説明

家畜用給餌器

【課題】排出口から飼料が円滑に落下、供給されなくなる事態を防止することができ、落下、供給される飼料の量を微妙に調整することができる家畜用給餌器を提供する。
【解決手段】 飼料ホッパー2の下端部に案内筒体3の上端を連結する。飼料ホッパー2内に吊下部材4,5を配設し、吊下部材5の下端部に作動部材6を固定し、中間部にブリッジ防止部材7を固定する。飼料ホッパー2の上端部に支持部材8を配設し、吊下部材4の上端部を支持部材8に支持する。給水タンク10を飼料ホッパー2の下端に連結し、案内筒体3内に配設し、給水器11を給水タンク10に装着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仔豚等の家畜に餌を与えるための家畜用給餌器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の家畜用給餌器101として、図7乃至図9に示すように、飼料ホッパー102、吊下部材103、作動部材104、攪拌部材105、底皿106等から構成されるものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
この家畜用給餌器101は、仔豚が鼻又は口で作動部材104を揺動し、攪拌部材105を揺動することによって、飼料ホッパー102内の飼料aを攪拌し、下端の排出口から底皿106へと飼料aを円滑に落下、供給するようになっている。
【0003】
又、上記家畜用給餌器101には、図7及び図11に示すように、飼料ホッパー102の上端部に支持部材107を配設し、この支持部材107に吊下部材103の上端部を連結すると共に、餌量調整機構108を配設してある。
そして、餌量調整機構108により支持部材107を回動させ、吊下部材103を適宜上下移動することによって、飼料ホッパー102下端の排出口の開口面積を調整し、底皿106へ落下、供給する飼料aの量を調整できるようになっている。
【0004】
又、上記家畜用給餌器101には、図7及び図9に示すように、飼料ホッパー102の下端部外周に円環状の給水タンク109を配設し、この給水タンク109の周面に適宜間隔で給水器110を配置すると共に、上面に給水パイプ111の下端を連結してある。
そして、仔豚が給水器110を口に銜えて、その作用杆110aを揺動することによって、給水パイプ111から給水タンク110に貯留された水を飲むことができるようになっている。
【0005】
さらに、上記家畜用給餌器101には、図7及び図9に示すように、その上端を前記給水タンク109の周面に固着させ、その下端を前記底皿106の周面に固着させた湾曲状の仕切棒112を適宜間隔で配設してある。
そして、仔豚はこの仕切棒112で区画された空間内で、争うことなく食餌又は飲水できるようになっている。
【0006】
【特許文献1】登録実用新案第3019037号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記家畜用給餌器101では、図8に示すように、飼料ホッパー102内の上端部から下端部に至るまで飼料aが一杯に貯蓄されているため、仔豚が食餌しない特に夜間等において、畜舎内の湿度によって飼料aが膨張し、飼料ホッパー102内で、又、排出口近傍で飼料aが詰まり、排出口から底皿106へと飼料aが円滑に落下、供給されなくなるという問題があった。
【0008】
又、上記家畜用給餌器101では、図11及び図12に示すように、餌量調整機構108は、複数穿設した適宜孔部にピンを嵌挿することによって支持部材106の回動位置を設定するため、吊下部材103を連続的に上下移動することができず、排出口の開口面積の微妙な調整をすることができないから、底皿106へ落下、供給する飼料aの量を微妙に調整することはできなかった。
【0009】
又、上記家畜用給餌器101では、図7に示すように、その上端を前記給水タンク109の周面に固着させ、その下端を前記底皿106の周面に固着させた湾曲状の仕切棒112を適宜間隔で配設したから、仔豚が頭部を仕切棒112と飼料ホッパー102の下端部との間に挟まれることもあり、非常に危険であった。
【0010】
又、上記家畜用給餌器101では、図9及び図10に示すように、円環状の給水タンク109は、ステンレス鋼板等により円環状に製作すると共に、飼料ホッパー102の下端部外周に配設していたから、製作及び配設は極めて面倒であった。
【0011】
さらに、上記家畜用給餌器101は、図9に示すように、吊下部材103、作動部材104、攪拌部材105等を構成する部品点数が多く、構成も複雑であり、組立工程も多かったから、高価にならざるを得なかった。
【0012】
本発明は、かかる問題点に鑑みて為されたものであって、その目的とするところは、飼料ホッパー内で、又、排出口近傍で飼料が詰まり、排出口から飼料が円滑に落下、供給されなくなる事態を防止することができ、落下、供給される飼料の量を微妙に調整することができ、仔豚が頭部を挟まれる危険性もなく、円環状の給水タンクの製作及び配設も容易であり、しかも、構成する部品点数が少なく、構成も簡単であり、組立工程も少なく、製造コストを安価にすることができる家畜用給餌器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は、飼料ホッパーと、この飼料ホッパーの下端部に連結した案内筒体と、前記飼料ホッパー内に配設された吊下部材と、この吊下部材の下端部に固定された作動部材と、前記吊下部材の中間部に固定されたブリッジ防止部材と、前記飼料ホッパーの上端部に配設され、前記吊下部材の上端部を支持する支持部材と、前記飼料ホッパーの下端に連結され、前記案内筒体内に配設された給水タンクと、この給水タンクに装着された給水器と、底皿と、から家畜用給餌器を構成したことを特徴とする。
【0014】
かかる構成によれば、ブリッジ防止部材の下方空間、給水タンクの内周空間、案内筒体内側空間には、常時空気層が存在しているから、夜間等において畜舎内の湿度によって飼料aが膨張し、飼料ホッパー内で、又、排出口近傍で飼料aが詰まり、排出口から底皿へ円滑に落下、供給されなくなるという問題は発生しない。
【0015】
前記ブリッジ防止部材は、逆円錐台状であることが好ましい。
【0016】
前記吊下部材を上下移動する餌量調整機構を配設するのが好ましい。
【0017】
前記餌量調整機構は、前記吊下部材の上端部とハンドルの基端部とを螺合状態を介して連結したものとするのが好ましい。
【0018】
かかる構成によれば、吊下部材を連続的に上下移動することができるから、排出口の開口面積の微妙な調整をすることができ、底皿へ落下、供給する飼料の量を微妙に調整することができる。
【0019】
前記給水タンクは、防錆金属材料を鋳造して中空の円環体に成形し、その外周面には適宜間隔でネジ孔を形成するのが好ましい。
【0020】
前記底皿を区画する仕切板を配設すれば、仔豚が頭部を挟まれる虞はなく、安全である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の家畜用給餌器の好適な実施形態について、図面を参照して説明する。
【0022】
本発明の家畜用給餌器1は、図1乃至図4に示すように、飼料ホッパー2、案内筒体3、吊下部材4,5、作動部材6、ブリッジ防止部材7、支持部材8、餌量調整機構9、給水タンク10、給水器11、給水パイプ12、底皿13、仕切板14等から構成される。
【0023】
飼料ホッパー2は、図1乃至図4に示すように、上半部を円筒状、下半部を円錐状としてあり、飼料ホッパー2の下端部に案内筒体3を連結してある。
案内筒体3は、図4に示すように、周方向に適宜間隔で挿通孔3a,3a,・・・を穿設してある。
【0024】
吊下部材4は、図1及び図4に示すように、上端部をL型に折曲し、ナット15を固着すると共に、下端部を鉤状に形成してある。
吊下部材5は、図2乃至図4に示すように、上端部を鉤状に形成すると共に、下端部に雄ネジ5aを刻設してある。
【0025】
作動部材6は、図4に示すように、中央部を円錐状とし、周辺部を平坦状としてあり、中心部に挿通孔6aを穿設してある。
そして、吊下部材5の下端部を作動部材6の挿通孔6aに挿通させ、雄ネジ5aにナット16,17を螺合して、吊下部材5の下端部に作動部材6を固定してある。
【0026】
ブリッジ防止部材7は、図1乃至図4に示すように、逆円錐台状としてあり、上面部には嵌挿孔7aを穿設してある。
そして、吊下部材5をブリッジ防止部材7の嵌挿孔7aに挿通させ、吊下部材5の中間部にブリッジ防止部材7を溶接によって固定してある。
【0027】
吊下部材4の下端部に吊下部材5の上端部を掛止し、吊下部材4の上端部は餌量調整機構9を介して支持部材8に連結してある。
支持部材8は、断面コ型を呈するように成形し、その両端を飼料ホッパー2の上端部内面にネジ等により固着し、架設してある。
【0028】
餌量調整機構9は、図5及び図6に示すように、支持部材8の上面に形成した挿通孔8a、回転防止用長孔8b,8bと、吊下部材4の上端部に固着したナット15と、頭部に円管部材18を固着したボルト19と、基端部をL型に折曲し、先端部を適宜角度折曲したハンドル20から構成される。
そして、ボルト19を挿通孔8aに挿通させ、ナット15に雄ネジ19aを螺合させ、
円管部材18にハンドル20の基端部を回動自在に嵌挿してある。
【0029】
給水タンク10は、図2乃至図4に示すように、黄銅等の防錆材料を鋳造して、中空の円環体に成形したものであり、その外周面には適宜間隔でネジ孔10a,10a,・・・を形成してある。
給水タンク10の外径は、前記案内筒体3の内径より小とし、給水タンク10の内径は、前記飼料ホッパー2の下端開口の内径と略同一としてある。
【0030】
給水タンク10のネジ孔10a,10a,・・・には、図4に示すように、給水器11を螺着できるようになっている。
又、分岐管21及び連結管22を介して給水器11を螺着することもでき、この分岐管21には給水パイプ12を螺着することもできるようになっている。
【0031】
底皿13は、図1乃至図3に示すように、中央部を円錐台状に隆起させてあり、飼料aが中央部から周辺部に流動するようになっている。
【0032】
仕切板14は、飼料ホッパー2の下半部、案内筒体3、底皿13の内周面にネジ等によって固定され、適宜間隔で配設されている。
【0033】
家畜用給餌器1は、図4に示すように、先ず、飼料ホッパー2の下端部に案内筒体3の上端を溶接等により固着、連結し、飼料ホッパー2の下端開口に給水タンク10の内周上端を溶接等により固着、連結する。
【0034】
次に、ブリッジ防止部材7を溶接等によって固定した吊下部材5を飼料ホッパー2内に位置させ、吊下部材5の下端部を飼料ホッパー2の下端開口、給水タンク10の内周空間、案内筒体3の下端開口を通過、突出させ、吊下部材5の下端部に作動部材6を固定する。
【0035】
そして、吊下部材4の下端部に吊下部材5の上端部を掛止し、吊下部材4の上端部を餌量調整機構9を介して支持部材8に連結する。又、案内筒体3に穿設した挿通孔3aより給水器11の基端部を挿入し、給水タンク10のネジ孔10aに螺着する。
【0036】
最後に、分岐管21に給水パイプ12を螺着すると共に、仕切板14を飼料ホッパー2の下半部、案内筒体3の外周面、底皿13の内周面にネジ等によって固定すれば、家畜用給餌器1を組み立てることができる。
【0037】
本発明の家畜用給餌器1では、図2及び図3に示すように、仔豚が鼻又は口で作動部材6を揺動すれば、飼料ホッパー2内の飼料aは、飼料ホッパー2の内周面とブリッジ防止部材7の外周面との間隙を流動しつつ落下し、飼料ホッパー2の下端開口、給水タンク10の内周空間を通過し、案内筒体3の下端開口から底皿13へと円滑に落下する。
【0038】
本発明の家畜用給餌器1では、飼料aが凝集してブリッジを発生し易い飼料ホッパー2内の下端部にブリッジ防止部材7を配設してあるから、ブリッジを発生することはなく、飼料ホッパー2内の飼料aを飼料ホッパー2から円滑に排出することができる。
【0039】
又、飼料ホッパー2内でブリッジ防止部材7の下方空間、給水タンク10の内周空間、案内筒体3の内側空間には、飼料aが一杯に貯蓄されているのではなく、常時空気層が存在しているから、夜間等において畜舎内の湿度によって飼料aが膨張し、飼料ホッパー2内で、又、排出口近傍で飼料aが詰まり、排出口から底皿13へ円滑に落下、供給されなくなるという問題は発生しない。
【0040】
本発明の家畜用給餌器1では、ハンドル20を支持部材8に形成した回転防止用長孔8bから脱出させ、ハンドル20を垂直軸回りに回転させれば、ボルト19と螺合したナット15が上下移動し、よって、吊下部材4を適宜上下移動することができ、案内筒体3下端の排出口の開口面積を調整し、底皿13へ落下、供給する飼料aの量を調整することができる。
【0041】
そして、餌量調整機構9は、ハンドル20を回転させることによりボルト19と螺合したナット15を上下移動するものであって、吊下部材4を連続的に上下移動することができるから、排出口の開口面積の微妙な調整をすることができ、底皿13へ落下、供給する飼料aの量を微妙に調整することができる。
【0042】
又、本発明の家畜用給餌器1では、仕切板14を飼料ホッパー2の下半部、案内筒体3、底皿13の内周面にネジ等によって固定し、適宜間隔で配設したから、仔豚が頭部を挟まれる虞はなく、安全である。
【0043】
本発明の家畜用給餌器1では、給水タンク10は、黄銅等の防錆材料を鋳造して、中空の円環体に成形したものであるから、製作は容易である。又、飼料ホッパー2の下端開口に給水タンク10の内周上端を溶接等により固着、連結するだけであるから、配設も容易である。
【0044】
さらに、本発明の家畜用給餌器1は、吊下部材4,5、作動部材6、給水タンク10等を構成する部品点数が少なく、構成も簡単であり、組立工程も少ないから、安価にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の家畜用給餌器の外観斜視図である。
【図2】本発明の家畜用給餌器の縦断面図である。
【図3】本発明の家畜用給餌器の作用を示す説明図である。
【図4】本発明の家畜用給餌器の分解斜視図である。
【図5】本発明の家畜用給餌器の餌量調整機構を示す説明図である。
【図6】図5に示す餌量調整機構の要部説明図である。
【図7】従来の家畜用給餌器の外観斜視図である。
【図8】従来の家畜用給餌器の作用を示す説明図である。
【図9】従来の家畜用給餌器の分解斜視図である。
【図10】従来の家畜用給餌器の給水器装着部における断面図である。
【図11】本発明の家畜用給餌器の餌量調整機構を示す説明図である。
【図12】図11に示す餌量調整機構の要部説明図である。
【符号の説明】
【0046】
1 家畜用給餌器
2 飼料ホッパー
3 案内筒体
4 吊下部材
5 吊下部材
6 作動部材
7 ブリッジ防止部材
8 支持部材
9 餌量調整機構
10 給水タンク
10a ネジ孔
11 給水器
13 底皿
14 仕切板
20 ハンドル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飼料ホッパーと、この飼料ホッパーの下端部に連結した案内筒体と、前記飼料ホッパー内に配設された吊下部材と、この吊下部材の下端部に固定された作動部材と、前記吊下部材の中間部に固定されたブリッジ防止部材と、前記飼料ホッパーの上端部に配設され、前記吊下部材の上端部を支持する支持部材と、前記飼料ホッパーの下端に連結され、前記案内筒体内に配設された給水タンクと、この給水タンクに装着された給水器と、底皿と、から構成される家畜用給餌器。
【請求項2】
前記ブリッジ防止部材は、逆円錐台状であることを特徴とする請求項1に記載の家畜用給餌器。
【請求項3】
前記吊下部材を上下移動する餌量調整機構を配設したことを特徴とする請求項1又は2に記載の家畜用給餌器。
【請求項4】
前記餌量調整機構は、前記吊下部材の上端部とハンドルの基端部とを螺合状態を介して連結したものであることを特徴とする請求項1乃至3何れかに記載の家畜用給餌器。
【請求項5】
前記給水タンクは、防錆金属材料を鋳造して中空の円環体に成形し、その外周面には適宜間隔でネジ孔を形成したことを特徴とする請求項1乃至4何れかに記載の家畜用給餌器。
【請求項6】
前記底皿を区画する仕切板を配設したことを特徴とする請求項1乃至5何れかに記載の家畜用給餌器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−215487(P2007−215487A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−40049(P2006−40049)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【出願人】(390032263)株式会社藤井商会 (15)
【Fターム(参考)】