説明

家屋の空調システム

【課題】メンテナンスが容易であり、清浄された空気を家屋内に行き渡せることができる空調システムを提供する。
【解決手段】家屋の空調システムは、部屋を仕切る内壁と、家屋の外壁または隣接する部屋を仕切る内壁との間に、床下空間12と天井裏空間14とを連通する通気層7が形成された家屋において、空調装置17が設けられ、空調装置17で空調された空気が床下空間12、天井裏空間14および通気層7を通って循環するように構成されたものである。空調装置17は、筐体内部に空気を取り込む吸気口と筐体外部に空気を供給する空気供給口とが形成された筐体と、筐体の内部の空気を空気供給口から筐体の外部へ送風する送風手段と、吸気口から筐体の内部に取り込んだ外気に洗浄水を散水する散水手段と、散水された洗浄水と接触した空気の湿分を除去する除湿手段と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調された空気を、家屋の外壁の内側等に形成した通気層に沿って循環させるようにした家屋の空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来例として、部屋を仕切る内壁と、家屋の外壁または隣接する部屋を仕切る内壁との間に、床下空間と天井裏空間とを連通する通気層が形成され、かつ床下空間と天井裏空間とが、ファンを有する空調装置に、ダクトを介して接続された家屋の空調システムが提案されている(特許文献1参照)。このシステムは、空調装置のファンにより、床下空間と天井裏空間との少なくとも一方に空調空気を吐出させて空調空気を通気層に流通させることにより、結露の防止、効果的な冷暖房の実現、および家屋の快適性の向上等を図っている。
【0003】
その他、同様の特殊な全館空調もしくは換気システムが特許文献2〜9にて提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開11-218341号公報
【特許文献2】特開2003-269767号公報
【特許文献3】特許4086335号公報
【特許文献4】特開2008-14510号公報
【特許文献5】特開2009-08370号公報
【特許文献6】特開2008-241109号公報
【特許文献7】特開2008-111633号公報
【特許文献8】特開2007-93026号公報
【特許文献9】特開2006-46683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1等に記載の空調システムでは、外気に含まれる花粉、黄砂、汚染物質等がそのまま居住空間に持ち込まれる。また、居住空間内には塵埃、異臭、煙草の煙、NOx/SOx等も発生する場合がある。このため、健康に配慮する住宅では別途、空気浄化装置が必要であった。よく知られる濾過フィルタや吸着材などを用いる装置構造では浄化性能を維持するためにその交換や再生などのメンテナンスが大変であった。また、このような装置は時間とともに浄化性能が低下する。
【0006】
本発明は、上記背景技術に係る装置の課題を解決できるように、メンテナンスが容易であり、清浄された空気を家屋内に行き渡せることができる空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による空調システムは、家屋において、空調部と、該空調部へ屋外空気を導入する外気通路と、該空調部で空調された空気を屋内中に行き渡らせ再び該空調部に戻す内気通路とを有する空調システムである。
【0008】
このような空調システムにおいて、該空調部は、除塵要素と熱交換要素と送風要素を備えており、該除塵要素は、導入された空気に洗浄水を散水して該空気を浄化する散水手段を含む装置であることを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、空調装置の筐体内に取り込まれた空気を散水手段により浄化して家屋内に行き渡らせることができる。空気を洗浄水と接触させる方式によって空気の浄化を行うため、外気に含まれる花粉、黄砂、汚染物質等が容易に除去される。濾過フィルタや吸着材を使用しないため、浄化性能を維持するためのメンテナンス頻度を軽減することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、メンテナンスが容易であり、清浄された空気を家屋内に行き渡せることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の空調システムの第一の実施形態を備える家屋を略示する図。
【図2】本発明の第一の実施形態による空調装置の構成を示す模式図。
【図3】図2のデシカントロータの概念的斜視図。
【図4】本発明の空調システムの第二の実施形態を備える家屋を略示する図。
【図5】本発明による空調システムの変形例1を説明する図。
【図6】本発明による空調システムの変形例1を説明する図。
【図7】本発明による空調システムの変形例2を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の空調装置の実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
(第一の実施形態)
図1は本発明の空調システムの第一の実施形態を備える家屋を略示するものである。
【0014】
この家屋は、1階に2部屋1,2を、2階に1部屋3を備える2階建てとし、外壁4と各部屋1,2,3を仕切る内壁1a,2a,3aとの間に、気密かつ断熱構造の断熱壁5を内外に所要の間隙をもって配設することにより、外壁4と断熱壁5との間に上下方向を向く外側通気層6が形成されている。また、断熱壁5と内壁1a,2a,3aとの間に、上下方向を向く内側通気層7が形成されている。
【0015】
外側通気層6の下端は屋外に開口し、かつ上端は、屋根8の下方の屋根裏空間9に連通している。屋根裏空間9内には、上記の外側通気層6からだけでなく、軒下に設けた通気口10からも外気が流入しうるようになっている。また屋根8の頂部に設けた通気口11より排気して、空気が自然循環しうるようになっている。
【0016】
2階の部屋3の天井3cの上方の天井裏空間14と屋根裏空間9との間には、それらを仕切る水平の断熱板15が配設されている。
【0017】
1階の部屋1,2の各天井1c,2cと2階の部屋3の床3bとの間に形成された階間空間16は、上記の内側通気層7と、両部屋1,2の互いに隣接する内壁1d,2d間に形成された上下方向を向く通気層7aとを介して床下空間12に連通し、かつ上記の内側通気層7を介して屋根裏空間9に連通している。
【0018】
階間空間16には、除塵手段である空調装置17とこれに連通接続された筐体21とが設置されており、筐体21内には、強制循環用の送風手段であるファン18と、屋外の冷暖房用室外機(または温水ボイラ等)19に接続された熱交換器としての冷暖房手段(または暖房手段と冷房手段のいずれか一方のみ)20と、が配設されている。
【0019】
空調装置17は、後に詳述するが、図2に示すように筐体31の底部に水を入れたタンク32が設置され、その上方に少なくとも、空気を浄化する気液接触手段33と、デシカントロータ34(除湿手段)と、主送風機35とが、この順で設置されている。筐体31の下部側面には吸気口31aが、上部側面には空気供給口31bが設けられ、吸気口31aから外気が主送風機35の吸い込み力によって筐体31内部に取り込まれ、筐体31内部を下から上へ、空気供給口31bに向かって流れる。
【0020】
再び図1を参照して説明すると、空調装置17の吸気口31aは、水平の外気取入管24を介して屋外と連通している。空調装置17の空気供給口31bには、天井裏空間14に延びる上向きのダクト22と、筐体21の接続口21aとがそれぞれ接続されている。筐体21の別の接続口21bには、床下空間12に延びる下向きのダクト23が接続されている。
【0021】
換言すると、床下空間12と天井裏空間14とを連通するダクト23,22の途中に、空調装置17が設けられている。
【0022】
この実施形態においては、空調装置17が作動させられると、天井裏空間14内の空気と外気とが、ダクト22、および外気取入管24を介して空調装置17内に吸引され、そこで、浄化されるとともに、冷暖房手段20により、設定された所望の温度に調整され、ダクト23より、床下空間12に吐出される。
【0023】
床下空間12内に吐出された空調空気は、内側通気層7及び通気層7aを通り、階間空間16を経て天井裏空間14に至り、その間に各部屋1,2,3を外側から暖房または冷房し、ダクト22より再度空調装置17に循環させられる。この空調空気の循環により、家屋は腐食が防止され、耐久性が増すとともに、清浄された空気が居住空間に行き渡る。
【0024】
なお、上記の実施形態においては、ダクト22を吸気側、ダクト23を空気供給側としてあるが、その関係を逆としたり、あるいは、両ダクト22,23とも空気供給側として、階間空間16に開口するダクト(図示略)より空調装置17内へ吸気したりすることもある。
【0025】
また、上記実施形態においては、天井裏空間14と屋根裏空間9とを断熱板15により区画している。しかし、断熱板15を省略するとともに、屋根8の内面全体に断熱材を貼設し、かつ通気孔10,11を閉塞して、屋根裏空間9を天井裏空間14と一体の空間として実施することもある。
【0026】
さらに、空調装置17は、床下空間12か天井裏空間14のいずれかに設置してもよい。
【0027】
次に、本実施形態の空調装置17の構成について詳述する。
【0028】
図2は本実施形態の空調装置の構成を示す模式図である。
【0029】
この図に示される形態の空調装置は筐体31の内部に底部から上に向かって順番に、循環タンク32、気液接触手段33と、デシカントロータ34(調湿手段)と、主送風機35とを収容している。筐体31は金属製が好ましいが、適切な強度が確保できれば樹脂等の他の材料を用いることができる。筐体31の内部の設備の取り付けやメンテナンスのため、筐体31は複数の部分に分解可能な構造となっている。
【0030】
気液接触手段33は、吸気口31aから筐体31内部に取り込まれた外気を洗浄水と接触させることで浄化する。このため、気液接触手段33は、気液接触室33aと、気液接触室33aの上方に設けられた洗浄水を散布する散水手段である散布水ノズル33bと、を有している。
【0031】
気液接触室33aにはラシヒリングが充填されている。充填材としては他にも、レッシングリング、ポールリング、サドル、スルザーパッキン等を用いることができる。この室では、散布水ノズル33bから散布された洗浄水がラシヒリングの表面に付着し、ラシヒリングの表面で、下方から上昇してくる空気との気液接触が行われる。
【0032】
循環タンク32は気液接触室33aの下側に設けられており、筐体31の側面に設けられた配管36を介して循環ポンプ37に接続されている。循環タンク32の内部には水温調整のためのヒータ38が設けられており、外部の熱源39と接続されている。水温調整用ヒータ38は例えば冬季の洗浄水の凍結防止のために用いられる。循環タンク32の底面には水抜き用の排水口32aが設けられている。外部水源40からは弁41の制御により、配管42を介して、洗浄水の補充及び交換が可能となっている。さらに、循環タンク32内の水温を適切に制御することによって、夏場は浄化された空気を冷却し、冬場は浄化された空気を加湿することができる。
【0033】
循環ポンプ37の吐出側は配管43を介して散布水ノズル33bに接続されている。散布水ノズル33bは例えば、多数の孔の開けられた配管であり、孔から洗浄水が吐出される。この配管の形状は特に限定されず、気液接触室33aへ洗浄水が均一に散布されれば、直線状または略同心円状の複数の管、らせん状の管など、任意の形状の管を選択できる。
【0034】
気液接触手段33の上方に位置するデシカントロータ34は、気液接触手段33を経て大量の水分を含んだ空気の湿分を調整する。
【0035】
図3はデシカントロータ34の概念的斜視図を示す。デシカントロータ34の回転するロータ44の内部には乾燥剤(図示せず)が保持されており、図3に示すように、ロータ44の回転中心C−Cに関し一定の角度範囲αが吸湿ゾーン44aとなっている。気液接触手段34を通過した水分を大量に含む空気は、吸湿ゾーン44aに、上方(方向D1)に向けて引かれ、ロータ44の厚み方向にロータ44を通過しながら、ロータ44の内部に保持された乾燥剤によって湿分が吸収される。一方、残りの角度範囲βは再生ゾーン44bとなっており、吸湿した乾燥剤に再生用ヒータ45からの高温空気が下向き(方向D2)に送風され、乾燥剤に含まれる湿分が除去される。つまり、ロータ44の一部が再生される。ロータ44は一定の回転速度で回転しているため、ロータ44の各角度位置は吸湿ゾーン44aと再生ゾーン44bとの間を一定時間ごとに切り替えられる。再生用ヒータ45は、外気の通路となる筐体31内部とは空間的に分離された再生ヒータ室46に設置されているため、吸湿中の乾燥剤に再生用の高温空気が接触することはない。
【0036】
再び図2を参照すると、デシカントロータ再生用の高温空気の生成は、デシカントロータ34を出た乾燥した空気の一部を再生用送風機47によって再生ヒータ室46に取り入れ、再生ヒータ室46に取り入れられた空気を再生用ヒータ45で加熱することによって行われる。高温空気に吸収されたデシカントロータ34の湿分は一部が気液接触室33aに送られ、洗浄水として再利用される。残りは再生ヒータ室46に還流し、その一部は大気に放出され、その一部以外は廃熱を再利用するため、熱源39に回収され、循環タンク2内の洗浄水の温度調整に使用される。
【0037】
主送風機35は、気液接触手段33及びデシカントロータ34の上方であって、空気供給口31bの手前に設置され、浄化された空気を空気供給口31bから筐体31の外へ供給する。屋内の強制循環用のファン18(図1参照)によって空調装置31内を空気が通過できるようになっていれば、主送風機35は空調装置17内に無くてもよい。
【0038】
また、循環タンク32の洗浄水の中に電気分解用の電極を配設することにより、電解水の洗浄水にて空気の除菌が可能となる。
【0039】
上述したような形態の空調装置17の吸気口31aは、図1に示した住宅の外の空気を取り込むために住宅外部と連通されている。そして、空調装置17の空気供給口31bにはダクト22および筐体21の接続口21aが接続されており、床下空間12および天井裏空間14へ浄化及び調湿された空気を吐出可能となっている。
【0040】
このような構成の空調装置17を住宅に使用したことで、気液接触手段33により外気を浄化して住宅内に供給することができる。気液接触方式によって空気の浄化を行うため、外気に含まれる花粉、黄砂、汚染物質等が容易に除去される。居住空間内の塵埃、異臭、煙草の煙、NOx/SOx等も取り除くことができる。濾過フィルタや吸着材を使用しないため、浄化性能を維持するためのメンテナンス頻度を軽減することができる。
【0041】
(第二の実施形態)
次に第二の実施形態について説明するが、ここでは第一の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を用いてその説明を省略し、異なる点について主に説明することにする。
【0042】
図4は本発明の空調システムの第二の実施形態を備える家屋を略示するものである。
【0043】
本実施形態では、第一の実施形態の空調装置17が配置されていた場所に空調装置17は設けられておらず、屋外と屋内に一つずつ設けられている。空調装置17は第一の実施形態と実質的に同一のもの(図2参照)を使用することができる。
【0044】
屋外用の空調装置17−1と屋内用の空調装置17−2は、下記のとおりに設置されている。すなわち、図4に示すように、屋外用の空調装置17−1は、吸気口31aが大気と連通し、空気供給口31bが家屋の外気取入管24と接続されている。他方、屋内用の空調装置17−2はダクト23の途中に設置されており、これによって分断されたダクト23の片側が空調装置17−2の吸気口31aに、もう片側が空調装置17−2の空気供給口31bにそれぞれ接続されている。
【0045】
また、屋外用の空調装置17−1は、花粉、黄砂、汚染物質等を含む外気を浄化して屋内に取り入れ、また、屋内用の空調装置17−2は屋内に漂う塵埃、異臭、煙草の煙、NOx/SOx等を含む空気を浄化してから装置から吐出する。
【0046】
このように浄化する主要物質が屋外用の空調装置17−1と屋内用の空調装置17−2とで異なるため、それに合わせて各空調装置は第一の実施形態の装置構成に対し、下記のように変更することができる。
【0047】
すなわち、屋外用の空調装置17−1については、微粒子、花粉、黄砂等の除去を目的とするため、図2に示した主送風機35およびデシカントロータ34は設けられていなくてよい。さらに、微粒子、花粉、黄砂等は水と接触することで空気中から簡単に除去できるので、気液接触室33a内のラシヒリング等の充填材は不要もしくは圧力損失の小さいものとすればよい。
【0048】
他方、屋内用の空調装置17−2については、ハウスダストやシックハウス原因物質の除去、湿度調整等を目的とするため、図2に示した主送風機35は不要であるとともに、気液接触室33a内のラシヒリング等の充填材は気液接触効率の良いものとすればよい。
【0049】
(適用例)
上述した第一及び第二の実施形態は、本願図2の構成の空調装置(以下、AWと称す。)17を特許文献1に開示された家屋に適用した例であるが、特許文献2〜9に示されるような特許文献1と同様の特殊な全館空調や換気システムにAWを適用してもよい。
【0050】
特許文献2に開示されたシステムに対しては、外気が家屋に導入される直前もしくは直後にAWを設置すれば、浄化空気を屋内の供給することができる。そのため、屋内の空気循環により家中に拡散し易い、埃や塵、外気中の有害成分を極力除去することが可能である。また同様に内気処理(AWの吸気口および空気供給口とも屋内空気を導入)として用いても同様の理由により有効である。
【0051】
特許文献3に開示されたシステムに対しては、外気が家屋に導入される直前もしくは直後にAWを設置すれば、浄化空気を屋内の供給することができる。そのため、屋内の空気循環により家中に拡散し易い、埃や塵、外気中の有害成分を極力除去することが可能である。また同様に内気処理(AWの吸気口および空気供給口とも屋内空気を導入)として用いても同様の理由により有効である。
【0052】
特許文献4に開示されたシステムに対しては、外気が家屋に導入される直前もしくは直後にAWを設置すれば、浄化空気を屋内の供給することができ、かつ加湿装置の負荷も低減することもできる。
【0053】
特許文献5に開示されたシステムに対しては、給気ラインの家屋に導入される直前もしくは直後にAWを設置すればフィルタを簡素化、もしくは無くすことができる。
【0054】
特許文献6に開示されたシステムに対しては、給気ラインの家屋に導入される直前もしくは直後にAWを設置すればフィルタを簡素化、もしくは無くすことができる上に、加湿装置の負荷も低減することもできる。
【0055】
特許文献7に開示されたシステムに対しては、給気ラインの家屋に導入される直前もしくは直後にAWを設置すれば、浄化空気を屋内の供給することができる。
【0056】
特許文献8に開示されたシステムに対しては、給気ラインの家屋に導入される直前もしくは直後にAWを設置すればフィルタを簡素化、もしくは無くすことができる。
【0057】
特許文献9に開示されたシステムに対しては、花粉除去フィルタの代替もしくはその前段にAWを設置することで、花粉除去以外の化学物質を除去することができる。
【0058】
つまり、本発明を適用する空調システムは、家屋において、空調部により、屋内空気および屋外空気の少なくとも一方を処理する、例えば導入した屋外空気の空調および空調された屋外空気を各部屋に供給し、循環して戻ってきた屋内空気の再空調を行う全館空調もしくは換気システムである。そして、その空調部は除塵機能と熱交換機能と送風機能を有しており、その除塵機能を構成する部分が本願図2の構成からなるものであれば、どのようなシステムであってもよい。
【0059】
(変形例1)
ここで、屋外空気を冷暖房機等の熱交換器で空調した後に家屋内へ送る一般的な空調システム中にAW(図2の構成の空調装置17)を導入することを考える。
【0060】
まず、このような空調システムで冬場の低温乾燥時に屋内を加温および加湿することを考える。ここで、図5に示すように、家屋48と熱交換器49の間の供給ライン中、すなわち外気処理の流れ方向(図中の矢印方向)に関して熱交換器49の後段に、AW17を設置することを考える。この場合、熱交換器49は暖房機として使われるので、そのAW17の吸気口31aにおける空気温度が高くなる。そのため、空気の水分保有能力が上がり(飽和蒸気圧が高くなり)、そのAW17の加湿能力を有効に利用できる。つまり、AW17を導入しない場合と比べてより高い湿度の空気をAW17から屋内へ供給することができる。
【0061】
一方、図6に示すように、外気処理の流れ方向(図中の矢印方向)に関して熱交換器49の前段に、AW17を設置することを考える。この設置の場合、AW17の吸気口31aにおける外気の温度が低いため空気の水分保有能力に限界が有り(飽和蒸気圧が低い)、結果、そのAW17の加湿能力を有効に利用できない。つまり、この場合は冬場の低温の外気をAW17に通すことで空気の湿度を上げられるが、その空気はAW17では上がらず、AW17通過後に暖房機としての熱交換器49で加熱される。そのため、AW17で高めた空気の湿度を家屋へ供給する間に下げてしまうことになる。
【0062】
次に、上記のような空調システムで夏場の高温多湿時に屋内を冷却および除湿することを考える。この場合でも、図6に示した配置と同様に、AW17を、外気処理の流れ方向に関して熱交換器49の前段に設置するよりも後段にした方が、そのAW17の除湿負荷を低減させることができる。つまり、熱交換器49は冷房機として使われるので、そのAW17の吸気口31aにおける空気温度が低くなる。そのため、AW17を通過する空気中の水分を少ないため、AW17の除湿にかかる負荷が低減する。
【0063】
以上のような二つの想定のどちらでも、家屋48への外気処理の流れ方向に関して熱交換器49の後段に、AW17を設置するのが良い。
【0064】
(変形例2)
上記の変形例1では夏場は高温多湿の状態で冬場は低温乾燥の状態にあると考えて空調システムを組んだが、短期間や1日単位ではそれが必ずしも最適であるとは限らない。その場合、図7に示すように、状況に応じてバルブを切換えてAW17及び熱交換器49を通る通気順序を変更できるようにしてもよい。
【0065】
図7の構成を詳述すると、外気を空調して屋内へ供給する供給するラインが2本の経路50a,50bに分岐して再び合流して家屋48に接続されている。分岐した一方の経路50aの途中にはAW17が配設され、もう一方の経路50bの途中には熱交換器49が配設されている。経路50aにおけるAW17の上流側に第1バルブ51が設けられ、その下流側に第2バルブ52が設けられている。さらに、経路50bにおける熱交換器49の上流側に第3バルブ53が設けられ、その下流側に第4バルブ54が設けられている。
【0066】
そして、第1バルブ51とAW17の間の経路部分と、第4バルブ54と熱交換器49の間の経路部分とは、第5バルブ55を備えた経路57によって連絡されている。さらに、第2バルブ52とAW17の間の経路部分と、第3バルブ53と熱交換器49の間の経路部分とは、第6バルブ56を備えた経路58によって連絡されている。バルブ51〜56は二方向弁である。
【0067】
さらに、家屋48の内気を熱交換器49に導入し、熱交換器49を経た空気を再び内気として使用するように内気の循環ラインが構成されている。これにより、熱交換器49で内気と外気との熱交換が可能となっている。
【0068】
上記のような構成において、第1バルブ51と第4バルブ54と第6バルブ56を閉じ、第2バルブ52と第3バルブ53と第5バルブ55を開けておくと、外気は先ず熱交換器49を通過し、それからAW17を通過して家屋48に向かう。このようにバルブ51〜56を開閉制御した場合は、上記の変形例1と同じ空調ラインが構成される。そのため、高温多湿時に熱交換器49を冷房動作させているときはAW17の調湿負荷を低減でき、低温乾燥時に熱交換器49を暖房動作させているときはAW17の加湿能力を有効利用できる。
【0069】
前述した空調ラインで運転しているとき、AW17での湿度調整の影響で、AW17から家屋48への供給空気の温度が夏場では温度上昇、冬場では温度低下することもある。この場合、外気が先ずAW17を通過し、それから熱交換器49を通過して家屋48に導入されるように、バルブ51〜56の開閉を切換えて、上記の供給空気の温度状況を改善する。すなわち、第1バルブ51と第4バルブ54と第6バルブ56を開け、第2バルブ52と第3バルブ53と第5バルブ55を閉じる。また、このようにバルブ51〜56を開閉制御した場合、熱交換器49の熱交換効率が向上する。
【0070】
以上、本願発明の実施の形態やその変形例、適用例を例示したが、上記の例示に本発明は限定されず、本発明の思想を逸脱しない限り、あらゆる変形や改良が可能である。
【符号の説明】
【0071】
1,2,3・・・部屋、 1a,2a,3a,1d,2d・・・内壁
3b・・・床、 3c・・・天井、 4・・・外壁、 5・・・断熱壁
6・・・外側通気層、 7・・・内側通気層、 7a・・・通気層
8・・・屋根、 9・・・屋根裏空間、 10,11・・・通気口、
12・・・床下空間、 14・・・天井裏空間、 15・・・断熱板
16・・・階間空間、 17・・・空調装置、 18・・・強制循環用のファン
19・・・屋外の冷暖房用室外機(または温水ボイラ等)
20・・・冷暖房手段(または暖房手段と冷房手段のいずれか一方のみ)
21・・・筐体、 22、24・・・ダクト(吸気ダクト)
23・・・ダクト(供給ダクト)、 31・・・筐体、 31a・・・吸気口
31b・・・空気供給口、 32・・・循環タンク、 32a・・・排水口
33・・・気液接触手段、 33a・・・気液接触室、 33b・・・散布水ノズル
34・・・デシカントロータ、 35・・・主送風機、 36,42,43 配管
37・・・循環ポンプ、 38・・・水温調整用ヒータ、 39・・・熱源
40・・・外部水源、 41・・・弁、 44・・・ロータ
44a・・・吸湿ゾーン、 44b・・・再生ゾーン、 45・・・再生用ヒータ
46・・・再生ヒータ室、 47・・・再生用送風機、 48・・・家屋
49・・・冷暖房機としての熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
家屋において、空調部と、該空調部へ屋外空気を導入する外気通路と、該空調部で空調された空気を屋内中に行き渡らせ再び該空調部に戻す内気通路とを有する空調システムにおいて、
前記空調部は、除塵要素と熱交換要素と送風要素を備えており、
前記除塵要素は、導入された空気に洗浄水を散水して該空気を浄化する散水手段を含む装置であることを特徴とする空調システム。
【請求項2】
前記装置が、前記散水手段での前記洗浄水と接触した空気の湿分を調整する調湿手段をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記装置が、前記洗浄水を電気分解して空気を除菌可能な電解水にする除菌手段をさらに有する請求項1または2に記載の空調システム。
【請求項4】
前記装置は前記外気通路に配されている、請求項1ないし3のいずれかに記載の空調システム。
【請求項5】
前記装置は前記内気通路に配されている、請求項1ないし3のいずれかに記載の空調システム。
【請求項6】
前記家屋は、部屋を仕切る内壁と、家屋の外壁または隣接する部屋を仕切る内壁との間に、床下空間と天井裏空間とを連通する通気層が形成された家屋であり、
前記内気通路は、前記空調部で空調された空気が前記床下空間、前記天井裏空間および前記通気層を通って循環するように構成されており、
前記空調部における前記除塵要素としての前記装置が、
筐体内部に空気を取り込む吸気口と筐体外部に空気を供給する空気供給口とが形成された筐体と、
前記筐体の内部の空気を前記空気供給口から前記筐体の外部へ送風する送風手段と、
前記吸気口から前記筐体の内部に取り込んだ外気に洗浄水を散水させる散水手段と、
前記散水手段での前記洗浄水と接触した空気の湿分を調整する調湿手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【請求項7】
前記吸気口は、前記外気通路に連通し、かつ、前記床下空間と前記天井裏空間のいずれか一方に吸気ダクトを介して連通しており、
前記空気供給口は、前記吸気口と前記吸気ダクトを介して連通されていない前記床下空間または前記天井裏空間に対し、供給ダクトを介して連通していることを特徴とする請求項6に記載の家屋の空調システム。
【請求項8】
前記装置は、屋外に設置された第一の装置と、屋内に設置された第二の装置とを含み、
前記第二の装置の前記吸気口は、前記外気通路に連通し、かつ、前記床下空間と前記天井裏空間のいずれか一方に吸気ダクトを介して連通しており、
前記第二の装置の前記空気供給口は、前記吸気口と前記吸気ダクトを介して連通されていない前記床下空間または前記天井裏空間に対して、供給ダクトを介して連通しており、
さらに、前記第一の装置の前記吸気口は大気と連通しており、前記第一の装置の前記空気供給口は、前記第二の装置の前記吸気口と連通する前記外気通路に接続されていることを特徴とする請求項6に記載の家屋の空調システム。
【請求項9】
前記装置および前記熱交換要素が前記外気通路に配されており、該装置は、前記外気通路の空気導入方向に関して前記熱交換要素の後段に配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の空調システム。
【請求項10】
前記外気通路は、
空気導入方向に関して前記熱交換要素および前記装置がこの順に配された第1ラインと、空気導入方向に関して前記装置および前記熱交換要素がこの順に配された第2ラインと、前記第1ラインと前記第2ラインとを切換え可能なバルブと、を含むことを特徴とする請求項9に記載の空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−226677(P2011−226677A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94930(P2010−94930)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【Fターム(参考)】