説明

家畜又は伴侶動物用の飼料組成物及び飲用水

【課題】家畜又は伴侶動物が、夏期の高温下で受けるストレスを軽減することが可能な家畜又は伴侶動物に供される飼料組成物を提供する。
【解決手段】有機酸組成物と、マグネシウム塩及びカルシウム塩を含む海水由来組成物とを、家畜又は伴侶動物用の飼料組成物に配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜又は伴侶動物に供される飼料組成物及び飲用水に係わる。特に、家畜又は伴侶動物の高温下におけるストレスの軽減を目的とした飼料組成物及び飲用水に関する。
【背景技術】
【0002】
牛、馬、豚、鶏等の家畜動物や、犬、猫等の伴侶動物には、牧草、干草、豆類等が飼料として与えられている。しかし、日本では、放牧地や草地を充分に確保することが難しい。このため、家畜用飼料として、大量の干草や豆類等が輸入されている。また、家畜用飼料として、干草等の粗飼料に加えて配合飼料や化学飼料等が与えられている。
【0003】
また、一般的に動物は夏期の高温下において様々なストレス(暑熱感作ストレス)を受けている。例えば、家畜等においては、暑熱感作ストレスにより、食下量、肥育量、産卵量等が低下するという問題が発生している。
従来、市販されている一般的な配合飼料や化学飼料には、炭水化物、タンパク質、脂肪、繊維、灰分、ミネラル、水分等の栄養成分がバランスよく配合されているが、暑熱感作ストレスに対して充分な効果が得られなかった。
【0004】
このため、暑熱感作ストレスを低減することを目的として、例えば、飼料中の塩素含有率を増加させた配合飼料が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、重炭酸ソーダ及び有機クロムを添加した配合飼料が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−325109号公報
【特許文献1】特開2006−61号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、塩素含有率を増加させた配合飼料や、重炭酸ソーダ及び有機クロムを添加した配合飼料では、安全性が充分ではない可能性がある。
また、家畜飼料に用いられていたマグネシウム、カルシウムなどのミネラル源のうち、無機のカルシウム源は、水への溶解性が低く、体内での吸収性が悪い。このため、カルシウム源は、家畜の体内で充分に代謝されず、効率的に利用することが難しい。
また、無機のカルシウム源よりも吸収率が高い有機ミネラルを利用する方法も考えられる。しかし、この方法では、無機ミネラルと有機酸との化学反応により合成して、有機ミネラルを飼料に配合する必要があるため、製造工程が煩雑になるという問題がある。
このように、従来の配合飼料では、製造するための費用が高いにもかかわらず、暑熱感作ストレスの対策として得られる効果が充分ではない等の問題がある。
【0007】
上述した問題の解決のため、本発明においては、家畜又は伴侶動物が、夏期の高温下で受けるストレスを軽減することが可能な家畜又は伴侶動物に供される飼料組成物及び飲用水を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の家畜又は伴侶動物用の飼料組成物は、有機酸組成物と、マグネシウム塩及びカルシウム塩を含む海水由来組成物とが配合されていることを特徴とする。
また、本発明の家畜又は伴侶動物用の飲用水は、有機酸組成物と、マグネシウム塩及びカルシウム塩とを含む海水由来組成物を含有することを特徴とする。
【0009】
本発明の家畜又は伴侶動物用の飼料組成物及び飲用水によれば、マグネシウム及びカルシウムを含有し、さらに、有機酸組成物を含むことにより、体内でのマグネシウム及びカルシウムの吸収が効率的に行われる。
このため、家畜又は伴侶動物用の体内で、ミネラルの代謝が効率的に行われ、家畜又は伴侶動物用の高温下におけるストレスが緩和される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、家畜や伴侶動物の高温下におけるストレスを軽減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の具体的な実施の形態について説明する。
本実施の形態の家畜又は伴侶動物用の飼料組成物及び飲用水は、有機酸組成物と、海水を起源とするマグネシウム塩及びカルシウム塩を含む海水由来組成物とを含んで構成される。家畜又は伴侶動物用の飼料組成物は、上述の有機酸組成物と海水由来組成物とを、従来の家畜又は伴侶動物用の飼料と混合することにより作製される。また、家畜又は伴侶動物用の飲用水は、上述の有機酸組成物と海水由来組成物とを、水等に混合溶解して作製され、家畜及び伴侶動物の飲み水として使用される。
【0012】
上述の飼料組成物及び飲用水に有機酸組成物を用いることにより、飼料の消化・利用効率を向上させることができ、家畜の高温下におけるストレス(暑熱感作ストレス)を軽減することができる。
また、有機酸組成物を用いることにより、消化管内の有害細菌の抑制、飼料や飲用水の細菌汚染を防止することができる。
【0013】
飼料組成物及び飲用水に適用できる有機酸組成物としては、例えば、クエン酸を用いることができる。クエン酸としては、特に限定されず、市販されているクエン酸を使用することができる。また、クエン酸は、クエン酸の化合物として飼料組成物及び飲用水に用いることもできる。クエン酸の化合物としては、例えば、クエン酸カルシウム、クエン酸第一鉄ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸鉄、クエン酸二鉄、クエン酸鉄アンモニウム、クエン酸三ナトリウム等のクエン酸塩を使用することができる。
【0014】
また、飼料組成物及び飲用水に使用する有機酸は、クエン酸及びクエン酸の化合物以外にも、例えば、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、フマル酸、グルコサミン酸、シュウ酸、プロピオン酸、酪酸、バレリン酸、イソクエン酸、コハク酸、ギ酸、酢酸等、及び、これらの化合物を使用することができる。
特に、TCAサイクルに関与するクエン酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸等を用いることにより、飼料の消化・利用効率を向上させることができ、家畜の暑熱感作ストレスを軽減することができる。
【0015】
また、クエン酸の酸度を100とした場合、コハク酸の酸度が110〜120、フマル酸の酸度が150〜180、リンゴ酸の酸度が100〜120である。このため、酸度が1番低いクエン酸を使用することにより、飼料組成物及び飲用水の呈味性の悪化を少なくすることができる。
また、クエン酸は、コハク酸、フマル酸及びリンゴ酸よりも大量に生産されているため比較的安価で入手することができる。このため、クエン酸を用いることにより、飼料組成物及び飲用水のコストを低減することができる。
【0016】
また、飼料組成物及び飲用水に含まれる、マグネシウム塩及びカルシウム塩を含む海水由来組成物は、海水由来であれば特に限定されない。但し、上述の海水由来組成物を、海水から直接調整する場合には、できるだけ清浄な海水を使用し、必要に応じて濾過、熱処理、濃縮、脱塩等を行うことが好ましい。
このため、海水由来組成物は、海洋深層水由来であることが好ましい。海洋深層水は、太陽光線が届かず光合成が行われないことから有機物が少ないことや、細菌及び陸上や大気からの有害な人工汚染物が表層水に比べて非常に少ないため、清浄性が高く、微生物や化学物質による汚染が非常に少ない。このため、海洋深層水は、家畜や伴侶動物の飼料又は飲用水に使用することに適している。
海洋深層水は、一般的に水深200m以深から取水された海水と定義される。表1に静岡県駿河湾の海洋表層水と、海洋深層水の特性を示す。
【0017】
【表1】

【0018】
表1から、海洋深層水は表層水に比べて、生菌数、有機物(TOC)が少なく、清浄性が高いことがわかる。また、深層水と表層水に含まれるミネラルの量はほとんど変わらない。このため、飼料組成物及び飲用水には、清浄性が高い海洋深層水を使用することが好ましい。
【0019】
また、マグネシウム塩及びカルシウム塩を含む海水由来組成物としては、市販の苦汁、苦汁粉末等を使用することもできる。
海水由来組成物として、海水苦汁を用いる場合にも、苦汁がもともと海水に溶解していた成分であるため、再度水に溶解する工程を容易に行うことができる。
【0020】
また、上述の海水由来組成物は、海水が電気透析法又は拡散透析法により調整された、海水の調整物であることが好ましい。特に、上述の海洋深層水の調整物であることが好ましい。
上述の飼料組成物及び飲用水に含まれる、マグネシウム塩及びカルシウム塩を含む海水由来組成物が、海水又は海洋深層水に電気透析法、拡散透析法による脱塩濃縮等の操作を用いることにより得られる調製物であれば、ミネラル分が既に溶解している状態で得られる。このため、マグネシウム塩及びカルシウム塩を含む海水由来組成物を、改めて水に溶解する工程等を必要としない。
【0021】
海水の主成分は、塩化ナトリウムであるが、過剰な塩化ナトリウムの摂取は動物の健康に悪影響を与える。このため、電気透析法や拡散透析法により、海水由来組成物の塩化ナトリウム濃度を好適な範囲に調節する必要がある。特に、モザイク荷電膜を有する拡散透析装置を用いた拡散透析法は、塩化ナトリウムのような電解質を分離する際に、海水由来組成物の成分の変成が少ないため、好適に用いることができる。
【0022】
また、モザイク荷電膜を有する拡散透析装置は、加熱、高圧、電気等のエネルギーを必要としないため、製造コストを低減することができる。また、イオン交換樹脂のような再生処理が不要であるため、装置構造を簡略化することができる。このように、モザイク荷電膜を有する拡散透析装置を用いることにより、初期投資、及び、ランニングコストを低く抑えることができるため、非常に経済的である。このため、飼料組成物及び飲用水を製造するにあたって、モザイク荷電膜を有する拡散透析装置を用いた拡散透析法を特に好ましく用いることができる。
【0023】
好適な塩化ナトリウム濃度は、家畜の種類、生育段階で異なるが、例えば乳牛の場合には、飼料組成物及び飲用水中の塩化ナトリウム濃度が0.1〜0.5質量%、豚の場合には、0.3〜0.6質量%である。
【0024】
上述の海水の調製法の一例として、拡散透析装置を用いた拡散透析法について図1を用いて説明する。図1は、モザイク荷電膜を有する拡散透析装置の構成の一例である。
図1に示すモザイク荷電膜を有する拡散透析装置は、原水室11,12,13と、水室14,15,16とがそれぞれ交互に連接されている。そして、原水室11,12,13と、水室14,15,16との間には、モザイク荷電膜17,18,19,20,21がそれぞれ介在している。
【0025】
モザイク荷電膜は、カチオン性重合体成分およびアニオン性重合体成分からなるカチオン性およびアニオン性のイオン交換膜が、互いに相接して膜の表裏両面間を貫通していることにより、イオンの拡散透析を行うことができる荷電膜である。イオンの透過は、原水と透析水との浸透圧の差によって行われる。
【0026】
モザイク荷電膜は、膜のイオンチャンネルを透過しやすい塩類などのイオンと、透析しにくい非イオン性または分子量の大きい分子とが容易に分離される特異な分離膜である。そして、モザイク荷電膜は、塩化ナトリウムの調整方法として常圧下での拡散透析および加圧下での圧透析に使用される。このため、モザイク荷電膜を用いた拡散透析法では、成分の変成が少ない。このため、マグネシウム塩やカルシウム塩などの海水由来のミネラルを逃すことなく、塩化ナトリウム濃度の調整を行うことができる。
【0027】
原水室11,12,13には、原水として海水が、原水供給ライン22から供給される。この原水には、海水に含まれる電解質(塩化ナトリウム:NaCl)が含まれている。また、水室14,15,16には、透析水として蒸留水が、蒸留水供給ライン23から供給される。
【0028】
そして、原水室11,12,13に供給された原水から、陽イオン(Na)及び陰イオン(Cl)がモザイク荷電膜17,18,19,20,21を通過し、水室14,15,16へ移動する。これにより、原水から透析水に塩が移動し、原水の塩化ナトリウム濃度を調整することができる。
このため、原水室11,12,13からは、塩化ナトリウム濃度が調整された原水が、原水排出ライン24により排出される。また、水室14,15,16からは、塩を含む透析水が透析水排出ライン25により排出される。
【0029】
次に、上述の海水の調整方法の他の例として、電気透析法について図2を用いて説明する。図2は、電気透析膜を有する電気透析装置の構成の一例である。
図2に示す電気透析膜を用いた電気透析装置は、水室31、水室32、原水室35、水室33、原水室36、及び、水室34が連通している。そして、水室31と水室32との間には、カチオン交換膜37が介在している。また、原水室35と水室32との間には、アニオン交換膜39が介在し、原水質35と水室33との間には、カチオン交換膜38が介在している。さらに、原水室36と水室33との間には、アニオン交換膜40が介在し、原水室36と水室34との間には、カチオン交換膜41が介在している。
【0030】
また、水室31内には、カチオン交換膜37の反対側にカソード極42が備えられる。水室34には、カチオン交換膜41の反対側にアノード極43が備えられる。従って、電気透析膜を用いた電気透析装置内において、カソード極42とアノード極43とが装置内の対極の位置に備えられている。
【0031】
原水室35,36には、原水として海水が、原水供給ライン44から供給される。この原水には、電解質(NaCl)が含まれている。また、水室31,32,33,34には、透析水として蒸留水が、蒸留水供給ライン45から供給される。
【0032】
そして、原水室35に供給された原水から、陽イオン(Na)がカソード極42に引き寄せられ、アニオン交換膜39を通過して水室32に移動する。また、陰イオン(Cl)が、アノード電極43に引き寄せられ、カチオン交換膜38を通過して水室33に移動する。
同様に、原水室36に供給された原水から、陽イオン(Na)がカソード極42に引き寄せられ、アニオン交換膜40を通過して水室33に移動する。また、陰イオン(Cl)が、アノード電極43に引き寄せられ、カチオン交換膜41を通過して水室34に移動する。
【0033】
上述のように、原水室35,36に供給された原水から、陽イオン(Na)及び陰イオン(Cl)が、アニオン交換膜39,40、カチオン交換膜38,41を通過し、水室32,33,34へ移動する。このように、原水から透析水に塩が移動し、原水の塩化ナトリウム濃度を調整することができる。
このため、原水室35,36からは、塩化ナトリウム濃度が調整された原水が、原水排出ライン46によって排出される。また、水室31,32,33,34からは塩を含む透析水が、透析水排出ライン47によって排出される。
【0034】
上述の電気透析法やモザイク荷電膜による拡散透析法を用いて、海水由来組成物の塩化ナトリウム濃度を好適な範囲に調節することにより、マグネシウム塩及びカルシウム塩を含む海水由来成分を飼料組成物及び飲用水に加えることができる。
【0035】
表2に、上述のモザイク荷電膜を用いた拡散透析法、及び、電気透析膜を用いた電気透析法により、塩化ナトリウム濃度の調整を行った結果を示す。海水は、上記表1に示した静岡県駿河湾の海洋深層水を用いた。また、モザイク荷電膜を用いた拡散透析装置には、大日精化社製のモザイク荷電膜透析装置を使用し、電気透析装置には、アストム社製の電気透析装置を使用した。
【0036】
【表2】

【0037】
また、上述の家畜又は伴侶動物用の飼料組成物及び飲用水は、トレハロース化合物を含むことが好ましい。上述の海水由来のマグネシウム塩やカルシウム塩を含む飼料組成物及び飲用水に、トレハロース化合物を加えることにより、トレハロース化合物と海水由来のミネラルとが結合し、体内で吸収されやすい形になる。このため、上述の飼料組成物及び飲用水にトレハロース化合物を入れることにより、動物体内でのミネラルの吸収を促進される。
【0038】
トレハロース化合物としては、特に限定されないが、例えば、トレハロース骨格にグルコースがα−1.4結合したグルコシルトレハロース、マルトシルトレハロース、マルトトレオシルトレハロース等を飼料組成物及び飲用水に使用することができる。
【0039】
海水由来のカルシウム、マグネシウム等の金属イオンと、トレハロース化合物の分子中のヒドロキシル基とは、複合体を形成することがNMRを用いた研究により推定されている。このトレハロース化合物と金属イオンとの複合体の形成量は、トレハロースの添加量に依存する。また、スクロース化合物では、上述の金属イオンとの複合体が形成されないことが報告されている。
このため、飼料組成物及び飲用水にトレハロース化合物を添加することにより、海水由来のミネラル分がトレハロース化合物と結合して安定化し、体内でのミネラルの吸収率が向上する。従って、飼料組成物及び飲用水による家畜又は伴侶動物の健康維持効果のさらなる向上が可能となる。
【0040】
なお、飼料組成物及び飲用水に配合する有機酸組成物、海水由来組成物、及び、トレハロース化合物の配合量は、飼料を与える動物の健康に悪影響を与えない範囲で任意に設定することができる。好ましくは、有機酸組成物を0.01〜2.0質量%、海水由来のマグネシウム塩を0.1〜1.0質量%、トレハロース化合物を0.1〜3.0質量%含むことが好ましい。
上述の配合とすることにより、家畜又は伴侶動物の摂取量が低下する等の悪影響が発生せず、適正な摂取量を家畜又は伴侶動物に与えることができる。
【0041】
また、有機酸化合物の配合量が0.01質量%未満では、配合量が少ないため、所望の効果を得ることができない。
有機酸化合物の配合量が2.0質量%を超えると、体内において有機酸が効率的に利用されず、排泄される量が増えてしまう。また、有機酸化合物の配合量が多いと酸味が大きくなり、呈味性が悪化してしまう。さらに、有機酸組成物を多量に使用することにより、飼料組成物及び飲用水のコストが増加してしまう。
【0042】
なお、飼料組成物及び飲用水には、上述の有機酸化合物、海水由来組成物、及び、トレハロース化合物の他に、海水由来以外のミネラル、タンパク質、ビタミンなどの種々の栄養成分を添加することができる。
【0043】
上述の海水由来以外のミネラルとしては、例えば鉄、銅、マンガン、亜鉛、ヨウ素、カリウム、セレン等の無機又は有機の塩を使用することができる。
上述のタンパク質としては、例えば、植物性タンパク質として、トウモロコシ、小麦、大麦、大豆粕、菜種油粕等を使用することができる。また、動物性タンパク質としては、肉骨粉、魚粉、チキンミール等を使用することができる。近年では、動物性原料の安全性が懸念される傾向にあるため、植物性タンパク質を用いるのが好ましい。
上述のビタミンとしては、例えば、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ナイアシン、ビタミンK、ビオチン、リボフラビン、ニコチン酸、葉酸、パントテン酸、コリン等を使用することができる。
【0044】
上述の有機酸組成物、海水由来組成物、トレハロース化合物、及び、栄養成分を任意の割合で配合し、常法により飼料組成物及び飲用水を製造することができる。
各成分の配合量は、家畜又は伴侶動物の栄養成分要求量から考えてそれぞれの成分配合量を決定することが好ましい。
家畜又は伴侶動物の栄養成分要求量に比較して各成分の配合量が多すぎると、余剰の成分は家畜の体外に排出されて有効に活用されない。一方、要求量に比較して配合量が少ないと、家畜に必要な成分が不足する。
【0045】
飼料組成物の形状は特に限定されず、液状、ペースト状、粉末状、細粒状、顆粒状、ペレット状等のいずれの形状であってもよい。
また、飼料組成物及び飲用水を与える家畜又は伴侶動物は、特に限定されるものではない。家畜としては、例えば、牛、馬、豚、羊、鶏、合鴨等が挙げられ、伴侶動物としては、例えば、犬、猫等が挙げられる。
【0046】
次に、本実施の形態で説明する飼料組成物及び飲用水を用いた、豚用、鶏用の飼料組成物、及び、犬又は猫用の飲用水の配合例の一例を示す。
【0047】
(豚用の飼料組成物)
トウモロコシ66質量部、大豆油粕23質量部、菜種油粕4質量部、魚粉2質量部、米ぬか5質量部となるように飼料を配合する。そして、配合した飼料に、有機酸組成物としてクエン酸カルシウム0.8質量部、海水由来組成物として海洋深層水にがり1質量部、アミノ酸(DL−メチオニン、塩酸L−リジン、L−トリプトファン、L−グルタミン酸ナトリウム、ニコチン酸アミド、アミノ酢酸の混合物)0.02質量部、ビタミン類(ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビオチン、葉酸、パントテン酸の混合物)0.01質量部を配合し、成豚用の飼料組成物を作製した。
この成豚用の飼料組成物は、有機酸組成物、及び、海水由来組成物のマグネシウム塩、カルシウム塩を充分量含有している。このため、豚の暑熱感作ストレスの軽減に有効である。
【0048】
(鶏用の飼料組成物)
マイロ60質量部、コーングルテンミール10質量部、菜種油粕5質量部、フィッシュソリュブル10質量部、コーングルテンフィード5質量部、飼料用油脂10質量部からなる飼料を配合する。そして、この配合した飼料に、有機酸組成物としてクエン酸カルシウム1質量部、リンゴ酸0.2質量部、海洋深層水にがり1質量部、アミノ酸(DL−メチオニン、塩酸L−リジン、L−トリプトファン、L−グルタミン酸ナトリウムの混合物)0.02質量部、ビタミン類(ビタミンA、ビタミンD3、酢酸トコフェロール、ビオチン、葉酸、パントテン酸、フィターゼ)0.01質量部、トレハロース1.2質量部を配合し、成鶏用の飼料組成物を作製した。
この成鶏用の飼料組成物は、クエン酸、リンゴ酸、カルシウム、マグネシウム、トレハロースを充分量含有している。このため、鶏の暑熱感作ストレスの軽減に有効である。
【0049】
(犬又は猫用の飲用水)
上述の表2に示すモザイク荷電膜を用いた拡散透析法により調整した海洋深層水100質量部に、有機酸組成物としてクエン酸カルシウム1質量部、アミノ酸(DL−メチオニン、塩酸L−リジン、L−トリプトファン、L−グルタミン酸ナトリウムの混合物)0.01質量部を配合し、犬又は猫用の飲用水を作製した。
この犬又は猫用の飲用水は、クエン酸、カルシウム、マグネシウムを充分量含有しており、犬又は猫の暑熱感作ストレスの軽減に有効である。
【0050】
以上説明したように、本実施の形態の家畜又は伴侶動物用の飼料組成物及び飲用水は、有機酸組成物と、マグネシウム塩及びカルシウム塩を含む海水由来組成物とを含むことにより、家畜又は伴侶動物に対するミネラル補給及び暑熱感作等のストレスを軽減することができる。さらに、トレハロース化合物が添加されることにより、体内でのミネラルの吸収率が向上し、健康維持効果のさらなる向上が可能となる。
【0051】
本発明は、上述の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でその他様々な構成が取り得る。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の飼料組成物及び飲用水を製造するための、海水を調製する拡散透析装置の構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の飼料組成物及び飲用水を製造するための、海水を調製する電気透析装置の構成の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
11,12,13,35,36 原水室、14,15,16,31,32,33,34 水室、17,18,19,20,21 モザイク荷電膜、22,44 原水供給ライン、23,45 蒸留水供給ライン、24,46 原水排出ライン、25,47 透析水排出ライン、37,38,41 カチオン交換膜、39,40 アニオン交換膜、42 カソード極、43 アノード極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機酸組成物と、
マグネシウム塩及びカルシウム塩を含む海水由来組成物とが配合されている
ことを特徴とする家畜又は伴侶動物用の飼料組成物。
【請求項2】
前記海水由来組成物が、海洋深層水の調整物であることを特徴とする請求項1に記載の家畜又は伴侶動物用の飼料組成物。
【請求項3】
前記海水由来組成物は、電気透析法、拡散透析法から選ばれる少なくとも1種類以上の方法により調整された海水の調整物であることを特徴とする請求項1に記載の家畜又は伴侶動物用の飼料組成物。
【請求項4】
前記拡散透析法が、モザイク荷電膜を有する拡散透析装置により行われることを特徴とする請求項3に記載の家畜又は伴侶動物用の飼料組成物。
【請求項5】
前記有機酸組成物が、クエン酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸から選ばれる少なくとも一種以上であることを特徴とする請求項1に記載の家畜又は伴侶動物用の飼料組成物。
【請求項6】
トレハロース化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の家畜又は伴侶動物用の飼料組成物。
【請求項7】
有機酸組成物と、
マグネシウム塩及びカルシウム塩とを含む海水由来組成物を含有する
ことを特徴とする家畜又は伴侶動物用の飲用水。
【請求項8】
前記海水由来組成物が、海洋深層水の調整物であることを特徴とする請求項7に記載の家畜又は伴侶動物用の飲用水。
【請求項9】
前記海水由来組成物は、電気透析法、拡散透析法から選ばれる少なくとも1種類以上の方法により調整された、海水の調整物であることを特徴とする請求項7に記載の家畜又は伴侶動物用の飲用水。
【請求項10】
前記拡散透析法が、モザイク荷電膜を有する拡散透析装置により行われることを特徴とする請求項9に記載の家畜又は伴侶動物用の飲用水。
【請求項11】
前記有機酸組成物が、クエン酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸から選ばれる少なくとも一種以上であることを特徴とする請求項7に記載の家畜又は伴侶動物用の飲用水。
【請求項12】
トレハロース化合物を含むことを特徴とする請求項7に記載の家畜又は伴侶動物用の飲用水。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate