説明

容 器

【目的】 閉蓋時に容器に収納した内容物が動かないようにする。
【構成】 容器1は合成樹脂シートを真空成形して製造したもので、本体部10と蓋体30とがヒンジ部50で連設された一体成型品とする。本体部10の中皿収納凹部14に中皿70を収納し、ヒンジ部50を弾性屈曲して蓋体30を本体部10の上から被せる。すると、蓋体30の天板部33に設けた膨出部35が、中皿70のバージンフィルム73を上から押圧して、バージンフィルム73を化粧料80の上面に密接するとともに、中皿70を中皿収納凹部14の底部に押圧して、移動不能にする。蓋体30の係合突起36内に本体部10の係合突起17が係合して、蓋体30の開動作を阻止する。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は合成樹脂シートを一体成形してなる容器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
容器には、実公昭56−22804号公報や実公平1−26568号公報等に開示されているように、合成樹脂シートを成形して、本体部と蓋体とをヒンジ部を介して一体に連設したものがある。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
この種の容器は、合成樹脂シートを金型を用いて真空成形または圧空成型することによって製造することが多いが、これら製造法は寸法精度が余り良くなく、閉蓋時に内容物との間に隙間がないぴったりした寸法に成形するのは難しい。
【0004】
容器とこれに収納した内容物との間に空間があると、輸送中または携帯時に内容物が容器内で振動し、破損したり汚損するなどの不都合が生じる。特に、内容物が粉体製品等の場合には、振動により粉体が凝集して小さな玉状になり、外観上好ましくなく、場合によっては玉状の部分と紛状の部分で性質が異なってしまうなどの問題が生じる。
【0005】
又、内容物が粉体をプレスして中皿に充填したものである場合には、プレスした粉体が振動や衝撃で破損してしまい商品価値が無くなることもある。
本考案はこのような従来の技術の問題点に鑑みてなされたものであり、輸送中や携帯中に内容物を動かずに固定して収納することができる容器を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本考案は前記課題を解決するために、以下の構成を採用した。
〈本考案の要旨〉 (1)本考案は、合成樹脂シートを一体成形してなり、本体部に蓋体がヒンジ部を介して開閉可能に連設され、前記本体部には内容物を収納する収納凹部が形成され、前記蓋体には内側に突出する膨出部が閉蓋時に内容物を押さえるように位置して設けられていることを特徴とする容器である(請求項1に対応)。
【0007】
(2)又、本考案は、前記(1)に記載の容器において、前記本体部と蓋体には閉蓋時に互いに係合して蓋体の開放を阻止する係合部が設けられていることを特徴とする容器である(請求項2に対応)。
【0008】
(3)又、本考案は、前記(1)または(2)に記載の容器において、前記内容物が化粧料を収納した中皿であることを特徴とする容器である(請求項3に対応)。
【0009】
(4)又、前記(3)に記載の容器において、前記中皿は、枠体とこの枠体の開口部に貼着されたバージンフィルムとを備え、前記膨出部が閉蓋時に枠体の開口部内側のバージンフィルムを押さえるように形成されていることを特徴とする容器である(請求項4に対応)。このようにすると、閉蓋時にバージンフィルムを化粧料の上面に密接させることができ、化粧料の球状化を防止することができる。
【0010】
(5)又、本考案は、前記(1)から(4)のいずれかに記載の容器において、前記膨出部が凸曲面状をなしていることを特徴とする容器である(請求項5に対応)。
【0011】
〈本考案の原材料〉 本考案の容器の原材料としては、ポリプロピレン、ポリエステル、塩化ビニル、ポリエチレン等の合成樹脂シートを例示することができる。
【0012】
〈本考案の製造方法〉 本考案の容器の製造方法としては、真空成型法が好適である。
【0013】
【作用】
合成樹脂シートを成形してなる容器の蓋体は弾性を有しており、蓋体を閉じると、蓋体の膨出部がその弾性で内容物を押さえ、容器内で内容物を動かなくする。
【0014】
【実施例】
以下、本考案の実施例を図1から図8の図面に基いて説明する。
〈実施例1〉 図2は本考案の容器の外観斜視図であり、容器1は1枚の合成樹脂シートを金型を用いて真空成形して製造したものである。図3は成形時における容器1の平面図であり、図4は図3のI−I断面図である。
【0015】
この容器1は、化粧料が充填された交換用の中皿(内容物)70とパフを収納するための簡易型コンパクト容器であり、容器1は、本体部10と蓋体30とがヒンジ部50によって連設されて構成されている。
【0016】
本体部10は平面視長方形に形成されていて、本体部10の下部水平周縁部11から周壁部12が起立し、周壁部12の上端に上部水平面部13が連なっている。上部水平面部13には中皿収納凹部14とパフ収納凹部15が形成されている。
【0017】
中皿収納凹部14は後述する中皿70が1つ収納されるようになっており、中皿70よりも若干大きい寸法に形成されていて、中央に孔18が設けられている。パフ収納凹部15には図示しないパフが複数個重ねて収納できる寸法に形成されている。
【0018】
上部水平面部13の両側部、及び、上部水平面部13において中皿収納凹部14とパフ収納凹部15との間には、中皿やパフを取り出し易くするための凹部16が形成されている。
【0019】
周壁部12の両側面部及び前面部には外方へ突出する略半球殻状の係合突起17が形成されている。
蓋体30は平面視長方形をなし、図1に示すように閉蓋時に本体部10を上から包み込む大きさに形成されている。蓋体30は、下部水平周縁部31から周壁部32が起立し、周壁部32の上端に天板部33が連なった構成になっている。
【0020】
天板部33は、本体部10の中皿収納凹部14とパフ収納凹部15とを覆う部分が一段低い平面部34になっていて、更にこの平面部34において中皿収納凹部14に対応する部分が、内側に曲面状に突出する膨出部35になっている。
【0021】
蓋体30の周壁部32の両側面部及び前面部には外方へ突出する略半球殻状の係合突起36が形成されている。
図5、図6は、前記中皿収納凹部14に収納される中皿70の平面図及び縦断面図である。中皿70は、皿部71の上縁部に縁枠72が固定され、縁枠72の上面周縁部(図5において二点鎖線より外側の部分)にバージンフィルム73が貼着されて構成されている。尚、この実施例では皿部71と縁枠72が枠体を構成している。
【0022】
中皿70内には、皿部71の上縁とほぼ面一の高さまで紛状の化粧料80が充填されている。したがって、化粧料80の上面とバージンフィルム73との間には隙間がある。
【0023】
図1は、本体部10の中皿収納凹部14に中皿70を収納し、ヒンジ部50のところを弾性屈曲させて蓋体30を本体部10に被せ閉蓋した状態を示す断面図である。
【0024】
この閉蓋時において、蓋体30の係合突起36の内側に本体部10の係合突起17が嵌合し、蓋体30が開動作するのを阻止する。
又、閉蓋時において、蓋体30の膨出部35が中皿70のバージンフィルム73のうち縁枠72の内側に位置する部分を上から押え、バージンフィルム73を化粧料80に密接させるとともに、天板部33の弾性によって中皿70を本体部10に押圧する。この結果、蓋体30を閉じた状態では、中皿70は容器1内でがた付くことがない。
【0025】
又、膨出部35を含む天板部33の弾性を利用して中皿70を移動不能にしているので、天板部33の弾性変形が容器1の寸法誤差や中皿70の厚みの寸法誤差等を吸収し、しっかりと確実に閉蓋することができる。
【0026】
ところで、前述したようにバージンフィルム73は図5において二点鎖線よりも外側に位置する縁枠72の上面に貼着されていて、二点鎖線よりも内側に位置する縁枠72の上面には貼着されていない。したがって、二点鎖線の内側においては縁枠72とバージンフィルム73との間に紛状の化粧料80が入り込む可能性がある。
【0027】
しかしながら、この容器1に収納しておく限りは、蓋体30を閉じた時にバージンフィルム73が膨出部35によって下方に押さえられる結果、バージンフィルム73が縁枠72の上面全体に密接して、隙間が生じない。したがって、縁枠72とバージンフィルム73との間に紛状の化粧料80が入り込むことがなく、見栄えもよい。
【0028】
又、バージンフィルム73と化粧料80との間に空間を残したまま輸送したり携帯したりすると、振動によって粉体である化粧料80が凝集し、図7に示すように小さな玉状になることがある。
【0029】
しかしながら、この容器1に中皿70を収納した場合には、膨出部35がバージンフィルム73を押圧変形して、バージンフィルム73と化粧料80との間の空間を十分に小さくするので、化粧料80が球状化することはない。
【0030】
〈実施例2〉 図8は、中皿70の他の例を示す断面図である。この中皿70では、伸縮性のある弾性糸で編んで構成されたネット76が、縁枠72の開口部を塞ぐように縁枠72の上に貼着されており、このネット76の上にバージンフィルム73が被せられ、バージンフィルム73の周縁部が縁枠72の上面周縁部に貼着されている。
【0031】
この中皿70では、ネット76とバージンフィルム73との間に隙間があって、ネット76の編目を通して化粧料80がこの隙間に入り込むと外観上好ましくない。
【0032】
しかしながら、この中皿70を容器1に収納すると、蓋体30を閉じた時に膨出部35によってバージンフィルム73とネット76が下方に押さえられ、ネット76が化粧料80の上面に密接し、バージンフィルム73がネット76の上面に密接する。したがって、バージンフィルム73とネット76の間に隙間がなくなり、化粧料80が入り込むことがなく、外観上の見栄えがよい。又、化粧料80の球状化を防ぐことについては実施例1と同じである。
【0033】
【考案の効果】
以上説明したように、本考案によれば、蓋体に設けた膨出部が内容物を弾性的に押さえるようになり、容器内で内容物を動かなくでき、内容物を保護することができるとともに、振動に起因した内容物の品質劣化を防止することができる。
【0034】
又、蓋体を閉じた時の容器の弾性変形は、容器製造上の寸法誤差を吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の容器において蓋体を閉じた状態を示す断面図である。
【図2】本考案の容器の外観斜視図である。
【図3】本考案の容器の成形時における平面図である。
【図4】図3のI−I断面図である。
【図5】本考案の容器に収納される中皿の平面図である。
【図6】本考案の容器に収納される中皿の断面図である。
【図7】中皿内で粉体が球状化した場合を示す図である。
【図8】本考案の容器に収納される中皿の他の実施例の断面図である。
【符号の説明】
1 容器
10 本体部
14 中皿収納凹部
17 係合突起(係合部)
30 蓋体
35 膨出部
36 係合突起(係合部)
50 ヒンジ部
70 中皿(内容物)
71 皿部(枠体)
72 縁枠(枠体)
73 バージンフィルム

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 合成樹脂シートを一体成形してなり、本体部に蓋体がヒンジ部を介して開閉可能に連設され、前記本体部には内容物を収納する収納凹部が形成され、前記蓋体には内側に突出する膨出部が閉蓋時に内容物を押さえるように位置して設けられていることを特徴とする容器。
【請求項2】 請求項1に記載の容器において、前記本体部と蓋体には閉蓋時に互いに係合して蓋体の開放を阻止する係合部が設けられていることを特徴とする容器。
【請求項3】 請求項1または2に記載の容器において、前記内容物は化粧料を収納した中皿であることを特徴とする容器。
【請求項4】 請求項3に記載の容器において、前記中皿は、枠体とこの枠体の開口部に貼着されたバージンフィルムとを備え、前記膨出部が閉蓋時に枠体の開口部内側のバージンフィルムを押さえるように形成されていることを特徴とする容器。
【請求項5】 請求項1から4のいずれかに記載の容器において、前記膨出部が凸曲面状をなしていることを特徴とする容器。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【登録番号】第3009735号
【登録日】平成7年(1995)2月1日
【発行日】平成7年(1995)4月11日
【考案の名称】容 器
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平6−12146
【出願日】平成6年(1994)9月30日
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)