説明

容器に薬剤を充填するための装置及び方法

容器、特にバイアル中へ薬剤を導入するための装置であって、容器が筐体中を通過し、そこで滅菌用の電子ビームに曝露される。容器は、それから筐体の外側に位置するフィリングステーションへ搬送され、そこで容器の壁部が充填針によって穿孔され、その充填針を通して容器中へ薬剤が導入され、その後に針が引き抜かれる。好ましい装置は、穿孔箇所を加熱密封するための手段をも含んでいる。対応する方法が開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滅菌容器、特に医薬品バイアルに薬剤を充填するための新規な装置に関し、さらに具体的には、充填される容器の外側を滅菌する、そのような装置の一部分に関する。また本発明は、この装置を用いて行われる新規な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤を、容器中、特に穿孔可能で且つ溶融可能なクロージャを有するバイアルの中へ密封する方法は、米国特許第5,641,004号明細書、米国特許出願公開第2002/0023409号明細書、及び国際公開第02/064439号パンフレットで知られている。この方法では、容器の内部を例えばγ線滅菌によって滅菌した後、フィリングステーションにおいて中空の充填針を用いてクロージャに穿孔し、その針を通してバイアルの内部へ薬剤を導入し、針を引き抜き、次に穿孔箇所近傍の材料を溶かすためにその箇所へレーザービームを当てた後、その材料を冷却して再硬化させることによって穿孔箇所を密封している。
【0003】
この方法を実行するための工程及び装置は、特に、容器の外側、とりわけ穿孔した領域を滅菌することの要求を十分に満たすという点で、また滅菌装置をフィリングステーションと接続するという点で最適化されていない。
【0004】
国際公開第04/000100号パンフレット(本願の優先日以後に初めて公開された)には、バイアルの外側を滅菌するために電子ビームを用いた滅菌充填機が開示されている。その機械では、充填部材、例えばバイアル中へ薬剤を注入するために用いる針が、電子ビームと同じチャンバー内に取り付けられている。この場合、電子ビームに起因するX線がチャンバーの外に漏れるのを防ぐためにその電子ビームのチャンバーをシールドする必要があることから、機械の構成が扱いにくいものとなる。充填部材が電子ビームのチャンバー内にある場合、重いシールドが大量に必要となる。また、電子ビームによって生成される腐食性のオゾンが、充填手段と接触する状態となる可能性もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、この種の改良された方法を提供すること、及びその方法を実行するための改良された装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の態様によれば、容器の中へ薬剤を導入するための装置であって、容器の壁部に存在する微生物を不活化するのに十分なエネルギー及び線量の電子ビームに容器の壁部を曝露する手段を取り囲んでいる筐体と、前記筐体の中へ容器を移送する手段と、前記筐体の外へ容器を移送する手段と、筐体の外側に位置して、且つ充填針で容器に穿孔し、充填針を通じて容器の中へ薬剤を導入し、その後に充填針を引き抜く手段を含むフィリングステーションと、前記電子ビームに曝露された容器を筐体からフィリングステーションへ移送する手段と、容器が筐体からフィリングステーションへ移送される間、容器の周囲を滅菌環境にする手段と、を含む装置が提供される。
【0007】
好ましくは、本装置は、穿孔箇所近傍の材料を溶かした後に材料を硬化させることによって未処理の(開いたままの状態にある)穿孔箇所を密封するシーリングステーションをも含む。
【0008】
本発明の第二の態様によれば、容器の中へ薬剤を導入するための方法であって、
(1)充填針によって穿孔可能であり、且つ熱可塑的に溶融可能な材料からなる壁部を有する容器を供給するステップと、
(2)容器の壁部に存在する微生物を不活化するのに十分なエネルギー及び線量の電子ビームに容器の壁部を曝露する手段を取り囲んでいる筐体の中へ、容器を導入するステップと、
(3)容器が前記筐体中にある間、壁部に存在する微生物を不活化するのに十分なエネルギー及び線量の電子ビームに壁部を曝露するステップと、
(4)曝露された容器を上記(3)から筐体の外へ移送し、滅菌環境中で容器をフィリングステーションへ移送するステップと、
(5)フィリングステーションにおいて、充填針で壁部を穿孔し、充填針を通じて容器の中へ薬剤を導入し、充填針を引き抜くステップと、
を含む方法が提供される。
【0009】
好ましくは、ステップ(5)の後に、ステップ(5)により充填された容器を、穿孔箇所近傍の材料を溶かしてから材料を再硬化させることによって未処理の穿孔箇所を密封するシーリングステーションへと移送するステップ(6)が続いている。
【0010】
ここで、空気などの雰囲気に関して「滅菌」の用語は、例えばHEPAフィルターで処理した空気など、フィルター処理したものの他、微生物を除去するように処理した任意の雰囲気に関連するものである。そのような空気の滅菌状態は、通常、例えばクラス100以上のような、クラス数で表される。そのような滅菌環境内で、装置の部品、例えば機械の部品を、例えば蒸気や熱あるいは放射線滅菌を用いて微生物の活性がなくなるように滅菌することができる。
【0011】
ステップ(1)に適した容器としては、例えば、ガラスもしくはプラスチック材料などからなる本体に、充填針で穿孔可能であって且つ穿孔箇所に例えばレーザービームを当てることで溶融可能なエラストマー重合体からなるクロージャである壁部を備えたバイアルが知られている。好適な種類のプラスチック材料は、シクロオレフィンコポリマー(COC)やそのブレンド体、もしくはCOCと他のポリマーとのブレンド体がある。そのようなCOCポリマーの例は、例えば米国特許第5723189号明細書、欧州特許出願公開第0436372号明細書、及び欧州特許出願公開第0556034号明細書その他の中で開示されている。製薬業界で使用が認められている好適な硬質プラスチック材料としては、Celanese Corporation製のシクロオレフィンコポリマーであるTopas(商標)、又はZeon Corporation製のZeonex(商標)がある。例えば、Ticona GmbH(ドイツ)から入手可能な、公知のCOCポリマーであるTopas 8007又はTopas 6015を用いることができる。バイアルを製造するためのこのポリマーの射出成形条件は当該技術分野において公知である。
【0012】
容器のクロージャ部は、例えばスチレン−ブタジエン−スチレンやSEBSブロックコポリマーなどの熱可塑性エラストマー(TPE)、例として、Dupont-Dowによって提供されるEngageと、以前はShellにより提供されるKratonとして知られ現在はこのブレンドを提供するGLS(米国)から入手可能であるDynaflexとのポリマーブレンド体にグレー等の色素を含有させエラストマー材料をレーザー光によって加熱できるようにレーザー光の吸収を高めたもの、等とすることができる。出力が約6〜10Wの集光された980nmのレーザー照射下において、このポリマーは約180℃で容易に溶融し、冷却により硬化する。そのようなバイアルの詳細な形式は、出願人が2003年8月15日に出願した、同時係属出願であるPCT/EP03/09151号明細書(参照することにより本明細書に組み込まれる)、及び上記で引用した当該技術分野において開示されている。
【0013】
PCT/EP03/09151号明細書のバイアルについて以下に簡潔に述べる。このバイアルは、開口部と、その開口部から直接下降するネック部とを有し、上下軸を横断して横に広がる上面及び下面を有するフランジ形状の周縁部を有している。また、本発明の方法に規定されるように、開口部に密封状態で係合するように形成され、バイアルの内部に面する下面、及びバイアルの外方に面する反対側の上面を有し、針で穿孔可能であるエラストマーのクロージャ部と、バイアル、特に開口部の周縁部と係合可能であって、開口部を閉鎖する状態にクロージャ部を保持するためクロージャ部の上面に加圧可能なクランプ部とを含むクロージャシステムであって、そのクランプ部は、クランプ部がバイアルに係合したときにクロージャ部の上面の領域がそこから露出するようなアパーチャを中に有するクロージャシステムを備えている。
【0014】
適切には、ステップ(5)における充填針は、アパーチャを通じて露出するクロージャの一部を貫通して挿入することができる。
【0015】
「上方」、「上」、「下」等の用語、及び「垂直」のような方向を示す派生の用語は、最上部の開口部と下方の基部とを有し、天地方向に置かれたバイアルの通常の形態に基づくものである。
【0016】
ステップ(5)と、任意であるが好適なステップ(6)を実行するための装置及び方法もまた、例えば上記で引用した技術文献、特に米国特許第5,641,004号明細書、及び国際公開第02/064439号パンフレットで開示されているように公知である。
【0017】
バイアル等の容器は、好ましくは、ステップ(3)、(5)及び(6)が実行されるそれぞれのステーションの中へ、概ね従来のコンベヤーシステムによって移送される。好ましくは、そのようなコンベヤーシステムでは、バイアル等の容器は、ステップ(3)で電子ビームに曝露されステップ(5)では穿孔される容器の一部、例えばバイアルのクロージャがコンベヤーから離れるように、開口部及びクロージャを最上部にした状態で嵌め込まれる。このことは、クラス100以上等の滅菌された空気からなる下降流、例えば層流を用いて、バイアル等の容器の大部分とコンベヤーとが電子ビームに曝露される容器の一部の下流にくるように滅菌環境を構築することを容易にする。
【0018】
本装置及び方法の好適な形態では、本装置の一部を構成し且つ周囲の壁で境界付けされた筐体であって、容器がそこを通り筐体へ入る入口開口部と、容器がそこを通り筐体から出る出口開口部とを有し、内部に電子ビーム源が設置されるような筐体の内側で、ステップ(3)が実行される。この筐体は、好ましくは、電子ビーム照射及びその電子ビームに起因するX線照射が、損害もしくは損傷を引き起こす可能性のある強度で筐体の外へ漏れないようにシールドされた筐体である。シールドの適切な形態は、金属網、特に鉛ブロック等、当該技術分野において公知である。
【0019】
好適には、バイアル等の複数の容器は、入口開口部を通って筐体へ入り、出口開口部を通って出るようなコンベヤーを用いて、例えば1列以上の連続的な列の状態で複数のバイアルを搬送する1台以上のコンベヤー上を、搬送する方向に沿って連続的に筐体内へ導入される。このようにして複数のバイアルが電子ビームに曝露された後、筐体の外へ移送され、フィリングステーションへ向かって移送される。そのようなコンベヤーは、概ね従来の構造とすることができる。好適には、コンベヤーは、例えば入口開口部を通って入った直後と出口開口部に達する直前の筐体内で曲がるような、筐体内で屈曲する経路をとることができる。そのような屈曲した構造によって、電子ビーム源から入口及び/又は出口開口部へ直線的な経路となることが回避され、放射線が漏れる可能性を低減することができる。加えて又はそれに代えて、コンベヤーは、入口及び/又は出口開口部の外側近傍で屈曲しても良く、その結果、これらの開口部のいずれか又は両方を通り且つ電子ビーム源から外挿される直線経路中のいずれかにシールドを設置することが可能となる。
【0020】
曝露された容器を滅菌環境中で(3)からフィリングステーションへ移送するステップ(4)では、内部でバイアル等の容器が電子ビームに曝露される筐体は、例えばそれからコンベヤーシステムの長さ分だけ隔てられた装置中にあるステップ(5)のフィリングステーションから離間されている。
【0021】
本装置及び方法においては、ステップ(3)の後に、電子ビームに曝露されたバイアル等の容器を、少なくともフィリングステーション及び任意のシーリングステーションを周囲の環境から隔離する垂直なバリア内の、浄化された空気の下降層流が保たれた領域へ移送し、充填するステップ(5)と密封するステップ(6)の間、これらのステップが完了するまでそのような環境中に保つことが好ましい。
【0022】
ステップ(3)が実行される筐体とステップ(5)のフィリングステーションとの間では、バイアル等の容器は、例えばクラス100以上の滅菌した加圧空気等の加圧滅菌雰囲気であるステップ(3)の下流であって、筐体の内部と一体であるような領域を通過することが好ましい。例えば、そのような領域は、筐体の出口開口部の下流に隣接することができる。そのような領域の効果は、滅菌環境の流れを、搬送方向と反対の方向、すなわち上流方向に向けることであり得る。これにより、下流の、ステップ(5)及び場合によりステップ(6)が実行される領域であって、環境的に滅菌状態であることが重要となり得る領域の中へ、汚染が伝わる可能性を低減することが可能となる。また、この流れはオゾンを筐体の外へ追い出す助けとなり得る。
【0023】
本装置は、そのような領域を備える手段を組み込むことができる。そのような手段は、筐体から搬送方向の下流に設置される区画から構成することができ、注入管等の、区画の中へ加圧雰囲気を導入する手段を備えている。区画は、筐体の出口開口部と一体である容器のための入口と、容器のための出口とを有している。コンベヤーは、入口から出口へ区画の中を通過することができる。この区画の入口は、加圧雰囲気が優先的に入口を通って区画から出られるように、出口よりも大きくすることができる。加圧雰囲気についての適切な圧力は、20〜70パスカル、例えば50〜60パスカルである。
【0024】
ステップ(4)で容器が移送され、中でステップ(5)及び任意的なステップ(6)が実行される滅菌環境は、好ましくはクラス100以上の、滅菌空気の、好ましくは下向きの流れによって提供されることが好ましい。そのような流れを、装置、例えばHEPAフィルターで提供するための手段は公知である。バイアル等の容器がその開口部及びクロージャを最上部にしてその基部の近傍でコンベヤー上に保持されるコンベヤーシステムにより、そのような配置は、電子ビームに曝露され穿孔される部分をコンベヤーに対して気流の上流位置としながら、浄化空気の下降流が容器の上に導かれることを可能にする。これにより、電子ビームに曝露されなかった容器のどの領域も空気の流れにおいて上流となることが保証され、汚染が、穿孔が形成される曝露された壁部へ向かって気流により伝わることができなくなる。
【0025】
ステップ(3)で電子ビームに曝露された後、複数のバイアル等の容器はステップ(4)でフィリングステーションへ移送される。ステップ(5)で用いられるフィリングステーションでは、バイアルは充填装置近傍の位置まで移送される。充填装置は、好ましくは充填装置が複数のバイアルに同時に充填するよう動作可能であるように構成される。コンベヤー上を動く複数のバイアルへ同時に充填するのに適した、多くのタイプの充填装置が知られている。
【0026】
フィリングステーションにおいて、充填するための複数のバイアルは、複数のバイアルの列をコンベヤーの方向に対して横に整列させた状態で配置することが好ましい。従って、本方法及び装置では、移送するステップ(4)において、もしステップ(3)で複数のバイアルがその搬送方向に沿って連続的な列の状態で搬送されるようになっている場合、この配置を実現するためにはそのような搬送方向に沿った複数のバイアルの連続的な動きを、搬送方向に対して横に整列した、搬送方向へ進む複数のバイアルの列の動きに変える必要がある。これに対し本装置では、そのような場合にステップ(3)で用いる筐体とステップ(5)のフィリングステーションとの間に、そのような搬送方向に沿った複数のバイアルの連続的な動きを、搬送方向に対して横に整列した、搬送方向へ進む複数のバイアルの列の動きに変えるための手段を備える必要がある。
【0027】
従って、ステップ(3)が実行される筐体を通り搬送方向に沿って整列した連続的な列の状態でバイアルを移送する第一のコンベヤーから、複数のバイアルを搬送方向を横断する複数の列の状態で整列させる、後に続くコンベヤー上へのバイアルの受け渡しを、方法のステップ(3)とステップ(5)の間、例えばステップ(4)において、及びこれを行うための手段を提供する装置内において行うことが好ましい。例えばいわゆる「遊動プーリ」コンベヤーシステムなど、これを実現するための数多くの種類の機械が搬送技術分野において知られている。例としては、第一のコンベヤーからその後のコンベヤーへ、中間のコンベヤーを経て容器を受け渡すことが好適になり得る。
【0028】
充填するステップ(5)及び密封するステップ(6)は、滅菌環境中で実行されるのが適当である。滅菌環境は通常、縦に伸びるバリアによって囲まれ内側にはフィリングステーション及びシーリングステーションがある領域の内部で保たれる滅菌空気の下降流によって与えられる。上述した区画は、その出口開口部を、そのようなバリアを通る開口部と連通して有することができ、その開口部を通ってコンベヤーが通ることができる。
【0029】
ステップ(5)が実行されるときには、容器は、例えば仮に針が上方向へ引き抜かれる場合に容器は下に保持されるべきであるように、針が引き抜かれる力に抗して保持されることが好ましい。このように容器を保持することによって、針が引き抜かれるときに容器がコンベヤーから離れることを防止することができる。これを行うための装置中の手段を備えることができる。例えば、バイアルは、ホルダーで支えることができる面を上方へ向けて、スタンド中に保持することができる。そのようなスタンドはPCT/EP03/09151号明細書で開示されており、またそのようなバイアルをそのようなスタンド中に保持する適切な手段は、PCT/EP03/10349号明細書で開示されている。ステップ(5)及び(6)各々のフィリングステーション及び/又はシーリングステーションは、それぞれフィリングステーション及び/又はシーリングステーション上へ流れる滅菌空気の乱れを最小にできる空気力学的な被覆体に囲まれた、充填針と、レーザー光を導く手段とからそれぞれ構成することができる。そのような、それぞれ空気力学的な被覆体に囲まれたフィリングステーション及び/又はシーリングステーションは、PCT/EP03/10349号明細書において開示されている。
【0030】
密封するステップ(6)に続き、容器、例えばバイアルは、例えば蓋付け、二次的包装等の、さらなる処理を受けることができる。容器が、PCT/EP03/09151号明細書で開示されるようなバイアルである場合、さらなる処理は、クランプ部及び/又はバイアルと係合可能なカバー部とクランプ部を係合させるステップを含むことができ、クランプ部がバイアルに係合されたときにアパーチャを通じて曝露される、クロージャ部の上面の領域をカバーする。
【0031】
ステップ(3)における電子ビーム源の構造、動作、及び配置は、本発明の重要な特徴である。
【0032】
容器に穿孔する前に、少なくとも針によって穿孔される壁部、できれば容器の外面全体を汚染しているあらゆる微生物(ここで用いる用語は、細菌、ウイルス、胞子等を含む、あらゆるタイプの病原体を言う)の、可能な限り高い割合での不活化を確保することが望ましい。あらゆる生存微生物の少なくとも3logの減少、好ましくは少なくとも6logの減少を達成することが好ましい。これは通常、電子ビーム放射に対して最も高い耐性を有する微生物の一つである、B. pumilusの活性の減少をモニターすることによって測定される。特定用途についての低減基準は、US FDA等の地域機関、あるいはSterility Assurance Levels等の、対応するヨーロッパの組織によって定められ得る。
【0033】
この程度の不活化を実現するため、容器の壁部を電子ビームに曝露するための手段は、壁部の外面に当たるときに少なくとも50keV、例えば50〜85keVのエネルギーを有する電子ビームを生成すべきであると考えられる。そのような活性の低減を実現するためには、ビームの電子が、壁部、例えばエラストマーのバイアルクロージャの表面内に0.1mmの深さまで侵入するのが好ましいと考えられる。また、このエネルギーは、電子が、壁部、例えばバイアルのクロージャを通り抜けて容器の内部へ入ることなく、そのような侵入を生じさせるために適切であると考えられる。また、微生物活性の適切な低減を実現するため、針によって穿孔される壁部の領域上で、線量が少なくとも25キログレイ(kGy)の電子ビームエネルギーであることが望ましい。活性の適切な低減を実現するための全体の電子ビーム電流は、好ましくは1〜3mA、例えば2〜2.5mAの範囲である。
【0034】
これを実現するため、好都合な種類の電子ビーム発生器が備えられる。そのような発生器、ステップ(3)でそのような発生器を用いる上述の方法、及びステップ(3)における、壁部に存在する微生物を不活化するために十分なエネルギー及び線量の電子ビームに壁部を曝露する手段としての、そのような発生器を含む上述の装置は、本発明のさらなる特徴を構成する。
【0035】
電子ビームは、通常いわゆる「電子銃」を用いて生成される。一般的にそのような銃は、加熱したタングステン・フィラメント等のカソードを囲む真空チャンバーと、そのカソードから間隔を空け且つチャンバーの壁部の窓部に隣接するか又は窓部から構成するアノードと、カソードとアノードの間に電位差を加える手段とを含み、その結果電子はカソードから放出され、アノードへ向かって真空中で加速される。そして、アノード近傍に到達するまでに電子は高エネルギーとなり、高速度でアノードを越え又は通り抜け、窓部を通り抜けて進み、電子ビームとして出てくる。
【0036】
本発明における銃では、電子が約75〜85keV、例えば約80keVのエネルギーまで加速されるようにカソードとアノードの間に十分な電位差を加えることが好ましい。その結果、これらの電子は、典型的には厚さが約4〜8μmであるチタン壁等、真空チャンバーの金属製のチャンバー壁を通り抜け可能となり、例えばステップ(3)において容器の壁部に到達する電子のエネルギーは約50keVとなる。そのような薄い壁は、例えば外部の大気圧に対し、支持格子によって支えることができる。もし容器の壁部、例えばバイアルのクロージャ外面が、そのような電子ビーム発生器のチャンバー壁から約25mm、好ましくは10〜15mm以内を通過するならば、約75〜85keVのエネルギーまで加速された電子は、窓部と容器との間のエアギャップを通過してもまだ、このエアギャップを越えた後に微生物の活性について所望の低減を実現するための、例えば約50keVの十分なエネルギーを残すような、十分なエネルギーを有することが分かっている。発生器は、コンベヤーとの関係で、容器の上に面する壁部へ向かって電子が下向きに進むように取り付けることが好ましい。
【0037】
従って、容器の壁部を電子ビームに曝露するための手段は、少なくとも50keVのエネルギーを有する電子を与え、針によって穿孔される壁部の領域上における電子ビームエネルギーがステップ(3)の間に少なくとも25キログレイ(kGy)の線量となるように構成することが適当である。
【0038】
当然のことながら、高エネルギー電子と空気中の酸素原子との衝突によりオゾンが生成するので、筐体はこのオゾンを除去するための抽出装置を備えることが望ましい。
【0039】
好ましい構成においては、電子ビーム発生器は、ある配列状態で、好適には実質的に水平面状の配列で、コンベヤーの近傍、適切には上方に配置される複数のカソードから構成され、その配列のカソードからの電子ビーム放射がオーバーラップ領域で重なり合う。そして、容器、例えばバイアルは、その配列に対し、容器の壁部、例えば穿孔されるバイアルのクロージャ部が、少なくとも1つのオーバーラップ領域を通過するように移送される。オーバーラップ領域では、電子は上述のようなエネルギー、すなわちビームが壁部の外面に当たるときに少なくとも50keV、例えば50〜85keVのエネルギーを有するべきであり、その結果、線量が少なくとも25キログレイ(kGy)の電子ビームエネルギーが、針によって穿孔される壁部の領域上に出射される。カソードをこのように配置する利点は、各カソードからの電子ビーム放射の強度は良く知られた法則によって距離とともに減少するが、オーバーラップすることで電子ビーム放射の加重をもたらし、この減少を小さくし易くなることである。
【0040】
この配列では、3個のカソードからなる群の少なくとも1つが、三角形状に配置され、その三角形の各頂点にカソードを有することが好ましい。その結果、3個のカソードからの電子放出は三角形の中心周りで重なり合う。この配置では、ここで開示される電子ビーム源の構成により、四角形状の配列、例えば規則正しい平行四辺形状の配列であって、それぞれの角部にカソードを有して配置される最低限4個のカソードは、複数のオーバーラップ領域を得るのに適切であり、電子ビームに曝露される面での微生物活性の十分な程度の低減を実現するために適切であることが分かる。カソードのうちの任意の4個がそのような規則正しい平行四辺形状の配列になるように、好ましくは6個、又はより好ましくは8個のカソードが配置される。このように配置された8個のカソードは、3個のカソードの電子放出が重なり合うオーバーラップ領域を6つ作り出すことができる。
【0041】
例えば、そのような配列では、搬送方向に沿って連続的に並ぶ容器を移送するコンベヤーの平面における長手方向に対して、カソード、例えば4個のカソードをコンベヤーの中心の一方の側に長手方向に沿った列の状態で、好ましくは長手方向に等間隔で配置するとともに、カソード、例えば4個のカソードをコンベヤーの中心の反対側に長手方向に沿った列の状態で、好ましくは同様に長手方向に等間隔で配置し、コンベヤーの中心の一方の側のカソードを反対側のカソードに対して長手方向に変位していれば良い。
【0042】
別の配列では、長手方向に隣接するカソードの電子放出が重なり合うように間隔が空けられた、コンベヤーのラインと平行に長手方向へ連続的に並ぶ単列状のカソードとすることができる。ここで開示される電子ビーム源の構成によれば、6〜8個のカソード、例えば7個のカソードが、電子ビームに曝露される面での、微生物活性の十分な程度の低減を実現するのに適切であることが分かる。
【0043】
好ましくは 、その配列は、オーバーラップ領域がコンベヤーの搬送方向の長手方向の中心線に沿って直線状に整列するように配置される。好ましくは、各オーバーラップ領域は少なくとも容器の壁部と同じ大きさであるか、あるいは容器がバイアルである場合はバイアルのクロージャと同じ大きさである。PCT/EP03/09151号明細書のバイアルの場合には、クランプ部の上面と同じ大きさである。
【0044】
バイアルのクロージャ表面において微生物の活性の適切な低減を実現するための適切な電流I(mA)は、次式から算出することができる。
【数1】

【0045】
ここで50keVのエネルギーに対する阻止能(SP)は6.5MeV.cm/g、幅はバイアルのクロージャの幅、vはバイアルのクロージャの速度(cm/sec)である。これに基づき、バイアルのクロージャの直径を2.225cm、処理能力を12バイアル/sec、典型的には36cm/secとすると、クロージャ上の電流は0.138mA/cmである。コンベヤーの長手方向を横切る窓部の全幅分にすると、適切な電子ビームの電流は0.83mAである。
【0046】
好適には、容器の壁部を電子ビームに曝露するための手段は、上述のような1つ以上の電子ビーム発生器を取り囲むトンネルを含み、容器、例えばバイアルがその中を通って搬送される。そのようなトンネルは、適切には筐体の内部に設置される。
そのような電子ビーム発生器の適切な構成は、当業者にとって明らかであろう。
【0047】
これから添付の図を参照したほんの一例により、本発明を説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
図1を参照すると、平面図で概略的に示されているように、バイアル10が従来の回転式ローディングテーブルの上に手動で搭載される。
【0049】
図2は、バイアル10の構造をより明確に示している。各バイアル10は、硬質プラスチックの本体101に上方のネック部102が一体となって構成されている。ネック部102は、上部に熱可塑性エラストマーのクロージャ103によって閉鎖される開口部(図示せず)を有しており、クロージャ103はネック部102上の所定の位置に、クリップ104によって開口部を閉鎖する状態で保持されている。この構造は、当該技術分野において概ね決まりきったものである。PCT/EP03/09151号明細書で開示されているバイアルの詳細な構造を、図5に示す。バイアル10の内部は前もって、例えばγ線照射により滅菌される。
【0050】
ローディングテーブル11から、バイアル10が従来の方式で第一のコンベヤー12によって取り上げられ、バイアル10はそれらの基部105がコンベヤー12上に保持される。これを助けるため、図2に示すように、バイアル10は小さい添え付け台106の中に嵌め込まれる。そのような添え付け台106は、バイアル10の基部105が擦れ合い又はスナップ式によって中へ嵌まるような、リング形状のプラスチック材料から構成することができる。コンベヤー12上のいくつかの地点に、2、3個の代表的なバイアル10のみを図示している。
【0051】
コンベヤー12はシールドされたトンネル20を通ってバイアル10を移送し、トンネル20内ではバイアルが電子ビームの照射に曝露される。トンネル20の壁は、筐体23の囲い壁を形成する周囲の鉛ブロックによってシールドされる。コンベヤー12は、電子ビームトンネル20の入口開口部21を通って中へ、また電子ビームトンネル20の出口開口部22を通って外へバイアル10を搬送方向に沿ってトンネル内へ連続的に導入する。コンベヤー12の経路はトンネル20の入口開口部21の直前とトンネル20の出口開口部22の直後とで曲がっている。従ってシールド23をこれらの開口部21、22の正面に配置し、開口部21、22を通る電子ビーム源からのあらゆる直線的な経路を遮ることができる。スター・ホイールシステム13、14は、このようなバイアル10の運動方向の変更を容易にする。
【0052】
筐体23は、鉛ブロックからなる周囲の壁で境界付けられ、バイアル10がコンベヤー12により筐体23へ入ることができる入口開口部23eと、バイアル10が筐体23から抜け出ることができる出口開口部23xとを有しており、内部には電子ビームトンネル20が設置されている。この筐体の鉛ブロックによるシールドは、損害もしくは損傷を引き起こしそうな強度で電子ビーム放射及び電子ビームに起因するX線放射が筐体23から漏れるのを防ぐ。筐体23は非常にコンパクトであり、その結果、必要となる重いシールドの量が最小限になると考えられる。電子ビームトンネル20は、筐体23の取り外し可能とされた天井部に取り付けても良く、メンテナンス等のためそこへのアクセスが容易になって都合が良い。
【0053】
図2、3及び4では、電子ビームトンネル20の構造及び配置をより詳細に示している。トンネル20はシールドされた天井部24を有しており、その真下には電子ビーム発生器25が取り付けられている。電子ビーム発生器25は、壁26によって囲まれた真空チャンバーを含む。壁26の部位27は、細線格子28で支えられた厚さ4μmのチタンからなる窓部を構成している。この窓部27は正に帯電されアノードを形成している。真空チャンバー25内には、電気的に加熱可能であって電子を放出するタングステン・フィラメントのカソード29が取り付けられており、カソード29はアノード27からチャンバー25内の真空を隔てて電気的に孤立している。これらの電子は真空チャンバー25を横断しアノード27へ向かって加速される。そして、アノード27近傍に到達するまでに電子は高エネルギーとなり、窓部27を通り抜けて高速度で進み、電子ビーム210として出てくる。電子ビーム発生器25は、窓部27から出てくるときの電子ビーム210のエネルギーが約50keVとなるように従来の方式で調整される。
【0054】
図3でより明確に示すように、8個のカソード29がコンベヤーの上方に水平な配列状態で配置されている。この配列では、任意の3個のカソード29が三角形の頂点に配置されている。8個のカソード29は、4個のカソード29が長手方向に等間隔であってコンベヤー12の中心に対し一方の側に長手方向に沿った列の状態で配置され、4個のカソード29”が長手方向に等間隔であってコンベヤー12の中心に対し反対の側に長手方向に沿った列の状態で配置されるような配列状態で配置される。
【0055】
図4でより明確に示すように、7個のカソード29がコンベヤーの上方に水平な配列状態で配置されている。この配列では、カソード29が、その真下にあるコンベヤー12のラインと平行に長手方向へ連続的に配置された、直線状に伸びる単列のカソード29として配置されており、また長手方向に隣接するカソード29の電子放出が重なり合うように間隔が空けられている。
【0056】
これにより、図2、3及び4に示すように、カソードからの電子ビームの放出が領域211で重なり合うことになる。図3に示すように、3個のカソード29によって形成される三角形の中心周りの領域211で、3個のカソードからの放出が重なり合う。図3において、それぞれのカソード29を中心とする円212は、これらの円212の中心にあるカソード29からの電子ビームの放出強度が等しい点を結んだものである。図4に示すように、組になった長手方向に隣接するカソード29間にある領域211で、2個のカソードからの放出が重なり合っている。図4において、それぞれのカソード29を中心とする円212は、これらの円212の中心にあるカソード29からの電子ビームの放出強度が等しい点を結んだものである。従って、電子ビームの強度は、これらのオーバーラップ領域211で最大となる。バイアルのクロージャが窓部27の真下を移送されるような距離での、これらのオーバーラップ領域211においては、電子ビームのエネルギーは少なくとも50keVである。
【0057】
バイアルの搬送速度については、約12個バイアル/秒、例えば36cm/秒、窓部27の面積は、250mm×60mmが適当であることが分かっており、図3に示すようなカソード29の配列が大体対応する面積を占有する。
【0058】
コンベヤー12は、クロージャ103の上側外面が窓部27の下側外面の下方約15mmのところを通過するように、図3に矢印で示す搬送方向に沿ってバイアル10を移送する。従って、バイアルのクロージャ103は、電子ビームの放出が重なり合う複数の領域211を通過する。窓部27の下方へ、バイアルのクロージャ103が移送される距離にあるところでは、オーバーラップ領域211はクロージャ103の上面積よりも大きい面積を有することが分かる。クロージャを有するバイアルが、PCT/EP03/09151号明細書で開示されるタイプ又は図5に示すようなタイプのものである場合、電子ビームは少なくともクロージャ80の部分84Aの全面積に衝突するべきである。電子ビーム発生器25は、全てのオーバーラップ領域211を通過した際にクロージャ103の上側外面で受ける電子ビーム210の線量が、その上側外面に存在するあらゆる微生物汚染を適当な範囲にまで、例えば上述のように測定される対数減少率(logs reduction)が例えば6になるまで不活化するのに十分な量となるように調整される。
【0059】
トンネル20は、大気中の酸素への電子ビームの影響によってトンネル20中で生成されるオゾンを除去するため、例えば抽出ポンプ(図示せず)などの手段を備えている。
【0060】
電子ビームトンネル20の出口開口部22を出ると、コンベヤー12は、筐体23内でバイアル10を筐体23の出口開口部23xへ向かって移送し、搬送する運動方向はバイアル10がスターホイール14によって搬送されるにつれて曲がる。
【0061】
出口開口部23xを通過し、筐体23の外へ出ると、バイアル10は区画212の中へ搬送される。区画212は加圧(60パスカル)された滅菌空気(クラス100)を区画212中へ導入する手段、すなわち注入管213を備えている。その他、区画212は、バイアル10が区画212中へ搬送される入口212eと、バイアル10が区画212の外へ搬送される出口212xを除けば密閉されている。入口212eは筐体23の出口開口部23xと一体であり、また入口212eは、加圧された空気が優先的に入口212eを通って区画から出られるように、出口212xよりも大きくなっている。これにより、滅菌空気の流れが搬送方向とは逆の方向に導かれ、汚染が、下流の、ステップ(5)及び(6)が続いて行われる領域(後述)中へ及ぶ可能性を低減することができる。加圧された空気の流れは、筐体23の中へ、コンベヤー12の上流方向へ流れ、電子ビームによって生じるオゾンを筐体23の外へ追い出すことに貢献する。
【0062】
次に、コンベヤー12は、第二の、中間のコンベヤー30へバイアル10を搬送する。バイアルは、スターホイール15等の従来の手段によってコンベヤー12からコンベヤー30上へ移送され、同時にコンベヤー12は戻り行路(図示せず)へ進む。コンベヤー30上のバイアル10は、依然としてそれらの基部近傍で保持され、コンベヤー30の搬送方向と平行に連続的な列の状態で並んでいる。ここで、バイアル10は中間コンベヤー30から第三のコンベヤー40上へ移送される。コンベヤー40上では、バイアル10はフィリングステーション50及びシーリングステーション60へ移送される。コンベヤー40上のバイアル10は、依然としてそれらの基部105の近傍で保持され、コンベヤー40の搬送方向を横断する列の状態で並ぶ。
【0063】
搬送方向に対するバイアル10の列の配置を変化させるため、コンベヤー30は、概ね従来の構造及び働きを有する遊動プーリ31にバイアル10を移送する。遊動プーリ31は、コンベヤー30に対する相対速度が0になるように、矢印で示す搬送方向へコンベヤー30に対して移動し、コンベヤー30からバイアル10を取り去る。続いて遊動プーリ31は、第三のコンベヤー40の搬送方向(矢印で示す)に対し直角方向の相対速度が0となるように停止する。次に遊動プーリ31は、バイアル10をコンベヤー40上へ渡し、コンベヤー40は、コンベヤー40の搬送方向を横断して配置される複数の列の状態で、ホルダー41上にバイアル10を受け取る。あるいは、コンベヤー30からコンベヤー40上にバイアル10を受け渡すため、例えばピック・アンド・プレイスのロボットシステムを用いても良い。
【0064】
続いてコンベヤー40は、液体の薬剤がバイアル10中へ導入されるフィリングステーション50へ、バイアル10を移送する。フィリングステーション50は、充填針でバイアル10に穿孔し、その針を通じてバイアル10中に薬剤を導入した後、針を引き抜くための公知の手段から構成される。そのような手段は、複数のバイアル10にこのような方法で同時に充填できるように、コンベヤー40の搬送方向を横断して複数配置される。フィリングステーション50はまた、必要なときに薬剤をフィリングステーション50に供給し補給することができる付属装置51を含んでいても良い。フィリングステーション50は、好ましくは、充填針が引き抜かれるときの引き抜き力に抗して、コンベヤー上のバイアル10をスタンド106を介しコンベヤー上に押え付ける手段(図示せず)を内蔵する。コンベヤー40は次に、フィリングステーション50で充填針により残されたクロージャ103の未処理の穿孔箇所を、その未処理の穿孔箇所にレーザービームを当てることで穿孔箇所近傍の材料を溶かし、その後に材料を再硬化させることによって密封するシーリングステーション60へ、充填されたバイアル10を搬送する。
【0065】
フィリングステーション50、シーリングステーション60、及びコンベヤー30、40は、クラス100以上の浄化空気の下降流中に保たれる。バイアル10を、クロージャを最上部としてそれらの基部で各コンベヤー12、30、40上に保持することにより、電子ビーム210に曝露されるクロージャ103の一部が、この空気の流れにおいて、電子ビーム210に曝露されないバイアル10の任意箇所の上流となるような部位に保たれることが結果として保証される。好ましくは、テーブル11及びシーリングステーション60を含むコンベヤーシステム全体は、この浄化空気の下降流中に保持される。
【0066】
そのような浄化空気の流れを供給する方法は、当業者にとって明らかであろう。図のように、コンベヤー12は、剛体からなる垂直なバリア71で画定され内部ではクラス100以上の清浄度であるような浄化空気の下降層流が維持されている筐体70の入口開口部を通って、バイアル10を移送する。この空気は、区画24中へ供給される空気と同一であって良い。筐体70は、グローブポート、エアロック等(図示せず)を含んでいても良く、これを用いて作業者が筐体70内の装置の一部に雑菌を混入させることなくアクセスすることが可能となる。例えば、具体的に述べると、そのようなエアロック又はグローブポート等(図示せず)を付属装置51に隣接させて置き、この装置に装填可能としたり、その他保守を可能にすることができる。区画26の出口27は、バリア71を通る対応する開口部と一体になっている。
【0067】
空気の下降層流はまた領域72中で維持され、領域72中へは、作業者がバイアルローディングシステム73を用いて、回転式ローディングテーブル11上へバイアル10を手動で搭載することができる。領域72はまた、剛体からなる垂直な隔壁によって任意的に囲まれていても良く、そして領域72内の空気の下降層流は、汚染の領域72中への侵入を防ぐエアカーテンを生成するようになっていても良い。
【0068】
シーリングステーション60の下流で、バイアル10は例えば、コンベヤー40から離れる前に、それぞれ蓋付け、二次的包装のステーション等において、蓋付け、二次的包装等のようなさらなる処理を受けても良い。PCT/EP03/09151号明細書において開示されるタイプ、例えば図5に示すようなタイプのバイアル10を用いる場合、そのようなさらなる処理は、カバー部をクランプ部の上に嵌め込むことを含むことができる。
【0069】
コンベヤー12、30、40に沿ったさまざまな地点で、例えばバイアルの重量をチェックするためや、フィリングステーション50等で適切な重量の薬剤が導入されたことをチェックするために、バイアルをモニターすることができる。
【0070】
図5を参照すると、本発明の装置及び方法に適した、PCT/EP03/09151号明細書におけるバイアル10の縦(上下)断面図が示されており、図2に示すバイアル10がより詳細に示されている。バイアル10は、その上端部に開口部81と、すぐ下にネック部82(図2のネック部102に対応する)とを有する概略円筒形状のものである。開口部81は、上面83A及び下面83Bを有し外側に広がる周縁部83で周りを囲まれており、その上面83Aは、上方へ伸びる周囲の縁石部84及び密封隆起85によって境界付けられている。クロージャ部87(図2のクロージャ103に対応する)の栓部86は、開口部81に挿入されてネック部82の下方へ少し伸びており、熱可塑性エラストマー材料で一体的に作られ、ネック部82の中へ緊密に嵌められている。それによってクロージャ部87とネック部82との間に緊密な密封状態を形成している。クロージャ部87は、表面83Aとクロージャ87との間を良好に密封するため密封隆起85がエラストマー材料を圧迫及び変形させるとともに縁石部84の内側に無理なく嵌まり込むような形状及び寸法を有する、外側へ伸びたフランジ部88を有している。クランプ部89(図2のクリップ104に対応する)はフランジ部83に対してクロージャ部87を所定の位置に保持する。クランプ部89は、フランジ部83の下に係合しバイアル10とクロージャ部87とを組み立てた状態でクランプ部89を所定位置に保持可能とするような、スナップ式係合部811を有するスカート状壁部810からなる。クランプ部89の上部の壁には、中央に円形のアパーチャ812があり、それを通じてクロージャ部87の上部中央の凸状部が出っ張っている。その結果、クロージャ部87の上部の壁の中心領域813がアパーチャ812を通して曝露される。クランプ部88の外面の周囲には溝部814があり、それに対応するカバー部(図示せず)のビードがスナップ式に係合できるようになっている。バイアル10の基部815は、リング形状のスタンド816に、基部815がきつく擦れ合った状態で又はスナップ式に嵌合して嵌め込まれている。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の方法を実行するための装置の全体配置を示す平面図である。
【図2】図1の装置の電子ビームトンネルを通る縦断面図である。
【図3】図1の装置の電子ビームトンネルにおける、バイアルに対するカソードの配置を示す平面概略図である。
【図4】図1の装置の電子ビームトンネルにおける、バイアルに対するカソードの別の配置を示す平面概略図である。
【図5】本発明の方法での使用に適しているバイアル及びクロージャの縦断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穿孔可能であり且つ熱可塑的に溶融可能な壁部を有する容器の中へ薬剤を導入するための装置であって、
容器の壁部に存在する微生物を不活化するのに十分なエネルギー及び線量を有する電子ビームに容器の壁部を曝露する手段を取り囲む筐体と、
前記筐体の中へ容器を移送する手段と、
前記筐体の外へ容器を移送する手段と、
充填針で壁部に穿孔し、充填針を通じて容器の中へ薬剤を導入し、その後に充填針を引き抜く手段を含み、筐体の外側に位置するフィリングステーションと、
前記電子ビームに曝露された容器を筐体からフィリングステーションへ移送する手段と、
容器が筐体からフィリングステーションへ移送される間、容器の周囲を滅菌環境にする手段と、
を含むことを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、穿孔箇所近傍の材料を溶融させ、その後に材料を再硬化させることにより未処理の穿孔箇所を密封するシーリングステーションをさらに含むことを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の装置において、筐体が周囲の壁で境界付けられ、容器がそこを通り筐体へ入る入口開口部と、容器がそこを通り筐体から出る出口開口部とを有し、筐体の内部に電子ビーム源が設置されることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の装置において、筐体が、シールドされた筐体であることを特徴とする装置。
【請求項5】
前記請求項のいずれか1記載の装置において、コンベヤーが、複数のコンベヤーを搬送方向に沿って連続的に筐体の中へ導入することを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項5記載の装置において、コンベヤーが、筐体の内部で屈曲した経路をとることを特徴とする装置。
【請求項7】
前記請求項のいずれか1記載の装置において、筐体から搬送方向の下流に区画が設置され、区画の中へ加圧された滅菌雰囲気を導入する手段を備え、区画が、筐体の出口開口部と一体である容器のための入口と、容器のための出口とを有し、コンベヤーが区画を通って入口から出口へ通過することを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項7記載の装置において、区画の入口は、加圧された雰囲気が入口を通って優先的に区画から出られるように出口よりも大きいことを特徴とする装置。
【請求項9】
前記請求項のいずれか1記載の装置において、コンベヤーが、容器を連続的な列の状態で筐体を通って搬送し、ステップ(2)で用いられる筐体とステップ(4)のフィリングステーションとの間の手段が、そのような搬送方向に沿った複数のバイアルの連続的な動きを、搬送方向を横切る方向に整列した、搬送方向へ進む複数のバイアルの列の動きに変えることを特徴とする装置。
【請求項10】
前記請求項のいずれか1記載の装置において、容器の壁部を電子ビームに曝露するための手段が、カソードとそのカソードから間隔を空けたアノードとを取り囲む真空チャンバーであってアノードが真空チャンバーの壁部の窓部に隣接するか又は窓部から構成されるような真空チャンバーを含み、電子がカソードから放出され、アノードへ向かって真空中で加速され、窓部を通り抜けて電子ビームとして出現可能となるように、カソードとアノードとの間に電位差を加える手段を含むことを特徴とする装置。
【請求項11】
前記請求項のいずれか1記載の装置において、容器の壁部を電子ビームに曝露するための手段が、1〜3mAの範囲の電子ビーム流を生成することを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項10又は11記載の装置において、容器の壁部を電子ビームに曝露するための手段は、電子が約75〜85keVのエネルギーまで加速されるのに十分な電位差をカソードとアノードの間に加えるように構成されることを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項12記載の装置において、容器の壁部が、電子ビーム発生器のチャンバー壁から25mm以内を通るように配置されることを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項10〜13のいずれか1記載の装置において、容器の壁部を電子ビームに曝露するための手段が、充填針によって穿孔される壁部の領域上における電子ビームエネルギーにして、少なくとも50keVのエネルギー及び少なくとも25キログレイ(kGy)の線量を有する電子を出射するように構成されることを特徴とする装置。
【請求項15】
請求項10〜14のいずれか1記載の装置において、複数のカソードが、コンベヤー近傍にある配列であって、その配列のカソードからの電子ビームの放出がオーバーラップ領域で重なり合うような配列状態で配置され、容器が、その配列に対して、穿孔される容器の壁部が少なくとも1つのオーバーラップ領域を通過するように搬送されることを特徴とする装置。
【請求項16】
請求項15記載の装置において、3個のカソードからなる群の少なくとも1つが、三角形状に配置されて三角形の各頂点にカソードを有し、3個のカソードからの電子放出が三角形の中心周りで重なり合うことを特徴とする装置。
【請求項17】
請求項16記載の装置において、それぞれの角部にカソードを有して四角形状の配列で配置される少なくとも4個のカソードを備えることを特徴とする装置。
【請求項18】
請求項17記載の装置において、3個のカソードからの電子放出が重なり合うオーバーラップ領域を、6つ作り出すように配置される8個のカソードを備えることを特徴とする装置。
【請求項19】
請求項15〜18のいずれか1記載の装置において、搬送方向に沿って連続的に配置される容器を移送するコンベヤーの平面内での長手方向に対し、カソードがコンベヤーの中心の一方の側に長手方向に沿った列の状態で配置され、またコンベヤーの中心の反対側に長手方向に沿った列の状態で配置され、コンベヤーの中心の一方の側のカソードは反対側のカソードに対して長手方向に変位していることを特徴とする装置。
【請求項20】
請求項15記載の装置において、カソードがコンベヤーのラインと平行に長手方向へ連続的に配置されて単列状の配列となり、長手方向に隣接するカソードの電子放出が重なり合うように間隔が空いていることを特徴とする装置。
【請求項21】
請求項20記載の装置において、6〜8個のカソードを備えることを特徴とする装置。
【請求項22】
請求項15〜21のいずれか1記載の装置において、カソードの配列は、オーバーラップ領域がコンベヤーの搬送方向の長手方向の中心線に沿って直線状に整列するように配置されることを特徴とする装置。
【請求項23】
前記請求項のいずれか1記載の装置において、容器の壁部を電子ビームに曝露するための手段が、1つ以上の電子ビーム発生器を取り囲むトンネルであって、中を通り抜けて容器が搬送されるトンネルを含むことを特徴とする装置。
【請求項24】
容器の中へ薬剤を導入するための方法であって、
(1)充填針によって穿孔可能であり、且つ熱可塑的に溶融可能な材料からなる壁部を有する容器を供給するステップと、
(2)容器の壁部に存在する微生物を不活化するのに十分なエネルギー及び線量の電子ビームに容器の壁部を曝露するための手段を取り囲んでいる筐体の中へ、容器を導入するステップと、
(3)容器が前記筐体中にある間、壁部に存在する微生物を不活化するのに十分なエネルギー及び線量の電子ビームに壁部を曝露するステップと、
(4)曝露された容器を上記(3)から筐体の外へ移送し、滅菌環境中で容器をフィリングステーションへ移送するステップと、
(5)フィリングステーションにおいて、充填針で壁部を穿孔し、充填針を通じて容器の中へ薬剤を導入し、充填針を引き抜くステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項24記載の方法において、ステップ(5)の後に、充填された容器を、ステップ(5)から穿孔箇所近傍の材料を溶かした後に材料を再硬化させることによって未処理の穿孔箇所を密封するシーリングステーションへと移送するステップ(6)が続くことを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項1〜23のいずれか1記載の装置を用いて行われることを特徴とする、請求項24又は25記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−518689(P2006−518689A)
【公表日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501922(P2006−501922)
【出願日】平成16年2月19日(2004.2.19)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001752
【国際公開番号】WO2004/076288
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(397062700)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (37)