説明

家具の高さ調整装置

【課題】構造が簡単で、容易な操作で高さの調整を行うことができるようにした家具の高さ調整装置を提供する。
【解決手段】家具の脚1の下端に下向きに突設したキャスタ軸6の上部に、高さ調整用の調整筒18を嵌合し、この調整筒18の内面に設けた雌ねじ部19を、前記キャスタ軸6の上部に設けた雄ねじ部17に螺合し、前記調整筒18の下端より下方に突出するキャスタ軸6に、キャスタ5の車輪支持体7を、キャスタ軸廻りに回転自在、かつ上下動可能として装着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下端にキャスタを設けて、移動自在とした家具の高さ調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下端にキャスタを設けた家具の高さ調整装置、例えばテーブルにおける天板の上下位置を、脚に設けたキャスタの取付部分において調整するようにした装置としては、脚の下端部に形成した雌ねじ部に、キャスタ軸の上端に形成した雄ねじ部を螺合し、キャスタ軸に、上下動可能、かつ回転不能として外嵌し、調整筒の回転操作により、キャスタ軸を回転させて、上下動させ、脚の高さ調整を行うように構成したものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−75040号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述の従来のものでは、調整筒の回転操作を行う際に、一旦、調整筒を握ってスプリングの付勢力に抗して引き下げ、係止状態にある調整筒の回転動作を解放した後、その解放状態を維持しながら、調整筒を回転させる必要があるため、操作性が悪く、調整作業が面倒であるばかりか、調整筒が、がた付き易い。
また、脚の雌ねじ部に対するキャスタ軸の螺合範囲を超えて、調整筒を回転させると、キャスタが落下してしまうため、このような落下を防止するための工夫を施さねばならず、構造が複雑になる。
【0004】
本発明は、従来の技術が有する上記のような問題点に鑑み、構造が簡単で、容易な操作で高さの調整を行うことができるようにした家具の高さ調整装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1) 家具の脚の下端に下向きに突設したキャスタ軸の上部に、高さ調整用の調整筒を嵌合し、この調整筒の内面に設けた雌ねじ部を、前記キャスタ軸の上部または家具の脚の下端部に設けた雄ねじ部に螺合し、前記調整筒の下端より下方に突出するキャスタ軸に、キャスタの車輪支持体を、キャスタ軸廻りに回転自在、かつ上下動可能として装着する。
【0006】
(2) 上記(1)項において、キャスタ軸の上端部に小径雄ねじ部を形成し、この小径雄ねじ部を、脚の下端面に形成した雌ねじ部に螺合して、キャスタ軸を、脚に対して回転不能に取り付ける。
【0007】
(3) 上記(1)または(2)項において、キャスタ軸の上部における小径雄ねじ部より下方の適所に、締付工具係合用の非円形断面部を設ける。
【0008】
(4) 上記(3)項において、脚の下端部に、キャスタ軸と同心の円形突部を形成し、この円形突部に、調整筒の内面における雌ねじ部より上方で、かつ大径の大径孔を、相対回転可能、かつ上下動可能として嵌合する。
【0009】
(5) 上記(1)〜(4)項において、車輪支持体を貫通するキャスタ軸における前記車輪支持体より下方に突出する下端部に、抜止め具を設ける。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、次のような効果を奏する。
請求項1記載の発明によると、調整筒を回転するだけで、その雌ねじ部と、キャスタ軸または脚の下端部に設けた雄ねじ部との螺合により、キャスタ軸と脚とが、車輪支持体および調整筒に対して上下動させられ、家具間高さが調整される。
したがって、調整筒を握って回転させるだけの簡単な操作で、家具の調整を行うことができ、しかも、構造も簡素化できる。
【0011】
請求項2記載の発明によると、キャスタ軸の上端部に形成した小径雄ねじ部を、脚の下端面に形成した雌ねじ部に螺合して、キャスタ軸を、脚に対して回転不能に取り付けたので、脚に対するキャスタ軸の取付けを容易に行うことができる。
【0012】
請求項3記載の発明によると、キャスタ軸の上部における小径雄ねじ部より下方の適所に、締付工具係合用の非円形断面部を設けたので、この非円形断面部に、スパナ等の締付工具を係合させて、小径雄ねじ部を、脚の雌ねじ部に強力に締め込むことができる。
【0013】
請求項4記載の発明によると、脚の下端部に、キャスタ軸と同心の円形突部を形成し、この円形突部に、調整筒の内面における雌ねじ部より上方で、かつ大径の大径孔を、相対回転可能、かつ上下動可能として嵌合してあるので、円形突部が、調整筒の回転時の案内面となって、調整筒の回転操作を円滑に行うことができるとともに、雄ねじ部やキャスタ軸の取付部分が露呈しないため、外観をよくすることができる。
【0014】
請求項5記載の発明によると、車輪支持体を貫通するキャスタ軸における前記車輪支持体より下方に突出する下端部に、抜止め具を設けたので、家具を持ち上げたときにおけるキャスタの車輪支持体の落下を確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、添附図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態を備えるテーブルにおける使用状態の背面図、図2は、同じく使用状態の側面図、図3は、同じく脚の下端部を拡大して示す正面図、図4は、図3のIV−IV線における縦断側面図、図5は、同じく高さを高くしたときの、図4と同様の縦断側面図である。
【0016】
図1および図2は、本発明の高さ調整装置を備えるテーブルを示す。このテーブルは、前後方向に二又状に開脚する左右1対の脚(1)(1)の上部に、左右方向を向く水平軸(2)をもってブラケット(3)をそれぞれ枢着し、この左右1対のブラケット(3)をもって天板(4)の左右両側部を支持することにより、天板(4)が、ほぼ水平をなす使用位置と、図2に2点鎖線で示すように、上下方向を向く折畳み位置とに回動しうるようになっている。
【0017】
各脚(1)における前後に二又状に開脚した各下端部(1a)には、キャスタ(5)が設けられており、テーブルを移動可能にしている。
【0018】
このキャスタ(5)は、図3および図4に示すように、脚(1)の下端部(1a)に下向きに突設したキャスタ軸(6)と、このキャスタ軸(6)の下部に、相対的に上下動可能、かつ回転自在として装着した車輪支持体(7)と、この車輪支持体(7)に、水平軸(8)をもって回転自在に装着した1対の車輪(9)(9)とにより構成されている。
【0019】
車輪支持体(7)の旋回中心部には、上下方向を向く貫通孔(10)が設けられており、この貫通孔(10)には、キャスタ軸(6)が貫通している。車輪支持体(7)の下端面(7a)より突出するキャスタ軸(6)の下端部(6a)には、環状溝(11)が形成されており、この環状溝(11)に、抜止め具としてのEリング(12)を装着することにより、車輪支持体(7)が、キャスタ軸(6)から抜け落ちないようにしている。車輪支持体(7)の下端面(7a)とEリング(12)との間は、所望の遊び間隔(W)を持たせることにより、車輪支持体(7)を、キャスタ軸(6)に対して水平方向に回転可能に、かつ上下動可能に装着している。
【0020】
キャスタ軸(6)の上端部には、小径雄ねじ部(13)が形成され、この小径雄ねじ部(13)を、脚(1)の下端部(1a)に形成した小径雌ねじ部(14)に、平座金(15)およびばね座金(16)を挾んで螺合することにより、キャスタ軸(6)の上端部が、脚(1)の下端部(1a)に強固に固着されている。
【0021】
キャスタ軸(6)の上部である小径雄ねじ部(13)の直下には、小径雄ねじ部(13)よりも大径の大径雄ねじ部(17)が形成され、この大径雄ねじ部(17)を含むキャスタ軸(6)の上部軸廻りには、円筒状の調整筒(18)が回転自在に外嵌されている。この調整筒(18)の中間部の内面には、雌ねじ部(19)が形成され、この雌ねじ部(19)は、キャスタ軸(6)の大径雄ねじ部(17)に螺合されている。なお、この大径雄ねじ部(17)の直下部には、互いに平行な少なくとも1対の平削面を有する、例えば断面形を正方形または六角形等の非円形断面部(20)が形成され、この非円形断面部(20)に、スパナ等の締付工具を係合させて、キャスタ軸(6)の小径雄ねじ部(13)を、脚(1)の小径雌ねじ部(14)に強く締め込むことができる。
【0022】
調整筒(18)の内面における雌ねじ部(19)より上方の部分には、雌ねじ部(19)より大径の大径孔(21)が形成され、この大径孔(21)は、脚(1)の下端部(1a)に形成したキャスタ軸(6)と同心の円形突部(22)に、相対回転可能、かつ上下動可能として外嵌されている。これにより、調整筒(18)の回転操作を円滑にしている。調整筒(18)の下端部には、平座金(23)が設けられ、この平座金(23)の下面と車輪支持体(7)の上面との間に、滑りの良好な滑り座金(24)が介在されており、車輪支持体(7)の旋回回動を円滑にしている。家具の最低高さ位置では、図3および図4に示すように、調整筒(18)の上端面(18a)と円形突部(22)の上端の拡径段部(22a)との間の間隔(a)が最小になるまで近接させている。
【0023】
次に、脚(1)の下端部(1a)へのキャスタ(5)の組付工程を説明する。まず、車輪支持体(7)の装着前に、キャスタ軸(6)の上端部における小径雄ねじ部(13)を、平座金(15)およびばね座金(16)を挟んで、脚(1)の下端部(1a)における小径雌ねじ部(14)に螺合し、ばね座金(16)の弾性復元力をもって、脚(1)にキャスタ軸(6)を回転不能に強固に固着する。このとき、キャスタ軸(6)のねじ込みによる回転操作は、キャスタ軸(6)の一部外周に形成した非円形断面部(20)に、スパナ等の締付工具を係合させることにより容易に行える。
【0024】
脚(1)の下端部(1a)にキャスタ軸(6)を取り付けた後、キャスタ軸(6)の大径雄ねじ部(17)に、調整筒(18)の雌ねじ部(19)を螺合し、調整筒(18)の上端部における大径孔(21)を、脚(1)の下端部(1a)側における円形突部(22)に嵌合させ、調整筒(18)の上端面(18a)と円形突部(22)の拡径段部(22a)との間の間隔(a)が最小になるまで近接させ、図3および図4に示す最低高さ位置とする。
【0025】
キャスタ軸(6)への調整筒(18)の取付け後、平座金(23)および滑り座金(24)を挟んで、車輪支持体(7)の貫通孔(10)にキャスタ軸(6)の下部を挿入し、車輪支持体(7)の下端面より突出するキャスタ軸(6)の下端部(6a)における環状溝(11)に、Eリング(12)を取り付けて、車輪支持体(7)が、キャスタ軸(6)から抜け落ちないようにすることにより、脚(1)の下端部(1a)にキャスタ(5)を取り付ける。
【0026】
図5は、テーブルの高さ調整時における調整筒(18)の回転操作で、調整筒(18)の上端面(18a)と拡径段部(22a)との間の間隔(b)を、最低高さ位置における間隔(a)より大とした状態を示している。
なお、このテーブルの高さの最大調整範囲は、車輪支持体(7)の下端面(7a)とEリング(12)との間の遊び間隔(W)により制限するようにしてある。すなわち、この遊び間隔(W)を、キャスタ軸(6)の大径雄ねじ部(17)に対する調整筒(18)の雌ねじ部(19)の可動範囲より小とすることにより、テーブルの高さを最大としたとき、Eリング(12)が車輪支持体(7)の下端面(7a)に当接して、調整筒(18)の雌ねじ部(19)がキャスタ軸(6)の大径雄ねじ部(17)から外れないようにしてある。
【0027】
図6は、本発明の第2実施形態を示す。この実施形態では、上記した第1実施形態において、キャスタ軸(6)の上部に形成した大径雄ねじ部(17)と、調整筒(18)の中間内周面に形成した雌ねじ部(19)とに代えて、脚(1)の下端部(1a)に形成した円形突部(22)の下部外周面に、大径雄ねじ部(25)を形成し、この大径雄ねじ部(25)に、調整筒(18)の上部内面に形成した雌ねじ部(26)を螺合させてある。その他の構成は、第1実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
このような構成としても、第1実施形態と同様の作用および効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態を備えるテーブルにおける使用状態の背面図である。
【図2】同じく使用状態の側面図である。
【図3】同じく脚の下端部を拡大して示す正面図である。
【図4】図3のIV−IV線における縦断側面図である。
【図5】同じく高さを高くしたときの、図4と同様の縦断側面図である。
【図6】本発明の第2実施形態を示す縦断側面図である。
【符号の説明】
【0029】
(1) 脚
(1a) 下端部
(2) 水平軸
(3) ブラケット
(4) 天板
(5) キャスタ
(6) キャスタ軸
(6a) 下端部
(7) 車輪支持体
(7a) 下端面
(8) 水平軸
(9) 車輪
(10) 貫通孔
(11) 環状溝
(12) Eリング(抜止め具)
(13) 小径雄ねじ部
(14) 小径雌ねじ部
(15) 平座金
(16) ばね座金
(17) 大径雄ねじ部
(18) 調整筒
(18a) 上端面
(19) 雌ねじ部
(20) 非円形断面部
(21) 大径孔
(22) 円形突部
(22a) 拡径段部
(23) 平座金
(24) 滑り座金
(25) 大径雄ねじ部
(26) 大径雌ねじ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
家具の脚の下端に下向きに突設したキャスタ軸の上部に、高さ調整用の調整筒を嵌合し、この調整筒の内面に設けた雌ねじ部を、前記キャスタ軸の上部または家具の脚の下端部に設けた雄ねじ部に螺合し、前記調整筒の下端より下方に突出するキャスタ軸に、キャスタの車輪支持体を、キャスタ軸廻りに回転自在、かつ上下動可能として装着したことを特徴とする家具の高さ調整装置。
【請求項2】
キャスタ軸の上端部に小径雄ねじ部を形成し、この小径雄ねじ部を、脚の下端面に形成した雌ねじ部に螺合して、キャスタ軸を、脚に対して回転不能に取り付けたことを特徴とする請求項1記載の家具の高さ調整装置。
【請求項3】
キャスタ軸の上部における小径雄ねじ部より下方の適所に、締付工具係合用の非円形断面部を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の家具の高さ調整装置。
【請求項4】
脚の下端部に、キャスタ軸と同心の円形突部を形成し、この円形突部に、調整筒の内面における雌ねじ部より上方で、かつ大径の大径孔を、相対回転可能、かつ上下動可能として嵌合したことを特徴とする請求項3記載の家具の高さ調整装置。
【請求項5】
車輪支持体を貫通するキャスタ軸における前記車輪支持体より下方に突出する下端部に、抜止め具を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の家具の高さ調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−261542(P2007−261542A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−92987(P2006−92987)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)