説明

家庭用冷蔵庫の節電方法及びそれに用いる節電補助品

【課題】本発明は冷蔵庫の使用者が自主的に且つ簡単に行えると共に家庭用冷蔵庫の節電が行え、且つ、冷蔵庫の上段を簡易チルド室として使用可能となる家庭用冷蔵庫の節電方法及びそれに用いる節電補助品を提供することを目的とする。
【解決手段】冷蔵庫の内部に、2℃〜8℃で固体化する蓄熱媒体1を入れた家庭用冷蔵庫の節電方法と成す。また蓄熱媒体1を冷蔵庫の冷気吹出口付近或いは冷気吹出口付近及び中段の棚に置くと良い。又、PEG(ポリエチレングリコール)の分子量が100〜2000の範囲で、且つ、2℃〜8℃に相変化を起こす蓄熱媒体1を、成形容器2或いはフィルム包装体3に内蔵させた節電補助品を用いると良く、特にPEG(ポリエチレングリコール)の分子量を300〜500の範囲とするのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蓄熱媒体を冷気吹出口付近に置くだけで簡単に節電が可能となる家庭用冷蔵庫の節電方法及びそれに用いる節電補助品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家庭用冷蔵庫の節電方法としては、特開2002−357384「冷蔵庫の節電運転制御方法」がある。これは、冷凍室用蒸発器ファンと冷蔵庫用蒸発器ファン及び凝縮器ファンの中、少なくとも1つのファンを必要に応じて延長又は遅延運転して、機器の消費電力を低減させる一方、機器の効率を向上させるものであった。従って、特開2002−357384は、本発明の如く冷蔵庫内に食品と共に節電補助品を入れる節電方法とは異なる方法である。
【0003】
又、冷蔵庫の節電方法としては、凝縮器や熱交換器或いは放熱プレートなどの装置又は部品を改良し、冷蔵庫自体をメーカーが改良して冷却能率を向上させるもの等の提案が多くあるが、これらは上記同様に本発明の如く冷蔵庫内に食品と共に節電補助品を入れる節電方法、つまり、冷蔵庫の使用者自身が行える節電方法とは異なるものであった。
【0004】
尚、家庭用冷蔵庫の内部温度としては、一般に菌が活動し始める温度、つまり、15℃以下に押えられることが望ましいが、従来品のものは、停電すると極めて早く温度上昇しているのが現状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−357384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は冷蔵庫の使用者が自主的に且つ簡単に行える家庭用冷蔵庫の節電方法及びそれに用いる節電補助品を提供することを目的とする。
【0007】
又、本発明の他の目的は、家庭用冷蔵庫の節電を行うと共に冷蔵庫の上段を簡易チルド室として使用可能となる家庭用冷蔵庫の節電方法及びそれに用いる節電補助品を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明方法は上記現状に鑑み成されたものであり、つまり、冷蔵庫の内部に、2℃〜8℃で固体化する蓄熱媒体を入れた家庭用冷蔵庫の節電方法と成す。また蓄熱媒体を冷蔵庫の冷気吹出口付近或いは冷気吹出口付近及び中段の棚に置くと良い。又、PEG(ポリエチレングリコール)の分子量が100〜2000の範囲で、且つ、2℃〜8℃に相変化を起こす蓄熱媒体を、成形容器或いはフィルム包装体に内蔵させた節電補助品を用いると良く、特にPEG(ポリエチレングリコール)の分子量を300〜500の範囲とするのが好ましい。尚、本発明で言う「相変化」とは、液体から固体に、或いは固体から液体に変化することを指す。
【発明の効果】
【0009】
請求項1のように冷蔵庫の内部に、2℃〜8℃で固体化する蓄熱媒体(1)を入れることにより、冷蔵庫の使用者が自主的に且つ簡単に行える家庭用冷蔵庫の節電方法となる。また本発明は既存の殆どの家庭用冷蔵庫に対して節電が可能となる。又、停電時に於いては、固体化した蓄熱媒体(1)が液体化するまでの間は、冷蔵庫の内部を冷蔵状態が維持可能となる。
【0010】
請求項2のように蓄熱媒体(1)を冷蔵庫の冷気吹出口付近に置くと、冷蔵庫の冷気が蓄熱媒体(1)に吹き付けられ、蓄熱媒体(1)がより早く固体化されて蓄熱効果を発揮するものとなる。
【0011】
請求項3に示すように蓄熱媒体(1)を冷蔵庫の冷気吹出口付近及び中段の棚に置くと、冷蔵庫の冷気によって複数の蓄熱媒体(1)が固体化されて蓄熱効果を効率良く発揮するものとなり、冷蔵庫の節電効果がより大きなものとなる。更に蓄熱媒体(1)の数量を増やすことにより、冷蔵庫の節電を行うと共に冷蔵庫の上段を簡易チルド室として使用可能なものとなる。
【0012】
請求項4に示すようにPEG(ポリエチレングリコール)の分子量が100〜2000の範囲で、且つ、2℃〜8℃に相変化を起こす蓄熱媒体(1)を、成形容器(2)或いはフィルム包装体(3)に内蔵させた家庭用冷蔵庫用の節電補助品として使用すると、冷蔵庫の使用者が簡単に行える家庭用冷蔵庫の節電方法となる。また本発明は蓄熱媒体(1)を冷蔵庫の内部に入れるだけの簡単な作業で、既存の殆どの家庭用冷蔵庫に対して節電可能となる。又、停電時に於いて、固体化した蓄熱媒体(1)が液体化するまでの間は、冷蔵庫の室温の上昇を押えることが可能となる。更に材料としてPEG(ポリエチレングリコール)を使用することにより、蓄熱効果が良くなる。
【0013】
請求項5のようにPEG(ポリエチレングリコール)の分子量を300〜500の範囲とした蓄熱媒体(1)を用いることにより、効率の良い蓄熱(節電)効果が得られるものとなる。また生産性の良好な家庭用冷蔵庫用の節電補助品が得られるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明方法の実施形態を示す説明図である。
【図2】本発明品の実施形態を示す説明図である。
【図3】本発明品の効果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明方法の実施形態を示す図であり、図2は本発明方法の実施形態で使用する節電補助品を示す図である。この図に基づいて家庭用冷蔵庫の節電方法を説明する。先ず始めに蓄熱媒体(1)を成形容器(2)に内蔵したもの或いはフィルム包装体(3)に内蔵させたものを適宜数用意しておき、その節電補助品を冷蔵庫の冷気吹出口付近の上段の棚に入れる。尚、前記節電補助品の個数は、冷蔵庫の容量及び蓄熱媒体(1)の内蔵量によって決定される。又、前記節電補助品は冷気吹出口付近の上段の棚だけに限定されるものではなく、併せて中段の棚にも入れると良い。
【0016】
次に本発明の家庭用冷蔵庫用の節電補助品の実施形態を図2に基づいて説明する。(1)はPEG(ポリエチレングリコール)の分子量が100〜2000の範囲で、且つ、2℃〜8℃に相変化を起こす蓄熱媒体であり、該蓄熱媒体(1)の分子量としては300〜500の範囲とするのが好ましく、この範囲の分子量のものはそのまま用いることが可能である。その他の範囲の分子量のものは、融点の低い分子量の小さなものと、融点の高い分子量の大きなものとを混合させて、所定温度で相変化を起こす温度になるように組合せて使用する。この時、分子量の違うものを組合せる場合、2種類以上のものを組合せても良い。又、この組合せは無数あるが、上記の相変化を起こす温度範囲に入るように組合せることが重要である。尚、この時、相変化を起こす温度が2℃以下になると、蓄熱媒体(1)が固体化しにくくなる恐れを生じ、一方、8℃以上になると、蓄熱効果が悪くなって思うような節電効率を得られにくくなる恐れがあった。また蓄熱媒体(1)の蓄熱効果は固体の時が最大となる。
【0017】
(2)は合成樹脂で成形された扁平な成形容器であり、該成形容器(2)の端部には注入口(21)を設け、この注入口(21)から蓄熱媒体(1)を入れて内蔵し、その後、熱圧着などで密閉したものを用いると良い。この時の成形容器(2)の大きさとしては、内部に蓄熱媒体(1)が500cc前後入る容積を有していれば良い。尚、前記成形容器(2)の容積は上記の数値に限定されるものではない。又、前記成形容器(2)の形状を扁平にすることにより、冷気の当たる表面積が多くなるため熱効率の良好なものとなる。
【0018】
(3)は蓄熱媒体(1)を包装して内蔵したフィルム包装体であり、該フィルム包装体(3)としては、ナイロンポリプロピレンやナイロンエチレンなどを用いると良い。尚、前記フィルム包装体(3)の材質は上記のものに限定されるものではなく、例えば、保冷材用として用いられる一般的な被覆材を用いても良い。
【0019】
このように蓄熱媒体(1)を成形容器(2)に内蔵したもの或いはフィルム包装体(3)に内蔵させたものを適宜数用意しておき、それを冷蔵庫の冷気吹出口付近の上段の棚或いは上段及び中段の棚に置いておけば、蓄熱媒体(1)は冷気吹出口からの冷気によって2℃〜8℃で固体化する。一方、相変化温度、例えば5℃以上になると蓄熱媒体(1)が液体化し始めて、周囲から大きな熱量を吸収するため、蓄熱媒体(1)が液体化し終わるまでの間は冷蔵庫の内部温度の上昇を押え、冷却機能を維持する時間は、蓄熱媒体(1)がない時よりも長いものとなる。従って、この蓄熱媒体(1)が蓄熱した分だけコンプレッサーの起動回数を減らすことが可能となる。この結果、家庭用冷蔵庫の節電となるのである。
【0020】
次に本発明方法による家庭用冷蔵庫の節電の効果について説明する。予め蓄熱媒体(1)500ccを成形容器(2)に内蔵したものを4個用意しておく(図2参照)。この蓄熱媒体(1)は、PEG(ポリエチレングリコール)の分子量が400のものを用い、且つ、6℃に相変化を起こすものが用意される。また家庭用冷蔵庫としては、2ドアで320リットル容量のものを用いる。そして冷蔵庫に蓄熱媒体(1)を入れないもの(従来品)と、冷蔵庫の冷気吹出口付近の上段の棚に蓄熱媒体(1)を2個置いたものと、冷蔵庫の冷気吹出口付近の上段及び中段の棚に蓄熱媒体(1)を2個ずつ置いたものと、をそれぞれ5分間隔で温度測定し且つ12時間測定した。この時の測定箇所の温度は、冷蔵庫の外部の気温,冷蔵庫の下段の棚位置の温度,冷蔵庫の上段の棚位置の温度,節電補助品の表面の温度を測定した。
【0021】
従来品の各温度は、図1(a)に示すようなった。つまり、上段の棚位置の温度は−1.5℃〜5℃、下段の棚位置の温度は0.5℃〜6.5℃、冷蔵庫の外部の気温21℃〜24℃であった。また節電補助品を冷蔵庫の冷気吹出口付近の上段の棚に2個置いた場合の各測定温度は、図1(b)に示すように、上段の棚位置の温度は−5℃〜5.5℃、下段の棚位置の温度は0.5℃〜6.5℃、節電補助品の表面の温度は0.5℃〜4.5℃、冷蔵庫の外部の気温25.5℃〜29℃であった。更に節電補助品を冷蔵庫の冷気吹出口付近の上段及び中段の棚に2個ずつ置いた場合の各測定温度は、図3(b)に示すように、上段の棚位置の温度は−5℃〜3.5℃、下段の棚位置の温度は0℃〜5.5℃、節電補助品の表面の温度は0℃〜1℃、冷蔵庫の外部の気温25.5℃〜29.5℃であった。尚、本発明の家庭用冷蔵庫用の節電補助品を2個或いは4個入れて置くと、上記の図面の如き上段の棚位置の温度は−5℃〜ほぼ0℃を確保しているため、上段の棚位置がチルド室と略同一環境となり、チルド室として使用可能なものとなる。又、図3(a)は、図1(a),(b)及び図3(b)に於ける上段の温度測定データーを比較したものである。
【0022】
又、この測定結果により、図中に示す山数、つまり、冷蔵庫の温度が上がる毎にコンプレッサーを起動させて温度が下げられるため、山数が起動回数に相当する。従って、この起動回数を図3(a)に於いてチェックすると、12時間でのコンプレッサーの起動回数は、従来品では1点鎖線で示すように13回、蓄熱媒体(1)を2個置いたものでは実線のように10回、蓄熱媒体(1)を4個置いたものでは点線で示すように8回であった。この結果、蓄熱媒体(1)を2個置いたものは、従来品よりも2.5割前後減少し、蓄熱媒体(1)を4個置いたものは4割前後減少した。尚、家庭用冷蔵庫の消費電力が実際減少した詳細な結果は現在調査中であるが、本発明は相当な節電効果が期待できるものである。
【0023】
次に本発明方法によって停電時に於ける冷蔵庫の内部温度の維持時間を、従来品と比べると、従来品は約15分程度で15℃前後に達したが、本発明品が入れられたものでは15℃前後に達する迄の時間は約2時間前後掛かった。尚、一般に停電している時間は、1時間以内の場合が多いため、本発明品を冷蔵庫に入れておけば、停電による影響は殆んど受ける恐れがないものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明品は、皮膚に当てても氷のような冷たさがなく、ひんやりして気持ちの良いものであるため、夏場や高温状態に於ける清涼製品としての汎用性を有するものとなる。
【符号の説明】
【0025】
1 蓄熱媒体
2 成形容器
3 フィルム包装体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷蔵庫の内部に、2℃〜8℃で固体化する蓄熱媒体(1)を入れたことを特徴とする家庭用冷蔵庫の節電方法。
【請求項2】
前記蓄熱媒体(1)が、冷蔵庫の冷気吹出口付近に置かれた請求項1記載の家庭用冷蔵庫の節電方法。
【請求項3】
前記蓄熱媒体(1)が、冷蔵庫の冷気吹出口付近及び中段の棚に置かれた請求項1記載の家庭用冷蔵庫の節電方法。
【請求項4】
PEG(ポリエチレングリコール)の分子量が100〜2000の範囲で、且つ、2℃〜8℃に相変化を起こす蓄熱媒体(1)を、成形容器(2)或いはフィルム包装体(3)に内蔵させたことを特徴とする家庭用冷蔵庫用の節電補助品。
【請求項5】
前記蓄熱媒体(1)が、PEG(ポリエチレングリコール)の分子量を300〜500の範囲である請求項4記載の家庭用冷蔵庫用の節電補助品。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−29263(P2013−29263A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166241(P2011−166241)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(395006270)株式会社トライ・カンパニー (9)
【出願人】(505400141)オルディ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】