説明

家禽用コクシジウム感染抑制剤及びそれを用いたコクシジウム感染抑制方法

【課題】家禽に(性成熟に達し成鶏となる以前の雛鶏、特に雛鶏の孵化後できるだけ早期に)投与して優れた効果を発揮可能な家禽用コクシジウム感染抑制剤及びそれを用いる家禽のコクシジウム感染抑制方法を提供する。
【解決手段】有効成分としてグルコン酸類を含有することを特徴とする家禽用コクシジウム感染抑制剤、前記の家禽用コクシジウム抑制剤が添加されてなることを特徴とする家禽用コクシジウム感染抑制強化飼料組成物、前記の家禽用コクシジウム感染抑制剤又は前記の家禽用コクシジウム感染抑制強化飼料組成物の有効量を家禽に投与する工程を有することを特徴とする家禽のコクシジウム感染抑制方法、及び、家禽のコクシジウム感染を抑制するための組成物の製造のためのグルコン酸類の使用等。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家禽用コクシジウム感染抑制剤及び家禽のコクシジウム感染抑制方法等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原虫性寄生虫病の一つと知られるコクシジウム症は、コクシジウム属の原虫によって引き起こされる感染症であって、鶏や七面鳥、アヒル、ウズラ、アイガモなどの家禽等に感染し、消化管出血や成長抑制、斃死などの各種症状を示す。近年、家禽類は集約的・大規模に飼育されていることが多く、コクシジウム症の感染が広がると飼育業者に大きな経済的損失をもたらすことになる。
【0003】
そこで、抗コクシジウム剤としてサルファ剤やニトロフラン剤、キノリン剤、抗チアミン剤、ベンゾアミド類、ナフトキノン系誘導体(例えば特許文献1)、ポリエーテル系の抗生物質などが開発され使用されているが、これらは高価であり、また安全域が非常に狭いため飼料等に混合して大量に用いるには問題が多い。また薬剤の長期間の使用によって薬剤耐性株が出現し、薬効が低下するという問題もある。
【0004】
またコクシジウムのような原虫に対するワクチンが抑制方法として研究されているが未だ完成に至っておらず、加えてワクチンは比較的高価であるとともに副作用として家禽の成長率を低下させる傾向があるとされている。
【特許文献1】特開2004−51510号公報
【特許文献2】特開平7−46963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、家禽に(性成熟に達し成鶏となる以前の雛鶏、特に雛鶏の孵化後できるだけ早期に)投与して、優れた効果を発揮可能な家禽用コクシジウム感染抑制剤及びそれを用いる家禽のコクシジウム感染抑制方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、グルコン酸類の使用が家禽のコクシジウム感染を抑制するのに効果があることを見出し本発明をなすに至った。すなわち、本発明に係る家禽用コクシジウム感染抑制剤(以下、単に「感染抑制剤」と記すことがある)は、有効成分としてグルコン酸類を含有することを特徴とする。なお本明細書において「家禽」とは、家畜として飼育される鳥類のすべてを意味し、鶏、ウズラ、アヒル、アイガモ、七面鳥、ホロホロチョウ、ダチョウなどを含むものとする。
【0007】
また本発明によれば、上記記載の感染抑制剤が添加されてなることを特徴とする家禽用コクシジウム感染抑制強化飼料組成物(以下、単に「飼料組成物」と記すことがある)が提供される。
【0008】
さらに本発明によれば、前記記載の感染抑制剤又は前記記載の飼料組成物の有効量を家禽に投与する工程を有することを特徴とする家禽のコクシジウム感染抑制方法が提供される。
【0009】
そしてまた本発明によれば、家禽のコクシジウム感染を抑制するための組成物の製造のためのグルコン酸類の使用が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、有効成分としてグルコン酸類を含有する感染抑制剤を家禽に投与することにより、家禽におけるコクシジウムの感染を効果的に抑えることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について詳述する。本発明に係る感染抑制剤は、有効成分としてグルコン酸類を含有することが大きな特徴である。
【0012】
本発明で使用する「グルコン酸類」とは、グルコン酸若しくはその薬学的に等価な効果を有するグルコン酸の塩若しくは誘導体を意味する。当該グルコン酸の塩若しくは誘導体としては、具体的には例えば、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カルシウム、グルコン酸の分子内エステル(即ち、ラクトン化合物)等が挙げられる。分子内エステルとしては例えば、グルコノデルタラクトン、グルコノガンマラクトンが挙げられる。これらのグルコン酸類の中でも、グルコン酸ナトリウムがより好適である。また「薬学的に等価な効果」とは、家禽用コクシジウム感染抑制強化飼料に対する家禽用コクシジウム感染抑制剤としての使用におけるグルコン酸ナトリウムと同等なコクシジウム感染抑制効果を意味する。
【0013】
本発明の感染抑制剤を用いる場合には、他に何らの成分も加えず、そのままグルコン酸類を用いてもよいが、通常はグルコン酸類にさらに固体坦体、液体坦体等の賦形剤を加え、通常の方法(例えば「製剤学」大塚昭信ら編、1995年、南江堂刊に記載される方法等)に準じて錠剤、粉末剤、顆粒剤、カプセル剤、水溶剤、液剤、水和剤及び懸濁剤等に製剤化してから用いるのがよい。固体坦体である賦形剤としては例えば、乳糖、ショ糖、ブドウ糖、コーンスターチ、ゼラチン、カゼイン、澱粉、アラビアガム、セルロース誘導体、アルギン酸等が挙げられる。また液体担体である賦形剤としては例えば、水、グリセリン、植物油、脂肪酸、脂肪酸エステル、ソルビトール等が挙げられる。
【0014】
なお、本発明の感染抑制剤には、例えば、ペプチド亜鉛、ペプチド鉄等の有機ミネラル、炭酸亜鉛、炭酸マンガン、硫酸鉄、炭酸マグネシウム等の無機ミネラル、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、葉酸、パントテン酸、ニコチン酸等のビタミン類、アルファルファミール、圧ペントウモロコシ等をさらに含有させてもよい。また、嗜好性を高めるために、フレーバー等を同時に給与してもよい。さらに必要により、抗菌剤、防カビ剤、駆虫剤、抗酸化剤、色素、着香料、呈味料、酵素のような通常の添加物を混合してもよく、通常の方法により、散剤、顆粒剤、液剤、錠剤等の形態に製剤化して用いるのが好ましい。これらの製剤には、有効成分としてグルコン酸類を、通常、重量比で約0.01〜95重量%含有させるのがよい。
【0015】
このようにして製剤化された本発明の感染抑制剤は、そのままで、あるいは水等で希釈して用いられる。また、さらに他の抗菌剤、防カビ剤、駆虫剤、抗酸化剤、色素、着香料、呈味料、酵素のような通常の添加物等が混用又は同時若しくは非同時に併用されても構わない。
【0016】
本発明の感染抑制剤の家禽への投与について特別の制限はなく、後述のような飼料へ撒布、混合など従来公知の方法によることができる。投与量は、要するに家禽のコクシジウム感染抑制効果に有効な量、即ち、他の条件を等しくした場合において、本発明の感染抑制剤を投与したときの方が投与しないときに較べて家禽のコクシジウム感染抑制効果が増進される量である。
【0017】
家禽に投与しようとする本発明の感染抑制剤の有効成分を混合、ゲル化し自由摂取させる方法は、孵化場及び育雛農場のいずれでも実施することができる。また、孵化場から育雛農場への家禽の輸送中にも実施することができる。
【0018】
また、本発明の感染抑制剤の有効成分に所定量の水溶性多糖類の粉末を配合したゲル化用調製物を用意しておき、孵化場及び農場で使用する際に水で希釈しゲル状固形物とし、対象とする家禽に投与する方法(即ち、自由摂取、そ嚢内直接投与)も実施することができる。
【0019】
製剤化した感染抑制剤は通常は単独で用いるが、水で希釈して製剤希釈液として使用してもよい(即ち、飲水希釈投与)。当該製剤希釈液中の有効成分濃度としては、通常、約10〜500,000ppmの範囲が好ましい。より好ましくは約35〜35,000ppmの範囲である。当該製剤希釈液の投与方法としては、通常、水1リッターに対して感染抑制剤を約0.01〜500g溶解して、投与液量に処理する方法等が挙げられる。好ましくは、水1リッターに対して約0.035〜35gを溶解し投与する方法等が挙げられる。
【0020】
このようにして調整した製剤希釈液を家禽に投与するには、飲水添加装置等を用いて当該製剤希釈液を投与すればよい。当該製剤希釈液の投与液量は、対象となる家禽の大きさ、生育状況、飼育密度及び投与方法等に応じて適宜決定すればよいが、通常10,000羽当たり約300〜2000リットル程度が好ましい。
【0021】
本発明の感染抑制剤の投与の時期及び実施期間は、採卵用種及び肉用種において、育雛の全期間継続して、好ましくは幼雛期(孵化後0〜5週令の家禽)に投与する。より好ましくは孵化後0〜21日間継続して投与する。
【0022】
感染抑制剤の投与量は、家禽の種類や大きさ等により適宜決定すればよいが、一般に投与総量として0.005〜2gの範囲が好ましい。より好ましくは0.005〜1gの範囲であり、0.1〜1gの範囲がさらに好ましい。
【0023】
次に本発明に係る飼料組成物について説明する。本発明の飼料組成物は、前述の感染抑制剤が添加されてなることを特徴とする。通常は、前記感染抑制剤を動物用飼料又は飲料水若しくは生理電解質溶液等に添加して飼料組成物とされる。感染抑制剤の添加量としては、飼料組成物全量に対して約0.005〜1.0重量%の範囲が好ましい。
【0024】
本発明の飼料組成物に用いられる動物用飼料又は飲料水若しくは生理電解質溶液は、一般に使用されているものであればよく特に限定はない。これらの一例としては、とうもろこし、米、麦、マイロ、大豆粕、ふすま、脱脂米ぬか、魚粉、脱脂粉乳、乾燥ホエー、油脂、アルファルファミール、北洋ミール、大豆油脂、粉末精製牛脂、小麦粉、なたね油脂、肉骨粉(フェザーミール)、動物性油脂、リン酸カルシウム、コーングルテンミール、糖蜜、コーンジャームミール、炭酸カルシウム、リン酸三カルシウム、塩化ナトリウム、塩化コリン、ビタミン類(ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンD、ビタミンE、パントテン酸カルシウム、ニコチン酸アミド、葉酸等)、アミノ酸類(リジン、メチオニン等)、微量無機塩類(硫酸マグネシウム、硫酸鉄、硫酸銅、硫酸亜鉛、ヨウ化カリウム、硫酸コバルト等)、生菌剤等を適宜混合して調製した飼料等が挙げられる。
【0025】
本発明の飼料組成物には、その他に例えば、ペプチド亜鉛、ペプチド鉄等の有機ミネラル、炭酸亜鉛、炭酸マンガン、硫酸鉄、炭酸マグネシウム等の無機ミネラル、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、葉酸、パントテン酸、ニコチン酸等のビタミン類、アルファルファミール、圧ペントウモロコシ等がさらに含有されていてもよい。また、嗜好性を高める為、同時にフレーバー等を給与してもよい。
【0026】
本発明の飼料組成物の家禽への投与方法に特に制限はなく、後述のような飼料へ撒布、混合等適宜の方法を利用した給与法によることができる。なお飼料組成物の投与量は、要するに家禽のコクシジウム感染抑制効果に有効な量、即ち、他の条件を等しくした場合において、本発明の飼料組成物を投与したときの方が投与しないときに較べて家禽のコクシジウム感染抑制効果が増進される量である。
【0027】
本発明の飼料組成物の投与の時期及び実施期間は、採卵用種及び肉用種において、育雛の全期間継続して、好ましくは幼雛期(孵化後0〜5週令の家禽)に投与する。より好ましくは孵化後0〜21日間継続して投与する。
【0028】
本発明の飼料組成物は、動物用飼料に配合して用いる場合には、グルコン酸ナトリウムを約0.0005〜5重量%、好ましくは約0.05〜2重量%、より好ましくは約0.1〜1重量%の割合で用いることができる。また、飲料水若しくは生理電解質溶液に添加して用いる場合には、グルコン酸ナトリウムを約0.035〜3.5重量%、好ましくは約0.035〜1.4重量%、より好ましくは約0.07〜0.7重量%の割合で用いることができる。
【0029】
次に、本発明に係る感染抑制方法について説明する。本発明の感染抑制方法は、本発明の感染抑制剤又は本発明の飼料組成物の有効量を家禽に投与する工程を有する。当該方法において、飼料組成物は前記動物に通常の方法で与えることができる。上記の有効量は、いずれも製剤の種類、対象動物、摂取させる期間等の状況によって異なり、上記の範囲に関わることなく増減して適宜選択することができる。
【0030】
具体的には例えば、本発明の感染抑制剤を家禽に投与するのに適した濃度になるように水で希釈し、得られた希釈液を家禽に投与する。尚、希釈倍率は従来の飲水希釈投与法に準じて適用すればよく、例えば、5〜10倍程度の希釈液が好ましく使用される。また例えば、本発明の感染抑制剤を所定濃度になるように水で希釈し、これに攪拌下水溶性多糖類を添加混合し、均一な溶液とし、常温で放置するか、若しくは冷所(例えば、冷蔵庫等)に保管することによりゲル状固形物を得る。または高温で溶解し低温で凝固するゲル化剤(例えば、寒天、ゼラチン等)を用いる場合には、本発明の感染抑制剤を作成するための培地にあらかじめゲル化剤を加えておき、培地を高圧蒸気殺菌後冷却してゲル化直前に種菌を接種し37℃で培養した後、これを常温で放置するか、若しくは冷所(例えば、冷蔵庫等)に保管することによってゲル状固形物を得る。このようにして得られたゲル状固形物を家禽に投与してもよい。尚、ゲル化した場合のゲル強度は、概ね200〜2000g/cm が適当であり、寒天を用いた場合には寒天の種類により異なるが、概ね0.5〜3.0%の濃度に相当する。
【0031】
本発明の感染抑制剤を水媒体中でゲル化させるのに使用される多糖類しては、例えば、寒天、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース、澱粉、マンナン、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、アラビヤガム、ロウストビーンガム、キサンタンガム、キトサン、グアーガム、ペクチン、アルギン酸プロピルグリコールエステル、アラビノガラクタン、ガティガム、タマリンドシードガム、プルラン、モルホリン脂肪酸塩、カードラン、トラガントガム等が挙げられる。これらの多糖類の中でも、安価且つ容易に入手し得る点から、特に寒天、澱粉、マンナン、ゼラチンを用いることが好ましい。
【0032】
例えば、前記のゲル状固形物を、飲水量及び飼料摂取量の少ない概ね0〜7日令の家禽に投与すると、床面の固形物を嘴で突っついて摂取しようとする家禽の遺伝的プログラム(習性)によって短時間に本発明の感染抑制剤の必要量を省力的に摂取させることができる。この際、前記のような若令期の家禽に投与することが困難であった生菌剤、ワクチン、薬剤、栄養等も必要に応じて本発明の感染抑制剤と共に混合して水溶性多糖類でゲル化させておくと、本発明の感染抑制剤と同時に効率よく家禽に投与することもできる。また、雛鶏の時期における水分及び栄養の補給はその後の生産性にとって極めて重要であり、栄養を投与する場合には、グルコース、マンノース、フラクトース等の単糖類及びこれらのオリゴ体、シュークロース等の二糖類の糖類等の炭水化物、スキムミルク等の蛋白質、脂質に加えてビタミン、ミネラル等が挙げられる。
【0033】
本発明は、勿論、家禽のコクシジウム感染を抑制するための組成物の製造のための、グルコン酸類の使用(即ち、本発明使用)を含む。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を製剤例及び試験例によりさらに詳しく説明するが本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。
【0035】
(製剤例1) 散剤
グルコン酸ナトリウム25部と、乳糖25部とを乳鉢でよく混合した後、当該混合物を充分攪拌混合することにより、散剤を得る。
【0036】
(製剤例2) 顆粒剤
グルコン酸ナトリウム25部と乳糖25部とを加え、よく攪拌混合する。次いで、これらの混合物に適当量の水を加え、さらに攪拌した後、これを造粒機で製粒し、通風乾燥することにより、顆粒剤を得る。
【0037】
(製剤例3) 液剤
グルコン酸ナトリウム25部を水50部に溶解した後、当該混合物をよく攪拌混合することにより、液剤を得る。
【0038】
次に本発明の感染抑制剤及び飼料組成物が、優れたコクシジウム感染抑制効果を示すことを試験例により示す。
【0039】
試験例 (バリアーされた実験室にてEimeria tenella感染を行う感染試験)
市販の雛鶏(ブロイラー種,雄)120羽を購入し、購入された雛鶏(1日令)に、表2に記載される試験区分、供試羽数及び飼料中へのグルコン酸ナトリウムの添加量で試験飼料(表1参照)を摂取させることにより(表2参照)、グルコン酸ナトリウムを投与した。
【0040】
上記の雛鶏が14日令に達した後、当該雛鶏に対して一羽あたり1×10のEimeria tenellaを強制経口投与した。その後、上記の雛鶏が21日令に達した後、当該雛鶏を屠殺した。死亡した雛鶏から盲腸切片を摘出し、盲腸の病変をスコア化した。また摘出した盲腸切片から盲腸便を採取し、盲腸便中のコクシジウムオーシスト数を顕微鏡下で計測した。盲腸の病変スコアの判定基準及びオーシスト数の計測方法は下記の通りである。病変スコア及びコクシジウムオーシスト数の結果を表2に合わせて示す。
【0041】
(盲腸の病変スコア)
屠殺した雛鳥の盲腸の病変値を定法(「鶏のコクシジウム検査法」角田清、石井俊夫著)により判定した。判定基準は次の通りである。なお、判定に当たって、盲腸の一側が他の一側よりも重症の場合は重い方の変状について記録した。また、盲腸の萎縮程度を最も重視した。
「0」:(-)盲腸は全く正常
「1」:(+)盲腸の形は正常。内容物はやや流動性を帯び色も黄色がかる。盲腸粘膜は部 分的に軽度の腫脹があり白っぽくなる。
「2」:(++)盲腸の形はほぼ正常。粘膜の腫脹は全面に見られる。内容に出血はなく、粘 液は黄色みを帯び退色している。粘膜内には少数の白色点状壊死巣や出血斑が見 られる。
「3」:(+++)盲腸の萎縮・変形は明瞭である。正常な内容物は全くなく、凝血または灰 白色チーズ状の変性物が充満していることが多い。盲腸壁の肥厚は顕著でもろく なり、点状出血斑がまだ残っていることもある。病変は盲腸基部にまで達するが 直腸にまでは達していない。
「4」:(++++)盲腸の萎縮・変形は顕著。一般にソーセージ状を呈し、その長さは直腸よ りやや長いか又は同じか短くなっている。病変は直腸の1/3〜1/4位の所に まで達することもあるが、病変が直腸に達しない場合も、萎縮が顕著であれば 「4」とする。その他は「3」と同様である。
【0042】
(オーシスト数の計測手順)
糞便重量を測定後、OPG(糞便1g中のオーシスト数)をプランクトン計算盤を用いて計数し、オーシスト数を算出した。具体的手順は次の通りである。
i)糞便をよく撹拌した後、ビーカーに2gを採取する。そしてそれに0.5%のTween20 液を38mL加えて20倍希釈の糞液を作る。
ii)スターラーを用いて約30分間撹拌する。
iii)マイクロピペットを用いて、よく撹拌した直後の糞液0.1mLをプランクトン計算 盤に滴下し、大きなゴミや砂粒を先の尖ったピンセットや柄付き針で除去する。
iv)カバーグラス(24mm×36mm)の長辺の一端を糞液につけ、カバーグラスの角度を調節 して糞液を辺全体に広げ、カバーグラスの下にオーシストを可能な限り均等に分布させ る。
v)カバーグラスを静かに倒し、鏡検して(100倍)オーシスト数を計数する。
vi)オーシスト数が1列に100個程度までの場合は、カバーガラス下を均等に計数する ため、7列ごとに10列を計数し、次式によりOPGを算出する。
OPG=(N÷10)×D×(36÷0.5)×(1÷0.1)
(式中、N:10列の総オーシスト数,D:20(最終的な希釈倍数))
vii)オーシストの密度が低い場合は(オーシスト数が1列に1以下)、カバーガラス下の 全視野のオーシストを計数し、次式によりOPGを算出する。
OPG=N×20×(1÷0.1)
=N×200
(式中、N:全視野の総オーシスト数)
【0043】
【表1】

*1:ビタミンプレミックスは、ビタミンA、ビタミンD3、ビタミンE、ビタミン3、 ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ニコチン酸、パントテン酸、ビオチ ン、葉酸、ビタミンB12の混合物
【0044】
【表2】

・病変スコア及びオーシスト数:平均値±SD
・途中死亡例のデータ除く
【0045】
表2から理解されるように、盲腸の病変スコアは、グルコン酸ナトリウム0.1%添加群及びグルコン酸ナトリウム0.5%添加群では対照群に比べ小さな値であった。また、各グルコン酸ナトリウム添加群のコクシジウムオーシスト数は対照群よりも小さな値となり、Dunnett検定を用いた統計学上の判定でも有意差(P<0.05)が認められた。以上から、グルコン酸ナトリウムが家禽用コクシジウム感染抑制剤として有用であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明により、家禽に(性成熟に達し成鶏となる以前の雛鶏、特に雛鶏の孵化後できるだけ早期に)投与して優れた効果を発揮可能な家禽用コクシジウム感染抑制剤及びそれを用いる家禽のコクシジウム感染抑制方法を提供することが可能になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分としてグルコン酸類を含有することを特徴とする家禽用コクシジウム感染抑制剤。
【請求項2】
請求項1記載の家禽用コクシジウム感染抑制剤が添加されてなることを特徴とする家禽用コクシジウム感染抑制強化飼料組成物。
【請求項3】
請求項1記載の家禽用コクシジウム感染抑制剤又は請求項2記載の家禽用コクシジウム感染抑制強化飼料組成物の有効量を家禽に投与する工程を有することを特徴とする家禽のコクシジウム感染抑制方法。
【請求項4】
家禽が孵化後0〜5週令の雛鶏である請求項3記載の家禽のコクシジウム感染抑制方法。
【請求項5】
家禽のコクシジウム感染を抑制するための組成物の製造のためのグルコン酸類の使用。