説明

容器の口部シール構造

【課題】高周波加熱時の熱の影響でコンタクトリング部が溶けた場合の軸力の低下を可及的に小さくでき、かつ、キャップによるリシール時にコンタクトリング部を有効に機能させ得る容器の口部シール構造を提供する。
【解決手段】コンタクトリング部は、シール部材が高周波加熱される前のキャップ螺着時の締め付け力によってシール部材に当接しており、前記シール部材の高周波加熱時の熱によって先端部分が部分的に溶けて基部側が所定高さ残る構成とし、口部の筒状部分には軸方向に弾性変形可能な弾性変形可能部を設け、該弾性変形可能部はキャップ螺着時の軸力によって圧縮される構成とし、高周波加熱時のコンタクトリング部の溶け代を弾性変形可能部の弾性復元によって吸収する構成としたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の口部シール構造に関し、特に、口部にシート状のシール部材が高周波溶着され、さらにリシール用のキャップが被着された構造の容器の口部シール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図8及び図9は、本発明の背景技術としての容器の口部シール構造を示している。
すなわち、この口部シール構造は、容器100の筒状の口部110先端に、ポリエチレン等の熱可塑性の樹脂層121とアルミ等の金属層122を積層した多層シート状のシール部材120が載置されると共にリシール用のキャップ130が螺着された状態で、シール部材120が高周波加熱されて口部110先端にシール部材120が溶着される構成となっている。
【0003】
キャップ130の天板部132には、シール部材120を開封した際に口部110に係合するコンタクトリング部133が設けられている。コンタクトリング部133は、シール部材120が高周波加熱される前のキャップ130螺着時の締め付け力によってシール部材120を所定圧で押さえるようになっている。コンタクトリング部133は、初期開封後にキャップ130でリシールする際に、口部110の開口端部に当接し、開口部をシールするシールポイントを形成する。
【0004】
しかし、高周波加熱中に、キャップ130のコンタクトリング部133が、熱の影響を受けて溶けることにより、キャップ130と口部110の締結力を保持する軸力が減少し、キャップ130が弛みやすくなるという原理的な問題がある。すなわち、高周波加熱によって金属層122が加熱されるので、金属層122に接触しているコンタクトリング部133の先端部分が溶け、甚だしい場合は、隙間gが生じガタツキが生じてしまう。
【0005】
これまでは、シール部材120の金属層122とキャップ天板部132との接触部に発生する擬似溶着によって、弛みを防止することができているが、キャップ材料の選定によっては、密封ができず、かつ擬似溶着が発生するための生産条件を得られなかった場合に、流通時にキャップ130が弛み、消費者に無用の不安を与えるという問題が発生する。
【0006】
コンタクトリング部133が溶けて軸力が減少した状態でも、キャップ130が弛まないだけの締結力を保持させておくためには、シール前の状態でねじ位置を進めて強く締める方法もあるが、絞り出し性を必要とする軟質容器の場合には、容器自体がねじれてうまくキャッピングできない。
【0007】
なお、このような容器の口部シール構造としては、たとえば、特許文献1に記載のように、口部の先端とねじ部との間に、軸方向に弾性変形可能な括れ部を設けたものが知られている。この特許文献1では、口部の天面に傾斜するフランジ部があり、高周波加熱前のキャップねじ込みの段階で括れ部が変形し、高周波加熱時の熱を利用してフランジ部を軟化させ、括れ部の弾性復元力によって軟化したフランジ部を水平に変形させ、天板部に設けられた小突起をシール部材に押圧させるようになっている。
【0008】
しかし、小突起部がシール部材を介してフランジ部に接触する前に高周波加熱されても、括れ部の弾性復元力が傾斜フランジ部を水平に撓ませるのに必要な力に対し十分大きくないと、傾斜フランジ部が水平にならず、コンタクトリング部が傾斜フランジ部に接触しないままシール部材が不完全に溶着されるおそれがある。
【0009】
特に、口部天面に切れ残りの突起があると、シール部材とフランジ部との距離が僅かであるが広がって、傾斜フランジ部に十分熱が伝わりにくくなるので、フランジ部の熱による弱化変形が期待できないおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公昭61−1289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、高周波加熱時の熱の影響でコンタクトリング部が溶けた場合の軸力の低下を可及的に小さくでき、かつ、キャップによるリシール時にコンタクトリング部を有効に機能させ得る容器の口部シール構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、容器の筒状の口部先端にシート状のシール部材が載置されると共にリシール用のキャップが螺着された状態で、シール部材が高周波加熱されて口部先端にシール部材が溶着される構成で、キャップの天板部には、シール部材を開封した際に口部に係合するコンタクトリング部を備えた容器の口部シール構造において、
前記コンタクトリング部は、シール部材が高周波加熱される前のキャップ螺着時の締め付け力によってシール部材に当接しており、前記シール部材の高周波加熱時の熱によって先端部分が部分的に溶けて基部側が所定高さ残る構成とし、
前記口部の筒状部分には軸方向に弾性変形可能な弾性変形可能部を設け、該弾性変形可能部はキャップ螺着時の軸力によって圧縮される構成とし、高周波加熱時のコンタクトリング部の溶け代を弾性変形可能部の弾性復元によって吸収する構成としたことを特徴とする。
【0013】
開口部の先端部には、自由状態で外径側より内径側が口部の軸方向外側に突出する方向に傾斜する内向きフランジ部が設けられており、ねじ部とキャップの天板部との間で、直列に配置される内向きフランジ部と弾性変形可能部が軸方向に圧縮された際に、内向きフランジ部が弾性変形可能部よりも先に変形してコンタクトリング部に当接するように軸方向の剛性が設定されていることが好適である。
【0014】
弾性変形可能部は、口部の筒状部分が部分的にくびれたたわみ変形部であることが好ましい。
このたわみ変形部は、口部先端側の外径がねじ部側の外径よりも小径で、かつ、先端側壁面の傾斜角がねじ部側壁面の傾斜角より大きくなっていることが好ましい。
【0015】
このような構成の場合、内向きフランジ部の径方向幅Bと、たわみ変形部の口部先端側外径からの谷部深さAとの比(B/A)が、3〜4の範囲に設定されることが効果的である。
また、コンタクトリング部は、基部は断面矩形状で、先端部分は断面三角形状に尖った構成となっていることが好ましい。
また、本発明は、容器が軟質の場合に好適で、さらには内容物を絞り出し可能なくらい柔らかい、例えばケチャップ,マヨネーズ容器のようなスクィーズ容器に好適である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、このように弾性変形可能部の弾性復元作用によって、溶け代分を吸収することができるので、従来のように、シール部材の高周波加熱時のコンタクトリング部の溶融に起因するキャップの弛みを防止できる。また、コンタクトリング部の溶け代を先端部分に限定することにより、残存部分によってリシール時のコンタクトリング部のシール機能を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1(A)は本発明の実施例に係る容器の口部シール構造の高周波加熱前の状態の分解断面図、同図(B)は(A)のキャップねじ込み完了時点の縦断面図である。
【図2】図2は図1の口部シール構造の高周波加熱前のキャップねじ込み状態を示すもので、同図(A)は高周波過熱前のキャップねじ込み開始時の縦断面図、同図(B)はキャップの天面中央部がシール部材に当接した状態の要部断面図、同図(C)はキャップねじ込み途中の縦要部断面図、同図(D)はキャップねじ込み完了状態の要部断面図である。
【図3】図3は図1の容器の口部シール構造の高周波加熱前後の状態を示すもので、同図(A)は高周波過熱前のキャップ螺合状態の要部断面図、同図(B)は高周波加熱時の要部断面図、同図(C)は高周波加熱によってコンタクトリング部の先端部分が溶けた部分を説明のため隙間にして示した要部断面図、同図(D)はたわみ変形部が弾性復元して同図(C)の隙間が吸収された状態の要部断面図である。
【図4】図4は図1の容器の口部シール構造の口部の構成を示すもので、同図(A)は一部を破断して示す斜視図、同図(B)は一部破断正面図である。
【図5】図5は、本発明の口部形状と従来の口部形状によるキャップ締め付け荷重と変位の特性を比較して示すグラフである。
【図6】図6は本発明の口部形状と従来の口部形状における同一の変位量に対する軸力低下を説明するため図である。
【図7】図7は図1の容器の口部シール構造の初期開封後のリシール状態を示すもので、同図(A)はシール部材のアルミシート部を剥がした状態の口部の縦断面正面図、(B)は樹脂シート部の平面図、同図(C)はキャップねじ込み途中の部分縦断面図、同図(D)はキャップねじ込み完了状態の部分縦断面図である。
【図8】図8(A)は従来の容器の口部シール構造を示す要部縦断面図、同図(B)は同図(A)の口部を一部破断して示す斜視図である。
【図9】図9は図8の容器の口部シール構造の高周波加熱前後の状態を示すもので、同図(A)は高周波過熱前のキャップ螺合状態の要部断面図、同図(B)は高周波加熱時の要部断面図、同図(C)は高周波加熱によってコンタクトリング部の先端部分が溶けた部分を隙間にして示した要部断面図である。
【図10】円板状のシール部材をキャップ内に仕込む構成とした口部シール構造の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明を実施するための形態を、図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1乃至図4には、本発明の実施例に係る容器の口部シール構造が示されている。
この口部シール構造は、たとえばマヨネーズ容器等の軟質のスクィーズ容器に利用されるもので、容器1の筒状の口部10先端にシート状のシール部材20が載置されると共にリシール用のキャップ30が螺着された状態で、シール部材20が高周波加熱されて口部10先端にシール部材20が溶着される構成となっている。容器1はポリエチレン、または、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂の単層または多層、あるいはブレンド等の組み合わせによる材料によってブロー成形される構成である。
【0019】
口部10は筒形状で、図4に示すように、容器本体2から突出するねじ筒部11と、先
端側の先端筒部12と、ねじ部として2条ねじを備えたねじ筒部11と口部先端部としてのねじ先端筒部12との間に設けられる軸方向に弾性変形可能な弾性変形可能部としてのたわみ変形部13と、先端筒部12の先端から内向きに絞られた内向きフランジ部14とを備えている。
ねじ筒部11は、円筒状のねじ筒部本体11aと、ねじ筒部本体11aの外周に突出するおねじ部11bとを備えている。また、先端筒部12の外径はねじ筒部本体11aの外径よりも小径となっている。
【0020】
たわみ変形部13は、口部10の筒状部分が部分的に内側に向かって凹形状に括れた形状で、最小径部分である谷部13aは略円弧形状、乃至、直線の両端部を曲線で丸めた形状で、谷部13aの先端筒部12側であって図においては上側の先端側壁面13bは、口部10の中心線に対して略直角(図では水平に近い傾斜)で、谷部13aのねじ筒部11
側であって、図においては下側のねじ側壁面13cは、ねじ筒部本体11aの先端縁から半径方向内方であって谷部13aに向かって所定角度で徐々に小径となるように直線的に傾斜して延び、谷部13aの容器本体側の端部につながっている。
【0021】
また、たわみ変形部13の上部である先端側壁面13bの径方向の幅は、下部のねじ側壁面13cの径方向の幅より小径で、かつ、上側の先端側壁面13bの傾斜角が下側斜面のねじ側壁面13cの傾斜角より大きくなっている。このようにすれば、弾性変形力を上げつつ、弾性変形域(可動域)を広く確保できる構造となる。
内向きフランジ部14は、先端筒部12の先端から半径方向内方であって反容器本体側に向かって傾斜する円錐台形状となっている。この内向きフランジ部14の内径端によって、容器本体2内部と外部とを連通する開口部15が構成される。なお、内向きフランジ部14の開口部周縁である内向きフランジ部14の内径端部外周の符号14aは、中間段階の成形品の閉塞部を切断した切断痕である。切断痕14aは内向きフランジ部14を削らないのであればより短くした方が好ましい。
本実施例では、内向きフランジ部14の径方向幅Bと、たわみ変形部13の先端筒部12の外径部からの谷部深さAとの比(B/A)が、3〜4の範囲に設定されている。
【0022】
シート状のシール部材20は、ポリエチレン等の熱軟化樹脂層としての樹脂シート部21と、金属層としてのアルミシート部22との多層体で、樹脂シート部21が容器1口部の内向きフランジ部14側に位置し、高周波加熱によって熱溶着される。すなわち、アルミシート部22が加熱され、この熱によって樹脂シート部21及び内向きフランジ部14の接触部が軟化点を越え溶着される。シール部材20の外径は先端筒部12の外径とほぼ同一となっている。
【0023】
この例では、初めて開封するとき、すなわち、初回の開封時には、シール部材20は、キャップ30を回して口部10から取り外すときアルミシート部22だけがキャップ30側にくっつくことで剥離され、あるいは、キャップを30取り外した後に、手などによる引きはがし操作で口部からアルミシート部22だけが剥離され、樹脂シート部21は内向きフランジ部14側に溶着されたままで残る。樹脂シート部21は、予め不図示の丸い注出穴、あるいは、図7に星型で例示されるような、デザイン的な形状を有した注出穴21aが形成されていてもよい。また、アルミシート部22を剥がした段階では開封されず、アルミシート部22を剥がした後に別途の追加の操作によって開封するようになっていてもよい。なお、シール部材20を構成する樹脂シート部21とアルミシート部22は一体構成となっていてもよいし、別体構成となっていてもよい。さらには、シール部材20は、アルミシート部22の金属層、樹脂シート部21として、他の金属、樹脂材料を用いてもよいし、2層の他に目的に応じて適宜層が追加されていてもよい。
【0024】
一方、キャップ30は、口部10のねじ筒部11に螺合される2条の雌ねじ31aが設
けられた円筒形状のキャップ筒部31と、このキャップ筒部31の一端を塞ぐ円形状の天板部32と、を備えた構成となっている。
天板部32の裏面には、容器1の口部10側(図においては下側)に向かって突出する円形の天面段部32aと、天面段部32aの外側に設けられるコンタクトリング部33とが設けられている。
天面段部32aの外周は、キャップ筒部31と同心円形状で、キャップ30を螺合した状態で、その内向きフランジ部14が天面段部32aと軸方向に重なるようになっている。
【0025】
コンタクトリング部33は、図1(A)と図3(A)に拡大して示すように、天面段部32aの外周とキャップ筒部31の間の環状凹部34内に設けられ、環状凹部34の底面から所定寸法環状に突出している。コンタクトリング部33の構成は、基部33aが断面矩形状で、先端部分33bは断面三角形状に尖った構成となっている。突出高さは、基部33aの高さが天面段部32aの高さとほぼ同一、乃至基部33a側が若干突出する。
【0026】
このコンタクトリング部33の先端部分の当接位置は、内向きフランジ部14の付け根位置に接触する。この接触位置をシールポイントとすると、シールポイントは、先端筒部12の内径位置あるいは内径位置より内側に位置している。そして、コンタクトリング部33は、フランジ部14への当接位置にシール面圧を集めて増大させ、キャップ30の天板部32内面が内向きフランジ部14の広範囲に当接しにくくしている。
このコンタクトリング部33は、シール部材20が高周波加熱される前のキャップ螺着時の締め付け力によって所定圧でシール部材20に当接しており、シール部材20の高周波加熱時の熱によって先端部分33bが部分的に溶けて基部33a側が所定高さだけ残存する構成となっている。
【0027】
コンタクトリング部33が高周波加熱時の熱の影響で溶ける範囲は、せいぜい三角形状の先端部分33bに限定され、少なくとも基部33a側が有効に残存する。
そして、たわみ変形部13はキャップねじ込み時の軸力によって圧縮される構成で、高周波加熱時のコンタクトリング部33の溶け代Xを弾性変形可能部の弾性復元によって吸収する。
【0028】
図2は、高周波加熱前のキャップねじ込み状態を示し、図3は高周波加熱前後の状態を示している。
まず、図2を参照して、高周波加熱前のキャップねじ込み状態について説明する。
図2(A)は、ねじ込み開始状態を示している。すなわち、シール部材20を口部10の内向きフランジ部14に載置し、キャップ30を口部10に被着した状態である。シール部材20は、自由状態の内向きフランジ部14の傾斜に合わせて周縁部が円錐台形状に傾斜した傾斜形状部20Bを備えた立体的な形状に成形されている。
【0029】
この状態でキャップ30をねじ込んでいくと、キャップ30の天板部32の天面段部32aが、シール部材20の平坦形状部20Aを介して内向きフランジ部14の内径端部14bに当接する(図2(B)参照)。続いてキャップ30をねじ込んでいくと、内向きフランジ部14の内径端部14bが軸方向に撓み、コンタクトリング部33の先端がシール部材20の傾斜形状部20Bを介して内向きフランジ部14の付け根位置に当接する(図2(C)参照)。この状態から、所定の締め付けトルクまでさらにねじ込むことにより、先端筒部12を介してたわみ変形部13が軸方向に圧縮され、所定量弾性変形した時点で、所定の締め付けトルクに達し、所定の軸力で締め付け固定される(図2(D)参照)。
すなわち、ねじ部であるねじ筒部11とキャップ30の天板部32との間で、内向きフランジ部14と弾性変形可能部であるたわみ変形部13は軸方向に直列に配置され、軸方向に圧縮された際に、内向きフランジ部14がたわみ変形部13よりも先に変形してコン
タクトリング部33に当接するように軸方向の剛性が設定されている。
【0030】
次に、図3を参照して、高周波加熱について説明する。
図3(A)は、高周波加熱前のキャップ螺合状態、すなわち、図2(D)の拡大図を示している。この状態で、たわみ変形部13が圧縮され、軸方向に所定量弾性変形している。
【0031】
この状態で高周波をかけると、アルミ層22が誘導加熱されて発熱し(図3(B)参照)、この熱によって積層された樹脂層21及び内向きフランジ部14の接触部が軟化点以上に加熱され熱溶着される。一方、アルミ層22の発熱によって、コンタクトリング部33の先端部分33bが部分的に溶ける(図3(C)参照)。コンタクトリング部33が溶ける範囲は、せいぜい三角形状の先端部分33bに限定され、少なくとも基部33a側が有効に残存する。
【0032】
図示例では、基部33bが残った状態を示しているが、溶け代は、樹脂材の種類、高周波加熱の条件によって定まるもので、この例では、最大、先端部分33bが溶ける範囲に設定している。もっとも、溶ける範囲の設定は自由であり、基部側まで溶けるようにしてもよいが、少なくとも、リシール時のシール機能を発揮できる程度の突出高さを確保する。
【0033】
図3(C)では隙間が開いた状態を説明のため模式的に示すもので、実際にはたわみ変形部が圧縮されて弾性変形しており、溶けた分だけたわみ変形部13が弾性復帰して軸方向に伸張し、溶け代Xが吸収される(図3(D)参照)。
【0034】
図5は、口部にたわみ変形部を設けた本実施例と、口部にたわみ変形部がない比較例との、荷重と変位の関係を示すグラフである。
図5に示すように、コンタクトリング部が接触開始するまでは、荷重の増加に対する変位の増加は同じであるが、コンタクトリング部が接触後は、比較例に対して、本実施例の口部の方の剛性が低くなり、荷重に対する変位の割合が増大する。
【0035】
したがって、図6に示すように、溶け代(X)が同じであれば、比較例に対して、剛性の低い本実施例の方の軸力の低下(ΔP)は小さくなる。すなわち、隙間への追従性が高く、軸力が残りやすい。
このようにたわみ変形部13の弾性復元作用によって、溶け代X分を吸収することができるので、従来のように、高周波加熱時のコンタクトリング部33の溶融に起因するキャップ30の弛みを防止できる。また、コンタクトリング部33の溶け代Xは先端部分に限定されるようにし、基部33a側の残存部分によって、リシール時のコンタクトリング部33のシール面圧増大機能は維持される。
【0036】
特に、本実施例では、内向きフランジ部14の径方向幅Bと、たわみ変形部13の谷部13aの先端筒部12からの深さAとの比(B/A)が、3〜4となっている。
この下限値3未満では、たわみ変形部13が内向きフランジ部14より先に大きく撓むので、内向きフランジ部14が水平近くまで十分にたわまず、キャップ30のコンタクトリング部33と接触できないおそれがある。
また、上限値4を超えると、内向きフランジ部14が長くなりすぎて開口面積が少なくなり邪魔となるか、たわみ変形部13の段深さが不十分のため、弾性変形域(可動域)が
不十分であり、高周波加熱後に、コンタクトリング部33が溶けて低くなったときに、たわみ変形部13が十分追従できなくなるので、キャップ30が口部10に対して緩み、がたつきが起こったり、開栓トルクが低くなってしまう。
【0037】
また、B/Aを上記のように適切に設定すると、フランジ部14とたわみ変形部13の上側とに作用するモーメントが適切になり、キャップ30をねじ込んだ際、口部10は内向きフランジ部14→たわみ変形部13の順でたわみ変形をするので、高周波加熱時にはキャップ30のコンタクトリング部33は確実に内向きフランジ部14を押圧でき、加熱溶着後、コンタクトリング部33が多少溶け落ちても、たわみ変形部13がキャップ30に追従押圧できるので、キャップ30のガタツキや開栓トルク低減を効果的に防ぐことができる。
【0038】
図7は、初期開封した後の、リシールする状態を示している。
図7(A)はシール部材20のアルミシート部22を剥がした状態を示している。口部10の内向きフランジ部14は、樹脂シート部21の張力によってほぼ水平状態体に保持されている。樹脂シート部21には、図7(B)に示すように、予め注出穴21aが形成されており、この注出穴21aから内容物を注出するようになっている。
この状態でキャップをねじ込んでいくと、まず、キャップ30の天板部32裏面の天面段部32aが樹脂シート部21を介して内向きフランジ部14の内径端部14bに当接すると共に、ほぼ同時に、先端部分が溶けたコンタクトリング部33の先端が内向きフランジ部14の付け根位置に当接する(図7(C)参照)。この状態からさらにねじ込むことにより、コンタクトリング部33を介して内向きフランジ部14が押圧され、先端筒部12を介してたわみ変形部13が軸方向に圧縮され、ねじ部が所定の軸力で締め付け固定される(図7(D)参照)。
これにより、コンタクトリング部33が接触するシールポイントの面圧が所定のシール面圧に保持され、良好なシール性能が維持されることになる。
【0039】
なお、上記実施例では、弾性変形可能部をくびれ形状のたわみ変形部によって構成したが、軸方向に弾性的に伸縮する構成であればよく、たとえば蛇腹形状等他の形状を採用することも可能である。
また、ねじ部も2条に限らず、1条,3条等、公知のねじ条数にしてもよい。
また、シール部材20は、図10に示すように、口部10に装着される前は平らな円板状の状態でキャップ30内に挿入・配置しておき、キャップ30を口部10へしめ込むに従って図3のように、撓ませるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 容器
2 容器本体
10 口部
11 ねじ筒部(ねじ部)
11a ねじ筒部本体、11b おねじ部
12 先端筒部
13 たわみ変形部(弾性変形可能部)
13a 谷部、13b 先端側壁面、13c ねじ側壁面
14 内向きフランジ部、14a 切断痕、14b 内径端部
15 開口部
20 シール部材
21 樹脂シート部、21a 注出穴、22 アルミシート部
30 キャップ
31 キャップ筒部、32 天板部、32a 天面段部
33 コンタクトリング部、33a 基部、33b 先端部分
34 環状凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の筒状の口部先端にシート状のシール部材が載置されると共にリシール用のキャップが螺着された状態で、シール部材が高周波加熱されて口部先端にシール部材が溶着される構成で、キャップの天板部には、シール部材を開封した際に口部に係合するコンタクトリング部を備えた容器の口部シール構造において、
前記コンタクトリング部は、シール部材が高周波加熱される前のキャップ螺着時の締め付け力によってシール部材に当接しており、前記シール部材の高周波加熱時の熱によって先端部分が部分的に溶けて基部側が所定高さ残存する構成とし、
前記口部の筒状部分の先端とねじ部との間に軸方向に弾性変形可能な弾性変形可能部を設け、該弾性変形可能部はキャップ螺着時の軸力によって圧縮される構成とし、高周波加熱時のコンタクトリング部の溶け代を弾性変形可能部の弾性復元によって吸収する構成としたことを特徴とする容器の口部シール構造。
【請求項2】
開口部の先端部には、自由状態で外径側より内径側が口部の軸方向外側に突出する方向に傾斜する内向きフランジ部が設けられており、ねじ部とキャップの天板部との間で、直列に配置される内向きフランジ部と弾性変形可能部が軸方向に圧縮された際に、内向きフランジ部が弾性変形可能部よりも先に変形してコンタクトリング部に当接するように軸方向の剛性が設定されている請求項1に記載の容器の口部シール構造。
【請求項3】
弾性変形可能部は、口部の筒状部分が部分的にくびれたたわみ変形部である請求項2に記載の容器の口部シール構造。
【請求項4】
たわみ変形部は、口部先端側の外径がねじ部側の外径よりも小径で、かつ、先端側壁面の傾斜角がねじ部側壁面の傾斜角より大きくなっている請求項3に記載の容器の口部シール構造。
【請求項5】
内向きフランジ部の径方向幅Bと、たわみ変形部の口部先端側外径からの谷部深さAとの比(B/A)が、3〜4の範囲に設定されることを特徴とする請求項4に記載の容器の口部シール構造。
【請求項6】
基部は断面矩形状で、先端部分は断面三角形状に尖った構成となっている請求項1乃至5のいずれかの項に記載の容器の口部シール構造。
【請求項7】
容器は軟質のスクィーズ容器である請求項1乃至6のいずれかの項に記載の容器の口部シール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−179948(P2010−179948A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−26618(P2009−26618)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【出願人】(000223193)東罐興業株式会社 (90)
【Fターム(参考)】