説明

家禽を処置するための柔軟ゲル送達システム

本発明は、孵化幼生トレイにおいて家禽孵化幼生を処置する方法に関する。該方法は、噴霧ノズルを経て分与することができる柔軟ゲルを提供すること、複数のノズルを経て複数の小さいビードレットとして所定の容積のゲルを送達することができる噴霧分与装置を提供すること、孵化幼生を含む孵化幼生トレイを分与装置の下に配置すること、治療薬をビードレットとして含む所定の容積の柔軟ゲルを孵化幼生トレイに分与すること、孵化幼生にビードレットを消費させること、を含む。本発明は、柔軟ゲルにおいて治療薬を家禽孵化幼生の孵化幼生トレイに分与する分与装置にも関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、孵化場において家禽を処置するための柔軟ゲル送達システムに関する。具体的には、本発明は、治療薬を家禽孵化幼生に送達するために孵化場において使用される送達システムに関する。
【背景技術】
【0002】
家禽孵化幼生が生まれるとすぐに、家禽孵化幼生が処置されなければならない多くの環境が存在する。そのような処置には、治療薬の投薬があり、または単に、保持および輸送中に孵化幼生の水分補給を維持することがある。ワクチン、競争的排除産物、ビタミン、ミネラル、薬剤、およびその他の多くなど、家禽の飼育において使用される多くの治療薬が存在する。いくつかのそのような治療薬は、孵化幼生に送達される途中で、環境の影響から保護されなければならない。
【0003】
具体的には、家禽孵化幼生は、誕生後最初の数日内に様々な病気に対して免疫化されることが必要であり、各病気に使用されるワクチンのタイプは、その投与法を指示する。ワクチンは、通常、孵化幼生を孵化孵卵器から保持トレイまたは輸送トレイに分類するとき、注射によって孵化場において投与される。生ワクチンは、孵化幼生が水性懸濁液の形態の育雛領域において定着した後、飼料に噴霧されて、または飲料水に添加されて、投与されることが可能である。
【0004】
生ワクチンの一例は、アイメリア属の原生動物によって生じるコクシジウム症に対して家禽を免疫化するために使用されるものである。コクシジウム症は、家禽の非常に一般的な病気であり、そのような病気を生じることが知られているアイメリアのいくつかの種が存在する。病気の症状および重症度は、鳥が感染したアイメリアの種に依存し、E.テネラ、E.アセルブリナ、およびE.マクシマが、商用の鶏のひなにおいて最もよく見られる種の3つである。現時点において、コクシジウム症に対する家禽の保護には、飼料添加物としての抗コクシジウム剤の使用、またはコクシジウム症ワクチンを使用する免疫化の2つの可能な方法があり、免疫化がますます好ましい手段となっている。コクシジウム症ワクチンは、現在、投与される適切なキャリアにおけるコクシジウム種の弱毒性種または非弱毒性種からなり、該コクシジウム種は、病気の中庸な形態を生じることができ、抗コクシジウム感受性であるように選択される。
【0005】
コクシジウム症に対する免疫化の1つの一般的な方法には、鳥がフラットまたは他の容器から飼料を食べている間、飼料上噴霧投与の使用がある。キャリアとして水を使用するアイメリア種の接合子嚢からなるワクチンが、孵化幼生に提供されるために飼料の上に噴霧される。飼料上噴霧投与の使用は、接合子嚢の大量投与を必要とする。群れをワクチンに一様に暴露することは、常には達成することはできない。
【0006】
ワクチンは、自動ファウンテンおよび自動水投薬装置またはプロポーショナを含む水プロポーショニング・システムを使用することにより投与することも可能である。しかし、コクシジウム症ワクチンの粒子の性質を考慮すると、ワクチンが水ラインの遠位端部まで実際に到達することが可能であるかは疑わしく、群れに対する暴露は不均一になる。さらに、水プロポーショニング・システムを経たワクチンの投与は、ワクチンの投与後、あらゆる残留ワクチンを除去するために、プロポーショニング・システムを完全に清浄することを必要とする。
【0007】
飲料水においてワクチンを投与することは、群れに対して一様に暴露されるように、接合子嚢が懸濁された状態になっていることが必要である。これに対する1つの解決法は、カナダ特許第1204057号において本出願人によって提案されており、1.5%のカラゲナン溶液に接合子嚢を懸濁させることを含む。この方法は、免疫化を提供するために必要な接合子嚢のレベルの低減、ならびに投与の容易さなど、多くの利点を有するが、開放水供給システムを孵化幼生に提供することにより、液体がこぼれる、または孵化幼生を濡らすことがあり、これは、具体的には、孵化幼生が孵化場においてワクチン接種されるとき、特に、低温気象において、および輸送中に、孵化幼生の健康に悪影響を与える可能性がある。
【0008】
ワクチンを投与する他の方法は、液体形態のワクチンを孵化幼生に噴霧するために孵化場において利用される噴霧キャビネットを使用するものである。約100羽の鳥を通常含む孵化幼生のフラットまたはトレイが、噴霧キャビネットに配置され、所定の投与量の液体ワクチンが、鳥に直接噴霧される。鳥が毛づくろいする際、鳥が羽からワクチンを摂取することが予期される。この方法は、接合子嚢を懸濁状態に維持するために、噴霧の直前まで一定の攪拌が必要であるので、すべての孵化幼生を一様に暴露することが容易には達成されない可能性があるという点で、いくつかの欠点がある。さらに、鳥は水懸濁ワクチンを噴霧されているので、孵化幼生が過度に濡れる可能性があり、これにより鳥の健康に悪影響を与える可能性があるという危険性が存在する。
【0009】
ゲル形態のコクシジウム症ワクチンが、1996年8月29日に公開されたPCT出願WO96/25951に記載されている。この出願のゲル形態のワクチンは、自立またはスライス可能なワクチンであり、円筒に形成され、次いで、孵化幼生の各トレイに適切な量のワクチンを与えるようにスライスされる。もう一つの方法として、ワクチンは、適切な水供給トラフの中にゲル化することが可能である。このワクチンは、鳥を濡らす潜在的な問題を克服するが、孵化場の作業者が孵化場トレイにゲルを配置するために、ゲルを取り扱うことを必要とする。
【特許文献1】カナダ特許第1204057号
【特許文献2】PCT出願WO96/25951
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、群れを治療薬に適切に暴露させ、一方、潜在的な問題の範囲を低減する、孵化場において孵化幼生に柔軟ゲル形態の治療薬を投与する簡単な手段が依然として必要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、孵化幼生トレイにおいて家禽孵化幼生を処置する方法に関する。この方法は、水に懸濁され、ノズル構成を経て分与することができる柔軟ゲルを提供すること、所定の容積のゲルをリザーバから計量式ポンプを経てノズル構成に送達することができる噴霧分与装置を提供し、該ノズル構成が、複数の小さいビードレット(顆粒)として柔軟ゲルを分与することができる複数のノズル開口をその長さに沿って有するマニホルドを備えること、孵化幼生を含む孵化幼生トレイをマニホルドのノズルの下に沿って通過させること、所定の容積の柔軟ゲルを小さいビードレットとして孵化幼生トレイの中に分与すること、孵化幼生にビードレットを消費させること、を含む。
【0012】
一態様では、本発明は、柔軟ゲルを家禽孵化幼生のトレイの中に分与する分与装置をも関する。装置は、マニホルドの長さに沿って間隔をおいて位置する複数のノズル開口を備え、該ノズル開口は、柔軟ゲルがノズル開口を通って進行し、小さいビードレットの形態で分与されることを可能にするようにサイズ決めされる。マニホルドは、加圧下において所定の容積の柔軟ゲルを分与することができる計量式ポンプの出口に接続され、ポンプの入口は、流動性形態の柔軟ゲルを含むリザーバに接続される。
本発明の他の態様では、柔軟ゲルは、家禽孵化幼生を処置するための治療薬を含む。
本発明の他の態様では、治療薬はワクチンである。
本発明の好ましい実施形態が、添付の図面において示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、家禽孵化幼生を処置するために、柔軟流動性ゲルを家禽孵化幼生に送達する方法および装置に関する。好ましい実施形態では、柔軟ゲルは、治療薬の一様な懸濁液を含み、特に好ましい実施形態では、治療薬はワクチンであり、送達システムは、孵化場において家禽孵化幼生を免疫化するために、ワクチンを柔軟ゲルのビードレットにおいて孵化幼生に送達する。柔軟流動性ゲルは、ポンピングして、家禽孵化幼生に直接送達することができる。柔軟流動性ゲルは、治療薬を含むことが可能であり、かつ家禽孵化幼生によって容易に摂取することができる複数の小さいビードレットとして分与される。ゲルのビードレットは、柔軟ゲルの分与および消費中に柔軟ゲルに含まれているあらゆる治療薬の実行可能性および効力を維持するために、水分含有量を保持する。ビードレットは、水分が逃げることを防止し、かつ鳥を潜在的に濡らすことを最小限に抑えるのに役立つ。
【0014】
柔軟流動性ゲルは、柔軟ゲルが主に水を含むことを可能にするために、比較的低濃度において柔軟ゲルを形成することができる適切な硬化剤を使用する。重量でゲルの少なくとも90%が水であることが好ましく、重量で少なくとも95%であることがより好ましく、重量で約98%であることが最も好ましい。適切な硬化剤は、柔軟流動性ゲル全体にわたって比較的一様に分散して治療薬を維持するように迅速に硬化する多糖類硬化剤であることが好ましい。硬化剤は、温度変化により、または適切な硬化触媒の使用により硬化することが可能であるカラゲナンまたはアルギン酸塩の硬化剤であることがより好ましい。硬化剤は、温度変化により硬化するカッパまたはラムダのカラゲナン硬化剤であることが最も好ましい。
【0015】
柔軟流動性ゲルは、孵化場において家禽孵化幼生を処置する方法を取り扱うのを容易にし、したがって、要求されるあらゆる特別な専門技術のない一般的な孵化場作業者にとって適切である。柔軟流動性ゲルは、可食温度硬化性多糖類ゲル、好ましくは、低温硬化性アルギン酸またはカラゲナン・ゲル、より好ましくは、ラムダまたはカッパ・カラゲナン・ゲル、最も好ましくは、紅藻ユーキュウマ・コットニー(Eucheuma cottonii)から抽出された水溶性ラムダ・タイプ・カラゲナンを使用して生成される。
【0016】
柔軟流動性ゲルは、多糖類粉末の溶解を行うために、適切な温度においてゲル粉末を水に溶解させることによって調製される。粉末は、任意の治療薬と混合されてゲル化するとき、柔軟流動性ゲルを生じるような濃度において水に加えられる。通常、治療薬を含むゲルでは、溶解したゲル粉末および治療薬は、内部において一様に懸濁した治療薬を有する柔軟流動性ゲルを生成するのに十分なゲル粉末対治療薬の比において混合される。低投与量において投与される高度に可溶性の薬剤では、比は、1,000:1(V/V)程度の高さの溶解ゲル粉末対治療薬とすることが可能である。免疫化または競争的排除産物などに使用される有機体などの大きな粒子の治療薬では、比は、一般に約1:1(V.V)から約20:1(V/V)の溶解ゲル粉末対治療薬の範囲にある。適切なそのような柔軟流動性ゲルは、約0.6と1.5パーセントの間、好ましくは約0.6と1パーセントの間、より好ましくは約0.8と1.0パーセントの間、最も好ましくは約1.0パーセントのゲル形態において、可食多糖類の最終濃度を有することが判明した。したがって、好ましくは、アイメリア接合子嚢懸濁液などの溶解ゲル粉末対治療薬の比が約1:1(V/V)である場合、約1.2から3パーセント、好ましくは約1.2から2パーセント、より好ましくは約1.6から2.0パーセント、最も好ましくは約2.0パーセントの溶解多糖類ゲル溶液が、等容積の接合子嚢の懸濁液と混合され、その混合物をゲル化する。
【0017】
柔軟流動性ゲルは、ワクチンとして使用されるとき、免疫化を群れに提供するのに十分なレベルの免疫化有機体を有する。本発明の方法では、100羽の鳥について約15から50mlのゲルが使用され、鶏のひなでは、約20から30mlが好ましく、20から25mlがより好ましく、約25mlのゲルが最も好ましく、一方、七面鳥のひなでは、約20から40mlが好ましく、より好ましくは25から35ml、最も好ましくは35mlであることが判明した。ゲルにおける免疫化有機体の濃度は、孵化幼生を免疫化するために、この通常の容積において十分な有機体を提供するようなものであるべきである。アイメリアについては、1羽あたり約50と1000の間の接合子嚢が適切な保護を提供し、したがって、柔軟ゲルが、群れを適切に免疫化するために、ゲルのmlあたり約200と4,000の間のアイメリア接合子嚢を有することが好ましいことが判明している。柔軟ゲル・ワクチンは、好ましくはゲルのmlあたり約200と400の間の接合子嚢、最も好ましくはゲルのmlあたり約250の接合子嚢を含む。約1:1(V/V)の比で溶解多糖類粉末を接合子嚢懸濁液と混合することによって調製した柔軟ゲルでは、1から3%の多糖類ゲル溶液の1つの容積が、mlあたり約400と8,000の間の接合子嚢を含む等容積の接合子嚢懸濁液と混合され、より好ましくは、1.2から2パーセントの多糖類溶液の1つの容積が、mlあたり約400と800の間の接合子嚢を含む等容積の接合子嚢懸濁液と混合され、最も好ましくは、2.0パーセント溶液の多糖類溶液が、mlあたり約500の接合子嚢を含む等容積の接合子嚢懸濁液と混合される。柔軟ゲルワクチンは、20:1(V/V)までの溶解ゲル粉末対接合子嚢の比較的高い比において、溶解多糖類粉末を高濃度の接合子嚢懸濁液と混合することによって調製することも可能である。たとえば、2リットルの1から2%の多糖類溶液が、柔軟ゲルワクチンを調製するために、全量で約1.5から3×10の接合子嚢を含む120mlの接合子嚢懸濁液と混合されることが可能である。
【0018】
可食多糖類ゲルを使用することにより、一般的には約2分以下において迅速に硬化するゲルが得られる。これは、ワクチン有機体などのあらゆる治療薬を一様な懸濁液において維持し、免疫化有機体などの治療薬に家禽孵化幼生をより一様に暴露することを可能にする。水中の懸濁とは異なり、柔軟ゲルにおける接合子嚢は、ミキサで調製後、24時間までの間、さらに攪拌せずに懸濁した状態のままのである。
【0019】
柔軟ゲルにおいて可食ガムの含有量が低いことは、重量でゲルの好ましくは95%以上が、治療薬と共にまたは無しに使用されるとき、鳥の水分補給に役立ち、給餌応答を誘起することができる水であることを意味する。柔軟ゲルは、ゲルが鳥を濡らさず、したがって、孵化幼生が水溶液に暴露されることにより濡れる場合、暴露により孵化幼生が死ぬことがある特に冬において、ひなの健康に悪影響を与えないという点で、液体懸濁液と比較して他の利点を有する。
【0020】
本発明の柔軟流動性ゲルと共に使用される治療薬は、ビタミン、ミネラル、薬剤、ワクチン、競争的排除産物などの1つまたは複数とすることが可能である。本発明の柔軟流動性ゲルは、競争的排除産物またはワクチンにおいて使用されるような生の有機体の投与に特に有用である。競争的排除産物は、たとえば、家禽の消化管に棲息させ、サルモネラ、クロストリジウムなどの病原性有機体による家禽の潜在的な感染を最小限に抑えるのを助けるために使用されるアシドフィルス菌などのプロバイオティクスである。そのような競争的排除産物の一例が、商標名BroilactでOrion Corp.、フィンランドによって販売されている。
【0021】
柔軟流動性ゲルは、ワクチン、特に生ワクチンを家禽に投与するのに使用されることが好ましい。そのようなワクチンは、生のサルモネラワクチン、感染性気管支炎、感染性骨液嚢病、ニューキャッスル病、感染性咽頭気管支炎、マイコプラズマ種、肺炎ウイルス、およびコクシジウム症を含むことが可能である。本発明の柔軟流動性ゲルは、アイメリア種を含むコクシジウム症ワクチンの投与のための家禽への特別な用途である。
【0022】
柔軟流動性ゲルにおいて使用される治療薬の量は、孵化幼生に送達されているゲルの量に基づいて、最適な治療投与量が家禽孵化幼生に提供されるように調節される。通常、孵化幼生のそれぞれは、約0.15と0.5mlの間のゲルを摂取し、治療薬の濃度は、この容積のゲルにおいて最適な治療投与量を提供するように調節されることが判明した。
【0023】
迅速にゲル化する可食多糖類ゲルの使用は、窒素栄養素およびビタミンなどの他の添加物を柔軟流動性ゲルに添加するのにも適している。これは、約50℃を超える温度に暴露される場合、変性または不活性化する感熱性栄養素に特に有用である。
【0024】
多糖類硬化剤の量は、柔軟流動性ゲルを形成するように選択される。過度に多くの硬化剤が使用される場合、ゲルは容易には流動性にならず、したがって送達システムを経てポンピングするのは困難である。過度に少ない硬化剤が使用される場合、ゲルの形態は、比較的一様な懸濁液において、免疫化有機体などのゲルに含まれる治療薬を維持しない可能性がある。さらに過度に少ない硬化剤は、水分を適切に捕らえない可能性もあり、また、水を逃がしてしまう可能性があり、これにより、免疫化有機体の実行可能性が低下し、ならびに鳥を濡らすことになる。
以下の例は、本発明の好ましい実施形態を示すために使用されるが、本発明の範囲を特定の例に限定すると解釈されるべきではない。
【0025】
例1
アイメリア接合子嚢を懸濁液において維持するために使用される硬化剤の適切な量を決定するために実施された試験から、少なくとも23cpsの粘性を有するゲルが、懸濁液において接合子嚢を維持するために必要であると判定された。カラゲナン・ゲルでは、これは、約0.6パーセントのカラゲナン・ゲルに変換される。ゲルは、0.6パーセントより多いカラゲナンを含むことが可能であるが、約1パーセントより多いゲルは、接合子嚢を懸濁液において維持することについて追加の利点を提供せず、流動性ゲルの送達について困難を生じる可能性があることが判明した。カラゲナンでは、ゲルの好ましい範囲は、0.8から1.0パーセントであり、1.0パーセントが最も好ましい。
【0026】
上述されたように、かなり大きく濃密な有機体であるアイメリア接合子嚢では、少なくとも23cpsの粘性を有するゲルが、接合子嚢を懸濁液において維持するために必要である。ゲルにおける免疫化有機体がより小さい、またはより軽量である場合、より低い粘性のゲルが、有機体を懸濁液において維持するために使用されることが可能である。有機体の懸濁液を維持し、一方ゲル・マトリックス内に水分をも閉じ込めるために使用されるゲルの適切な量は、上述された例に従って容易に決定することが可能である。
【0027】
本発明の送達装置の第1実施形態が、参照符号10によって全体的に表された図に示されている。装置10は、ゲルを孵化幼生トレイ22の中に噴霧することを可能にするために、マニホルド14の長に沿って複数のノズル開口12を有するマニホルド14を有する。マニホルド14は、孵化幼生トレイ22の上に間隔をおいてマニホルド14を配置する高さを有し、かつトレイ22をまたぐように間隔をおいて位置する2つの支持体16によって、孵化幼生トレイ22の上に間隔をおいて配置される。送達装置10は、柔軟流動性ゲルが管を経てポンピングされ、マニホルド14に位置するノズル12を経て孵化幼生トレイ22の中に分与されることを可能にするように、ポンプ手段18を有する。ポンプ手段18は、計量式隔膜ポンプであることが好ましいが、その理由は、隔膜の運動が流体の流れを振動させ、または攪拌し、流体の流れを乱し、一連の離散液滴として柔軟ゲルを放出させるのを助けるからである。マニホルド14からの管は、計量式隔膜ポンプ18の出口に接続され、隔膜ポンプの入口は、柔軟流動性ゲルを含む容器またはリザーバ20に接続される。1つのそのような計量式隔膜ポンプは、ProMinent Gamma Solenoid投薬ポンプなど、塩素投薬のために使用されるものである。耐薬品性部位を有する隔膜ポンプを使用することにより、温かい洗剤溶液をポンピングすることによって装置を洗浄し、装置を経て塩素含有溶液をポンピングすることによって装置を殺菌することが可能になる。これにより、装置の清浄が非常に簡単になり、有効な消毒を提供する。
【0028】
マニホルドのノズルのサイズおよび間隔は、柔軟ゲルの小さいビードレットのパターンを生成するように選択される。マニホルドの長に沿って1から2cmの間隔をおいて位置する20から35のノズル含むマニホルドが好ましいことが判明した。ゲルの小さいビードレットの配送を可能とするために、ノズルの内径は、約1mmであることが好ましい。マニホルドの中にわずかに延びる小さい管としてノズルを提供することによって、柔軟ゲルをビードレットとして分与するのに役立ち、ポンプが動作していないとき、ゲルがノズルから滴る可能性を低減することが判明した。
【実施例1】
【0029】
上述された装置は、約100羽の鳥を含む各孵化幼生トレイに25mlのゲルを送達するように構成された。生まれて1日の雄の雛鳥は、処置グループおよび陽性対照グループの2つのグループに分割された。陽性対照グループは11羽を有し、この中から、1羽が1mlのゲルを接種され、5羽が0.5mlのゲルを接種され、これはゲル噴霧により行われた。残りの5羽は、1ml当たり約2×10の接合子嚢を含む0.5mlの水を接種された。1ml当たり約2.5×10の接合子嚢を含む10パーセントのカラゲナン・ゲルが作成され、6.7パーセントの青染料と混合された。92羽の処置グループは、ゲル噴霧に使用された。ゲル処置鳥の46羽の消化管の死後調査が、噴霧の15、30、および60分後に実施された。残りの鳥は、噴霧の5日後および6日後に調査され、病巣が0から4の点数を付けられた。0が正常であり、4が最大病巣である。
【0030】
ワクチン接種の陽性の証拠が、ゲルの青染料によって着色した青いくちばし、舌、および素嚢、ならびにワクチン接種5日後の十二指腸およびワクチン接種6日後の盲腸における病巣の出現の2つの方式で観測された。ゲル噴霧の15、30、および60分後に実施された噴霧された鳥の46羽の死後調査では、46羽のうち45羽、または98パーセントが、青い舌または青い蓋によって示されるように、ゲルを拾い上げていた。青染料について陽性の鳥の中で、16羽のうち10羽が30分以内に青い上部食道を有し、14羽のうち12羽が60分内に青い素嚢を有していた。
【0031】
ゲル噴霧の5日後および6日後に実施された死後調査は、消化管、特に十二指腸ループおよび盲腸を調査し、観測された病巣を点数付けすることによって行われた。5日後、18羽のうちに17羽が陽性であり、平均病巣点数は、十二指腸ループおよび盲腸について1.1±0.6であった。6日後、100パーセントの鳥が陽性であり、平均病巣点数は、十二指腸ループについて0.7±0.3、盲腸について0.7±0.4であった。
【0032】
鶏のひなの羽に噴霧されたゲルは、噴霧後、約3分以内に拾い上げられ、トレイのフロア上のゲルは、30分以内に除去されたことが観測された。46羽の上部消化管の死後調査は、平均して98パーセントの鳥が、噴霧後60分以内にゲルを摂取し、調査された46羽のうち22羽が、噴霧の30分後に青い食道または素嚢を示した。これは、噴霧ゲルが鳥の消化管の中により深く有効に搬送されたことを示す。42羽の消化管の死後調査は、平均して98パーセントの鳥がコクシジウムに感染したことを示した。5日後に調査された鳥の中では、94パーセントが陽性で、平均病巣点数は1.1±0.6であり、6日後では、100パーセントが陽性で、平均病巣点数は、十二指腸ループについて0.7±0.3、盲腸について0.7±0.4であった。
【実施例2】
【0033】
1日目の年齢の420羽の商用血統雄ブロイラーの鶏のひな(ロス×ロス)を得た。鳥は、6回反復された2つの処置グループの一方に無作為に入れた。処置1と指定された鳥の半数は、檻あたり35羽で6リットル・フロアの檻の1つに割り当てられた。処置2と指定された残りの半数の鳥は、本発明の方法を使用してゲル・ワクチンをワクチン接種された。すべての処置反復は、配置前にグループ計量された。従来のとうもろこし/大豆スタータ、および育成群/完了群の食餌が準備された。処置1の食餌は、抗コクシジウム処方成分としてMaxiban(登録商標)を含むように処方され、一方、処置2の食餌は、抗コクシジウムを含んでいなかった。鳥は、飼料および水を自由に供給された。すべての鳥は、試行の21日目および49日目に個々に計量された。スタータの食餌は21日まで供給され、育成群/完了群の食餌は、49日まで供給された。鳥は、疾病率および死亡率について1日に2回監視された。
【0034】
表1は、体重、体重の増加、飼料の摂取量、および飼料摂取量:体重増加、ならびにパーセント死亡率を示す。
【表1】



体重、体重の増加、飼料の摂取量、飼料の利用率、およびパーセント死亡率は、実験を通してコクシジウム対照を提供する方法によって影響を受けなかった(P>.05)
【実施例3】
【0035】
課題の研究において七面鳥コクシジウム症ワクチンのゲル噴霧送達、ゲル・パック送達、および水希釈液送達の効率を比較するために、効率の測定は、体重の増加および病巣の点数を含む。アイメリア・メレアギリミティスおよびE.アデノエイデスからなるImmucoxが、七面鳥について免疫化のために使用された。
【0036】
鳥は、1日目にワクチン接種され、各処置のために単一使用の厚紙箱に収容され、飼料および水を自由に与えられた。陰性対照および陽性対照が同様に処置され、ワクチンは接種されなかった。これらは、別の隔離室に配置された。偏りを最小限に抑えるために、鳥は、5つのグループの1つに無作為に割り当てられ、各鳥は、攻撃前にタグ付けされて計量され、攻撃後5日目に再びタグ付けされて計量された。鳥が8日の年齢になったとき、各処置グループの2つの箱に分類された(箱当たり12〜14羽)。
【0037】
27羽の家禽が、ゲル噴霧機械によって1日目にワクチン接種された。約25mlのゲル噴霧混合物が、消費されるように家禽の上にポンピングされた。27羽の家禽が、ゲル・パック送達方法によって1日目にワクチン接種された。ゲル・パック・ワクチンは、家禽が摂取するように90分間箱に残された。26羽の家禽が、水送達方法によって1日目にワクチン接種された。希釈液および水の混合物のワクチンは、家禽が飲むように90分間残された。
【0038】
15日の年齢において、陽性対照、ゲル噴霧、ゲル・パック、および水送達の処置グループの家禽は、全体で400,000接合子嚢/鳥において攻撃された。約55%がE.メレアグリミティス、45%がE.アデノエイデスであった。攻撃後、鳥は、処置グループ当たり2箱で厚紙箱を清浄するために移動された。攻撃5日後、各鳥は体重を記録され、殺された。盲腸の病巣が点数付けされた。病巣の点数は、統計のために記録され、平均された。
【0039】
陰性対照グループ(処置なし、攻撃なし)の1羽が、13日目に死んだ。他の死亡は観測されなかった。病巣は、陰性対照グループでは見つからなかった。ゲル・パック送達グループの鳥は、体重が最も増え、1羽あたり平均で66.3gであった。水送達、ゲル噴霧送達、およびワクチン接種なし/攻撃なしの処置グループの鳥は、それぞれ1羽あたり59.8g、61.4g、および62.3gの同様の量の体重を得た。ワクチン接種なし/攻撃ありのグループの鳥は、最も少ない52.3gの量の体重を得た。
【0040】
この実験では、アイメリア・メレグリミティスおよびE.アデノエイデスを含む2種の七面鳥コクシジウム症ワクチンが、ゲル噴霧、ゲル・パック、および水の送達の3つの経路によって家禽に与えられた。陽性対照グループおよび陰性対照グループの両方が、この研究に含まれていた。鳥は、15日目に高投与量の七面鳥コクシジウムで攻撃された。ゲル・パックによって送達されたワクチンは、より良好な体重増加によって観測されたように、水送達または噴霧送達と比較して、七面鳥コクシジウムの高攻撃に対して最適の保護を提供した。しかし、提供されたすべての3つの送達経路は、ワクチン接種なし攻撃ありの対照と比較すると、統計的に有意(p<0.03)である改善された体重増加を提供した。病巣の点数が効果の尺度であるとき、ゲル噴霧または水によるワクチンの送達は、ゲル・パックによる送達より良好であった。ゲル噴霧は、水またはゲル・パックによる送達の代替となり、体重の増加および病巣の点数によって判断されるように有効である。
【0041】
本発明の柔軟流動性ゲルは、家禽孵化幼生を処置するシステムの使用を容易にする。一実施形態では、家禽孵化幼生の処置は、保持および輸送中に孵化幼生の水分補給を維持することを含む。この実施形態では、柔軟ゲルは、適切な硬化剤および水を含み、ゲルの重量の少なくとも90%が水であり、重量で少なくとも95%が水であることがより好ましく、重量で約98%が水であることが最も好ましい。家禽孵化幼生の水分補給に柔軟ゲルを使用するとき、孵化幼生がより長い期間ビードレットを摂取することを可能にするように、孵化幼生トレイ当たり分与されるゲルの量を約75mlまで増大させることが得策である。水分補給に使用されるとき、柔軟ゲルは、硬化剤および水に加えて、特に水系システムにおいて送達するために通常使用されるビタミン、ミネラル、または他の栄養素を含むことも可能である。
【0042】
好ましい実施形態では、柔軟ゲルは、特に家禽孵化幼生に治療薬を投与するために使用される。特に、本発明の柔軟流動性ゲルは、競争的排除産物およびワクチンにおいて見られるような生の有機体を家禽孵化幼生に投与するときに使用するのに最適である。これは特に、生の有機体が比較的大きく、そして孵化幼生のそれぞれが有機体の最適免疫化投与量に暴露されることを可能にするために懸濁液に維持されることを必要とする場合である。
【0043】
柔軟流動性ゲル・ワクチンの使用は、ニューキャッスル・ウィルスおよび気管支炎などの呼吸器系の病気、コクシジウム症、ならびに他の家禽の病気などに対するワクチン接種に一般的に使用される2つ以上の有機体を含む多価ワクチンの調製を可能にする。
【0044】
本発明の方法および柔軟ゲル・ワクチンにより、トレイ中の孵化幼生の上にワクチンを噴霧することによって多数の孵化幼生を免疫化する手段を使用するのが容易になる。必要に応じて、同じ方法を家畜小屋において使用することもできる。装置をコンベヤ・システムに組み込むことによって、これは、容易に達成される。
【0045】
本発明の様々な好ましい実施形態が本明細書において詳細に記述されたが、当業者は、本発明の精神または添付の請求項の範囲から逸脱せずに、それらの実施形態に種々の変更を行い得ることを理解するはずである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】孵化場コンベヤ・システムと関連して使用される本発明の送達システムの第1実施形態の透視図である。
【図2】図1に送達システムの前面平面図である。
【図3】図1の送達システムのマニホルドの断面側面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
孵化幼生トレイにおいて家禽孵化幼生を処置する方法であって、
噴霧ノズルを経て分与することができる柔軟ゲルの形態を提供すること、
マニホルドに沿って配置された複数の噴霧ノズルを経て、所定の容積の前記ゲルを複数の小さいビードレットとして送達することができる噴霧分与装置を提供すること、
前記孵化幼生を含む前記孵化幼生トレイを前記分与装置の前記噴霧ノズルの下に配置すること、
前記所定の容積の前記柔軟ゲルを小さいビードレットして前記孵化幼生トレイの中に分与すること、および
前記孵化幼生に前記ビードレットを消費させること、を含む方法。
【請求項2】
前記ゲルの形態が、計量式隔膜ポンプを使用して分与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記所定の容積の前記柔軟ゲルが、トレイあたり約15mlと約50mlとの間である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記柔軟ゲルが治療薬を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記治療薬が生の有機体である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記生の有機体が、競争的排除産物およびワクチンの群から選択された1つまたは複数の有機体である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ワクチンが、サルモネラ、感染性気管支炎、感染性骨液嚢病、ニューキャッスル病、感染性咽頭気管支炎、マイコプラズマ、肺炎ウイルス、およびコクシジウム症から選択された1つまたは複数の免疫化有機体である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記生の有機体が、アイメリア種の1つまたは複数の菌株の接合子嚢である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
柔軟ゲルを家禽孵化幼生の孵化幼生トレイの中に分与する分与装置であって、
柔軟ゲルが通過し、加圧下に置かれるとき、小さいビードレットの形態で分与されることを可能にするようにサイズ決めされた複数の噴霧ノズルを備えるマニホルドを備え、
前記マニホルドが、加圧下において所定の容積を分与することができるディスペンサに接続され、
前記ディスペンサが、溶解または懸濁した前記治療薬を内部に有する流動性形態において前記柔軟ゲルを含むリザーバに接続される、分与装置。
【請求項10】
前記ディスペンサが、計量式隔膜ポンプである、請求項9に記載の分与装置。
【請求項11】
前記マニホルドが、前記マニホルドの長さに沿って約1cmの間隔で配置された少なくとも20のノズルを備える、請求項10に記載の分与装置。
【請求項12】
前記柔軟ゲルが治療薬を含む、請求項11に記載の分与装置。
【請求項13】
前記治療薬が免疫化投与量の生の有機体である、請求項12に記載の分与装置。
【請求項14】
前記生の有機体が、競争的排除産物およびワクチンの群から選択された1つまたは複数の有機体である、請求項13に記載の分与装置。
【請求項15】
前記ワクチンが、サルモネラ、感染性気管支炎、感染性骨液嚢病、ニューキャッスル病、感染性咽頭気管支炎、マイコプラズマ、およびコクシジウム症の原因因子から選択された1つまたは複数の免疫有機体である、請求項14に記載の分与装置。
【請求項16】
前記生の有機体が、アイメリア種の1つまたは複数の菌株の接合子嚢である、請求項15に記載の分与装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−532206(P2007−532206A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−507634(P2007−507634)
【出願日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【国際出願番号】PCT/CA2005/000565
【国際公開番号】WO2005/099617
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(500075483)
【Fターム(参考)】