支持用鍔部25を垂直隙間閉塞部材19の長さ方向に相対的にスライドさせることにより、垂直隙間閉塞部材19の長さ方向の所定位置に配置させることが出来るものである。一方、収納家具1の外側板2aには、その外側面で上下3か所の貫通孔22を挟むように、前記垂直隙間閉塞部材19側の前後一対の張出し板部30a,30bが出退自在に遊嵌する前後一対の溝31a,31bが、当該外側板2aの全高にわたって刻設されている。
【0019】
前記各貫通孔22及び前後一対の溝31a,31bは、外側板2a,2bの前側辺、即ち、収納家具1の正面側の前側辺に出来る限り近い位置に設けられている。而して上記構成の隙間閉塞装置16a,16bは、建物側の設置空間15内に設置する前の収納家具1の左右両外側板2a,2bの外側の前側辺に近い位置に、前記各貫通孔22及び前後一対の溝31a,31bを利用して垂直に取り付けられる。即ち、予め3つの調整支持具18を、夫々の螺軸部24を各貫通孔22の外側からインサートナット23に螺合貫通させる。このとき、調整支持具18の支持用鍔部25の内側に小径段部25aを同心状に形成しておき、この小径段部25aが外側板2a,2bの外側面に当接する一定深さまで螺軸部24をねじ込んだとき、支持用鍔部25の周辺部と外側板2a,2bとの間に、垂直隙間閉塞部材19を上から差し込んで取り付けるのに必要な間隙が確保されるように構成しておくのが望ましい。次に外側板2a,2bから突出している各調整支持具18の支持用鍔部25に対して、垂直隙間閉塞部材19(内側部材27)の凹溝部29を、その長さ方向の下端から順次嵌合させるように、垂直隙間閉塞部材19を外側板2a,2bに沿って下向きに移動させることにより、垂直隙間閉塞部材19を収納家具1の左右両外側板2a,2bの外側に取り付ける。このとき、各調整支持具18の螺軸部24は、その全体が貫通孔22内に埋没した状態であるから、垂直隙間閉塞部材19の外側面、即ち、外側部材28の外側面28aは、外側板2a,2bに最接近している状態である。
【0020】
天井側の隙間閉塞装置17が取り付けられる収納家具1の天井板3には、図7〜図9に示すように、その左右両端近傍位置と中央位置の3か所で、当該天井板3の前側辺(収納家具1の正面側の側辺)に近い位置に上下方向に貫通する貫通孔32が設けられ、この各貫通孔32に、左右両側の隙間閉塞装置16a,16bの取付け構造におけるインサートナット23と同一のインサートナット33が、天井板3の上面側から圧入固定されている。この各貫通孔32内のインサートナット33に夫々調整支持具20が取り付けられるが、この調整支持具20と左右両側の隙間閉塞装置16a,16bの取付けに採用された調整支持具18とは同一構造のものであるから、同一符号を付して構造説明は省略する。而して、この天井側の隙間閉塞装置17の取付け構造においては、各貫通孔32の上端開口部に、調整支持具20の小径段部25aが嵌まり込む座ぐり凹部32aが形成されている。
【0021】
天井側の隙間閉塞装置17に使用されている水平隙間閉塞部材21は、硬質合成樹脂製の内側部材34とその上側に接着剤などで固着された軟質合成樹脂製の外側部材35から構成され、内側部材34は、垂直前側板36と、当該垂直前側板36の中間高さの裏側に各調整支持具20の支持用鍔部25が相対回転自在に嵌合するように形成された下側開放の凹溝部37と、この凹溝部37の後側辺から上向きに垂直に延出する上向き垂直板部38を備えたもので、外側部材35は、内側部材34の前側板36の上半部と上向き垂直板部38との間の上側開放の凹溝部内に嵌合して、接着剤などにより固着されている。この外側部材35は、上向き垂直板部38より上側の背面側が斜めに切除された段面片刃形状のものであって、その上向きの尖端部35aが弾性変形し易いように構成されている。
【0022】
上記構成の隙間閉塞装置17は、建物側の設置空間15内に設置する前で且つ左右両側の隙間閉塞装置16a,16bが上記のように取り付けられた状態の収納家具1の天井板3の上側に取り付けられる。即ち、予め3つの調整支持具20を、夫々の螺軸部24を各貫通孔32の上側からインサートナット33に下向きに螺合貫通させる。このとき、調整支持具20の小径段部25aが天井板3側の座ぐり凹部32a内に嵌合して、上端の支持用鍔部25が天井板3の上面に当接する状態まで調整支持具20を螺進させる。次に天井板3から突出している各調整支持具20の支持用鍔部25に対して、水平隙間閉塞部材21(内側部材34)の凹溝部37を上から被せて、当該各調整支持具20の支持用鍔部25を凹溝部37内に嵌合させて、水平隙間閉塞部材21を水平に支持させる。このとき、水平隙間閉塞部材21(内側部材34)の垂直前側板36の下半部が天井板3の収納家具正面側の垂直端面3aに摺接するように構成されている。このとき、各調整支持具20の支持用鍔部25が天井板3の上面に当接する状態であるから、水平隙間閉塞部材21上端(外側部材35の尖端部35a)は、天井板3に最接近している状態である。
【0023】
以上のようにして収納家具1の左右両側と天井側に夫々隙間閉塞装置16a,16b,17を取り付けたならば、この収納家具1を建物側の設置空間15内の所定位置に搬入設置する。このとき、左右両側の隙間閉塞装置16a,16bにおける外側部材28の外側面28aと左右両側壁面12a,12bとの間と、天井側の隙間閉塞装置17における外側部材35の尖端部35aと天井面13との間には、夫々所定の間隙が形成されている。換言すれば、このような状態に収納家具1を搬入設置できるように、収納家具1のサイズと建物側の設置空間15のサイズとが構成されるわけであるが、建物側の設置空間15は、建物自体の壁面や天井面で所定サイズに構成出来ないとき、これら建物自体の壁面や天井面などに別部材を付設して所定のサイズに仕上げることも出来る。
【0024】
以上のように収納家具1を建物側の設置空間15内の所定位置に搬入設置したならば、左右両側の隙間閉塞装置16a,16bの垂直隙間閉塞部材19を支持している上下3つの調整支持具18を螺進操作する。即ち、図4に示すように、収納家具1の内側から各貫通孔22にプラスドライバー39を挿入し、調整支持具18の螺軸部24の内端に形成されている回転操作部26に差し込むことにより、当該プラスドライバー39で螺軸部24を螺進方向に回転操作する。このようにして各調整支持具18を順次少しずつ螺進させ、垂直隙間閉塞部材19をほぼ平行に左右両側壁面12a,12b側へ横動させ、図4に示すように、当該垂直隙間閉塞部材19における外側部材28の外側面28aを左右両側壁面12a,12bに圧接させる。この垂直隙間閉塞部材19の横動に伴って、当該垂直隙間閉塞部材19の内側部材27における張出し板部30a,30bは、収納家具1の外側板2a,2bの溝31a,31b内を脱出方向に移動するが、溝31a,31b内から張出し板部30a,30bが抜け出る以前に外側部材28の外側面28aが左右両側壁面12a,12bに圧接するように構成されている。尚、収納家具1の左右両外側板2a,2bに設けられている貫通孔22には、必要に応じてキャップ40を内側から圧入固定しておくのが望ましい。
【0025】
次に天井側の隙間閉塞装置17の水平隙間閉塞部材21を支持している左右3つの調整支持具20を、調整支持具18について説明した要領で螺進操作し、水平隙間閉塞部材21をほぼ平行に天井面13側へ押し上げ、図7に示すように、当該水平隙間閉塞部材21における外側部材35の尖端部35aを天井面13に圧接させる。この水平隙間閉塞部材21の上動に伴って、当該水平隙間閉塞部材21の内側部材34における垂直前側板36の下半部(即ち、天井板3の正面側の垂直端面3aと重なる張出し板部36a)は、収納家具1における天井板3の垂直端面3aに沿って上動するが、天井板3の垂直端面3aから上方に離れる以前に外側部材35の尖端部35aが天井面13に圧接するように構成されている。尚、図示していないが、収納家具1の天井板3に設けられている貫通孔32には、必要に応じてキャップを内側から圧入固定しておくことが出来る。
【0026】
以上の操作の結果、図1〜図3に示すように、収納家具1と建物側の左右両側壁面12a,12bとの間の隙間は左右両側の隙間閉塞装置16a,16bによって塞がれ、収納家具1と建物側の天井面13との間の隙間は天井側の隙間閉塞装置17によって塞がれた状態になる。
【0027】
尚、図4では、左右両側の隙間閉塞装置16a,16bの垂直隙間閉塞部材19が、収納家具1の外側板2a,2bの正面側の垂直端面2cから奥側へ入り込んでいるが、当該垂直隙間閉塞部材19の奥行き方向の巾を広くして、垂直隙間閉塞部材19が外側板2a,2bの正面側の垂直端面2cとほぼ面一に並ぶように構成することが出来る。又、垂直隙間閉塞部材19の全体の奥行き方向の巾を広くしないで、図10に示すように、外側部材28のみを内側部材27側に被せるように横断面L字形に形成することも出来る。更に、図11に示すように、水平隙間閉塞部材21の内側部材27に形成される前後一対の張出し板部30a,30b間の間隔を広げ、外側の張出し板部30aを外側板2a,2bの正面側の垂直端面2cに重ねるように構成すれば、収納家具1と左右両側壁面12a,12bとの間に奥側に凹んだ凹溝部を形成させないで済む。この場合、水平隙間閉塞部材21の内側部材27が、張出し溝部29a,29bを有する凹溝部29において各調整支持具18の支持用鍔部25と係合しているので、図12に示すように、前後一対の張出し板部30a,30bの内、内側の張出し板部30bと、当該張出し板部30bが遊嵌する内側の溝31bとを無くすことも可能である。
【0028】
尚、調整支持具18,20に設けた小径段部25aは、無くとも良い。この場合は、天井側の隙間閉塞装置17の取付けのために天井板3に設けた座ぐり凹部32aは不要である。又、収納家具1の左右両側に使用した隙間閉塞装置16a,16bと同一のものを収納家具1の天井側に使用することも出来るし、逆に、収納家具1の天井側に使用した隙間閉塞装置17と同一のものを収納家具1の左右両側に使用することも出来る。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の家具と建物面との間の隙間閉塞装置は、建物内に確保された設置空間内に収納家具などを設置する際に、当該家具の周囲と建物側の壁面や天井面との間の隙間を閉塞する装置として活用出来る。
【符号の説明】
【0030】
1 収納家具
2a,2b 左右両外側板
3 天井板
12a,12b 左右両側壁面
13 天井面
15 設置空間
16a,16b 左右両側の隙間閉塞装置
17 天井側の隙間閉塞装置
18,20 調整支持具
19 垂直隙間閉塞部材
21 水平隙間閉塞部材
22,32 貫通孔
23,33 インサートナット
24 螺軸部
25 支持用鍔部
26 回転操作部
27,34 内側部材
28,35 外側部材
29,37 凹溝部
29a,29b 張出し溝部
30a,30b,36a 張出し板部
31a,31b 溝
36 垂直前側板
38 上向き垂直板部
40 キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物面に隣り合うように設置される家具と建物面との間の隙間閉塞装置であって、家具の建物面に対面する外側板に当該家具の内外にわたって貫通するように設けられた複数の貫通孔、この各貫通孔内に内嵌固定されたナット、この各ナットに螺合する螺軸部を備えた複数の調整支持具、及びこの複数の調整支持具に長さ方向の複数か所が支持されて家具の前記外側板と建物面との間の隙間を埋める隙間閉塞部材を備え、この隙間閉塞部材には、家具の前記外側板に対面し且つ当該隙間閉塞部材の長さ方向に連続する凹溝部と、この隙間閉塞部材が家具の前記外側板に対して遠近方向に移動したときに当該外側板に対して相対移動自在に重なる張出し板部が設けられ、前記調整支持具の螺軸部の外端側には前記凹溝部内に相対回転自在に嵌合する支持用鍔部が設けられると共に、当該螺軸部の内端側には回転操作部が設けられている、家具と建物面との間の隙間閉塞装置。
【請求項2】
前記隙間閉塞部材は、前記凹溝部と張出し板部を備えた内側部材と、この内側部材の外側に付設されて建物面に当接する外側部材とから構成されている、請求項1に記載の家具と建物面との間の隙間閉塞装置。
【請求項3】
前記隙間閉塞部材の張出し板部は、家具の前記外側板に設けられた溝に出退自在に遊嵌している、請求項1又は2に記載の家具と建物面との間の隙間閉塞装置。
【請求項4】
前記隙間閉塞部材の張出し板部は、家具の前記外側板の家具正面側に重なるように構成されている、請求項1又は2に記載の家具と建物面との間の隙間閉塞装置。
【請求項5】
前記隙間閉塞部材の凹溝部は、前記調整支持具の支持用鍔部の直径方向両側辺を当該凹溝部の長さ方向に摺動自在に把持する断面形状を有する、請求項1〜4の何れか1項に記載の家具と建物面との間の隙間閉塞装置。
【請求項6】
家具の前記外側板は、家具の左右両側の垂直に配置された外側板であって、前記建物面は、前記外側板に隣り合う垂直壁面である、請求項1〜5の何れか1項に記載の家具と建物面との間の隙間閉塞装置。
【請求項7】
家具の前記外側板は、家具の天井部に水平に配置された外側板であって、前記建物面は、前記外側板に隣り合う水平の天井面である、請求項1〜5の何れか1項に記載の家具と建物面との間の隙間閉塞装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−139412(P2012−139412A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−294561(P2010−294561)
【出願日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(710010906)アクシス株式会社 (2)